特許第6032001号(P6032001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032001
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/371 20150101AFI20161114BHJP
   H01Q 5/321 20150101ALI20161114BHJP
   H01Q 5/328 20150101ALI20161114BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20161114BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H01Q5/371
   H01Q5/321
   H01Q5/328
   H01Q1/38
   H01Q13/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-284888(P2012-284888)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-127946(P2014-127946A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】行本 真介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 嶺
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124248(WO,A1)
【文献】 特開2012−142775(JP,A)
【文献】 特開2012−114667(JP,A)
【文献】 特開2005−020266(JP,A)
【文献】 特開2005−175665(JP,A)
【文献】 特開2005−197864(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/134701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
該基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランドパターン、第1エレメント及び第2エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、前記グランドパターンに近接した基端側に給電点が設けられて前記グランドパターンから離間する方向に延在する第1延在部と、該第1延在部の先端から前記グランドパターンに沿って延在する第2延在部とを有し、
前記第2エレメントが、前記第1延在部の途中に基端が接続され前記第2延在部に沿って延在する第3延在部と、該第3延在部の先端から前記グランドパターンに向けて延在し先端が該グランドパターンに接続された第4延在部とを有し、
前記第1延在部の基端が前記グランドパターンに接続され
前記第1エレメントが、前記第2延在部の先端に第4受動素子を介して基端が接続され前記グランドパターンから離間する方向に一旦延在してから前記第2延在部の基端側に向けて前記第2延在部に沿って延在する第5延在部を有し、
前記第1延在部は、その基端部に先端側よりも幅広とされた幅広部を有し、
前記幅広部が、前記給電点よりも前記第4延在部側において前記グランドパターンに接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記第2延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
前記第1延在部の途中に第1受動素子が接続され、
前記第3延在部及び前記第4延在部の少なくとも一方に第2受動素子が接続されていると共に、前記第1延在部の基端が第3受動素子を介して前記グランドパターンに接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機器において、アンテナの共振周波数を複共振化するためには、放射電極と誘電体ブロックとを備えたアンテナや、スイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置が提案されている。
例えば、誘電体ブロックによる従来技術としては、特許文献1では、放射電極を樹脂成型体に形成し、さらに誘電体ブロックを接着剤で一体化することで高効率を得る複合アンテナが提案されている。
【0003】
また、スイッチ,制御電圧源を用いた従来技術としては、特許文献2では、第1の放射電極と、第2の放射電極と、第1の放射電極の途中部と第2の放射電極の基端部との間に介設され、第2の放射電極を第1の放射電極と電気的に接続又は切断させるためのスイッチと、を備えるアンテナ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81000号公報
【特許文献2】特開2010−166287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載のような誘電体ブロックによる技術では、放射電極を励振する誘電体ブロックを使用しており、機器毎に誘電体ブロック、放射電極パターン等の設計が必要になり、その設計条件によってアンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。また、放射電極が樹脂成型体の表面に形成されているため、樹脂成型体上に放射電極パターンを設計する必要があり、実装する通信機器やその用途に応じて、アンテナ設計、金型設計が必要になり、大幅なコストの増大を招いてしまう。さらに、誘電体ブロックと樹脂成型体とを接着剤で一体化するので、接着剤のQ値以外にも接着条件(接着剤の厚み、接着面積等)により、アンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。
また、特許文献2に記載のようなスイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置の場合、スイッチで共振周波数を切り替えを行うために、制御電圧源の構成やリアクタンス回路等が必要であり、アンテナ構成が機器毎に複雑化し、設計の自由度が無く、容易なアンテナ調整が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できると共に小型化や薄型化が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、該基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランドパターン、第1エレメント及び第2エレメントとを備え、前記第1エレメントが、前記グランドパターンに近接した基端側に給電点が設けられて前記グランドパターンから離間する方向に延在する第1延在部と、該第1延在部の先端から前記グランドパターンに沿って延在する第2延在部とを有し、前記第2エレメントが、前記第1延在部の途中に基端が接続され前記第2延在部に沿って延在する第3延在部と、該第3延在部の先端から前記グランドパターンに向けて延在し先端が該グランドパターンに接続された第4延在部とを有し、前記第1延在部の基端が前記グランドパターンに接続されていることを特徴とする。
【0008】
このアンテナ装置では、基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された上記のグランドパターン、第1エレメント及び第2エレメントを備えているので、各エレメント間やグランドパターンとの間の各浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化させることができる。
特に、第2エレメントが、第1延在部の途中に基端が接続され第2延在部に沿って延在する第3延在部と、該第3延在部の先端からグランドパターンに向けて延在し先端が該グランドパターンに接続された第4延在部とを有しているので、第2エレメントとグランドパターンと第1延在部とにより開口パターン部が形成されて第1エレメントを主とする共振周波数とは別の共振周波数を得ることができる。
また、形成された開口パターン部内に発生する浮遊容量によって人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。
【0009】
第2の発明に係るアンテナ装置は、第1の発明において、前記第2延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子によってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
また、アンテナ素子と第3延在部との間の浮遊容量により、アンテナ素子自体が直接グランドパターンとの間の浮遊容量を発生することが無く、アンテナ素子とグランドパターンとの間の距離による依存性が少なくなると共に、グランドパターンへの高周波電流を効率的に流すことが可能になる。
【0010】
第3の発明に係るアンテナ装置は、第1又は第2の発明において、前記第1延在部の途中に第1受動素子が接続され、前記第3延在部及び前記第4延在部の少なくとも一方に第2受動素子が接続されていると共に、前記第1延在部の基端が第3受動素子を介して前記グランドパターンに接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、形成された開口パターン部に接続された第2受動素子と第3受動素子とにより、並列共振が発生するため、高インピーダンスにできると共に、第1エレメントを主として得られる共振周波数に対するグランドパターンとの間の影響を低減することが可能になる。なお、形成される開口パターン部の開口面積は広い方が望ましい。
【0011】
また、アンテナ素子および受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
また、基板本体の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子の選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0012】
第4の発明に係るアンテナ装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記第1エレメントが、前記第2延在部の先端に第4受動素子を介して基端が接続され前記第2延在部の基端側に向けて前記第2延在部に沿って延在する第5延在部を有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1エレメントが、第2延在部の先端に第4受動素子を介して基端が接続され第2延在部の基端側に向けて第2延在部に沿って延在する第5延在部を有しているので、第4受動素子に高インピーダンスとなるものを選択することで、第5延在部の基端から第4受動素子との間で、別の共振周波数を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された上記のグランドパターン、第1エレメント及び第2エレメントを備えているので、各エレメント間及びグランドパターンとの間などで浮遊容量が発生し、少なくとも2つ以上の共振周波数による複共振化が可能になる。
特に、第2エレメントとグランドパターンとにより開口パターン部が形成されて第1エレメントを主とする共振周波数とは別の共振周波数を得ることができる。
また、それぞれのエレメントに接続するアンテナ素子および受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能になると共に、小型化および高性能化が可能になる。
したがって、本発明のアンテナ装置は、多様な用途や機器に対応した複共振化が容易に可能になると共に、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、各エレメントの位置関係を示す平面図である。
図2】本実施形態において、各共振周波数に寄与する主な領域を示す配線図である。
図3】本実施形態において、アンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
図4】本実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)および底面図(d)である。
図5】本実施形態において、3共振化した際のVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
図6】本実施形態において、アンテナ装置の放射パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1及び図2に示すように、絶縁性の基板本体2と、該基板本体2の表面にそれぞれ銅箔等の金属箔でパターン形成されたグランドパターンGND、第1エレメント3及び第2エレメント4とを備えている。
上記第1エレメント3は、グランドパターンGNDに近接した基端側に給電点FPが設けられてグランドパターンGNDから離間する方向に延在する第1延在部E1と、該第1延在部E1の先端からグランドパターンGNDに沿って延在する第2延在部E2とを有している。
また、上記第2延在部E2の途中には、誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されている。
なお、グランドパターンGNDに沿った方向とは、対向するグランドパターンGNDの端辺に沿った方向である。
【0017】
上記第2エレメント4は、第1延在部E1の途中に基端が接続され第2延在部E2に沿って延在する第3延在部E3と、該第3延在部E3の先端からグランドパターンGNDに向けて延在し先端が該グランドパターンGNDに接続された第4延在部E4とを有している。すなわち、第2エレメント4とグランドパターンGNDと第1延在部E1とで囲まれた開口部が形成されており、第2エレメント4とグランドパターンGNDと第1延在部E1とにより開口パターン部を構成している。
【0018】
また、第1延在部E1の途中には、第1受動素子P1a,P1bが接続されている。さらに、第3延在部E3及び第4延在部E4に第2受動素子P2a,P2bが接続されていると共に、第1延在部E1の基端が第3受動素子P3を介してグランドパターンGNDに接続されている。すなわち、第3延在部E3の基端と第1延在部E1との間に第2受動素子P2aが接続されていると共に、第4延在部E4の基端と第3延在部E3の先端との間に第2受動素子P2bが接続されている。このように、2つの第2受動素子P2a,P2bと第3受動素子P3とにより、π型の共振器を構成している。
【0019】
また、第1エレメント3は、第2延在部E2の先端に第4受動素子P4を介して基端が接続され第2延在部E2の基端側に向けて第2延在部E2に沿って延在する第5延在部E5を有している。なお、第5延在部E5は、基端部がグランドパターンGNDから離間する方向に第4受動素子P4から一旦延在してから折れ曲がって第2延在部E2に沿った方向に延在している。すなわち、第5延在部E5は、第4受動素子P4を起点に第2延在部E2から折り返されて延在している。
【0020】
上記第1延在部E1は、その基端部に先端側よりも幅広とされた幅広部E1aを有し、該幅広部E1aの先端部に第3延在部E3が第2受動素子P2aを介して接続されている。また、幅広部E1の基端における給電点FPと第3受動素子P3との接続点は互いに離間して配されている。
【0021】
上記基板本体2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、ガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板を採用している。
なお、上記給電点FPは、それぞれ高周波回路(図示略)の給電点に接続される。また、グランドパターンGNDの領域には、高周波回路が実装される。
上記各受動素子は、例えばインダクタ、コンデンサ、抵抗又はジャンパー線が採用される。
【0022】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図4に示すように、セラミックス等の誘電体21の表面にAg等の導体パターン22が形成されたチップアンテナである。
このアンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン等が異なる素子を選択しても構わない。また、所望の周波数によっては、アンテナ素子ATに使用している誘電体21を、磁性体、若しくは誘電体と磁性体とを混合した複合材料としても構わない。
【0023】
上記第1エレメント3と第2エレメント4とは、互いの間の浮遊容量と、グランドパターンGNDとの間の浮遊容量とを発生可能に、互いに間隔を空けて延在している。
すなわち、図3に示すように、第5延在部E5とアンテナ素子ATとの間の浮遊容量Caと、第5延在部E5と第2延在部E2との間の浮遊容量Cbと、第2延在部E2とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Ccと、アンテナ素子ATと第3延在部E3との間の浮遊容量Cdと、第2延在部E2と第3延在部E3との間の浮遊容量Ceと、第3延在部E3とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Cfとが発生可能である。
【0024】
次に、本実施形態のアンテナ装置における各共振周波数について、図を参照して説明する。
【0025】
本実施形態のアンテナ装置1では、図5に示すように、周波数の低い方から、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2及び第3の共振周波数f3の順に3つの周波数帯に複共振化される。
上記第1の共振周波数f1は、第1エレメント3とアンテナ素子ATと第1受動素子P1a,P1b及び第2受動素子P2a,P2bと浮遊容量とで決定される。また、上記第2の共振周波数f2は、アンテナ素子ATと第1受動素子P1a,P1bと第1延在部E1及び第2延在部E2と浮遊容量とで決定される。さらに、上記第3の共振周波数f3は、開口パターン部を構成する第2エレメント4及びグランドパターンGNDと第2受動素子P2a,P2bと浮遊容量とで決定される。
【0026】
以下、これら共振周波数について、より詳しく説明する。
「第1の共振周波数f1について」
上記第1の共振周波数f1の周波数は、第1エレメント3、アンテナ素子AT、第1受動素子P1a,P1b、第4受動素子P4及び浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ceにより設定および調整することができる。
また、第1の共振周波数f1のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ceの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1a,P1b及び第4受動素子P4の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第1の共振周波数f1は、主に図2中の破線A1の部分で調整される。
【0027】
「第2の共振周波数f2について」
上記第2の共振周波数f2の周波数は、アンテナ素子AT、第1延在部E1、第2延在部E2、第1受動素子P1a,P1b及び浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ceにより設定および調整することができる。
また、第2の共振周波数f2のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ceの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1a,P1bの選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第2の共振周波数f2は、主に図2中の一点鎖線A2の部分で調整される。
【0028】
「第3の共振周波数f3について」
上記第3の共振周波数f3の周波数は、第1延在部E1、第2エレメント4、グランドパターンGND、第2受動素子P2a,P2b及び浮遊容量Cd,Cfにより設定および調整することができる。
また、第3の共振周波数f3のインピーダンス調整は、浮遊容量Cd,Cfの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第2受動素子P2a,P2bの選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第3の共振周波数f3は、主に図2中の二点鎖線A3の部分で調整される。
【0029】
なお、各共振周波数f1,f2,f3における最終的なインピーダンス調整は、第3受動素子P3の選択によりグランドパターンGND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、フレキシブルに行うことが可能である。
【0030】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、基板本体2の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成された上記のグランドパターンGND、第1エレメント3及び第2エレメント4を備えているので、各エレメント間やグランドパターンGNDとの間などの各浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化させることができる。
【0031】
特に、第2エレメント4が、第1延在部E1の途中に基端が接続され第2延在部E2に沿って延在する第3延在部E3と、該第3延在部E3の先端からグランドパターンGNDに向けて延在し先端が該グランドパターンGNDに接続された第4延在部E4とを有しているので、第2エレメント4とグランドパターンGNDと第1延在部E1とにより開口パターン部が形成されて第1エレメント3を主とする共振周波数とは別の共振周波数を得ることができる。
また、形成された開口パターン部内に発生する浮遊容量によって人体や周辺部品の影響を低減することが可能になる。
【0032】
また、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATによってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
さらに、アンテナ素子ATと第3延在部E3との間の浮遊容量Cdにより、アンテナ素子AT自体が直接グランドパターンGNDとの間の浮遊容量を発生することが無く、アンテナ素子ATとグランドパターンGNDとの間の距離による依存性が少なくなると共に、グランドパターンGNDへの高周波電流を効率的に流すことが可能になる。
【0033】
また、形成された開口パターン部に接続された第2受動素子P2a,P2bと第3受動素子P3とにより、並列共振が発生するため、高インピーダンスにできると共に、第1エレメント3を主として得られる共振周波数に対するグランドパターンGNDとの間の影響を低減することが可能になる。
また、アンテナ素子および各受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【0034】
また、基板本体2の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナである各アンテナ素子の選択によって、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0035】
また、第1エレメント3が、第2延在部E2の先端に第4受動素子P4を介して基端が接続され第2延在部E2の基端側に向けて第2延在部E2に沿って延在する第5延在部E5を有しているので、第4受動素子P4に高インピーダンスとなるものを選択することで、第5延在部E5の基端から第4受動素子P4との間で、別の共振周波数を得ることが可能である。
【実施例】
【0036】
次に、本実施形態のアンテナ装置を実際に作製した実施例について、VSWR特性(電圧定在波比)を測定した結果と、各共振周波数での放射パターンについて測定した結果とを、図5及び図6を参照して説明する。
【0037】
なお、これらの測定においては、各受動素子は以下のものを用いた。
第1受動素子P1a:L=2.7nHのインダクタ
第1受動素子P1b:L=3.3nHのインダクタ
第2受動素子P2a:C=0.4pFのコンデンサ
第2受動素子P2b:C=0.5pFのコンデンサ
第3受動素子P3 :L=2.7nHのインダクタ
第4受動素子P4 :L=22nHのインダクタ
【0038】
この測定結果からわかるように、第1〜第3の共振周波数f1〜f3が、以下の表1に示すように、良好な帯域幅を有して得られている。
なお、第1の共振周波数f1の周波数帯は1575MHz、第2の共振周波数f2の周波数帯は2442MHz、第3の共振周波数f3の周波数帯は5470MHzである。
【表1】
【0039】
次に、上記実施例のアンテナ装置について、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2及び第3の共振周波数f3での放射パターンについて測定した結果を、図6に示す。
なお、第2延在部E2の基端から先端に向かう延在方向(アンテナ素子ATの延在方向)を−Y方向とし、第1延在部E1の基端から先端に向かう延在方向を−X方向とし、基板本体2表面に対する垂直方向をZ方向とした。この際のZX面に対する垂直偏波、水平偏波及び電力利得を測定した。
【0040】
この結果、ZX面における第1の共振周波数f1の平均電力利得は−5.6dBiであり、第2の共振周波数f2の平均電力利得は−5.7dBiであり、第3の共振周波数f3の平均電力利得は−2.9dBiであった。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、第2延在部にアンテナ素子を設けているが、第5延在部にアンテナ素子を設けてエレメントの短縮化を行い、装置全体の小型化を図っても構わない。
【0042】
また、上述したようにアンテナ素子を接続してエレメントの一部とすることが好ましいが、アンテナ素子を接続せずに、銅箔等の金属箔のみで延在した第2延在部でも構わない。この際、高インピーダンス化するために、第2延在部の少なくとも一部を他の部分よりも幅狭の細いパターンにしたり、ジグザグに折り返しながら全体として一定方向に延在するミアンダパターンとしたりすることが好ましい。
さらに、基板サイズに余裕がある場合には、上記エレメントの一部を線状若しくは板状の金属を折り返した形状のパターンに置き換えても構わない。また、同一の基板本体の表裏面に対してスルーホールを用いて、螺旋状などの形状に旋回させたパターンにしても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1…アンテナ装置、2…基板本体、3…第1エレメント、4…第2エレメント、AT…アンテナ素子、E1…第1延在部、E2…第2延在部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、GND…グランドパターン、P1a,P1b…第1受動素子、P2a.P2b…第2受動素子、P3…第3受動素子、P4…第4受動素子、FP…給電点
図1
図2
図3
図4
図5
図6