【実施例】
【0015】
(実施例1)
電力変換装置にかかる実施例について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1に示すごとく、電力変換装置1は、冷媒配管接続用の一対の貫通孔621を備えた外部ケース6に内包して配されるものである。電力変換装置1は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール31と、半導体モジュール31を冷却する冷却器32と、冷却器32及び半導体モジュール31を内側に保持するフレーム2と、筒状パイプ322、323をフレーム2と共に挟持するクランプ5とを有している。一対の筒状パイプ322、323は、冷却器32の内部に形成された冷媒流路に冷却媒体を導入又は排出するよう構成されている。
【0016】
図2及び
図3に示すごとく、筒状パイプ322、323は、外部ケース6における貫通孔621との間をシールするシール部材71に嵌合するパイプ先端部324と、該パイプ先端部324に対して基端側に近接する先端近接部325とを有している。フレーム2は、先端近接部325を支承する一対のパイプ支持部231を有しており、クランプ5とパイプ支持部231とによって先端近接部325を挟持することにより一対の筒状パイプ322、323をフレーム2に固定している。
【0017】
以下、さらに詳細に説明する。
図1及び
図2に示すごとく、本例において、半導体モジュール31と冷却管326が積層された方向を積層方向X、冷却管326の長手方向を横方向Y、また、積層方向X及び横方向Yの両方に対して直交する方向を高さ方向Zとして、以下説明する。
また、積層方向Xにおいて、加圧部材4を配した側を後方とし、反対側を前方とする。また、高さ方向Zにおいて、フレーム2の底部21が配される側を下方とし、反対側を上方とする。
【0018】
図1及び
図2に示すごとく、電力変換装置1は、電力変換回路の一部を構成する半導体積層ユニット3と、半導体積層ユニット3を内包するフレーム2と、該フレーム2の内側に半導体積層ユニット3と共に配される加圧部材4とを有している。
半導体積層ユニット3は、同図中に示すごとく、複数の半導体モジュール31と、該複数の半導体モジュール31を両主面から冷却する複数の冷却管326とを積層してなる。
【0019】
図1及び
図2に示すごとく、半導体モジュール31は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子を内蔵してなる。半導体モジュール31は、スイッチング素子を樹脂モールドしてなる平板状の本体部311と、該本体部311の端面から互いに反対方向に突出した主電極端子312及び制御端子313とからなる。平板状の本体部311における主面の法線方向が積層方向Xとなるように、半導体モジュール31は冷却管326と積層されている。主電極端子312は、高さ方向Zの下方に突出させてあり、制御端子313は、高さ方向Zの上方に突出させてある。主電極端子312は、バスバー(図示略)と接続されており、該バスバーを介して被制御電力が半導体モジュール31に入出力される。また、制御端子313は、制御回路基板(図示略)と接続されており、スイッチング素子を制御する制御電流が入力される。
【0020】
図1及び
図2に示すごとく、冷却管326は、半導体モジュール31の両主面に配されると共に、冷却管326へ冷却媒体を循環させるための冷媒導入管322及び冷媒排出管323からなる筒状パイプを有している。本例において、冷却管326は、アルミニウム等の金属によって構成され、複数の冷却管326が半導体モジュール31を両主面から挟持するように配されている。隣り合う冷却管326は、横方向Yの両端部付近において連結管327によって、互いに連結されている。これら冷却管326、連結管327、筒状パイプ322、323によって、冷却器32が構成されている。
【0021】
図2に示すごとく、筒状パイプ322、323は、半導体積層ユニット3の前端部に配された冷却管326の前面から、前方に向かって突出するよう設けてある。また、筒状パイプ322、323は、外部ケース6における貫通孔621との間をシールするシール部材71に嵌合するパイプ先端部324と、パイプ先端部324に近接する先端近接部325とを有している。
【0022】
図2及び
図3に示すごとく、パイプ先端部324は、半導体積層ユニット3をフレーム2の内側に配した際に、前方壁部23よりも外側に向かって突出して配されており、その先端は端部側に向かって縮径している。
【0023】
図1〜
図3に示すごとく、先端近接部325は、パイプ先端部324に対して基端側(後方側)に近接した位置に配されている。本例においては、半導体積層ユニット3をフレーム2の内側に配した際に、前方壁部23のパイプ支持部231と対向した位置となる。また、先端近接部325は、半導体積層ユニット3よりもパイプ先端部324に近い位置に形成されている。特に本例では、先端近接部325の先端、すなわちパイプ支持部231の先端が、筒状パイプ322、323の先端から半導体積層ユニット3とパイプ先端部324との中間の中点よりパイプ先端部324に近い位置に配されている。
【0024】
図1に示すごとく、冷媒導入管322から導入された冷却媒体は、適宜連結管327を通り、各冷却管326に分配されると共にその長手方向(横方向Y)に流通する。そして、各冷却管326を流れる間に、冷却媒体は半導体モジュール31との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、適宜下流側の連結管327を通り、冷媒排出管323に導かれ排出される。冷却媒体としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0025】
図1に示すごとく、半導体積層ユニット3は、加圧部材4と共にフレーム2の内側に配される。加圧部材4は、その付勢力によって半導体積層ユニット3を積層方向Xに押圧保持している。また、フレーム2の内側には、加圧部材4と共に、下記の介在部材を配してある。
加圧部材4は湾曲して形成された板ばねからなり、加圧部材4の横方向Yの中央において当接プレート45を介して半導体積層ユニット3を押圧する押圧部41と、横方向Yの両端部において支承部材26に支承される一対の被支承部43とを有している。
【0026】
図1に示すごとく、介在部材としては、平板状をなす当接プレート45と、円筒状をなす支承部材26とがある。
当接プレート45は、加圧部材4と半導体積層ユニット3との間に配されており、半導体積層ユニット3の後端に配される冷却管326と面接触している。
支承部材26は、加圧部材4と、後述する後方壁部24との間に配されている。
【0027】
上述した半導体積層ユニット3を内包するフレーム2は、
図1及び
図2に示すごとく、半導体積層ユニット3の下方に配される底部21と、底部21の外周において上方に立設すると共に高さ方向Zと直交する方向の全周を囲む壁部とからなる。フレーム2は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属又は合金によって構成することができる。
【0028】
図2に示すごとく、フレーム2の底部21には、半導体モジュール31の主電極端子312を挿通する底部挿通孔211が形成されている。底部21は、冷却管326の下面と当接するように形成してある。
図1に示すごとく、フレーム2は、壁部として、積層方向Xの両側に配された前方壁部23及び後方壁部24と、その両端において連結する一対の側方壁部25とを有する。
【0029】
図1及び
図2に示すごとく、前方壁部23は、筒状パイプ322、323を配置する一対のパイプ配置溝232と、各パイプ配置溝232の前方端部に形成されたパイプ支持部231と、一対のパイプ配置溝232の間に形成された部品配置部234とを有している。前方壁部23は、部品配置部234に電子部品33を配置するのに十分な大きさを確保するため、部品配置部234を設けない場合に比べて積層方向Xにおける寸法が大きく形成されている。
【0030】
図1及び
図2に示すごとく一対のパイプ配置溝232は、フレーム2の内側に半導体積層ユニット3を配した際に、一対の筒状パイプ322、323と対向する位置に形成された凹溝からなる。
図4に示すごとく、パイプ支持部231は、積層方向Xと直交する断面において略V字断面形状を有しており、フレーム2における外周縁部において、筒状パイプ322、323の先端近接部325と対向するように形成されている。
【0031】
図4に示すごとく、各パイプ配置溝232における先端近接部325の外側には、先端近接部325を跨ぐように固定ボルト54を螺合可能なネジ穴233と、クランプ5の一端を挿入する挿入穴235とを有している。
図1に示すごとく、パイプ配置溝232の間に形成された部品配置部234には、電子部品33が配されている。電子部品33としては、例えば、コンデンサやリアクトル等を配することができる。
【0032】
図4に示すごとく、ネジ穴233に締結固定されるクランプ5は、ネジ穴233と対向する締結部51と、締結部51の一端から屈曲して延設された挿入端部53とを有している。
締結部51は、固定ボルト54を挿通可能な挿通孔を有しており、筒状パイプ322、323と対向する位置まで延設されている。したがって、クランプ5をネジ穴233に締結固定することで、締結部51によって、筒状パイプ322、323をパイプ支持部231側に押圧するよう形成されている。
【0033】
図1に示すごとく、フレーム2の内側に配された半導体積層ユニット3は、上述のように、加圧部材4の付勢力によって半導体積層ユニット3を積層方向Xに押圧保持すると共に、筒状パイプ322、323の先端近接部325をクランプ5とパイプ支持部231とによって挟持することにより一対の筒状パイプ322、323をフレーム2に固定されている。
【0034】
上記のごとく構成された電力変換装置1は、車両等に搭載される際に、
図1及び
図2に示すように外部ケース6の内部に収容配置される。
外部ケース6は、電力変換装置1の上方に配される矩形状の天井部61と、上面部の外周縁全周から垂下し電力変換装置1の側方全周を囲うケース側壁部62とを有している。電力変換装置1の組み付け前の状態において、外部ケース6のケース側壁部62の下方は開口しており、ここから外部ケース6の内側に、電力変換装置1を配することができる。尚、電力変換装置1を内包した状態においては、ケース側壁部62の下端は封止される。
【0035】
図1〜
図3に示すごとく、電力変換装置1を外部ケース6の内側に配した状態において、筒状パイプ322、323のパイプ先端部324と対向して配されたケース側壁部62には、一対の貫通孔621が配してある。貫通孔621は、各パイプ先端部324と対向した位置にそれぞれ貫通形成されている。
【0036】
図1〜
図3に示すごとく、一対の貫通孔621には、それぞれ冷媒配管7が挿通配置される。
冷媒配管7は、貫通孔621に挿通配置されたシール部材71における前方側に配された端部と嵌合している。
【0037】
図3に示すごとく、シール部材71は、冷媒を流通する筒状のシール側流通部711と、シール側流通部711の外周側面から外側に向かって延設されたシール鍔部712とを有している。
シール側流通部711は、内側に冷媒を流通する流路を備えており、後方側に配された端部に筒状パイプ322、323を挿入して嵌合すると共に、前方側に配された端部を冷媒配管7に挿入して嵌合することにより、筒状パイプ322、323と冷媒配管7とを連通するよう構成されている。また、シール側流通部711の外径は、貫通孔621の内周と嵌合可能な寸法に設定してある。
【0038】
図3に示すごとく、シール鍔部712は、シール側流通部711を貫通孔621に嵌合した際に、外部ケース6のケース側壁部62における前方側面と当接し、シール部材71とケース側壁部62との間をシールするように構成されている。これにより、貫通孔621から水分等の流入を防止することができる。
図1に示すごとく、この状態において、パイプ支持部231の先端とシール側流通部711の基端との間の距離は、パイプ先端部324の先端とシール側流通部711の基端との間の距離よりも小さい。
【0039】
次に、本例の作用効果について説明する。
電力変換装置1においては、筒状パイプ322、323の先端近接部325を、クランプ5とパイプ支持部231とによって挟持することにより、一対の筒状パイプ322、323をフレーム2に固定している。それゆえ、先端近接部325において筒状パイプ322、323を固定することにより、パイプ先端部324により近い位置で筒状パイプ322、323を固定することができる。その結果、電力変換装置1を外部ケース6内に配置したときに、一対の筒状パイプ322、323が外部ケース6の一対の貫通孔621に対して、軸ズレすることを抑制することができる。それゆえ、冷媒配管7を筒状パイプ322、323に容易に接続することができる。
【0040】
また、パイプ支持部231は、フレーム2における外周縁部に形成されている。そのため、パイプ支持部231をより外側の位置に形成することができる。これにより、パイプ支持部231をパイプ先端部324により近い位置に配することができ、パイプ先端部324における軸ズレ量を低減することができる。
【0041】
また、冷却器32は、複数の冷却管326を有しており、該複数の冷却管326と複数の半導体モジュール31とを積層することにより半導体積層ユニット3を形成し、該半導体積層ユニット3がフレーム2に保持され、一対の筒状パイプ322、323は、半導体積層ユニット3の積層方向Xに突出している。そのため、電力変換装置1が半導体積層ユニット3を有していても、一対の筒状パイプ322、323の軸ズレを効果的に抑制することができる。半導体積層ユニット3を構成する冷却管326と半導体モジュール31との間に積層方向Xと交差した方向のズレが生じることにより、半導体背基礎ユニット3が、積層方向Xと交差した方向に撓み、一対の筒状パイプ322、323が、フレーム2に対して傾斜した方向に突出しパイプ先端部324の軸ズレ量が大きくなる場合がある。これに対して、電力変換装置1においては、先端近接部325で筒状パイプ322、323を固定しているため、パイプ先端部324における軸ズレ量を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、一対の筒状パイプ322、323は、同一方向に向かって延出しており、外部ケース6は、一対の筒状パイプ322、323の間であって、フレーム2の内側の位置に電子部品33を配置してある。そのため、一対の筒状パイプ322、323の間のスペースを利用して電子部品33を配することにより、電力変換装置1の小型化をすることができる。しかし一方で、一対の筒状パイプ322、323の全長が長くなりやすい。上記のごとく、軸ズレ量の低減効果に優れた電力変換装置1によれば、一対の筒状パイプ322、323の先端部における軸ズレ量の悪化を効果的に抑制することができる。
【0043】
以上のごとく、電力変換装置1によれば、筒状パイプ322、323の軸ズレ量を低減することができる。
【0044】
尚、本例においては、半導体積層ユニットの後端と後方壁部との間に加圧部材を配したが、半導体積層ユニットにおける前方側に配された冷却管の前面と前方壁部との間に加圧部材を配することもできる。