(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光信号の送信又は受信を行う光半導体素子を収容する素子収容部、及び前記素子収容部に対して前記光信号の光軸方向に並設された略円筒形状のレセプタクル部を有する同軸型の光サブアセンブリと、
前記光サブアセンブリを収容する筐体と、
前記筐体内に配置され、前記光軸方向に延びる前記素子収容部の一つの表面に沿っており前記表面と熱的に結合される第1の面、及び前記光軸方向に延びる前記筐体の一つの内面に沿っており前記内面と熱的に結合される第2の面を有し、前記素子収容部において発生した熱を前記筐体へ伝達する熱伝導部材と、
前記素子収容部及び前記熱伝導部材に対し、前記第1の面と前記表面とが近づく方向に第1の押圧力を加えるとともに、前記熱伝導部材に対し、前記第2の面と前記内面とが近づく方向に第2の押圧力を加える加圧部と
を備え、
前記熱伝導部材の前記第1の面と前記第2の面とが互いに略垂直であり、
前記加圧部が、前記第1の押圧力を発生する第1の部分と、前記第2の押圧力を発生する第2の部分とを含む形状に一体成型された弾性部材であることを特徴とする、光通信装置。
前記熱伝導部材の前記第2の面が、前記素子収容部の前記一つの表面に沿って延びる第1の領域と、該一つの表面及び前記光軸方向と交差する前記素子収容部の別の表面に沿って延びる第2の領域とを含む略L字形状を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は、特許文献3に記載された光通信装置の主要部の構成を示す断面図である。
図12に示される光通信装置100は、上部カバー102及び下部カバー103を含む筐体内に収容された、TOSA101及び回路基板105を備えている。TOSA101は、発光素子を内蔵するパッケージ部101aと、回路基板105への配線のための端子部101bと、光ファイバとの接続のためのスリーブ部101cとを有する。端子部101bと回路基板105とは、フレキシブル回路基板(FPC)104によって相互に接続される。
【0006】
パッケージ部101aの内部では、発光素子の温度を制御する熱電冷却器(Thermoelectric Cooler;TEC)上に発光素子が搭載されており、このTECがパッケージ部101aの一つの面(放熱面)に接触することによって発光素子の熱がパッケージ部101aの外部へ放出される。この熱は、パッケージ部101aの放熱面と上部カバー102との間(又はパッケージ部101aの放熱面と下部カバー103との間)に介在する熱伝導性シート106a(又は106b)を通じて、光通信装置100の外部へ放出される。
【0007】
しかしながら、光通信装置では、パッケージ部に内蔵される発光素子とスリーブ部に挿入される光ファイバとを精度良く光結合(調芯)するために、光軸に垂直な面内、および光軸に沿った面内における筐体内での光サブアセンブリの位置及び角度のばらつき(以下、位置ばらつきという)を吸収することが要求される。したがって、
図12に示された放熱構造では、熱伝導性シート106a(106b)に弾力性及び十分な厚さを与えることにより、このような位置ばらつきを吸収する必要が生じる。但し、熱伝導性シート106a(106b)が厚いほど熱抵抗が増すので、光サブアセンブリの位置ばらつきの吸収量と放熱効率との双方を十分に得ることが難しい場合がある。
【0008】
一方、
図13は、特許文献3に記載された別の光通信装置の主要部の構成を示す断面図である。
図13に示される光通信装置110は、TOSA112及び放熱ブロック114を備えている。TOSA112は、上述したパッケージ部101aに代えてセラミックパッケージ112aを有しており、このセラミックパッケージ112a内に発光素子が内蔵されている。そして、発光素子を搭載するTEC112bはセラミックパッケージ112aの背面112cに接触しており、この背面112cがセラミックパッケージ112aの放熱面となっている。放熱ブロック114は、セラミックパッケージ112aの背面112cと接触しており、且つ、光通信装置110の上部カバー116に放熱部材120を介して熱的に結合されている。発光素子において発生した熱は、TEC112b、放熱ブロック114、放熱部材120及び上部カバー116を通じて、光通信装置110の外部へ放出される。
【0009】
しかしながら、前述した課題は、
図13に示された光通信装置110でも解決され難い。光通信装置110においても、セラミックパッケージ112aに内蔵される発光素子とスリーブ部112cに挿入される光ファイバとを精度良く光結合するために、筐体内でのTOSA112の位置ばらつきを吸収することが要求される。しかし、光軸方向と交差する軸周りにおけるTOSA112の角度変化を或る程度許容するためには、放熱ブロック114と上部カバー116との間に弾力性のある厚い放熱部材120を設ける必要がある。したがって、この放熱部材120における熱抵抗のため、放熱効率を十分に得ることが難しいという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、光サブアセンブリの位置ばらつきの吸収量を十分に確保しつつ、十分な放熱効率を得ることができる光通信装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明による光通信装置は、光信号の送信又は受信を行う光半導体素子を収容する素子収容部、及び素子収容部に対して光信号の光軸方向に並設された略円筒形状のレセプタクル部を有する同軸型の光サブアセンブリと、光サブアセンブリを収容する筐体と、筐体内に配置され、光軸方向に延びる素子収容部の一つの表面に沿っており表面と熱的に結合される第1の面、及び光軸方向に延びる筐体の一つの内面に沿っており内面と熱的に結合される第2の面を有し、素子収容部において発生した熱を筐体へ伝達する熱伝導部材と、素子収容部及び熱伝導部材に対し、第1の面と表面とが近づく方向に第1の押圧力を加えるとともに、
熱伝導部材に対し、第2の面と内面とが近づく方向に第2の押圧力を加える加圧部とを備え、熱伝導部材の第1の面と第2の面とが互いに略垂直であることを特徴とする。
【0012】
また、上記光通信装置では、加圧部が、第1の押圧力を発生する第1の部分と、第2の押圧力を発生する第2の部分とを含む形状に一体成型された弾性部材であることが好ましい。この場合、熱伝導部材に、加圧部の第1の部分と嵌合する凹部が形成されていることが尚好ましい。
【0013】
また、上記光通信装置では、光軸に垂直な筐体の断面が長方形状であり、筐体の一つの内面が該長方形の長辺側であることが好ましい。この場合、加圧部が、長方形の長手方向において素子収容部及び熱伝導部材を挟持し、長方形の短手方向において
熱伝導部材を筐体に押し付けることが尚好ましい。
【0014】
また、上記光通信装置では、熱伝導部材の第2の面が、素子収容部の一つの表面に沿って延びる第1の領域と、該一つの表面及び光軸方向と交差する素子収容部の別の表面に沿って延びる第2の領域とを含む
略L字形状を有することが好ましい。
【0015】
また、上記光通信装置では、筐体内において光サブアセンブリを保持するための保持構造が、光軸周りの光サブアセンブリの角度変化を許容することが好ましい。この場合、保持構造が、レセプタクル部の角度変化を許容しつつレセプタクル部を保持する保持部材によって構成されており、保持部材が、レセプタクル部に嵌合するコネクタをラッチするための爪部を更に有することが尚好ましい。
【0016】
また、本発明による光通信装置の製造方法は、上記いずれかの光通信装置の製造方法であって、光サブアセンブリの素子収容部、熱伝導部材、及び加圧部を互いに組み付ける第1工程と、光サブアセンブリ、熱伝導部材、及び加圧部を筐体に収容する第2工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光通信装置及びその製造方法によれば、光サブアセンブリの位置ばらつきの吸収量を十分に確保しつつ、十分な放熱効率を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光通信装置及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る光通信装置(光トランシーバ)10の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された光通信装置10の上部カバー11aの図示を省略して光通信装置10の内部を示す斜視図である。
図3は、
図1に示された光通信装置10を上下反転し、下部カバー11bの図示を省略して光通信装置10の内部を示す斜視図である。なお、
図1〜
図3には、理解の容易のため、XYZ直交座標系が示されている。これらの図に示されるように、光通信装置10は、筐体11、回路基板15、熱伝導部材(放熱ブロック)17、加圧部材18、保持部材19、及び光サブアセンブリ20を備えている。
【0021】
筐体11は、回路基板15、熱伝導部材17、加圧部材18、保持部材19、及び光サブアセンブリ20を収容する部材であって、Z軸方向を長手方向とする直方体状の外形を有する。筐体11は、Z軸方向に沿って延びておりX軸方向に並ぶ上部カバー11a及び下部カバー11bを有する。上部カバー11a及び下部カバー11bは、金属製の部品であって、筐体11の内部に搭載される発熱部品に対する放熱体として機能する。回路基板15は、筐体11の内部において、筐体11の長手方向(Z軸方向)に延びている。回路基板15には、光電変換や電気信号の授受のための電子部品群やIC等が実装される。回路基板15の後端には、電気コネクタ部15aが形成されている。電気コネクタ部15aは、筐体11の後部(Z軸方向における一端部)に位置し、ホスト装置との電気的な接続に使用される。
【0022】
光サブアセンブリ20は、光通信装置10の外部との間で光信号の送受信を行う。本実施形態の光サブアセンブリ20は、一芯双方向の3ポートのBi−D(Bi-Directional optical module)であって、いわゆる同軸型の構成を有しており、Z軸方向を長手方向とし、該長手方向と光信号の光軸方向とが一致している。
図4は、本実施形態の光サブアセンブリ20の外観を示す斜視図である。
図4に示されるように、光サブアセンブリ20は、箱型パッケージ22と、同軸パッケージ23及び24と、略円筒形状のスリーブ25と、略円筒形状のレセプタクル部26とを有する。箱型パッケージ22は、本実施形態における素子収容部であって、略直方体状の外形を有する。同軸パッケージ23及び24は、いわゆるCANパッケージといった外形を有している。箱型パッケージ22及び同軸パッケージ23は、光信号の送信を行う発光素子(例えばレーザダイオード)をそれぞれ収容する。なお、箱型パッケージ22に収容されている発光素子と、同軸パッケージ23に収容されている発光素子とでは、発光波長が互いに異なる。同軸パッケージ24は、光信号の受信を行う受光素子(例えばフォトダイオード)を収容する。
【0023】
箱型パッケージ22、同軸パッケージ23及び24の各後端からは、リードピンが突出している。これらのリードピンと回路基板15とは、
図2に示されるフレキシブルプリント基板(Flexible printed circuits;FPC)16a、16b及び16cを介して互いに電気的に接続されている。
【0024】
スリーブ25は、光サブアセンブリ20の光軸を中心軸線としており、その一端側に箱型パッケージ22が取り付けられ、他端側にレセプタクル部26が取り付けられている。また、スリーブ25の外周面上には、光サブアセンブリ20の光軸と交差する方向から同軸パッケージ23及び24が取り付けられている。なお、同軸パッケージ23及び24の光軸は光サブアセンブリ20の光軸と交差しており、スリーブ25の内部におけるそれらの交点にはダイクロイックミラー若しくはハーフミラーが設置される。
【0025】
レセプタクル部26は、箱型パッケージ22に対して光信号の光軸方向に並設された部分であり、光サブアセンブリ20の光軸を中心軸線として配置され、スリーブ25と連通している。レセプタクル部26は筐体11の前部(Z軸正方向における他端部)に配置され、光通信装置10の接続対象である光コネクタ(例えばSCコネクタ)の光ファイバ及びフェルールがレセプタクル部26に挿入される。レセプタクル部26の外周には、筐体11および後述する保持部材19に保持されるための環状凸部(フランジ部)26aが形成されている。
【0026】
ここで、
図5は、箱型パッケージ22の具体的な構成を示す断面図であって、
図4に示される箱型パッケージ22のV−V断面を示している。
図5に示されるように、箱型パッケージ22は、発光素子31を含む主要部30を内蔵している。また、箱型パッケージ22は、Z軸方向に延びる一対の側壁22a,22bと、Z軸方向と交差する面に沿って延びる前壁22cおよび後壁22dと、後壁22dに取り付けられた配線部材27と、前壁22cに形成された孔22eに取り付けられた光学窓28とを有する。側壁22a及び22b、前壁22c、並びに後壁22dは、金属製である。配線部材27では、配線基板27aにリードピン27bが電気的に接続されている。
【0027】
主要部30は、発光素子31と、発光素子31を搭載したLDキャリア32と、LDキャリア32を搭載したTEC33と、TEC33を搭載した金属部材34とを有する。発光素子31は、光出射面31aから所定方向(Z軸方向)に光信号L1を出射するようにLDキャリア32上に搭載されている。
【0028】
LDキャリア32は、セラミックス製の直方体部材の上面に配線パターンが印刷されて成る。この配線パターンは、発光素子31の電極と電気的に接続されており、また、ワイヤ35を介して配線部材27の配線基板27aと電気的に接続されている。このLDキャリア32は、発光素子31の温度を制御するためのTEC33上に搭載されている。また、TEC33上には、レンズ36を保持したレンズホルダ37が更に搭載されている。レンズ36は、発光素子31の光出射方向(Z軸方向)に配置されており、発光素子31の光出射面31aと光学的に結合されている。
【0029】
TEC33は、一対の吸熱面33a及び放熱面33bを有しており、吸熱面33aを構成する上基板と、放熱面33bを構成する下基板との間に複数のペルチェ素子33cを挟み込んだ構造を有する。複数のペルチェ素子33cは、各々pn接合を含む半導体からなり、そのpn接合が直列に接続され両端に電流を供給することによって、吸熱面33a上に搭載された構造物の熱を放熱面33bに伝える。吸熱面33a上には、発光素子31を搭載したLDキャリア32の下面が接合されている。
【0030】
TEC33は、金属部材34上に配置されている。金属部材34は熱伝導率の高い金属板からなる。TEC33の放熱面33bは、金属部材34の上面にはんだを介して接合されている。金属部材34の下面は、箱型パッケージ22の一方の側壁22bにはんだを介して接合されている。
【0031】
続いて、熱伝導部材17、加圧部材18、及び保持部材19について詳細に説明する。なお、これら熱伝導部材17、加圧部材18、及び保持部材19は、全て筐体11内に配置される。
図6は、熱伝導部材17の外観を示す斜視図である。
図7は、加圧部材18の外観を示す斜視図である。
図8は、保持部材19の外観を示す斜視図である。そして、
図9及び
図10は、熱伝導部材17、加圧部材18、保持部材19、及び光サブアセンブリ20が組み立てられて成る組立体21を示す斜視図である。なお、
図9は
図2と同じ方向から見た斜視図であり、
図10は
図3と同じ方向から見た(すなわち
図9の上下を反転した)斜視図である。また、
図11は、筐体11内に収容された状態での光軸方向に垂直な組立体21の断面図を示しており、
図9に示される組立体21のIX−IX断面を含んでいる。
【0032】
熱伝導部材17は、箱型パッケージ22において発生した熱を筐体11へ伝達するための部材である。熱伝導部材17は、例えばアルミニウム、銅、亜鉛などの金属、または窒化アルミなどのセラミックといった熱伝導性の良い材料から成る。
図6に示されるように、本実施形態の熱伝導部材17は、YZ平面に沿って延びる板状の部分17aと、X軸方向に延びる部分17bとを含んでいる。部分17aには、YZ平面に沿った第1の面17cが形成されている。また、部分17aから部分17bにかけて、XZ平面に沿った第2の面17dが形成されている。すなわち、これらの面17c、17dは、互いに略垂直となるように(換言すれば、互いの法線同士が略直交するように)形成されている。
【0033】
図9及び
図11に示されるように、第1の面17cは、光サブアセンブリ20の光軸方向に延びる箱型パッケージ22の一つの表面(本実施形態では、
図5に示された側壁22bの外面)に沿うように配置され、該表面と熱的に結合される。一例では、第1の面17cと箱型パッケージ22の該表面との間に熱伝導材41が配置され、この熱伝導材41を介して第1の面17cと箱型パッケージ22の表面とが熱的に結合される。
【0034】
第2の面17dは、光サブアセンブリ20の光軸方向に延びる筐体11の一つの内面(本実施形態では、
図11に示される筐体11の上部カバー11aの内面)に沿うように配置され、該内面と熱的に結合される。一例では、第2の面17dと筐体11の内面とが直接接触する。或いは、第2の面17dと筐体11の内面との間に図示しない熱伝導材が配置され、この熱伝導材を介して第2の面17dと筐体11の内面とが熱的に結合されてもよい。
【0035】
なお、第1の面17cと箱型パッケージ22の該表面との間に配置される熱伝導材41、また第2の面17dと筐体11の内面との間に配置される熱伝導材としては、エラストマのような弾性を有するシリコーンゴムに、金属やセラミック粒子等の熱伝導性の微粒子を混入して熱伝導率を高めた弾力性を有する樹脂シート状のものや、シリコン、アクリル等のペースト状の母材に、セラミックフィラー等を添加し熱伝導率を高めた部材などが好適である。或いは、熱伝導材としてグラファイトシートが用いられてもよい。熱伝導材は、電気伝導性を有していてもよく、また、電気絶縁性を有していてもよい。熱伝導材が電気伝導性を有する場合には、箱型パッケージ22の耐ノイズ性能が高められる。また、熱伝導材が絶縁性である場合には、箱型パッケージ22の接地電位系(シグナルグラウンド)と、筐体11の接地電位系(フレームグラウンド)とを効果的に分離することができる。
【0036】
また、第2の面17dは、Z軸方向に延びる第1の領域17eと、X軸方向に延びる第2の領域17fとを含む略L字型といった形状を有する。換言すれば、第1の領域17eは、箱型パッケージ22の上記表面(側壁22bの外面)に沿って延びている。また、第2の領域17fは、箱型パッケージ22の上記表面及び光サブアセンブリ20の光軸の双方と交差する箱型パッケージ22の別の表面(本実施形態では、
図5に示された後壁22dの外面)に沿って延びている。
【0037】
なお、本実施形態では、光サブアセンブリ20の光軸に垂直な筐体11の断面が長方形状であって、上部カバー11a及び下部カバー11bの厚さ方向を短手方向としている。そして、第2の面17dが熱的に結合される上部カバー11aの内面は、該長方形の長辺側の内面に相当する。
【0038】
加圧部材18は、本実施形態における加圧部を構成する。加圧部材18は、箱型パッケージ22及び熱伝導部材17に対し、第1の面17cと箱型パッケージ22の上記表面とが互いに近づく方向に、常に一定の加重で押圧力(以下、第1の押圧力という)を加える。更に、加圧部材18は、
熱伝導部材17に対し、第2の面17dと上部カバー11aの上記内面とが互いに近づく方向に、常に一定の加重で押圧力(以下、第2の押圧力という)を加える。
【0039】
本実施形態の加圧部材18は、
図7に示されるように、第1の押圧力を発生する第1の部分18aと、第2の押圧力を発生する第2の部分18bとを含んでいる。そして、加圧部材18は、第1及び第2の部分18a,18bを含む形状に一体成型された弾性部材から成る。具体的には、第1の部分18aは、一対のアーム18c及び18dを含んでおり、
図9〜
図11に示されるように、筐体11の長方形断面の長手方向(すなわちX軸方向)において、箱型パッケージ22及び熱伝導部材17を挟持する。但し、第1の部分18aに挟持された状態において、箱型パッケージ22はY軸方向に摺動可能となっている。更に、
図10及び
図11に示されるように、熱伝導部材17においてアーム18cと当接する面にはY軸方向に延びる凹部17gが形成されており、加圧部材18の第1の部分18aの一方のアーム18cは、この凹部17gと嵌合する。
【0040】
また、第2の部分18bは、
熱伝導部材17と下部カバー11b(
図11を参照)との間に配置された片持ちばね18eを含んでおり、
図10及び
図11に示されるように、筐体11の長方形断面の短手方向(すなわちY軸方向)において、下部カバー11bからの反力を受けて
熱伝導部材17を上部カバー11aに押し付ける。
【0041】
なお、この加圧部材18の材質としては、箱型パッケージ22を上部カバー11a或いは下部カバー11bと電気的に導通させたい場合には金属が好適であり、また、これらを電気的に絶縁させたい場合には、例えば樹脂が好適である。
【0042】
本実施形態の保持部材19は、筐体11内において光サブアセンブリ20を保持するための保持構造を構成する部材である。保持部材19は、
図8〜
図10に示されるように、光サブアセンブリ20のレセプタクル部26が挿通される円形の開口19bが形成された板状の主部19aと、主部19aからZ軸方向前方に突出して設けられた一対の爪部19c,19dとを有する。
【0043】
主部19aは、筐体11の上部カバー11aによって保持され、筐体11に固定される(
図3を参照)。主部19aの開口19bの内側面には段差19eが形成されており、レセプタクル部26の外周に形成された環状凸部26a(
図4を参照)がこの段差19eに収容されることによって、レセプタクル部26が保持部材19に保持される。但し、保持部材19とレセプタクル部26とは互いに固定されておらず、保持部材19と環状凸部26aとの間には例えば50μm〜100μmといった僅かな隙間が存在する。これにより、保持部材19は、光軸周り(すなわちZ軸周り)の光サブアセンブリ20の角度変化を許容している。
【0044】
一対の爪部19c,19dは、レセプタクル部26に嵌合する光コネクタ(例えばSCコネクタ)をラッチするための部分である。爪部19c,19dは、主部19aと一体として成型されている。
【0045】
以上の構成を備える本実施形態の光通信装置10によって得られる効果について説明する。上述したように、この光通信装置10では、光サブアセンブリ20の箱型パッケージ22において側壁22bが放熱面となっており、この側壁22bの外面と上部カバー11aの内面とは互いに略垂直となっている。そして、熱伝導部材17は、箱型パッケージ22の側壁22bと熱的に結合される第1の面17cと、上部カバー11aの内面と熱的に結合される、第1の面17cに対して略垂直な第2の面17dとを有している。更に、箱型パッケージ22及び熱伝導部材17には、互いが近づく方向に第1の押圧力が加えられ、
熱伝導部材17には、上部カバー11aに向けた第2の押圧力が加えられている。
【0046】
このような構成において、箱型パッケージ22に内蔵される発光素子31とレセプタクル部26に挿入される光ファイバとを光結合(調芯)する際の光サブアセンブリ20の位置及び角度のばらつきを考える。いま、光サブアセンブリ20にY軸周りの角度変化が生じ、箱型パッケージ22が筐体11に対して相対的にX軸方向に変位したとする。このとき、その変位量は、熱伝導部材17の第2の面17dが上部カバー11aの内面に対して平行に移動することによって吸収される。また、光サブアセンブリ20にX軸周りの角度変化が生じ、箱型パッケージ22が筐体11に対して相対的にY軸方向に変位したとする。このとき、その変位量は、熱伝導部材17の第1の面17cが箱型パッケージ22の側壁22bに対して平行に移動することによって吸収される。
【0047】
このように、本実施形態の光通信装置10によれば、調芯によって発生する光サブアセンブリ20の位置及び角度のばらつきを効果的に吸収することができるので、
図12に示された熱伝導性シート106a(又は106b)のような厚い熱伝導性シートを用いなくても、その吸収量を十分に確保することができる。そして、そのような位置ばらつきの大きさに拘わらず、熱伝導部材17の第1の面17cと箱型パッケージ22の側壁22bとの相対位置関係、及び熱伝導部材17の第2の面17dと上部カバー11aの内面との相対位置関係を維持して、放熱効率を十分に得ることができる。
【0048】
また、本実施形態のように、加圧部材18は、第1の押圧力を発生する第1の部分18aと、第2の押圧力を発生する第2の部分18bとを含む形状に一体成型された弾性部材であることが好ましい。これにより、方向が互いに異なる第1及び第2の押圧力を発生するための構造を簡易に実現することができる。
【0049】
また、本実施形態のように、熱伝導部材17には凹部17gが形成されており、加圧部材18の第1の部分18aの一方のアーム18cが、この凹部17gと嵌合することが好ましい。これにより、光軸方向(Z軸方向)における熱伝導部材17の移動を好適に制限することができる。
【0050】
また、本実施形態のように、光軸に垂直な筐体11の断面が長方形状であり、筐体11において熱伝導部材17の第2の面17dと熱結合される内面が該長方形の長辺側であることが好ましい。これにより、放熱効率をより高めることができる。特に、ホスト装置において該長方形の長辺側の面に放熱フィン等が設けられている場合には、上記の構成によって放熱効率を格段に高めることができる。また、筐体11の断面が長方形状である場合、長方形の短手方向における箱型パッケージ22と筐体11との隙間が狭いという事情がある。したがって、本実施形態のように、加圧部材18が、長方形の長手方向において箱型パッケージ22及び熱伝導部材17を挟持し、長方形の短手方向において箱型パッケージ22を筐体11に押し付けることにより、このような筐体11内の空間形状に適した熱伝導部材17を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態のように、熱伝導部材17の第2の面17dは、箱型パッケージ22の側壁22bに沿って延びる第1の領域17eと、後壁22dに沿って延びる第2の領域17fとを含むとよい。これにより、箱型パッケージ22と筐体11との間の狭い空間を避けつつ、箱型パッケージ22の周囲において第2の面17dと筐体11との熱結合面積を広くすることができ、また、上部カバー11aの内面に対する第2の面17dの相対角度がより安定するので、放熱効率を更に高めることができる。
【0052】
また、本実施形態のように、筐体11内において光サブアセンブリ20を保持するための保持構造(保持部材19)は、光軸周り(Z軸周り)の光サブアセンブリ20の角度変化を許容することが好ましい。これにより、上述したX軸周り及びY軸周りの光サブアセンブリ20の角度変化に加えて、Z軸周りの角度変化に対しても、そのばらつきを吸収することができる。従って、第1の面17cと側壁22bとの相対位置関係、及び第2の面17dと上部カバー11aの内面との相対位置関係をより安定的に維持して、放熱効率を更に高めることができる。
【0053】
ここで、本実施形態の光通信装置10の製造方法として、光通信装置10の組み立て順序について説明する。光通信装置10を組み立てる際には、まず、光サブアセンブリ20の箱型パッケージ22、熱伝導部材17、及び加圧部材18を互いに組み付ける(第1工程)。具体的には、まず箱型パッケージ22と熱伝導部材17との間に熱伝導材41を挟み、その状態で加圧部材18を箱型パッケージ22及び熱伝導部材17に嵌め込む。なお、この第1工程の前に、箱型パッケージ22、同軸パッケージ23及び24と回路基板15とをそれぞれFPC16a、16b及び16cを介して接続しておくとよい。
【0054】
その後、第1工程で作成した構造体を筐体11に収容する(第2工程)。まず、光サブアセンブリ20のレセプタクル部26を保持部材19の開口19bに挿通する。そして、保持部材19を上部カバー11aの所定の位置に固定し、上部カバー11aに下部カバー11bを取り付ける。こうして、光通信装置10が完成する。
【0055】
この製造方法では、高い位置精度が要求される光サブアセンブリ20の箱型パッケージ22、熱伝導部材17、及び加圧部材18を先に組み立て、互いの位置ばらつきが吸収され得る筐体11と光サブアセンブリ20等とをその後に組み立てている。これにより、光通信装置10が有する十分な放熱効率を損なうことなく光通信装置10を組み立てることができる。
【0056】
本発明による光通信装置及びその製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、素子収容部である箱型パッケージ22の他に、同軸パッケージ23及び24を有する光サブアセンブリ20を例示しているが、本発明の光通信装置が備える光サブアセンブリは、熱伝導部材による放熱が必要な素子収容部を少なくとも一つ有していればよい。また、その素子収容部に収容される光半導体素子は、上記実施形態のように発光素子に限られるものではなく、光信号の受信を行う受光素子であってもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、加圧部として、素子収容部及び熱伝導部材に対して第1の押圧力を加える第1の部分17aと、素子収容部に対して第2の押圧力を加える第2の部分17bとが一体成型されて成る加圧部材17を例示しているが、加圧部は必ずしも単一の部材から成る必要はなく、例えば第1の部分と第2の部分とが別部材として構成されたものであってもよい。