特許第6031914号(P6031914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031914
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】酸素ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/02 20060101AFI20161114BHJP
   C21C 5/46 20060101ALI20161114BHJP
   F25J 3/04 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   C01B13/02 Z
   C21C5/46 105
   F25J3/04 102
   F25J3/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-210271(P2012-210271)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-65619(P2014-65619A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小室 正之
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−207211(JP,A)
【文献】 特開2006−002958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00−13/36
C21C 5/00
C21C 5/28− 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断続的に酸素ガスを使用する需要先を含む場合の酸素ガス供給システムであって、酸素ガス発生装置と、酸素ガス発生装置からの酸素ガスを一時的に貯蔵する酸素ガスホルダと、酸素ガス発生装置からの酸素ガスを液化して貯蔵し、酸素ガスの供給量が不足すると液化した酸素を気化して補充する酸素ガス液化貯蔵装置と、前記需要先は転炉あるいはそれに類似する炉であり、一連の工程に従って稼働される前記需要先における原料挿入信号と吹錬開始信号からなる酸素使用情報に基づいて需要先への酸素ガス供給量を吹錬開始前に酸素ガス発生装置からの酸素ガス供給量を増加させ、吹錬中の酸素ガス圧力の低下を制御する酸素ガス供給制御装置とを備えていることを特徴とする酸素ガス供給システム。
【請求項2】
酸素ガス供給制御装置は、需要先の酸素使用情報に基づいて、酸素ガス液化貯蔵装置の液体酸素の貯蔵量と気化量を増減して、酸素ガス供給量の変動を平準化することを特徴とする請求項1に記載の酸素ガス供給システム。
【請求項3】
原料装入信号として、転炉においては防爆シャッターの動作信号を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の酸素ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所等において使用される酸素ガスの供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等において、断続的な操業を行う転炉あるいはそれに類似する炉(例えば、シャフト炉)を使用先(需要先)に含む場合の酸素ガスの使用量(需要量)は、転炉等の稼働状況(操業状況)によるため大きく変動する。
【0003】
この酸素ガスの使用量(需要量)の変動は、酸素ガス発生装置(原料空気圧縮機、空気分離機)から供給される酸素ガスを一時的に貯蔵する酸素ガスホルダによって吸収され、空気分離機からの酸素ガスの供給量は平滑化される。
【0004】
したがって、例えば転炉の吹錬が実施されて酸素ガスを使用する際には、酸素ガスホルダ内の酸素ガス量が減少して酸素ガスホルダ内の圧力は低下し、逆に転炉の吹錬が実施されていないときは、酸素ガスホルダ内の酸素ガス量が増加して酸素ガスホルダ内の圧力は上昇する。
【0005】
ただし、酸素ガスホルダの圧力管理値には上限値があるため、例えば転炉の吹錬が実施されていないときには、一時的に空気分離機での酸素ガスの発生量を減少させて、酸素ガスホルダの圧力上昇を抑制させる。
【0006】
一方、使用先(需要先)において必要となる酸素ガス圧力の下限値があるため、例えば転炉の吹錬が実施されているときには、一時的に空気分離機での酸素ガスの発生量を増加させて、酸素ガスの圧力低下を抑制させる。ただし、空気分離機での酸素ガスの発生量増加だけでは酸素ガスの圧力低下を抑制できない場合は、別途貯蔵されている液体酸素の気化により酸素ガス供給量の不足分を補充する。
【0007】
このような酸素ガスの供給システムにおいては、空気分離機での酸素ガスの発生量の減少が間に合わない場合、酸素ガスホルダの圧力が上限値に達し、余剰酸素ガスの大気放散となる。一方、空気分離機での酸素ガスの発生量の増加が間に合わない場合や、酸素ガスの使用量が多い場合は、液体酸素の補充量が増加する。
【0008】
こうした酸素ガスの使用量(需要量)に応じた酸素ガスの供給量の調整方法として、酸素ガス需要量予測値と酸素ガス発生量予測値に基づき、酸素ガスホルダ圧力を予測し表示する方法(特許文献1)や、余剰酸素ガスを原料空気圧縮機の出側で原料空気に混入させ、余剰酸素ガスの放散を抑制する方法(特許文献2)がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−2958号公報
【特許文献2】特開平5−34061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のような方法では、転炉等の操業状態によっては、酸素ガス使用量予測値と実際の酸素ガス使用量にずれが生じて、吹錬スケジュールに基づいた酸素ガスホルダ圧力予測値と実際の酸素ガスホルダ圧力推移が乖離し、その乖離による酸素ガスの大気放散や液体酸素の気化供給量が発生するという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2のような方法では、原料空気の吸入流量と余剰酸素ガス混入流量の合計流量を急激に変化させることができないため、抑制できる酸素ガスの大気放散量には限界があった。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、転炉等のように断続的に酸素ガスを使用する需要先に含む場合の酸素ガス供給システムとして、需要先の酸素ガス使用状況に応じて適切に酸素ガスを供給することができる酸素ガス供給システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0014】
[1]断続的に酸素ガスを使用する需要先を含む場合の酸素ガス供給システムであって、酸素ガス発生装置と、酸素ガス発生装置からの酸素ガスを一時的に貯蔵する酸素ガスホルダと、酸素ガス発生装置からの酸素ガスを液化して貯蔵し、酸素ガスの供給量が不足すると液化した酸素を気化して補充する酸素ガス液化貯蔵装置と、需要先の酸素使用情報に基づいて需要先への酸素ガス供給量を制御する酸素ガス供給制御装置とを備えていることを特徴とする酸素ガス供給システム。
【0015】
[2]酸素ガス供給制御装置は、需要先の酸素使用情報に基づいて、酸素ガス発生装置からの酸素ガスの発生量を増減させることを特徴とする前記[1]に記載の酸素ガス供給システム。
【0016】
[3]酸素ガス供給制御装置は、需要先の酸素使用情報に基づいて、酸素ガス液化貯蔵装置の液体酸素の貯蔵量と気化量を増減して、酸素ガス供給量の変動を平準化することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の酸素ガス供給システム。
【0017】
[4]断続的に酸素ガスを使用する需要先が転炉であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の酸素ガス供給システム。
【0018】
[5]需要先の酸素使用情報として、一連の工程に従って稼動される転炉における原料装入信号と吹錬開始信号からなる酸素使用情報を用いることを特徴とする前記[4]に記載の酸素ガス供給システム。
【0019】
[6]原料装入信号として、転炉における防爆シャッターの動作信号を用いることを特徴とする前記[5]に記載の酸素ガス供給システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、需要先の酸素使用情報に基づいて需要先への酸素ガス供給量を制御するようにしたので、需要先の酸素ガス使用状況に応じて適切に酸素ガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における酸素ガス供給システムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態における酸素ガス圧力の変化等を示す図である。
図3】本発明の一実施形態における酸素ガス発生量と酸素液化量・気化量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における酸素ガス供給システムを示す図である。
【0024】
図1に示すように、この実施形態における酸素ガス供給システムは、酸素ガスの需要先10として、断続的に酸素ガスを使用する転炉11(No.1転炉、No.2転炉)と連続的に酸素ガスを使用する高炉12を有しており、酸素ガス発生装置1と、酸素ガス発生装置1からの酸素ガスを一時的に貯蔵する酸素ガスホルダ4と、酸素ガス発生装置1からの酸素ガスを液化して貯蔵し、酸素ガスの供給量が不足すると液化した酸素を気化して補充する酸素ガス液化貯蔵装置5と、需要先の酸素使用情報に基づいて需要先への酸素ガス供給量を制御する酸素ガス供給制御装置(図示せず)とを備えている。
【0025】
なお、酸素ガス発生装置1は、原料空気圧縮機2と空気分離機3を備えている。また、酸素ガス液化貯蔵装置5は、酸素ガスを液化する酸素液化装置6と、液化した液体酸素の液体酸素貯蔵槽7と、圧送ポンプ8と、液体酸素を気化する酸素気化装置9を備えている。
【0026】
そして、図2(a)に酸素ガスホルダ4の圧力の時間的推移、図2(b)に転炉11(No.1転炉、No.2転炉)での吹錬スケジュール、図2(c)に酸素ガス発生装置1(空気分離機3)での酸素ガス発生量の時間的推移、図2(d)に酸素ガス液化貯蔵装置5での酸素液化量・気化量の時間的推移を示し、図3(a)に1回の吹錬における一連の作業工程(原料装入、吹錬開始、吹錬(酸素使用中))、図3(b)に1回の吹錬における空気分離機3での酸素ガス発生量の時間的推移、図3(c)に1回の吹錬における酸素ガス液化貯蔵装置5での酸素液化量の時間的推移を示している。ちなみに、図2(a)において、破線はこの実施形態による酸素ガス供給制御を行わなかった場合であり、実線はこの実施形態による酸素ガス供給制御を行なった場合である。
【0027】
このような図2図3に示すように、この酸素ガス供給システムでは、一連の工程に従って稼動される転炉11での、原料装入と同期した原料装入信号と吹錬開始と同期した吹錬開始信号からなる酸素使用情報を用いて、酸素ガス発生装置1の酸素ガス発生量や酸素ガス液化貯蔵装置5での液体酸素貯蔵量・気化量を調整するようにしている。
【0028】
すなわち、原料装入に応じて操作される防爆シャッターの動作信号を原料装入信号とし、その原料装入信号(酸素使用開始予告信号)に基づいて、酸素ガス発生装置1の酸素ガス発生量と酸素ガス液化貯蔵装置5での液体酸素貯蔵量を増加するように調整することで、吹錬前の酸素ガスホルダ4の圧力レベルの上昇を抑制することができる。その結果、酸素ガスホルダ4の圧力レベルが上限値に達することによる酸素ガスの放散を低減させることができる。
【0029】
そして、その後の吹錬開始信号に基づいて、酸素ガス発生装置1の酸素ガス発生量を増加した値に保持するようにしているので、酸素ガス供給量調整の遅れによる吹錬中の酸素ガス圧力の低下を抑制することができる。その結果、液体酸素による補充量を減少させることができる。
【0030】
詳説すれば、図3に示すように、吹錬開始前の原料装入情報(酸素使用開始予告情報)に基づいて、空気分離機3からの酸素発生量の増加を開始させる。また、そのときの酸素ガスホルダ4の圧力レベルの上昇に応じて、酸素ガス液化貯蔵装置5を稼動させて酸素液化量を増加させることにより、酸素ガス発生量増加に伴う酸素ガスホルダ4の圧力の上昇速度を抑制する。その後、吹錬開始情報と同時に酸素液化を停止し、需要先への酸素供給量を増加させ、吹錬実施時の酸素ガス圧力の低下を抑制させる。
【0031】
このように、空気分離機3からの酸素発生量や酸素ガス液化貯蔵装置5での酸素液化量の増減により、吹錬の実施時と未実施時における酸素ガス圧力レベルを管理値内にすることで、圧力上限値を超過することによる酸素放散量と圧力下限値を下回ることによる酸素気化量の削減が可能となる。
【0032】
このようにして、この実施形態では、転炉工場11における一連の操業工程において、原料装入に応じて操作される防爆シャッターの動作信号に基づいて酸素使用開始情報を作成することで、吹錬スケジュールと実際の吹錬との間のずれによる酸素ガスの供給量調整をなくすとともに、酸素使用開始までの裕度を確保することにより、吹錬開始までに酸素ガス発生装置1からの酸素ガス供給量を増加し、吹錬中(酸素使用中)の酸素ガス圧力の低下を抑制する。
【0033】
言い換えれば、この実施形態では、転炉工場11における防爆シャッター信号に基づく原料装入開始・終了や吹錬開始の操作信号を取り込み、その信号に基づき原料空気圧縮機2の吸入量を制御することにより、吹錬開始までの酸素発生量の増量や吹錬開始と同期した酸素ガスの供給量調整を行い、酸素ガスホルダ4の圧力上昇・低下の抑制を可能にしたものである。
【0034】
また、上記の原料空気圧縮機2の吸入量制御に加えて、液体酸素の貯蔵量制御を付加することにより、原料空気圧縮機2の吸入量制御で対応できない急激な酸素ガス需要量の変動を吸収し、酸素ガスホルダ4の圧力上昇の抑制を可能にしたものである。
【0035】
このようにして、この実施形態では、転炉11の原料装入情報や吹錬開始信号を取り込み、原料空気圧縮機2の吸入量制御として利用するようにしたので、実際の転炉11の稼動状態と同期した酸素ガスの供給量調整や吹錬開始までの酸素ガス発生量の増量が可能となった。また、余剰酸素ガスの液化貯蔵量制御を付加することにより、原料空気圧縮機2の吸入量制御で対応できない急激な酸素使用量の変動にも対応できる酸素ガスの供給量調整が可能となった。
【0036】
なお、上記の実施形態では、断続的に酸素ガスを使用する需要先として転炉を対象にしているが、転炉に類似する炉(例えば、シャフト炉)を対象にした場合でも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 酸素ガス発生装置
2 原料空気圧縮機
3 空気分離機
4 酸素ガスホルダ
5 酸素ガス液化貯蔵装置
6 酸素液化装置
7 液体酸素貯蔵槽
8 圧送ポンプ
9 酸素気化装置
10 酸素ガスの需要先
11 転炉
12 高炉
図1
図2
図3