(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クラウン部及びクラウン部の長手方向の両端から一の方向に略平行となるように折り曲げられて構成される一対の脚部を備えた軟質素材で非金属材料から成るステープルで綴じ対象物を綴じるステープラであって、
前記ステープルの前記クラウン部の長さに応じた間隔で対向する一対の抜き刃を有し、一対の前記抜き刃を綴じ対象物に挿抜する動作で綴じ対象物に孔部を形成し、前記ステープルの一対の前記脚部を綴じ対象物に貫通させる貫通手段を備え、
前記貫通手段に対する操作部材の傾きを許容しつつ、前記貫通手段と前記操作部材とを作動連結する連結部を備え、
前記連結部は、
前記操作部材と連結された連結軸部と、
前記貫通手段に設けられ、前記連結軸部が挿入される穴部と、
前記穴部の内面、または、前記連結軸部の外周の一方に設けた凸形状の部位で構成され、前記抜き刃を綴じ対象物に挿入する方向への前記操作部材の動きで前記連結軸部と前記穴部を当接させる伝達部と、
前記伝達部の両側に設けられ、前記連結軸部の径に対して前記穴部の形状が、前記抜き刃を綴じ対象物に挿抜する方向に拡げられた軸退避部とを備えた
ことを特徴とするステープラ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明のステープラの実施の形態について説明する。
【0012】
<本実施の形態のステープラの構成例>
図1及び
図2は、本実施の形態のステープラの内部構成の一例を示す側断面図で、
図1は、ステープルカートリッジが装着された状態を示し、
図2は、ステープルカートリッジが取り外された状態を示す。
図3は、本実施の形態のステープラの一例を示す側面図である。
【0013】
また、
図4は、本実施の形態のステープラの一例を示す正面から見た斜視図、
図5は、本実施の形態のステープラの一例を示す背面から見た斜視図である。更に、
図6は、本実施の形態のステープラの貫通機構の部位における内部構成の一例を示す正面断面図、
図7は、本実施の形態のステープラの切断・成型機構の部位における内部構成の一例を示す正面断面図である。
【0014】
まず、各図を参照して、本実施の形態のステープラ1の概要について説明すると、ステープラ1は、軟質素材で非金属材料であるステープル10を使用して、綴じ対象物である綴じ用紙Pを綴じる。ステープル10は、後述するように、帯状に連結された形態で一体に構成された連結ステープル10aとして供給され、連結ステープル10aがステープルカートリッジ11に収納されて、ステープラ1に装着される。
【0015】
ステープラ1は、連結ステープル10aから切断されて成型された先頭に位置するステープル10を押す出す動作で綴じ用紙Pに穴を開け、ステープル10を綴じ用紙Pに貫通させる貫通機構2を備える。
【0016】
また、ステープラ1は、先頭に位置するステープル10を押し出して綴じ用紙Pに貫通させる貫通機構2の動作と連動して、連結ステープル10aから次位のステープル10を切断し、切断された次位のステープル10を成型する切断・成型機構3を備える。
【0017】
更に、ステープラ1は、先頭に位置するステープル10を押し出して綴じ用紙Pに貫通させる貫通機構2の動作と連動して、貫通機構2でステープル10を貫通させる綴じ用紙Pを押さえる用紙押さえ機構4を備える。
【0018】
また、ステープラ1は、先頭に位置するステープル10を押し出して綴じ用紙Pに貫通させる貫通機構2の動作と連動して、綴じ用紙Pを貫通したステープル10を折り曲げる折り曲げ機構5を備える。
【0019】
更に、ステープラ1は、先頭に位置するステープル10が押し出された貫通機構2に、連結ステープル10aから切断されて成型された次位のステープル10を搬送すると共に、次位のステープル10が貫通機構2に搬送された切断・成型機構3に、連結ステープル10aを搬送する搬送機構6を備える。
【0020】
また、ステープラ1は、ステープルカートリッジ11が装着されると、搬送機構6との連動で、ステープルカートリッジ11に収納された連結ステープル10aの所定位置への搬送を行う脱着機構7Aを備える。
【0021】
ステープラ1は、上述した貫通機構2、切断・成型機構3及び用紙押さえ機構4と、折り曲げ機構5、搬送機構6及び脱着機構7Aが設けられる本体部8を備える。ステープラ1は、所定の駆動力で上述した各構成要素が作動し、本例では、人の力で操作される操作ハンドル部9の動作で、各構成要素が連動して作動する。
【0022】
本体部8は、綴じ用紙Pが載置される用紙載置台80と、ステープルカートリッジ11が装着されるカートリッジ収納部81を備える。ステープラ1は、本体部8の一の側である前側に用紙載置台80が設けられ、後側にカートリッジ収納部81が設けられる。
【0023】
本体部8は、用紙載置台80の上側に、貫通機構2、切断・成型機構3及び用紙押さえ機構4が設けられる。貫通機構2、切断・成型機構3及び用紙押さえ機構4は、連結ステープル10aの搬送方向に対して、後方から切断・成型機構3、貫通機構2、用紙押さえ機構4の順に配置される。
【0024】
本体部8は、貫通機構2の移動をガイドするガイド溝82aと、切断・成型機構3の移動をガイドするガイド溝82bと、用紙押さえ機構4の移動をガイドするガイド溝82cを備える。ガイド溝82a〜82cは、用紙載置台80に載置された綴じ用紙Pに対してそれぞれ上下方向に延在し、互いに平行に設けられる。
【0025】
また、本体部8は、貫通機構2、切断・成型機構3及び用紙押さえ機構4の後方に、搬送機構6が設けられる。本体部8は、搬送機構6の移動をガイドする図示しないガイドが設けられる。更に、本体部8は、用紙載置台80の下側に、折り曲げ機構5が設けられる。
【0026】
操作ハンドル部9は、本体部8に設けられた軸90にカム溝91がガイドされると共に、貫通機構2の後述する連結軸部20bを支点に回転可能に支持される。操作ハンドル部9は、軸90にガイドされるカム溝91の軌跡と、連結軸部20bの軌跡で規制される仮想の支点を軸とした回転で、上下方向に動作可能に設けられ、仮想支点を支点軸とした回転動作が、貫通機構2に伝達される。また、操作ハンドル部9は、仮想支点を軸とした回転動作を、後述する連結軸部20bを介して搬送機構6に伝達するリンク92を備える。
【0027】
操作ハンドル部9は、力が加えられる力点と仮想支点までの距離、及び、貫通機構2に力を加える作用点と仮想支点までの距離が、カム溝91の形状によって変位することで、操作ハンドル部9に掛かる荷重が変化する。
【0028】
カム溝91は、貫通機構2の動作でステープル10が綴じ用紙Pに貫通を開始するタイミングで軸90にガイドされる第1のガイド溝部91aと、貫通機構2の動作でステープル10が綴じ用紙Pを貫通するタイミングで軸90にガイドされる第2のガイド溝部91bと、折り曲げ機構5の動作でステープル10を折り曲げるタイミングで軸90にガイドされる第3のガイド溝部91cを備える。
【0029】
本例では、貫通手段の一例としての貫通機構2の動作でステープル10が綴じ用紙Pに貫通を開始するタイミングと、折り曲げ手段の一例としての折り曲げ機構5の動作でステープル10を折り曲げるタイミングで、操作部材の一例としての操作ハンドル部9の操作荷重が軽くなるように、カム溝91の形状が設定される。
【0030】
ステープラ1は、操作ハンドル部9の動作が、貫通機構2、切断・成型機構3及び用紙押さえ機構4に伝達され、貫通機構2、切断・成型機構3及び用紙押さえ機構4が、ガイド溝82a〜82cにガイドされて、用紙載置台80に載置された綴じ用紙Pに対して上下方向に移動する。
【0031】
これにより、ステープラ1は、操作ハンドル部9の動作によって、用紙載置台80に載置された綴じ用紙Pを、用紙押さえ機構4で押さえる動作が行われる。また、綴じ用紙Pを、用紙押さえ機構4で押さえる動作と連動して、連結ステープル10aから切断されて成型された先頭に位置するステープル10を、貫通機構2で綴じ用紙Pに貫通させる動作が行われる。更に、ステープル10を、貫通機構2で綴じ用紙Pに貫通させる動作と連動して、切断・成型機構3で連結ステープル10aから次位のステープル10を切断して成型する動作が行われる。
【0032】
また、ステープラ1は、操作ハンドル部9の動作に連動して折り曲げ機構5が作動し、綴じ用紙Pを貫通したステープル10を折り曲げる動作が行われる。
【0033】
更に、ステープラ1は、操作ハンドル部9の動作がリンク92を介して搬送機構6に伝達され、搬送機構6が、連結ステープル10aの搬送方向に沿った前後方向に移動する。これにより、ステープラ1は、操作ハンドル部9の動作によって、連結ステープル10aを搬送機構6で切断・成型機構3に搬送すると共に、連結ステープル10aから切断されて成型された先頭に位置するステープル10を貫通機構2に搬送する動作が行われる。
【0034】
<ステープル及び連結ステープルの構成例>
図8は、本実施の形態の連結ステープルの一例を示す平面図、
図9は、本実施の形態の連結ステープルの収納形態の一例を示す斜視図である。また、
図10は、本実施の形態の成型されたステープルの一例を示す斜視図、
図11は、本実施の形態のステープルで綴じ用紙を綴じた状態の一例を示す断面図である。次に、各図を参照して、本実施の形態のステープル10及び連結ステープル10aの構成について説明する。
【0035】
ステープル10は所定の厚さを有した軟質素材で非金属材料から成り、成型前のステープル10は、細長く略真直状で、長手方向の両側の先端部10bが、先端に行くに従って細くなる形状を有する。本実施の形態では、ステープル10は紙製とするが、紙製ではなく、樹脂製のフィルム、シートとしても良い。
【0036】
連結ステープル10aは、複数のステープル10が長手方向と平行に並列される形態で、各ステープル10の長手方向の両端部の近傍が、先端部10bのそれぞれ内側に設けられた一対の連結部10cによって互いに連結される。連結ステープル10aでは、各ステープル10の長手方向に沿った各連結部10cより外側の部位は、先端部10bの先細りの形状によって、並列されたステープル10が連結されている部位を設けない構成である。
【0037】
連結ステープル10aは、並列されたステープル10を連結する一対の連結部10cの内側に、各連結部10cに隣接してそれぞれ孔部10dが設けられる。孔部10dは、ステープル10の長手方向及び短手方向に所定の長さを有した本例では角部が丸められた略四角形状の開口を設けて構成される。なお、孔部10dは、丸孔形状や楕円形状の開口として構成しても良い。そして、連結ステープル10aでは、連結部10cと孔部10dの間に、並列されたステープル10が切断されている部位を設けない構成である。
【0038】
更に、連結ステープル10aは、それぞれの孔部10dの間に、並設されたステープル10同士が切り離されているスリット部10eが設けられる。スリット部10eは、一方の孔部10dから他方の孔部10dまで連続して形成され、連結ステープル10aでは、孔部10dとスリット部10eの間に、並列されたステープル10が連結されている部位を設けない構成である。
【0039】
連結ステープル10aは、上述した先端部10b、連結部10c、孔部10d及びスリット部10e等を有した所定の形状で、プレス加工やびく抜き加工等によって打ち抜かれて成型される。
【0040】
連結ステープル10aは、各ステープル10の長手方向の端部である一方の先端部10bの一の面である裏面に、接着部10fが設けられる。接着部10fは、ステープル10の材質に合わせて、ステープル10の脚部10i同士を貼り合わせる際に所定の接着力が得られる性質のものが用いられる。
【0041】
連結ステープル10aは、
図9に示すように、ロール状に巻かれた形態としたときにステープル10同士が重なり、外周側となるステープル10において、一方の先端部10bの裏面に位置する接着部10fが、内周側となるステープル10の一方の先端部10bの表面側に接する。
【0042】
そこで、連結ステープル10aでは、ロール状に巻かれた形態としたときに少なくとも接着部10fと接する領域の一方の先端部の他の面である表面に、シリコン等による被覆部10gが設けられ、連結ステープル10aが巻かれた形態でのステープル10同士の貼り付きを防止している。
【0043】
ステープル10は、
図1及び
図7等に示す切断・成型機構3により連結ステープル10aから切断されて成型されることで、
図10に示すように、長手方向の両端がそれぞれ所定の長さで第1の方向に略平行となるように折り曲げられ、クラウン部10hが形成されると共に、クラウン部10hの両端に脚部10iが形成される。
【0044】
連結ステープル10aより切断されて成型されたステープル10は、貫通機構2により一対の脚部10iが綴じ用紙Pに貫通され、綴じ用紙Pを貫通した一対の脚部10iが、折り曲げ機構5により綴じ用紙Pに沿って第2の方向に折り曲げられる。
【0045】
ステープル10は、一方の先端部10bの裏面に接着部10fが設けられることで、クラウン部10hと脚部10iが成型された形態で、一方の脚部10iの裏面に接着部10fが設けられることになる。ステープル10は、本例では、孔部10dより内側に折り曲げ位置があり、脚部10iの長さをクラウン部10hの長さの1/2以上として、一対の脚部10iが折り曲げられると、接着部10fが脚部10iと重なるように構成される。
【0046】
これにより、
図11に示すように、他方の脚部10iが綴じ用紙Pに沿って第2の方向に折り曲げられた後、一方の脚部10iが綴じ用紙Pに沿って第2の方向に折り曲げられて、一方の脚部10iと他方の脚部10iが重ねられることで、脚部10i同士が接着部10fで貼り合わされる。
【0047】
<ステープルカートリッジの構成例>
図12及び
図13は、ステープルカートリッジの一例を示す斜視図であり、次に、各図を参照して、ステープルカートリッジ11の構成について説明する。ここで、
図12は、ステープルカートリッジ11が閉じた状態、
図13は、ステープルカートリッジ11が開いた状態を示す。
【0048】
ステープルカートリッジ11は、カートリッジ本体12と、カートリッジ本体12を開閉するカートリッジカバー13を備える。ステープルカートリッジ11は、後端側に設けた軸13aを支点としたカートリッジカバー13の回転で、カートリッジ本体12が開閉される。
【0049】
カートリッジ本体12は、ロール状に巻かれた連結ステープル10aを収納するステープル収納部12aと、ステープル収納部12aから前方に突出し、連結ステープル10aが搬送されるステープル搬送路14を備える。
【0050】
ステープル搬送路14は、ステープル収納部12aから引き出された連結ステープル10aの面に沿った平面状の底部を有して直線状に延在し、連結ステープル10aの上方への浮き上がりを押さえる一対のガイド凸部14aを、先端側の近傍に備える。また、ステープル搬送路14は、搬送機構6の後述する送り爪をステープル搬送路14内に突出させる溝部14bを備える。
【0051】
ステープル搬送路14を搬送される連結ステープル10aの先頭に位置するステープル10で、クラウン部10hに相当する部位を支持する受け台16を備える。受け台16は、ステープル搬送路14から連続して形成され、ステープル10のクラウン部10hの内幅に相当する幅で、1本のステープル10の短手方向の長さに合わせて、ステープル搬送路14の先端から前方に突出し、切断・成型機構3で切断及び成型されるステープル10を支持する。
【0052】
カートリッジカバー13は、カートリッジ本体12のステープル収納部12aとステープル搬送路14を覆う形状に構成される。
【0053】
これにより、カートリッジカバー13を開け、ロール状に巻かれた形態の連結ステープル10aをカートリッジ本体12のステープル収納部12aに収納し、連結ステープル10aの先端部を、ステープル搬送路14の先端部に合わせることで連結ステープル10aの先端位置が決められる。
【0054】
そして、カートリッジカバー13を閉じることで、連結ステープル10aが搬送可能な状態で先端位置が決められて、ステープルカートリッジ11に収納される。
【0055】
カートリッジカバー13は、カートリッジ本体12を閉じると、受け台16と対向する位置にステープル押さえ17が設けられる。ステープル押さえ17は、本例では薄板状の金属によるバネ材料で構成され、受け台16に搬送された先頭に位置するステープル10を受け台16方向に押圧し、切断・成型機構3によるステープル10の切断及び成型時に、ステープル10の変位を抑える。ステープルカートリッジ11は、カートリッジカバー13を開閉可能にロックするロック部13cをカートリッジカバー13に備え、ロック部13cに係合する爪部12bをカートリッジ本体12に備える。
【0056】
ステープルカートリッジ11は、
図1に示すようにステープラ1のカートリッジ収納部81に装着されると、ステープル搬送路14が、ステープラ1の搬送路として機能する。また、受け台16が切断・成型機構3に突出し、切断・成型機構3で切断及び成型されるステープル10の受け台として機能する。
【0057】
<貫通機構の構成例>
図14は、本実施の形態のステープラの貫通機構の部位における内部構成の一例を示す斜視図、
図15は、貫通機構の一例を示す正面図、
図16は、貫通機構の一例を示す背面図、
図17は、貫通機構の一例を示す斜視図であり、次に、各図を参照して、貫通機構2の構成について説明する。
【0058】
貫通機構2は貫通手段の一例で、操作ハンドル部9の動作が伝達される貫通機構本体部20と、貫通機構本体部20の動作で綴じ用紙Pに孔を開けると共に、綴じ用紙Pにステープル10を貫通させる2枚の抜き刃21と、ステープル10を押圧するステープル押し下げ部22を備える。なお、貫通機構本体部20は、操作ハンドル部9と作動連結されて連結部の一例を構成する。
【0059】
貫通機構本体部20は、貫通機構2の移動をガイドするガイド凸部20aと、操作ハンドル部9と連結される連結軸部20bと、操作ハンドル部9の動作を切断・成型機構3に伝達する突き出しピン20cを備える。また、貫通機構本体部20は、貫通機構2と切断・成型機構3の移動をガイドするガイド凸部20dと、貫通機構2と用紙押さえ機構4の移動をガイドするガイド凸部20eを備える。
【0060】
ガイド凸部20aは、貫通機構本体部20の幅方向の両端から外側に突出し、ステープラ1の本体部8の幅方向の両側面に設けられ、貫通機構2の移動方向に沿って開口した本体部8のガイド溝82aと係合する。ガイド凸部20aは、2つの半円を直線でつないだ長円形状で、貫通機構2の回転方向への姿勢の変化が規制される。
【0061】
連結軸部20bは、貫通機構本体部20に設けた穴部20gに挿入され、貫通機構本体部20の幅方向の両端からガイド凸部20aの外側に突出し、操作ハンドル部9と係合する。
【0062】
貫通機構本体部20は、軸方向に沿った穴部20gの中心付近で、抜き刃21の略直上の位置に、穴部20gの内面から突出した凸形状の部位を設けて、連結軸部20bで押圧される伝達部20hが形成される。
【0063】
伝達部20hは、貫通機構本体部20に対して連結軸部20bが傾いた場合であっても、連結軸部20bが接するように構成され、操作ハンドル部9で連結軸部20bが押される力が、抜き刃21の直上から抜き刃21にかけられるように構成される。
【0064】
また、貫通機構本体部20は、伝達部20hの両側の部位の穴部20gの形状を、連結軸部20bの径に対して上下方向に広げて、伝達部20hの両側に軸退避部20iが形成される。
【0065】
軸退避部20iは、貫通機構本体部20に対して連結軸部20bが傾くことを許容するため、伝達部20hの左右両側に連結軸部20bが上下方向に移動し得る空間を設けて構成される。
【0066】
更に、貫通機構本体部20は、伝達部20hと対向する位置に、穴部20gの内面から突出した凸形状の部位を設けて、軸押さえ部20jが形成される。軸押さえ部20jは、貫通機構本体部20に対して連結軸部20bが傾くことを許容するため、中心付近の突出高さを左右両側より高くした形状で構成される。
【0067】
突き出しピン20cは、貫通機構本体部20において、切断・成型機構3と対向する背面から出没可能に突出する構成で設けられる。突き出しピン20cは、本例では樹脂材料で構成される貫通機構本体部20に支持部20fを介して一体で設けられる。
【0068】
突き出しピン20cは、支持部20fにより片持ち形状で支持され、主に支持部20fの弾性変形で、切断・成型機構3と対向する面から出没可能に構成される。これにより、バネ等の別部品を設けることなく、突き出しピン20cが出没可能に突出する構成とすることができる。
【0069】
ガイド凸部20dは、貫通機構本体部20において、切断・成型機構3と対向する背面に、突起を設けて構成される。ガイド凸部20eは、貫通機構本体部20において、用紙押さえ機構4と対向する前面に、突起を設けて構成される。
【0070】
貫通機構2は、貫通機構本体部20の下側に、所定の間隔を開けて2本の抜き刃21が取り付けられる。2本の抜き刃21は、互いが平行となる向きで貫通機構本体部20より下方に延在し、下端となる先端に刃部21aが形成される。
【0071】
各抜き刃21は、2本の抜き刃21の間隔が、刃部21aが設けられた先端側が狭く、一対の抜き刃21の外側の面には、先端側から後端側である基端側に向けて外幅が広がる形状の段差部が設けられ、一対の抜き刃21の内側の面には、先端側から基端側に向けて内幅が広がる形状の段差部が設けられる。
【0072】
すなわち、各抜き刃21は、2本の抜き刃21の間隔が、刃部21aが設けられた先端側から所定の長さの範囲では、ステープル10のクラウン部10hの内幅である一対の脚部10iの内幅と同等、あるいは若干狭く構成されて、第1の貫通部21bが形成される。
【0073】
また、各抜き刃21は、2本の抜き刃21の間隔が、第1の貫通部21bより上側で基端側となる貫通機構本体部20側では、ステープル10のクラウン部10hの外幅である一対の脚部10iの外幅と同等、あるいは若干広く構成されて、第2の貫通部21cが形成される。
【0074】
各抜き刃21は、第1の貫通部21bと第2の貫通部21cの境界となる所定の中間位置で略クランク状に折り曲げられた形態で、第1の貫通部21bと第2の貫通部21cが、貫通機構2の移動方向に沿って略真直状に延在する。
【0075】
これにより、各抜き刃21は、第1の貫通部21bと第2の貫通部21cの境界となる所定の中間位置の内側に、第1の貫通部21b側の内幅が狭くなる段差が設けられ、各抜き刃21の対向する内側に設けられた段差により、ステープル10の脚部10iを支持するステープル支持部21dが形成される。
【0076】
また、各抜き刃21は、第1の貫通部21bと第2の貫通部21cの境界となる所定の中間位置の外側に、第2の貫通部21c側の外幅が広くなる段差が設けられ、各抜き刃21の外側に設けられた段差により、抜き刃21が綴じ用紙Pを貫通する動作で、綴じ用紙Pを貫通する孔部を外側方向に拡げる孔拡張部21eが形成される。
【0077】
ステープル支持部21dは、第2の貫通部21cから第1の貫通部21bに向けて、抜き刃21の内側の面の形状が徐々に狭くなるような滑らかな傾斜を有し、主に抜き刃21が綴じ用紙Pから抜ける動作で、ステープル支持部21dでの抜き刃21の間隔の変化が抜き抵抗の増加とならないように構成される。
【0078】
また、孔拡張部21eは、第1の貫通部21bから第2の貫通部21cに向けて、抜き刃21の外側の面の形状が徐々に広がるような滑らかな傾斜を有し、主に抜き刃21が綴じ用紙Pに貫通する動作で、孔拡張部21eでの抜き刃21の間隔の変化が貫通抵抗の増加とならないように構成される。
【0079】
第1の貫通部21bは、ステープル支持部21dより先端側では、一対の抜き刃21の内側の面が、抜き刃21の挿抜方向に対して真直状に延在し、抜き刃21の内側の面において、ステープル支持部21dより先端側には段差が形成されない。また、第1の貫通部21bは、孔拡張部21eより先端側では、一対の抜き刃21の外側の面が、抜き刃21の挿抜方向に対して真直状に延在し、抜き刃21の外側の面において、孔拡張部21eより先端側には段差が形成されない。
【0080】
第2の貫通部21cは、ステープル支持部21dより基端側では、一対の抜き刃21の内側の面が、抜き刃21の挿抜方向に対して真直状に延在し、抜き刃21の内側の面において、ステープル支持部21dより基端側には段差が形成されない。また、第2の貫通部21cは、孔拡張部21eより基端側では、一対の抜き刃21の外側の面が、抜き刃21の挿抜方向に対して真直状に延在し、抜き刃21の外側の面において、孔拡張部21eより基端側には段差が形成されない。
【0081】
各抜き刃21は、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の脚部10iを内側に折り曲げる動作を行う後述する押し出し部材が突出する押し出し孔21fが、第2の貫通部21cの表裏を貫通して形成される。
【0082】
ステープル押し下げ部22は、ステープル10のクラウン部10hに応じた幅に設けられる2本の抜き刃21の間に設けられる。ステープル押し下げ部22は、貫通機構本体部20の移動方向に沿って移動可能な構成で、バネ22aにより下方に付勢された状態で、貫通機構本体部20に支持される。
【0083】
ステープラ1では、貫通機構2が所定の位置まで下降すると、折り曲げ機構5が作動して、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の脚部10iの折り曲げが開始される。そこで、綴じ対象となる綴じ用紙Pの枚数の違いによらず、一定のタイミングでステープル10の脚部10iを折り曲げられるようにするため、綴じ用紙Pの枚数の違いをステープル押し下げ部22の移動で吸収し、貫通機構2が所定の位置まで下降できるようにした構成である。
【0084】
<抜き刃ガイドの構成例>
図18は、抜き刃ガイドの一例を示す斜視図で、次に、各図を参照して抜き刃ガイドの構成について説明する。上述したように、抜き刃21は、貫通機構本体部20に支持される第2の貫通部21cに対して、先端側の第1の貫通部21bが内側にオフセットされた形状である。
【0085】
このため、貫通機構2が下降する動作によって、抜き刃21の刃部21aが綴じ用紙Pを貫通する過程で、貫通機構本体部20により抜き刃21に掛かる力は、第2の貫通部21c上となり、抜き刃21が内側に傾くような力が掛かる。
【0086】
そこで、一対の抜き刃21の間に出没する抜き刃ガイド23を備える。抜き刃ガイド23は、
図1等に示すように、用紙載置台80の下側に設けられ、綴じ用紙Pを貫通した一対の抜き刃21の間に、バネ23aに付勢されて出没可能に設けられる。
【0087】
抜き刃ガイド23を動作させる機構は後述するが、操作ハンドル部9の動作によって貫通機構2の抜き刃21が綴じ用紙Pを貫通し、ステープル10の脚部10iを綴じ用紙Pに貫通させる工程では、一対の抜き刃21の間に突出して抜き刃21の倒れ込みを抑える。そして、折り曲げ機構5でステープル10の脚部10iを折り曲げる工程では、一対の抜き刃21の間から退避する。
【0088】
<貫通機構の動作例>
図19〜
図25は、貫通機構の動作例を示す動作説明図で、次に、各図を参照して、綴じ用紙Pに対して抜き刃21が挿抜される動作について説明する。
【0089】
待機状態では、
図19に示すように、一対の抜き刃21の間に、ステープル10のクラウン部10hがステープル押し下げ部22で押された状態で、ステープル支持部21dによってステープル10の脚部10iが支持されている。
【0090】
図1等に示す操作ハンドル部9が押されると、操作ハンドル部9と係合した連結軸部20bが押される。連結軸部20bが押されると、貫通機構本体部20の伝達部20hが連結軸部20bで押圧され、貫通機構本体部20が下方へ移動する。
【0091】
ここで、操作ハンドル部9は人が操作するものであるので、力が偏って掛かる場合がある。操作ハンドル部9に力が偏って掛かると、操作ハンドル部9が傾き、
図25に示すように、操作ハンドル部9と連結された連結軸部20bも傾く。
【0092】
貫通機構本体部20は、連結軸部20bが挿入される穴部20gの形状が、連結軸部20bの径に対して上下方向に広げられて軸退避部20iが設けられ、貫通機構本体部20に対して連結軸部20bが傾くことができる。
【0093】
また、貫通機構本体部20は、抜き刃21の直上の位置に伝達部20hが設けられ、貫通機構本体部20に対して連結軸部20bが傾いた場合であっても、連結軸部20bが伝達部20hと接するように構成され、操作ハンドル部9で連結軸部20bが押される力が、抜き刃21の直上から抜き刃21にかけられる。
【0094】
これにより、操作ハンドル部9に力が偏って掛かる等によって、連結軸部20bが傾いた場合でも、抜き刃21が設けられた貫通機構本体部20は、本体部8のガイド溝82aによるガイドで傾かずに下方へ移動する。また、操作ハンドル部9が押される力が、抜き刃21の直上から抜き刃21にかけられる。なお、本例では、穴部20gの内面に凸部を設けて伝達部20hと軸退避部10iを設ける構成としたが、連結軸部20bの外周に一体または別体で凸部を設けて伝達部と軸退避部を設ける構成としても良い。
【0095】
図1等に示す操作ハンドル部9の動作で貫通機構2が下方へ移動して、用紙載置台80に載置された綴じ用紙Pに、抜き刃21の刃部21aが到達すると、抜き刃21が綴じ用紙Pに貫通を開始し、
図20に示すように、綴じ用紙Pに孔部P1が開けられる。
【0096】
抜き刃21は、一対の抜き刃21の間隔が狭く構成された第1の貫通部21bがまず綴じ用紙Pを貫通する。上述したように、抜き刃21の刃部21aが綴じ用紙Pを貫通する過程で、貫通機構本体部20により抜き刃21に掛かる力は、第1の貫通部21bに対して外側にオフセットされた第2の貫通部21c上となり、抜き刃21が内側に傾くような力が掛かる。
【0097】
これに対して、綴じ用紙Pを貫通した一対の抜き刃21の間には、抜き刃ガイド23が突出していることで、抜き刃21が綴じ用紙Pを貫通する動作で、各抜き刃21が内側に傾くことが防止され、抜き刃21は、綴じ用紙Pに対して略垂直に貫通される。
【0098】
貫通機構2が更に下降すると、
図21に示すように、抜き刃21の孔拡張部21eが綴じ用紙Pに到達する。孔拡張部21eは、第1の貫通部21bから第2の貫通部21cに向けて、抜き刃21の外側の面の形状が徐々に広がるような滑らかな傾斜を有しているので、貫通機構2が下降する動作によって抜き刃21の孔拡張部21eが綴じ用紙Pを貫通していくと、綴じ用紙Pの孔部P1の外側に、下方に向けてめくれ部P2が形成されて、孔部P1が外側方向に拡げられる。
【0099】
貫通機構2では、一対の抜き刃21の間に、ステープル10のクラウン部10hがステープル押し下げ部22で押された状態で、ステープル支持部21dによってステープル10の脚部10iが支持されている。ステープル支持部21dは、孔拡張部21eを形成する抜き刃21の形状によって、各抜き刃21において孔拡張部21eの内側の部位に形成される。
【0100】
これにより、貫通機構2が下降する動作によって抜き刃21の孔拡張部21eが綴じ用紙Pを貫通していくと、ステープル支持部21dで支持されたステープル10の脚部10iが綴じ用紙Pの孔部P1に貫通する。
【0101】
貫通機構2が更に下降すると、
図22に示すように、抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pの孔部P1を貫通し、第2の貫通部21cの内側に支持されたステープル10の一対の脚部10iが綴じ用紙Pの孔部P1を貫通する。
【0102】
抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pの孔部P1を貫通する工程では、貫通機構本体部20により抜き刃21に掛かる力が第2の貫通部21c上に一致し、抜き刃21が内側に傾くような力が掛からない。そこで、抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pの孔部P1を貫通する工程で、抜き刃ガイド23が退避するように構成される。
【0103】
上述したように、2本の抜き刃21の間隔は、第1の貫通部21bが形成される部位では、ステープル10の一対の脚部10iの内幅と同等程度に構成されるので、第1の貫通部21bで形成される綴じ用紙Pの孔部P1は、ステープル10の脚部10iの位置と略合致する。
【0104】
そして、各抜き刃21の外側の孔拡張部21eの段差によって、綴じ用紙Pの孔部P1の外側に、下方に向けてめくれ部P2が形成され、抜き刃21とステープル10の脚部10iが重ねられて通過可能な間隔で、孔部P1が外側方向に拡げられる。
【0105】
孔拡張部21eは、第1の貫通部21bから第2の貫通部21cに向けて、抜き刃21の外側の面の形状が徐々に広がるような滑らかな傾斜を有しており、抜き刃21が綴じ用紙Pを貫通する工程で、綴じ用紙Pの孔部P1を抜き刃21の孔拡張部21eが通過する際の抵抗の増加が抑えられる。
【0106】
従って、貫通機構2を下降させるために必要な力が小さくて済み、操作ハンドル部9を押す操作荷重が低減される。
【0107】
貫通機構2が更に下降して、ステープル10のクラウン部10hが綴じ用紙Pに到達した後、後述する折り曲げ機構5の動作によって、ステープル10の脚部10iが内側に折り曲げられて、
図23に示すように、一対の脚部10iが貼り合わされる。
【0108】
抜き刃21によって綴じ用紙Pに形成される孔部P1は、孔拡張部21eによって外側に広げられて、抜き刃21とステープル10の脚部10iが重ねられて通過できるようにされるので、孔部P1の内側へのめくれ部が形成されない。これにより、ステープル10の脚部10iが内側に折り曲げられる際に、脚部10iを変形させるような凸状の部位が存在せず、綴じ用紙Pを綴じるステープル10の外観性を向上させることができる。
【0109】
ステープル10で綴じ用紙Pが綴じられた後、操作ハンドル部9を上方へ戻すことで貫通機構2が上方へ移動すると、
図24に示すように、抜き刃21のステープル支持部21dが綴じ用紙Pの裏面側に到達する。
【0110】
ステープル支持部21dは、第2の貫通部21cから第1の貫通部21bに向けて、抜き刃21の内側の面の形状が徐々に狭くなるような滑らかな傾斜を有している。また、綴じ用紙Pを綴じたステープル10が通る孔部P1が外側に拡げられている。
【0111】
ステープル支持部21dが綴じ用紙Pから抜ける際に、抜き刃21が外側に広がるような力が掛かるが、抜き刃21により形成された孔部P1が外側方向に広げられた形態となっているので、抜き刃21が綴じ用紙Pから抜ける工程で、綴じ用紙Pの孔部P1を抜き刃21のステープル支持部21dが通過する際の抵抗の増加が抑えられる。
【0112】
従って、貫通機構2を上昇させるために必要な力が小さくて済み、操作ハンドル部9を戻す際の操作荷重も低減される。
【0113】
図26及び
図27は、綴じ用紙の枚数の違いによる貫通機構の動作例を示す動作説明図である。ステープラ1では、最低の綴じ枚数nであるn=2枚から、所定の最大綴じ枚数N、例えばN=15枚程度の綴じ用紙Pが綴じられる構成である。
【0114】
貫通機構2が下降して、ステープル10のクラウン部10hが綴じ用紙Pに到達した後、折り曲げ機構5の動作を開始し、ステープル10の脚部10iが折り曲げられる。貫通機構2の昇降動作と折り曲げ機構5の動作は連動しており、折り曲げ機構5が動作を開始する貫通機構2の位置を折り曲げ機構作動位置Mと称す。
【0115】
図26に示すように、最小の綴じ枚数であるn枚の綴じ用紙Pが用紙載置台80に載置された状態では、貫通機構2が折り曲げ機構作動位置Mまで下降すると、ステープル押し下げ部22は、所定の下端位置でステープル10のクラウン部10hと接して、クラウン部10hを綴じ用紙Pに押圧する。
【0116】
一方、
図27に示すように、最大の綴じ枚数であるN枚の綴じ用紙Pが用紙載置台80に載置された状態では、貫通機構2が折り曲げ機構作動位置Mまで下降すると、ステープル押し下げ部22は、バネ22aを圧縮して所定の上端位置まで押し上げられてステープル10のクラウン部10hと接して、クラウン部10hを綴じ用紙Pに押圧する。
【0117】
このように、ステープル10を押圧して綴じ用紙Pに貫通させる貫通機構2において、ステープル10のクラウン部10hを押圧するステープル押し下げ部22を貫通機構2の動作方向に沿った上下方向に移動可能とし、バネ22aで下方に付勢された構成とすることで、綴じ用紙Pの枚数によらず、折り曲げ機構作動位置Mを一定の高さとすることができる。
【0118】
ステープル押し下げ部が固定されていると、折り曲げ機構作動位置を最小綴じ枚数に合わせると、最大綴じ枚数の綴じ用紙を綴じる場合に、貫通機構が折り曲げ機構作動位置まで下降できず、折り曲げ機構が作動しない虞があった。また、折り曲げ機構作動位置を最大綴じ枚数に合わせると、最小綴じ枚数の綴じ用紙を綴じる場合に、ステープルのクラウン部を十分に押圧できなかった。
【0119】
これに対して、ステープル押し下げ部22を可動させることで、綴じ枚数によらず、貫通機構を折り曲げ機構作動位置Mまで下降させ、ステープル10のクラウン部10hを十分に押圧しながら、折り曲げ機構5を作動させることができる。
【0120】
<切断・成型機構の構成例>
図28は、切断・成型機構の一例を示す正面図、
図29は、切断・成型機構の一例を示す背面図、
図30は、切断・成型機構を正面から見た斜視図、
図31は、切断・成型機構を背面から見た斜視図であり、次に、各図を参照して、切断・成型機構3の構成について説明する。
【0121】
切断・成型機構3は切断・成型手段の一例で、連結ステープル10aを切断するカッタープレート30と、カッタープレート30で切断されたステープル10を成型するフォーミングプレート31を備える。
【0122】
カッタープレート30は、2つの切断刃32と、貫通機構2を介して駆動力が伝達される第1の溝部30a及び第2の溝部30bと凸部30cを備え、フォーミングプレート31に対して上下方向に移動可能に取り付けられる。
【0123】
切断刃32は連結部切断刃の一例で、各切断刃32は、下端となる先端に傾斜した刃部32aが形成される。各切断刃32は、傾斜した刃部32aが互いに外側に向けられた状態でカッタープレート30に取り付けられる。
【0124】
各切断刃32は、傾斜した刃部32aの刃先の間隔が、連結ステープル10aの一対の孔部10dの間隔に合わせられる。また、刃部32aの長さが、連結ステープル10aの連結部10cの長さより長く構成される。
【0125】
切断・成型機構3は、切断刃32がフォーミングプレート31の背面側に位置し、カッタープレート30がフォーミングプレート31に対して上昇した退避位置では、切断刃32がフォーミングプレート31から退避し、切断刃32が露出しない。一方、カッタープレート30がフォーミングプレート31に対して下降した切断位置では、切断刃32がフォーミングプレート31から突出する。
【0126】
第1の溝部30aと第2の溝部30bは、貫通機構2と対向するカッタープレート30の正面側に、貫通機構2及び切断・成型機構3の移動方向に沿った上下に所定の間隔を開けて設けられる。凸部30cは、カッタープレート30の幅方向の両端から外側に突出して設けられる。
【0127】
第1の溝部30aと第2の溝部30bは、貫通機構2に設けた突き出しピン20cが移動可能に嵌まる所定の形状で、第1の溝部30aの下端側は上端側と比較して深く形成され、突き出しピン20cが第1の溝部30aの下端側に位置した状態では、突き出しピン20cの略全体が第1の溝部30aに嵌まる。また、突き出しピン20cが第1の溝部30aの上端側に位置した状態では、突き出しピン20cの一部が第1の溝部30aに嵌まる。
【0128】
第2の溝部30bは、第1の溝部30aの下端側と同じ深さで構成され、突き出しピン20cの略全体が第2の溝部30bに嵌まる。
【0129】
フォーミングプレート31は、ステープル10を成型するステープル成型部33と、ステープル成型部33で成型されたステープル10の形状を保持する開き押さえ部材34を備える。また、フォーミングプレート31は、切断・成型機構3の移動をガイドするガイド凸部31aと、貫通機構2と切断・成型機構3の移動をガイドするガイド溝部31bを備える。
【0130】
ステープル成型部33は、奥行き方向の長さがステープル10の短手方向の幅と略同等で、略真直状のステープル10の長手方向の幅より広い開口と、ステープル10のクラウン部10hの外幅より若干広い開口を組み合わせた凸形状の開口を設けて構成される。
図12等で説明したステープルカートリッジ11の受け台16は、ステープルカートリッジ11がステープラ1に装着されると、ステープル成型部33の開口内に突出する。
【0131】
フォーミングプレート31は、ステープル成型部33の下方に、一対の開き押さえ部材34が対向して設けられる。開き押さえ部材34は、フォーミングプレート31に軸34aを支点に回転可能に取り付けられ、切断・成型機構3の上下方向の移動と連動して、ステープル成型部33で成型されたステープル10の一対の脚部10iの外幅と略同等の間隔で対向する位置と、ステープル成型部33で成型されたステープル10の一対の脚部10iの外幅より広い間隔で対向する位置との間で回転する。
【0132】
ガイド凸部31aは、フォーミングプレート31の幅方向の両端から外側に突出し、ステープラ1の本体部8の幅方向の両側面に設けられ、切断・成型機構3の移動方向に沿って開口した本体部8のガイド溝82bと係合する。ガイド凸部31aは、2つの半円を直線でつないだ長円形状で、切断・成型機構3の回転方向への姿勢の変化が規制される。
【0133】
ガイド溝部31bは、貫通機構2と対向するフォーミングプレート31の正面側に、貫通機構2に設けたガイド凸部20dが移動可能な形状の溝を、貫通機構2及び切断・成型機構3の移動方向に沿って設けて構成される。カッタープレート30に設けた凸部30cは、ガイド溝部31b内に突出し、貫通機構2に設けたガイド凸部20dが凸部30cに当接して、貫通機構2が上昇する動作でカッタープレート30がフォーミングプレート31に対して押し上げられる。
【0134】
<切断・成型機構の動作例>
図32〜
図36は、切断・成型機構の動作例を示す動作説明図で、次に、各図を参照して、連結ステープル10aからステープル10を切断して成型する動作について説明する。
【0135】
図1等に示すように、ステープルカートリッジ11がステープラ1のカートリッジ収納部81に装着されることで、受け台16が切断・成型機構3のステープル成型部33に突出している。
【0136】
待機状態では、
図32に示すように、カッタープレート30がフォーミングプレート31に対して上昇した退避位置にあり、切断刃32がフォーミングプレート31から退避して、切断刃32がステープル成型部33に露出しない。
【0137】
また、切断・成型機構3に連結ステープル10aが搬送され、連結ステープル10aの先頭に位置する未切断のステープル10が、ステープルカートリッジ11の受け台16にステープル押さえ17で押さえられた状態で支持される。
【0138】
切断・成型機構3の待機状態では、切断刃32がステープル成型部33に露出しない構成とすることで、
図6に示すように、ステープルカートリッジ11をステープラ1から外した状態でも切断刃32が露出せず、高い安全性が確保される。
【0139】
切断・成型機構3は、
図1等に示す操作ハンドル部9の動作で下方へ移動する貫通機構2の動作が、貫通機構2に設けた突き出しピン20cと、カッタープレート30に設けた第1の溝部30aの係合によって、カッタープレート30に伝達される。
【0140】
これにより、カッタープレート30がフォーミングプレート31に対して下降した切断位置に移動し、
図33に示すように、切断刃32がフォーミングプレート31のステープル成型部33から突出する。切断刃32がステープル成型部33に突出すると、受け台16に支持される連結ステープル10aにおいて先頭に位置する未切断のステープル10と、次位のステープル10との間の連結部10cが、切断刃32で切断される。
【0141】
図37は、連結ステープルを切断する動作を示す動作説明図で、切断刃32による連結ステープル10aの切断を時系列で示す。
図37(a)〜
図37(c)に示すように、左右一対の切断刃32が連結ステープル10aに対して下降することにより、各切断刃32の先端の刃部32aが孔部10dに入り、孔部10dから各連結部10cが切断される。
【0142】
ここで、互いに外側に向けられて傾斜した刃部32aが、左右一対の連結部10cに押し当てられることで、切断対象のステープル10及び次位のステープル10には、長手方向に沿って内側から外側に向けてそれぞれ反対方向に同時に力が加えられた状態となって、連結部10cが切断される。連結部10cの内側の孔部10dの間は、スリット部10eで予め切断されており、クラウン部10h及び脚部10iの一部となるステープル10の中央付近は切断をする必要がない。
【0143】
これにより、切断対象のステープル10と、次位のステープル10を広い範囲で支える必要がなく、ステープル押さえ17により押さえる簡易な構成により、高精度にステープル10の切断を行うことが可能となる。
【0144】
カッタープレート30が切断位置に移動すると、貫通機構2の下降する動作に連動して、フォーミングプレート31がカッタープレート30と一体的に下降する。フォーミングプレート31が下降すると、切断された先頭に位置するステープル10は、クラウン部10hに相当する部位が受け台16に支持されることで、
図34に示すように、ステープル成型部33の凸形状の開口によって、脚部10iに相当する部位の第1の方向への折り曲げが開始される。
【0145】
フォーミングプレート31が更に下降すると、
図35に示すように、先頭に位置するステープル10は、一対の脚部10iが略平行となるように第1の方向へ曲げられ、クラウン部10hと脚部10iが形成される。また、フォーミングプレート31の下降に伴いステープル10の脚部10iを第1の方向へ折り曲げる動作と連動して、開き押さえ部材34が軸34aを支点とした回転動作で開く。
【0146】
ここで、切断・成型機構3によるステープル10の成型が終了した後、切断・成型機構3が停止した状態で、貫通機構2が更に下降し、貫通機構2に設けた突き出しピン20cが、カッタープレート30に設けた第1の溝部30aから外れて第2の溝部30bに係合する。
【0147】
切断・成型機構3は、操作ハンドル部9を上方へ戻す動作で上方へ移動する貫通機構2の動作が、貫通機構2に設けた突き出しピン20cと、カッタープレート30に設けた第2の溝部30bの係合によって、カッタープレート30に伝達される。
【0148】
これにより、カッタープレート30がフォーミングプレート31に対して上昇した退避位置に移動した後、フォーミングプレート31がカッタープレート30と一体的に上昇する。フォーミングプレート31が上昇すると、成型されたステープル10がステープル成型部33から抜ける。また、フォーミングプレート31が上昇する動作で、開き押さえ部材34が軸34aを支点とした回転動作で閉じる。
【0149】
フォーミングプレート31の上昇に伴い、成型されたステープル10がステープル成型部33から抜ける過程で、ステープル10の材質が持つ弾性により、脚部10iが開く方向に変形する場合がある。開き押さえ部材34の間隔が一定であると、フォーミングプレート31の上昇で、開く方向に変形した脚部10iに開き押さえ部材が衝突することがある。
【0150】
そこで、フォーミングプレート31の昇降動作で、開き押さえ部材34を開閉可能な構成とすることで、
図36に示すように、フォーミングプレート31が上昇して、成型されたステープル10がステープル成型部33から抜けると、一対の脚部10iの外側に、開いた状態で開き押さえ部材34が上昇して、それぞれの開き押さえ部材34が閉じることで、脚部10iが第1の方向に折り曲げられた形状で保持される。
【0151】
これにより、フォーミングプレート31が上昇する動作で、開き押さえ部材34がステープル10の脚部10iに衝突して、フォーミングプレート31の動作不良を起こすことがない。そして、切断・成型機構3で所定の形状に成型されたステープル10を、貫通機構2に搬送することができる。
【0152】
<用紙押さえ機構の構成例>
次に、各図を参照して、用紙押さえ機構4の構成について説明する。用紙押さえ機構4は用紙押さえ手段の一例で、
図1等に示す用紙載置台80に載置された綴じ用紙Pを押さえる用紙押さえプレート40と、用紙押さえプレート40を付勢するバネ41を備える。また、用紙押さえ機構4は、用紙押さえプレート40の移動をガイドするガイド凸部42aと、貫通機構2と用紙押さえ機構4の移動をガイドするガイド溝部42bを備える。
【0153】
ガイド凸部42aは、用紙押さえプレート40の幅方向の両端から外側に突出し、ステープラ1の本体部8の幅方向の両側面に設けられ、用紙押さえ機構4の移動方向に沿って開口した本体部8のガイド溝82cと係合する。ガイド凸部42aは、2つの半円を直線でつないだ長円形状で、用紙押さえ機構4の回転方向への姿勢の変化が規制される。
【0154】
ガイド溝部42bは、貫通機構2と対向する用紙押さえプレート40の背面側に、貫通機構2に設けたガイド凸部20eが移動可能な形状の溝を、貫通機構2及び用紙押さえ機構4の移動方向に沿って設けて構成される。
【0155】
用紙押さえ機構4は、貫通機構2のガイド凸部20eがガイド溝部42bに当接して、用紙押さえプレート40の移動が規制され、貫通機構2が下方へ移動する動作に連動して、用紙押さえプレート40がバネ41で下方に付勢されて、用紙載置台80に突出して、綴じ用紙Pを押さえる。
【0156】
また、貫通機構2が上方へ移動する動作で、貫通機構2のガイド凸部20eがガイド溝部42bに当接して、貫通機構2が上昇する動作で用紙押さえプレート40が押し上げられ、用紙載置台80から退避する。
【0157】
<折り曲げ機構の構成例>
図38は、折り曲げ機構の一例を示す側面図、
図39(a)及び
図39(b)は、折り曲げ機構の一例を示す斜視図で、次に、各図を参照して、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の脚部10iを折り曲げる折り曲げ機構5の構成について説明する。
【0158】
折り曲げ機構5は折り曲げ手段の一例で、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の一対の脚部10iを折り曲げる折り曲げ部材として、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の一方の脚部10iを折り曲げる第1の折り曲げ部材50Rと、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の他方の脚部10iを折り曲げる第2の折り曲げ部材50Lと、一方の脚部10iと他方の脚部10iを貼り合わせる貼り合わせ部材50Sを備える。
【0159】
第1の折り曲げ部材50Rは、延在する方向に沿った一方の端部が、本体部8に設けられた軸50aに対して回転可能に支持される。また、第1の折り曲げ部材50Rは、延在方向に沿った他方の端部に、ステープル10の脚部10iを折り曲げる折り曲げ部50Rbが設けられる。これにより、第1の折り曲げ部材50Rは、軸50aを支点とした回転動作で、折り曲げ部50Rbが上下方向に移動する。
【0160】
第2の折り曲げ部材50Lは、延在方向に沿った一方の端部が、第1の折り曲げ部材50Rと同軸で軸50aに対して回転可能に支持される。また、第2の折り曲げ部材50Lは、延在方向に沿った他方の端部に、ステープル10の脚部10iを折り曲げる折り曲げ部50Lbが設けられる。これにより、第2の折り曲げ部材50Lは、軸50aを支点とした回転動作で、折り曲げ部50Lbが上下方向に移動する。
【0161】
貼り合わせ部材50Sは、延在方向に沿った一方の端部が、第1の折り曲げ部材50R及び第2の折り曲げ部材50Lと同軸で軸50aに対して回転可能に支持される。また、貼り合わせ部材50Sは、延在方向に沿った他方の端部に、ステープル10の一方の脚部10iと他方の脚部10iを貼り合わせる貼り合せ部50Sbが設けられる。これにより、貼り合わせ部材50Sは、軸50aを支点とした回転動作で、貼り合せ部50Sbが上下方向に移動する。
【0162】
折り曲げ機構5は、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sを押し上げる押し上げ部材51を備える。押し上げ部材51は駆動力伝達手段の一例で、前後方向にスライド移動が可能な状態で本体部8に取り付けられ、本体部8に対して水平方向に移動する動作で、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sを押し上げる。
【0163】
第1の折り曲げ部材50Rは、
図38(a)に示すように、押し上げ部材51に設けられた軸51aが入り、押し上げ部材51の水平方向の動きを、第1の折り曲げ部材50Rの回転動作に変換するカム溝500Rが設けられる。
【0164】
カム溝500Rは駆動力伝達部の一例で、押し上げ部材51の水平方向への移動による軸51aの動きで、第1の折り曲げ部材50Rを回転させる回転溝部501Rと、押し上げ部材51の軸51aの動きに対して、第1の折り曲げ部材50Rを所定の向きで保持する保持溝部502Rを備える。
【0165】
回転溝部501Rは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、第1の折り曲げ部材50Rの延在方向に対して傾斜した形状の溝で構成される。保持溝部502Rは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、第1の折り曲げ部材50Rの延在方向に沿った形状の溝で構成される。また、保持溝部502Rの延在方向に沿った両端部を除く部位の幅を広くして、退避部503Rが形成される。
【0166】
カム溝500Rは、第1の折り曲げ部材50Rの一方の端部側に回転溝部501Rが形成され、回転溝部501Rから連続して保持溝部502Rが形成されて、第1の折り曲げ部材50Rの一方の端部側から他方の端部側へ延在する。
【0167】
第2の折り曲げ部材50Lは、
図38(b)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが入り、押し上げ部材51の水平方向の動きを、第2の折り曲げ部材50Lの回転動作に変換するカム溝500Lが設けられる。
【0168】
カム溝500Lは駆動力伝達部の一例で、押し上げ部材51の軸51aの動きに対して、第2の折り曲げ部材50Lを所定の向きで保持する待機溝部504Lと、押し上げ部材51の軸51aの動きで、第2の折り曲げ部材50Lを回転させる回転溝部501Lと、押し上げ部材51の軸51aの動きに対して、第2の折り曲げ部材50Lを所定の向きで保持する保持溝部502Lを備える。
【0169】
待機溝部504Lは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、第2の折り曲げ部材50Lの延在方向に沿った形状の溝で構成される。回転溝部501Lは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、第2の折り曲げ部材50Lの延在方向に対して傾斜した形状の溝で構成される。
【0170】
保持溝部502Lは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、第2の折り曲げ部材50Lの延在方向に沿った形状の溝で構成される。また、保持溝部502Lの延在方向に沿った両端部を除く部位の幅を広くして、退避部503Lが形成される。
【0171】
カム溝500Lは、第2の折り曲げ部材50Lの一方の端部側に待機溝部504Lが形成され、待機溝部504Lから連続して回転溝部501Lが形成され、回転溝部501Lから連続して保持溝部502Lが形成されて、第2の折り曲げ部材50Lの一方の端部側から他方の端部側へ延在する。
【0172】
貼り合わせ部材50Sは、
図38(c)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが入り、押し上げ部材51の水平方向の動きを、貼り合わせ部材50Sの回転動作に変換するカム溝500Sが設けられる。
【0173】
カム溝500Sは駆動力伝達部の一例で、押し上げ部材51の軸51aの動きに対して、貼り合わせ部材50Sを所定の向きで保持する待機溝部504Sと、押し上げ部材51の軸51aの動きで、貼り合わせ部材50Sを回転させる回転溝部501Sと、押し上げ部材51の軸51aの動きに対して、貼り合わせ部材50Sを所定の向きで保持する保持溝部502Sを備える。
【0174】
待機溝部504Sは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、貼り合わせ部材50Sの延在方向に沿った形状の溝で構成される。回転溝部501Sは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、貼り合わせ部材50Sの延在方向に対して傾斜した形状の溝で構成される。
【0175】
保持溝部502Sは、押し上げ部材51の軸51aが通る所定の幅を有し、貼り合わせ部材50Sの延在方向に沿った形状の溝で構成される。また、保持溝部502Sの延在方向に沿った両端部を除く部位の幅を広くして、退避部503Sが形成される。
【0176】
カム溝500Sは、貼り合わせ部材50Sの一方の端部側に待機溝部504Sが形成され、待機溝部504Sから連続して回転溝部501Sが形成され、回転溝部501Sから連続して保持溝部502Sが形成されて、貼り合わせ部材50Sの一方の端部側から他方の端部側へ延在する。
【0177】
折り曲げ機構5は、ステープラ1を正面から見て貼り合わせ部材50Sの右側に第1の折り曲げ部材50Rが配置され、左側に第2の折り曲げ部材50Lが配置されて、第1の折り曲げ部材50Rと、第2の折り曲げ部材50Lと、貼り合わせ部材50Sが、軸50aによって同軸上に支持される。
【0178】
また、折り曲げ機構5は、第1の折り曲げ部材50Rのカム溝500Rと、第2の折り曲げ部材50Lのカム溝500Lと、貼り合わせ部材50Sのカム溝500Sが、第1の折り曲げ部材50Rと、第2の折り曲げ部材50Lと、貼り合わせ部材50Sの並列方向に重なり、各カム溝に押し上げ部材51の軸51aが入る。
【0179】
折り曲げ機構5は、押し上げ部材51の動きに対して、第1の折り曲げ部材50Rと、第2の折り曲げ部材50Lと、貼り合わせ部材50Sを異なるタイミングで動作させる。
【0180】
本例では、まず、第1の折り曲げ部材50Rを回転させ、第1の折り曲げ部材50Rでステープル10の一方の脚部10iを折り曲げる。次に、第1の折り曲げ部材50Rの回転を停止させると共に第2の折り曲げ部材50Lの回転量を増加させ、第2の折り曲げ部材50Lでステープル10の他方の脚部10iを折り曲げる。
【0181】
次に、第2の折り曲げ部材50Lの回転を停止させると共に貼り合わせ部材50Sの回転量を増加させ、貼り合わせ部材50Sでステープル10の一方の脚部10iと他方の脚部10iを貼り合わせる。
【0182】
このため、第1の折り曲げ部材50Rのカム溝500Rは、待機溝部が設けられていない。これに対して、第2の折り曲げ部材50Lのカム溝500Lには待機溝部504Lが設けられ、貼り合わせ部材50Sのカム溝500Sには待機溝部504Sが設けられる。
【0183】
これにより、折り曲げ機構5は、押し上げ部材51の軸51aが、第1の折り曲げ部材50Rにおいてはカム溝500Rの回転溝部501Rを通るタイミングで、第2の折り曲げ部材50Lにおいてはカム溝500Lの待機溝部504Lを通る。
【0184】
よって、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50Lの回転量を異ならせて、第1の折り曲げ部材50Rが回転を開始するタイミングでは、第2の折り曲げ部材50Lの回転量を少なく抑える。
【0185】
また、第2の折り曲げ部材50Lのカム溝500Lの待機溝部504Lより、貼り合わせ部材50Sのカム溝500Sの待機溝部504Sが長く構成される。
【0186】
これにより、押し上げ部材51の軸51aが、第2の折り曲げ部材50Lにおいてはカム溝500Lの回転溝部501Lを通るタイミングで、貼り合わせ部材50Sにおいてはカム溝500Sの待機溝部504Sを通る。
【0187】
よって、第2の折り曲げ部材50Lと貼り合わせ部材50Sの回転量を異ならせて、第2の折り曲げ部材50Lの回転量が増加するタイミングでは、貼り合わせ部材50Sの回転量を少なく抑える。
【0188】
更に、第1の折り曲げ部材50Rのカム溝500Rの保持溝部502Rが、第2の折り曲げ部材50Lのカム溝500Lの保持溝部502Lより長く構成される。
【0189】
これにより、押し上げ部材51の軸51aが、第1の折り曲げ部材50Rにおいてはカム溝500Rの保持溝部502Rを通るタイミングで、第2の折り曲げ部材50Lにおいてはカム溝500Lの回転溝部501Lを通る。
【0190】
よって、第1の折り曲げ部材50Rが回転を停止するタイミングで、第2の折り曲げ部材50Lの回転量が増加する。
【0191】
また、第2の折り曲げ部材50Lのカム溝500Lの保持溝部502Lが、貼り合わせ部材50Sのカム溝500Sの保持溝部502Sより長く構成される。
【0192】
これにより、押し上げ部材51の軸51aが、第2の折り曲げ部材50Lにおいてはカム溝500Lの保持溝部502Lを通るタイミングで、貼り合わせ部材50Sにおいてはカム溝500Sの回転溝部501Sを通る。
【0193】
よって、第2の折り曲げ部材50Lが回転を停止するタイミングで、貼り合わせ部材50Sの回転量が増加する。
【0194】
折り曲げ機構5は、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sを作動させる押し上げ部材51に、操作ハンドル部9の動きが伝達される。
【0195】
図40は、折り曲げ機構の駆動力伝達機構の一例を示す側面図である。折り曲げ機構5は、操作ハンドル部9の動きを押し上げ部材51に伝達するクリンチャカム57とクリンチャレバー58を備える。
【0196】
クリンチャカム57は駆動力伝達手段の一例で、操作ハンドル部9と連結される貫通機構本体部20の連結軸部20bに押圧される押圧部57aと、クリンチャレバー58を回転させるギアカム部57bを備え、本体部8に軸部57cを支点として回転可能に取り付けられる。
【0197】
クリンチャレバー58は駆動力伝達手段の一例で、クリンチャカム57のギアカム部57bと噛み合うギア部58aと、押し上げ部材51と係止される係合部58bを備え、本体部8にギア部58aと同軸の軸部58cを支点として回転可能に取り付けられる。
【0198】
クリンチャカム57は、操作ハンドル部9が押し下げられることで、貫通機構本体部20が所定の位置まで下降すると、押圧部57aが連結軸部20bで押圧される。クリンチャカム57は、押圧部57aが連結軸部20bで押圧されると、軸部57cを支点に矢印S1方向に回転する。
【0199】
クリンチャレバー58は、クリンチャカム57が軸部57cを支点に回転することによるギアカム部57bの変位でギア部58aが回転して、軸部58cを支点に矢印Q1方向に回転する。
【0200】
押し上げ部材51は、クリンチャレバー58が軸部58cを支点に矢印Q1方向に回転すると、クリンチャレバー58の係合部58bに押圧されて、バネ51bを圧縮しながら矢印R1方向に後退する。そして、押し上げ部材51が矢印R1方向に後退することで、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sが、所定のタイミングで作動する。
【0201】
操作ハンドル部9が押し上げられると、バネ51bによる押圧で押し上げ部材51が矢印R2方向に前進し、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sが初期位置に復帰する。また、クリンチャレバー58が軸部58cを支点に矢印Q2方向に回転する。
【0202】
クリンチャレバー58が軸部58cを支点に矢印Q2方向に回転すると、ギア部58aとギアカム部57bの噛み合いで、クリンチャカム57が軸部57cを支点に矢印S2方向に回転して、初期位置に復帰する。
【0203】
折り曲げ機構5では、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50Lが押し上げられる工程で、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50Lの間隔が外側に広がった後、内側に狭まるように構成される。
【0204】
更に、折り曲げ機構5は、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50Lでステープル10の脚部10iを折り曲げる動作を開始するより前に、綴じ用紙Pを貫通したステープル10の脚部10iをそれぞれ内側に折り曲げる動作を行う押し出し部材52を備える。
【0205】
押し出し部材52は、軸52aを支点とした回転動作で図示しないバネに付勢されて、抜き刃21に設けた押し出し孔21fから内側に突出し、抜き刃21で支持されたステープル10の脚部10iを、内側に折り曲げる。
【0206】
また、折り曲げ機構5は、操作ハンドル部9の操作で昇降する貫通機構2の動作と連動して、押し出し部材52を作動させる押し出し部材作動機構53を備える。
【0207】
押し出し部材作動機構53は、操作ハンドル部9の動作が伝達されるスライド部材54と、スライド部材54を付勢するバネ55aを備える。
【0208】
スライド部材54は、操作ハンドル部9の動作が伝達されるリンク92と係合するピン54aと、押し出し部材52を作動させるガイド部54bと、抜き刃ガイド23を作動させる作動凸部54cを備え、前後方向にスライド移動が可能な状態で本体部8に取り付けられる。スライド部材54は、貫通機構2の動作と連動して抜き刃ガイド23を作動させるガイド駆動手段を構成する。
【0209】
操作ハンドル部9と連結されたリンク92には、
図3に示すように、スライド部材54のピン54aが係合する長穴部92bが設けられる。操作ハンドル部9が押し下げられて回転する動作でのリンク92の変位では、操作ハンドル部9が所定の位置まで押し下げられるまでは、長穴部92bの形状によってピン54aには駆動力が伝達されず、スライド部材54は変位しない。
【0210】
操作ハンドル部9が所定の位置まで押し下げられると、ピン54aが後方に押されることで、スライド部材54が後方に移動する。また、操作ハンドル部9が押し上げられて回転する動作でのリンク92の変位では、バネ55aに付勢されてスライド部材54が前方に移動する。
【0211】
ガイド部54bは、
図18に示すように、押し出し部材52と当接するガイド面を有し、スライド部材54のスライド移動に伴い、押し出し部材52を開閉する。作動凸部54cは、
図1等に示すように、抜き刃ガイド23と当接し、スライド部材54のスライド移動に伴い、抜き刃ガイド23を前後方向へ移動させる。
【0212】
押し出し部材作動機構53は、操作ハンドル部9の動作がリンク92を介して伝達され、操作ハンドル部9の動作で、貫通機構2がステープル10を綴じ用紙Pに貫通させると共に、切断・成型機構3で連結ステープル10aから次位のステープル10を切断して成型する動作に伴い、スライド部材54が後退する。
【0213】
スライド部材54の後退に伴い、押し出し部材52は、ガイド部54bのガイド面にガイドされて閉じる方向に回転し、所定の位置に下降した抜き刃21の押し出し孔21fから内側に突出する。また、スライド部材54の後退に伴い、抜き刃ガイド23は、作動凸部54cに押されて後退し、抜き刃21の間から退避する。
【0214】
操作ハンドル部9が押し上げられると、バネ55aに付勢されてスライド部材54が前方に移動する。スライド部材54が前方に移動すると、押し出し部材52は、ガイド部54bのガイド面にガイドされて開く方向に回転し、抜き刃21の押し出し孔21fから外側に退避する。また、スライド部材54の前進に伴い、抜き刃ガイド23は、バネ23aに付勢されて前進し、抜き刃21の間に突出する。
【0215】
<折り曲げ機構の動作例>
図41〜
図45は、折り曲げ機構の動作例を示す動作説明図で、次に、各図を参照して、ステープル10の脚部10iを折り曲げる第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sの動作について説明する。
【0216】
第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sがそれぞれ初期位置の状態では、第1の折り曲げ部材50Rでは、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Rの回転溝部501Rに位置する。
【0217】
また、第2の折り曲げ部材50Lでは、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Lの待機溝部504Lに位置する。更に、貼り合わせ部材50Sでは、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Sの待機溝部504Sに位置する。
【0218】
押し上げ部材51が矢印R1方向に後退を開始すると、第1の折り曲げ部材50Rでは、
図41(a)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Rの回転溝部501Rを通ることで、第1の折り曲げ部材50Rが軸50aを支点に回転を開始する。
【0219】
第1の折り曲げ部材50Rが回転を開始すると、
図45(a)に示すように、折り曲げ部50Rbが上昇を開始することで、後述するように、押し出し部材52で内側に折り曲げられたステープル10の一方の脚部10iが、第1の折り曲げ部材50Rで折り曲げられる。
【0220】
また、押し上げ部材51が矢印R1方向に後退を開始すると、第2の折り曲げ部材50Lでは、
図41(b)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Lの待機溝部504Lを通ることで、第1の折り曲げ部材50Rと比較して少ない回転量で、第2の折り曲げ部材50Lが回転を開始する。
【0221】
第1の折り曲げ部材50Rでステープル10の一方の脚部10iの折り曲げを開始するタイミングでは、第2の折り曲げ部材50Lの回転量が少なく、第2の折り曲げ部材50Lによりステープル10の他方の脚部10iを折り曲げる動作は行われない。
【0222】
更に、押し上げ部材51が矢印R1方向に後退を開始すると、貼り合わせ部材50Sでは、
図41(c)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Sの待機溝部504Sを通ることで、第1の折り曲げ部材50Rと比較して少ない回転量で、貼り合わせ部材50Sが回転を開始する。
【0223】
第1の折り曲げ部材50Rでステープル10の一方の脚部10iの折り曲げを開始するタイミングでは、貼り合わせ部材50Sの回転量が少なく、貼り合わせ部材50Sによりステープル10の脚部10iを貼り合わせる動作は行われない。
【0224】
押し上げ部材51が矢印R1方向に後退して、第1の折り曲げ部材50Rでは、
図42(a)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Rの回転溝部501Rから保持溝部502Rに入ると、第1の折り曲げ部材50Rは略水平な向きとなり、回転を停止する。
【0225】
第1の折り曲げ部材50Rが略水平な向きとなって回転を停止すると、
図45(b)に示すように、折り曲げ部50Rbでステープル10の一方の脚部10iが押圧され、第1の折り曲げ部材50Rによるステープル10の一方の脚部10iの折り曲げ動作が終了する。
【0226】
押し上げ部材51の軸51aが、第1の折り曲げ部材50Rにおいてカム溝500Rの保持溝部502Rに入るタイミングで、第2の折り曲げ部材50Lでは、
図42(b)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Lの待機溝部504Lから回転溝部501Rに入ることで、第2の折り曲げ部材50Lの回転量が増加する。
【0227】
第2の折り曲げ部材50Lの回転量が増加すると、
図45(c)に示すように、折り曲げ部50Lbの上昇量が大きくなることで、押し出し部材52で内側に折り曲げられたステープル10の他方の脚部10iが、第2の折り曲げ部材50Lで折り曲げられる。
【0228】
また、押し上げ部材51の軸51aが、第1の折り曲げ部材50Rにおいてカム溝500Rの保持溝部502Rに入るタイミングで、貼り合わせ部材50Sでは、
図42(c)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Sの待機溝部504Sを通ることで、貼り合わせ部材50Sの回転量が少なく抑えられる。
【0229】
押し上げ部材51が矢印R1方向に後退して、第2の折り曲げ部材50Lでは、
図43(b)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Lの回転溝部501Lから保持溝部502Lに入ると、第2の折り曲げ部材50Lは略水平な向きとなり、回転を停止する。
【0230】
第2の折り曲げ部材50Lが略水平な向きとなって回転を停止すると、
図45(d)に示すように、ステープル10の一方の脚部10iに重ねられた他方の脚部10iが折り曲げ部50Lbで押圧され、第2の折り曲げ部材50Lによるステープル10の他方の脚部10iの折り曲げ動作が終了する。
【0231】
押し上げ部材51の軸51aが、第2の折り曲げ部材50Lにおいてカム溝500Lの保持溝部502Lに入るタイミングで、第1の折り曲げ部材50Rでは、
図43(a)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Rの保持溝部502Rを通ることで、第1の折り曲げ部材50Rは回転を停止した状態で保持される。
【0232】
第1の折り曲げ部材50Rのカム溝500Rは、保持溝部502Rに退避部503Rが形成されることで、押し上げ部材51の軸51aが退避部503Rを通ると、第1の折り曲げ部材50Rは上下方向に所定量の変位が可能となる。
【0233】
第1の折り曲げ部材50Rでステープル10の脚部10iを押圧した状態では、ステープル10の脚部10iから掛かる反力が、第1の折り曲げ部材50Rのカム溝500Rと押し上げ部材51の軸51aとの摺動抵抗となり、押し上げ部材51を移動させる力に対して負荷となる。押し上げ部材51は、操作ハンドル部9が押される力で後退するため、押し上げ部材51に掛かる負荷の増加は、操作荷重の増加につながる。
【0234】
そこで、ステープル10の脚部10iを折り曲げた状態を保持しつつ、第1の折り曲げ部材50Rを上下方向に変位可能とすることで、ステープル10の脚部10iから掛かる反力を逃がすことができるように、第1の折り曲げ部材50Rを退避させることができる。これにより、第1の折り曲げ部材50Rのカム溝500Rと押し上げ部材51の軸51aとの摺動抵抗が軽減され、操作荷重が軽減される。
【0235】
また、押し上げ部材51の軸51aが、第2の折り曲げ部材50Lにおいてカム溝500Lの保持溝部502Lに入るタイミングで、貼り合わせ部材50Sでは、
図43(c)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Sの待機溝部504Sから回転溝部501Sに入ることで、貼り合わせ部材50Sの回転量が増加する。
【0236】
押し上げ部材51が矢印R1方向に後退して、貼り合わせ部材50Sでは、
図44(c)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Sの回転溝部501Sから保持溝部502Sに入ると、貼り合わせ部材50Sは略水平な向きとなり、回転を停止する。
【0237】
貼り合わせ部材50Sが略水平な向きとなって回転を停止すると、
図45(e)に示すように、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50Lで折り曲げられて重ねられたステープル10の一方の脚部10iと他方の脚部10iが、貼り合わせ部材50Sで貼り合わされ、ステープル10の脚部10iの折り曲げ及び貼り合わせ動作が終了する。
【0238】
押し上げ部材51の軸51aが、貼り合わせ部材50Sにおいてカム溝500Sの保持溝部502Sに入るタイミングで、第1の折り曲げ部材50Rでは、
図44(a)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Rの保持溝部502Rを通ることで、第1の折り曲げ部材50Rが略水平な向きで回転を停止した状態で保持される。
【0239】
また、押し上げ部材51の軸51aが、貼り合わせ部材50Sにおいてカム溝500Sの保持溝部502Sに入るタイミングで、第2の折り曲げ部材50Lでは、
図44(b)に示すように、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Lの保持溝部502Lを通ることで、第2の折り曲げ部材50Lが略水平な向きで回転を停止した状態で保持される。
【0240】
第2の折り曲げ部材50Lのカム溝500Lは、保持溝部502Lに退避部503Lが形成されることで、押し上げ部材51の軸51aが退避部503Lを通ると、第2の折り曲げ部材50Lは上下方向に所定量の変位が可能となる。これにより、押し上げ部材51が後退する動作での負荷が軽減される。
【0241】
更に、貼り合わせ部材50Sのカム溝500Sは、保持溝部502Sに退避部503Sが形成されることで、押し上げ部材51の軸51aが退避部503Sを通る位置まで操作ハンドル部9が押されると、貼り合わせ部材50Sは上下方向に所定量の変位が可能となる。
【0242】
これにより、ステープル10で用紙を綴じ終わるタイミングで、操作ハンドル部9に掛かる荷重が軽くなり、操作者に用紙を綴じる動作が終了したことを認識させることができる。
【0243】
ここで、綴じ用紙の枚数が少ない場合、押し上げ部材51が矢印R1方向に更に後退して、第1の折り曲げ部材50Rでは、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Rの退避部503Rを抜けて保持溝部502Rの終端に到達することで、第1の折り曲げ部材50Rが所定量上昇し、ステープル10の一方の脚部10iを押圧する。
【0244】
また、押し上げ部材51が矢印R1方向に更に後退して、第2の折り曲げ部材50Lでは、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Lの退避部503Lを抜けて保持溝部502Lの終端に到達することで、第2の折り曲げ部材50Lが所定量上昇し、ステープル10の他方の脚部10iを押圧する。
【0245】
更に、押し上げ部材51が矢印R1方向に更に後退して、貼り合わせ部材50Sでは、押し上げ部材51の軸51aが、カム溝500Sの退避部503Sを抜けて保持溝部502Sの終端に到達することで、貼り合わせ部材50Sが所定量上昇し、ステープル10の重ね合わされた一方の脚部10iと他方の脚部10iを押圧する。これにより、綴じ用紙Pの枚数によらず、貼り合わせ部材50Sでステープル10の脚部10iを押圧する時間を長くすることができ、脚部10iを確実に貼り合わせることができる。
【0246】
金属材料で構成されるステープルを使用するステープラでは、操作ハンドル部を押し下げる力をステープルに直接掛ける構成、あるいは、操作ハンドル部を押し下げる力を利用して用紙載置台を変位させて、ステープルの脚部を折り曲げている。用紙載置台が昇降動作を行って変位する構成では、綴じ用紙Pの枚数が多くなると、綴じ動作が不安定になりやすい。
【0247】
本実施の形態のステープラ1では、紙等の軟質素材で構成されたステープル10を使用することで、脚部10iの折り曲げに必要な力は、金属のステープルに比較して弱い。このため、操作ハンドル部9の力をクリンチャカム57及びクリンチャレバー58等のカム機構の駆動力伝達手段を利用して折り曲げ機構5に伝達するように構成することで、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sを、操作ハンドル部9での操作荷重を重くすることなく、作動させることができる。
【0248】
そして、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sのそれぞれを、操作ハンドル部9の力で独立して駆動することができるので、各部材の動きが安定し、綴じ動作が確実に行える。また、カムの形状等で、操作荷重に変化を持たせることができるので、操作荷重の増加を防ぎ、かつ、用紙が綴じられたことを操作荷重の変化で認識させることができ、使い勝手が向上する。
【0249】
<搬送機構の構成例>
次に、各図を参照して、連結ステープル10a、及び連結ステープル10aから切断されて成型されたステープル10を搬送する搬送機構6について説明する。
【0250】
搬送機構6は搬送手段の一例で、連結ステープル10a、及び連結ステープル10aから切断されて成型されたステープル10を搬送するプッシャ60と、プッシャ60を前方に付勢するバネ60aを備える。
【0251】
プッシャ60は、連結ステープル10aの孔部10dに係合して、連結ステープル10aを搬送する送り爪61と、連結ステープル10aから切断されて成型されたステープル10を押し出すステープル押し部62と、操作ハンドル部9の動作が伝達されるリンク92と係合するピン63を備える。
【0252】
操作ハンドル部9と連結されたリンク92には、プッシャ60のピン63が係合する長穴部92aが設けられる。操作ハンドル部9が押し下げられて回転する動作でのリンク92の変位では、ピン63が後方に押されることで、プッシャ60が後方に移動する。また、操作ハンドル部9が押し上げられて回転する動作でのリンク92の変位では、バネ60aに付勢されてプッシャ60が前方に移動する。
【0253】
プッシャ60は、本例では樹脂材料で構成され、送り爪61とステープル押し部62が一体に構成される。送り爪61は、プッシャ60の上面に設けられ、連結ステープル10aの一対の孔部10dに対応して、
図6に示すように左右の2箇所に設けられる。
図1に示すように、ステープラ1のカートリッジ収納部81にステープルカートリッジ11が装着されると、ステープル搬送路14の底面の溝部14bから、送り爪61が突出する。
【0254】
送り爪61は、連結ステープル10aの搬送方向に沿った前面が係合面61aとして略垂直に構成され、後面が非係合面61bとして斜面で形成される。送り爪61は、後面側から後方に延在する支持部61cによりプッシャ60と一体に構成される。
【0255】
プッシャ60が樹脂材料で構成されることで、送り爪61の支持部61cは弾性変形が可能であり、送り爪61の形状によって、プッシャ60の前後方向の移動により送り爪61が連結ステープル10aの孔部10dに対して出没可能とする退避手段を構成する。
【0256】
すなわち、プッシャ60が前進する動作では、送り爪61の係合面61aが連結ステープル10aの孔部10dに係合し、連結ステープル10aが前方へ搬送される。一方、プッシャ60が後退する動作では、送り爪61の非係合面61bの斜面の形状により、送り爪61を押し下げる力が生じ、支持部61cの弾性変形によって、送り爪61が連結ステープル10aの孔部10dから退避し、連結ステープル10aは停止した状態を保つ。
【0257】
ステープル押し部62は、プッシャ60の前面に設けられ、
図10に示すように、クラウン部10hの両端に脚部10iが形成されて所謂コ字形状に成型されたステープル10を押すことが可能な形状に構成される。
【0258】
ステープル押し部62は、プッシャ60が前進する動作で、切断・成型機構3に突出し、成型されたステープル10を貫通機構2へ搬送する。送り爪61とステープル押し部62はプッシャ60と一体に構成されるので、プッシャ60が前進する動作で、連結ステープル10aが切断・成型機構3に搬送されると共に、連結ステープル10aから切断されて成型された先頭に位置するステープル10が貫通機構2に搬送される。
【0259】
<脱着機構の構成例>
図46は、脱着機構の一例を示すステープラの側断面図で、次に、ステープルカートリッジ11が装着されると、搬送機構6との連動で、ステープルカートリッジ11に収納された連結ステープル10aの所定位置への搬送を行う脱着機構7Aの構成について説明する。
【0260】
脱着機構7Aは脱着手段の一例で、操作レバー70と、操作レバー70の動作を搬送機構6に伝達するリンク71を備える。操作レバー70は、本体部8のカートリッジ収納部81の後方に設けられ、軸70aを支点に回転する。
【0261】
リンク71は操作力伝達手段の一例で、プッシャ60のピン63と係合する長穴部71aが前端側に設けられ、後端側が軸71bを支点に操作レバー70に対して回転可能に取り付けられる。リンク71に設けられた長穴部71aは、操作ハンドル部9の動作でのプッシャ60の移動方向に沿って延在し、プッシャ60とリンク71の係合が、操作ハンドル部9の動作によるプッシャ60の移動の妨げになることはない。
【0262】
一方、操作レバー70を軸70aを支点に後方へ回転させると、軸71bで連結されたリンク71が後方に移動することで、プッシャ60のピン63が後方に押され、プッシャ60が後方に移動する。プッシャ60が後退する動作では、送り爪61が連結ステープル10aの孔部10dから退避し、連結ステープル10aは停止した状態を保つ。また、操作レバー70を軸70aを支点に前方へ回転させると、バネ60aに付勢されてプッシャ60が前方に移動する。プッシャ60が前進する動作では、送り爪61の係合面61aが連結ステープル10aの孔部10dに係合し、連結ステープル10aが前方へ搬送される。
【0263】
図47は、脱着機構の動作による連結ステープルの搬送動作例を示す動作説明図である。プッシャ60の送り爪61が連結ステープル10aの孔部10dに係合しているので、プッシャ60が前方に移動すると、
図47(a)〜
図47(b)に示すように、連結ステープル10aが前進する。
【0264】
図46に示すように、操作レバー70が装着位置まで回転すると、
図47(c)に示すように、連結ステープル10aが所定の待機位置まで前進する。本例では、連結ステープル10aの先端が、貫通機構2の抜き刃21に当たる位置を待機位置としている。
【0265】
これにより、ステープルカートリッジ11をステープラ1に装着して、脱着機構7Aの動作により、連結ステープル10aを所定の待機位置まで前進させることができるので、ステープルカートリッジ11の脱着の際に、操作レバー70の操作で連結ステープル10aの位置を確実に所定の待機位置にセットすることができる。
【0266】
なお、ステープルカートリッジ11を取り外す際には、
図46に示す状態から、操作レバー70を後方へ回転させる。操作レバー70を後方へ回転させる動作で、プッシャ60が後方へ移動すると、送り爪61の形状によって、送り爪61が連結ステープル10aの孔部10dから退避し、連結ステープル10aは停止した状態を保つ。
【0267】
そして、操作レバー70を脱着位置まで回転させると、操作レバー70を脱着位置で保持した状態として、ステープルカートリッジ11が押し上げられる。これにより、ステープルカートリッジ11の取り外しが容易に行える。
【0268】
ジャム等により連結ステープル10aが残っている状態でステープルカートリッジ11を取り外す際に、プッシャ60が前進したままの状態でステープルカートリッジ11が取り外されると、連結ステープル10aの先頭のステープルとプッシャ60の送り爪61が係合状態のままステープルカートリッジ11が取り外されることになり、連結ステープル10aが引き出されてしまう。
【0269】
これに対して、本実施の形態では、操作レバー70の操作無しではステープルカートリッジ11の取り外しができないように構成され、操作レバー70の操作でプッシャ60を後退させて送り爪61を退避させることで、連結ステープル10aの先頭のステープルとプッシャ60の送り爪61との係合状態を解除してステープルカートリッジ11が取り外されることになり、連結ステープル10aが引き出されることが防止される。
【0270】
<ステープラの全体動作例>
図48〜
図51は、操作ハンドル部の動作例を示す動作説明図、
図52〜
図63は、ステープラ全体の動作例を示す動作説明図、
図64〜
図75は、貫通機構及び折り曲げ機構の動作例を示す動作説明図、
図76〜87は、切断・成型機構の動作例を示す動作説明図で、次に、各図を参照して、本実施の形態のステープラ1の全体の動作例について説明する。
【0271】
<待機状態>
図48、
図52、
図64及び
図76等に示す待機状態では、連結ステープル10aから切断されて成型された先頭のステープル10が、貫通機構2に位置する。また、連結ステープル10aの次位のステープル10が、切断・成型機構3に位置する。
【0272】
切断・成型機構3に搬送された連結ステープル10aは、上述した脱着機構7Aの動作によって、貫通機構2の抜き刃21に当接する所定の待機位置に搬送されている。また、切断・成型機構3では、カッタープレート30が、フォーミングプレート31に対して上昇した退避位置にあり、切断刃32が露出していない。
【0273】
<切断刃動作開始>
図48に示す待機状態から、操作ハンドル部9が矢印Aで示す下方に押されると、貫通機構2の連結軸部20bで操作ハンドル部9と連結されたリンク92は、連結軸部20bを支点に矢印B方向に回転する。これにより、
図53に示すように、プッシャ60が後退を始める。プッシャ60が後退する動作では、上述したように、送り爪61が連結ステープル10aから外れ、連結ステープル10aは停止した状態を保つ。
【0274】
また、操作ハンドル部9が連結軸部20bを下方に押すことで、貫通機構2が下降を開始し、貫通機構2の動作と連動して用紙押さえ機構4の用紙押さえプレート40がバネ41に付勢されて下降し、用紙載置台80に載置された綴じ用紙Pが抑えられる。貫通機構2では、
図65に示すように、抜き刃21の刃部21aが綴じ用紙Pに刺さる。切断・成型機構3では、貫通機構2の動作と連動して、
図77に示すように、切断刃32がフォーミングプレート31のステープル成型部33から突出する。
【0275】
操作ハンドル部9は、軸90にガイドされるカム溝91の軌跡と、連結軸部20bの軌跡で規制される仮想の支点を軸とした回転で、貫通機構2を下降させることにより、ステープル10が綴じ用紙Pに貫通を開始するタイミングでは、操作荷重が軽くなる。
【0276】
<成型及びスライド部材作動開始>
図54に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60が後退する動作が継続して行われる。貫通機構2では、
図66に示すように、抜き刃21の第1の貫通部21bが綴じ用紙Pを貫通する。一対の抜き刃21は、綴じ用紙Pを貫通した第1の貫通部21bの内側に抜き刃ガイド23が突出し、抜き刃21の先端側が内側に傾くことが防止される。
【0277】
切断・成型機構3では、
図78に示すように、カッタープレート30とフォーミングプレート31が一体で下降して、
図37に示すように、切断刃32で連結ステープル10aの先頭に位置するステープル10が切断される。また、切断されたステープル10にフォーミングプレート31のステープル成型部33が当接し、ステープル10の成型が開始され、ステープル成型部33でステープル10の脚部10iが徐々に折り曲げられる。
【0278】
また、
図54に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、
図49に示すように、リンク92の長穴部92bがスライド部材54のピン54aに当接し、スライド部材54が後退を開始する。
【0279】
<孔拡張開始>
図55に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。貫通機構2では、
図21及び
図67に示すように、抜き刃21の孔拡張部21eが綴じ用紙Pに到達し、綴じ用紙Pに開けられた孔部P1が外側に方向に広げられる。切断・成型機構3では、
図79に示すように、ステープル10の成型が継続される。
【0280】
<開き押さえ部材作動開始>
図56に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。貫通機構2では、
図68に示すように、抜き刃21の孔拡張部21eが綴じ用紙Pを貫通する。切断・成型機構3では、
図80に示すように、カッタープレート30及びフォーミングプレート31の下降に伴って、開き押さえ部材34が本体部8に形成される開カム面84aに当接し、外側方向へ開き始める。
【0281】
<抜き刃ガイド作動開始>
図57に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われ、スライド部材54の作動凸部54cが抜き刃ガイド23に当接し、バネ23aを圧縮しながら抜き刃ガイド23が後退を開始する。
【0282】
貫通機構2では、
図69に示すように、抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pを貫通することで、抜き刃21の内側に保持されたステープル10が綴じ用紙Pを貫通する。各抜き刃21の先端側は、それぞれの内側が、第1の折り曲げ部材50Rと第2の折り曲げ部材50Lでガイドされ、抜き刃ガイド23が退避しても、傾く方向への変位が抑制される。
【0283】
切断・成型機構3は、
図35及び
図81に示すように、カッタープレート30及びフォーミングプレート31の下降に伴って、ステープル10は一対の脚部10iが略平行となるように第1の方向へ曲げられて、クラウン部10hと脚部10iが形成され、成型が終了する。また、開き押さえ部材34が開いて作動が終了する。
【0284】
<開き押さえ部材作動終了>
図58に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。貫通機構2では、
図70に示すように、抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pを貫通し、抜き刃21の内側に保持されたステープル10が綴じ用紙Pへの貫通を開始する。切断・成型機構3は、
図82に示す下端位置まで下降しており、作動しない。
【0285】
<押し出し部材作動開始>
図59に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われ、スライド部材54のガイド部54bのガイド面にガイドされて、
図71に示すように、押し出し部材52が内側方向へ閉じ始める。貫通機構2では、抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pを貫通することで、抜き刃21の内側に保持されたステープル10が綴じ用紙Pを貫通する。切断・成型機構3は、
図83に示す下端位置まで下降しており、作動しない。
【0286】
<ステープル折り曲げ開始>
図60に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われ、スライド部材54のガイド部54bのガイド面にガイドされて、押し出し部材52が内側方向へ閉じ、所定の位置に下降した抜き刃21の押し出し孔21fから内側に突出する。
【0287】
貫通機構2では、
図72に示すように、抜き刃21の第2の貫通部21cが綴じ用紙Pを貫通することで、抜き刃21の内側に保持されたステープル10が綴じ用紙Pを貫通する動作と連動して、押し出し孔21fから内側に突出した押し出し部材52により、ステープル10の一対の脚部10iが内側方向へ折り曲げられる。切断・成型機構3は、
図84に示す下端位置まで下降しており、作動しない。
【0288】
<ステープル押し下げ部着地>
図50及び
図61に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。貫通機構2では、
図73に示すように、ステープル押し下げ部22が綴じ用紙Pに着地する。
【0289】
貫通機構2では、
図50及び
図61に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、
図26、
図27及び
図73に示すように、貫通機構本体部20が折り曲げ機構作動位置Mまで下降することで、綴じ用紙Pの枚数によらず、ステープル押し下げ部22でステープル10のクラウン部10hが綴じ用紙Pに押圧される。切断・成型機構3は、
図85に示す下端位置まで下降しており、作動しない。
【0290】
<クリンチ開始>
図62に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。折り曲げ機構5では、
図41〜
図44に示すように、操作ハンドル部9が押される力で押し上げ部材51が矢印R1で示す後方へ移動する。押し下げ部材51の後退に伴って、押し上げ部材51により第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sの押し上げが開始され、
図74に示すように、押し出し部材52により内側方向へ折り曲げられたステープル10の一対の脚部10iを折り曲げるクリンチと称す動作が開始される。切断・成型機構3は、
図86に示す下端位置まで下降しており、作動しない。
【0291】
操作ハンドル部9は、軸90にガイドされるカム溝91の軌跡と、連結軸部20bの軌跡で規制される仮想の支点を軸とした回転で、押し上げ部材51により第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sの押し上げが開始されることにより、ステープル10の脚部10iを折り曲げるタイミングでは、操作荷重が軽くなる。
【0292】
<右側脚部クリンチ>
操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。折り曲げ機構5では、
図41(a)、
図42(a)と、
図45(a)及び
図45(b)に示すように、操作ハンドル部9が押される力で押し上げ部材51が矢印R1方向へ後退する動作で、押し上げ部材51により第1の折り曲げ部材50Rが押し上げられることで、ステープル10の右側の脚部10iが折り曲げられる。
【0293】
ステープル10の脚部10iは、押し出し部材52により所定量内側に折り曲げられている。また、第1の折り曲げ部材50Rが上方へ回転する動作で、第1の折り曲げ部材50Rは外側方向に変位しながら押し上げられるので、ステープル10の右側の脚部10iの外側に確実に入り込んで、脚部10iの折り曲げが行われる。
【0294】
<左側脚部クリンチ>
操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。折り曲げ機構5では、
図42(b)、
図43(b)と、
図45(c)及び
図45(d)に示すように、操作ハンドル部9が押される力で押し上げ部材51が矢印R1方向へ後退する動作で、押し上げ部材51により第2の折り曲げ部材50Lが押し上げられることで、ステープル10の左側の脚部10iが折り曲げられる。
【0295】
また、第2の折り曲げ部材50Lが上方へ回転する動作で、第2の折り曲げ部材50Lは外側方向に変位しながら押し上げられるので、ステープル10の左側の脚部10iの外側に確実に入り込んで、脚部10iの折り曲げが行われる。
【0296】
<クリンチ終了>
図51及び
図63に示す位置に操作ハンドル部9が押されると、プッシャ60とスライド部材54が後退する動作が継続して行われる。折り曲げ機構5では、
図43(c)、
図44(c)と、
図45(e)及び
図75に示すように、操作ハンドル部9が押される力で押し上げ部材51が矢印R1方向へ後退する動作で、押し上げ部材51により貼り合わせ50Sが押し上げられることで、ステープル10の重ねられた一対の脚部10iの中央付近が押圧される。これにより、
図11に示すように、一対の脚部10iが接着部10fで貼り合わされ、クリンチが終了する。切断・成型機構3は、
図87に示す下端位置まで下降しており、作動しない。
【0297】
<リターン動作開始>
クリンチが終了して、操作ハンドル部9が押し上げられると、スライド部材54の前進に連動して抜き刃ガイド23が抜き刃21の間にバネ23aに付勢されて前進すると共に、押し出し部材52が抜き刃21から外側に退避する。更に、プッシャ60が前進する。プッシャ60が前進する動作では、上述したように、送り爪61が連結ステープル10aと係合し、連結ステープル10aの前方への搬送が開始される。
【0298】
貫通機構2では、抜き刃21が綴じ用紙Pから抜ける方向に上昇する。切断・成型機構3では、貫通機構2の動作と連動して、カッタープレート30がフォーミングプレート31に対して上昇した退避位置に移動した後、フォーミングプレート31がカッタープレート30と一体的に上昇する。フォーミングプレート31が上昇すると、成型されたステープル10がステープル成型部33から抜け始める。折り曲げ機構5では、貫通機構2の上昇により押し上げ部材51が前進し、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sが下降する。
【0299】
また、カッタープレート30及びフォーミングプレート31の上昇に伴って、開き押さえ部材34が本体部8に形成される閉カム面84bに当接し、内側方向へ閉じ始める。
【0300】
<リターン動作>
操作ハンドル部9が押し上げられると、プッシャ60が前進する動作が継続して行われる。スライド部材54は、リンク92の長穴部92bからピン54aが離れ、前進が停止する。
【0301】
貫通機構2では、抜き刃21が綴じ用紙Pから抜ける方向に上昇する。切断・成型機構3では、貫通機構2の動作と連動して、カッタープレート30及びフォーミングプレート31が上昇する動作で、開き押さえ部材34が閉じて、成型されたステープル10の脚部10iを、外側から保持し、開くことを防止する。
【0302】
操作ハンドル部9が
図52に示すように待機位置に戻ると、貫通機構2では抜き刃21が綴じ用紙Pから抜け、綴じられた綴じ用紙の取り出しが可能になる。また、プッシャ60が前進する動作で、切断・成型機構3で切断及び成型された次位のステープル10が貫通機構2に搬送されて、一対の抜き刃21の間に支持されると共に、その次の連結ステープル10aが切断・成型機構3に搬送される。
【0303】
<本実施の形態のステープラの他の構成例>
図88及び
図89は、本実施の形態のステープラの他の構成例を示す斜視図である。ステープラ1は、本体部8の底面に蓋部85を備える。蓋部85は、本体部8に対して図示しない軸を支点とした回転動作で開閉可能に設けられる。
【0304】
ステープラ1は、蓋部85を開けることで、本体部8内の機構が露出するように構成される。本実施の形態のステープラ1は、操作ハンドル部9の力をクリンチャカム57及びクリンチャレバー58等のカム機構の駆動力伝達手段を利用して折り曲げ機構5に伝達して、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sを作動させる構成である。
【0305】
このため、用紙載置台80の下側に設けられた第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L、貼り合わせ部材50S及び押し上げ部材51と、クリンチャカム57及びクリンチャレバー58を分離、係合可能な構成とすることができる。
【0306】
そこで、本例では、折り曲げ機構5において、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L、貼り合わせ部材50Sと、押し上げ部材51が、蓋部85に取り付けられる。押し上げ部材51に駆動力を伝達するクリンチャレバー58と、
図49に示すクリンチャカム57は、本体部8側に取り付けられる。
【0307】
押し上げ部材51とクリンチャレバー58は、蓋部85の開閉で離合し、蓋部85を閉じると、クリンチャレバー58の係合部58bが押し上げ部材51と係合し、蓋部85を開けると、係合が外れるように構成される。これにより、蓋部85を開閉する動作で、押し上げ部材51とクリンチャレバー58の係合の有無が切り替えられる。
【0308】
ステープラ1は、蓋部85を開けることで、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L、貼り合わせ部材50Sと、押し上げ部材51が露出することで、ステープル10が詰まった場合等に、容易に除去が可能となる。また、ステープル10には脚部10i同士を貼り合わせる接着部10fが設けられており、接着剤の成分が折り曲げ機構5を構成する部材等に付着する可能性があるが、蓋部85を開けることで、第1の折り曲げ部材50R、第2の折り曲げ部材50L及び貼り合わせ部材50Sを露出させることで、付着した接着剤成分を容易に除去することができる。また、綴じ用紙Pを抜き刃21が貫通することで発生する紙粉等を、蓋部85を開けて本体部8内から除去することができる。
【0309】
更に、ステープラ1は、本体部8の底面に収納部86を備える。収納部86は、蓋部85で開閉される空間を設けて構成され、例えば、ピンセットが収納される。これにより、ステープル10が詰まった場合等に、ピンセットを使って除去を行うことが可能となる。