特許第6031905号(P6031905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6031905ノボラック型フェノール樹脂の製造方法、フォトレジスト用樹脂組成物の製造方法および液晶デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031905
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ノボラック型フェノール樹脂の製造方法、フォトレジスト用樹脂組成物の製造方法および液晶デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/10 20060101AFI20161114BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C08G8/10
   G03F7/023 511
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-198809(P2012-198809)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2013-79369(P2013-79369A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-205833(P2011-205833)
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】真鳥 純
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−258099(JP,A)
【文献】 特開平08−220748(JP,A)
【文献】 特公平03−042657(JP,B2)
【文献】 特開2005−221515(JP,A)
【文献】 特開平11−255855(JP,A)
【文献】 特開2002−268214(JP,A)
【文献】 特開2007−254547(JP,A)
【文献】 特開2000−338660(JP,A)
【文献】 特開2006−233197(JP,A)
【文献】 特開平03−228059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00 −16/06
G03F 7/004− 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類と、トリメチルフェノール類と、ホルムアルデヒドと、を酸性触媒のもとで反応させる工程と、
前記反応させる工程により得られた反応物の脱水および脱モノマーを行う工程と、
を含むノボラック型フェノール樹脂の製造方法であって、
前記反応させる工程が、
前記フェノール類と、前記トリメチルフェノール類と、前記酸性触媒と、を仕込む工程と、
前記ホルムアルデヒドを添加する工程と、
を有しており、
前記フェノール類がメタクレゾールであり、
前記仕込む工程において、前記ノボラック型フェノール樹脂全量に対する前記メタクレゾールの含有量が75〜99重量%となり、かつ前記ノボラック型フェノール樹脂全量に対する前記トリメチルフェノール類の含有量が1〜25重量%となるように、前記フェノール類および前記トリメチルフェノール類の仕込み量を制御し、
前記ノボラック型フェノール樹脂のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が、15000〜45000であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中の二核体成分の割合が4.1%以上4.5%以下であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中の一核体成分の割合が2.0%以下であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項2】
前記トリメチルフェノール類が、2,3,5−トリメチルフェノールを含む請求項1記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項3】
前記仕込む工程において、前記フェノール類の仕込み量に対する前記ホルムアルデヒドの仕込み量のモル比率が、0.7〜1.5である請求項1または2に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項4】
前記ノボラック型フェノール樹脂がフォトレジストに用いられるものである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項5】
前記ノボラック型フェノール樹脂における水酸基の水酸基当量が110g/eq以上150g/eq以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項6】
ホルムアルデヒドを添加する前記工程における、前記ホルムアルデヒドの逐次添加温度が90〜110℃である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項7】
ホルムアルデヒドを添加する前記工程における、前記ホルムアルデヒドの逐次添加時間が60〜180分である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法により得られた前記ノボラック型フェノール樹脂と、感光剤と、溶剤を含有するようにフォトレジスト用樹脂組成物を調製する工程を含むことを特徴とするフォトレジスト用樹脂組成物の製造方法
【請求項9】
前記ノボラック型フェノール樹脂の水酸基がアルコキシアルキル基で保護されていないことを特徴とする請求項に記載のフォトレジスト用樹脂組成物の製造方法
【請求項10】
前記感光剤を、ポジ型レジストの感光剤として用いることを特徴とする請求項またはに記載のフォトレジスト用樹脂組成物の製造方法
【請求項11】
請求項乃至10のいずれか一項に記載のフォトレジスト用樹脂組成物の製造方法により得られた前記フォトレジスト用樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーを行う工程を含むことを特徴とする液晶デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノボラック型フェノール樹脂の製造方法、フォトレジスト用樹脂組成物の製造方法および液晶デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置回路または半導体集積回路のように微細な回路パターンは、以下の方法で形成する。まず、基板上に形成された絶縁膜または導電性金属膜に、フォトレジスト組成物を均一にコーティングまたは塗布する。次に、所定の形状のマスク存在下で、コーティングされたフォトレジスト組成物を露光・現像することにより、目的とする形状のレジストパターンを作成する。その後、パターンが形成されたフォトレジスト膜をマスクとして用いて、金属膜または絶縁膜を除去する。次に、残存するフォトレジスト膜を除去して基板上に微細回路を形成する。なお、フォトレジスト組成物は、可溶なフォトレジスト膜を形成する場合、ポジ型に、不溶なフォトレジスト膜を形成する場合、ネガ型に分類される。
【0003】
一般に、ポジ型フォトレジスト組成物には、ナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤と、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック型フェノ−ル樹脂)が用いられる。このような組成からなるポジ型フォトレジスト組成物は、露光後にアルカリ溶液による現像によって高い解像力を示すことから、IC、LSI等の半導体製造、LCD等の液晶表示画面機器の製造及び印刷原版の製造等に利用されている。
【0004】
また、ノボラック型フェノ−ル樹脂は、プラズマドライエッチングに対し、芳香環を多く持つ構造に起因する高い耐熱性も有している。このため、ノボラック型フェノ−ル樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤とを含有する数多くのポジ型フォトレジストが、開発、実用化されており、これまでに大きな成果を挙げている。
【0005】
実用面という観点において、液晶表示装置回路用フォトレジスト組成物に求められる重要な特性は、形成されたレジスト膜の感度、現像コントラスト、解像度、基板との接着力、残膜率、耐熱性、および回路線幅均一度(CD uniformity)である。これらの中でも高耐熱化という観点において、アルキルフェノ−ル類や芳香族アルデヒドなどのモノマーを適用することが検討されている。しかしながら、いずれのモノマーも、耐熱性について若干の向上は見られるものの、飛躍的な効果は得られていない。また、液晶表示装置回路用フォトレジスト組成物には、フォトレジスト工程技術の進化に伴って、これまでよりもさらに高温領域下での耐熱性が要求されている。
【0006】
フォトレジスト用樹脂組成物の特性を向上させる技術として、特許文献1−3に記載の技術がある。
【0007】
特許文献1には、フォトレジスト特性を向上させるためにノボラック樹脂を分溜(Fractionation)処理する方法が開示されている。
【0008】
特許文献2には、解像度および耐熱性が向上したポジ型レジストを得るため、樹脂組成物から標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1000〜5000の低分子量成分を除去する技術が開示されている。
【0009】
特許文献3には、化学増幅型のフォトレジスト組成物が開示されている。特許文献3に記載の技術においては、フォトレジスト組成物の感度および解像度を向上させるために、ノボラック型フェノール樹脂の水酸基の一部または全部をアルコキシアルキル基で保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2002−508415号公報
【特許文献2】特開平6−59445号公報
【特許文献3】特開2003−98669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1−3の出願時と比べて、フォトレジスト用樹脂組成物の感度や耐熱性等の各種特性について要求される技術水準は高くなっている。
【0012】
本発明は、優れた耐熱性と良好な感度を併せもつフォトレジスト用樹脂組成物に用いることができるノボラック型フェノール樹脂と、これを用いたフォトレジスト用樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、優れた耐熱性と良好な感度を併せもつフォトレジスト用樹脂組成物を提供するため、モノマーの配合組成、や平均分子量の組み合わせについて鋭意検討した。その結果、従来のm−クレゾールとp−クレゾールを混合してなるモノマーでは、優れた耐熱性が得られないこと、およびm−クレゾール、p−クレゾールおよびトリメチルフェノールからなるモノマーを用いた場合では感度が低下してしまうことを知見した。そして、本発明者らはフォトレジスト用樹脂組成物の耐熱性と感度が共に優れており、かつバランスのよいものとするために、m−クレゾールとトリメチフェノール類を特定の割合で配合したモノマーを用い、かつノボラック型フェノール樹脂での重量平均分子量や二核体成分の割合を特定の値となるよう高度に制御することが、有効であることを見出し、本発明に至った。
【0014】
本発明によれば、フェノール類と、トリメチルフェノール類と、ホルムアルデヒドと、を酸性触媒のもとで反応させる工程と、
前記反応させる工程により得られた反応物の脱水および脱モノマーを行う工程と、
を含むノボラック型フェノール樹脂の製造方法であって、
前記反応させる工程が、
前記フェノール類と、前記トリメチルフェノール類と、前記酸性触媒と、を仕込む工程と、
前記ホルムアルデヒドを添加する工程と、
を有しており、
前記フェノール類がメタクレゾールであり、
前記仕込む工程において、前記ノボラック型フェノール樹脂全量に対する前記メタクレゾールの含有量が75〜99重量%となり、かつ前記ノボラック型フェノール樹脂全量に対する前記トリメチルフェノール類の含有量が1〜25重量%となるように、前記フェノール類および前記トリメチルフェノール類の仕込み量を制御し、
前記ノボラック型フェノール樹脂のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が、15000〜45000であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中の二核体成分の割合が4.1%以上4.5%以下であり、
前記ノボラック型フェノール樹脂中の一核体成分の割合が2.0%以下であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法が提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、上記ノボラック型フェノール樹脂の製造方法により得られた前記ノボラック型フェノール樹脂と、感光剤と、溶剤を含有するようにフォトレジスト用樹脂組成物を調製する工程を含むことを特徴とするフォトレジスト用樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、上記フォトレジスト用樹脂組成物の製造方法により得られた前記フォトレジスト用樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーを行う工程を含むことを特徴とする液晶デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性、感度、および残膜率に優れたフォトレジスト用樹脂組成物に用いることができるノボラック型フェノール樹脂と、これを用いたフォトレジスト用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂及びフォトレジスト用樹脂組成物について詳細に説明する。
【0019】
<ノボラック型フェノール樹脂>
本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、フェノ−ル類と、トリメチルフェノール類と、ホルムアルデヒドと、を酸性触媒のもとで反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂であって、フェノール類は、メタクレゾールを含んでおり、当該ノボラック型フェノール樹脂の組成は、メタクレゾール(以下、「m−クレゾール」とも云う。)を樹脂全体の75〜99重量%、トリメチルフェノール類を樹脂全体の1〜25重量%配合している。また、当該ノボラック型フェノール樹脂について、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、15000〜45000であり、二核体成分の割合は4.0%以上である。
【0020】
まず、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、フォトレジスト用樹脂組成物に含有させるものである。なお、後述に詳説するが、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物は、優れた耐熱性と良好な感度をバランスよく併せもつことを特徴としている。なお、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物は、ポジ型フォトレジストとして用いることが好ましい。以下、フォトレジスト用樹脂組成物をポジ型フォトレジストとして用いる場合を、例に説明する。
【0021】
ノボラック型フェノール樹脂をフォトレジスト用樹脂組成物に用いる場合、ノボラック型フェノール樹脂に関して以下に挙げる(i)〜(iii)の条件が、フォトレジスト用樹脂組成物の特性変化に関与しているものと考えられる。
(i)ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量
(ii)ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶解時間
(iii)ノボラック型フェノール樹脂に配合する各種フェノール類の組成
【0022】
まず、(i)ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は、フォトレジスト用樹脂組成物の耐熱性に関与している。しかしながら、上記発明が解決する課題の項で述べたように、重量平均分子量を最適化しただけでは、フォトレジスト用樹脂組成物の耐熱性と感度のバランスが崩れるものと考えられる。
【0023】
次に、(ii)ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶解時間は、実際にフォトリソグラフィーにフォトレジスト用樹脂組成物を用いる場合における露光処理後に行う、現像のしやすさに関与している。なお、アルカリ溶解時間と感度の間には、相関関係がある。具体的に、フォトリソグラフィーにおいて現像を行う際に用いる現像液としては、アルカリ溶液を用いることが一般的である。このため、フォトレジスト用樹脂組成物の主要な構成であるノボラック型フェノール樹脂についても、アルカリ溶液への溶解度を向上させることが重要となる。こうすることによって、フォトレジスト用樹脂組成物の感度を向上させることが可能である。
【0024】
次に、(iii)ノボラック型フェノール樹脂に配合する各種フェノール類の組成は、フォトレジスト用樹脂組成物の耐熱性と感度のバランスに関与している。このため、優れた耐熱性と良好な感度を併せもつフォトレジスト用樹脂組成物を得るためには、各種フェノール類の組成を適切に選択する必要がある。
【0025】
なお、上記課題を解決するための手段の項でも説明したように、(i)〜(iii)を最適化しただけでは、本実施形態に係る優れた耐熱性と良好な感度を併せもつフォトレジスト用樹脂組成物は得るためには、不十分であった。本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、上記(i)〜(iii)の条件にくわえ、ノボラック型フェノール樹脂における二核体成分の割合を高度に制御したものである。
【0026】
ここで、本実施形態に係る「耐熱性」は、以下の方法で求められる値を示している。まず、フォトレジスト用樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成し、30分間焼き締めを行う。焼き締めを行ったレジストパターンを、走査型電子顕微鏡等の手段で観察し、レジストパターンのダレが生じるなどの正常なレジストパターンが得られなくなった時の焼き締め温度を耐熱温度とする。この耐熱温度が、130℃以上である場合、本実施形態では耐熱性に優れていることを示している。
【0027】
次に、ここで、本実施形態に係る「感度」は、以下の方法で評価したものである。まず、フォトレジスト用樹脂組成物が約1μmの厚さになるようにレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンに対し、20〜80mJ/cm紫外線を照射し、現像液として2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用い90秒間現像する。次に、現像後のレジストパターンを、走査型電子顕微鏡等の手段で観察し、画像が形成できているかどうかを評価する。この時、40mJ/cm以下の紫外線で画像を形成できている場合、本実施形態では感度に優れていることを示している。なお、40mJ/cm以上の紫外線で画像を形成できたとしても、露光速度が遅いため、フォトリソグラフィーに使用することは困難である。
【0028】
以下、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂について詳説する。
【0029】
上記でも述べたように、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、フォトレジスト用樹脂組成物として好適に用いることができる。
本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、m−クレゾールと、トリメチルフェノール類を所定の比率で用いる。こうすることにより、フォトレジスト用に適したアルカリ溶解時間を有する樹脂を得ることができる。さらに、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、フォトレジストの耐熱性を向上させるため、樹脂の重量平均分子量を高くしている。従来、樹脂の重量平均分子量が高すぎる場合、アルカリ溶解時間が遅くなるが、フェノール類としてm−クレゾールを単独で用い、かつ樹脂中の二核体成分量を4.0%以上することでこれらの欠点を補える。このようなノボラック型フェノール樹脂を用いることで、高残膜率を兼ね備えており、さらに高感度・高耐熱性であるフォトレジスト用樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、酸性触媒存在下、フェノ−ル類と、トリメチルフェノール類と、ホルムアルデヒドとを、反応させることによって得られる。
本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、m−クレゾールを樹脂全体の75〜99重量%、トリメチルフェノール類を樹脂全体の1〜25重量%を配合している。こうすることで、フォトレジスト用に適したアルカリ溶解時間を有するだけでなく、耐熱性と感度のバランスに優れたフォトレジスト用樹脂組成物に用いることができるノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、m−クレゾールを樹脂全体の80〜95重量%、トリメチルフェノール類を樹脂全体の5〜20重量%の割合で配合することが好ましい。こうすることで、フォトレジスト用樹脂組成物として用いることに適したアルカリ溶解時間を有するノボラック型フェノール樹脂とすることができるとともに、フォトレジストの耐熱性をさらに向上させることができる。この理由としては、三官能性のノボラック樹脂モノマーを得ることができるm−クレゾールを大量に配合したことにより、トリメチルフェノール類との高分子量化が容易になることが考えられる。これにより、高分子化した場合においても、優れたアルカリ溶解時間を有するノボラック型フェノール樹脂が得られるものと考えられる。
【0032】
次に、トリメチルフェノール類としては、2,3,5−トリメチルフェノールを用いることが好ましい。こうすることによって、当該ノボラック型フェノール樹脂を用いて得られるフォトレジスト用樹脂組成物の耐熱性と感度のバランスを、高度に制御することができる。
【0033】
また、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂を製造するためには、ホルムアルデヒドを用いる。このように、ノボラック型フェノール樹脂を得るために、ホルムアルデヒドを単独で用いることによって、樹脂の重量平均分子量を上げたとしても優れたアルカリ溶解時間を有するノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態において、上記フェノール類に対するホルムアルデヒドのモル比率は、0.7〜1.5が好ましく、0.8〜1.2であるとさらに好ましい。こうすることで、フォトレジスト用樹脂組成物に用いるために適した重量平均分子量を有するノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
【0035】
本実施形態に係る酸性触媒としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、ホウ酸などの無機酸類、蓚酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類が挙げられ、これらを単独で使用しても、混合して使用してもよい。なお、本実施形態に係る酸性触媒としては、モノマー除去時に分解、昇華などにより反応系から容易に除去できるものが好ましい。
【0036】
また、本実施形態に係る酸性触媒の使用量は、反応系内のpHが1〜6の範囲になる量を用いることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂の、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は、15000〜45000であり、好ましくは20000〜40000である。こうすることで、ノボラック型フェノール樹脂の軟化点を上昇させることができるため、ノボラック型フェノール樹脂を用いたフォトレジストの耐熱性を向上させることができる。なお、所定量のトリメチルフェノール類を配合するとともに、ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量を上記範囲に設定することで、樹脂中の構造が規則的になる。このため、耐熱性と感度のバランスに優れたノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。ただし、重量平均分子量が低い場合、耐熱性は悪くなり、高すぎる場合、感度が悪くなる。すなわち、ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量を上記範囲とすることで、耐熱性と感度のバランスに優れたフォトレジスト用樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、標準物質としてポリスチレンを用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。このGPC測定は、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを用い、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。また、GPC測定に用いた装置およびカラムは、以下のとおりである。クロマトグラフとしては、TOSOH社製・「HLC−8020」を、検出器としては、波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」を、分析用カラムとしては、昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」をそれぞれ使用した。
【0039】
また、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂の二核体成分は4.0%以上である。こうすることで、ノボラック型フェノール樹脂を用いたフォトレジスト用組成物の露光後のアルカリ溶解性を高めることができるため、フォトレジストの感度を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂の遊離モノマー(一核体成分)は、好ましくは3.0%以下であり、更に好ましくは2.0%以下である。こうすることにより、より一層優れた耐熱性と良好な感度を併せもつフォトレジスト用樹脂組成物に用いることができるノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂における水酸基の水酸基当量は、110g/eq以上150g/eq以下であることが好ましく、110g/eq以上130g/eq以下であるとさらに好ましい。こうすることによって、より一層優れた耐熱性と良好な感度を併せもつフォトレジスト用樹脂組成物に用いることができるノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
ここで、特許文献3では、化学増幅型のフォトレジスト組成物に用いるノボラック型フェノール樹脂として、水酸基に対して保護基を付与したものを用いている。すなわち、ノボラック型フェノール樹脂における水酸基数を低減させたものを用いている。これに対し、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂は、水酸基を保護していないものである。このため、本実施形態と特許文献3に記載のノボラック型フェノール樹脂における水酸基の水酸基当量では、本実施形態の方が、低い値を示す。
【0042】
次に、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂の製造方法を、反応手順に沿って説明する。
【0043】
ノボラック型フェノール樹脂の製造反応は、まず、攪拌機、温度計、および熱交換機を備えた反応装置に対し、フェノール類、トリメチルフェノール類、酸性触媒を所定の配合量ずつ仕込む。次に、反応装置内の温度を、所定温度まで昇温後、ホルムアルデヒドの逐次添加を開始する。なお、逐次添加温度や時間はモノマーの反応性、目的とする特性によって適宜設定できるが、安定かつ経済的に製造可能なレベルに設定する。
【0044】
ホルムアルデヒドの逐次添加温度は、好ましくは70〜130℃であり、さらに好ましくは90〜110℃である。こうすることで、急激な昇温をすることなく、適正な速度で反応を進めることができる。
【0045】
ホルムアルデヒドの逐次添加時間は、好ましくは30〜300分間であり、さらに好ましくは60〜180分間である。こうすることで、急激な昇温をすることなく、適正な速度で反応を進めることができる。
【0046】
なお、逐次添加終了後、必要によってそのまま反応を継続することができる。また、逐次添加・反応時において、必要によって反応溶媒を添加使用することもでき、特に溶媒の種類は限定されないが、フェノール樹脂を溶解する溶媒であれば好ましい。このような溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ブタノール等のアルコール類、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類等が挙げられる。
【0047】
次に、上記反応後、常圧下及び減圧下で脱水・脱モノマーを行う。こうすることで、ノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。なお、脱水・脱モノマーの条件は、特に限定されないが、得られたノボラック型フェノール樹脂の安定性(バラツキ)や粘度の観点から、減圧度は、0〜200Torr程度、反応装置からの取り出し温度は、150〜200℃で行うことが好ましい。
【0048】
<フォトレジスト用樹脂組成物>
本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物は、上記本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂、感光剤、および溶剤を含むことを特徴とする。なお、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物に含まれるノボラック型フェノール樹脂の水酸基が、アルコキシアルキル基で保護されていないことが好ましい。また、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物は、ポジ型レジストとして用いることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る感光剤としては、特に限定されないが、例えば、
(1)2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2'−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4',6−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4,4'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4',5',6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3',4,4',5'−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類、
(2)ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2',3',4'−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−{1−[4−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール,3,3'−ジメチル−{1−[4−〔2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類、
(3)トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体、
(4)ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン等の、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体等とナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等のキノンジアジド基含有スルホン酸との完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物又は部分アミド化物、等が挙げられる。なお、本実施形態に係る感光剤としては、ポジ型レジストの感光剤として用いることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、ジオキサンのような環式エーテル類及び、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル類が挙げられ、これらは一種単独で用いてもよいし、また2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
本実施形態に係る溶剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは組成物の固形分濃度が全体に対して30〜65重量%であり、さらに好ましくは50〜65重量%である。このように固形分濃度を上記範囲とすることで、組成物の流動性を良好なものにすることができると共に、均一なレジストフィルムを得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物には、以上に説明した成分のほかにも、必要により、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤等の種々の添加剤を使用してもよい。
【0053】
また、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物の調製方法としては、特に限定されないが、組成物に充填材、顔料を添加しない場合には、各種成分を通常の方法で混合・攪拌するだけでよく、充填材、顔料を添加する場合には、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散、混合させればよい。また、必要に応じて、さらにメッシュフィルター、メンブレンフィルター等を用いて濾過してもよい。
【0054】
なお、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物は、当該フォトレジスト用樹脂組成物に対しマスクを介して露光を行なうことで、露光部においては組成物に構造変化が生じ、アルカリ現像液に対する溶解性を促進することができる。一方、非露光部においてはアルカリ現像液に対する低い溶解性を保持しているため、こうして生じた溶解性の差により、レジスト機能を付与することができる。また、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物において、耐熱性の向上にはノボラック樹脂の高分子量化が重要であると考えられる。高分子量化による感度の低下を補うものとして、ジヒドロキシベンゼン又はその誘導体が挙げられる。
【0055】
なお、本実施形態に係るノボラック型フェノール樹脂を用いたフォトレジスト用樹脂組成物をフォトリソグラフィーに使用する際、以下に説明する方法を用いる。
まず、ノボラック型フェノール樹脂、感光剤および溶剤を混合する。混合して得られたフォトレジスト用樹脂組成物を、フォトリソグラフィーを行う対象物上に塗布してレジストパターンを形成する。なお、本実施形態に係るフォトレジスト用樹脂組成物は、ポジ型レジストである場合、露光しない限り現像液には溶解しない。
次に、レジストパターンに対し露光を行った後、レジストパターンを現像する。なお、レジストパターンにおいて、露光した箇所では、感光剤が化学変化することによりカルボン酸となる。このため、露光した箇所のみ現像液に溶かすことができる。また、現像液に溶かす際、感光剤の作用により、溶解性に差をつけることも可能であり、これによってコントラストのパターンを形成することができる。
その後、製造したレジストパターンをマスクとして所定の膜をエッチング加工することにより、液晶デバイスの層構造を形成することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.フェノール類と、トリメチルフェノール類と、ホルムアルデヒドと、を酸性触媒のもとで反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂であって、
前記フェノール類は、メタクレゾールを含み、
当該ノボラック型フェノール樹脂は、前記メタクレゾールを樹脂全体の75〜99重量%、前記トリメチルフェノール類を樹脂全体の1〜25重量%配合しており、
GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が、15000〜45000であり、二核体成分の割合が4.0%以上であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂。
2.前記トリメチルフェノール類が、2,3,5−トリメチルフェノールを含む1.記載のノボラック型フェノール樹脂。
3.前記フェノール類に対する前記ホルムアルデヒドのモル比率が、0.7〜1.5である1.又は2.に記載のノボラック型フェノール樹脂。
4.フォトレジストに用いられるものである1.乃至3.のいずれかに記載のノボラック型フェノール樹脂。
5.当該ノボラック型フェノール樹脂における水酸基の水酸基当量が110g/eq以上150g/eq以下である1.乃至4.のいずれか一つに記載のノボラック型フェノール樹脂。
6.1.乃至5.のいずれかに記載のノボラック型フェノール樹脂、感光剤及び溶剤を含有することを特徴とするフォトレジスト用樹脂組成物。
7.前記ノボラック型フェノール樹脂の水酸基がアルコキシアルキル基で保護されていないことを特徴とする6.に記載のフォトレジスト用樹脂組成物。
8.前記感光剤を、ポジ型レジストの感光剤として用いることを特徴とする6.または7.に記載のフォトレジスト用樹脂組成物。
9.6.乃至8.のいずれか一つに記載のフォトレジスト用樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーを行う工程を含むことを特徴とする液晶デバイスの製造方法。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により説明する。しかし本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。また、実施例及び比較例に記載されている「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。なお、遊離モノマーの含有量は、GPC測定による面積比率から算出したものである。
【0057】
<ノボラック型フェノール樹脂の合成>
(実施例1)
攪拌機、温度計、熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、m−クレゾール900部、2,3,5−トリメチルフェノール100部、シュウ酸5部を仕込み、四つ口フラスコの内温を97〜103℃まで上昇させた。次に、37%ホルマリン735部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=1.000)を、四つ口フラスコの内温を97〜103℃に維持しながら3時間かけて添加した。その後、2時間還流反応を行った。次に、常圧条件下で180℃まで脱水・脱モノマーを行うことで、ノボラック型フェノール樹脂(A)1000部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量30000、二核体成分4.5%、遊離モノマー1.3%であった。
【0058】
(実施例2)
37%ホルマリンを880部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=1.200)用いた点以外は、実施例1と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(B)1050部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量40000、二核体成分4.2%、遊離モノマー1.2%であった。
【0059】
(実施例3)
m−クレゾールを850部、2,3,5−トリメチルフェノールを150部用いた点、37%ホルマリンを800部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=1.100)用いた点以外は、実施例1と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(C)1020部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量20000、二核体成分4.5%、遊離モノマー1.4%であった。
【0060】
(実施例4)
37%ホルマリンを910部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=1.250)用いた点以外は、実施例3と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(D)1060部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量30000、二核体成分4.1%、遊離モノマー1.1%であった。
【0061】
(実施例5)
m−クレゾールを800部、2,3,5−トリメチルフェノールを200部用いた点、37%ホルマリンを885部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=1.200)用いた点以外は、実施例1と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(E)1030部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量20000、二核体成分4.5%、遊離モノマー1.5%であった。
【0062】
(実施例6)
37%ホルマリンを935部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=1.268)用いた点以外は、実施例5と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(F)1050部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量30000、二核体成分4.2%、遊離モノマー1.2%であった。
【0063】
(比較例1)
攪拌機、温度計、熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、m−クレゾール600部、パラクレゾール400部を仕込み、四つ口フラスコの内温を97〜103℃まで上昇させた。次に、37%ホルマリン500部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=0.675)を、四つ口フラスコの内温を97〜103℃に維持しながら3時間かけて添加した。その後、2時間還流反応を行った。次に、常圧条件下で脱水を行い、四つ口フラスコの内温を150℃まで上昇さした後、70Torrの減圧下で内温200℃まで脱水・脱モノマーを行うことで、ノボラック型フェノール樹脂(G)700部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量30000、二核体成分6.5%、遊離モノマー2.4%であった。
【0064】
(比較例2)
m−クレゾールを540部、パラクレゾールを360部用いた点、m−クレゾールとパラクレゾールに加えて2,3,5−トリメチルフェノールを100部用いた点、37%ホルマリンを580部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=0.800)用いた点、以外は、比較例1と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(H)720部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量30000、二核体成分7.1%、遊離モノマー2.2%であった。
【0065】
(比較例3)
m−クレゾールを480部、パラクレゾールを320部、2,3,5−トリメチルフェノールを200部用いた点、37%ホルマリンを610部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=0.850)用いた点以外は、比較例2と同様の方法を用いた。この方法により、ノボラック型フェノール樹脂(I)740部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量30000、二核体成分7.4%、遊離モノマー2.3%であった。
【0066】
(比較例4)
攪拌機、温度計、熱交換機を備えた3Lの四つ口フラスコに、m−クレゾール900部、2,3,5−トリメチルフェノール100部、シュウ酸5部を仕込み、四つ口フラスコの内温を97〜103℃まで上昇させた。次に、37%ホルマリン720部(全フェノール類に対する仕込みモル比A/C=0.980)を、四つ口フラスコの内温を97〜103℃に維持しながら3時間かけて添加した。その後、2時間還流反応を行った。次に、常圧条件下で180℃まで脱水・脱モノマーを行い、次いで分溜を行なうことにより、二核体成分及び遊離モノマーを取り除きノボラック型フェノール樹脂(J)850部を得た。なお、得られた樹脂は、重量平均分子量40000、二核体成分3.0%、遊離モノマー0.8%であった。
【0067】
ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、標準物質としてポリスチレンを用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。このGPC測定は、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを用い、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。また、GPC測定に用いた装置およびカラムは、以下のとおりである。クロマトグラフとしては、TOSOH社製・「HLC−8020」を、検出器としては、波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」を、分析用カラムとしては、昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」をそれぞれ使用した。
【0068】
ノボラック型フェノール樹脂の水酸基礎当量は、以下の方法で測定した。
まず、ノボラック型フェノール樹脂10gを、100ml三角フラスコに秤取った。次に、秤量したノボラック型フェノール樹脂を、無水酢酸−ピリジン混合液に溶解させることによって、ノボラック型フェノール樹脂のアセチル化反応を行った。なお、アセチル化反応を終了する際は、三角フラスコに純水を添加することにより、反応を停止した。反応終了後、三角フラスコ内にクレゾールレッドとチモールブルーを指示薬として添加し、水酸化ナトリウム溶液を標準液として用いて、pOH滴定を行い、水酸基当量を算出した。
本実施例および比較例によって得られたノボラック型フェノール樹脂(A)〜(J)の水酸基当量は、後述の表1に示す。
【0069】
<フォトレジスト用樹脂組成物の調製>
(実施例7)
実施例1で得られたノボラック型フェノール樹脂(A)70部、ナフトキノン1,2−ジアジド−5−スルホン酸の2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンエステル15部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)150部に溶解した。その後、孔径1.0μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、ポジ型のフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0070】
(実施例8)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、実施例2で得られたノボラック型フェノール樹脂(B)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0071】
(実施例9)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、実施例3で得られたノボラック型フェノール樹脂(C)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0072】
(実施例10)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、実施例4で得られたノボラック型フェノール樹脂(D)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0073】
(実施例11)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、実施例5で得られたノボラック型フェノール樹脂(E)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0074】
(実施例12)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、実施例6で得られたノボラック型フェノール樹脂(F)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0075】
(比較例5)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、比較例1で得られたノボラック型フェノール樹脂(G)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0076】
(比較例6)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、比較例2で得られたノボラック型フェノール樹脂(H)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0077】
(比較例7)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、比較例3で得られたノボラック型フェノール樹脂(I)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0078】
(比較例8)
ノボラック型フェノール樹脂(A)ではなく、比較例4で得られたノボラック型フェノール樹脂(J)を用いた点以外は、実施例7と同様の方法でフォトレジスト用樹脂組成物を調製した。
【0079】
実施例7〜12、及び比較例5〜8で得られたフォトレジスト用樹脂組成物を用いて、に対し、下記に示す特性評価を行った。
【0080】
(評価項目)
(1)耐熱性(耐熱温度)
フォトレジスト用樹脂組成物をヘキサメチルジシラザン処理したシリコンウエハ上に、スピンコーターで乾燥時の膜厚が1.5μmになるように塗布し、110℃,90秒間ホットプレート上で乾燥させた。その後、縮小投影露光装置を用い、テストチャートマスクを介して露光し、現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、50秒間現像した。得られたシリコンウエハを、温度を変えたホットプレート上に30分間放置した。次に、シリコンウエハ上のレジストパターンの形状を走査型電子顕微鏡で観察し、正常なレジストパターンが得られなくなった時の温度を耐熱温度とした。
【0081】
(2)感度の測定方法
フォトレジスト用樹脂組成物を3インチのシリコンウエハ上に、スピンコーターで乾燥時の膜厚が約1μmになるように塗布し、110℃,100秒間ホットプレート上で乾燥させた。次に、このシリコンウエハにテストチャートマスクを重ね、20m、40、60および80mJ/cmの紫外線をそれぞれ照射し、現像液(2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用い90秒間現像した。得られたパターンを走査型電子顕微鏡でパターン形状を観察し、以下のA〜Eに係る評価基準で感度を評価した。
【0082】
A 20mJ/cm未満で画像が形成できる。
B 20〜40mJ/cmで画像が形成できる。
C 40〜60mJ/cmで画像が形成できる。
D 60〜80mJ/cmで画像が形成できる。
E 80mJ/cm以上でも画像が形成できない。
【0083】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1からも分かるように、実施例7〜12のフォトレジスト用組成物は、いずれも比較例の値と比較して、高耐熱性かつ高感度であり、さらに耐熱性と感度のバランスに優れていた。実際に、実施例に記載のフォトレジスト用組成物を用いて液晶デバイスを製造した場合、精度の高い微細回路を有する液晶デバイスが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のノボラック型フェノール樹脂を用いたフォトレジスト用樹脂組成物は、良好な熱安定性を有し、かつ高感度であることから、液晶表示装置回路や半導体集積回路の微細回路製造に好適に用いることができる。