(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、計測装置について、雪密度を計測する計測装置(雪密度センサ)を例に、詳細に説明する。
例えば、利水を目的として、積雪量を計測し雪から得られる水量を予測することは非常に有効である。雪から得られる水量の予測は、例えば、雪密度と積雪深を計測することで算出することが可能である。雪密度センサとして、対向する電極間の静電容量からその電極間の雪の比誘電率を計測し、その比誘電率を用いて雪の密度を計測するセンサが知られている。このような雪密度センサを用いることで、雪密度を経時的に計測することも可能になる。
【0012】
ところで、雪密度の変化に伴う誘電率の変化は非常に小さく、比誘電率で1.5〜4程度である。そのため、これまでの雪密度センサでは、対向する電極間の静電容量の変化が小さく、雪密度センサの回路特性が計測環境やその変化の影響を受け、計測値にばらつきが生じる可能性がある。雪密度センサは、屋外に設置されることが想定されるため、計測環境やその変化の影響を受け易い。
【0013】
尚、静電容量の変化を大きくする方法として、対向する電極の面積を大きくする、或いは、対向する電極間の距離を小さくするという方法も考えられる。しかし、電極面積を大きくした場合には、製造コストの増加や設置面積の増大を招く可能性があり、電極間距離を小さくした場合には、電極間に雪が積もらない、或いは均一に積もらないといった状況を招く可能性がある。
【0014】
また、静電容量を計測するうえでその計測環境の影響を補正する方法として、計測用の電極(計測電極)のほかに基準用の電極(基準電極)を別途用意し、基準電極の計測値を用いて計測電極の計測値を補正する方法も知られている。
【0015】
電極の出力電圧と静電容量の関係は、例えば、
図1に示すような特性曲線で表される。尚、
図1の縦軸は電極の出力電圧、横軸は静電容量を表している。特性曲線30aは、主に温度に依存して、傾斜(感度)mとオフセットnが変動する。
図1に実線で示した特性曲線30aを基準温度でのものとすると、特性曲線30aは、温度の影響により、
図1に点線で示す特性曲線30bや特性曲線30cのように変動し得る。
【0016】
そのため、上記のような計測電極と基準電極を用いる場合でも、補正は、例えばオフセットnのみではなく、傾斜mとオフセットnの2つの変動に対して行われることを要する。前述のように、雪密度の変化に伴う比誘電率の変化、静電容量の変化は小さいため、補正誤差が雪密度の計測結果に大きな影響を及ぼし得る。
【0017】
更に、雪密度センサでは、微小な誘電率を計測するため、例えば、数十cm以上の大きな電極を使用する場合がある。そのため、上記のように計測電極と基準電極の双方を用意する場合、電極の設置面積、雪密度センサの設置コストや製造コストが増大してしまう可能性がある。
【0018】
以上のような点に鑑み、ここでは、以下に実施の形態として示すような雪密度センサを用いる。
まず、第1の実施の形態について説明する。
【0019】
図2は第1の実施の形態に係る雪密度センサの構成例を示す図である。
図2に示す雪密度センサ1Aは、検知部10及び検出回路20を備える。検知部10は、一対の電極11a及び電極11b(電極対11)を含む。検出回路20は、第1参照部21及び第2参照部22(参照部20a)、スイッチ部23、検出部24、記録部25、静電容量算出部26、比誘電率算出部27、雪密度算出部28、並びに雪密度出力部29を含む。
【0020】
雪密度計測の際、検知部10は屋外に設置され、検出回路20は、例えば、防水ケースに収容される等、防水対策が施されて屋外に設置される。雪密度センサ1Aでは、このように検知部10及び検出回路20が共に、屋外に設置される。
【0021】
検知部10の電極対11の電極11a及び電極11bは、例えば、対向配置された一対の電極板とすることができる。尚、電極11a及び電極11bには、種々の配置(平面上に並設させる等)、形状(円板や角板等)を採用することができる。電極11a及び電極11bには、金属等の導電性材料を用いることができる。
【0022】
検出回路20の第1参照部21は、既知の静電容量(第1固定容量)を有する第1キャパシタ21aを含む。第2参照部22は、第1キャパシタ21aとは異なる既知の静電容量(第2固定容量)を有する第2キャパシタ22aを含む。第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aの静電容量は、例えば、1pF〜10pFの範囲に設定される。
【0023】
第1参照部21の第1キャパシタ21a及び第2参照部22の第2キャパシタ22aは、スイッチ部23と接続可能とされている。第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aと同様に、上記検知部10の電極対11も、スイッチ部23と接続可能とされている。スイッチ部23は、検出部24と接続されており、検出部24の接続先を電極対11、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aのいずれかに切り替える。
【0024】
検出部24は、電極対11、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aへの入力信号を生成する。検出部24は、生成した入力信号を、スイッチ部23によって検出部24と接続された電極対11、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aのいずれかに供給し、それによって出力される出力信号を検出する。
【0025】
即ち、スイッチ部23によって検出部24と電極対11とが接続されている場合には、検出部24は、電極対11に入力信号を供給し、電極対11の電極11aと電極11bの間の静電容量に応じた出力信号を検出する。スイッチ部23によって検出部24と第1キャパシタ21aとが接続されている場合には、検出部24は、第1キャパシタ21aに入力信号を供給し、第1キャパシタ21aからのその静電容量に応じた出力信号を検出する。スイッチ部23によって検出部24と第2キャパシタ22aとが接続されている場合には、検出部24は、第2キャパシタ22aに入力信号を供給し、第2キャパシタ22aからのその静電容量に応じた出力信号を検出する。
【0026】
検出部24は、例えば、入力信号として、電極対11、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aの各々の一方の電極(印加電極)に交流電圧を印加し、もう一方の電極(検出電極)に流れる電流値を検出してそれを電圧に変換し、出力信号として検出する。
【0027】
記録部25は、検出部24によって検出される電極対11からの出力信号、第1キャパシタ21aからの出力信号、及び第2キャパシタ22aからの出力信号をそれぞれ記録する。記録部25には、メモリ等の記憶装置が用いられる。
【0028】
静電容量算出部26は、電極対11、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aからの出力信号に基づいて、電極対11の間の静電容量を算出する。静電容量算出部26は、電極対11からの出力信号と電極対11の間の静電容量との関係について実験やシミュレーションで求められた、基準となる特性曲線(関係式)を備えている。更に、静電容量算出部26は、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aの静電容量(固定容量)の情報を備える。静電容量算出部26は、第1キャパシタ21a及び第2キャパシタ22aからの出力信号とそれらの静電容量(固定容量)に基づいて、基準の特性曲線を補正する。静電容量算出部26は、補正後の特性曲線と、検出部24で検出された電極対11からの出力信号を用いて、電極対11の間の静電容量を算出する。
【0029】
比誘電率算出部27は、静電容量算出部26によって算出された、電極対11の間の静電容量を用いて、電極対11の間に存在する計測対象の物質、ここでは雪の比誘電率を算出する。
【0030】
雪密度算出部28は、比誘電率算出部27によって算出された、電極対11の間に存在する雪の比誘電率を用いて、その雪の密度を算出する。
雪密度出力部29は、雪密度算出部28によって算出された雪密度のデータを、検出回路20の外部に出力する。雪密度出力部29は、例えば、通信コネクタとされ、雪密度センサ1A外部の他の機器(コンピュータ、記憶装置等)にデータを送信する。
【0031】
続いて、上記のような構成を有する雪密度センサ1Aの雪密度計測処理について説明する。
図3は第1の実施の形態に係る雪密度計測処理の一例を示す図である。
【0032】
雪密度の計測の際、雪密度センサ1Aは、屋外等、所定の環境に設置され、電極対11の間には計測対象である雪が存在している。
雪密度センサ1Aでは、まず、スイッチ部23により、検出部24の接続先が検知部10の電極対11に切り替えられる(ステップS1)。そして、検出部24により、所定の入力信号が電極対11に供給され、間に雪が存在する電極対11からその静電容量に応じた出力信号(出力電圧)が検出される(ステップS2)。検出された電極対11の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0033】
次いで、スイッチ部23により、検出部24の接続先が第1参照部21の第1キャパシタ21aに切り替えられる(ステップS3)。そして、検出部24により、所定の入力信号が第1キャパシタ21aに供給され、第1参照部21からその第1キャパシタ21aの静電容量に応じた出力信号(出力電圧)が検出される(ステップS4)。検出された第1参照部21の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0034】
次いで、スイッチ部23により、検出部24の接続先が第2参照部22の第2キャパシタ22aに切り替えられる(ステップS5)。そして、検出部24により、所定の入力信号が第2キャパシタ22aに供給され、第2参照部22からその第2キャパシタ22aの静電容量に応じた出力信号(出力電圧)が検出される(ステップS6)。検出された第2参照部22の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0035】
次いで、静電容量算出部26により、第1参照部21及び第2参照部22の静電容量、並びに、第1参照部21及び第2参照部22の出力電圧に基づいて、基準の特性曲線が補正される(ステップS7)。そして、補正後の特性曲線と、電極対11の出力電圧が用いられ、電極対11の間の静電容量が算出される(ステップS8)。
【0036】
ここで、基準の特性曲線の補正処理、及び補正された特性曲線を用いた静電容量の算出処理について説明する。
図4は第1の実施の形態に係る特性曲線の補正処理の説明図である。
【0037】
補正処理前の基準の特性曲線30a(関係式)は、例えば、
図4に実線で示すような関係を有する。このような基準の特性曲線30aは、実験やシミュレーションにより求められる。静電容量算出部26は、このようにして求められた基準の特性曲線30aを備えている。
【0038】
基準の特性曲線30aは、次の式(1a)で表される。
C=f(V) ・・・(1a)
式(1a)において、Cは静電容量、Vは出力電圧である。f(V)は、出力電圧Vの関数であって、雪密度センサ1Aの回路の構成等によって決定される。
【0039】
計測環境の温度変化による回路特性の変動を含めた特性曲線30bは、上記
図4に点線で示すような関係を有し、次の式(1b)のように表すことができる。
C=a×f(V)+b ・・・(1b)
式(1b)において、Cは静電容量、Vは出力電圧、aは計測環境の温度変化に対する感度補正係数、bは計測環境の温度変化に対するオフセット係数である。
【0040】
感度補正係数a及びオフセット係数bは、第1参照部21の第1キャパシタ21aからの出力電圧、及び第2参照部22の第2キャパシタ22aからの出力電圧に基づいて求められる。今、第1キャパシタ21aの既知の静電容量をCr1、第2キャパシタ22aの既知の静電容量をCr2、第1キャパシタ21aからの出力電圧をVr1、第2キャパシタ22aからの出力電圧をVr2とする。更に、基準の特性曲線30aにおける、静電容量Cr1に対応する出力電圧をVrr1、静電容量Cr2に対応する出力電圧をVrr2とする。この時、感度補正係数a及びオフセット係数bは、それぞれ次の式(2)及び式(3)により近似できる。
【0041】
a=[(Vr2−Vr1)/(Cr2−Cr1)]/[(Vrr2−Vrr1)/(Cr2−Cr1)] ・・・(2)
b=〔[Cr1−a×f(Vr1)]+{Cr2−a×f(Vr2)}〕/2 ・・・(3)
検出された出力電圧Vr1及びVr2、既知の静電容量Cr1及びCr2、並びに、基準の特性曲線30aから得られる出力電圧Vrr1及びVrr2が用いられ、式(2),(3)より、感度補正係数a及びオフセット係数bが求められる。求められた感度補正係数a及びオフセット係数bを式(1b)に適用することで、計測環境の温度変化による回路特性の変動を含めた、補正後の特性曲線30bが得られる。得られた補正後の特性曲線30b(式(1b))において、電極対11から検出された出力電圧(例えば
図4の出力電圧Ve)が代入されることで、電極対11の間の静電容量(例えば
図4の静電容量Ce)が算出される。
【0042】
静電容量算出部26では、このようにして基準の特性曲線30aが補正されて、補正後の特性曲線30bが求められ、その特性曲線30bが用いられて、電極対11の間の静電容量が算出される。
【0043】
尚、静電容量算出部26には、所定の温度条件(例えば0℃)の下で実験やシミュレーションにより求められた特性曲線を、基準の特性曲線30aとして備えるようにすることができる。このほか、静電容量算出部26には、雪密度センサ1Aが設置される環境毎に、その環境の温度を考慮した条件(例えば+10℃や−10℃)の下で求められた特性曲線を、基準の特性曲線30aとして備えるようにすることもできる。実測時の温度と、基準の特性曲線30aを求めた時の温度条件とが近いと、実測される出力電圧と静電容量の関係が基準の特性曲線30aに近くなり、より基準の特性曲線30aに近い補正後の特性曲線30bによって、静電容量を算出することができる。
【0044】
また、第1参照部21及び第2参照部22の静電容量は、基準の特性曲線30aによらず(求められた時の温度条件によらず)、予め設定された所定の値にすることができる。基準の特性曲線30a毎(求められた時の温度条件毎)に、各々の値やそれらの差分(間隔)を設定することもできる。第1参照部21及び第2参照部22の静電容量には、例えば、特性曲線30a或いは特性曲線30bにおける、比較的直線的な部分に対応する静電容量の値を設定することができる。これにより、特性曲線30a或いは特性曲線30bにおける2点間の変化率の比で表される感度補正係数a(及びそれを用いたオフセット係数b)の精度を高めることができる。
【0045】
図3に戻り、静電容量算出部26による電極対11の間の静電容量算出(ステップS7,S8)後は、比誘電率算出部27により、電極対11の間にある雪の比誘電率が算出される(ステップS9)。
【0046】
電極対11の間の静電容量をC、電極対11の間にある雪の比誘電率をεrとすると、比誘電率εrは、次の式(4a)のように表される。
εr=k×C/ε0 ・・・(4a)
式(4)において、ε0は真空の誘電率である。kは、変換係数であり、例えば、電極対11の対向する電極11aと電極11bの面積をA、電極11aと電極11bの間の距離をLとすると、次の式(4b)で表される。
【0047】
k=L/A ・・・(4b)
比誘電率算出部27は、式(4a),(4b)で表されるような関係(関係式)を備えている。比誘電率算出部27では、真空の誘電率ε0及び変換係数k(面積A及び距離L)、並びに、静電容量算出部26によって算出された電極対11の間の静電容量Cが用いられ、式(4a),(4b)より、電極対11の間にある雪の比誘電率εrが算出される。
【0048】
比誘電率算出部27による電極対11の間にある雪の比誘電率の算出後は、雪密度算出部28により、その雪の密度が算出される(ステップS10)。
電極対11の間にある雪の比誘電率をεr、雪密度をρとすると、雪密度ρは、次の式(5)のように表される。
【0049】
ρ=j×εr ・・・(5)
式(5)において、jは実験或いはシミュレーションにより求められる係数である。雪密度算出部28は、式(5)で表されるような関係(関係式)を備えている。雪密度算出部28では、係数j、及び比誘電率算出部27によって算出された比誘電率εrが用いられ、式(5)より、電極対11の間にある雪の密度ρが算出される。
【0050】
算出された雪密度ρは、雪密度出力部29によって検出回路20の外部に出力される(ステップS11)。
以上のように、雪密度センサ1Aでは、異なる既知の静電容量のキャパシタをそれぞれ備える第1参照部21及び第2参照部22を用いて基準の特性曲線を補正し、電極対11の間の静電容量を算出する。そして、算出した静電容量から比誘電率を算出し、更に雪密度を算出する。雪密度センサ1Aによれば、計測環境の温度変化等による回路特性の変化がある場合でも、電極対11の間の適正な静電容量を計測することができ、比誘電率、雪密度を高精度に計測することができる。
【0051】
尚、ここでは、電極対11、第1参照部21、第2参照部22の順に出力電圧を検出し(ステップS1〜S6)、基準の特性曲線30aを補正し(ステップS7)、補正後の特性曲線30bを用いて静電容量を算出する(ステップS8)場合を例示した。これらの処理の順序は、上記の例に限定されるものではない。基準の特性曲線30aの補正前までに第1参照部21及び第2参照部22の出力電圧が検出され、補正後の特性曲線30bを用いた静電容量の算出前までに電極対11の出力電圧が検出されていればよい。
【0052】
また、ここでは、既知の静電容量を備える第1参照部21と第2参照部22の2つを設ける場合を例示したが、既知の静電容量を備える3つ以上の参照部を設けることもできる。3つ以上の参照部を設ける場合も、上記同様の雪密度計測処理を行うことができる。静電容量既知の参照部を増やすことで、基準の特性曲線30aを補正する際の精度を高めることが可能になる。
【0053】
また、雪密度センサ1Aの検出回路20の処理機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の素子を用いて実現可能である。これらの素子のうち1種を用いて検出回路20の処理機能を実現してもよく、これらの素子のうち2種以上を組み合わせて、検出回路20の処理機能を実現してもよい。
【0054】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図5は第2の実施の形態に係る雪密度センサの構成例を示す図である。
図5に示す雪密度センサ1Bは、その検出回路20に、静電容量が可変の可変容量キャパシタ31aを備える参照部31、及びその可変容量キャパシタ31aの静電容量を制御する可変容量制御部32を含んでいる。
【0055】
雪密度センサ1Bにおける参照部31の可変容量キャパシタ31aの静電容量は、可変容量制御部32により、例えば、1pF〜10pFの範囲に設定される。参照部31の可変容量キャパシタ31aは、スイッチ部23と接続可能とされている。スイッチ部23は、検出部24の接続先を検知部10の電極対11及び参照部31の可変容量キャパシタ31aのいずれかに切り替える。検出部24は、入力信号を、スイッチ部23によって検出部24と接続された電極対11及び可変容量キャパシタ31aのいずれかに供給し、それによって出力される出力信号を検出する。
【0056】
可変容量制御部32は、参照部31の可変容量キャパシタ31aの静電容量を2種以上の値に設定(制御)する。検出部24は、スイッチ部23により、第1の値の静電容量に設定された可変容量キャパシタ31aと接続された場合、その静電容量に設定された可変容量キャパシタ31aに入力信号を供給し、その静電容量に応じた出力信号を検出する。検出部24は、スイッチ部23により、第2の値の静電容量に設定された可変容量キャパシタ31aと接続された場合、その静電容量に設定された可変容量キャパシタ31aに入力信号を供給し、その静電容量に応じた出力信号を検出する。可変容量キャパシタ31aの静電容量が第3以降の値に設定される場合も同様に、その値に応じた出力信号が検出される。
【0057】
尚、上記同様、検出部24は、スイッチ部23により、電極対11と接続された場合には、電極対11に入力信号を供給し、電極対11からその電極11aと電極11bの間の静電容量に応じた出力信号を検出する。
【0058】
検出部24は、例えば、入力信号として、電極対11及び可変容量キャパシタ31aの各々の一方の電極(印加電極)に交流電圧を印加し、もう一方の電極(検出電極)に流れる電流値を検出してそれを電圧に変換し、出力信号として検出する。
【0059】
記録部25は、検出部24によって検出される電極対11からの出力信号、及び可変容量キャパシタ31aからの出力信号を、それぞれ記録する。
静電容量算出部26は、電極対11及び可変容量キャパシタ31aからの出力信号に基づいて、電極対11の間の静電容量を算出する。
【0060】
例えば、静電容量算出部26は、実験やシミュレーションで求められた基準の特性曲線(関係式)を備えている。更に、静電容量算出部26は、可変容量制御部32によって変更される可変容量キャパシタ31aの静電容量の情報を備える。静電容量算出部26は、静電容量を複数種の値に変更した可変容量キャパシタ31aからの出力信号に基づいて、基準の特性曲線を補正し、補正された特性曲線と、検出部24で検出された電極対11からの出力信号を用いて、電極対11の間の静電容量を算出する。
【0061】
静電容量算出部26は、基準の特性曲線を持たない構成とすることもできる。この場合、静電容量算出部26は、静電容量を複数種の値に変更した可変容量キャパシタ31aからの出力信号に基づいて、特性曲線を生成し、生成した特性曲線と、検出部24で検出された電極対11からの出力信号を用いて、電極対11の間の静電容量を算出する。或いは、静電容量算出部26は、可変容量キャパシタ31aの静電容量を変更しながら出力信号を検出し、電極対11からの出力信号に一致又は近似する時の静電容量を、電極対11の間の静電容量とする。
【0062】
比誘電率算出部27は、静電容量算出部26によって算出された、電極対11の間の静電容量を用いて、電極対11の間に存在する雪の比誘電率を算出する。
雪密度算出部28は、比誘電率算出部27によって算出された、電極対11の間に存在する雪の比誘電率を用いて、その雪の密度を算出する。
【0063】
雪密度出力部29は、雪密度算出部28によって算出された雪密度のデータを、検出回路20の外部に出力する。
続いて、上記のような構成を有する雪密度センサ1Bの雪密度計測処理について説明する。
【0064】
まず、雪密度計測処理の第1の例について述べる。
図6は第2の実施の形態に係る雪密度計測処理の第1の例を示す図である。
雪密度の計測の際、雪密度センサ1Bは、屋外等、所定の環境に設置され、電極対11の間には計測対象である雪が存在している。
【0065】
この
図6に示す第1の例では、まず、スイッチ部23により、検出部24の接続先が検知部10の電極対11に切り替えられる(ステップS20)。そして、検出部24により、所定の入力信号が電極対11に供給され、間に雪が存在する電極対11からその静電容量に応じた出力信号(出力電圧)が検出される(ステップS21)。検出された電極対11の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0066】
次いで、スイッチ部23により、検出部24の接続先が参照部31の可変容量キャパシタ31aに切り替えられる(ステップS22)。参照部31の可変容量キャパシタ31aは、可変容量制御部32によって、所定の静電容量に設定(変更)される(ステップS23)。そして、検出部24により、所定の入力信号が可変容量キャパシタ31aに供給され、参照部31からその可変容量キャパシタ31aの静電容量に応じた出力信号(出力電圧)が検出される(ステップS24)。検出された参照部31の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0067】
雪密度センサ1Bでは、このステップS23,S24の処理が、N回(Nは2以上の整数)繰り返される(ステップS25)。可変容量キャパシタ31aの静電容量は、繰り返しの度に可変容量制御部32によってその値が変更され、検出部24によってその値に応じた出力電圧が検出され、記録部25に記録される。
【0068】
次いで、静電容量算出部26により、静電容量が複数種の値に変更された参照部31の可変容量キャパシタ31aからの出力電圧に基づいて、基準の特性曲線が補正される(ステップS26)。そして、補正後の特性曲線と、電極対11からの出力電圧が用いられ、電極対11の間の静電容量が算出される(ステップS27)。
【0069】
基準の特性曲線30aは、例えば、上記
図4の実線、式(1a)に示すような関係を有し、実験やシミュレーションにより求められる。静電容量算出部26は、このようにして求められた基準の特性曲線30aを備える。また、静電容量算出部26は、可変容量キャパシタ31aの静電容量の情報を備える。静電容量算出部26は、その基準の特性曲線30aを、静電容量が複数種の値に変更される可変容量キャパシタ31aからの出力電圧に基づいて補正する。
【0070】
例えば、静電容量が2種の値に変更された可変容量キャパシタ31aからそれぞれ出力電圧を検出する場合(N=2の場合)を想定する。この場合、可変容量キャパシタ31aの2種の静電容量をそれぞれCr1及びCr2、出力電圧をVr1及びVr2、基準の特性曲線30aにおける静電容量Cr1及びCr2に対応する出力電圧をVrr1及びVrr2とする。この時、感度補正係数a及びオフセット係数bは、それぞれ上記の式(2)及び式(3)により近似できる。
【0071】
検出された出力電圧Vr1及びVr2、可変容量キャパシタ31aの静電容量Cr1及びCr2、並びに、基準の特性曲線30aから得られる出力電圧Vrr1及びVrr2が用いられ、式(2),(3)より、感度補正係数a及びオフセット係数bが求められる。求められた感度補正係数a及びオフセット係数bを上記の式(1b)に適用することで、計測環境の温度変化による回路特性の変動を含めた、補正後の特性曲線30bが得られる。得られた補正後の特性曲線30b(式(1b))において、電極対11から検出された出力電圧(例えば
図4の出力電圧Ve)が代入されることで、電極対11の間の静電容量(例えば
図4の静電容量Ce)が算出される。
【0072】
静電容量算出部26では、このようにして基準の特性曲線30aが補正され、補正後の特性曲線30bが用いられて、電極対11の間の静電容量が算出される。
尚、基準の特性曲線30aには、所定の温度条件の下で実験やシミュレーションにより求められたもののほか、雪密度センサ1Bの設置環境の温度を考慮した条件の下で求められたものを用いることができる。また、可変容量キャパシタ31aで実現する複数種の静電容量は、各々予め設定された所定の値にすることができる。雪密度センサ1Bの設置環境に応じて、各々の静電容量の値やそれらの差分を設定してもよい。
【0073】
静電容量算出部26による電極対11の間の静電容量算出後は、比誘電率算出部27により、電極対11の間にある雪の比誘電率が算出される(ステップS28)。比誘電率算出部27は、上記の式(4a),(4b)で表されるような関係式を備えている。比誘電率算出部27では、式(4a),(4b)の真空の誘電率ε0及び変換係数k(面積A及び距離L)、並びに、静電容量算出部26によって算出された電極対11の間の静電容量Cが用いられ、電極対11の間にある雪の比誘電率εrが算出される。
【0074】
比誘電率算出部27による電極対11の間にある雪の比誘電率の算出後は、雪密度算出部28により、その雪の密度が算出される(ステップS29)。雪密度算出部28は、上記の式(5)で表されるような関係式を備えている。雪密度算出部28では、式(5)の係数j、及び比誘電率算出部27によって算出された比誘電率εrが用いられ、電極対11の間にある雪の密度ρが算出される。
【0075】
算出された雪密度ρは、雪密度出力部29によって検出回路20の外部に出力される(ステップS30)。
以上のように、雪密度センサ1Bの第1の例に示す雪密度計測処理では、静電容量が可変の可変容量キャパシタ31aを備える参照部31を用いて基準の特性曲線を補正し、電極対11の間の静電容量を算出する。そして、算出した静電容量から比誘電率を算出し、更に雪密度を算出する。これにより、計測環境の温度変化等による回路特性の変化がある場合でも、電極対11の間の適正な静電容量を計測することができ、比誘電率、雪密度を高精度に計測することができる。
【0076】
尚、ここでは、電極対11、参照部31の順に出力電圧を検出し(ステップS20〜S25)、基準の特性曲線30aを補正し(ステップS26)、補正後の特性曲線30bを用いて静電容量を算出する(ステップS27)場合を例示した。これらの処理の順序は、上記の例に限定されるものではない。基準の特性曲線30aの補正前までに参照部31の出力電圧が検出され、補正後の特性曲線30bを用いた静電容量の算出前までに電極対11の出力電圧が検出されていればよい。
【0077】
また、上記第1の例に示したような雪密度計測処理を行う雪密度センサ1Bにおける検出回路20の処理機能は、例えば、CPU、MPU、ASIC、PLD等の素子を1種又は2種以上用いて実現可能である。
【0078】
続いて、雪密度計測処理の第2の例について述べる。
図7は第2の実施の形態に係る雪密度計測処理の第2の例を示す図である。
この
図7に示す第2の例では、まず、スイッチ部23により、検出部24の接続先が検知部10の電極対11に切り替えられ(ステップS40)、検出部24により、間に雪が存在する電極対11からその静電容量に応じた出力電圧が検出される(ステップS41)。検出された電極対11の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0079】
次いで、スイッチ部23により、検出部24の接続先が参照部31の可変容量キャパシタ31aに切り替えられ(ステップS42)、可変容量制御部32により、可変容量キャパシタ31aの静電容量が所定の値に設定(変更)される(ステップS43)。そして、検出部24により、所定の入力信号が可変容量キャパシタ31aに供給され、参照部31からその可変容量キャパシタ31aの静電容量に応じた出力電圧が検出される(ステップS44)。検出された参照部31の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0080】
雪密度センサ1Bでは、このステップS43,S44の処理が、N回(Nは2以上の整数)繰り返される(ステップS45)。可変容量キャパシタ31aの静電容量は、繰り返しの度に可変容量制御部32によってその値が変更され、検出部24によってその値に応じた出力電圧が検出され、記録部25に記録される。
【0081】
次いで、静電容量算出部26により、静電容量が複数種の値に変更された可変容量キャパシタ31aからの出力電圧に基づき、最小二乗法を用いて、出力電圧と静電容量の関係式、即ち特性曲線が生成される(ステップS46)。そして、生成された特性曲線と、電極対11からの出力電圧が用いられ、電極対11の間の静電容量が算出される(ステップS47)。
【0082】
ここで、特性曲線の生成処理、及び生成された特性曲線を用いた静電容量の算出処理について説明する。
生成される特性曲線は、次の式(6a)で表される。
【0083】
C=f2(V) ・・・(6a)
式(6a)において、Cは静電容量、Vは出力電圧である。f2(V)は、出力電圧Vの関数であって、静電容量が複数種の値に変更された可変容量キャパシタ31aから計測される出力電圧に基づき、最小二乗法を用いて求められる。f2(V)は、計測回数にもよるが、例えば、係数a2,b2,c2,d2を用いて、次の式(6b)のように表される。
【0084】
f2(V)=a2×V
3+b2×V
2+c2×V+d2 ・・・(6b)
このように最小二乗法を用いて求められた特性曲線の式に、電極対11から計測される出力電圧Vを代入することで、電極対11の間の静電容量Cが算出される。
【0085】
尚、可変容量キャパシタ31aで実現する複数種の静電容量は、各々予め設定された所定の値にすることができる。雪密度センサ1Bの設置環境に応じて、各々の静電容量の値やそれらの差分を設定してもよい。
【0086】
静電容量算出部26による電極対11の間の静電容量算出後は、比誘電率算出部27により、電極対11の間にある雪の比誘電率が算出される(ステップS48)。比誘電率算出部27は、上記の式(4a),(4b)で表されるような関係式を備えている。比誘電率算出部27では、式(4a),(4b)の真空の誘電率ε0及び変換係数k(面積A及び距離L)、並びに、静電容量算出部26によって算出された電極対11の間の静電容量Cが用いられ、電極対11の間にある雪の比誘電率εrが算出される。
【0087】
比誘電率算出部27による電極対11の間にある雪の比誘電率の算出後は、雪密度算出部28により、その雪の密度が算出される(ステップS49)。雪密度算出部28は、上記の式(5)で表されるような関係式を備えている。雪密度算出部28では、式(5)の係数j、及び比誘電率算出部27によって算出された比誘電率εrが用いられ、電極対11の間にある雪の密度ρが算出される。
【0088】
算出された雪密度ρは、雪密度出力部29によって検出回路20の外部に出力される(ステップS50)。
以上のように、雪密度センサ1Bの第2の例に示す雪密度計測処理では、静電容量が可変の可変容量キャパシタ31aを備える参照部31を用いて特性曲線を生成し、電極対11の間の静電容量を算出する。そして、算出した静電容量から比誘電率を算出し、更に雪密度を算出する。これにより、計測環境の温度変化等による回路特性の変化がある場合でも、電極対11の間の適正な静電容量を計測することができ、比誘電率、雪密度を高精度に計測することができる。
【0089】
尚、ここでは、電極対11、参照部31の順に出力電圧を検出し(ステップS40〜S45)、特性曲線を生成し(ステップS46)、生成した特性曲線を用いて静電容量を算出する(ステップS47)場合を例示した。これらの処理の順序は、上記の例に限定されるものではない。特性曲線の生成前までに参照部31の出力電圧が検出され、生成した特性曲線を用いた静電容量の算出前までに電極対11の出力電圧が検出されていればよい。
【0090】
また、上記第2の例に示したような雪密度計測処理を行う雪密度センサ1Bにおける検出回路20の処理機能は、例えば、CPU、MPU、ASIC、PLD等の素子を1種又は2種以上用いて実現可能である。
【0091】
尚、上記第2の例では、可変容量キャパシタ31aを用いて特性曲線を生成するようにした。このほか、複数個のキャパシタ(静電容量が既知で各々の静電容量が異なるもの)を用い、それらの静電容量とそれらからの出力電圧を用いて、特性曲線の生成を行うようにすることもできる。
【0092】
続いて、雪密度計測処理の第3の例について述べる。
図8は第2の実施の形態に係る雪密度計測処理の第3の例を示す図である。
この
図8に示す第2の例では、まず、スイッチ部23により、検出部24の接続先が検知部10の電極対11に切り替えられ(ステップS60)、検出部24により、間に雪が存在する電極対11のその静電容量に応じた出力電圧が検出される(ステップS61)。検出された電極対11の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0093】
次いで、スイッチ部23により、検出部24の接続先が参照部31の可変容量キャパシタ31aに切り替えられる(ステップS62)。次いで、可変容量制御部32により、参照部31の可変容量キャパシタ31aの静電容量が所定の値、この例ではその可変容量キャパシタ31aの可変容量範囲の中央値に設定される(ステップS63)。そして、検出部24により、可変容量キャパシタ31aの静電容量に応じた出力電圧が検出される(ステップS64)。検出された参照部31の出力電圧は、記録部25に記録される。
【0094】
次いで、静電容量算出部26により、参照部31の可変容量キャパシタ31aから計測された出力電圧と、電極対11から計測された出力電圧との差分が求められる(ステップS65)。静電容量算出部26では、求められた可変容量キャパシタ31aと電極対11の出力電圧の差分が、設定された閾値以下であるか否かが判定される(ステップS66)。静電容量算出部26では、その差分が閾値以下と判定された場合、この判定時の出力電圧が計測された可変容量キャパシタ31aの静電容量が、電極対11の間の静電容量とされる(ステップS67)。
【0095】
静電容量算出部26において、求められた可変容量キャパシタ31aと電極対11の出力電圧の差分が、設定された閾値を上回ると判定された場合には(ステップS66)、可変容量制御部32により、可変容量キャパシタ31aの静電容量が所定の値に変更される(ステップS68)。その際、可変容量制御部32は、可変容量キャパシタ31aと電極対11の出力電圧の差分に応じて、可変容量キャパシタ31aの静電容量を変更する。[可変容量キャパシタ31aの出力電圧]>[電極対11の出力電圧]の場合には、可変容量キャパシタ31aの静電容量を、より小さな値に変更する。[可変容量キャパシタ31aの出力電圧]<[電極対11の出力電圧]の場合には、可変容量キャパシタ31aの静電容量を、より大きな値に変更する。
【0096】
このようにして可変容量キャパシタ31aの静電容量が変更された後、ステップS64以降の処理が実行される。即ち、検出部24により、静電容量変更後の可変容量キャパシタ31aの出力電圧が検出され(ステップS64)、その出力電圧と、電極対11の出力電圧との差分が求められ(ステップS65)、その差分が閾値以下であるか否かが判定される(ステップS66)。差分が閾値を上回ると判定された場合には、可変容量キャパシタ31aの静電容量が変更される(ステップS68)。静電容量算出部26及び可変容量制御部32は、このような処理を、差分が閾値以下となるまで繰り返す。
【0097】
尚、可変容量キャパシタ31aの静電容量を変更する際、その静電容量の変更量は、一定量ずつの変更量でもよいし、二分探索に基づいた変更量でもよい。
雪密度センサ1Bでは、このように可変容量キャパシタ31aと電極対11の出力電圧の差分が閾値以下になる時の、可変容量キャパシタ31aの静電容量が、電極対11の間の静電容量として決定される(ステップS67)。
【0098】
静電容量算出部26による電極対11の間の静電容量算出後は、比誘電率算出部27により、電極対11の間にある雪の比誘電率が算出される(ステップS69)。比誘電率算出部27は、上記の式(4a),(4b)で表されるような関係式を備えている。比誘電率算出部27では、式(4a),(4b)の真空の誘電率ε0及び変換係数k(面積A及び距離L)、並びに、静電容量算出部26によって算出された電極対11の間の静電容量Cが用いられ、電極対11の間にある雪の比誘電率εrが算出される。
【0099】
比誘電率算出部27による電極対11の間にある雪の比誘電率の算出後は、雪密度算出部28により、その雪の密度が算出される(ステップS70)。雪密度算出部28は、上記の式(5)で表されるような関係式を備えている。雪密度算出部28では、式(5)の係数j、及び比誘電率算出部27によって算出された比誘電率εrが用いられ、電極対11の間にある雪の密度ρが算出される。
【0100】
算出された雪密度ρは、雪密度出力部29によって検出回路20の外部に出力される(ステップS71)。
以上のように、雪密度センサ1Bの第3の例に示す雪密度計測処理では、静電容量が可変の可変容量キャパシタ31aを備える参照部31を用いる。この第3の例に示す雪密度計測処理では、電極対11の出力電圧との差分が閾値以下となる出力電圧が参照部31から得られる時の、その可変容量キャパシタ31aの静電容量を、電極対11の間の静電容量として決定する。そして、決定した静電容量から比誘電率を算出し、更に雪密度を算出する。これにより、計測環境の温度変化等による回路特性の変化がある場合でも、電極対11の間の適正な静電容量を計測することができ、比誘電率、雪密度を高精度に計測することができる。
【0101】
尚、ここでは、電極対11、参照部31の順に出力電圧を検出する(ステップS60〜S64)場合を例示したが、検出の順序は、上記の例に限定されるものではなく、参照部31、電極対11の順に出力電圧を検出するようにしてもよい。
【0102】
また、上記第3の例に示したような雪密度計測処理を行う雪密度センサ1Bにおける検出回路20の処理機能は、例えば、CPU、MPU、ASIC、PLD等の素子を1種又は2種以上用いて実現可能である。
【0103】
尚、上記第3の例では、可変容量キャパシタ31aを用い、その出力電圧と電極対11の出力電圧との差分が閾値を上回る場合、可変容量キャパシタ31aの静電容量を変更するようにした。このほか、複数個のキャパシタ(静電容量が既知で各々の静電容量が異なるもの)を用いることもできる。この場合は、まず、それらのキャパシタのうちの1つでその出力電圧と電極対11の出力電圧との差分を閾値と比較し、差分が閾値を上回る場合に、別の1つで同様にその出力電圧と電極対11の出力電圧との差分を閾値と比較する。差分が閾値以下となった時のキャパシタの静電容量を、電極対11の間の静電容量として決定する。
【0104】
以上、雪密度センサ1A,1Bを例に説明したが、上記手法は、雪密度センサのほか、様々な計測装置に適用可能である。例えば、上記手法は、土壌の静電容量、比誘電率、密度、含有水分量等を計測する計測装置にも同様に適用可能である。
【0105】
また、以上の説明では、電極対の間の静電容量を求めた後、その静電容量から電極対の間にある物質の比誘電率を求め、その比誘電率から電極対の間にある物質の密度を求め、その密度を出力する計測装置を例示した。このほか、静電容量を求めてそれを出力する静電容量の計測装置、比誘電率を求めてそれを出力する比誘電率の計測装置を実現することもできる。
【0106】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 一対の電極と、
第1キャパシタを備える参照部と、
前記一対の電極及び前記第1キャパシタの出力を検出する検出部と、
前記検出部を前記一対の電極又は前記第1キャパシタに接続するスイッチ部と、
前記スイッチ部によって前記検出部に接続された前記一対の電極の第1出力、及び前記スイッチ部によって前記検出部に接続された前記第1キャパシタの第2出力を用いて、前記一対の電極間の第1静電容量を算出する第1算出部と
を含むことを特徴とする計測装置。
【0107】
(付記2) 前記参照部は、第2キャパシタを備え、
前記検出部は、前記一対の電極、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの出力を検出し、
前記スイッチ部は、前記検出部を前記一対の電極、前記第1キャパシタ又は前記第2キャパシタに接続し、
前記第1算出部は、前記第1出力、前記第2出力、及び前記スイッチ部によって前記検出部に接続された前記第2キャパシタの第3出力を用いて、前記第1静電容量を算出することを特徴とする付記1に記載の計測装置。
【0108】
(付記3) 前記第1キャパシタは、可変容量キャパシタであり、
前記第1算出部は、前記第1出力、前記第2出力、及び、前記第1キャパシタの容量を変化させた第2キャパシタの第3出力を用いて、前記第1静電容量を算出することを特徴とする付記1に記載の計測装置。
【0109】
(付記4) 前記一対の電極間の静電容量と前記一対の電極からの出力との関係式を有し、
前記第1算出部は、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの静電容量、並びに、前記第2出力及び前記第3出力に基づいて、前記関係式を補正し、
補正された前記関係式及び前記第1出力を用いて、前記第1静電容量を算出することを特徴とする付記2又は3に記載の計測装置。
【0110】
(付記5) 前記第1算出部は、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの静電容量、並びに、前記第2出力及び前記第3出力に基づいて、前記一対の電極間の静電容量と前記一対の電極からの出力との関係式を生成し、
生成された前記関係式及び前記第1出力を用いて、前記第1静電容量を算出することを特徴とする付記2又は3に記載の計測装置。
【0111】
(付記6) 前記第1算出部は、
前記第1出力と前記第2出力との第1差分を算出して前記第1差分を設定値と比較し、
前記第1差分が前記設定値以下である時に、前記第1キャパシタの静電容量を、前記第1静電容量に決定し、
前記第1出力と前記第3出力との第2差分を算出して前記第2差分を前記設定値と比較し、
前記第2差分が前記設定値以下である時に、前記第2キャパシタの静電容量を、前記第1静電容量に決定することを特徴とする付記2又は3に記載の計測装置。
【0112】
(付記7) 算出された前記第1静電容量を用いて、前記一対の電極間の物質の比誘電率を算出する第2算出部を更に含むことを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の計測装置。
【0113】
(付記8) 算出された前記比誘電率を用いて、前記物質の密度を算出する第3算出部を更に含むことを特徴とする付記7に記載の計測装置。
(付記9) 前記一対の電極及び前記参照部は、同等の温度環境下に配置されることを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載の計測装置。
【0114】
(付記10) 一対の電極と、第1キャパシタを備える参照部と、前記一対の電極及び前記第1キャパシタの出力を検出する検出部と、前記検出部を前記一対の電極又は前記第1キャパシタに接続するスイッチ部と、前記スイッチ部によって前記検出部に接続された前記一対の電極の第1出力、及び前記スイッチ部によって前記検出部に接続された前記第1キャパシタの第2出力を用いて、前記一対の電極間の第1静電容量を算出する算出部とを含む計測装置を用いた計測方法であって、
前記一対の電極を、計測対象の物質を挟んで配置する工程と、
前記スイッチ部によって前記検出部を前記一対の電極に接続し、前記検出部によって前記第1出力を検出する工程と、
前記スイッチ部によって前記検出部を前記第1キャパシタに接続し、前記検出部によって前記第2出力を検出する工程と、
前記算出部によって前記第1出力及び前記第2出力を用いて、前記第1静電容量を算出する工程と
を含むことを特徴とする計測方法。
【0115】
(付記11) 前記参照部は、第2キャパシタを備え、
前記スイッチ部によって前記検出部を前記第2キャパシタに接続し、前記検出部によって前記第2キャパシタの第3出力を検出する工程を含み、
前記算出部によって前記第1静電容量を算出する工程では、前記第1出力、前記第2出力及び前記第3出力を用いて、前記第1静電容量を算出することを特徴とする付記10に記載の計測方法。
【0116】
(付記12) 前記第1キャパシタは、可変容量キャパシタであり、
前記算出部によって前記第1静電容量を算出する工程では、前記第1出力、前記第2出力、及び、前記第1キャパシタの容量を変化させた第2キャパシタの第3出力を用いて、前記第1静電容量を算出することを特徴とする付記10に記載の計測方法。
【0117】
(付記13) 前記一対の電極間の静電容量と前記一対の電極からの出力との関係式を有し、
前記算出部によって前記第1静電容量を算出する工程は、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの静電容量、並びに、前記第2出力及び前記第3出力に基づいて、前記関係式を補正する工程と、
補正された前記関係式及び前記第1出力を用いて、前記第1静電容量を算出する工程と
を含むことを特徴とする付記11又は12に記載の計測方法。
【0118】
(付記14) 前記算出部によって前記第1静電容量を算出する工程は、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの静電容量、並びに、前記第2出力及び前記第3出力に基づいて、前記一対の電極間の静電容量と前記一対の電極からの出力との関係式を生成する工程と、
生成された前記関係式及び前記第1出力を用いて、前記第1静電容量を算出する工程と を含むことを特徴とする付記11又は12に記載の計測方法。
【0119】
(付記15) 前記算出部によって前記第1静電容量を算出する工程は、
前記第1出力と前記第2出力との第1差分を算出して前記第1差分を設定値と比較する工程と、
前記第1差分が前記設定値以下である時に、前記第1キャパシタの静電容量を、前記第1静電容量に決定する工程と、
前記第1出力と前記第3出力との第2差分を算出して前記第2差分を前記設定値と比較する工程と、
前記第2差分が前記設定値以下である時に、前記第2キャパシタの静電容量を、前記第1静電容量に決定する工程と
を含むことを特徴とする付記11又は12に記載の計測方法。
【0120】
(付記16) 前記一対の電極を配置する工程前に、前記一対の電極及び前記参照部を、同等の温度環境下に配置する工程を更に含むことを特徴とする付記11乃至16のいずれかに記載の計測方法。