特許第6031948号(P6031948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031948
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20161114BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20161114BHJP
   C01B 31/02 20060101ALI20161114BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20161114BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20161114BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H01L29/78 618A
   C01B31/02 101Z
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 626C
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250E
   H01L29/28 310E
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-240664(P2012-240664)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-90146(P2014-90146A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小島 永児
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−204661(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004681(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/017533(WO,A1)
【文献】 特開2009−298683(JP,A)
【文献】 特表2009−510800(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0308520(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0108805(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0168724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36、
H01L 21/336−27/28、29/786、
51/00−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上(1、3、5)に触媒層(7)を形成する触媒層形成工程と、
前記基板のうち、前記触媒層の裏面の一部(7A)に対向する部分を除去し、前記裏面の一部を露出させる露出工程と、
前記裏面の一部にグラフェン(11)を形成するグラフェン形成工程と、
前記裏面の一部を前記基板側に近接させ、前記グラフェンを前記基板上に転写する転写工程と、
前記触媒層の少なくとも一部を除去する触媒層除去工程と、
を含むことを特徴とする半導体素子(15)の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、前記触媒層を形成する側に中間層(5)を備え、
前記露出工程において、前記中間層を除去することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記中間層が膜厚差を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記露出工程において、前記触媒層に孔(9)又は切欠部(16)を形成し、前記孔又は切欠部から、前記対向する部分を除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記露出工程の後、前記触媒層は、その片側(7D)において前記基板に支持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記露出工程の後、前記触媒層は、その両側において前記基板に支持され、前記触媒層のうち、前記裏面が露出している部分の重心は、前記裏面が露出している部分の中心から外れた位置にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記露出工程の後、前記触媒層は、その両側において前記基板に支持され、前記触媒層のうち、前記裏面が露出している部分の形状は、前記裏面が露出している部分の中心に関して非対称であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記転写工程において、前記基板と前記触媒層との間に液体を充填し、その液体を除去することで、前記裏面の一部を前記基板側に近接させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記転写工程において、前記触媒層の位置を前記基板より上側としておき、前記触媒層を加熱することで、前記裏面の一部を前記基板側に近接させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記転写工程において、前記触媒層と前記基板との間に電圧を印加することで、前記裏面の一部を前記基板側に近接させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記グラフェン形成工程よりも前に、前記触媒層を加熱する触媒層加熱工程を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記触媒層の表面に付着したグラフェンを除去するグラフェン除去工程を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記グラフェン除去工程を、前記転写工程よりも後に行うことを特徴とする請求項12に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記グラフェン形成工程よりも前に、前記触媒層の表面に保護層(17)を形成する保護層形成工程を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項15】
前記基板のうち、前記転写工程において前記グラフェンを転写する面は、凹凸を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項16】
前記グラフェン形成工程において、原子層堆積法又はCVDを用いてグラフェンを形成することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上にグラフェンが形成された半導体素子が知られている。この半導体素子は、まず、CVD(化学気相成長法)等の方法で、基板とは別体の触媒膜上にグラフェンを形成し、次に、触媒膜上のグラフェンを基板上に転写する方法で製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−298683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、転写の際にグラフェンにシワや破れが生じ、グラフェンの特性が劣化してしまうおそれがあった。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、グラフェンの特性が劣化しにくい半導体素子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体素子の製造方法は、基板上に触媒層を形成する触媒層形成工程と、基板のうち、触媒層の裏面の一部に対向する部分を除去し、裏面の一部を露出させる露出工程と、裏面の一部にグラフェンを形成するグラフェン形成工程と、裏面の一部を基板側に近接させ、グラフェンを基板上に転写する転写工程と、触媒層の少なくとも一部を除去する触媒層除去工程とを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の半導体素子の製造方法によれば、基板上に転写されたグラフェンにシワや破れが生じにくく、グラフェンの特性が劣化しにくい
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図2】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図3】A〜Hは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図4】A〜Hは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図5】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図6】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図7】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図8】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図9】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図10】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図11】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図12】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図13】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図14】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図15】A〜Gは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図16】A〜Gは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図17】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図18】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図19】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図20】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図21】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す断面図である。
図22】A〜Iは、半導体素子の製造方法を表す平面図である。
図23】A、Bは、半導体素子の製造方法における一部の工程を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を説明する。前記基板は、例えば、単一の組成を有する基板本体のみから成るものであってもよいし、基板本体上に、基板本体とは異なる組成を有する1又は複数の層を形成したものであってもよい。そのような層として、例えば、中間層、下地層等が挙げられる。中間層とは、基板のうち、触媒層を形成する側の表面に設けられ、露出工程において、その一部又は全部が除去される層である。また、下地層とは、その上にグラフェンが転写される層である。下地層は、露出工程においてその一部が除去されてもよい。なお、基板が中間層や下地層を備えない場合、例えば、基板本体が、上述した中間層や下地層の機能を奏することができる。
【0009】
前記露出工程において、例えば、触媒層に孔又は切欠部を形成し、その孔又は切欠部から、「基板のうち、触媒層の裏面の一部に対向する部分」を除去することができる。露出工程では、例えば、ウエット又はドライのエッチングにより、「基板のうち、触媒層の裏面の一部に対向する部分」を除去することができる。ウエットエッチングの場合、エッチング液は、基板のうち、除去する部分の組成、及び残す部分の組成に応じて適宜選択できる。
【0010】
前記露出工程の後、触媒層は、例えば、その片側において基板に支持される。この場合、前記片側以外の方向から、「基板のうち、触媒層の裏面の一部に対向する部分」を除去することができる。
【0011】
前記露出工程の後、触媒層は、例えば、その両側において基板に支持される。この場合、例えば、触媒層のうち、裏面が露出している部分の重心は、裏面が露出している部分の中心から外れた位置とすることができる。こうすることにより、転写工程において、グラフェンを、その端部から徐々に基板上へ転写することができる。
【0012】
また、前記露出工程の後、触媒層の両側を基板で支持し、触媒層のうち、裏面が露出している部分の形状を、裏面が露出している部分の中心に関して非対称とすることができる。この場合も、転写工程において、グラフェンを、その端部から徐々に基板上へ転写することができる。
【0013】
前記転写工程では、例えば、基板と触媒層との間に液体を充填し、その液体を除去することで、表面張力を利用し、触媒層(特に、露出工程により裏面が露出した部分)を基板側に近接させることができる。
【0014】
また、前記転写工程では、例えば、触媒層の位置を基板より上側としておき、触媒層を加熱することで、触媒層(特に、露出工程により裏面が露出した部分)を下方に垂れさせ、基板側に近接させることができる。
【0015】
また、前記転写工程では、例えば、触媒層と基板との間に電圧を印加することで、静電気力により、触媒層(特に、露出工程により裏面が露出した部分)を基板側に近接させることができる。
【0016】
前記グラフェン形成工程よりも前に、例えば、触媒層を加熱する触媒層加熱工程を行うことができる。この場合、触媒層の結晶性が向上し、グラフェンの特性が向上する。
本発明の半導体素子の製造方法では、例えば、触媒層の表面に付着したグラフェンを除去するグラフェン除去工程を行うことができる。この場合、不要なグラフェンを除くことができる。グラフェン除去工程は、例えば、転写工程よりも後に行うことができる。この場合、グラフェン除去工程によって触媒層の裏面に形成されたグラフェンへダメージを与えてしまうことを防止できる。
【0017】
本発明の半導体素子の製造方法では、例えば、グラフェン形成工程よりも前に、触媒層の表面に保護層を形成する保護層形成工程を行うことができる。この場合、触媒層の表面にグラフェンが付着することを防止できる。保護層は、グラフェン形成工程よりも後のいずれかのタイミングで除去することができる。
【0018】
前記基板のうち、転写工程においてグラフェンを転写する面は、平坦であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
前記グラフェン形成工程において、原子層堆積法又はCVDを用いてグラフェンを形成することができる。
<実施例1>
1.半導体素子の製造方法
図1A〜1I及び図2A〜2Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。なお、図1A〜1Iは、それぞれ、図2A〜2IにおけるI−A〜I−I断面における断面図である。
【0019】
まず、図1A及び図2Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3は、熱酸化により形成される、SiO2から成る層であり、その膜厚は数百nmである。なお、本件明細書における膜厚は、電子顕微鏡の断面観察等の方法で測定した値を意味する。中間層5はプラズマCVDにより形成される、SiNから成る層であり、その膜厚は数百〜数千nmである。なお、下地層3の材質はBNであってもよい。
【0020】
次に、図1B及び図2Bに示すように、中間層5の上に触媒層7をスパッタ又は蒸着により形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質は、Ni、Co、Fe、Cu、Al23等である。なお、これらの材質は、後述するグラフェン11の形成において触媒能を有する。触媒層7の膜厚は数十〜数千nmである。
【0021】
次に、図1C及び図2Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5が露出する。孔9をエッチングで形成する場合、エッチング液は、塩化第二鉄水溶液、又は硝酸鉄水溶液である。
【0022】
次に、図1D及び図2Dに示すように、孔9を通じて、中間層5の一部をエッチングする(露出工程)。中間層5のうち、エッチングされる部分は、孔9に面する部位を含む中央部であり、両側は残存する。エッチングは、180℃のリン酸に浸すことで行う。
【0023】
エッチングの結果、中間層5のうち、触媒層7の裏面の一部7Aに対向する部分が除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した中間層5によって支持される。
【0024】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図1E及び図2Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件は、H2雰囲気、数百〜1000℃の温度という条件である。グラフェン11を形成するときのCVDの条件は、CH4雰囲気、数百〜1000℃の温度という条件である。
【0025】
グラフェン11は、単原子層のカーボン結晶構造であってもよく、複数の原子層のカーボン結晶構造であってもよい。複数の原子層とは、例えば一桁数の原子層である。複数原子層のカーボン結晶構造は、一般にグラフェン多層膜(multi-layer graphene)またはグラフェン積層膜(stacked graphene)と称されることもある。なお、触媒層7の結晶性が当初から高い場合は、熱処理を行わなくてもよい。
【0026】
次に、図1F及び図2Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。ここで、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分を下地層3に近接させる方法として、次の方法α〜γのいずれかを用いることができる。
【0027】
方法α:下地層3と触媒層7との間(空洞10の中)に液体を充填し、その液体を除去することで、表面張力を利用し、触媒層7を下地層3側に近接させる。このとき、グラフェン11が下地層3に接触し、下地層3上に転写される。ここで、使用する液体は水である。また、液体の除去は、雰囲気温度を100〜150℃とすることで行う。
【0028】
方法β:触媒層7の位置を下地層3より上側としておき、触媒層7を加熱する。すると、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分は、中間層5に支持されていないので、下方に垂れ下がり、下地層3に接する。このとき、グラフェン11が下地層3上に転写される。ここで、触媒層7を加熱するときの温度は数百℃であり、そのときの雰囲気はAr雰囲気である。
【0029】
方法γ:触媒層7と基板1との間に電圧を印加することで、静電気力により、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分を、下地層3側に近接させる。このとき、グラフェン11が下地層3に接触し、下地層3上に転写される。ここで、触媒層7と基板1との間に印加する電圧は数十Vである。
【0030】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。このように、触媒層7の表面に形成されていたグラフェンを除去する工程を、グラフェン11の下地層3への転写よりも後で実施することにより、グラフェン11へのダメージを抑制することができる。
【0031】
次に、図1G及び図2Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する(触媒層除去工程)。このときのエッチングでは、塩化第二鉄水溶液、又は硝酸鉄水溶液をエッチング液として用いる。
【0032】
次に、図1H及び図2Hに示すように、残りの中間層5をエッチングにより除去する。このエッチングは、180℃のリン酸に浸すことで行う。
次に、図1I及び図2Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
【0033】
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、下地層3上に転写されたグラフェン11にシワや破れが生じにくく、グラフェン11の特性が劣化しにくい。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、グラフェン11を転写する位置を高精度に制御できる。
(3)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、グラフェン11を転写する際に、グラフェン11と下地層3との間にバーティクルが入りにくい。
<実施例2>
1.半導体素子の製造方法
図3A〜3H及び図4A〜4Hに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図3A〜3Hは、それぞれ、図4A〜4HにおけるIII−A〜III−H断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0034】
まず、図3A及び図4Bに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3を形成する。下地層3の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
次に、図3B及び図4Bに示すように、下地層3の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0035】
次に、図3C及び図4Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、下地層3が露出する。
次に、図3D及び図4Dに示すように、孔9を通じて、下地層3の一部をエッチングする(露出工程)。下地層3のうち、エッチングされる部分は、孔9に面する部位を含む中央部であり、両側は残存する。下地層3のエッチングに用いるエッチング液はフッ酸である。
【0036】
エッチングの結果、下地層3のうち、触媒層7の裏面の一部7Aに対向する部分が除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、エッチングされなかった下地層3によって支持される。
【0037】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図3E及び図4Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0038】
次に、図3F及び図4Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。
【0039】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0040】
次に、図3G及び図4Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する(触媒層除去工程)。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図3H及び図4Hに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
【0041】
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、中間層の形成及び除去の工程が不要であるので、製造工程を簡略化できる。
<実施例3>
1.半導体素子の製造方法
図5A〜5I及び図6A〜6Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図5A〜5Iは、それぞれ、図6A〜6IにおけるV−A〜V−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0042】
まず、図5A及び図6Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3及び中間層5の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0043】
次に、図5B及び図6Bに示すように、下地層3の上に触媒層7を形成し(触媒層形成工程)、さらにその上層に保護層17を形成する(保護層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。また、保護層17の材質はSiO2であり、保護層17の膜厚は数十〜数千nmであり、保護層17の形成方法はプラズマCVDである。
【0044】
次に、図5C及び図6Cに示すように、保護層17及び触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5が露出する。
【0045】
次に、図5D及び図6Dに示すように、孔9を通じて、中間層5の一部をエッチングする(露出工程)。中間層5のうち、エッチングされる部分は、孔9に面する部位を含む中央部であり、両側は残存する。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
【0046】
エッチングの結果、中間層5のうち、触媒層7の裏面の一部7Aに対向する部分が除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した中間層5によって支持される。
【0047】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図5E及び図6Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0048】
また、グラフェン11の形成後、保護層17を除去する。その除去方法は、CF4でのドライエッチングである。なお、保護層17の除去は、グラフェン11の形成後における任意のタイミングで行うことができる。
【0049】
次に、図5F及び図6Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。
【0050】
次に、図5G及び図6Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する(触媒層除去工程)。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図5H及び図6Hに示すように、残りの中間層5をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
【0051】
次に、図5I及び図6Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、保護層17を形成するので、触媒層7の表側にグラフェンが付着することがない。そのため、触媒層7の表側のグラフェンを除去する際に、グラフェン11にダメージを与えてしまうようなことがない。また、保護層17により、触媒層7を熱から保護することができる。
<実施例4>
1.半導体素子の製造方法
図7A〜7I及び図8A〜8Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図7A〜7Iは、それぞれ、図8A〜8IにおけるVII−A〜VII−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0052】
まず、図7A及び図8Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3及び中間層5の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0053】
次に、図7B及び図8Bに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
次に、図7C及び図8Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5が露出する。
【0054】
次に、図7D及び図8Dに示すように、孔9を通じて、中間層5の一部をエッチングする(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
エッチングの結果、中間層5のうち、触媒層7の裏面の一部7Aに対向する部分が除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した中間層5によって支持される。
【0055】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図7E及び図8Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0056】
次に、図7F及び図8Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。
【0057】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0058】
次に、図7G及び図8Gに示すように、触媒層7をパターニングし、その一部を残す。残した触媒層7は電極とする(触媒層除去工程)。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
【0059】
次に、図7H及び図8Hに示すように、残りの中間層5をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図7I及び図8Iに示すように、周知の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
【0060】
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、触媒層7の一部をそのまま電極として用いることができるので、製造工程を簡略化できる。
<実施例5>
1.半導体素子の製造方法
図9A〜9I及び図10A〜10Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図9A〜9Iは、それぞれ、図10A〜10IにおけるIX−A〜IX−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0061】
まず、図9A及び図10Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。また、中間層5は、SiNから成る中央部5Aと、SiO2から成る周辺部5Bとにパターニングされている。中間層5の膜厚は数百〜数千nmであり、プラズマCVDにより形成できる。なお、中間層5のパターニングには周知のパターニング方法を用いることができる。
【0062】
次に、図9B及び図10Bに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
次に、図9C及び図10Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5の中央部5Aが露出する。
【0063】
次に、図9D及び図10Dに示すように、孔9を通じて、中間層5の中央部5Aをエッチングし、周辺部5Bは残存させる(露出工程)。中間層5のエッチングは、180℃のリン酸に浸すことで行う。
【0064】
エッチングの結果、中央部5Aが除去され、触媒層7における裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中央部5Aが除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した周辺部5Bによって支持される。
【0065】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図9E及び図10Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0066】
次に、図9F及び図10Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。
【0067】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0068】
次に、図9G及び図10Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する。触媒層除去工程)。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図9H及び図10Hに示すように、残りの周辺部5Bをエッチングにより除去する。このときのエッチングは、180℃のリン酸に浸すことで行う。
【0069】
次に、図9I及び図10Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例では、中間層5を、SiNから成る中央部5Aと、SiO2から成る周辺部5Bとにパターニングすることで、中間層5をエッチングするとき、中央部5Aが選択的に除去される。そして、触媒層7のうち、中央部5Aが選択的に除去された部分が、裏面の一部7Aとなる。そのため、中間層5のパターニングを調整することで、裏面の一部7Aの面積及び形状を任意に制御できる。その結果、裏面の一部7Aのパターン(すなわちグラフェン11のパターン)を様々な形状にすることができ、微細化も可能になる。さらに、グラフェン11を形成した後に、グラフェン11をパターン化する工程を省略できる。
<実施例6>
1.半導体素子の製造方法
図11A〜11I及び図12A〜12Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図11A〜11Iは、それぞれ、図12A〜12IにおけるXI−A〜XI−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0070】
まず、図11A及び図12Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3及び中間層5の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0071】
次に、図11B及び図12Bに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7は、まず、中間層5の全領域のうち、中央部を除く領域にAlから成る第1層7Cを形成し、次に、中間層5の全領域にNiから成る第2層7Bを形成することで得られる。従って、触媒層7は、第1層7Cと第2層7Bとから成り、触媒層7を中間層5の側から見ると、中央部には第2層7Bが存在し、周辺部には第1層7Cが存在する。
【0072】
次に、図11C及び図12Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5が露出する。
【0073】
次に、図11D及び図12Dに示すように、孔9を通じて、中間層5をエッチングする(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
エッチングの結果、中間層5の一部が除去され、触媒層7における裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した中間層5によって支持される。
【0074】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図11E及び図12Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aのうち、第2層7Bの部分に選択的にグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。なお、触媒層7の裏面の一部7Aのうち、第1層7Cの部分には、グラフェン11は形成されない。
【0075】
次に、図11F及び図12Fに示すように、触媒層7のうち、空洞10に面した部分を下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。
【0076】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0077】
次に、図11G及び図12Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する。触媒層除去工程)。このときのエッチングでは、塩化第二鉄水溶液、又は硝酸鉄水溶液をエッチング液として用いる。
【0078】
次に、図11H及び図12Hに示すように、残存していた中間層5をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は、前記実施例1と同様である。
次に、図11I及び図12Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
【0079】
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例では、触媒層7を上記のようにパターニングすることで、触媒層7のうち、第2層7Bの領域に選択的にグラフェン11を形成することができる。そのため、触媒層7のパターニングを調整することで、グラフェン11の面積及び形状を任意に制御できる。その結果、グラフェン11を様々な形状にすることができ、微細化も可能になる。さらに、グラフェン11を形成した後に、グラフェン11をパターン化する工程を省略できる。
<実施例7>
1.半導体素子の製造方法
図13A〜13I及び図14A〜14Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図13A〜13Iは、それぞれ、図14A〜14IにおけるXIII−A〜XIII−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0080】
まず、図13A及び図14Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3を形成し、下地層3の表面をエッチングする。エッチング後の下地層3は、中央に近づくほど徐々に深くなる形状の凹部3Aを備えている。下地層3の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。なお、下地層3の上述した形状は、凹凸のある形状の一実施形態である。
【0081】
次に、図13B及び図14Bに示すように、凹部3Aを中間層5で埋める。中間層5の材質、形成方法は前記実施例1と同様である。中間層5の表面は平坦になる。
次に、図13C及び図14Cに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0082】
次に、図13D及び図14Dに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5が露出する。
【0083】
次に、図13E及び図14Eに示すように、孔9を通じて、中間層5の全てをエッチングにより除去する(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
【0084】
エッチングの結果、中間層5が全て除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、下地層3のうち、触媒層7と接していない部分が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、下地層3によって支持される。
【0085】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図13F及び図14Fに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0086】
次に、図13G及び図14Gに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。なお、下地層3のうち、グラフェン11が転写される領域は、凹部3Aの内部であり、凹凸を有する部分である。
【0087】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0088】
次に、図13H及び図14Hに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する。(触媒層除去工程)。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図13I及び図14Iに示すように、電極13を設ける等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
【0089】
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、凹凸を有する部分(凹部3Aの内部)の上に、シワや破れを生じることなく、グラフェン11を形成することができる。このことにより、曲面や3次元構造を有した半導体素子(例えば3次元ホール素子や懸架構造を有するデバイス)を製造することが可能になる。なお、3次元ホール素子は、1個のホール素子では得られない3軸の磁場を検出することができるものであり、磁場を受ける面の異なるホール素子が3個配置されているものである。
【0090】
3.変形例
本実施例において、下地層3は、エッチングにより、図23Aに示す形状としてもよい。すなわち、エッチング後の下地層3は、外周側の大突起3Bと、その内側に設けられた小突起3Cとから成るものであってもよい。この場合、図23Aに示すように、大突起3Bの内側において、小突起3Cを埋めるように中間層5を形成し、その上に触媒層7を形成することができる。触媒層7は、その両側において、大突起3Bにより支持されている。
【0091】
そして、中間層5を全て除去してから、大突起3Bにより支持されている触媒層7の下面にグラフェン11を形成し、そのグラフェン11を小突起3Cの上に転写することで、図23Bに示すように、グラフェン11が小突起3Cで懸架された構造とすることができる。
<実施例8>
1.半導体素子の製造方法
図15A〜15G及び図16A〜16Gに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図15A〜15Gは、それぞれ、図16A〜16GにおけるXV−A〜XV−G断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0092】
まず、図15A及び図16Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3を形成し、下地層3の表面をエッチングする。エッチング後の下地層3は、その中央に、幅が一定の凹部3Aを備えている。下地層3の材質、形成方法は前記実施例1と同様である。なお、下地層3の上述した形状は、凹凸のある形状の一実施形態である。
【0093】
次に、図15B及び図16Bに示すように、一定の膜厚の中間層5を、凹部3Aの内部に選択的に形成する。中間層5の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。下地層3のうち、凹部3A以外の部分には、中間層5は形成されない。
【0094】
次に、図15C及び図16Cに示すように、下地層3及び中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0095】
次に、図15D及び図16Dに示すように、触媒層7のうち、凹部3Aを含む領域に、触媒層7を貫通する一対の孔9を、リソグラフィー又はエッチングにより形成する。その結果、孔9において、中間層5が露出する。
【0096】
次に、図15E及び図16Eに示すように、孔9を通じて、中間層5の全てをエッチングにより除去する(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
【0097】
エッチングの結果、中間層5が全て除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、下地層3のうち、凹部3A内の領域が露出する。凹部3A内において、裏面の一部7Aと下地層3との間に空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、下地層3(凹部3A以外の部分)によって支持される。
【0098】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図15F及び図16Fに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0099】
次に、図15G及び図16Gに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。転写方法は前記実施例1と同様である。なお、下地層3のうち、グラフェン11が転写される領域は、凹部3Aの内部であり、凹凸を有する部分である。
【0100】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0101】
次に、触媒層7をエッチングにより除去する。(触媒層除去工程)。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、電極13を設ける等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)が完成する。
【0102】
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、凹凸を有する部分(凹部3Aの内部)の上に、シワや破れを生じることなく、グラフェン11を形成することができる。このことにより、曲面や3次元構造を有した半導体素子(例えば3次元ホール素子や懸架構造を有するデバイス)を製造することが可能になる。
<実施例9>
1.半導体素子の製造方法
図17A〜17I及び図18A〜18Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図17A〜17Iは、それぞれ、図18A〜18IにおけるXVII−A〜XVII−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0103】
まず、図17A及び図18Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3及び中間層5の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0104】
次に、図17B及び図18Bに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
次に、図17C及び図18Cに示すように、触媒層7における一方の側を、リソグラフィー又はエッチングにより切り欠くことで、切欠部16を形成する。その結果、切欠部16において、中間層5が露出する。
【0105】
次に、図17D及び図18Dに示すように、切欠部16を通じて、中間層5の一部をエッチングする(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
エッチングの結果、中間層5のうち、切欠部16、及びそこから触媒層7の下側に一定の距離入り込んだ部分が除去され、触媒層7の裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には、外部と連通している空洞10が生成する。触媒層7は、その片側7Dにおいて、残存した中間層5によって支持される。
【0106】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図17E及び図18Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0107】
次に、図17F及び図18Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。このとき、触媒層7のうち、片側7Dとは反対側の端部が先に下地層3に接し、その後、触媒層7と下地層3とが接する範囲が、徐々に片側7Dの方へ広がってゆく。
【0108】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0109】
次に、図17G及び図18Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図17H及び図18Hに示すように、残りの中間層5をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
【0110】
次に、図17I及び図18Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、グラフェン11を下地層3上に転写するとき、グラフェン11を、その一方の端部から徐々に、下地層3に密着させることができる。そのことにより、転写されたグラフェン11の平坦性が一層向上する。
<実施例10>
1.半導体素子の製造方法
図19A〜19I及び図20A〜20Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図19A〜19Iは、それぞれ、図20A〜20IにおけるXIX−A〜XIX−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0111】
まず、図19A及び図20Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。下地層3及び中間層5の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
【0112】
次に、図19B及び図20Bに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
次に、図19C及び図20Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を形成する。孔9の形状は、図20Cに示すように、同図における左右方向に関して非対称である。孔9においては中間層5が露出する。
【0113】
次に、図19D及び図20Dに示すように、孔9を通じて、中間層5の一部をエッチングする(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
エッチングの結果、中間層5のうち、触媒層7の裏面の一部7Aに対向する部分が除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した中間層5によって支持される。
【0114】
触媒層7のうち、裏面の一部7Aに該当する部分の重心は、裏面の一部7Aに該当する部分の中心(左右方向の長さにおける中心)から、右側に外れた位置にある。また、触媒層7のうち、裏面の一部7Aに該当する部分の形状は、裏面の一部7Aに該当する部分の中心(左右方向の長さにおける中心)に関して非対称である。これらは、孔9の形状が左右非対称であることによる。なお、本実施例において右側とは、図19A〜19I及び図20A〜20Iにおける右側を意味し、左側とは、同図における左側を意味する。
【0115】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図19E及び図20Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0116】
次に、図19F及び図20Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。このとき、上述したとおり、孔9の形状が左右非対称であり、また、触媒層7のうち、裏面の一部7Aに該当する部分の重心は、その中心から、右側に外れた位置にあるので、まず、触媒層7のうち、右側の端部が先に下地層3に接し、その後、触媒層7と下地層3とが接する範囲が、徐々に左側へと広がってゆく。
【0117】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0118】
次に、図19G及び図20Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図19H及び図20Hに示すように、残りの中間層5をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
【0119】
次に、図19I及び図20Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、グラフェン11を下地層3上に転写するとき、グラフェン11を、その一方の端部から徐々に、下地層3に密着させることができる。そのことにより、転写されたグラフェン11の平坦性が一層向上する。
<実施例11>
1.半導体素子の製造方法
図21A〜21I及び図22A〜22Iに基づいて半導体素子の製造方法を説明する。図21A〜21Iは、それぞれ、図22A〜22IにおけるXXI−A〜XXI−I断面における断面図である。なお、前記実施例1と同様の部分については説明を省略乃至簡略化する。
【0120】
まず、図21A及び図22Aに示すように、Siから成る基板1上に、下地層3及び中間層5を形成する。中間層5は膜厚差を有しており、右側では薄く、左側にゆくにつれて徐々に厚くなっている。下地層3の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。なお、本実施例において右側とは、図21A〜21I及び図22A〜22Iにおける右側を意味する。
【0121】
次に、図21B及び図22Bに示すように、中間層5の上に触媒層7を形成する(触媒層形成工程)。触媒層7の材質、膜厚、形成方法は前記実施例1と同様である。
次に、図21C及び図22Cに示すように、触媒層7を貫通する一対の孔9を形成する。孔9においては中間層5が露出する。
【0122】
次に、図21D及び図22Dに示すように、孔9を通じて、中間層5の一部をエッチングする(露出工程)。中間層5のエッチング条件は前記実施例1と同様である。
エッチングの結果、中間層5のうち、触媒層7の裏面の一部7Aに対向する部分が除去され、裏面の一部7Aが露出する。また、エッチングの結果、中間層5が除去された部分では、下地層3が露出する。裏面の一部7Aと下地層3との間には空洞10が生成する。この空洞10は、孔9を介して外部に連通している。触媒層7は、その両側において、残存した中間層5によって支持される。空洞10の高さ(触媒層7と下地層3との距離)は、中間層5の膜厚差を反映して、右側では低く、左側にゆくにつれて徐々に高くなっている。
【0123】
次に、熱処理により触媒層7の結晶性を高めてから(触媒層加熱工程)、CVDにより、図21E及び図22Eに示すように、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成する(グラフェン形成工程)。熱処理の条件、及びグラフェン11の形成条件は前記実施例1と同様である。
【0124】
次に、図21F及び図22Fに示すように、触媒層7のうち、グラフェン11を形成した部分(裏面の一部7Aに該当する部分)を、下地層3に近接させ、グラフェン11を下地層3上に転写する(転写工程)。このとき、上述したとおり、空洞10の高さは、右側では低く、左側にゆくにつれて徐々に高くなっているので、まず、触媒層7のうち、右側の端部が先に下地層3に接し、その後、触媒層7と下地層3とが接する範囲が、徐々に左側へと広がってゆく。
【0125】
次に、触媒層7の裏面の一部7Aにグラフェン11を形成したとき、触媒層7の表面にも形成されていたグラフェンを、O2アッシングにより除去する(グラフェン除去工程)。
【0126】
次に、図21G及び図22Gに示すように、触媒層7をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
次に、図21H及び図22Hに示すように、残りの中間層5をエッチングにより除去する。このときのエッチングの条件は前記実施例1と同様である。
【0127】
次に、図21I及び図22Iに示すように、電極13を形成する等の半導体プロセス工程を施すことで、グラフェン11を用いた半導体素子(電子デバイス)15が完成する。
2.発明の効果
(1)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。
(2)本実施例の半導体素子15の製造方法によれば、グラフェン11を下地層3上に転写するとき、グラフェン11を、その一方の端部から徐々に、下地層3に密着させることができる。そのことにより、転写されたグラフェン11の平坦性が一層向上する。
【0128】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記実施例1〜11のいずれかに記載された構成(例えば、保護層17の使用、下地層3や中間層5のパターニング等)を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0129】
また、前記実施例1〜11において、原子層堆積法を用いてグラフェン11を形成してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1・・・基板、3・・・下地層、3A・・・凹部、5・・・中間層、
5A・・・中央部、5B・・・周辺部、7・・・触媒層、7A・・・裏面の一部、
7B・・・第2層、7C・・・第1層、9・・・孔、10・・・空洞、
11・・・グラフェン、13・・・電極、15・・・半導体素子、16・・・切欠部、
17・・・保護層
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