(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、複数の摩擦要素を含む変速機構及び該変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置を有する自動変速機とを備えた車両のパワートレインシステムの制御方法であって、前記エンジンの排気経路上に触媒装置が配設されており、
走行レンジでの停車状態にて、運転者による当該車両に対する制動要求があるときに、前記触媒装置の活性化促進のためのアイドルアップ要求があるか否かを判定するアイドルアップ要求判定ステップと、
該アイドルアップ要求判定ステップでアイドルアップ要求があると判定されたときに、前記変速機構における発進用摩擦要素を締結状態から所定スリップ状態に移行させるニュートラルアイドルステップと、
同じくアイドルアップ要求があると判定されたときに、前記変速機構における発進用摩擦要素以外の所定摩擦要素を締結することにより、該変速機構をインターロック状態とするインターロックステップと、
前記変速機構がインターロック状態であるか否かを判定するインターロック判定ステップと、
該インターロック判定ステップで前記変速機構がインターロック状態であると判定されたときに、前記触媒装置が活性状態にあるときに比べてアイドル回転数を上昇させてその回転数を保持するアイドルアップステップとを含む、ことを特徴とするパワートレインシステムの制御方法。
前記インターロックステップは、前記ニュートラルアイドルステップにより発進用摩擦要素が所定スリップ状態となった後も、アイドルアップステップが終了するまで実施することを特徴とする、請求項1に記載のパワートレインシステムの制御方法。
エンジンと、複数の摩擦要素を含む変速機構及び該変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置を有する自動変速機とを備えた車両のパワートレインシステムであって、
前記エンジンの排気経路上に触媒装置が配設されている場合に、
走行レンジでの停車状態にて、運転者による当該車両に対する制動要求があるときには、前記触媒装置の活性化促進のためのアイドルアップ要求があるか否かを判定し、
アイドルアップ要求があると判定したときには、前記変速機構における発進用摩擦要素を締結状態から所定スリップ状態に移行させ、
同じくアイドルアップ要求があると判定したときには、前記変速機構における発進用摩擦要素以外の所定摩擦要素を締結することにより該変速機構をインターロック状態とし、
前記変速機構がインターロック状態であるか否かを判定し、
前記変速機構がインターロック状態であると判定したときには、前記触媒装置が活性状態にあるときに比べてアイドル回転数を上昇させてその回転数を保持するコントローラを備えた、ことを特徴とするパワートレインシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなニュートラルアイドル制御においては、発進用摩擦要素に供給される油圧が高く、スリップ量が少ない状態でアイドルアップ制御を開始すると、運転者の制動意志に反して車両が発進するおそれがある。同様に、供給される油圧が低く、スリップ量が多い状態でアイドルアップ制御を開始すると、発進時に発進用摩擦要素の締結が遅れ、発進の応答性が悪化するという問題が生じる。それゆえ、所定スリップ状態への制御は慎重に行う必要がある。
【0008】
そして、この問題は、停車状態にて非走行レンジから走行レンジに移行する際にニュートラルアイドル制御を行う場合の他、例えば、一旦走行した後に停車した場合等、既に走行レンジが選択されている状態でニュートラルアイドル制御を行う場合にも同様に生じうる。
【0009】
このような問題を回避するためには、発進用摩擦要素が所定スリップ状態に至った後にアイドルアップ制御を開始することが考えられる。しかし、特にATFの粘度が大きい冷間始動時は油圧を精度良くコントロールできないため、所定スリップ状態への良好な移行制御が難しく、さらに慎重な制御が必要となる。それゆえ、発進用摩擦要素が締結状態から所定スリップ状態に至るまでには時間を要し、アイドルアップ制御の開始が遅れて、触媒活性化促進効果を充分に高めることができない。
【0010】
そこで、本発明は、運転者の制動意志に反した発進や、発進の応答性が悪化する等の問題を招かず、しかも触媒装置の活性化時間が短縮され、触媒活性化促進効果に優れた車両のパワートレインシステムの制御方法及びパワートレインシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るパワートレインシステムの制御方法及びパワートレインシステムは、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、エンジンと、複数の摩擦要素を含む変速機構及び該変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置を有する自動変速機とを備えた車両のパワートレインシステムの制御方法であって、前記エンジンの排気経路上に触媒装置が配設されて
おり、走行レンジでの停車状態にて、運転者による当該車両に対する制動要求があるときに、前記触媒装置の活性化促進のためのアイドルアップ要求があるか否かを判定するアイドルアップ要求判定ステップと、該
アイドルアップ要求判定ステップでアイドルアップ要求があると判定されたときに、前記変速機構における発進用摩擦要素を締結状態から所定スリップ状態に移行させるニュートラルアイドルステップと、同じくアイドルアップ要求があると判定されたときに、前記変速機構における発進用摩擦要素以外の所定摩擦要素を締結することにより該変速機構をインターロック状態とするインターロックステップと、
前記変速機構がインターロック状態であるか否かを判定するインターロック判定ステップと、該
インターロック判定ステップで前記変速機構がインターロック状態
であると判定されたときに、前記触媒装置が活性状態にあるときに比べてアイドル回転数を上昇させてその回転数を保持するアイドルアップステップとを含む、ことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記所定スリップ状態とは、発進用摩擦要素の入力側回転数と出力側回転数との差回転が所定回転数である状態である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の方法において、前記インターロックステップは、前記ニュートラルアイドルステップにより発進用摩擦要素が所定スリップ状態となった後も、アイドルアップステップが終了するまで実施することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、エンジンと、複数の摩擦要素を含む変速機構及び該変速機構にエンジン出力を伝達する流体伝動装置を有する自動変速機とを備えた車両のパワートレインシステムであって、前記エンジンの排気経路上に触媒装置が配設されている場合に、走行レンジでの停車状態にて、運転者による当該車両に対する制動要求があるときには、前記触媒装置の活性化促進のためのアイドルアップ要求があるか否かを判定し、アイドルアップ要求があると判定したときには、前記変速機構における発進用摩擦要素を締結状態から所定スリップ状態に移行させ、同じくアイドルアップ要求があると判定したときには、前記変速機構における発進用摩擦要素以外の所定摩擦要素を締結することにより該変速機構をインターロック状態とし、
前記変速機構がインターロック状態であるか否かを判定し、前記変速機構がインターロック状態
であると判定したときには、前記触媒装置が活性状態にあるときに比べてアイドル回転数を上昇させてその回転数を保持するコントローラを備えた、ことを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の方法において、前記所定摩擦要素は、油圧式のクラッチであり、前記インターロック判定ステップでは、前記所定摩擦要素に供給されている油圧が所定油圧に達したときに、前記変速機構がインターロック状態であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成により、前記各請求項の発明によれば、それぞれ次の効果が得られる。
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、発進用摩擦要素の所定スリップ状態への移行は、発進の応答性の悪化を防止する等の目的のため、特に冷間始動時には慎重に時間をかけて行われるところ、変速機構がインターロック状態とされることにより、発進用摩擦要素の所定スリップ状態への制御中にアイドル回転数を上昇させても運転者の制動意志に反して車両が発進することはない。それゆえ、該所定スリップ状態への制御が完了する前に、変速機構がインターロック状態とされた時点でエンジンのアイドル回転数を上昇させることができ、触媒装置の活性化時間が短縮され、触媒活性化促進効果を充分に高めることができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、発進用摩擦要素を所定スリップ状態から締結して発進する際には、変速機構のインターロック状態も解除されることになるが、インターロック状態が完全に解除されるまでの間に発進用摩擦要素が締結されることにより、該発進用摩擦要素が締結されることによるショックの車体への伝達が緩和される。
【0019】
さらに、登降坂路における所定スリップ状態での停車中や制動解除の瞬間に所謂ヒルホールド機能が得られ、車両が前方又は後方へずり落ちることが防止される。
【0020】
そして、請求項3に記載の発明によれば、前記請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る車両のパワートレインシステムは、フロントエンジン・フロントドライブ車に適用されるものであって、横置きされたエンジン(図示せず)と、有段の自動変速機とを有する。また、エンジンの排気経路上には、排気ガス中の有害成分を除去するための触媒装置(図示せず)が配設されている。
【0023】
図1は、自動変速機1の構成を示す骨子図である。
自動変速機1は、エンジン出力軸Aに取り付けられたトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2を介してエンジン出力軸Aに駆動されるオイルポンプ3と、トルクコンバータ2(特許請求の範囲の「流体伝動装置」)の出力回転が入力軸4を介して入力される変速機構5等を有する。また、自動変速機1は、オイルポンプ3や変速機構5が入力軸4の軸心上に配置された状態で、変速機ケース6に収納されている。
【0024】
そして、変速機構5の出力回転が、同じく入力軸4の軸心上に配置された出力ギヤ7からカウンタドライブ機構8を介して差動装置9に伝達され、左右の車軸9a、9bが駆動される。
【0025】
トルクコンバータ2は、エンジン出力軸Aに連結されたケース2aと、そのケース2a内に固設されたポンプ2bと、ポンプ2bに対向配置されてそのポンプ2bにより作動油を介して駆動されるタービン2cと、ポンプ2bとタービン2cとの間に介設され、かつ、変速機ケース6にワンウェイクラッチ2dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ2eと、ケース2aとタービン2cとの間に設けられ、そのケース2aを介してエンジン出力軸Aとタービン2cとを直結するロックアップクラッチ2fとで構成されている。そして、タービン2cの回転が入力軸4を介して変速機構5に入力される。
【0026】
一方、変速機構5は、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、「第1、第2、第3ギヤセット」という)10、20、30を有する。これらのプラネタリギヤセットは、変速機ケース6内における出力ギヤ7の反トルクコンバータ側において、トルクコンバータ側から順に配置されている。
【0027】
また、変速機構5は、摩擦要素として、出力ギヤ7のトルクコンバータ側に、第1クラッチ40(特許請求の範囲の「発進用摩擦要素」)及び第2クラッチ50を有する。さらに、出力ギヤ7の反トルクコンバータ側には、第1ブレーキ60、第2ブレーキ70(特許請求の範囲の「所定摩擦要素」)及び第3ブレーキ80がトルクコンバータ側から順に配置されている。
【0028】
第1、第2、第3ギヤセット10、20、30は、いずれもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11、21、31と、これらのサンギヤにそれぞれ噛み合った各複数のピニオン12、22、32と、これらのピニオンをそれぞれ支持するキャリヤ13、23、33と、ピニオン12、22、32にそれぞれ噛み合ったリングギヤ14、24、34とで構成されている。
【0029】
そして、入力軸4が第3ギヤセット30のサンギヤ31に連結されていると共に、第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23、第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のキャリヤ33が、それぞれ連結されている。そして、第1ギヤセット10のキャリヤ13に出力ギヤ7が連結されている。
【0030】
また、第1ギヤセット10のサンギヤ11及び第2ギヤセット20のサンギヤ21は、第1クラッチ40を介して入力軸4に断接可能に連結されている。さらに、第2ギヤセット20のキャリヤ23は、第2クラッチ50を介して入力軸4に断接可能に連結されている。
【0031】
また、第1ギヤセット10のリングギヤ14及び第2ギヤセット20のキャリヤ23は、第1ブレーキ60を介して変速機ケース6に断接可能に連結されている。第2ギヤセット20のリングギヤ24及び第3ギヤセット30のキャリヤ33は、第2ブレーキ70を介して変速機ケース6に断接可能に連結されている。第3ギヤセット30のリングギヤ34は、第3ブレーキ80を介して変速機ケース6に断接可能に連結されている。
【0032】
以上の構成により、この変速機構5によれば、
図2に示すように、第1、第2クラッチ40、50及び第1、第2、第3ブレーキ60、70、80の締結状態の組み合わせにより、P(駐車)、R(後退)、N(中立)、D(前進)の各レンジと、Dレンジでの1〜6速とが達成される。なお、
図2の空欄部分は、摩擦要素が解放されていることを示す。また、この実施形態では、Pレンジ、Nレンジで、第1ブレーキ60が締結される。
【0033】
また、
図2には、本実施形態に係る自動変速機1のインターロック制御時、及び、ニュートラルアイドル制御時の摩擦要素の締結の組み合わせについても示す。
図2に示すように、1速で締結される第1クラッチ40及び第1ブレーキ60に加え、第2ブレーキ70が締結されるインターロック制御が行われる。この制御により、変速機構5の出力ギヤ7が固定される「インターロック状態」が実現され、さらに、第1クラッチ40が締結されていることから、入力軸4についても固定される。
【0034】
一方、
図2に示すニュートラルアイドル制御により、第1クラッチ40及び第1ブレーキ60が締結される1速の状態から、第1クラッチ40が所定スリップ状態とされる「ニュートラルアイドル状態」が実現される。この「所定スリップ状態」(以下、スリップ状態という)では、第1クラッチ40の入力側回転数と出力側回転数との差回転が、所定の目標スリップ回転数となる。
【0035】
さらに、第1クラッチ40がスリップ状態とされ且つ第1ブレーキ60が締結されると共に、第2ブレーキ70が締結された場合には、ニュートラルアイドル状態に加えて、変速機構5の出力ギヤ7が固定されるインターロック状態が実現される。
【0036】
ニュートラルアイドル状態からの発進時に第1クラッチ40が締結される際、運転者がこの締結によるショックを感じることがある。このとき、ニュートラルアイドル状態かつインターロック状態からの発進時には第2ブレーキ70が解放されるところ、この第2ブレーキ70に実際に供給されている油圧(実油圧)が低下してインターロック状態が完全に解除されるまでの間に第1クラッチ40が締結されることにより、この締結によるショックが緩和される。さらにこのとき、登降坂路における停車中や、登降坂路において運転者がブレーキペダルを離した瞬間には、ヒルホールド機能が得られ、車両が前方又は後方へずり落ちることが防止される。
【0037】
各摩擦要素40〜80の締結制御は、油圧によって行われる。自動変速機1には、そのための油圧制御回路90が備えられており、その概略の構成を
図3に示している。
【0038】
油圧制御回路90には、エンジン出力軸Aによってトルクコンバータ2を介して駆動されるオイルポンプ3(
図1参照)から元圧が供給される。油圧制御回路90は、この元圧を所定油圧のライン圧に調整するレギュレータバルブ91と、選択されたレンジに応じて油圧制御回路90の変速制御部92における各種ソレノイドバルブ93…93に選択的にライン圧を供給するマニュアルバルブ94とを備える。そして、DレンジやRレンジにおいて、ソレノイドバルブ93…93の作動に応じて、各摩擦要素40〜80に選択的に油圧が供給されることにより、
図2で説明したように、1〜6速及び後退速が実現される。
【0039】
また、この油圧制御回路90の変速制御部92から第2ブレーキ70へ油圧を供給するライン上には、第2ブレーキ圧センサ95が設けられており、このセンサ95によって第2ブレーキ70に供給される油圧を検出する。
【0040】
さらに、
図4に示すように、この実施形態に係るパワートレインシステムは、コントローラ100を有する。コントローラ100には、運転者によって選択されている自動変速機1のレンジを検出するレンジセンサ101からの信号と、当該車両の車速を検出する車速センサ102からの信号と、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ103からの信号とが入力される。コントローラ100は、これらの信号に基づいて、選択されたレンジや当該車両の運転状態に応じた変速段を決定し、その変速段が実現されるように、油圧制御回路90の変速制御部92における各種ソレノイドバルブ93…93に制御信号を出力する。
【0041】
ここで、コントローラ100は、エンジンの冷間始動時には、触媒装置の活性化促進のためのアイドルアップ制御を行う。また、コントローラ100は、車両の発進前におけるPレンジからDレンジへの移行後もアイドルアップ制御を行うために変速機構5をインターロック状態とするインターロック制御を行う。
【0042】
さらに、コントローラ100は、一旦走行後に停車したとき等であって、未だ触媒装置が非活性な場合には、この停車時にもアイドルアップ制御を行うために、第1クラッチ40をスリップさせて変速機構5をニュートラルアイドル状態とするニュートラルアイドル制御を行う。特に、このニュートラルアイドル制御を行うときには、第2ブレーキ70を締結する制御を行うと共に、第2ブレーキ70が締結されてインターロック状態とされたときに、アイドルアップを開始する制御を行う。
【0043】
そして、これらの制御用として、コントローラ100には、各センサ101〜103からの信号に加えて、運転者によるブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ104からの信号と、触媒装置の温度を検出する触媒温度センサ105からの信号と、第2ブレーキ圧センサ95からの信号とが入力される。
【0044】
次に、
図5のフローチャートを参照しながら、コントローラ100によるアイドルアップ制御について説明する。
以下の制御動作は、本発明に係るパワートレインシステムの制御方法に係る実施形態を構成する。なお、フローチャートの各ステップにおいて、「Nレンジ」は非走行レンジを意味し、N(中立)レンジ及びP(駐車)レンジを含むものとする。
【0045】
コントローラ100は、自動変速機1のレンジがPレンジの状態でエンジンのイグニッションスイッチがONされたときに制御動作を開始する(Ig−ON)。まず、ステップS1で、
図4に示す各センサ101〜105及び第2ブレーキ圧センサ95からの信号を入力する。次に、ステップS2で、Pレンジで締結される第1ブレーキ60を締結するように、油圧制御回路90に制御信号を出力する。
【0046】
次に、ステップS3で、車速センサ102の信号を基に、車両が停車している(車速が0km/h)か否かを判定する。そして、車両が停車していると判定したときには、ステップS4で、エンジンのアイドル回転数を上昇させるアイドルアップ要求があるか否かを判定する。
【0047】
ここで、この実施形態では、触媒温度センサ105から出力された信号が示す触媒装置の温度が活性化温度まで上昇していないときに、アイドルアップ要求があると判定する。或いは、触媒装置の温度はエンジン始動後の経過時間と共に上昇するので、その経過時間に基づいてアイドルアップ要求があるか否かを判定することもできる。
【0048】
エンジンの始動直後は触媒温度が低く、アイドルアップ要求があると判定される。それゆえ、次のステップS5で、ステップS3での停車判定時にDレンジが選択されていたか否かを判定する。
【0049】
また、エンジンの始動直後はPレンジが選択されている。それゆえ、ステップS5では、停車判定時にDレンジではなかったと判定し、次のステップS6での、現在Rレンジであるか否かの判定で、Rレンジでないと判定し、次のステップS7で、
図4に示すエンジン回転数制御装置110にエンジンのアイドル回転数を保持するように、即ちアイドルアップするように信号を出力する。これにより、エンジン始動後、走行開始前のPレンジの状態でアイドルアップが行われ、触媒装置の活性化が促進される。なお、ステップS6でRレンジであると判定したときは、アイドルアップせずにステップS9へ進むことになる。
【0050】
そして、Pレンジの状態でアイドルアップを実施する中、ステップS9で、ステップS3での停車判定時にレンジがNレンジであったか否かの判定で、Nレンジでなかったと判定する。次に、ステップS10で、レンジセンサ101の信号を基に、N−D操作が行われたか否か、即ち、運転者によってNレンジ(Pレンジを含む)からDレンジにシフト操作が行われたか否かを判定する。そして、N−D操作が行われたと判定するまでは、Pレンジでのアイドルアップを継続する。
【0051】
ここで、Pレンジの状態でアイドルアップを実施する中、N−D操作が行われると、ステップS10で、N−D操作が行われたと判定し、アイドルアップを継続したまま、ステップS14で、後述するインターロック制御のサブルーチンに移行する。
【0052】
一方、一旦走行した後に停車した際に、触媒装置が未だ非活性状態であり、ステップS4でアイドルアップ要求があると判定された場合は、停車時はDレンジであるため、ステップS5で、停車判定時にDレンジであったと判定し、ステップS15で運転者の制動要求を確認し(ブレーキON)、ステップS16で、後述するニュートラルアイドル制御のサブルーチンに移行する。なお、ステップS15で運転者がブレーキペダルを離したと判定したときは、アイドルアップせずにリターンすることになる。
【0053】
次に、
図6のフローチャートを参照しながら、コントローラ100によるインターロック制御について説明する。
まず、コントローラ100は、ステップS21で、第2ブレーキ70を締結すると共に、ステップS22で、第1クラッチ40を所定低減油圧で締結するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、自動変速機1の変速機構5はインターロック状態となる。このインターロック状態でシフト操作せずにブレーキペダルが踏まれている間は、アイドルアップが継続される。この「所定低減油圧」は、クラッチを確実に締結させる油圧であるが、車両の走行時に供給される正規油圧よりも低い油圧である。
【0054】
Dレンジのままブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ステップS23で、Nレンジでないと判定し、ステップS24で、ブレーキOFFであると判定する。そして、ステップS25で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップを終了するように信号を出力する。これにより、Dレンジでのアイドルアップが終了する。
【0055】
次に、ステップS26で、第1クラッチ40を正規油圧で締結すると共に、ステップS27で、第2ブレーキ70を解放するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、第1クラッチ40及び第1ブレーキ60のみが締結され、
図2に示すように、変速機構5はインターロック状態が解除されて1速の状態となる。
【0056】
次に、ステップS28で、車速センサ102の信号に基づいて、車両が所定車速(例えば、時速3km/h)以上になったか否かを判定する。所定車速以上になったと判定すると、ステップS29で、ニュートラルアイドル実施条件のフラグを設定して(フラグON)、
図5のメインルーチンに戻る。
【0057】
一方、インターロック状態でのアイドルアップ継続中に、運転者がNレンジへのシフト操作を行うと、ステップS23で、Nレンジであると判定する。そして、ステップS30で、第1クラッチ40を解放すると共に、ステップS31で、第2ブレーキ70を解放するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、油圧制御回路90のマニュアルバルブ94によって両摩擦要素から油圧が同時に排出される。
【0058】
このとき、締結されていた第2ブレーキ70よりも第1クラッチ40が先に解放されるため、一時的に変速機構5が1速状態になることで車両に生じうる前向きのショックが防止される。また、ステップS22で、第1クラッチ40は正規油圧よりも低い所定低減油圧で締結されるので、第1クラッチ40が第2ブレーキ70より先に解放されることになり、このショック防止の効果がさらに向上する。
【0059】
そして、変速機構5はインターロック状態が解除されてNレンジの状態となり、アイドルアップを継続する。その後、
図5のメインルーチンに戻る。
【0060】
次に、
図7のフローチャートを参照しながら、コントローラ100によるニュートラルアイドル制御について説明する。
まず、ステップS41で、ニュートラルアイドル実施条件が成立している否かを判定する。ニュートラルアイドル制御のサブルーチンに移行しているときは、一旦走行してステップS29でフラグが設定されている。それゆえ、ステップS41で、この実施条件が成立していると判定する。
【0061】
次に、ステップS42で、第2ブレーキ70を締結すると共に、ステップS43で、第1クラッチ40の油圧を所定スリップ圧に低下させ、スリップ状態とするように油圧制御回路90に制御信号を出力する。この「所定スリップ圧」は、
図6で説明したクラッチを締結させる所定低減油圧よりも低い油圧である。
【0062】
次に、ステップS44で、第2ブレーキ70が締結されているか、即ち、実際に変速機構5でインターロック状態が成立しているか否かを判定する。そして、成立していると判定したときには、ステップS45で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップするように信号を出力する。
【0063】
このとき、インターロック状態が成立しているか否かの判定は、第2ブレーキ圧センサ95の信号を基に、第2ブレーキ70の実油圧がインターロック判定圧に達しているか否かを基に行う。この「インターロック判定圧」は、第2ブレーキ70が締結されたと判定可能な油圧であり、締結状態を維持するときには、このインターロック判定圧よりも高い油圧を第2ブレーキ70に供給してもよい。
【0064】
一方、第2ブレーキ70の実油圧がインターロック判定圧に達していない場合は、ステップS44で、インターロック状態が成立していないと判定する。そして、インターロック判定圧に達してから、ステップS45に進み、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップするように信号を出力する。
【0065】
次に、ステップS46で、ブレーキセンサ104の信号を基に、運転者がブレーキペダルを離したか否かを判定する。ブレーキペダルを離した(ブレーキOFF)と判定するまでは、インターロック状態でアイドルアップが継続される。
【0066】
そして、ステップS46で、ブレーキペダルを離したと判定すると、ステップS47で、エンジン回転数制御装置110にアイドルアップを終了するように信号を出力し、ステップS48で、第2ブレーキ70を解放すると共に、ステップS49で、第1クラッチ40を締結するように油圧制御回路90に制御信号を出力する。これにより、変速機構5はニュートラルアイドル状態が解除されて1速の状態となり、運転者のアクセルペダルの踏み込みに応じて発進することになる。なお、ニュートラルアイドル状態からの発進時に第1クラッチ40の締結時のショックが緩和される、という前記の効果を確実なものにするために、ステップS48で、第2ブレーキ70の実油圧が緩やかに低下するように制御してもよい。
【0067】
その後、ステップS50で、ニュートラルアイドル実施条件のフラグを解除して、
図5のメインルーチンに戻る。
【0068】
図8は、一旦走行後、Dレンジのまま一時停止してから再び発進する場合の車両の状態をタイムチャートに表したものである。以下、
図8を用いて、この実施形態に係るパワートレインシステムを適用した車両を運転操作した際の、車両状態の変化について説明する。
【0069】
車両がDレンジで走行している状態で、運転者がブレーキペダルを踏み込んで停車させた際、ニュートラルアイドル(
図8では、N−idle)実施条件のフラグは既に設定されている(S41)。
【0070】
そして、第2ブレーキ70を締結すると共に(S42)、第1クラッチ圧を所定スリップ圧に低下させる制御信号が送信される(S43)。このとき、第2ブレーキ70が実際に締結されて変速機構5のインターロック状態が実現されるまでアイドルアップは行われない(S44)。そして、第2ブレーキ圧センサ95からの信号を基に、第2ブレーキ70の実油圧がインターロック判定圧に達してインターロック状態であると判定されると(S44)、
図8に符号aで示すように、アイドルアップが開始され、エンジン回転数はアイドルアップ回転数まで上昇する(S45)。
【0071】
その後、第1クラッチ40がスリップ状態に達する。なお、停車時には、第1クラッチ40の出力側回転数は0であり、したがって、第1クラッチ40の実油圧(図示せず)は、入力軸4の回転数(入力軸回転数)が目標スリップ回転数となるときに、所定スリップ圧に達することになる。このとき、第1クラッチ40がスリップしているため、変速機構5の入力軸としてのタービン3cは、連れ回りしてエンジン回転とほぼ同じ速度で回転している。
【0072】
次に、運転者がブレーキペダルを離すと(S46)、符号bで示すようにアイドルアップは終了し(S47)、エンジン回転数が減少する。そして、第2ブレーキ70が解放されると共に(S48)、第1クラッチ40が締結され(S49)、変速機構5は1速となり、車両が発進する。
【0073】
このとき、符号cで示すように、インターロック状態が完全に解除されるまでの間に第1クラッチ40が締結されることにより、第1クラッチ40の締結時に運転者が感じるショックが緩和される。また、車両が登降坂路にあれば、運転者がブレーキペダルを離した瞬間にヒルホールド機能が得られ、車両が前方又は後方へずり落ちることが防止される。
【0074】
なお、この実施形態では、第2ブレーキ70の締結は、アイドルアップが終了するまで保持されるが、例えば入力軸回転数が目標スリップ回転数となった時点で、符号dで示すように第2ブレーキ70を解放してもよい。
【0075】
以上、この実施形態で説明したコントローラ100の制御では、エンジンの冷間始動時等にアイドルアップ要求がある場合は、運転者がブレーキペダルを踏み込んで自動変速機1をPレンジからDレンジに切り換えた後も、ブレーキペダルが踏み込まれている間はアイドルアップが継続して実施される。それゆえ、触媒装置の活性化時間を短縮して触媒活性化促進効果を高めることができる。
【0076】
また、車両が一旦走行した後に停車した場合、例えば、駐車場から発進して間もなく、信号待ちや公道に出る際に一時停止した場合等、既にDレンジが選択されている状態でアイドルアップ要求がある場合には、変速機構5の第1クラッチ40をスリップ状態とするニュートラルアイドル制御が行われる。
【0077】
ところで、従来は、第1クラッチ40がスリップ状態に移行するのを待ってアイドルアップを行っていたところ、この制御は、特に冷間始動時には慎重に時間をかけて行われるため、アイドルアップの開始が遅れていた。
【0078】
一方、この実施形態では、ニュートラルアイドル制御において、アイドルアップ要求に応じて第2ブレーキ70を締結されるため(S42)、第1クラッチ70のスリップ状態への制御中にアイドルアップを行っても、運転者の制動意志に反して車両が発進することがない。それゆえ、スリップ状態への移行が完了する前に、アイドルアップを開始することができ、この場合でも触媒装置の活性化時間を短縮して触媒活性化促進効果を高めることができる。
【0079】
このとき、第2ブレーキ70に供給される油圧がインターロック判定圧となった時点でインターロック状態と判定され(S44)、入力軸回転数が目標スリップ回転数となった時点でスリップ状態と判定される。それゆえ、
図8に符号Tで示した時間だけ、従来よりも早くアイドルアップを開始することができる。
【0080】
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。