【文献】
JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,2007年, Vol.101 ,p.081720-1-081720-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ネットワークのセキュリティを高めるために、盗聴を理論上完全に排除できる量子暗号通信を実現するための研究開発が活発化している。この量子暗号通信には、光回線を介して絶対安全な量子鍵を配送する装置が重要である。
【0003】
このような絶対安全な暗号通信を行うために、単一の光子を用いた通信が注目を集めている。従来の光通信の場合には、1ビットの情報を乗せるために数十万個の光子を用いているため、盗聴された場合にもその判別が困難となる。しかし、単一光子を用いた場合には、盗聴が行われれば、単一光子は盗聴により消失するので盗聴の有無が明らかになる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このような暗号通信を行う場合に、単一光子光源として、量子ドットを含む半導体構造をホーンに加工した構造が提案されている(例えば、非特許文献2参照)ので、
図12を参照して、従来の単一光子光源を説明する。
【0005】
図12は、従来の単一光子光源の説明図であり、
図12(a)は単一光子光源の概念的構成図であり、
図12(b)は単一光子発生器の概略的断面図である。
図12(a)に示すように、単一光子光源は、単一光子発生器51、単一光子発生器51を液体窒素温度に冷却する冷却器53、コリメートレンズ54、反射鏡55、ハーフミラー56、励起用レーザ57、レンズ58及び光ファイバ59を備えている。
【0006】
図12(b)に示すように、単一光子発生器51は、パラボラ状のホーン構造60をしており、その焦点近傍に量子ドット52を有している。また、ホーンの開放面側には反射抑制膜61が設けられている。励起用レーザ57から量子ドット52の基底準位間のエネルギーよりも大きなエネルギーを有する励起レーザ光62が入射すると、電子−正孔対が生成され、所定の緩和時間後に再結合して基底準位間エネルギーに相当する波長の単一光子63を放出する。
【0007】
放出された単一光子63はホーン構造60で全反射されて開放面側から取り出され、コリメートレンズ54、反射鏡55、ハーフミラー56及びレンズ58を介して光ファイバ59に結合される。このような構成により、50kmの距離においても低損失で量子鍵を伝送することが可能になる。この場合、ホーン構造60の中心線上の焦点近傍に量子ドット52が位置するときが最も単一光子63の取り出し効率が高くなる。
【0008】
このような、量子ドッド52は、一般的には、下地層と量子ドットを形成する半導体結晶との格子不整合により成長モードが2次元成長から3次元成長へ遷移するStransky−Krastanov(S−K)モードによる自己組織化により形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、S−Kモードを用いた自己組織化により形成した場合には、量子ドットの形成位置を制御することはできず、量子ドットは2次元平面内にランダムに形成される。したがって、ホーンの中央に量子ドットを制御して形成できないためS−Kモード量子ドットを用いたホーン構造素子では、素子を数百個作製しても光子取り出し効率の高いホーンは数個程度しか得られず作製歩留まりが非常に悪いという問題がある。
【0012】
一方、量子ドットを位置制御する手法として、エッチング停止面を利用して溝を形成し、再成長により溝部に量子ドットを形成する製造方法がある(例えば、特許文献1参照)。
図13は、従来の位置制御量子ドットの形成方法の説明図であり、
図13(a)に示すように、(100)面のGaAs基板71にパターニングとウェットエッチングによりエッチング停止面の(111)A面からなるV溝72を形成する。次いで、
図13(b)に示すように、再成長により半導体層73をエピタキシャル成長させることによってV溝72の底部に堆積した半導体層73が量子細線や量子ドットとなる。
【0013】
図14は、従来の他の位置制御量子ドットの形成方法の説明図であり、
図14(a)に示すように、(111)B面のGaAs基板81に、パターニングとウェットエッチングにより3つの(111)A面からなる逆三角錐の溝82を形成する。次いで、
図14(b)に示すように、再成長により厚さ3nmのAlGaAsバリア層83、厚さ5nmのGaAsウエル84、及び、厚さ3nmのAlGaAsバリア層85を成長させる。この構造に、上下に電界を印加することで溝部の底部近傍のGaAsウエル層84を量子ドットとして作用させる。
【0014】
これらを用いれば、所望の位置に量子ドットを形成することはできるが、この量子ドットを単一光子光源のような光デバイスに用いた場合には課題が生じる。即ち、溝形成にエッチング停止面の(111)A面を使用しているため、再成長層は(111)A面上に形成される。(111)面上の成長は積層欠陥が非常に生じやすく、積層欠陥の生じた結晶はキャリアが欠陥準位にトラップされるため発光効率が下がる。また、再成長界面に直接あるいは非常に薄いバリア層を介して量子ドット層を形成しているため、再成長界面の非発光再結合中心にキャリアがトラップされ発光効率が低下する。
【0015】
さらに、特許文献2の場合には、通常の(100)面基板とは異なる(111)B面基板を用いているため、結晶面が異なることによりエッチング特性・エッチング形状が異なりホーン化プロセスが困難であるという課題もある。
【0016】
このような結晶面の問題を解決する方法としては、AFMチップを用いる方法がある(例えば、特許文献3参照)。
図15は、AFMチップを用いた位置制御量子ドットの形成方法の説明図であり、
図15(a)に示すように、AFMチップに設けたカンチレバーを用いて基板91上に設けたバッファ層92の表面にnmオーダーの窪み93を形成する。
【0017】
次いで、
図15(b)に示すように、1原子層の表面終端層94で覆った後、
図15(c)に示すように、再成長により半導体層をエピタキシャル成長することで窪み93に量子ドット95を形成する。しかし、この方法も再成長で窪み93の表面を1原子層の表面終端層94で覆う必要があるため、再成長界面の影響を受け発光効率が低いという問題がある。
【0018】
以上のことから、従来技術による量子ドットの形成方法では、発光効率の高い量子ドットと、位置制御量子ドットの両立はできなかった。
【0019】
したがって、半導体量子ドットの製造方法において、高い発光効率と位置制御性を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
開示する一観点からは、(100)面を主面とする半導体基体の表面にエッチングにより
平面形状が矩形状で且つ断面形状が矩形状の凹部を形成する工程と、前記凹部内に、前記凹部の
平面における中央に位置し、且つ、(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる窪みを有する下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層に形成された窪み内に量子ドット層を形成する工程と、前記量子ドット層を覆うようにキャップ層を形成する工程とを有することを特徴とする半導体量子ドット構造の製造方法が提供される。
【0021】
また、開示する別の観点からは、(100)面を主面とする半導体基体の表面にエッチングにより
平面形状が矩形状で且つ断面形状が矩形状の凹部を形成する工程と、前記凹部内に、前記凹部の
平面における中央に位置し、且つ、(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる窪みを有する下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層に形成された窪み内に量子ドット層を形成する工程と、前記量子ドット層を覆うようにキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層乃至前記半導体基体の一部をエッチングすることによって、前記量子ドット層が中心軸に位置するようにパラボラ状のホーン構造を形成する工程とを有することを特徴とする単一光子発生器の製造方法が提供される。
【0022】
また、開示するさらに別の観点からは、(100)面を主面とする半導体基体と、
前記半導体基体に設けられた平面形状が矩形状で且つ断面形状が矩形状の凹部と、前記凹部内に、前記凹部の平面における中央に位置し、且つ、(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる窪みを有する下部クラッド層と、前記下部クラッド層に形成された窪み内に設けられた前記半導体基体に向かって四角錐状の単一の量子ドット層と
、前記量子ドット層を焦点位置とするパラボラ状のホーン構造とを備えたことを特徴とする単一光子発生器が提供される。
【発明の効果】
【0023】
開示の半導体量子ドットの製造方法、単一光子発生器及びその製造方法によれば、高い発光効率と位置制御性を両立することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態の単一光子発生器を説明する。
図1は、本発明の実施の形態の単一光子発生器の説明図であり、
図1(a)は単一光子発生器の概略的断面図であり、
図1(b)は単一光子発生器のホーン構造の焦点近傍に設けられた量子ドットの概略的断面図である。
【0026】
図1(a)に示すように、単一光子発生器は、(100)面を主面とする半導体基体1と、半導体基体1に埋め込まれ、各傾斜面が(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる四角錐状の単一の量子ドット層5とを有する。また、量子ドット層を焦点位置とするパラボラ状のホーン構造7を設ける。
【0027】
製造工程としては、
図1(b)に示すように、(100)面を主面とする半導体基体1の表面にエッチングにより矩形状の凹部2を形成する。次いで、凹部内に(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる逆四角錐状の窪み4を有する下部クラッド層3を形成する。次いで、下部クラッド層3に形成された窪み4内に量子ドット層5を形成したのち、量子ドット層5を覆うようにキャップ層6を形成する。ホーン構造7を形成する場合には、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせてエッチングを行い、基板裏面を研磨して薄層化したのち、反射抑制膜8を設ける。
【0028】
窪み4の傾斜面を{111}面の角度54.7°より緩やかな斜面で形成するため、量子ドット層5やキャップ層6を形成する再成長層に{111}面が出現せず積層欠陥を抑制できる。また、凹部2内に下部クラッド層3を形成する際に、再成長界面の影響を少なくするために、窪み4の底部の積層方向の位置が凹部2の底面から0.2μm以上離れるように形成することが望ましい。
【0029】
また、凹部は正方形でも長方形でも良く、凹部深さと凹部最短幅の関係が
(凹部深さ)/(凹部最短幅)<0.47
になるようにすることが望ましい。これにより、下部クラッド層3を形成する際に主成長モードとして出現する斜面{311}と、基板の(100)面とのなす角度のタンジェントがtan(25.2°)=0.47よりも小さくなるため、緩やかな傾斜面を安定して出現させることができる。その結果、窪み4の大きさを相似的に変化させることができ窪み4のサイズを安定して制御することができる。
【0030】
なお、半導体基体(semiconductor body)とは、半導体基板自体或いはバッファ層等を形成した半導体基板を意味する。この半導体基体1としては、単一光子光通信に用いる波長等の観点からInPまたはGaAsが好適である。
【0031】
また、下部クラッド層3は半導体基体1に格子整合する半導体からなることが望ましく、それにより、格子緩和せずに下部クラッド層3を厚く形成することができる。また、量子ドット層5を形成する半導体材料として、S−Kモードで成長するInAsまたは格子整合するInGaAsPが典型的であるが、InGaAs,AlGaInAs,AlGaInP,InGaP,InGaAsSb等の混晶を用いても良いものである。
【0032】
また、半導体基体1、下部クラッド層3、量子ドット層5及びキャップ層6はノンドープ層が典型的であるが必要に応じてドーピングした半導体を用いても同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、結晶成長に際しては、枠状の選択成長マスクを用いても良く、その場合には、成長ガス中に塩素を含むガスを添加することにより、横方向に斜めの成長面が伸びていく成長モードが支配的になる。その結果、凹部2の中央に傾斜角がより緩やかな窪み4が形成される。
【0034】
図2は、単一光子の取り出し効率のホーン構造と量子ドット層の位置関係依存性の説明図であり、量子ドット層の位置がホーン構造の中心軸からずれると急激に取り出し効率が低下する。
【0035】
しかし、本発明の実施の形態においては、量子ドット層の位置を矩形の凹部の位置で規定しているので、ホーン構造の中心軸からずれることがなく、取り出し効率を高くすることができる。また、窪み4の傾斜面を緩い傾斜面で形成するとともに、窪み4の底部と凹部との距離を十分大きくしているので、再成長界面の影響を受けることが少なく、発光効率の高い量子ドット層を形成することができる。したがって、両者によって、発光効率の高い量子ドットを所望の位置に制御性良く形成することが可能となる。
【実施例1】
【0036】
次に、
図3乃至
図6を参照して、本発明の実施例1の半導体量子ドットの製造方法を説明する。まず、
図3(a)に示すように、(100)面を主面とする半絶縁性InP基板21上にSiO
2膜を設け、パターンニング及びエッチングにより2.5μm×2.5μmの矩形の開口部23を設けてSiO
2マスク22とする。なお、この時、後工程でホーン加工する際のパターンと位置合わせするためのSiO
2膜からなる位置合わせマーカ(図示は省略)を半絶縁性InP基板21の周辺部に一緒に形成する。
【0037】
次いで、
図3(b)に示すように、SiO
2マスク22をマスクとしてドライエッチングを行うことによって深さが1μmの凹部24を形成する。この時、
(凹部深さ)/(凹部最短幅)=0.4
になる。
【0038】
次いで、
図4(c)に示すように、バッファードフッ酸を用いてSiO
2マスク22を除去する。この時、半絶縁性InP基板21の周辺部に形成した位置合わせマーカが残るようにレジストで保護しておく。
【0039】
次いで、
図4(d)に示すように、MOVPE(有機金属気相成長)法を用いて、580℃の成長温度で凹部24の中央部における厚さが1.2μmになるように全面にi型InP下部クラッド層25を形成する。この時、凹部24の中央に{111}面よりも緩やかな傾斜面で形成された幅100nm、深さ50nmの窪み26が形成される。因みに、緩やかな傾斜面の角度は25.2°である。
【0040】
次いで、
図5(e)に示すように、PH
3雰囲気中で基板温度を500℃に下げた後に、連続成長によりInAsを1.8ML(分子層)成長する。この時、窪み26にはInAsが厚く成長するため、窪み26内のInAsは2MLよりも厚くなり2次元成長から3次元成長への成長モード遷移が起こり幅60nm、高さ7nmの量子ドット27が形成される。
【0041】
次いで、
図5(f)に示すように、窪み26が平坦に埋め込まれるように、成長温度を500℃として、全面に厚さが0.3μmのi型InPキャップ層28を成長させる。
【0042】
次いで、
図6(g)に示すように、成長炉から取り出した後、i型InPキャップ層28上にSiO
2膜を形成する。次いで、半絶縁性InP基板21の周辺部に設けた位置合わせマーカを基準にして、量子ドット27が中心部に位置するようにパターニング及びエッチングを行ってのSiO
2マスク29を形成する。
【0043】
次いで、
図6(h)に示すように、ドライエッチングを行った後、ウェットエッチングを行うことによって、高さ7μm、頂部の幅1μm、底部の幅5μmのホーン構造30を形成する。
【0044】
次いで、
図6(i)に示すように、SiO
2マスク29を除去したのち、基板研磨により、半絶縁性InP基板21の厚さを150μmにし、半絶縁性InP基板21の裏面に多層誘電体膜からなる反射抑制膜31を形成する。以降は、所定の大きさに切断することによって、本発明の実施例1の単一光子発生器が完成する。
【0045】
このように、本発明の実施例1においては、パターニングにより形成した矩形凹部の中央に量子ドット27を位置制御性良く形成できる。なお、ステッパーを用いて矩形凹部のパターンとホーン加工のパターンの位置合わせを行った場合に、位置ずれは±0.1μmとなるため、上記の
図2に示すように、量子ドット27からの単一光子の取り出し効率を30%以内のばらつきに抑えることができる。
【0046】
また、量子ドット27は{111}面よりも緩やかな傾斜面で形成された窪み26に形成されるため、量子ドット27及びi型InPキャップ層28への積層欠陥を抑制できる。また、量子ドット27と再成長界面は1.2μm離れているため、量子ドット27は再成長界面の影響をうけにくくキャリアがトラップされずに量子ドットに効率よく注入される。そのため、再成長界面に直接量子ドット27を形成した場合に比べると、発光効率は10倍程度高くできる。以上より、本発明の実施例1によれば光子取り出し効率の高い単一格子発生器を高い歩留まりで製造することが可能となる。
【実施例2】
【0047】
次に、
図7乃至
図9を参照して、本発明の実施例2の単一光子発生器の製法方法を説明する。まず、
図7(a)に示すように(100)面を主面とする半絶縁性InP基板21上にSiO
2膜を設け、パターンニング及びエッチングにより10μm×10μmの矩形の開口部33を有する幅2μmの枠状のSiO
2マスク32を形成する。なお、この時も、後工程でホーン加工する際のパターンと位置合わせするためのSiO
2膜からなる位置合わせマーカ(図示は省略)を半絶縁性InP基板21の周辺部に一緒に形成する。
【0048】
次いで、
図7(b)に示すように、SiO
2マスク32をマスクとしてドライエッチングを行うことによって深さが2μmの凹部34,35を形成し、残部が枠状のメサパターンとなる。この時、
(凹部深さ)/(凹部最短幅)=0.2
になる。
【0049】
次いで、
図8(c)に示すように、SiO
2マスク32を選択成長マスクとして、MOVPE法を用いて、570℃の成長温度で凹部34の中央部における厚さが1.93μmになるように全面にi型InP下部クラッド層25を形成する。この時、トリメチルインジウムおよびPH
3に加え、1,2−ジクロロプロパンを添加したガスを用いているので、SiO
2マスク32から横方向に斜めの成長面が伸びていく成長モードが支配的になる。その結果、凹部34の中央に傾斜角19.5゜の(411)A面及び(411)B面で形成された逆四角錐状の窪み36が形成される。逆四角錐状の窪み36は幅200nm、深さ70nmとなる。
【0050】
次いで、
図8(d)に示すように、PH
3雰囲気中で基板温度を500℃に下げた後に、連続成長によりInAsを1.8ML(分子層)成長する。この時、窪み36にはInAsが厚く成長するため、窪み36内のInAsは2MLよりも厚くなり2次元成長から3次元成長への成長モード遷移が起こり幅60nm、高さ7nmの量子ドット27が形成される。
【0051】
次いで、
図9(e)に示すように、窪み36が平坦に埋め込まれるように、成長温度を500℃として、全面に厚さが0.3μmのi型InPキャップ層28を成長させる。
【0052】
以降は、
図9(f)に示すように、成長炉から取り出した後、SiO
2マスク32を除去したのち、i型InPキャップ層28上にSiO
2膜を形成する。次いで、半絶縁性InP基板21の周辺部に設けた位置合わせマーカを基準にして、量子ドット27が中心部に位置するようにパターニング及びエッチングを行ってSiO
2マスク(図示は省略)を形成する。
【0053】
次いで、ドライエッチングを行った後、ウェットエッチングを行うことによって、高さ7μm、頂部の幅1μm、底部の幅5μmのホーン構造30を形成する。次いで、SiO
2マスクを除去したのち、基板研磨により、半絶縁性InP基板21の厚さを150μmにし、半絶縁性InP基板21の裏面に多層誘電体膜からなる反射抑制膜31を形成する。次いで、所定の大きさに切断することによって、本発明の実施例2の単一光子発生器が完成する。
【0054】
この実施例2においても、上記の実施例1と同様に、量子ドットの位置制御性と高発光効率とを両立することができる。また、横方向に斜めの成長面が伸びていく成長モードが支配的になるため、窪みの傾斜角がより緩やかになる。さらに、本発明の実施例2においては、枠状マスクを用いて中央の凹部の周辺部にも結晶成長させているので、成長速度が緩やかになり、量子ドットの形成をより精度良く行うことができる。
【0055】
なお、実施例2では、枠状のメサパターンとしてすべての辺のメサが繋がったパターンを用いて説明したが、例えば、角の場所が途切れているなど任意の場所が繋がっていないパターンのメサを用いることも可能である。また、メサ上にマスクを残して下部クラッド層を形成する工程について説明したが、必要に応じてメサ上のマスクを除去した後に下部クラッド層を形成することも可能である。また、塩素を含む原料として、1,2-ジクロロプロパンを提示したが、塩化メチル、塩化エチル、1,2−ジクロロエタン、1,2-ジクロロエチレン、1,3−ジクロロプロパンなどを用いても同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
次に、
図10及び
図11を参照して、本発明の実施例3の単一光子発生器の製造工程を説明する。まず、
図10(a)に示すように、(100)面を主面とする半絶縁性InP基板21上にSiO
2膜を設け、パターンニング及びエッチングにより2.5μm×2.5μmの矩形の開口部23を設けてSiO
2マスク22とする。なお、この時、後工程でホーン加工する際のパターンと位置合わせするためのSiO
2膜からなる位置合わせマーカ(図示は省略)を半絶縁性InP基板21の周辺部に一緒に形成する。
【0057】
次いで、SiO
2マスク22をマスクとしてドライエッチングを行うことによって深さが1μmの凹部24を形成する。この時、
(凹部深さ)/(凹部最短幅)=0.4
になる。
【0058】
次いで、
図10(b)に示すように、バッファードフッ酸を用いてSiO
2マスク22を除去したのち、MOVPE法を用いて、580℃の成長温度で凹部24の中央部における厚さが1.2μmになるように全面にi型InP下部クラッド層25を形成する。この時、凹部24の中央に{111}面よりも緩やかな傾斜面で形成された幅100nm、深さ50nmの窪み26が形成される。因みに、緩やかな傾斜面の角度は25.2°である。
【0059】
次いで、
図11(c)に示すように、基板温度を580℃にしたまま、連続成長によりi型InGaAsP層37を5nm成長する。この時、窪み26にはi型InGaAsP層37が厚く成長するため、窪み26内に高さ10nm、幅20nmの量子ドット38が形成される。なお、i型InGaAsP層37の組成比はInPに格子整合するIn
0.53Ga
0.47As
0.01P
0.99とする。
【0060】
次いで、
図11(d)に示すように、窪み26が平坦に埋め込まれるように、成長温度を580℃のままで、全面に厚さが0.3μmのi型InPキャップ層28を成長させる。
【0061】
以降は、図示を省略するが、実施例1と同様に、ホーン構造を形成したのち、基板裏面に反射抑制膜を形成することによって、本発明の実施3の単一光子発生器が完成する。
【0062】
本発明の実施例3においても、上記の実施例1と同様に、量子ドットの位置制御性と高発光効率とを両立することができる。
【0063】
ここで、実施例1乃至実施例3を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)(100)面を主面とする半導体基体の表面にエッチングにより
平面形状が矩形状で且つ断面形状が矩形状の凹部を形成する工程と、前記凹部内に、前記凹部の
平面における中央に位置し、且つ、(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる窪みを有する下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層に形成された窪み内に量子ドット層を形成する工程と、前記量子ドット層を覆うようにキャップ層を形成する工程とを有することを特徴とする半導体量子ドット構造の製造方法。
(付記2)前記凹部内に下部クラッド層を形成する工程において、前記窪みの底部の積層方向の位置が前記凹部の底面から0.2μm以上離れるように下部クラッド層を形成することを特徴とする付記1に記載の半導体量子ドットの製造方法。
(付記3)前記緩やかな傾斜面からなる窪みの形状が逆四角錐状であることを特徴とする付記2に記載の半導体量子ドット構造の製造方法。
(付記4)前記半導体基体はInPまたはGaAsからなり、前記下部クラッド層は前記半導体基体に格子整合する半導体からなることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれかに記載の半導体量子ドット構造の製造方法。
(付記5)前記エッチングにより矩形状の凹部を形成する工程において、前記凹部深さと凹部最短幅の関係が
(凹部深さ)/(凹部最短幅)<0.47
であることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれかに記載の半導体量子ドットの製造方法。
(付記6)(100)面を主面とする半導体基体の表面にエッチングにより
平面形状が矩形状で且つ断面形状が矩形状の凹部を形成する工程と、前記凹部内に、前記凹部の
平面における中央に位置し、且つ、(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる窪みを有する下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層に形成された窪み内に量子ドット層を形成する工程と、前記量子ドット層を覆うようにキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層乃至前記半導体基体の一部をエッチングすることによって、前記量子ドット層が中心軸に位置するようにパラボラ状のホーン構造を形成する工程とを有することを特徴とする単一光子発生器の製造方法。
(付記7)前記パラボラ状のホーン構造を形成する工程が、前記キャップ層上にマスクパターンを設けた状態でドライエッチングする工程と、前記ドライエッチング工程後に、前記マスクパターンを残存させた状態でウェットエッチングする工程とを有することを特徴とする付記6に記載の単一光子発生器の製造方法。
(付記8)(100)面を主面とする半導体基体と、
前記半導体基体に設けられた平面形状が矩形状で且つ断面形状が矩形状の凹部と、前記凹部内に、前記凹部の平面における中央に位置し、且つ、(100)面とのなす角が54.7°よりも緩やかな傾斜面からなる窪みを有する下部クラッド層と、前記下部クラッド層に形成された窪み内に設けられた前記半導体基体に向かって四角錐状の単一の量子ドット層と
、前記量子ドット層を焦点位置とするパラボラ状のホーン構造とを備えたことを特徴とする単一光子発生器。