(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031887
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】断熱容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/28 20060101AFI20161114BHJP
B65D 3/22 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
B65D3/28 Z
B65D3/22 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-178489(P2012-178489)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-34426(P2014-34426A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】辻本 隆亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 久貴
(72)【発明者】
【氏名】川浪 千佳子
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−201873(JP,A)
【文献】
英国特許第02471252(GB,B)
【文献】
特開2010−126209(JP,A)
【文献】
特開2003−182721(JP,A)
【文献】
特開2009−126536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/00− 3/30
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、当該容器本体の外周を被覆する外装スリーブとを備える胴部二重構造の断熱容器であって、
前記外装スリーブが、円周方向を周回し、前記外装スリーブの一部を分離する分離手段を備えており、
前記容器本体が、その胴部に、前記容器本体の中心軸を通る垂直平面が交わる線上に延びる縦罫線と、前記縦罫線の下端から両側斜め下方に延びる一対の斜め罫線と、前記縦罫線の下端から前記胴部の円周方向に延びる横罫線とを備えており、
前記分離手段が、
前記分離手段により前記外装スリーブの胴部の下側が分離除去し、且つ、前記縦罫線、前記斜め罫線および前記横罫線により前記容器本体を折り畳んだ状態で、
前記容器本体の底部を前記容器本体外面と前記容器本体に残った前記外装スリーブの胴部の上側との間に挿入可能とする位置に設けられたことを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記分離手段は、平行に延びる上下一対のミシン目からなることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記分離手段の上下一対のミシン目の両端部が、ハーフカット状の切れ目であることを特徴とする請求項2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記容器本体の上縁外側面と前記外装スリーブの上縁内側面とを接着する円周方向接着領域が設けられ、
前記分離手段が、前記外装スリーブの高さ方向中央と前記円周方向接着領域の下端との間に設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の断熱容器。
【請求項5】
前記分離手段に、前記分離手段の把持が可能な摘みが設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の断熱容器。
【請求項6】
前記摘みが、前記胴部の両端部を貼り合わせる縦方向接着剤塗布領域の近傍に設けられたことを特徴とする請求項5に記載の断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱湯を注いで調理するインスタント食品などに使用される断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、カップ状容器本体の胴部に紙製外装スリーブを一体的に取り付けた形状の断熱容器が記載されている。
【0003】
しかし、この断熱容器では、お湯を入れても容器外面に熱が伝わらず安全に持てるように頑丈にできているため、破棄する際に、折り畳んで体積を小さくすることが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−130157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、使用後に折り畳んで体積を小さくできる廃棄性に優れた断熱容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る断熱容器は、
容器本体と、当該容器本体の外周を被覆する外装スリーブとを備える胴部二重構造の断熱容器
であって、
前記外装スリーブ
が、円周方向
を周回
し、前記外装スリーブの一部を分離する分離手段
を備えており、
前記容器本体が、その胴部に、前記容器本体の中心軸を通る垂直平面が交わる線上に延びる縦罫線と、前記縦罫線の下端から両側斜め下方に延びる一対の斜め罫線と、前記縦罫線の下端から前記胴部の円周方向に延びる横罫線とを備えており、
前記分離手段が、
前記分離手段により前記外装スリーブの胴部の下側が分離除去し、且つ、前記縦罫線、前記斜め罫線および前記横罫線により前記容器本体を折り畳んだ状態で、
前記容器本体の底部を前記容器本体外面と前記容器本体に残った前記外装スリーブの胴部の上側との間に挿入可能とする位置に設けられたものである。
【0007】
分離手段により外装スリーブを分離することで、分離された下側の外装スリーブを容器本体の胴部から取り外すことができる。これにより、断熱容器が一重構造になり、胴部を押圧して折り畳みやすくなる。従って、断熱容器を使用後、破棄する際に、胴部を折り畳んで体積を小さくし、廃棄性を向上できる。
また、縦罫線、斜め罫線、横形成とを設けた構成により、断熱容器を使用後に、各罫線に沿って折り畳みやすくなる。このため、断熱容器の体積を小さくし、廃棄性を向上できる。
容器本体を折り畳んだ状態で、容器本体の底部を容器本体外面と容器本体に残った上側外装スリーブとの間に挿入できる構成により、容器本体を折り畳んだ状態を確実に維持できる。
【0008】
前記分離手段は、平行に延びる上下一対のミシン目からなることが好ましい。
これにより、ミシン目を介して確実に外装スリーブを分離できる。
【0009】
前記分離手段の上下一対のミシン目の両端部が、ハーフカット状の切れ目であることが好ましい。ここで、ハーフカット状の切れ目とは、外装スリーブを厚さ方向に貫通せず、外装スリーブの厚さ寸法の範囲内で切り込まれた切れ目のことである。
これにより、外装スリーブを筒状に形成する際に、胴部がミシン目の両端部で切断されるのを防止することができる。
【0010】
前記容器本体の上縁外側面と前記外装スリーブの上縁内側面とを接着する円周方向接着領域を設け、
前記分離手段が、前記外装スリーブの高さ方向中央と前記円周方向接着領域の下端との間に設けられたことが好ましい。
【0011】
上記構成により、分離手段を外装スリーブの下側に設けた場合に生じる、製造段階の分離手段における座屈を防止できる。
【0012】
前記分離手段に、前記分離手段の把持が可能な摘みを設けたことが好ましい。
これにより、摘みを把持して分離手段を引っ張り、外装スリーブを確実に分離できる。
【0013】
前記摘みが、前記胴部の両端部を貼り合わせる縦方向接着剤塗布領域の近傍に設けられたことが好ましい。
これにより、摘みを把持して分離手段を周方向に引っ張り、容易に外装スリーブを分離できる。
【発明の効果】
【0018】
分離手段により分離された下側の外装スリーブを容器本体の胴部から取り外すことができる。このため、容器本体の胴部を押圧して折り畳みやすくなる。従って、断熱容器を使用後、破棄する際に、胴部を折り畳んで体積を小さくし、廃棄性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】
図1の断熱容器の外装スリーブを示す斜視図。
【
図8】
図1の断熱容器において分離片を摘んで引っ張り外装スリーブから切り離している状態を示す斜視図。
【
図9】分離片により外装スリーブを上側外装スリーブと下側外装スリーブとに分離した状態を示す斜視図。
【
図10】断熱容器から下側外装スリーブを取り外した状態を示す斜視図。
【
図11】
図10の断熱容器を縦罫線に沿って折り畳み、横罫線に沿って上方に折り曲げた状態を示す斜視図。
【
図12】
図11の断熱容器を更に横罫線に沿って上方に折り曲げた状態を示す斜視図。
【
図13】上方に折り曲げた断熱容器の底部を上側外装スリーブに引っ掛けた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って、説明する。
【0021】
図1および
図2に示すように、断熱容器1は、カップ状の容器本体11と、容器本体11の胴部12の外周面を覆う外装スリーブ21とを備え、断熱容器1を二重構造にしている。容器本体11と外装スリーブ21とは紙製であるがこれに限定されず、例えばプラスチックを素材としてもよい。
【0022】
図3に示すように、容器本体11は上端が開口した逆円錐台形状であり、円筒形の胴部12と、胴部12の下端を閉塞する円形の底部13と備えている。胴部12の上縁には、半径方向外側に向かって丸められた外向きカール部14が設けられている。胴部12は、
図4に示す扇形ブランクの両端部を貼り合わせることにより形成される。また、胴部12の外側面には、容器本体11の中心軸を通る垂直平面が交わる線上に一対の縦罫線16,16が対向して設けられている。縦罫線16,16の下端から、容器本体11の円周方向に延びる横罫線17,17が設けられている。更に、横罫線17,17と縦罫線16,16との交点である縦罫線16,16の下端からは、それぞれ2本ずつ両側斜め下方に向かって、計4本の斜め罫線
18が設けられている。この斜め罫線
18は、横罫線17およびその延長線19に対して略30度の角度(角度α)とし、従って、縦罫線16の下端から出る2本の斜め罫線
18同士は略120度(角度β)となっている。なお、本実施形態の横罫線17は縦罫線16の下端から一方向のみに延びているが、
図14に示すように、容器本体11の下部をいずれの方向からも折り畳むことができるように、横罫線17を縦罫線16の下端から両側に延びるように形成するのが好ましい。
【0023】
図5に示すように、外装スリーブ21は筒状であり、その下縁には半径方向内側に向かって丸められた内向きカール部22(
図6参照)が設けられている。外装スリーブ21は、
図7に示す扇形ブランクの一端部に設けられた縦方向接着剤塗布領域24を他端部に貼り合わせることにより形成される。縦方向接着剤塗布領域24には、接着剤などが塗布されている。外装スリーブ21の高さ方向中央には、外装スリーブ21を上下に分離する分離片(分離手段)30が設けられている。分離片30は、胴部12を円周方向に周回するように形成され、平行に延びる上下一対のミシン目31,32からなる。分離片30には、分離開始切れ目33で上下のミシン目31,32の1つを連結することで摘み34が設けられている。
【0024】
なお、本実施形態では、
図13に示すように、容器本体11の下部を折り畳んだ後、底部13の端部を容器本体11の外面と容器本体11に残った上側外装スリーブ26との間に差し込むことができる位置に、分離片30を外装スリーブ21の高さ方向中央に設けることが好ましい。しかし、これに限定されず、分離片30は、外装スリーブ21の高さ方向中央から後述する円周方向接着領域P(
図2参照)の下端までの間であればどこに設けてもよい。
【0025】
また、外装スリーブ21を筒状に形成する際に、ミシン目31,32の両端部にて切断されるのを防止するため、両端部のミシン目31,32はハーフカット状の切れ目36とするのが好ましい。ハーフカット状の切れ目36とは、扇状ブランクを厚さ方向に貫通せず、扇状ブランクの厚さ寸法の範囲内で切り込まれた切れ目のことである。
【0026】
更に、摘み34は、分離片30を周方向に周回し、容器本体11から除去しやすくするため、縦方向接着剤塗布領域24が設けられた領域の近傍、すなわち、縦方向接着剤塗布領域24の内側側端部から所定の間隔を隔てて設けられている。しかし、摘み34は、縦方向接着剤塗布領域24が設けられた領域を除いた位置であれば、上下のミシン目31,32に挟まれたどの部分に形成してもよい。
【0027】
紙カップ1を組み立てるため、まず、ブランク状の胴部12の両端部を重ね合わせて接着し、筒状にする。そして、胴部12の下端に、外周縁を折り曲げた底部13を組み付けた後、上縁に外向きカール部14を形成し容器本体11を作成する。同様に、ブランク状の外装スリーブ21の両端部を縦方向接着剤塗布領域24で重ね合わせて接着し、筒状として下端部に内向きカール部22を形成する。この後、容器本体11の外向きカール部14の下側外周面に約20mmの幅で円周方向に接着剤を塗布することで周方向接着領域Pを設け、筒状に形成した外装スリーブ21の中に容器本体11を挿入して断熱容器1を形成する。
【0028】
上述のように、内向きカール部22を形成するときには、外装スリーブ21の下部に大きな荷重が加わる。このため、外装スリーブ21の下半分に分離片30を形成すると、前記荷重で外装スリーブ21が分離片30で座屈する。この点、本実施形態では、分離片30が、外装スリーブ21の高さ方向中央と円周方向接着領域Pの下端との間に設けられているので、分離片30を外装スリーブ21の下側に設けた場合に生じる座屈を防止できる。
【0029】
外装スリーブ21の中に容器本体11を挿入した場合には、容器本体11と外装スリーブ21は上部ほど互いの間隔が接近し、最上端で互いに接触する。この上端付近の間隔が狭くなった箇所を円周方向接着領域Pで接着する。外装スリーブ21の内向きカール部22は容器本体11の下端部外側面に接触し、内向きカール部22から円周方向接着領域Pまでの間に環状の空隙が形成される。この空隙が断熱の役割を果たす。
【0030】
断熱容器1を使用後、破棄する際に、分離片30の摘み34を把持し、
図8に示すように、分離片30をミシン目31,32に沿って外装スリーブ21から切り離し、
図9に示すように、外装スリーブ21を上側外装スリーブ26と下側外装スリーブ27とに2分割する。この後、
図10に示すように、下側外装スリーブ27を容器本体11の胴部12から離脱させると、容器本体11の下側部分が露出する。これにより、断熱容器1が一重構造になり、胴部12を押圧して折り畳みやすくなる。従って、断熱容器1を使用後、破棄する際に、胴部12を折り畳んで体積を小さくし、廃棄性を向上できる。
【0031】
具体的には断熱容器1を使用後、破棄する際に、
図11に示すように容器本体11の露出部分付近を両手で把持して、断熱容器1を縦罫線16に沿って押し潰し扁平状にすると共に、
一方の斜め罫線
18に沿って押し潰す。その後、
図12に示すように、横罫線17に沿って底部13を上方に折り返すと共に、断熱容器1は更に、
他方の斜め罫線
18に沿って折り畳まれる。そして、
図13に示すように、その折り返し部分の上端を上側外装スリーブ26の内側に差し入れて、扁平状にした変形状態を維持させる。このとき、上側外装スリーブ26の下縁を、容器本体11を折り畳んで差し込める位置に設けているので、容器本体11を折り畳んだ状態を確実に維持できる。以上のように、各罫線16,17,
18を設けることで、各罫線16,17,
18に沿って容器本体11が折り畳みやすくなる。このため、断熱容器1の体積を小さくし、廃棄性を向上できる。
【符号の説明】
【0032】
1 断熱容器
11 容器本体
12 胴部
16 縦罫線
17 横罫線
18 斜め罫線
21 外装スリーブ
24 縦方向接着剤塗布領域
30 分離片(分離手段)
31 ミシン目
32 ミシン目
33 分離開始切れ目
34 摘み
36 ハーフカット状の切れ目
P 円周方向接着領域