【文献】
齊藤 晋聖 , 松井 隆 , 坂本 泰志 , 小柴 正則 , 冨田 茂,マルチコア空孔アシストファイバによるコア多重数の高密度化,電子情報通信学会総合大会講演論文集,日本,社団法人電子情報通信学会,2010年 3月 2日,通信(2),p.523,B-13-28
【文献】
竹永 勝宏 , 大森 信吾 , 後藤 龍一郎 , 谷川 庄二 , 松尾 昌一郎,低曲げ損失ファイバの耐パワー特性,電子情報通信学会総合大会講演論文集,日本,社団法人電子情報通信学会,2008年 3月 5日,通信(2),p.306,B-10-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コアピッチΛは28.03μm以上であり、かつ、前記複数のコアの前記第2のコア部をそれぞれ取り囲むトレンチ層同士は接触していないことを特徴とする請求項2記載のマルチコア光ファイバ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るマルチコア光ファイバの各実施形態を、
図1〜
図19を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
まず、
図1は、従来の光ファイバケーブルの構造を示し、特に、
図1(a)は当該光ファイバケーブルの断面図、
図1(b)は当該光ファイバケーブルの斜視図である。
図2は、
図1の光ファイバケーブルに適用可能なマルコアファイバの一構造例を示す斜視図であり、
図3は、
図2に示されたマルチコアファイバのI−I線に沿った断面構造を示す図及び各コア近傍の屈折率プロファイルである。
【0028】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態に係る光ファイバケーブル300は、中心部材310と、中心部材310に所定ピッチで巻きつけられた複数の光ファイバ100と、その巻きつけられた状態を保持するように複数の光ファイバ上に巻きつけられた押え巻き250と、押え巻き250の周りを覆う外被200を備える。光ファイバ100は、マルチコアファイバ100Aと、マルチコアファイバ100Aを全体的に覆った樹脂被覆130からなる。複数の光ファイバ100それぞれは、その長手方向に沿って所定のピッチで中心部材310に巻きつけられることにより、一定の曲率半径の曲げが付与される。外被200は、光ファイバ100を外力から保護するように、押え巻き250の全体を覆っている。中心部材310は、抗張力線のような金属材料であっても、外被200の収縮に抵抗する抗収縮材であってもよい。なお、
図1(b)は、光ファイバ100は、記載簡略のため、1芯のみ記載しているが、実際には当該光ファイバケーブル300に含まれる全光ファイバ100が中心部材310に巻かれている。なお、本発明の光ファイバケーブルは上記構造に限定されるものではなく、例えば、円柱状の部材表面に螺旋状にスロット(溝)を形成し、そのスロットにマルチコアファイバを内蔵したテープ心線を這わせ、スロットにテープ心線を内蔵した円柱状の部材表面を更に押え巻きや外被で覆うスロットケーブルでも、また、スロットの螺旋のピッチを調整することでもファイバに一定以下の曲率半径の曲げを付与することができる。
【0029】
光ファイバケーブル300に適用可能なマルチコアファイバ100Aは、
図2及び
図3(a)に示すように、所定軸AXに沿ってそれぞれ伸びた複数のコア110A1、100B1〜110B3、110C1〜110C3(
図2及び
図3(a)に示す例では7本のコア)と、これら7本のコアを一体的に取り囲んだクラッド領域120を備える。
図2及び
図3(a)に示すマルチコアファイバ100Aにおいて、コア配置は、断面(所定軸AXに直交する面)の中心にコア110A1が配置され、このコア110A1を中心にして、コア110B1〜110B3とコア110C1〜110C3が、中心間距離(コア間隔)がDになるように配置されている。
【0030】
なお、コア110A1、110B1〜110B3、110C1〜110C3それぞれは、同一構造の屈折率プロファイルを有するのが好ましい。具体的には、
図3(a)中の各コアの屈折率プロファイルの概略の一例を
図3(b)に示す。
図3(b)に示す例では、コア110A1、110B1〜110B3、110C1〜110C3それぞれの近傍における屈折率プロファイルは、ステップインデックス型の屈折率プロファイル(クラッド領域120に対する各コアの比屈折率差Δ)である。
【0031】
次に、マルチコアファイバ100Aにおける各コアの実効屈折率の設定方法について説明する。
【0032】
2つのコア間の電力移行率Fは、以下の式(24)で表される。
【数24】
ただし、κはコア間の結合係数で、β
nはコアnの伝搬定数である。
【0033】
また、結合長L(1つのコアnに入射したときに他方のコアmのパワーが最大になる距離)は、以下の式(25)で表される。
【数25】
【0034】
ここで、上記非特許文献1によれば、Fを小さくする、又は、Lを大きくすることでクロストークが小さくできるが、クラッド径を125μmとし、コアΔが0.4%である一般的なコアが採用されたマルチコアファイバでは、Fを大きいままにLだけを十分長くし、多数のコアをクラッド内に納めることは難しい。
【0035】
そこで、Fを小さくする必要がある。Fを小さくためにはψを大きくすること、つまりコア間の伝搬定数差、言い換えればコア間の実効屈折率の差を大きくすることが必要となる。上記非特許文献1では、これについてシミュレーションを交えて考察している。それによれば、隣接するコア同士のコア間隔Dが30μm以上であり、かつ、この隣接するコア間においてコアΔが0.005%違っていれば十分クロストーク低減できるとしている。そのため、上記非特許文献1は、コアΔが、それぞれ0.38%、0.39%、0.40%の3種類のいずれかに属し、かつ、隣接するコア同士のコア間隔Dが40μmになるよう配置された7本のマルチコアファイバを提案している。
【0036】
しかしながら、上記非特許文献1の考察は、マルチコアファイバの曲げを考慮していない。そのため、マルチコアファイバの曲げ状態によって実際にはクロストークが非常に大きくなってしまう場合もかなり含まれている。
【0037】
マルチコアファイバを曲げると、当該マルチコアファイバ内の位置によって各コアの曲げ径が極僅かに異なる。そのため、各コアの光路差も異なってくる。このように曲げられたマルチコアファイバを直線導波路として扱う場合、光路長差に基づく屈折率として、等価屈折率を用いる必要がある。等価屈折率は、上記非特許文献2に記載されたように、実際の屈折率に、(1+r/R)を掛けることで求められる。ただし、Rは基準とするコア(基準コア)の曲率半径、rは曲げ径方向の基準コアからのずれ量である(
図4(a)参照)。どのコアを基準としてもよい。曲がったマルチコアファイバの実際の屈折率をn
0(r)、直線導波路換算の等価屈折率をn
1(r)とするとき、実際の屈折率と等価屈折率との比屈折率差である等価比屈折率差Δ
eqは、パラメータrとパラメータRを用いて、以下の式(26)で表される。
【数26】
【0038】
図4(b)は、曲げに関するパラメータr、パラメータRを変更したときに上記式(26)から導かれる等価比屈折率差Δ
eqを示す表である。なお、以下の説明では、特に言及がない場合、
図1、2に示す中心コア110A1を基準コアとして考える。また、
図5(a)は、
図4(b)の表におけるパラメータrと等価比屈折率差Δ
eqとの関係を示し、
図5(b)は、パラメータ(1/R)と等価比屈折率差Δ
eqとの関係を示す。
【0039】
なお、
図5(a)において、グラフG511はR=140mmにおけるパラメータrとΔ
eqとの関係、グラフG512はR=60mmにおけるパラメータrとΔ
eqとの関係、グラフG513はR=30mmにおけるパラメータrとΔ
eqとの関係、グラフG514はR=10mmにおけるパラメータrとΔ
eqとの関係を示す。また、
図5(b)において、グラフG521はパラメータr=40μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG522はパラメータr=30μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG523はパラメータr=20μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG524はパラメータr=10μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG525はパラメータr=0μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG526はパラメータr=−10μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG527はパラメータr=−20μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG528はパラメータr=−30μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係、グラフG529はパラメータr=−40μmにおけるパラメータ(1/R)とΔ
eqとの関係を示す。
【0040】
ここで、パラメータr=40μmだと、パラメータR=140mmでも、Δ
eqは、±0.02%を超える。なお、上述の非特許文献1で提案されている比屈折率差Δが0.38%、0.39%、0.40%の3種類のコアで構成され、隣接するコア同士のコア間隔Dが40μmになるよう配置された7本のコアを含むマルチコアファイバでは、異なる種類のコア同士におけるコアΔの差は0.01%であるから、実効屈折率同士の比屈折率差Δ
effは、0.01%以下である。このことから、上記非特許文献1のマルチコアファイバでは、パラメータR=140mmの曲げを加えただけで、Δ
eqが、Δ
effと逆転してしまうことが分かる。すなわち、上記非特許文献1のマルチコアファイバでは、僅かな曲げでも、異なる種類のコア同士における実効屈折率の等価屈折率間の比屈折率差の絶対値が非常に小さくなることが生じるため、各コア間のクロストークが大きくなり得ることが分かる。
【0041】
マルチコアファイバをボビンに巻きつける場合を考えても、当該マルチコアファイバは製造時のバラツキや巻き取り時のバラツキによってどうしても回転してしまうので、長手方向に沿ってコア配置が回転してしまう。このとき基準コアから各コアへのコア間隔Dは長手方向に一定でも当該マルチコアファイバの長手方向に沿った位置によって上記パラメータrがコア間隔Dの範囲で変動し、異なる種類のコア同士における実効屈折率間の等価比屈折率の差が小さくなる箇所が当該マルチコアファイバの長手方向に沿って分布してしまう。このような状態を図
6に示す。ただし、図
6(b)は、長手方向に一様に曲げられた状態で、かつ、光ファイバ内でコアの位置が光ファイバ断面内で円周方向に等間隔に配列された状態で、円周方向のコア位置が長手方向に一定周期で回転している設定での等価屈折率の変動を示している。
【0042】
図6は、曲げが加えられたときのマルチコアファイバにおける各コアの実効屈折率と実効屈折率の等価屈折率を示す図であり、ボビンに巻かれた状態と同じようにマルチコアファイバが曲げられている場合の等価屈折率換算した実効屈折率の一例である。特に、
図6では、
図1に示すマルチコアファイバ100Aにおける各コアの実効屈折率と実効屈折率の等価屈折率を示す。
図6(a)は、マルチコアファイバの長手位置と各コアの実効屈折率の関係を示し、グラフG611は、当該マルチコアファイバ100Aの光軸AX上に位置する中心コア(基準コア)110A1の実効屈折率、グラフG612は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110B1〜110B3の実効屈折率、グラフG613は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110C1〜110C3の実効屈折率を、それぞれ示す。また、
図6(b)は、マルチコアファイバの長手位置と各コアにおける実効屈折率の等価屈折率を示し、グラフG621は、基準コア110A1の実効屈折率の等価屈折率、グラフG622は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110B1の実効屈折率の等価屈折率、グラフG623は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110B2の実効屈折率の等価屈折率、グラフG624は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110B3の実効屈折率の等価屈折率、グラフG625は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110C1の実効屈折率の等価屈折率、グラフG626は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110C2の実効屈折率の等価屈折率、グラフG627は、基準コア110A1の周辺に位置するコア110C3の実効屈折率の等価屈折率を、それぞれ示す。
【0043】
上述の考察に基づいて、曲げに起因した基準コアからのずれ量rを、中心コアを基準コアとし、中心コアから各コアへのずれ量rと考えていたものを、異なる種類のコア間に置き換えて考える。この場合、マルチコアファイバの断面において異なる種類のコア同士のコア間隔をD、クロストーク上の許容される曲率半径をRとするとき、異なる種類のコア同士の全ての対について、一の種類のコアにおける実際の実効屈折率(等価屈折率換算していない実際の実効屈折率)と別の種類のコアにおける実際の実効屈折率との比屈折率差Δ
effが、少なくとも以下の式(27)の条件を満たす必要がある。
【数27】
ただし、上記式(27)中のαは、曲げを考慮せずに設計された当該マルチコアファイバにより十分低いクロストークが実現できる場合の、異なる種類のコア(屈折率が異なる)同士における実効屈折率間の比屈折率差である。また、上記式(16)は、Δ
eff>0となるように低い実効屈折率に対する高い実効屈折率の比屈折率差を取っており、Δ
eq>0となるように基準コアをとっている。
【0044】
なお、上記非特許文献1によれば、隣接するコア同士のコア間隔D=30μmであればコアΔの差は0.005%で十分であることから、上記パラメータαも、0.005%で十分であり、比屈折率差Δ
effは、百分率表示で、以下の式(28)を満たせばよい。これにより、曲率半径R以上の曲げが加えられてもコア間のクロストークを低く抑えること
ができる。
【数28】
【0045】
また、複数のコアで構成されるマルチコアファイバでは、異なる種類のコアが複数本ずつ存在する場合がある。このようなマルチコアファイバでは、同じ種類のコア同士は、クロストークが低くなるように十分なコア間隔Dが確保された状態で配置されている。したがって、同じ種類のコア同士の最短コア間隔をD
minとすると、異なる種類のコア同士のコア間隔DがD
minを超えているとき、これらコア同士における実効屈折率間の比屈折率差は考慮する必要がない(実効屈折率の等しい同じ種類コアでもクロストーク十分低いため)。ただし、コア間隔DがD
min未満となる異なる種類のコア同士の全組み合わせについては、少なくとも、以下の式(29)を満たす必要がある。これは、コア間隔DがD
minより短い異なる種類のコア同士の組み合わせにおいて、実効屈折率の等価屈折率換算が等しくならないためである。これにより、曲率半径R以上の曲げが加えられてもコア間のクロストークを低く抑えることができる。
【数29】
【0046】
ところが、上述のようなマルチコアファイバがパラメータR=30mmを許容する場合、コア間隔D=30μmとすると比屈折率差Δ
effは0.105%以上でなければならない(Δ
eff≧0.0105%)。これを実現するのは簡単ではない。すなわち、当該マルチコアファイバ100Aにおけるコア間でコアΔやコア径に大きな差を付けるか、異なる種類のコア間で周囲のクラッドの屈折率に差を持たせるなどの工夫が必要となるからである。
【0047】
コア間クロストークが大きくなるのは、コア間においてコアの実効屈折率の等価屈折率の差が非常に小さくなるからである。しかしながら、その差が一定以下に小さくなる箇所が、当該マルチコアファイバ100Aの長手方向に沿ってごく僅かであれば、コア間クロストークも小さくなると考えられる。
【0048】
そこで、当該マルチコアファイバ100Aにおける複数のコアのうち、コアmの実効屈折率をn
eff−m、コアmを基準としたコアnの実効屈折率の等価屈折率をn
eqeff−nm、コアnとコアmのコア間隔(中心間距離)D
nm、直線mnと当該マルチコアファイバ100Aの曲げ径方向に一致する直線とのなす角度φ
nm(rad)とすると、以下の式(30)の関係が成り立つ。なお、直線mnは、所定軸AXに直交する当該マルチコアファイバ100Aの断面上において、コアmの中心とコアnの中心を結ぶ線を意味する。
【数30】
【0049】
上記式(30)を伝搬定数に置き換えて考えると、β=(2π/λ)n
eff(λは波長、n
effは実効屈折率)なので、以下の式(31)が得られる。
【数31】
ただし、β
nはコアnの伝搬定数、β
eq−nmはコアmを基準に等価屈折率を考慮したコアnの伝搬定数である。
【0050】
このとき、β
eq−nmと
βeq−mmとの差Δβ
nm(比屈折率差ではない)は、以下の式(32)となる。
【数32】
【0051】
マルチコアファイバの長手方向に沿ってΔβ
nmが0に近い値になる割合が少ないほど、コア間クロストークは小さくなると考えられる。ここで、パラメータR=30mmを許容する場合、コアnとコアmのコア間隔D
nm=30μmで、差Δβ
nmが常に0にならないようにするのは簡単ではない。すなわち、
図3(b)に示すように、実効屈折率同士の比屈折率差Δ
effが0.1%を超えるような伝搬定数β
nと伝搬定数β
mの差が必要となるからである。
【0052】
そこで、マルチコアファイバの長手方向に沿ってΔβ
nmの零点は存在するが、各零点でのΔβ
nmの傾きが急峻で、零点の出現頻度が低いことが望ましいと考えられる。特に、各零点でのΔβ
nmの傾きが急峻であることが重要である。
【0053】
図7は、2つのコアを有するマルチコアファイバ(以下、2コアファイバという)の長手方向に沿った、コア間クロストーク(
図7では単に「クロストーク」と表記)の変動を示すグラフであり、具体的には、2つのコアの一方に光強度I
1=1の光を入射した際の他方のコアの光強度I
2の、当該2コアファイバの長手方向に沿った変動である。また、コア間クロストークを(ある非入射コアの強度)/(全コアの強度の合計)と定義した場合、
図7のグラフは、当該2コアファイバの長手方向に沿ったクロストークの変動のグラフと言える。この2コアファイバにおいて、全長に亘って一定の曲げが加えられている。また、当該2コアファイバの長手方向に沿って捻れ(当該2コアファイバの軸廻りの一方向回転)が付与されている。なお、この捻れは、当該2コアファイバを10mで1回転させる。つまり、当該2コアファイバの長手方向の位置をzとするとき、10mにつきΔβ
nm(z)の零点が2つ存在する。なお、
図7において、等間隔で10mに2つの割合で存在するクロストークの急峻な変化は、Δβ
nm(z)の零点である。
【0054】
なお、上述のシミュレーションでは、コア間クロストークの変動を計算したが、より簡単にクロストークの挙動を表す数式を以下に組み立てていく。
【0055】
Δβ
nm(z)の任意零点zにおける、以下の式(33a)で与えられる傾きの逆数は、その零点zを通過する際に、どれだけの長さでΔβ
nm(z)が0近傍にあったかを表す指標とすることができる。そこで、上記任意零点でのコア間のクロストーク量χは、以下の式(33b)を指標として表され、このパラメータlの値が小さいほどコア間のクロストーク量χが小さくなると考えられる。
【数33】
【0056】
また、零点zの極近傍でのみ有意なコア間クロストークが発生していると考える。ここで、上記式(24)及び式(25)を考えた場合、以下の式(34a)の関係から、F=1、L=(π/2)・(1/κ)となる。2つコア同士の結合を考えた場合、F=1、L=(π/2)・(1/κ)の場合、一方のコア1に強度I
1=1の光が入射した場合、他方のコア2の当該2コアファイバの長手方向の位置zにおける強度I
2は、以下の式(34b)となる。
【数34】
【0057】
ここで、更にI
1>>I
2とした場合、Δβ
nm(z)の各零点近傍では、上記式(34b)zを0近傍と見なすことができる。そこで、強度I
2は、以下の式(35)とすることができる。
【数35】
【0058】
さらに、Δβ
nm(z)の零点からずれると、F及びLそれぞれの値も徐々に変化することも含めて考えると、最終的にI
1>>I
2の場合、Δβ
nm(z)の任意零点近傍でのコア間のクロストーク量χは、以下の式(36)で表せるものと考えられる。
【数36】
ただし、αは上記式(33b)と上記式(35)を結び付ける係数である。
【0059】
以下、幾つかのケースについて、コア間のクロストーク量χを求める。
【0060】
上記式(32)中のパラメータのうちzの関数となるのは、θ
nmであり、以下の式(37)に関係が成り立つ場合(ただし、γ
c≠0とする)について考える。
【数37】
【0061】
このとき、2コアファイバの長手方向の位置zが以下の式(38a)で与えられる場合、Δβ
nm(z)=0となり、どの点でも以下の式(38b)で表される関係が成り立ち、また、どの点でもコア間のクロストーク量χは、以下の式(38c)のようになる。
【数38】
【0062】
また、以下の式(39a)で表される関係の場合(ただし、γ
a≧π、γ
f>0とする)、Δβ
nm(z)=0となる、2コアファイバの長手方向の位置z(以下の式(39b))では、以下の式(39c)で表された関係が成り立ち、2コア間のクロストーク量χは、以下の式(39d)となる。
【数39】
【0063】
上記の考察から、2コアファイバにおけるコア間のクロストーク量χを小さくするには、2つのコアnとコアmのコア間隔D
nmを大きくする、パラメータR(2コアファイバへの曲率半径)を小さくする、又は、コアnの伝搬定数β
nとコア
mの伝搬定数β
mの差を小さくする(すなわち、n
eff−nとn
eff−mの差を小さくする)必要がある。特に、コアnとコアmのコア間隔D
nmを大きくすると、コア間の結合係数κも小さくできるので、コア間のクロストーク低減の効果が大きい。また、パラメータγ
cやγ
fを大きくすることでも、コア間のクロストーク量χを小さくすることができる。
【0064】
以上の説明からも分かるように、コア間のクロストーク量の観点からもn
eff−n=n
eff−mであることが望ましく、また、製造上も同一コア構造で製造できることから当該マルチコアファイバ100Aは容易に実現可能である。そこで、以後の説明では、n
eff−n=
neff−mの場合について論ずる。
【0065】
n
eff−n=n
eff−mのときの上記式(38c)は、以下の式(40a)のように表せ、また、上記式(38d)は、以下の式(40b)のように表せる。
【数40】
【0066】
ここで、2コアファイバにおけるコア間のクロストーク量χについて別の方法で考えてみる。簡単の為に、上記式(40a)の場合について考える。
【0067】
緩慢変化包絡線近似による複素電界振幅をAとおくと、コアmからコアnへのモード結合方程式は、以下の式(41)にて示される。
【数41】
【0068】
ここで、光ファイバの捩れがγ
c[rad/m]でとすると、以下の式(42)で示される。
【数42】
ここで、β
m、β
n、D
nm及びRはコアnとコアmの等価実行屈折率がzの位置によっては等しくなり得る関係にあることとする。通常はコアnからコアmへの結合もある為にコアmの複素電界振幅A
mが長手に変動するためコアnの複素電界振幅A
nの解析解を求めることは難しいが、クロストークが十分小さい場合を考えると、A
m は1に近似することができる。この時、以下の式(43)に示す積分が成立する。
【数43】
ここで、上記式(42)及びこの式(42)に含まれる各変数についての付帯条件から考えると、zが0からπ/γ
cに変化する間に、コアn及びコアmの等価実行屈折率が等しくなる点が必ず1点は存在することになる。そこで、クロストーク量χは以下の式(44)で示すことができる。
【数44】
【0069】
上記式(44)をA
n(π/γ
c)について解いた結果を以下の式(45)に示す。
【数45】
【0070】
ここで、β
m=β
nの関係が成り立つとすると、上記式(45)は以下の式(46)のように書き換えることができる。
【数46】
【0071】
さらに、上記非特許文献2に記載された式(以下の式(47))の関係を用いると、上記式(46)は以下の式(48)のように変形することができる。
【数47】
【数48】
【0072】
ここで、上記式(48)の右辺括弧内の虚数項(総和の項)について考えてみる。まず上記式(48)の虚数項は以下の式(49)の関係を利用して変形することができる。
【数49】
【0073】
このとき、右辺の第1項はvに関して奇関数なので0となる。また、右辺第2項はvに関して偶関数なので、上記非特許文献3に記載された式(以下の式(50)を利用して整理していくと、以下の式(51)と示すことができる。
【数50】
【数51】
【0074】
以上の結果、得られた上記式(49)及び上記式(51)を利用すると、上記式(48)は、以下の式(52)のように整理することができる。
【数52】
【0075】
よって、上記式(44)からクロストーク量χは以下の式(53)のように求めることができる。
【数53】
【0076】
ここで、上記式(53)は、上記式(40a)に等しいので、以下の式(54)の結果導くことができる。
【数54】
【0077】
ここで、クロストーク量χについて、上記式(53)の解析解と、モード結合方程式に基づくシミュレーションで求めた値を
図8に示す。
【0078】
波長は1.55μmであり、コアΔは0.34%及び0.4%、Rは60mm、120mm、180mm、240mm及び300mm、D
nmは35μm及び40μmの全ての組み合わせについて計算した結果を示している。解析解とシミュレーション結果とは良く整合しており、解析解の正しさとシミュレーションの正しさが相互に確認できた。
【0079】
ところで、クロストーク量χはコア間の等価伝搬定数差の零点におけるクロストーク変動量であるので、複素電界振幅の変化で考えると、低クロストークという仮定の下では、以下の式(55)の関係が成り立つことが分かる。以下の式(55)におけるA
n(n
zero)は、等価伝搬定数差の零点をn
zero個通過した後のA
nである。φ
randomは各零点に於けるarg(jA
n/A
n)だが、実際上はγ
cやRなどのバラツキによって各零点でランダムな値をとるので以下のように表記している。
【数55】
【0080】
(第1実施形態)
ここで、以下の式(56a)に示す2つの値は、σ
2=χ/2の確率分布に従うので、中心極限定理により、n
zeroが十分大きければ、以下の式(56a)の2つの値は確率論的に独立で、かつ、等しい分散σ
2=(χ/2)×n
zeroを持つ正規分布を確率分布として分布する。n
zeroは本来整数ではあるが、上記式(39c)が成り立つ場合には、以下の式(56b)のように置き換えることができる。
【数56】
【0081】
この場合、σ
2は以下の式(57)を満たす。なお、L
Fはファイバ長である。
【数57】
【0082】
このとき、以下の式(58a)に示す値は、自由度2のカイ二乗分布である式(58b)に従って分布し、さらに累積分布関数は式(58c)となる。
【数58】
【0083】
また、参考までに以下の式(59a)の確率密度関数は、以下の式(59b)となり、最頻値は10・log
102σ
2である。
【数59】
【0084】
ここで、累積分布がPのときのクロストークをXT
Pとすると、以下の式(60)の関係となる。
【数60】
【0085】
また、P以上の確率でクロストークをXT
sにしたい場合、XT
P≦XT
sの関係を満たす必要があるので、以下の式(61a)の関係が得られ、さらにこれを変形することで、以下の式(61b)〜(61d)の関係が得られる。
【数61】
【0086】
ここで、P、XT
s、L
Fを与えることで、各パラメータが満たすべき関係式が明らかになる。同一構造コアが複数設けられたマルチコア光ファイバで、結合係数がK
nm−th以下で、コア間距離がD
nm−th以上になる様にファイバを設計し、ファイバをR
th以下の径で曲げれば、P以上の確率でクロストークをXT
s以下に抑えることができる。
【0087】
ここで、
図9のような7つのコア#1〜#7を有する光ファイバ(以下「7コア光ファイバ」という。)を考える。各コア間の結合係数はコア間隔に対して指数関数的に減少していくので、クロストークを考慮すべきなのは隣接コアだけと考えて良い。この場合、隣接コアの数が最も多いコア1は、周囲に設けられた6つのコアからのクロストークの影響を受ける。このときコアピッチをΛとすると、上記式(61a)〜(61d)は、それぞれ以下の式(62a)〜(62d)に書き換えることができる。なお、コア数が7以上の場合であっても六方格子状にコアが配置されている場合は、考慮すべき式は以下の式(62a)〜(62d)となる。
【数62】
【0088】
このとき、例えば、P=0.9999、Λ=40[μm]、R=200[mm]、β=2π/λ・n
eff、L
F=100[km]、XT
S=0.001、λ=1625[nm]、n
eff=1.444とすると、K≦3.18×10
−4となり、非常に小さなKにする必要があることが分かる。Λを大きくするとK
thが大きくなると共にKの値自体も指数関数的に小さくなっていくが、上述の様にΛが40μm程でもKは非常に小さくする必要があり、これを実現する為には、ステップインデックス型コアのシングルモード光ファイバではコアΔが大きくMFDが小さなファイバになってしまう。
【0089】
ここで、少なくともケーブルカットオフ波長λccとモードフィールド径(MFD)が、ITU−T G.654.Aに準拠し、P=0.9999、R=200[mm]、L
F=100[km]、XT
S=0.001、λ=1625[nm]を満たす構造を探索してみると、
図10に示すようなトレンチ型の光ファイバが望ましい構造の1つであることが見出された。すなわち、各コア部#1〜#7は、第1のコア部111と、第2のコア部112と、トレンチ層113からなり、それぞれクラッド領域120により覆われている。第1のコア部111は、クラッド領域120より高い屈折率を有する。第2のコア部112は、第1のコア部111の周りに設けられ、第1のコア部111と異な
る屈折率を有する。トレンチ層113は、第2のコア部112を囲むように設けられ、クラッド領域120より低い屈折率を有する。また、第1のコア部111の半径をa、第2のコア部112の外径に対する第1のコア部111の外径の比をRa、トレンチ層113の外径に対する第2のコア部112の外径の比をRb、第2のコア部112に対する第1のコア部111の比屈折率差をΔ1、第2のコア部112に対するトレンチ層113の比屈折率差をΔ3、第2のコア部112に対するクラッド領域120の比屈折率差をΔ4とするとき、a=4.99[μm]、Ra=0.66、Rb=0.491、Δ1=0.36[%]、Δ3=−0.45[%]、Δ4=0.0[%]が望ましい構造の1つであることが見出された。ただし、Δ2=0[%]になるように基準をとった場合であっても、第2のコア部112の石英ガラスの屈折率はΔ=0%であるとは限らない。
【0090】
上記構造の周辺で、G.654.Aの規格上のλcc≦1530nmという制限を守りつつ、各パラメータが満たすべき範囲を調べていくと、
図11から、以下の式(63)〜(68)が得られる。
【数63】
【数64】
【数65】
【数66】
【数67】
【数68】
【0091】
また、規格上、波長1550nmでのモードフィールド径(MFD)が平均値で9・5〜10.5μmを満たす必要があるので、各パラメータとMFDの関係を
図12に示す。各パラメータが満たすべき範囲を調べていくと、以下の式(69)〜(73)が得られる。
【数69】
【数70】
【数71】
【数72】
【数73】
【0092】
なお、Δ4は少なくとも−0.05%から+0.15%の範囲であればMFDに影響を与えることはい。また、規格上、波長1625μmにおける曲率半径30mmでの曲げロスが、1巻き当たり、0.5dB以下であることが必要なので、各構造パラメータと曲げロスの関係を求めた。この結果を
図13に示す。少なくとも10
−6dB/turn以下の値の無視できないレベルの計算誤差が含まれていると考えられる。そして、上記式(63)〜(73)の範囲ではΔ4は、以下の式(74)の関係を満たす必要がある。
【数74】
【0093】
上記式(63)〜(74)で示された結果をまとめると、マルチコア光ファイバにおけるトレンチ型コア部の各パラメータが満たすべき範囲は、以下の式(75)〜(80)となる。
【数75】
【数76】
【数77】
【数78】
【数79】
【数80】
【0094】
また、各パラメータ及びコアピッチΛとK/K
thの関係を
図14に示す。これらの関係について近似式を求めると、K/K
th≦1を満たす為に、各パラメータが満たすべき条件は、以下の式(81)〜(86)により示される。なお、以下の式(81)〜(86)におけるΛの単位はμmである。
【数81】
【数82】
【数83】
【数84】
【数85】
【数86】
【0095】
上記式(81)〜(86)から、コアピッチΛが満たすべき条件は、Λ≧40.2[μm]であることが分かった。
【0096】
上記式(81)〜(86)を満たし、コアピッチがΛ≧40.2[μm]を満たす7コアファイバは、波長1530nmから1625nmの範囲で、シングルモードであり、かつ、100km伝送後のクロストークが99.99%以上の確率で−30dB以下で、1550nmでのMFDが9.5μm以上10.5μm以下で、1625nmでの曲げロス0.5dB/turn以下の特性を実現できる。すなわち、波長1530nmから1625nmの範囲で伝送に適した特性を有する7コアファイバが実現できる。
【0097】
(第2実施形態)
次に、上述の第1実施形態と同様に本発明に係るマルチコア光ファイバの第2実施形態についても考察する。すなわち、以下の式(87a)に示す2つの値は、σ
2=χ/2の確率分布に従うので、中心極限定理により、n
zeroが十分大きければ、以下の式(87b)の2つの値は確率論的に独立で、かつ、等しい分散σ
2=(χ/2)×n
zeroを持つ正規分布を確率分布として分布する。n
zeroは本来整数ではあるが、上記式(39c)が成り立つ場合には、以下の式(87c)のように置き換えることができる。
【数87】
【0098】
この場合、σ
2は以下の式(88)を満たす。なお、L
Fはファイバ長である。
【数88】
【0099】
なお、実際には2つの偏波モードを考慮しなければならないので、2つの偏波モードそれぞれの、上記式(87b)の確率分布の分散の値が以下の式(89)を満たす。また、以下の式(90a)に示す値は、自由度4のカイ二乗分布である式(90b)にしたがって分布し、さらに累積分布関数は式(90c)となり、|A
n(n
zero) |
2の分布の平均値XT
μは、以下の式(90d)となる。
【数89】
【数90】
【0100】
また、クロストーク分布の平均値XT
μが許容値XT
S以下になるようにするためには、以下の式(91a)の関係から、以下の式(91b)〜(91d)の関係が得られる。
【数91】
【0101】
ここで、XT
s、L
Fを与えることで、各パラメータが満たすべき関係式が明らかになる。同一構造コアが複数設けられたマルチコア光ファイバで、結合係数がκ
nm−th以下で、コア間距離がD
nm−th以上になる様にファイバを設計し、ファイバをR
th以下の径で曲げれば、クロストークをXT
s以下に抑えることができる。
【0102】
ここで、本第2実施形態でも、上述の第1実施形態と同様に、
図9のような7つのコア#1〜#7を有する光ファイバ(以下「7コア光ファイバ」という。)を考える。各コア間の結合係数はコア間隔に対して指数関数的に減少していくので、クロストークを考慮すべきなのは隣接コアだけと考えて良い。この場合、隣接コアの数が最も多いコア1は、周囲に設けられた6つのコアからのクロストークの影響を受ける。このときコアピッチをΛとすると、上記式(91a)〜(91d)は、それぞれ以下の(92a)〜(92d)に書き換えることができる。なお、コア数が7以上の場合であっても六方格子状にコアが配置されている場合は、考慮すべき式は以下の式(92a)〜(92d)となる。
【数92】
【0103】
このとき、例えば、Λ=40[μm]、R=200[mm]、β=(2π/λ)・n
eff、L
F=100[km]、XT
S=0.001、λ=1625[nm]、n
eff=1.444とすると、κ≦9.65×10
−4となり、非常に小さなκにする必要があることが分かる。Λを大きくするとκ
thが大きくなると共にκの値自体も指数関数的に小さくなっていくが、上述のようにΛが40μm程でもκは非常に小さくする必要があり、これを実現する為には、ステップインデックス型コアのシングルモード光ファイバではコアΔが大きく、MFDが小さなファイバになってしまう。
【0104】
ところで、マルチコアファイバをファイバ1本当たりの伝送容量拡大のために用いる場合、実効断面積A
effあるいはMFDは大きい方が望ましい。しかしながら、シングルモードでの伝送を維持しつつ、A
effあるいはMFDを拡大するとκも大きくなってしまう。そこで、本発明に係るマルチコア光ファイバではトレンチ型のコアを採用し、A
effあるいはMFDの拡大と、κの低減を両立することが望ましい。
【0105】
ここで、少なくともケーブルカットオフ波長λccとモードフィールド径(MFD)が、ITU−T G.654.Aに準拠する構造を探索してみると、
図10に示す様なトレンチ型の光ファイバが望ましい構造の1つであることが見出された。すなわち、各コア部#1〜#7は、第1のコア部111と、第2のコア部112と、トレンチ層113からなり、それぞれクラッド領域120により覆われている。第1のコア部111は、クラッド領域120より高い屈折率を有する。第2のコア部112は、第1のコア部111の周りに設けられ、第1のコア部111と異な
る屈折率を有する。トレンチ層113は、第2のコア部112を囲むように設けられ、クラッド領域120より低い屈折率を有する。また、第1のコア部111の半径をa、第2のコア部112の外径に対する第1のコア部111の外径の比をRa、トレンチ層113の外径に対する第2のコア部112の外径の比をRb、第2のコア部112に対する第1のコア部111の比屈折率差をΔ1、第2のコア部112に対するトレンチ層113の比屈折率差をΔ3、第2のコア部112に対するクラッド領域120の比屈折率差をΔ4とするとき、a=4.99[μm]、Ra=0.66、Rb=0.491、Δ1=0.36[%]、Δ3=−0.45[%]、Δ4=0.0[%]が望ましい構造の1つであることが見出された。ただし、Δ2=0[%]になるように基準をとった場合であっても、第2のコア部112の石英ガラスの屈折率はΔ=0%であるとは限らない。
【0106】
上記構造の周辺で、G.654.Aの規格上のλcc≦1530nmという制限を守りつつ、各パラメータが満たすべき範囲を調べていくと、
図11から、以下の式(93)〜(98)が得られる。
【数93】
【数94】
【数95】
【数96】
【数97】
【数98】
【0107】
また、規格上、波長1550nmでのモードフィールド径(MFD)が8.8〜11.2μmを満たす必要があるので、各パラメータとMFDの関係を
図15に示す。各パラメータが満たすべき範囲を調べていくと、以下の式(99)〜(101)が得られる。
【数99】
【数100】
【数101】
【0108】
なお、少なくとも、Rbは0.3から1の範囲であれば、Δ3は−2.0%から0.0%の範囲であれば、Δ4は−0.20%から+0.20%の範囲であれば、MFDに影響を与えることはい。また、規格上、波長1625μmでの曲率半径30mmでの曲げロスが、1巻き当たり、0.5dB以下であることが必要なので、各構造パラメータと曲げロスの関係を求めた。この結果は、上述の第1実施形態と同様である(
図13)。少なくとも10
−6dB/turn以下の値の無視できないレベルの計算誤差が含まれていると考えられる。そして、上記式(93)〜(101)の範囲において、Δ4は以下の式(102)の関係を満たす必要がある。
【数102】
【0109】
上記式(93)〜(101)に示された結果をまとめると、マルチコア光ファイバにおけるトレンチ型コア部の各パラメータが満たすべき範囲は、以下の式(103)〜(108)となる。
【数103】
【数104】
【数105】
【数106】
【数107】
【数108】
【0110】
図9のような7コアファイバで、中心コアへのクロストークの分布の平均値は、以下の式(109)のように表すことができる。
【数109】
【0111】
上記式(103)〜(108)を満たすトレンチ型コアを有する7コアファイバの場合、a=4.99[μm]、Ra=0.66、Rb=0.491、Δ1=0.36[%]、Δ3=−0.529[%]、Δ4=0.0[%]でクロストークが小さくなる。このとき、Rの単位をmm、L
Fの単位をkmとして、波長1565nmと1625nmに於けるΛとXT
coeffの関係をプロットした図を
図16に示す。ここで、XTcoeffは、Λの単位をμmとすると、波長1565nmのときには、以下の式(110a)で近似でき、また、波長1625nmのときには、以下の式(110b)で近似できる。
【数110】
【0112】
このとき、Λが満たすべき条件は、上記式(92a)、(109)、(110a)〜(110b)から、波長1565nmのときには、以下の式(111a)となり、波長1625nmのときには、以下の式(111b)となる。
【数111】
【0113】
ここで、ファイバの曲率半径Rが小さいほど、コアピッチΛも小さくでき、ファイバ断面の単位面積当たりのコア密度を高められる。ファイバは通常ケーブル化された状態で使用されるので、例えば、ファイバをケーブル断面上でケーブル中心から一定の距離になるようにケーブル内に収容し、かつ、ケーブル長手位置が変わるにつれてファイバのケーブル中心からの向きが変わる様に収容することで、ケーブルが直線状態でもファイバは螺旋状になりほぼ一定の曲率半径を維持することができる。このとき、ファイバが螺旋状にケーブル内に収容されることにより、ケーブル長に対してファイバ長が増加する。したがって、
図17に示すように、螺旋の半径をr
h、ピッチをL
Pとすると、螺旋の曲率半径Rは、以下の式(112)で表される。
【数112】
【0114】
また、ケーブル長に対するファイバ長の増加率L
Dは、以下の式(113)で表される。そのため、L
DとRの関係は、以下の式(114)で表される。
【数113】
【数114】
【0115】
よって、L
Dに起因する1スパン当たりのロスの増加α
Dは、スパン長をL
span[km]、1km当たりの減衰係数をα
km[dB/km]とすると、以下の式(115)で表される。
【数115】
【0116】
一般的なスパン長としてL
spanを80kmに、減衰係数としてα
kmを0.185dB/kmとしたときのα
Dを
図18(a)に示し、また、L
spanを80kmのまま、α
kmを0.150dB/kmとしたときのα
Dを
図18(b)に示す。
【0117】
なお、
図18(a)において、グラフG1801aは螺旋半径が2mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1802aは螺旋半径が3mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1803aは螺旋半径が4mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1804aは螺旋半径が5mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1805aは螺旋半径が6mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1806aは螺旋半径が7mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1807aは螺旋半径が8mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1808aは螺旋半径が9mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1809aは螺旋半径が10mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1810aは螺旋半径が11mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1811aは螺旋半径が12mmに設定されたときのα
DとRの関係を、それぞれ示している。
【0118】
また、
図18(b)において、グラフG1801bは螺旋半径が2mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1802bは螺旋半径が3mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1803bは螺旋半径が4mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1804bは螺旋半径が5mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1805bは螺旋半径が6mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1806bは螺旋半径が7mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1807bは螺旋半径が8mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1808bは螺旋半径が9mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1809bは螺旋半径が10mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1810bは螺旋半径が11mmに設定されたときのα
DとRの関係、グラフG1811bは螺旋半径が12mmに設定されたときのα
DとRの関係を、それぞれ示している。
【0119】
これら
図18(a)及び
図18(b)から、等しいRでは、r
hが大きい程α
Dが大きくなることが分かる。現在一般に使われているケーブルでは、ケーブル断面上でのケーブル中心からファイバまでの距離は最大でも12mm以下なので、r
h=12mmの場合についてのα
Dを考えればよい。伝送時のOSNRの劣化を考えるとα
Dは許容値α
S以下であることが望ましい。よって、Rが満たすべき条件は、以下の式(116)から式(117)のように求められる。
【数116】
【数117】
【0120】
ここで、α
Sは、大きくても1.0dB/span以下であることが望ましく、0.5dB/span以下であることが更に望ましく、0.2dB/km以下であることがより更に望ましい。よって、L
spanを80kmに、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、Rは、97.9mm以上であることが望ましく、186.6mm以上であることが更に望ましく、453.0mm以上であることがより更に望ましい。L
spanを80kmに、α
kmを0.150dB/kmにしたとき、Rは、81.1mm以上であることが望ましく、153.1mm以上であることが更に望ましく、369.0mm以上であることがより更に望ましい。
【0121】
このことを踏まえ、上記式(111a)、(111b)から、コアピッチΛは各コアのトレンチ層113同士が接触しないだけの十分な距離がある前提の下で、波長1565nmでのクロストークについて考える。この場合、ファイバ長100km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、L
spanを80kmとし、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、コアピッチΛは28.28μm以上である必要があり、29.12μm以上であれば更に望ましく、30.28μm以上であればより更に望ましい。また、L
spanを80kmとし、α
kmを0.150dB/kmとしたとき、コアピッチΛは28.03μm以上である必要があり、28.86μm以上であれば更に望ましく、30.01μm以上であればより更に望ましい。
【0122】
ファイバ長1000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、L
spanを80kmとし、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、コアピッチΛは31.29μm以上である必要があり、32.13μm以上であれば更に望ましく、33.29μm以上であればより更に望ましい。また、L
spanを80kmとし、α
kmを0.150dB/kmとしたとき、コアピッチΛは31.04μm以上である必要があり、31.87μm以上であれば更に望ましく、33.02μm以上であればより更に望ましい。
【0123】
ファイバ長10000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、L
spanを80kmとし、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、コアピッチΛは34.29μm以上である必要があり、35.14μm以上であれば更に望ましく、36.30μm以上であればより更に望ましい。また、L
spanを80kmとし、α
kmを0.150dB/kmとしたとき、コアピッチΛは34.05μm以上である必要があり、34.88μm以上であれば更に望ましく、36.03μm以上であればより更に望ましい。
【0124】
続いて、波長1625nmでのクロストークについて考える。この場合、ファイバ長100km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、L
spanを80kmとし、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、コアピッチΛは29.81μm以上である必要があり、30.71μm以上であれば更に望ましく、31.93μm以上であればより更に望ましい。また、L
spanを80kmとし、α
kmを0.150dB/kmとしたとき、コアピッチΛは29.55μm以上である必要があり、30.43μm以上であれば更に望ましく、31.65μm以上であればより更に望ましい。
【0125】
ファイバ長1000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、L
spanを80kmとし、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、コアピッチΛは33.00μm以上である必要があり、32.13μm以上であれば更に望ましく、35.12μm以上であればより更に望ましい。また、L
spanを80kmとし、α
kmを0.150dB/kmとしたとき、コアピッチΛは32.74μm以上である必要があり、33.62μm以上であれば更に望ましく、34.83μm以上であればより更に望ましい。
【0126】
ファイバ長10000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、L
spanを80kmとし、α
kmを0.185dB/kmとしたとき、コアピッチΛは36.18μm以上である必要があり、37.08μm以上であれば更に望ましく、38.30μm以上であればより更に望ましい。また、L
spanを80kmに、α
kmを0.150dB/kmとしたとき、コアピッチΛは35.92μm以上である必要があり、36.80μm以上であれば更に望ましく、38.02μm以上であればより更に望ましい。
【0127】
また、上記式(112)から、螺旋のピッチL
pと曲率半径Rの関係を
図19に示す。なお、
図19において、グラフG1901は螺旋半径が2mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1902は螺旋半径が3mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1903は螺旋半径が4mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1904は螺旋半径が5mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1905は螺旋半径が6mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1906は螺旋半径が7mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1907は螺旋半径が8mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1908は螺旋半径が9mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1909は螺旋半径が10mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1910は螺旋半径が11mmに設定されたときのL
PとRの関係、グラフG1911は螺旋半径が12mmに設定されたときのL
PとRの関係を、それぞれ示している。
【0128】
細いケーブルでは、ケーブル断面上でのケーブル中心からファイバまでの距離が2mmほどまで、短くなることもある。また、ケーブルの製造性から、ケーブル内にファイバを螺旋状に収容する際の螺旋のピッチL
Pは、少なくとも200mm以上であることが望ましく、300mm以上であることが更に望ましい。これらのことから、ファイバの曲率半径Rは、少なくとも508.6mm以上であることが望ましく、1141.86mm以上であることが更に望ましい。
【0129】
このことを踏まえ、上記式(111a)、(111b)から、コアピッチΛは各コアのトレンチ層113同士が接触しないだけの十分な距離がある前提の下で、波長1565nmでのクロストークについて考える。この場合、ファイバ長100km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、コアピッチΛは30.43μm以上であることが望ましく、31.49μm以上であることが更に望ましい。また、ファイバ長1000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、コアピッチΛは33.44μm以上であることが望ましく、34.50μm以上であることが更に望ましい。さらに、ファイバ長10000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、コアピッチΛは36.45μm以上であることが望ましく、37.50μm以上であることが更に望ましい。
【0130】
続いて、波長1625nmでのクロストークについて考える。この場合、ファイバ長100km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、コアピッチΛは32.09μm以上であることが望ましく、33.21μm以上であることが更に望ましい。また、ファイバ長1000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、35.28μm以上であることが望ましく、36.40μm以上であることが更に望ましい。さらに、ファイバ長10000km伝搬後のクロストーク分布の平均値が0.001以下(−30dB以下)であるためには、コアピッチΛは38.46μm以上であることが望ましく、39.58μm以上であることが更に望ましい。