特許第6031867号(P6031867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031867
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/24 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   F16H9/24
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-162243(P2012-162243)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-20516(P2014-20516A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】山本 育生
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−247289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のプーリと、前記1対のプーリに巻き掛けられた動力伝達チェーンと、前記1対のプーリおよび前記動力伝達チェーンの少なくとも一部を収容するハウジングとを備え、
前記動力伝達チェーンは、複数のリンクと、前記複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、
前記第1ピンおよび前記第2ピンの少なくとも一方のピンが前記各プーリの1対のシーブ面間に挟持されるようになされており、
前記各プーリの外径側端部各々に、当該外径側端部における前記シーブ面よりも前記シーブ面間の内側にせり出して配置されている、前記プーリにおける外径側端部への前記動力伝達チェーンの移動を規制する規制部が設けられている動力伝達装置。
【請求項2】
前記規制部が、弾性体で形成されている請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力伝達装置、さらに詳しくは、自動車等の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)に好適な動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の無段変速機などの動力伝達装置として、1対の円錐面状シーブ面をそれぞれ有するプライマリプーリおよびセカンダリプーリと、両プーリに巻き掛けられた動力伝達チェーンとを備えているものがある。
【0003】
動力伝達チェーンとして、複数のリンクと、これらのリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備えているものが知られている(特許文献1)。このような動力伝達チェーンを備えている動力伝達装置では、第1ピンがプーリの1対のシーブ面間に挟持され、第1ピンの両端面と各シーブ面との間の力により、動力伝達チェーンとプーリとの間で動力が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−69411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の動力伝達装置によると、動力伝達チェーンが破断した場合、破断した動力伝達チェーンがプーリの外径側に移動してハウジングに勢いよく接触する恐れがある。この場合に、破断した動力伝達チェーンが、ハウジングを突き破る、または、プーリとハウジングとの間に挟まれて、プーリの回転を阻害(ロック)する恐れがある。
【0006】
この発明の目的は、破断した動力伝達チェーンがハウジングに勢いよく接触することを抑え、これによって、ハウジングが突き破られること、または、プーリの回転がロックされることを抑える点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による動力伝達装置は、1対のプーリと、前記1対のプーリに巻き掛けられた動力伝達チェーンと、前記1対のプーリおよび前記動力伝達チェーンの少なくとも一部を収容するハウジングとを備え、前記動力伝達チェーンは、複数のリンクと、前記複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、前記第1ピンおよび前記第2ピンの少なくとも一方のピンが前記各プーリの1対のシーブ面間に挟持されるようになされており、前記各プーリの外径側端部各々に、当該外径側端部における前記シーブ面よりも前記シーブ面間の内側にせり出して配置されている、前記プーリにおける外径側端部への前記動力伝達チェーンの移動を規制する規制部が設けられているものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の動力伝達装置によると、破断した動力伝達チェーンがハウジングに勢いよく接触することを抑え、これによって、ハウジングが突き破られること、または、プーリの回転がロックされることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明による動力伝達装置の第1実施形態を示す側面図である。
図2図2は、図1の正面図である。
図3図3は、動力伝達装置で使用される動力伝達チェーンの1実施形態の一部を示す平面図である。
図4図4は、リンクおよびピンの拡大側面図である。
図5図5は、この発明による動力伝達装置の第2実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1から図4までは、この発明による動力伝達装置の第1実施形態を示している。
【0012】
図1および図2に示すように、動力伝達装置(1)は、1対のプーリ(2)と、両プーリ(2)に巻き掛けられた動力伝達チェーン(3)と、1対のプーリ(2)および動力伝達チェーン(3)の少なくとも一部を収容するハウジング(4)とを備えている。
【0013】
図2に示すように、各プーリ(2)は、プーリ軸(2e)に固定された固定シーブ(2a)と、プーリ軸(2e)上に軸方向移動可能に支持された可動シーブ(2b)とを備えている。固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)は、それぞれ相対向する円錐面状のシーブ面(2c)(2d)を有している。
【0014】
動力伝達チェーン(3)は、図3および図4に詳しく示すように、複数のリンク(11)と、複数のリンク(11)同士を屈曲可能に連結する複数の第1ピン(14)および複数の第2ピン(15)とを備えている。
【0015】
リンク(11)は、チェーン進行方向前側に位置する前貫通孔(12)と、チェーン進行方向後側に位置する後貫通孔(13)とを有している。
【0016】
図4に示すように、前貫通孔(12)は、後側の第1ピン挿通部(16)および前側の第2ピン挿通部(17)からなる。第1ピン挿通部(16)に、第1ピン(14)が移動可能に嵌め合わせられている。第2ピン挿通部(17)に第2ピン(15)が固定されている。
【0017】
後貫通孔(13)は、後側の第1ピン挿通部(18)および前側の第2ピン挿通部(19)からなる。第1ピン挿通部(18)に、第1ピン(14)が固定されている。第2ピン挿通部(19)に、第2ピン(15)が移動可能に嵌め合わせられている。
【0018】
進行方向後側の一方のリンク(11)の前貫通孔(12)と進行方向前側の他方のリンク(11)の後貫通孔(13)とが対応するようにリンク(11)同士が重ねられている。各第1ピン(14)および各第2ピン(15)は、チェーン幅方向に重なり合う複数の前貫通孔(12)および後貫通孔(13)に嵌め合わされている。
【0019】
第1ピン(14)と第2ピン(15)とが相対的に転がり接触移動することにより、リンク(11)同士の屈曲が可能とされている。第1ピン(14)を基準とした第1ピン(14)と第2ピン(15)との接触位置の軌跡は、円のインボリュートとされている。この実施形態では、第1ピン(14)の転がり接触面(14a)が、インボリュート曲線とされ、第2ピン(15)の転がり接触面(15a)が平坦面(断面形状が直線)とされている。
【0020】
図4において、位置A、Bは、チェーン(3)の直線部分において第1ピン(14)と第2ピン(15)とが接触している線(断面では点)であり、AB間の距離がピッチである。
【0021】
プーリ(2)は、機械構造用合金鋼製、浸炭用鋼製などとされる。リンク(11)は、例えば、ばね鋼や炭素工具鋼製とされる。リンク(11)の材質は、ばね鋼や炭素工具鋼に限られるものではなく、軸受鋼などの他の鋼でももちろんよい。リンク(11)は、前後挿通部(12)(13)がそれぞれ独立の貫通孔(柱有りリンク)とされていてもよく、前後挿通部(12)(13)が1つの貫通孔(柱無しリンク)とされていてもよい。第1ピン(14)および第2ピン(15)の材質としては、軸受鋼などの適宜な鋼が使用される。
【0022】
第1ピン(14)の両端面は、プーリ(2)の相対向する1対のシーブ面(2c)(2d)間に挟持され、第1ピン(14)の両端面と各シーブ面(2c)(2d)との間の力により、動力伝達チェーン(3)とプーリ(2)との間で動力が伝達される。可動シーブ(2b)は、油圧アクチュエータ(図示略)によって、固定シーブ(2a)側に押圧されており、これにより、動力伝達チェーン(3)をクランプするためのクランプ力がプーリ(2)に与えられる。
【0023】
プーリ(2)のシーブ面(2c)(2d)の傾斜角度は、通常、11°とされる。これに対応して、動力伝達チェーン(3)の両側面(第1ピン(14)の両端面)も傾斜角度が11°となるように形成される。
【0024】
図2において、プーリ(2)の可動シーブ(2b)を固定シーブ(2a)に対して接近または離隔させると、プーリ(2)における動力伝達チェーン(3)の巻き掛け径は、接近時には大きく、離隔時には小さくなる。
【0025】
1対のプーリ(2)のうち図2に示されていない方のプーリでは、その固定シーブが図示した固定シーブ(2a)とは、動力伝達チェーン(3)を間にして、軸方向反対側に配置されている。そして、その可動シーブが図示したプーリ(2)の可動シーブ(2b)とは逆向きに移動する。これにより、動力伝達装置(1)の変速比が無段階に変化する。
【0026】
図2に示すように、プーリ(2)の固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)の外径側端部(2f)(2g)は、垂直面とされている。各シーブ(2a)(2b)の外径側端部(2f)(2g)に、環状のゴム製の規制部材(21)(22)が設けられている。規制部材(21)(22)は、断面が方形とされて、加硫接着により固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)に一体化されている。規制部材(21)(22)は、外径側端部におけるシーブ面(2c)(2d)よりも内側にせり出して配置されている。
【0027】
固定シーブ(2a)と可動シーブ(2b)とが最も接近した状態において、固定シーブ(2a)に設けられた規制部材(21)と可動シーブ(2b)に設けられた規制部材(22)との内法は、第1ピン(14)の長さよりも、若干小さくなされている。したがって、この状態において、図1に実線で示す位置から動力伝達チェーン(3)が二点鎖線で示す図の上方(プーリ(2)の径方向外方)に移動しようとすると、第1ピン(14)の両端面と各規制部材(21)(22)とは、接触することで摩擦力を及ぼし合う。
【0028】
第1実施形態の動力伝達装置(1)によると、破断した動力伝達チェーン(3)がプーリ(2)の外径方向に移動する場合、動力伝達チェーン(3)は、各規制部材(21)(22)に接触して摩擦力を受けるので、移動方向の力が低減する。つまり、破断した動力伝達チェーンのプーリ外径方向への移動を各規制部材(21)(22)が規制する。したがって、動力伝達チェーン(3)がハウジング(4)に衝突する際のエネルギーを低減できる。つまり、動力伝達チェーン(3)が勢いよくハウジング(4)に接触することを抑えられる。よって、破断した動力伝達チェーン(3)が、ハウジング(4)を突き破ること、または、ハウジング(4)とプーリ(2)との間に挟まれて、プーリ(2)が回転できなくなる可能性が減少する。
【0029】
図5は、この発明による動力伝達装置の第2実施形態を示している。
【0030】
図5において、プーリ(2)の固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)の外径側端部(2f)(2g)の垂直面に、環状の凹所(23)(24)が形成されており、各凹所(23)(24)に、規制部材としてのOリング(25)(26)がそれぞれ嵌め入れられている。Oリング(25)(26)は、断面が円形でゴム製とされている。Oリング(25)(26)は、外径側端部におけるシーブ面(2C)(2D)よりも内側にせり出して配置されている。
【0031】
固定シーブ(2a)と可動シーブ(2b)とが最も接近した状態において、一方のOリング(25)と他方のOリング(26)との内法は、第1ピン(14)の長さよりも、若干小さくなされている。したがって、この状態において、図5に実線で示す位置から動力伝達チェーン(3)が二点鎖線で示す図の上方(プーリ(2)の径方向外方)に移動しようとすると、第1ピン(14)の両端面と各Oリング(25)(26)とは、接触することで摩擦力を及ぼし合う。
【0032】
第2実施形態の動力伝達装置(1)によると、破断した動力伝達チェーン(3)がプーリ(2)から外れる場合、動力伝達チェーン(3)は、各Oリング(25)(26)と接触して摩擦力を受けるので、移動方向の力が低減する。したがって、動力伝達チェーン(3)がハウジング(4)に衝突する際のエネルギーを低減できる。つまり、動力伝達チェーン(3)が勢いよくハウジング(4)に接触することを抑えられる。よって、破断した動力伝達チェーン(3)が、ハウジング(4)を突き破ること、または、ハウジング(4)とプーリ(2)との間に挟まれて、プーリ(2)が回転できなくなる可能性が減少する。
【0033】
上記の各実施形態において、規制部材(21)(22)(25)(26)は、第1ピン(14)に比べて、軟らかい材質で形成されていればよく、ゴム製以外に、合成樹脂などの弾性体、金属(例えばアルミニウムなど)でもよい。また、規制部材(21)(22)(25)(26)の形状は、上記実施形態のものに限定されず、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0034】
(1):動力伝達装置、(2):プーリ、(2a):固定シーブ、(2b):可動シーブ、(2c)(2d):シーブ面、(3):動力伝達チェーン、(11):リンク、(14):第1ピン、(15):第2ピン、(21)(22):規制部材(規制部)、(25)(26):Oリング(規制部)
図1
図2
図3
図4
図5