(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、比較的大きな周長を有する被測定部位に巻き回した場合にもその空気袋が測定部位の全周を覆う圧迫帯にあっては、より小さな周長を有する被測定部位に巻き回して圧迫帯が被測定部位に固定されたときに、リングで折り返される箇所に空気袋が存在するため、当該箇所においてリングにより空気袋が締め付けられる。そのため、リングで折り返された箇所において空気袋における空気の流通が阻害されることとなり、空気袋の、折り返された部分に関して、空気を給排気するための弁と反対側にある部分には、給気時に空気が殆ど送り込まれない。したがって、上記のような比較的長い空気袋を有する圧迫帯においては、空気袋内の空気容量が、被測定部位の周長に応じて事実上変化することになる。
【0006】
被測定部位の周長に応じて空気袋内の空気容量が変化すると、以下のような不都合が生じる。
【0007】
一般に、血圧測定は、所定の空気圧まで空気袋内の圧力を高めた後、空気袋の内圧を次第に減圧させ、脈動が再開したときの内圧を特定することにより行われる。したがって、減圧の速さには適切な範囲が存在する。
【0008】
そのため、被測定部位の周長に応じて空気袋内の容量が変化するような場合、測定部位の周長が適合範囲のうちで最も短い場合、すなわち、空気袋内の空気容量が最も小さくなる場合においても、減圧の速さが適切な範囲を上回らないようにする必要がある。しかしながら、そのように減圧の速さを設定した場合、測定部位の周長が比較的長い場合、つまり、空気袋の空気容量が比較的大きい場合、減圧に時間がかかり過ぎることとなり、血圧測定に要する時間が長期化してしまう。
【0009】
逆に、減圧の速さを速くすると、測定部位の周長が短い場合に過度に速く減圧が進行してしまい、そのような場合に血圧の測定が正しく行われないおそれが生じる。
【0010】
そこで、この発明の課題は、折り返しタイプの血圧測定装置用圧迫帯であって、想定する被測定部位周長の最大値においても空気袋が実質的に被測定部位全体を覆うような構成を有し、しかも、被測定部位の周長の長短に応じた空気袋の空気容量の変化の程度を抑制することができるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の血圧測定装置用圧迫帯は、
被測定部位を圧迫する血圧測定装置用圧迫帯であって、
被測定部位を取り巻く周方向と、周方向に垂直な幅方向とに広がる外側部材および内側部材を含む外装袋と、
外装袋に内包されて周方向に沿って延在する空気室を備えた阻血用の空気袋と、
外装袋の周方向の一端部の近傍に取り付けられた、実質的に長円形状をもつリング部材と、を有し、
外装袋の外側部材には、周方向の他端部の近傍に面ファスナが配され、
装着時に、内側部材の少なくとも一部が被測定部位に当接された状態で、外装袋が被測定部位に巻き回され、他端部が空気袋と併せてリング部材に挿通されるとともに折り返されて、面ファスナが外側部材のうちの対応する部分と係合され、
空気袋がリング部材により折り返された箇所において空気袋の空気室内面に幅方向に関して段差が形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
この発明の血圧測定装置用圧迫帯では、空気袋の空気室内面に形成された段差により、装着時にリング部材により折り返される箇所における空気袋内の空気流路が確保される。そうすることで、被測定部位の周長に応じて空気袋の空気容量が変化することが無くなり(または、少なくとも軽減され)、さまざまな周長を有する被測定部位における血圧測定が、迅速かつ正確に実行できる。
【0013】
本明細書で、「内包される」とは、次のような意味で用いられる。たとえば、「空気袋が外装袋に内包される」とは、空気袋の実体部分、すなわち空気室が、外装袋の内側に内包されていることを意味する。本明細書では、「内包される」は、必ずしも、空気袋全体が外装袋によって完全に取り囲まれていることを意味するものではない。たとえば、空気袋のうち空気室以外の周縁に存在する部分が、外装袋の外部へ延在していてもよい。
【0014】
一実施形態の装置では、この圧迫帯が、予め定められた最大周長から最小周長までの周長を有する被測定部位に装着された場合に、折り返された箇所において段差が存在するように段差が周方向に延在する範囲が設定されてもよいことを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の血圧測定装置用圧迫帯では、予め定められた最大周長から最小周長までのさまざまな周長を有する被測定部位における血圧測定が、迅速かつ正確に実行できる。
【0016】
一実施形態の装置では、段差は、空気袋の空気室内面に設けられた、実質的に短冊形状をもつ補助シートの端部でよいことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の血圧測定装置用圧迫帯では、空気袋の空気室内面に極めて簡便に段差形状を形成することができる。
【0018】
一実施形態の装置では、空気袋は、周方向および幅方向に広がる2枚のシート部材を、周縁部において溶着することにより形成されてよく、補助シートは、幅方向に関して、空気袋の中央箇所に溶着されてよいことを特徴とする。
【0019】
この一実施形態の血圧測定装置用圧迫帯では、補助シートを用いて極めて簡便に段差形状を形成することができる。
【0020】
一実施形態の装置では、空気袋は、周方向および幅方向に広がる2枚のシート部材を、周縁部において溶着することにより形成されてよく、2枚のシート部材は、少なくとも周縁部の一部において、補助シートを介して溶着されてよいことを特徴とする。
【0021】
この一実施形態の血圧測定装置用圧迫帯では、補助シートを用いて極めて簡便に段差形状を形成されるとともに、空気袋の周縁部の強度を向上することができる。
【0022】
一実施形態の装置では、補助シートの厚さは、空気袋を形成するシート部材の厚さと実質同一の厚さでよいことを特徴とする。
【0023】
一実施形態の装置では、補助シートは、空気袋を形成する2枚のシート部材の互いに対向する空気室内面にそれぞれ設けられてよいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上より明らかなように、この発明の血圧測定装置用圧迫帯によれば、空気袋の空気室内面に形成された段差により、装着時にリング部材により折り返される箇所における空気袋内空気流路が確保される。そうすることで、被測定部位の周長に応じて空気袋の空気容量が変化することが無くなり(または、少なくとも軽減され)、さまざまな周長を有する被測定部位における血圧測定が、迅速かつ正確に実行できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施形態は、外装袋2内に阻血用空気袋3を内包した血圧測定装置用圧迫帯1である。本発明の実施形態による血圧測定装置用圧迫帯1(以下、「圧迫帯」と略す。)は、その外装袋
2の一端部に他端部を挿通可能なリング部材4を備える。
図11は、圧迫帯1の装着時の形状を示す模式図である。被測定部位に装着時、外装袋
2の他端部2yは、一端部2zに配されたリング部材4に挿通されて折り返され、外装袋
2に配された面ファスナ5,6を用いて被測定部位に固定(矢印)される(折り返しタイプ)。該圧迫帯1は、予め定められた最小周長から最大周長の範囲(適合範囲)の周長を有する被測定部位における血圧測定に適しており、内包する阻血用空気袋3(以下、「空気袋」と略す。)は、最大周長の周長を有する被測定部位に巻き回されて固定されたときに、被測定部位を実質的に全周にわたって覆うことができる長さを有する。
【0028】
したがって、圧迫帯1が最大周長未満の周長を有する被測定部位に巻き回されて固定された場合、外装袋2は、空気袋3とともに、リング部材4において折り返されることになる。そこで、本発明の実施形態による圧迫帯1は、装着時にリング部材4で折り返されることが想定される空気袋3の空気室内面の箇所に段差形状(段差部10,20)が形成されている。この段差形状(段差部10,20)により、当該折り返された箇所において空気の流通が確保され、加圧された空気は、折り返された部分を介して空気袋3内を自由に流れる。そうすることで、被測定部位の周長に応じて空気袋3の空気容量が変化することが無くなり(または、少なくとも軽減され)、最小周長から最大周長に至るまでのさまざまな周長の被測定部位における血圧測定が、迅速かつ正確に実行できるようになる。また、血圧測定後に空気袋3から空気を排気する際にも、折り返し部分を介した空気の流通が円滑に行われ、空気袋3から空気を完全に排気させるまでに要する時間が短縮される。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による圧迫帯1の平面図である。圧迫帯1は、外側部材および内側部材の周囲をつなぎ合わせて形成された外装袋2を有する。図には、外側部材が表されており、内側部材は平面視において外側部材と重なるため図に現れていない。外装袋
2には、周方向Cに沿っておよそ位置P0からP2に至る部分に空気袋3が内包されている。ここで、周方向Cに沿った位置P0からP2までの周長は、圧迫帯の血圧測定適合範囲の最大周長に相当する。すなわち、空気袋3は、適合範囲内の周長を有する被測定部位に巻き回されたとき、被測定部位全体を覆う長さを有するように設計されている。
【0030】
外装袋2の外側部材には、周方向Cの一端部の近傍に面ファスナ(フック)5が配され、周方向Cの他端部の近傍には、取付部材7によって実質長円形状のリング部材4が取り付けられている。なお、リング部材4は、外装袋2の内側部材に、取付部材7よって取り付けられてもよい。また、面ファスナ(フック)5と、リング部材4との間には、面ファスナ(ループ)6が配されている。面ファスナ(フック)5と面ファスナ(ループ)6とは、圧迫帯1を被測定部位に固定するために用いられる。つまり、圧迫帯1は、内側部材の少なくとも一部を被測定部位に当接させて巻き回され、面ファスナ(フック)5側の端部がリング部材4に挿通されるとともに折り返されて、面ファスナ(フック)5と面ファスナ(ループ)6とが係合されることにより、被測定部位に固定される。また、外側部材には、空気袋3から延びる給排気用のニップル9が通される穴が設けられている。
【0031】
外装袋2に内包される空気袋3の空気室の内面には、実質的に短冊形状を有する補助シート8が配置されている。ここで、周方向Cに関し、補助シート8のリング部材4側の端部の位置をP
1とすれば、点P
0から点P
1に至る周長は、圧迫帯の血圧測定適合範囲の最小周長に相当する。すなわち、空気袋3では、適合範囲内の最小周長以上の被測定部位に巻き回されたとき、リング部材4によって折り返される箇所に補助シート8が存在するように、補助シート8が周方向Cに沿って延在する範囲が設定されている。この例では、外装袋2、空気袋3、補助シート8は、幅方向Wに関する被測定部位の太さの変化に適合するように、平面視で一定の曲率を有して、湾曲している。本例の圧迫帯1は、被測定部位として、つまり、圧迫帯1が巻き回される身体部位として、ヒトの上腕部を想定して設計されている。一般に、ヒトの上腕部の周長は、肩から肘に向かう方向に関して一旦増大し極大周長となってから肘関節に向かって減少する。そこで、本例の圧迫帯1は、ヒトの上腕部の極大周長となる部分あたりから肘関節に向かう方向に沿って肘関節のやや手前(およそ1〜2センチメートル手前)までの領域に当接されて巻き回されることに適するように、圧迫帯1の周方向Cに沿って湾曲した形状を有する。
【0032】
次に、
図2A、
図2B、
図2Cを参照し、第1実施形態による空気袋3について詳細に説明する。
図2Aは、空気袋3の平面図である。
図2Bは、空気袋3の、
図2Aの線A−A’に沿った断面図である。
図2Cは、空気袋3の立面図である。なお、
図2A、および、
図2Bにおいて、斜線部は溶着箇所を示すものとする。
【0033】
図2Aおよび
図2Bを参照すれば、空気袋3の空気室(
図2BにおけるAC)の内面には、周方向Cに沿って実質的に短冊形状の補助シート8が、溶着(斜線部)により空気袋3本体を構成するシート(主シート部材)の空気室AC内面に取り付けられている。
【0034】
図2Bを参照し、補助シート8が空気袋3の空気室AC内面に形成する段差形状(段差部10)について説明する。斜線部によって示すように、空気袋3では、2枚のシート(主シート部材3A,3B)が、その周縁部3pにおいて溶着されるとともに、主シート部材3Aの空気室AC内面に、補助シート8が溶着されている。溶着部8wの幅寸法Dは、およそ2ミリメートルである。ただし、溶着部8wの幅寸法Dは、2ミリメートルに限定されるものではない。補助シート8の幅方向Wの端部8eにより、空気袋3の空気室AC内面に段差形状(段差部10)が形成される。段差部10は、装着時に、空気袋3の折り返し箇所において空気の流路を確保する機能を有する。補助シート8の厚さ(Tとする。
図3B参照。)は、その素材により適宜決定されてよいが、例えば、補助シート8がポリ塩化ビニル(PVC)で構成される場合、その厚さは約0.4ミリメートルでよい。このとき、空気袋3もまた、2枚の0.4ミリ厚のポリ塩化ビニル製シート部材で構成してよい。つまり、空気袋3本体を構成する2枚の主シート部材3A,3Bと補助シート8は、実質同一の肉厚を有するシート部材でよい。また、本例は、1枚の補助シート8を主シート部材の一方3Aの空気室AC内面に溶着した例を示している。しかしながら、2枚の補助シート8を、2枚の主シート部材3A,3Bの空気室AC内面の対向する位置に溶着してもよい。あるいは、2枚の補助シート8を、2枚の主シート部材3A,3Bの空気室AC内面の対向しない位置に溶着してもよい。
【0035】
最後に、
図2Cを参照すれば、空気袋3が2枚のシート(主シート部材3A,3B)を、その周縁部3pにおいて溶着することにより形成されていることがわかる。空気袋3の一方の主シート部材3Aには、給排気口であるニップル9が溶着により取り付けられている。
【0036】
図3A、および、
図3Bはそれぞれ、補助シート8の平面図および斜視図である。補助シート8は、実質的に短冊形状であって、その中央部に開口部11を備えている。開口部11は、空気袋3の空気室AC内面に、その幅方向Wに関して形成される段差部10の数(幅方向Wに関する端部8eの数)を多くするために設けられている。開口部11を設けることにより、補助シート8の点数を増やすことなしに段差部10の数(幅方向Wに関する端部8eの数)を多くすることが可能である。ただし、開口部11は、本発明にとって必須の構成ではない。
【0037】
このように、本実施形態による圧迫帯1は、空気袋3の空気室AC内面の、血圧測定適合範囲に含まれる周長の被測定部位に装着したときにリング部材4によって折り返される箇所に、幅方向Wに関して(リング部材4の長手方向に関して)段差が形成されるように、補助シート8が配置されている。そうすることで、装着時にリング部材4によって折り返された箇所における空気袋3内の空気流路が確保される。これにより、被測定部位に圧迫帯1を巻き回して固定した状態で空気袋3に空気を供給したとき、空気供給口(ニップル9)に関して折り返し箇所よりも遠い部分を含めて空気袋3の空気室ACを空気で満たすことができる。そのため、本実施形態による圧迫帯1では、被測定部位の周長が異なることに起因して空気袋3の空気容量が変動することがなく(または、少なくとも空気容量の変動が抑制され)、あらゆる周長の被測定部位において血圧測定を迅速かつ正確に行うことが可能になる。
【0038】
次に、
図4を参照し、第1実施形態による空気袋3を製造する方法について説明する。
図4は、空気袋3の製造工程を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS1において、空気袋3の空気室ACの内面に段差を形成するための補助シート8を、空気袋3を構成する2枚の主シート部材の一方(上の例では3A)と位置合わせする。
【0040】
ステップS2において、補助シート8を主シート部材の一方3Aと溶着により接合する。これにより、空気袋3の空気室AC内面に、1枚の短冊形状の補助シート8(の端部8e)を用いて極めて簡便に段差形状(段差部10)を形成することができる。
【0041】
最後に、ステップS3において、空気袋3を構成する2枚の主シート部材3A,3B同士をその周縁部3pにおいて溶着することにより、空気袋3を形成する。なお、空気袋3は、1枚の主シート部材を折り返して対応する周縁部を溶着して製造してもよい。
【0042】
このようにして形成された空気袋3は、別途製造され一端部が開放された状態の外装袋2に挿設される。その後、外装袋2の当該一端部は、縫製等により綴じられればよい。
【0043】
これにより、本実施形態による圧迫帯1が製造される。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による圧迫帯について詳細に説明する。なお、外装袋2の構成、外装袋2と空気袋3との相対的な位置関係は、第1実施形態のそれと同様でよいため、説明を省略する。
【0045】
第2実施形態による圧迫帯では、その空気袋の空気室の内面に配置される補助シートの配置位置が第1実施形態における補助シート8の配置位置と異なる。本実施形態では、補助シートは、空気袋の周方向に沿った周縁部に配置される。例えば、補助シートは、空気袋を構成する主シート部材の周縁部の溶着箇所に配置される。すなわち、主シート部材の周縁部は、補助シートを介在して溶着される。
【0046】
図5A、
図5B、
図5Cは、第2実施形態による空気袋13を示す図である。
図5Aは、空気袋13の平面図である。
図5Bは、空気袋13の、
図5Aにおける線A−A’に沿った断面図である。
図5Cは、空気袋13の立面図である。なお、
図5A、および、
図5Bにおいても、斜線部は、溶着箇所を示すものとする。
【0047】
第1実施形態による空気袋3と同様、空気袋13においても、その空気室AC内面に実質的に短冊形状を有する補助シート18Aおよび18Bが配置されている。
【0048】
図5Bを参照すれば、補助シート18A,18Aは、空気袋13を構成する2枚の主シート部材13A,13Bの幅方向Wに関する一方の周縁部13pにおいて主シート部材13A,13Bと溶着される。同様、補助シート18B,18Bは、空気袋13を構成する2枚の主シート部材13A,13Bの幅方向Wに関する他方の周縁部13pにおいて主シート部材13A,13Bと溶着される。また、補助シート18Aおよび18Bは、空気袋13の周縁部13pよりも中央寄りの部分18wにおいて、空気袋13と溶着されている。なお、周縁部13pよりも中央寄りの部分18wにおける溶着は、必須ではない。溶着部13p,18wの幅寸法Dは、およそ2ミリメートルである。ただし、溶着部13p,18wの幅寸法Dは、2ミリメートルに限定されるものではない。空気袋13の空気室AC内面には、補助シート18A,18Bの端部18eにより、段差部20が形成される。この段差部20は、リング部材4で折り返されたときに、空気袋13の折り返し箇所において空気の流路を確保する機能を有する。補助シート8の厚さは、その素材により適宜決定されてよいが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)で構成される場合、約0.4ミリメートルである。このとき、空気袋13もまた、2枚の0.4ミリ厚のポリ塩化ビニル製シート部材で構成してよい。つまり、空気袋13本体を構成する2枚の主シート部材13A,18Bと、補助シート18A,18Bは、実質同一の肉厚を有するシート部材でよい。また、本例では、各2枚の補助シート18A,18Aおよび18B,18Bを主シート部材13A,13Bの2つの周縁部13pにおいて溶着した例を示している。しかしながら、各1枚の補助シート18A,18Bを主シート部材13A,13Bの幅方向Wに関して対向する2つの周縁部13pにおいて溶着してもよい。あるいは、主シート部材13A,13Bの1つの周縁部13pにおいて、2枚または1枚の補助シートを、2枚または1枚の主シート部材の空気室AC内面に溶着してもよい。
【0049】
最後に、
図5Cを参照すれば、第1実施形態の空気袋3と同様、空気袋13も2枚のシート部材(主シート部材13A,13B)を、その周縁部13pにおいて溶着することにより形成されていることがわかる。空気袋13の一方の主シート部材13Aには、給排気口であるニップル9が溶着により取り付けられている。
【0050】
図6A、および、
図6Bはそれぞれ、補助シート18A,18Bの平面図および斜視図である。補助シート18A,18Bは、実質的に短冊形状であって、空気袋13の周方向Cに沿った湾曲に適合するように、所定の曲率で湾曲した形状を有する。なお、補助シート18Aおよび/または18Bにおいても、第1実施形態による補助シート8の開口部11のような、開口部を備えてもよい。
【0051】
このように、本実施形態による圧迫帯1は、空気袋13の空気室AC内面の、血圧測定適合範囲に含まれる周長の被測定部位に装着したときにリング部材4によって折り返される箇所に、幅方向Wに関して(リング部材4の長手方向に関して)段差が形成されるように、補助シート18A,18Bが配置されている。そうすることで、装着時にリング部材4によって折り返された箇所における空気袋13内の空気流路が確保される。これにより、被測定部位に圧迫帯を巻き回して固定した状態で空気袋13に空気を供給したとき、空気供給口(ニップル9)に関して折り返し箇所よりも遠い部分を含めて空気袋13内を空気で満たすことができる。そのため、本実施形態による圧迫帯1では、被測定部位の周長が異なることに起因して空気袋13の空気容量が変動することがなく(または、少なくとも空気容量の変動が抑制され)、あらゆる周長の被測定部位において血圧測定を迅速かつ正確に行うことが可能になる。
【0052】
上記に加え、本実施形態による空気袋13は、その周縁部において補助シート18Aまたは18Bを介在させて2枚の主シート部材13A,13Bを溶着することにより形成されている。このため、空気袋13の周縁部13pは、単に2枚の主シート部材13A,13Bを溶着して形成する場合に比較して、より厚い肉厚を有するようになっており、空気袋13の周縁部13pの強度も図られている。
【0053】
次に、
図7を参照し、第2実施形態による空気袋13を製造する方法について説明する。
図7は、空気袋13の製造工程を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS11において、空気袋13の空気室ACの内面に段差部20を形成するための補助シート18Aおよび18Bの2組を、空気袋13を構成する2枚の主シート部材13A,13Bそれぞれと位置合わせする。
【0055】
ステップS12において、補助シート18A,18Bの各組を主シート部材13A,13Bのそれぞれと、主シート部材周縁部13pよりも中央寄りの箇所18wで溶着する。
【0056】
最後に、ステップS13において、空気袋13を構成する2枚の主シート部材13A,13B同士を、補助シート18A,18Aおよび18B,18Bを介在させた状態で、その周縁部13pにおいて溶着することにより、空気袋13を形成する。なお、空気袋13は、1枚の主シート部材を折り返し、折り返したときに対応する周縁部を溶着して製造してもよい。いずれの場合においても、空気袋13の空気室AC内面に、短冊形状の補助シート18Aおよび18Bを用いて極めて簡便に段差形状を形成することができ、同時に、空気袋13の周縁部13pの強度の向上も図ることが可能である。
【0057】
このようにして形成された空気袋13は、別途製造され一端部が開放された状態の外装袋2に挿設される。その後、外装袋2の当該一端部は、縫製等により綴じられればよい。
【0058】
これにより、本実施形態による圧迫帯が製造される。
【0059】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態による圧迫帯1sを示している。本圧迫帯1sは、周方向Cにそって直線的な形状を有する点を除き、上記した実施形態と同様の構成、作用を有する。上記実施形態においては、圧迫帯1は、被測定部位としてヒトの上腕部を想定し、上腕部の形状に適合するように周方向Cに沿って湾曲した形状を有している。しかしながら、本発明の実施形態による圧迫帯が適用される被測定部位は、ヒトの上腕部に限定されない。
図8に示す圧迫帯1sのように、本発明の実施形態による圧迫帯の形状は、周方向Cに沿って湾曲した形状に限定されずに、例えば周方向Cに沿って直線的な形状を有してもよい。また、本発明の実施形態による圧迫帯の形状は、上記した湾曲形状、直線形状に限定されず、さまざまな形状を有することも可能である。
【0060】
(第4実施形態)
最後に、本発明の第4実施形態による圧迫帯1siについて、
図9A、
図9B、
図9C、
図9D、および、
図10を用いて、説明する。
【0061】
図9Aは、圧迫帯1siの上方平面図であり、
図9Bは、同圧迫帯1siの下方平面図である。両図に示されるように、本圧迫帯1siは、第3実施形態による圧迫帯1sのように周方向Cに沿って直線的な形状を有する。ただし、本実施形態による圧迫帯1siは、第1および第2実施形態のように、周方向Cに沿って湾曲した形状を有してもよい。また、以下において特に説明しない圧迫帯1siの構成および機能上の特徴は、第1〜第3の実施形態のいずれかと同様でよい。
【0062】
図9Aを参照すれば、本実施形態による圧迫帯1siは、外装袋2siと、空気袋23(溶着部w(2sip)と、溶着部w(23p)とで取り囲まれた矩形領域)とが、一体的に形成される点に特徴を有する。より具体的には、空気袋23を構成する一対の主シート部材23A,23B(
図9C)が、外装袋2siを構成する外側部材2A(
図9C)および内側部材2B(
図9C)にラミネート加工によって接合され、そのようにして形成されたラミネート加工後の外側部材(2Aと23A)と内側部材(2Bと23B)とが、主シート部材23A,23B側同士で溶着されることにより接合される。図中においては、溶着部wは斜線を付することにより示されている。そうすることで、空気室AC(
図9C)を備えた空気袋23を内包した圧迫帯1siが形成されている。
【0063】
外装袋2siには、周方向Cの一端部の近傍に面ファスナ(フック)5が配されている。また、外装袋2siの外側部材2A(
図9C)の表面は、装着時に当該ファスナ5と係合可能な面ファスナ(ループ)で形成されている。つまり、面ファスナ(フック)5は、面ファスナ(ループ)2A上に、縫合部swにて縫製により固定されている。
【0064】
図9Bは、圧迫帯1siの下方平面図である。本図は、圧迫帯1siを外装袋2siの内側部材2B側から見た平面図である。内側部材2Bは、ポリエステル、ナイロンといった、面状の布素材で形成されている。
【0065】
図9Cは、
図9Aの線A−A’に沿った圧迫帯1siの断面図である。同図を参照すれば、補助シート18Asは、空気袋23を構成する2枚の主シート部材23A,23Bの幅方向Wに関する一方の周縁部23p(2sip)において主シート部材23A,23Bと溶着されている。同様に、補助シート18Bsは、空気袋23を構成する主シート部材23A,23Bの幅方向Wに関する他方の周縁部23p(2sip)において主シート部材23A,23Bと溶着されている。なお、補助シート18As,18Bsは、周縁部23p(2sip)よりも中央寄りの部分において空気袋23と溶着されていてもよい。このようにして、補助シート18As,18Bsの端部18eにより、段差部20が形成されている。
【0066】
周縁部23p(
2sip)における溶着の幅寸法は、先の実施形態と同様、およそ2ミリメートルでよい。空気袋23の主シート部材23A,23B、補助シート18As,18Bsは、先の実施形態と同様、厚さおよそ0.4ミリメートルのポリ塩化ビニルでよい。
【0067】
本例では、各1枚の補助シート18Asおよび18Bsを主シート部材23A,23Bの2つの周縁部23p(2sip)において溶着した例を示している。しかしながら、各2枚の補助シート18As,18Asならびに18Bs,18Bsを主シート部材23A,23Bの幅方向Wに関して対向する2つの周縁部23p(2sip)において溶着してもよい。あるいは、主シート部材23A,23Bの1つの周縁部23p(2sip)において、2枚または1枚の補助シートを、2枚または1枚の主シート部材の空気室AC内面に溶着してもよい。また、第1実施形態のように、2枚または1枚の補助シートを、幅方向Wに関して中央部分において主シート部材23Aおよび/または23Bに溶着することにより段差部を形成してもよい。また、補助シートは、補助シート8のように中央に開口部を備えてもよい。
【0068】
最後に、
図9Dを参照すれば、圧迫帯1siは、ラミネート加工後の外側部材(2Aと23A)と内側部材(2Bと23B)とが、主シート部材23A,23B側同士で、補助シート18Bs(および18As)を介して溶着されることにより接合されて形成されていることがわかる。外装袋2siの周方向Cに沿った一端部の近傍には、実質長円形状のリング部材4が取り付けられている。リング部材4は、同部材4を外装袋2siの一端部2zに挿通してから当該一端部2zを折り返し、折り返された一端部2zと、それと対向する外装袋2siの部分とを縫合部swにて縫製することにより、取り付けられている。
【0069】
次に、
図10を参照し、第4実施形態による圧迫帯1siを製造する方法について説明する。
図10は、圧迫帯1siの製造工程を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS21において、外装袋の外側部材(面ファスナ(ループ))と空気袋の一方の主シート部材がラミネート加工により接合される。
【0071】
ステップS22において、外装袋の内側部材(面状布素材)と空気袋の他方の主シート部材がラミネート加工により接合される。なお、ステップS21とステップS22とを実施する順序は問わない。
【0072】
ステップS23において、補助シートが主シートに対して位置合わせされる。具体的には、補助シートは、主シートの周縁部(
図9A、
図9B、
図9C等参照)に位置合わせされる。
【0073】
ステップS24において、補助シートを介在させた状態で、空気袋の2枚の主シート部材同士が予め定められた箇所において溶着される。具体的には、圧迫帯1siの外装袋2siの周縁部2sipおよび空気袋23の周縁部23pにおいて(
図9A、
図9B等参照。)、溶着される。
【0074】
最後に、ステップS25において、面フック(ループ)5およびリング部材4が、上述のように縫製等により外装袋2siに取り付けられる。
【0075】
これにより、本実施形態による圧迫帯1siが製造される。
【0076】
なお、上記のいずれの実施形態においても、圧迫帯1の外装袋2の内側部材は、外側部材よりも伸縮性に富む素材で構成されてよい。そうすることで、被測定部位に装着された状態で、給排気口(ニップル9)に関してリング部材4により折り返された箇所よりも遠くにある部分において圧迫帯1が外側へ膨張することが容易となり、当該部分への空気の供給量が多くなる。また、外装袋2の内側部材外側部材が内側部材よりも伸縮性に乏しい素材で構成されることにより、被測定部位と当接する部分において、圧迫帯1が外側へ膨張することが抑止され、圧迫帯1が、被測定部位をより効率的に圧迫することができる。
【0077】
最大周長および最小周長は、適宜選択されてよい。例えば、日本においては、最大周長は、36センチメートル、最小周長は、17センチメートルに設定されてよい。また例えば、諸外国においては、最大周長は、42センチメートル、最小周長は、22センチメートルに設定されてよい。