特許第6031902号(P6031902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031902
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】2層分離型液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/03 20060101AFI20161114BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20161114BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20161114BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20161114BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20161114BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161114BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20161114BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   A61K8/03
   A61K8/92
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/891
   A61K8/34
   A61K8/97
   A61Q11/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-195954(P2012-195954)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-51445(P2014-51445A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】石黒 敬二
(72)【発明者】
【氏名】平山 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮越 美妃
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−305022(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115034(WO,A1)
【文献】 特開2008−094772(JP,A)
【文献】 特開平11−079962(JP,A)
【文献】 特開2007−269674(JP,A)
【文献】 特表2011−526245(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124533(WO,A1)
【文献】 特表2013−542250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で液体である油剤(A)10〜60質量%を含有すると共に、
メントール(B)、チモール(C−1)及びカルバクロール(C−2)から選ばれる1種又は2種以上と、
ローズ,ラベンダー,カモミール及びジャスミンから選ばれる1種以上の成分(D)とを含有してなる油層と、
水層との2層が分離してなり、下記成分(A)に対する質量比が、
(D)/(A)=0.00001〜0.005であり、
(B)成分を含む場合は、
(B)/(A)=0.0001〜0.006であり、
(C)成分を含む場合は、
(C)/(A)=0.00003〜0.0006
であることを特徴とする2層分離型液体口腔用組成物。
【請求項2】
成分(A)の油剤が、炭化水素,グリセリンの脂肪酸エステル,アルコールの脂肪酸エステル及びシリコーン類から選ばれる1種以上である請求項1記載の2層分離型液体口腔用組成物。
【請求項3】
成分(A)の油剤の含有量が、組成物全体の0〜0質量%である請求項1又は2記載の2層分離型液体口腔用組成物。
【請求項4】
成分(B)のメントールの含有量が、組成物全体の0.005〜0.2質量%である請求項1、2又は3記載の2層分離型液体口腔用組成物。
【請求項5】
チモール(C−1)及び/又はカルバクロール(C−2)の含有量が、組成物全体の0.001〜0.02質量%である請求項1乃至4のいずれか1項記載の2層分離型液体口腔用組成物。
【請求項6】
成分(D)の含有量が、組成物全体の0.0002〜0.1質量%である請求項1乃至5のいずれか1項記載の2層分離型液体口腔用組成物。
【請求項7】
更に、水層が、有機酸,オルソリン酸及びその塩から選ばれる1種以上の成分(E)を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載の2層分離型液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時の油の刺激感及び使用後のべたつきが改善し、優れた嗜好性を有する、特に洗口剤として好適な2層分離型液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外観の美しさや楽しさを持つ、油層と水を含んだ水層とからなる2層剤型で、静置時に2層に分離しており、振り混ぜて使用するタイプの液体組成物は公知であり、特許文献1(特開平11−79962号公報)には口腔用2相液体組成物が提案されている。
【0003】
しかしながら、油層と水層からなる2層剤型の液体口腔用組成物は、特に洗口剤として口腔内に適用すると、使用時に油剤による刺激感があり、また、使用後にはべたつきが口腔内に残り、嗜好性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−79962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、使用時の油の刺激感及び使用後のべたつきが改善し、優れた嗜好性を有する2層分離型液体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、25℃で液体である油剤(A)を含有すると共に、メントール(B)、チモール(C−1)及びカルバクロール(C−2)から選ばれる1種又は2種以上と、ローズ,ラベンダー,カモミール,ジャスミン,オリス及びバイオレットから選ばれる1種以上の成分(D)とを含有してなる油層と、水層との2層が分離してなることで、使用時の油の刺激感及び使用後のべたつきが改善し、嗜好性に優れた2層分離型液体口腔用組成物が得られることを知見した。
更に、上記水層に、有機酸,オルソリン酸及びその塩から選ばれる1種以上の成分(E)を配合することで、使用後のべたつきがより改善し、また、2層の界面がよりきれいに分離することを見出した。
【0007】
洗口剤等の液体口腔用組成物には、一般的に油剤を多く配合することはほとんどなかったが、本発明によれば、油層と水層との2層が静置時には分離してなり、使用時に振とうされることで混ざり合う2層分離剤型の液体組成において、前記油層に、油剤(A)と共に成分(B)、成分(C−1)及び成分(C−2)から選ばれる1種又は2種以上と成分(D)とを組み合わせて配合することで、特に油剤を10質量%以上配合しても、従来の2層剤型の欠点となっていた使用時の刺激感、使用後の口腔内のべたつきを軽減することができ、嗜好性が優れ、とりわけ洗口剤として好適に調製できる2層分離型液体口腔用組成物を提供することができる。
なお、出願人はPCT/JP2012/55617に、25℃で液体である油剤を含有してなる油層と、縮合リン酸又はその塩を含有してなる水層との2層が分離してなり、前記油剤の含有量、油剤と縮合リン酸又はその塩との比率が適切範囲であることで、歯の汚れ落とし効果が高く、かつ油性感や収斂感が軽減した2層分離型液体口腔用組成物を提案したが、これは縮合リン酸又はその塩による油剤の油性感の軽減や、油剤による縮合リン酸又はその塩の収斂感の軽減であり、本発明の成分(B)、成分(C−1)及び成分(C−2)から選ばれる成分と成分(D)との併用による、油の刺激感、べたつきの改善とは技術的に相違する。
【0008】
従って、本発明は、25℃で液体である油剤(A)を含有すると共に、メントール(B)、チモール(C−1)及びカルバクロール(C−2)から選ばれる1種又は2種以上と、ローズ,ラベンダー,カモミール,ジャスミン,オリス及びバイオレットから選ばれる1種以上の成分(D)とを含有してなる油層と、水層との2層が分離してなることを特徴とする2層分離型液体口腔用組成物、更に、水層が、有機酸,オルソリン酸及びその塩から選ばれる1種以上の成分(E)を含有する上記の2層分離型液体口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用時の油の刺激感及び使用後のべたつきが改善し、優れた嗜好性を有する2層分離型液体口腔用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の2層分離型液体口腔用組成物は、油層と水層とが2層に分離してなり、前記油層が油剤(A)10〜60質量%と、メントール(B)、チモール(C−1)及びカルバクロール(C−2)から選ばれる1種又は2種以上と、ローズ,ラベンダー,カモミール及びジャスミンから選ばれる1種以上の成分(D)とを含有してなり、下記成分(A)に対する質量比が、(D)/(A)=0.00001〜0.005であり、(B)成分を含む場合は、(B)/(A)=0.0001〜0.006であり、(C)成分を含む場合は、(C)/(A)=0.00003〜0.0006であることを特徴とする。
【0011】
なおここで、2層分離型とは、静置時には水層と油層の2層に分離し、使用時に軽く振とうすると2層が容易に混ざり合い、乳液状となり、その後、静置すると元の2層に戻る形態の製剤である。
更に詳述すると、ここで、2層分離型の製剤は、静置しておくと水層と油層の2層に分離する外観であり、使用時には軽く振とうすることで2層が容易に混ざり合い、乳液状となり、使用後に振とうをやめて静置すると2層に分離した状態に戻るが、この場合、製剤の振とうをやめて静置し遅くとも1時間以内に2層に分離した元の状態に戻っていればよい。更に、この製剤は、振とうして使用した後に容器を振とうや攪拌することなく静置しておくと油層と水層との2層分離状態が安定化し、維持されるが、分離後に再度振とうすれば再び混ざり合うので、使用時には乳液状で用いることができる。
【0012】
ここで、2層に分離するとは、以下に示すとおりである。100mL容量のエプトン管に組成物60mLを入れ、1秒間に3回の速さで上下に5秒振り混ぜた後、振とうをやめて静置した場合に、組成物がおおむね2つの層からなることが外観上認識できる程度のことであり、2層の境界に油層、水層とは外観上異なる乳白色の水や油の微小な粒子の分散層等を有していても良いが、その層が水層と油層を合わせた体積の5%以下の場合のことである。
【0013】
油層に含まれる油剤(A)は、25℃で液状の油剤であり、2層に分離する製剤として製品の外観の特徴をつける成分である。ここで、25℃で液体であるとは、25℃環境下でBL型粘度計を用いて粘度を測定するとき100mPa・s以下のものをいう。
【0014】
油剤(A)としては、炭化水素、グリセリンの脂肪酸エステル、アルコールの脂肪酸エステル、シリコーン類などが挙げられる。具体的には、流動パラフィン、ココナツオイル,パーム核油,牛乳,母乳などに含まれる炭素数6〜12の脂肪酸からなるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等の中鎖脂肪酸トリグリセリド、ホホバオイル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、下記式(1)で示されるジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンなどが例示され、これらの1種又は2種以上が用いられる。中でも、流動パラフィン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピルが、特に刺激感が少なく、より好適である。
【0015】
【化1】
(式中、mは1〜10,000の整数である。)
【0016】
成分(A)の配合量は、組成物全体の10〜60%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは20〜40%である。10%以上配合すると2層が明確になることから好ましく、60%以下であることが、刺激感やべたつきを改善して嗜好性を向上するのに好適である。
【0017】
本発明では、成分(B)、成分(C−1)及び成分(C−2)から選ばれる1種又は2種以上と、成分(D)とを組み合わせて配合することで、使用中の刺激感、使用後のべたつきを改善することができる。成分(B)、成分(C−1)及び成分(C−2)を欠く場合、あるいは成分(D)を欠く場合は、使用中の刺激感、使用後のべたつきを改善できない。
【0018】
成分(B)のメントールとしては、合成メントール、天然メントールの他、メントールを含有する精油、例えばペパーミント油やハッカ油などを用いてもよい。使用後のべたつき改善の点で合成メントールがよく、例えば高砂香料工業(株)製のものを使用できる。
成分(B)のメントールの配合量は、組成物全体の0〜0.2%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.2%、更に好ましくは0.01〜0.1%である。配合量が多いほどべたつきを改善できるが、0.2%以下であることが、刺激感が問題にならないことから好ましい。
【0019】
また、成分(B)を配合する場合は、成分(A)に対して(B)/(A)が質量比として好ましくは0.0001〜0.006、より好ましくは0.0003〜0.004となる割合で配合する。上記比率が0.0001以上であることが、べたつき、刺激感の改善に好適であり、0.006以下であると、刺激感が問題にならないことから好ましい。
【0020】
成分(C)は、チモール(C−1)及び/又はカルバクロール(C−2)であり、チモール(C−1)、カルバクロール(C−2)はいずれかを単独で配合しても、あるいは2種を併用して配合してもよい。
成分(C)のチモール、カルバクロールとしては、合成品、天然単離品の他、チモール及び/又はカルバクロールを含有する精油、例えばタイム油、オレガノ油、オリガナム油、アジョワン油、マジョラム油などを用いてもよい。
成分(C)(チモール(C−1)及び/又はカルバクロール(C−2))の配合量は、組成物全体の0〜0.02%が好ましく、より好ましくは0.001〜0.02%、更に好ましくは0.002〜0.01%である。配合量が多いほどべたつきを改善できるが、0.02%以下であることが、刺激感が問題にならないことから好ましい。
【0021】
また、成分(C)を配合する場合は、成分(A)に対して(C)/(A)が質量比として好ましくは0.00003〜0.0006、より好ましくは0.00006〜0.0004となる割合で配合する。0.00003以上であることが、べたつき、刺激の改善に好適であり、0.0006以下であることが、刺激感が問題にならないことから好ましい。
【0022】
なお、成分(B)、成分(C−1)、成分(C−2)は、いずれかを配合しても、あるいは効果発現の点で成分(B)と成分(C−1)及び/又は成分(C−2)とを併用してもよい。
【0023】
成分(D)は、ローズ、ラベンダー、カモミール、ジャスミン、オリス及びバイオレットから選ばれる1種又は2種以上の成分であり、中でもローズ、ラベンダー、カモミール、ジャスミンが、特に刺激感を抑えるのに好ましい。とりわけローズは、使用中の刺激感の低減の点でより好ましい。
成分(D)は、成分(B)、成分(C−1)及び成分(C−2)から選ばれる1種以上と組み合わせることで、使用中の刺激感、使用後のべたつきを大幅に改善する。
【0024】
成分(D)は、ローズ、ラベンダー、カモミール、ジャスミン、オリス又はバイオレットの植物体の全部位又は一部(花、葉、茎、根など)を水蒸気蒸留もしくは溶剤抽出することなどにより得られたものであり、一般的にオイル、アブソリュート、コンクリートなどと呼ばれるものである。成分(D)として用いられる香料成分として、具体的には、ローズオイル、ローズアブソリュート、ラベンダーオイル、ラベンダーアブソリュート、カモミールオイル、ジャスミンアブソリュート、オリスオイル、オリスコンクリート、バイオレットアブソリュートなどが例示される。
【0025】
成分(D)の配合量は、組成物全体の0.0002〜0.1%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.05%である。配合量が多いほど刺激感を改善できるが、0.1%以下の範囲であることが、刺激感やべたつきが問題にならないことから好ましい。
【0026】
成分(D)は、成分(A)に対して(D)/(A)が質量比として好ましくは0.00001〜0.005、より好ましくは0.00006〜0.002となる割合で配合する。0.00001以上であることが、べたつき、刺激の改善に好適であり、0.005以下であることが、刺激感が問題にならないことから好ましい。
【0027】
油層には、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)に加え、その他の公知の油溶性成分を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて配合できる。例えば香料、色素、有効成分などが挙げられる。具体的には、香料としては上記成分(B)、(C)、(D)以外の公知のものを、本発明の効果を妨げない範囲において通常量添加してもよく、また、上記(B)、(C)成分を含む天然香料の場合でも、上記成分(B)、(C)の組成中含有量がそれぞれ上記適切量となる範囲内で配合できる。そのような香料の例としては、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、セージ油、レモン油、オレンジ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ローズマリー油、ローレル油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、メチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0028】
色素としては、赤色215号、赤色225号、黄色201号、黄色204号等の油溶性色素が挙げられる。有効成分としては、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、酢酸トコフェロール等が挙げられる。これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0029】
本発明では、更に、水層に有機酸,オルソリン酸及びその塩から選ばれる成分(E)を配合することが好ましく、成分(E)を配合することで、使用後のべたつきを更に改善でき、また、静置したときの2層の界面が、エマルション状の白濁が生じることなくよりきれいに分離し、製剤外観を向上できる。
成分(E)は、有機酸又はその塩、オルソリン酸又はその塩である。有機酸としてはクエン酸、リンゴ酸や、そのナトリウム塩等が挙げられ、オルソリン酸としては、水素塩も含み、例えばリン酸又はそのナトリウム塩、リン酸水素塩が挙げられる。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸3ナトリウム等が挙げられ。これらの1種を単独で、又は効果発現の点から2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、成分(E)のオルソリン酸は縮合リン酸とは相違し、本発明では、縮合リン酸は含有しなくてよい。
【0030】
成分(E)を配合する場合、その配合量は、組成物全体に対して0.01〜2%が好ましく、より好ましくは0.05〜1%である。0.01%以上であることで、使用後のべたつきをより改善でき、また、2層界面がよりきれいになり、製剤外観を向上できる。2%以下であることが、刺激感を抑えるのに好適である。
【0031】
水層には、更に(E)成分以外の公知の水溶性成分を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて配合できる。例えば湿潤剤、増粘剤、甘味料、色素、防腐剤、水溶性香料、有効成分等が挙げられる。なお、本発明では、界面活性剤は配合しなくてよく、界面活性剤を含まないほうが2層が上下層ともに透明なままきれいに分離し、製剤外観がより向上する。
【0032】
具体的に、湿潤剤としてはソルビット、キシリット、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、へキシレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。
【0033】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ジェランガム、ペクチンなどが挙げられる。
【0034】
甘味料としてはサッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、キシリトール、ステビアエキス等、色素としては赤色2号、赤色3号、赤色106号、赤色102号、黄色4号、黄色5号、橙色205号、青色1号、緑色3号等の水溶性色素、防腐剤としてはメチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0035】
有効成分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等のフッ化物、イプシロンアミノカプロン酸、デキストラナーゼ、ムタナーゼなどの酵素、トラネキサム酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、アスコルビン酸、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルリチン酸ジカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、クエン酸亜鉛、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物等が挙げられる。
これら任意成分は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合できる。
【0036】
溶剤は通常、水であるが、更にエタノール等の低級一価アルコールを本発明の効果を妨げない範囲で配合してもよい。
また、本発明の2層分離型液体口腔用組成物は、25℃におけるpHを6.5〜8.5に調整することが好ましい。
【0037】
2層分離型液体口腔用組成物における水層と油層との比率(水層/油層)は、質量比で好ましくは0.6〜9、より好ましくは0.6〜6、更に好ましくは1〜5である。0.6以上であることが、刺激感、べたつきを改善するのに好ましく、9以下であることが、2層であることを容易に認識できる点で好ましい。
【0038】
本発明の2層分離型液体口腔用組成物は、静置時には水層と油層との2層に分離しているが、使用時に軽く振とうすることで2層が容易に混ざり合い、乳液状となり、この状態で口腔内に適用することができ、口に含んで洗口するなどして適用することが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0040】
〔実施例、比較例〕
表1〜8に示す組成の2層分離型液体口腔用組成物を下記方法で調製した。得られた2層分離型液体口腔用組成物について、下記の評価を行った。結果を表に併記した。
【0041】
<2層分離型液体口腔用組成物の調製法>
水に水溶性成分(サッカリンナトリウム、グリセリン、有機酸など)を溶解し、油剤(A)に油溶性成分(メントール(B)、成分(C)、成分(D)、メチルパラベンなど)を溶解し、それらを一定の比率で混合して調製した。比較例の組成物は、上記に準じて調製した。
【0042】
<評価方法>
(1)刺激感のなさの評価
表に示す組成物を使用時に軽く振り2層が混ざり合った状態とし、この組成物20mLを口に含み、30秒間洗口時の刺激感のなさについて下記の5段階で評価し、10名の平均点を次の基準に従い、◎、○、△、×で表に示した。
判定基準
5:刺激感が認められなかった。
4:ほとんど刺激感が認められなかった。
3:わずかに刺激感が認められた。
2:刺激感が認められた。
1:強い刺激感が認められた。
評価基準
◎:平均点4.0点以上
○:平均点3.0点以上4.0点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0043】
(2)使用後のべたつきのなさの評価
表に示す組成物を使用時に軽く振り2層が混ざり合った状態とし、この組成物20mLを口に含み、30秒間洗口し、洗口後のべたつきのなさについて下記の5段階でそれぞれ評価し、10名の平均点を次の基準に従い、☆、◎、○、△、×で表に示した。
判定基準
5:べたつきが認められなかった。
4:ほとんどべたつきが認められなかった。
3:わずかにべたつきが認められた。
2:べたつきが認められた。
1:強いべたつきが認められた。
評価基準
☆:平均点4.5点以上
◎:平均点4.0点以上4.5点未満
○:平均点3.0点以上4.0点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0044】
(3)2層界面のきれいさの評価
表に示す組成物50mLをPET製の円筒形(直径40mm×高さ120mm)容器に入れ、10秒間に20回の速さで振り混ぜた。その後、静置して30分後に側面から油層と水層間の界面の状態を観察し、下記の4段階で評価し、◎、○、△、×で表に示した。
判定基準
◎:界面にエマルション状の白濁が全く認められない。
○:界面にエマルション状の白濁がわずかに認められるが、外観上問題ないレベルで
ある。
△:界面にエマルション状の白濁がやや認められる。
×:界面にエマルション状の白濁が認められる。
【0045】
使用原料の詳細を下記に示す。
流動パラフィン:三光化学工業(株)製、流動パラフィンNo.70S
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:日油(株)製、パナセート810
ミリスチン酸イソプロピル:日油(株)製、IPM−R
パルミチン酸イソプロピル:日油(株)製、IPP−R
メントール:高砂香料工業(株)製、メントールJP
チモール:高砂香料工業(株)製
カルバクロール:高砂香料工業(株)製
ローズアブソリュート:長谷川香料(株)製
ラベンダーオイル:高砂香料工業(株)製
カモミールオイル:ヴェ・マンフィス香料(株)製
ジャスミンアブソリュート:ヴェ・マンフィス香料(株)製
オリスコンクリート:長谷川香料(株)製
バイオレットアブソリュート:長谷川香料(株)製
【0046】
【表1】
*;(B)、(C)、(D)成分を含まない香料。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】