特許第6031966号(P6031966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6031966
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】樹脂成型品の溶着構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   B29C65/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-256420(P2012-256420)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-100901(P2014-100901A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋二
(72)【発明者】
【氏名】芳本 雅之
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−135740(JP,A)
【文献】 特開2006−172789(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0094673(US,A1)
【文献】 特表2010−511539(JP,A)
【文献】 特開2005−088621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02−65/82
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂製の第1の接合部材と、
前記第1の接合部材に対して艤装可能な樹脂製の第2の接合部材と、
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材にそれぞれ形成され、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とを熱溶融により一体化する溶融部を備え、
前記第2の接合部材の溶融部は突起部であり
前記第1の接合部材の溶融部は前記突起部が挿入されて組み付けられる開口部である樹脂成型品の溶着構造であって、
前記開口部は前記第1の接合部材を貫通するように形成され
前記突起部は前記第1の接合部材を貫通し、
前記第1の接合部材の前記第2の接合部材と当接する面と反対の面に、前記突起部と当接する樹脂製のガイド部を前記第1の接合部材と一体に形成したことを特徴とする樹脂成型品の溶着構造。
【請求項2】
前記開口部は、前記第2の接合部材の溶融部の幅よりも前記艤装軌跡に対して交差する方向への開口幅が大きく形成されていて、
前記ガイド部は、前記開口部の開口幅の中央寄りに、前記第2の接合部材の溶融部との当接面が位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成型品の溶着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に配置される樹脂成型品の溶着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内には、多種な樹脂成型品が配置されている。樹脂成型品は、形状が複雑な場合、複数の部材に型割し、各型で形成した部材を組み付けることで一体化している。分割された部材を一体化する場合、接合対象となる部材に溶着部をそれぞれ形成し、双方を組み合わせた状態で熱溶着して一体化する。溶着部の形態としては、一方を突起部、他方を開口部とし、開口部に突起を挿入し、両者を組み合わせた状態にして熱溶着するのが一般的である。このような樹脂成型品の熱溶着の構造としては、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−88621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の樹脂製の部材を熱溶着して一体化する場合、その接合強度は、溶着部で溶融される樹脂容量に比例するので、できるだけ溶着部での溶融樹脂容量を確保するのが望ましい。車室内に配置する樹脂成型品には、製品の接合面をできるだけ乗員に見せたくないという要望や、樹脂成型品の配置場所の関係から、組み付け時の部材同士の艤装軌跡要件が制限されることがある。この場合、艤装軌跡要件を満足させるために、艤装軌跡で移動する側の溶融部の全長を短くする場合がある。無論、移動する側の溶着部の全長を短くしても、例えば厚さを増やすことで溶融部の樹脂容量を確保することは出来る。しかし、厚さを厚くしようとしても、艤装軌跡で移動する部材が取り付けられる接合対象側の接合部の大きさ(厚さ)や、溶融時の引けを考慮しなければならず、厚みを増やすことが出来ない場合もあり、艤装軌跡要件と樹脂溶着要件とを満足させるのが難しい。
本発明は、艤装軌跡要件と樹脂溶着要件の双方を満たす樹脂成型品の溶着構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る樹脂成型品の溶着構造は、脂製の第1の接合部材と、第1の接合部材に対して艤装可能な樹脂製の第2の接合部材と、第1の接合部材と前記第2の接合部材にそれぞれ形成され、第1の接合部材と前記第2の接合部材とを熱溶融により一体化する溶融部を備え、第2の接合部材の溶融部は突起部であり、第1の接合部材の溶融部は突起部が挿入されて組み付けられる開口部である樹脂成型品の溶着構造であって、開口部は第1の接合部材を貫通するように形成され、突起部は第1の接合部材を貫通し、第1の接合部材の第2の接合部材と当接する面と反対の面に、突起部と当接する樹脂製のガイド部を第1の接合部材と一体に形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第2の接合部材の溶融部は突起部であり、第1の接合部材の溶融部は突起部が挿入されて組み付けられる開口部である樹脂成型品の溶着構造であって、開口部は第1の接合部材を貫通するように形成され、突起部は第1の接合部材を貫通し、第1の接合部材の第2の接合部材と当接する面と反対の面に、突起部と当接する樹脂製のガイド部を第1の接合部材と一体に形成したので、第1の接合部材の溶融部の樹脂容積がガイド部の容量だけ増える。このため第2の接合部材の溶融部が組み付け上の制約によって容量が少なくなっても、熱溶着に必要な樹脂容量を確保した状態で熱溶着を行なえ、艤装軌跡要件と樹脂溶着要件の双方を満たす樹脂成型品の溶着構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る樹脂成型品の溶着構造が適用されたメーターパネルの構造を示す分解斜視図。
図2】メーターパネルを構成するフード部の第1の接合部材と第2の接合部材の構成を示す分解図。
図3】第1の接合部材の溶着部の構成を示す拡大斜視図。
図4】第1の接合部材の溶着部の構成を内側から見た拡大斜視図。
図5】第1の接合部材と第2の接合部材を内側から見た分解斜視図。
図6】第1の接合部材の溶着部に第2の接合部材の溶着部が挿入される際の動作図であって、(a)は側面視図、(b)は平面視図。
図7】第1の接合部材の溶着部に第2の接合部材の溶着部が組み付けられた状態を示す拡大斜視図。
図8】メーターパネルの組み付け完了状態を示す斜視図。
図9】第1の接合部材の溶着部の別な形態を内側から見た拡大斜視図。
図10図9に示した第1の接合部材の溶着部に第2の接合部材の溶着部が挿入される際の動作図。
図11】ガイド部の別な配置形態を示す図であり、(a)は側面視図、(b)は平面視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、樹脂成型品であるメーターパネル1を示す。メーターパネル1は、パネル本体2と、第1の接合部材となるフード3と、第2の接合部材となるベゼル4とを備えている。パネル本体2、フード3及びベゼル4は、同一の樹脂材で個別部品として成形された樹脂製である。パネル本体2は、車室内に設けられているインストルメントパネル5に固定されている。フード3とベゼル4は、図示しない溶着冶具上で互いに組み付けられ、熱溶着されることで一体化された後、パネル本体2の上面2aに形成されたパネル装着用の開口2bを覆うように上面2aに装着される。
【0009】
フード3は、断面コの字形状であって、その一部が突出してひさし部6が形成されている。このひさし部6の下部は、ベゼル4の装着部7とされていて、ベゼル4が下方から組み付けられる。
装着部7に位置し、互いに対向するフード3の側部3A、3Bの端部3C、3Dには、フード3とベゼル4とを一体化する際の溶着部となる開口部8、9がそれぞれ形成されている。図3図4に示すように、開口部8と開口部9は、側面3A、3Bからフード3の内側に向って形成されたフランジ10、10に、各フランジ10の表面10Aから裏面10Bに貫通するように上下に2箇所それぞれ形成されている。各開口部8、9は、正面形状が長方形であって、表面10Aの開口面積よりも裏面10B側の開口面積が小さく形成されている。各開口部8、9は、表面10A側から裏面10B側に向うに従い、その底部8C、9Cが上方に向って湾曲しながら上昇する傾斜面とされている。これら開口部8、9の形状は、後述するベゼル4の艤装軌跡Оとベゼル4の溶着部との関係から定められている。
【0010】
図1に示すように、ベゼル4は、全体形状が額縁状に形成されている。縁で囲まれた空間部を挟んで互いに対向するベゼル4の側部4A、4Bは、フード3の端部3A、3Bと対向するように形成されている。側部4A、4Bにおける端部3C、3Dとの接合面4C、4D側には、図2図5に示すように、溶融部となる突起部11、12がそれぞれ形成されている。突起部11、12は、接合面4C、4Dから外方に向って突出して上下に2箇所形成されている。各突起部11、12の先端11A、12Aは、下部から上部に向って湾曲しながら上昇する傾斜面とされたナイフ形状とされている。これら突起部11、12の形状は、図5に示すように開口部8、9に挿入可能な大きさと形状とされている。
【0011】
各突起部11、12の形状がナイフ形状とされているのは、フード3に対するベゼル4の艤装軌跡Оを要因としている。ベゼル4をフード3の装着部7に装着する際に、図2に示すように、まずはベゼル4の上端4Eをひさし部6の下面6Aに装着する。上端4Eを装着後、装着部を起点に図中時計周りに揺動させて接合面4C、4Dをフード3の端部3C、3Dのフランジ10、10に接合させる際の艤装軌跡Оが円弧を描くからである。このため、ナイフ形状の突起部11、12は長方形状の場合に比べて、その容積が低減されている。このようにベゼル4は、円弧状の艤装軌跡Оを描いてフード3に装着するのは、車室内の乗員からフード3とベゼル4との接合部を見せなくするためである。
【0012】
図6(a)、図6(b)に示すように、各開口部8、9は、突起部11、12の幅Hよりも艤装軌跡Оに対して交差する開口幅Wが大きく形成されている。開口部8、9は裏面10B側の開口幅W2が表面10Aのその開口幅W1よりも狭く形成されている。開口幅W2は突起部11、12を挿入可能な大きさとされている。なお、図6は一方の開口部8、9側のみを示す。
【0013】
図3図4に示すように、各開口部8、9の縁8A、9Aには、ガイド部となるリブ13が、それぞれフランジ10の裏面10B側に一体形成されて配置されている。各リブ13は、図6(a)、図6(b)に示すように、ベゼル4の突起部11、12がフード3の開口部8、9に組み付けられた時に、ベゼル4の突起部11と、その側面13Aが当接する位置に配置されて、フランジ10と一体形成されている。すなわち、リブ13は、開口部8、9の開口幅Wの中央寄りに、突起部11、12との当接面となる側面13Aが位置するように形成されている。リブ13の大きさは、突起部11、12と開口部8、9とを接溶着する際に必要な樹脂容量を確保可能な容量とされている。すなわち、突起部11、12を長方形状ではなく、ナイフ形状としたことによる樹脂容量の不足分を補える容量とされている。
【0014】
このような構成において、フード3とベゼル4を一体化するには、図2に示すように、ベゼル4の上端4Eをひさし部6の下面6Aに装着し、装着部を起点にベゼル4を図中時計周りに揺動させる。そして、図7に示すよう、ベゼル4の突起部11、12をフード3の開口部8、9に挿入する。突起部11、12がフード3のフランジ10、10の開口部8、9にそれぞれ挿入すると、開口部8、9の中央側に配置されているリブ13の側面13Aが各突起部11、12に弾性的に当接する。つまり、フード3とベゼル4を一体化(アセンブリ)をする際に、溶着冶具上での各開口部8、9の各突起部11、12の挿入時における合わせ規制ガイドとして各リブ13が機能する。このため、ベゼル4がフード3に艤装された状態で保持される。
【0015】
この保持状態でベゼル4の接合面4C、4Dとフード3の端部3C、3D(図5参照)とを隙間無く接触させ状態で、突起部11、12が開口部8、9に挿入されて組み付けられた箇所を、周知の溶着器具で挟み込んで熱溶融し、両者を熱溶着して一体化する。この一体化されたものは、図8に示すように、パネル本体2bに装着する。
【0016】
本形態では、ベゼル4の溶融部となる突起部11、12がフード3の溶融部と開口部8、9に組み付けられた時に、突起部11、12と当接するベゼル4の位置に、樹脂製のリブ13をそれぞれ形成した。このため、溶着箇所の樹脂容積が各リブ13の容量だけ増え、突起部11、12が組み付け上の制約によって容量が少なくなっても、熱溶着に必要な樹脂容量を確保した状態で熱溶着を行なえる。
溶着に必要な樹脂容量を各リブ13によって確保できることから、溶着前であっても突起部11、12と開口部8、9の組み付け箇所の剛性を高められる。このため、フード3とベゼル4を一体化(アセンブリ)をする際、図示しない溶着冶具へフード3とベゼル4を装着しても剛性を維持することができ、溶着後の完成品質が確保することができる。このような構成を備えた本形態では、艤装軌跡要件と樹脂溶着要件の双方を満たす樹脂成型品の溶着構造を提供することができる。
【0017】
リブ13の配置としては、開口部の片側の縁8A、9A側ではなく、図9図10に示すように、開口部8、9の互いに対向する縁8A、8Bと縁9A、9Bにそれぞれ配置して、突起部11、12を両側から挟み込むようにしても良い。このような配置すると、溶着前であっても突起部11、12が開口部8、9の組み付け箇所の剛性をより高められる。また、開口部8、9に突起部11、12が挿入されてベゼル4をフード3に艤装した際の保持力も高められる。さらに、突起部11、12が開口部8、9に挿入して組み付けた箇所の樹脂容積を1つのリブで確保する場合よりも、1つあたりのリブの大きさを小さく出来る。このため、1つのリブを形成する場合よりも2つのリブを形成する場合の成形を容易に行なえる。
【0018】
上記形態では、突起部11、12の側面に各リブ13を接触するように配置したが、図11に示すように、突起部11、12の上面11B、12Bに各リブ13を接触するようにしても良い。このような配置しても、組み付け上の制約によって突起部11、12の容量が少なくなったが少なくなっても、熱溶着に必要な樹脂容量を確保した状態で熱溶着を行なえる。
なお、本実施の形態中、溶融部となる開口部8、9と突起部11、12は、それぞれ2つずつ形成したが、これら開口部8、9と突起部11、12の数は、2つに限定されるものではなく、1つでも良いし3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 樹脂成型品
3 第1の接合部材
4 第2の接合部材
8、9 開口部(溶融部)
11、12 突起部(溶融部)
13 ガイド部
О 艤装軌跡
H 第2の接合部材の溶融部の幅
W、W1、W2 開口幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11