特許第6032030号(P6032030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特許6032030-撮像装置 図000009
  • 特許6032030-撮像装置 図000010
  • 特許6032030-撮像装置 図000011
  • 特許6032030-撮像装置 図000012
  • 特許6032030-撮像装置 図000013
  • 特許6032030-撮像装置 図000014
  • 特許6032030-撮像装置 図000015
  • 特許6032030-撮像装置 図000016
  • 特許6032030-撮像装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032030
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20161114BHJP
   G03B 17/20 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H04N5/225 B
   G03B17/20
   H04N5/225 A
   H04N5/225 F
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-15584(P2013-15584)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-147020(P2014-147020A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 篤
【審査官】 佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−257100(JP,A)
【文献】 特開2006−197523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G03B 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を集光する光学系を有する撮像部と、
前記光学系の光軸方向に対する傾斜角が可変であり、かつ前記被写体からの光を透過すると共に、前記撮像部の撮像範囲を示す画角枠を表示する表示面を備えた表示部と、
前記表示面の傾斜角を検知する傾斜検知部と、
を備え、
前記表示部は、前記傾斜角が、前記画角枠を正確に把握可能な範囲として予め定められた設定範囲に含まれる場合は前記画角枠を表示し、前記傾斜角が前記設定範囲に含まれない場合は、前記表示面が視認可能な範囲であっても前記画角枠を表示しないことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記表示部は、
前記画角枠を表示させる光を発光する発光部と、
前記発光部の発光を制御する発光制御部と、
前記発光部からの光を反射し、かつ前記表示面を有する反射部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記表示部は、少なくとも前記表示面を前記設定範囲に含まれない位置にある収納位置に移動可能であって、
前記表示面が収納位置に移動されると、前記画角枠を表示しないことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラやスチールカメラ(一眼レフを除く)などの撮像装置は、ビューファインダや液晶モニタなどの表示部を備えており、撮像者は、表示部を視認することで、画角に含まれる被写体や背景を確認できる。しかし、例えば、ズームなどによって倍率を変えた状態のときなどに、表示部に表示された画像が、撮像者の視野全体のうち、どの範囲を示しているのかを把握するのは難しい。特に、動体を撮影しているときには、高倍率であればあるほど被写体がフレームアウトした場合に被写体を再びフレームインすることが非常に困難である。
【0003】
そこで、撮像部が生成した画像データに基づく信号光を、ホログラム凹面鏡ミラーに投射するファインダー装置が提案されている(例えば、特許文献1)。ホログラム凹面鏡ミラーは、投射光を反射することで、撮像者に撮像中の画像を虚像として視認させつつ、被写体から撮像者に向かう光を透過する。撮像者は、ホログラム凹面鏡ミラー越しに、被写体と、撮像中の被写体の虚像の両方を確認できるため、視線の移動が少なくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−65183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に示されるように、ホログラム凹面鏡ミラーのような光透過型の反射部によって、撮像中の被写体の虚像を確認できる構成とすると、被写体の虚像が被写体に重なって視認されるため、見難くなってしまうおそれがある。そこで、光透過型の反射部によって、画角を示す画角枠の虚像を視認させる構成が考えられる。
【0006】
このような構成において、一般的な撮像装置に搭載されている液晶モニタと同様、撮像部の光学系の光軸方向に対して、反射部の傾斜角を可変とすることも考えられる。しかし、単に反射部の傾斜角を可変とするだけでは、傾斜角によっては、画角枠を適切に視認させることができない場合がある。このとき、撮像者に誤った画角枠を認識させてしまうおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、画角枠の誤認識を回避することで、撮像者に画角枠を適切に把握させることが可能な撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置は、被写体からの光を集光する光学系を有する撮像部と、光学系の光軸方向に対する傾斜角が可変であり、かつ被写体からの光を透過すると共に、撮像部の撮像範囲を示す画角枠を表示する表示面を備えた表示部と、表示面の傾斜角を検知する傾斜検知部と、を備え、表示部は、傾斜角が、画角枠を正確に把握可能な範囲として予め定められた設定範囲に含まれる場合は画角枠を表示し、傾斜角が設定範囲に含まれない場合は、表示面が視認可能な範囲であっても画角枠を表示しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画角枠の誤認識を回避することで、撮像者に画角枠を適切に把握させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】撮像装置の概略を示した機能ブロック図である。
図2】撮像装置の概略外観図である。
図3】画角枠を説明するための説明図である。
図4】被写体と、反射部と、基準枠と、画角枠との関係を説明するための説明図である。
図5】焦点距離と画角の関係を説明するための説明図である。
図6】画角と画角枠の長さとの関係を説明するための説明図である。
図7】表示制御方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図8】変形例における撮像装置の概略を示した機能ブロック図である。
図9】変形例における撮像装置の概略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
(撮像装置100)
図1は、撮像装置100の概略を示した機能ブロック図であり、図2は、撮像装置100の概略外観図である。図1に示すように、撮像装置100は、操作部120と、撮像部122と、画像処理部124と、バッファ126と、画像出力部128と、モニタ130と、圧縮部132と、画像保持部134と、中央制御部136と、表示部190と、傾斜検知部152とを含んで構成される。ここで、表示部190は、発光部138と、ミラー部140と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)制御部142と、描画処理部144と、発光制御部146と、中間スクリーン148と、反射部150とから構成される。
【0013】
操作部120は、レリーズスイッチを含む操作キー、十字キー、ジョイスティック等で構成され、撮像者の操作入力を受け付ける。また、後述するモニタ130の表示面にタッチパネルを配し、操作部120としてもよい。
【0014】
撮像部122は、撮像レンズ170と、画角変更に用いられるズームレンズ172と、焦点調整に用いられるフォーカスレンズ174と、露光調整に用いられるアイリス176と、撮像レンズ170を通じて入射した光束を画像データに光電変換する撮像素子178と、後述する中央制御部136の制御信号に応じて、ズームレンズ172、フォーカスレンズ174、およびアイリス176をそれぞれ駆動させる駆動部180とを含んで構成される。このように、撮像部122は、被写体200からの光を集光する光学系を有し、集光された光を光電変換して画像データを生成し、画像処理部124に出力する。
【0015】
画像処理部124は、撮像部122から出力された画像データに所定の処理を施し、処理後の画像データをバッファ126に出力する。バッファ126は、SRAM(Static Random Access Memory)等で構成され、画像データを一時的に保持する。
【0016】
画像出力部128は、バッファ126に保持された画像データに基づくプレビュー画像をモニタ130に表示するためのプレビューデータを生成し、OSD(On-Screen Display)等のデータを重畳して、モニタ130に出力する。モニタ130は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、プレビュー画像やOSDなどを表示する。
【0017】
圧縮部132は、バッファ126に保持された画像データを所定の符号化方式で符号化する。画像保持部134は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、符号化された画像データを保持する。
【0018】
中央制御部136は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、撮像装置100全体を管理および制御する。また、中央制御部136は、操作部120を介した操作入力に応じ、駆動部180の駆動を制御し、ズーム処理を遂行させる。
【0019】
発光部138は、例えばレーザなどで構成され、撮像部122の撮像範囲を示す画角枠を示す虚像を視認させる光を発光する。ミラー部140は、平面ミラーや凹面ミラーなどで構成され、発光部138が発光した光を反射して、後述する反射部150に導く。
【0020】
MEMS制御部142は、ミラー部140の向きを制御する。具体的に、MEMS制御部142は、例えば、コイルと磁石による自励発振によって、発光部138の光が後述する中間スクリーン148を水平方向に走査するように、ミラー部140を変位させる。また、MEMS制御部142は、自励発振の周期を示す同期信号(例えば正弦波)を、描画処理部144に出力する。
【0021】
描画処理部144は、中央制御部136からズーム倍率などの情報を取得し、画角枠を示す画像の画像データ(以下、枠データと称す)を生成する。かかる枠データの生成については、枠データ生成処理の説明において詳述する。
【0022】
そして、描画処理部144は、同期信号に基づいて、自励発振の周期に同期する水平同期信号を生成し、さらに、水平同期信号に基づいて垂直同期信号を生成し、MEMS制御部142に出力する。MEMS制御部142は、垂直同期信号に基づいて、発光部138の光が中間スクリーン148を垂直方向に走査するように、ミラー部140を変位させる。
【0023】
また、描画処理部144は、枠データと、枠データを水平同期信号および垂直同期信号に基づいて走査するときの各画素に対応する発光のタイミングを発光制御部146に出力する。
【0024】
発光制御部146は、各画素に対応するタイミングに基づいてRGBそれぞれの輝度になるように、発光部138を発光させる。
【0025】
中間スクリーン148は、透過型スクリーンで構成され、ミラー部140からの光を透過して、ミラー部140と反対側に位置する反射部150側の面に中間像として投影する。
【0026】
反射部150は、コンバイナで構成され、例えば、表面コーティング加工によって透過または反射する光の波長を制限するなどして、被写体200からの光を透過すると共に、中間スクリーン148に投影された発光部138からの光を反射する。
【0027】
また、反射部150は、図2(a)に示すように、ヒンジなどの回転機構150aを介して撮像装置100の本体100aに設置されており、図2(a)のように、撮像部122の光学系の光軸方向A(図2(a)中、破線の矢印で示す。)に略垂直な状態(望ましくは、表示面150bの面直方向と、撮像部122の光学系の光軸方向Aが大凡平行となり、光軸上に被写体が位置する状態)から、本体100aに近接する位置(収納位置)へと角度調整できる。これによって、撮像部122の光学系の光軸方向Aに対する表示面150bの傾斜角(以下、単に傾斜角と称す)を変えることができる。
【0028】
そして、図2(b)に示すように、反射部150の表示面150bを、本体100aに近接する位置(収納位置)に移動させたときに収納状態となる。モニタ130も同様に収納可能となっている。そのため、未使用時には、反射部150を収納することで、反射部150の損傷を回避すると共に、撮像装置100を小さくして携帯性や収納性を向上することができる。
【0029】
図1に戻って説明すると、傾斜検知部152は、表示面150bの傾斜角を検知し、検知した傾斜角を示す角度データを中央制御部136に出力する。
【0030】
(画角枠と基準枠の説明)
図3は、画角枠を説明するための説明図である。図3(a)に示すように、撮像者の目の位置であるアイポイント202と、被写体200との間に、撮像装置100の反射部150が配される。撮像者は、発光部138から発光された光によって、反射部150より被写体200側に、撮像部122の画角枠を示す虚像を結像して視認する。
【0031】
また、図3(a)に示す、アイポイント202から反射部150(または撮像部122の光学系)までの距離Z1が、アイポイント202から被写体200までの距離Z2に対して十分に小さい場合、撮像者の視野の画角θと撮像部122の画角θは大凡等しいとみなすことができる。
【0032】
ところで、人の視野のうち、意識的に視野を広く持とうとせずに、通常の状態で視認する視野の範囲は、大凡、35mmフィルム換算の焦点距離で80mm相当となっている。そこで、撮像者が、例えば、反射部150の表示面150bの表示範囲に関し、垂直方向の中心かつ水平方向の両端から、大凡80mm離れたところにアイポイント202を位置させて撮像装置100を保持したとする。このとき、撮像者の視野は、大凡、反射部150越しの被写体200や外景に占められている。
【0033】
本実施形態では、焦点距離が80mmと設定したとき、撮像者が視認する画角枠の虚像は、反射部150の縁に重なるものとする。このときの画角枠の位置に相当する枠を、アイポイント202の調整の基準となる基準枠とする。
【0034】
また、図3(b)に示すように、撮像装置100について、ズーム操作をすると、ズーム倍率に応じて撮像部122の画角θは小さくなる。すると、画角枠は基準枠よりも小さくなる。
【0035】
図4は、被写体200と、反射部150と、基準枠204と、画角枠206との関係を説明するための説明図である。図4(a)に示すように、焦点距離を80mmとしたとき(θ≒θ)、基準枠204が虚像として、反射部150の縁に収まるように視認される。
【0036】
ここで、ズーム操作が遂行されると、描画処理部144は、図4(b)に示すように、ズーム操作に応じて小さくなった画角枠206を撮像者に虚像として視認させる枠データを生成する。そのため、撮像者は、画角を示す画角枠206の虚像を、反射部150越しの実際の被写体200や外景に重畳して視認でき、撮像部122の画角θを直感的に把握することが可能となる。
【0037】
また、アイポイント202が正しい位置から上下左右のいずれかにずれると、虚像として視認される画角枠206の位置も不正確なものとなる。例えば、アイポイント202が上方にずれた場合、図4(c)に示すように、画角枠206は、反射部150の中心から下方に偏って位置し、基準枠204の下端は反射部150から外れる。このことから、撮像者は、基準枠204が反射部150に収まるように、撮像装置100とアイポイント202との位置関係を調整することで、アイポイント202を正しく位置させて、正確な画角枠206を把握することができる。
【0038】
また、上記のように、反射部150(表示面150b)は、回転機構150aによって傾斜角が可変であるため、反射部150の傾斜角を調整することで、基準枠204を反射部150の表示面150bの表示範囲内に収めるようにすることも可能である。
【0039】
(枠データ生成処理)
続いて、枠データ生成処理に関し、基準枠204と画角枠206の大きさの計算処理について詳述する。図5は、焦点距離fと画角の関係を説明するための説明図である。図5(a)〜()に示すように、光学系の主点208を挟んで、被写体200の反対側に焦点距離fだけ離れた位置において、光学系に入射した光が最も明確に投影される。この投影範囲を、光学系の光軸210を中心とする仮想円Sとする。
【0040】
仮想円Sのうち、撮像素子178の受光面の矩形形状に合わせた範囲が、画像データに変換される。ここでは、例えば、アスペクト比がVGA(Video Graphics Array)となる矩形領域Cを考え、その水平方向の距離を水平距離H、垂直方向の距離を垂直距離Vとする。
【0041】
そして、水平方向の画角の半分となる角度を角度θ図5(a)参照)、垂直方向の画角の半分となる角度を角度θ図5(b)参照)とすると、以下の数式1および数式2が成立する。
【数1】
…(数式1)
【数2】
…(数式2)
【0042】
数式1および数式2によって、水平方向の画角(2θ)、垂直方向の画角(2θ)は、それぞれ、以下の数式3および数式4を用いて求められる。
【数3】
…(数式3)
【数4】
…(数式4)
【0043】
例えば、35mmフィルムの大きさに合わせて矩形領域Cを設定し、水平距離Hは36mm、垂直距離Vは24mmとする。
【0044】
焦点距離fが80mmの場合、上記数式1および数式2によって、水平方向の画角(2θ)は大凡28°、垂直方向の画角(2θ)は大凡22.6°となる。
【0045】
また、焦点距離fが200mmの場合、上記数式1および数式2によって、水平方向の画角(2θ)は大凡9.1°、垂直方向の画角(2θ)は大凡6.9°となる。
【0046】
図6は、画角と画角枠206の長さとの関係を説明するための説明図である。図6(a)においては、虚像として認識される画角枠206を、水平方向の視点で捉えたと仮定した場合の位置関係を示す。ここでは、垂直方向に関し、画角と、画角枠206の長さの関係を説明し、水平方向に関する画角と画角枠206の長さの関係については、垂直方向と実質的に等しいため、説明は省略する。
【0047】
光学系の主点208の被写体200側の画角については、上記の数式1および数式2と同様の関係が成立する。具体的に、図6に示すように、基準枠204の垂直方向の長さyと、アイポイント202から反射部150の表示面150bまでの距離xと、垂直方向の画角(2θ)は、以下の数式5の関係にある。
【数5】
…(数式5)
【0048】
焦点距離fが80mmのときの画角(2θ)である17°を代入すると、以下の数式6となる。
【数6】
…(数式6)
【0049】
すなわち、画角枠206の垂直方向の長さyは、距離xの0.3倍となる。また、ズーム操作によって焦点距離fが200mmとなったとき、画角枠206の垂直方向の長さを長さyとする。このとき、上記の数式5の長さyを長さyに置き換え、焦点距離fが80mmのときの画角(2θ)である6.9°を代入すると、以下の数式7となる。
【数7】
…(数式7)
【0050】
数式6および数式7から、焦点距離fが80mmのときの画角枠206の垂直方向の長さyと、焦点距離fが200mmのときの画角枠206の垂直方向の長さyとの比は、y:y=0.3:0.12となる。
【0051】
例えば、焦点距離fが80mmのときの画角枠206の垂直方向の長さyを、VGAの垂直解像度である480画素とすると、焦点距離fが200mmのときの画角枠206の垂直方向の長さyは、192画素と導出される。
【0052】
そのため、図6(b)に示すように、垂直解像度の480画素に対し、上から順位0から479の番号を割り振ると、垂直方向の画素の並びの中心となる240番目の画素を、画角枠206の中心となるように配置すると、上から144番目の画素から335番目の画素までが画角枠206となる。
【0053】
(表示制御方法)
続いて、撮像装置100の表示部190の表示制御方法について説明する。図7は、表示制御方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0054】
図7に示すように、傾斜検知部152は、表示面150bの傾斜角を検知し、中央制御部136に出力する(S300)。中央制御部136は、傾斜角に基づいて、反射部150が収納位置にあるか否かを判定する(S302)。収納位置にある場合(S302におけるYES)、中央制御部136は、すでに、MEMS制御部142、発光制御部146が基準枠204の虚像を視認可能とする処理(以下、基準枠制御処理と称す)を行っているか否かを判定する(S304)。
【0055】
基準枠制御処理を行っていない場合(S304におけるNO)、角度検知ステップS300に処理を戻す。基準枠制御処理を行っている場合(S304におけるYES)、基準枠制御処理を停止し(S306)、角度検知ステップS300に処理を戻す。
【0056】
反射部150が収納位置にない場合(S302におけるNO)、中央制御部136は、すでに、基準枠制御処理を行っているか否かを判定する(S308)。基準枠制御処理を行っていない場合(S308におけるNO)、基準枠制御処理を開始し(S310)、角度判定ステップS312に処理を移す。基準枠制御処理を行っている場合(S308におけるYES)、そのまま角度判定ステップS312に処理を移す。
【0057】
続いて、中央制御部136は、傾斜角が予め定められた設定範囲に含まれるか否かを判定する(S312)。例えば、ほとんど反射部150の表示面150bが視認できないような傾斜角では、アイポイント202と撮像装置100の位置関係をどう調整しても、正確な画角枠206の虚像は視認されない。設定範囲は、アイポイント202と撮像装置100の位置関係を調整することで、正確な画角枠206を把握することができる可能性がある傾斜角の範囲である。
【0058】
傾斜角が設定範囲に含まれる場合(S312におけるYES)、中央制御部136は、すでに、MEMS制御部142、発光制御部146が画角枠206の虚像を視認可能とする処理(以下、画角枠制御処理と称す)を行っているか否かを判定する(S314)。
【0059】
すでに、画角枠制御処理を行っている場合(S314におけるYES)、当該画角枠制御処理を継続する。まだ、画角枠制御処理を行っていない場合(S314におけるNO)、画角枠制御処理を開始する(S316)。そして、角度検知ステップS300に処理を戻す。
【0060】
また、角度判定ステップS312において、傾斜角が設定範囲に含まれない場合(S312におけるNO)、すでに、画角枠制御処理を行っているか否かを判定する(S318)。すでに、画角枠制御処理を行っている場合(S318におけるYES)、当該画角枠制御処理を停止し(S320)、そのまま角度検知ステップS300に処理を戻す。まだ、画角枠制御処理を行っていない場合(S318におけるNO)、角度検知ステップS300に処理を戻す。
【0061】
こうして、発光制御部146は、傾斜角が設定範囲に含まれている場合に、中央制御部136の制御信号に応じ、反射部150の表示面150bで反射された光によって、撮像部122の画角枠206を示す虚像を反射部150より被写体200側に結像可能となるように、発光部138の発光を制御する。すなわち、表示部190は、画角枠206を表示する。
【0062】
また、発光制御部146は、傾斜角が設定範囲に含まれていない場合に、中央制御部136の制御信号に応じ、発光部138の発光を停止する。このように、発光制御部146は、撮像部122の画角枠206を示す虚像が結像不可能となるように発光部138の発光を制御する。すなわち、表示部190は、画角枠206を表示しない。
【0063】
そのため、撮像装置100は、反射部150の表示面150bで反射された光による虚像が、不正確な画角枠206の位置を示すことを回避し、撮像者に、正確な画角枠206を把握させることが可能となる。
【0064】
また、上記の設定範囲には、反射部150が収納位置にあるときの表示面150bの傾斜角は含まれていない。すなわち、表示面150bが収納位置に移動されると、傾斜角が設定範囲に含まれなくなることから、発光制御部146は、中央制御部136の制御信号に応じ、発光部138の発光を停止する。換言すれば、表示部190は、画角枠206を表示しない。そのため、撮像部122の画角枠206を示す虚像が結像不可能となる。
【0065】
以上のように、本実施形態の撮像装置100および表示制御方法によれば、傾斜角が設定範囲に含まれていない場合には、画角枠206を視認させず、画角枠206の誤認識を回避することで、画角枠を適切に把握させることが可能となる。
【0066】
(変形例)
図8は、変形例における撮像装置400の概略を示した機能ブロック図であり、図9は、変形例における撮像装置400の概略外観図である。撮像装置400は、上述した実施形態の撮像装置100と異なり、図8図9に示すように、モニタ130を設けていない代わりに、図8に示すセレクタ部430を備える。
【0067】
セレクタ部430は、描画処理部144の代わりに、MEMS制御部142からの同期信号に基づいて、自励発振の周期に同期する水平同期信号を生成し、さらに、水平同期信号に基づいて垂直同期信号を生成し、MEMS制御部142に出力する。
【0068】
さらに、セレクタ部430は、操作部120を介した操作入力に応じた中央制御部136からの制御信号によって、画角枠206の表示モードと、プレビューデータの表示モードとを切り換える。
【0069】
画角枠206の表示モードにおいては、セレクタ部430は、描画処理部144から出力された枠データを、水平同期信号および垂直同期信号に同期させて、発光制御部146に出力する。
【0070】
プレビューデータの表示モードにおいては、セレクタ部430は、画像出力部128から出力されたプレビューデータを、水平同期信号および垂直同期信号に同期させて、発光制御部146に出力する。
【0071】
このように、セレクタ部430を設けることで、モニタ130を別途、備えることなく、反射部150の表示面150bに反射された光によって、プレビュー画像やOSDなどを虚像として視認することが可能となる。
【0072】
かかる変形例の撮像装置400も、上述した実施形態の撮像装置100と同様、中央制御部136の制御信号に応じ、発光制御部146が、傾斜角が設定範囲に含まれている場合に、発光部138の発光を制御し、反射部150の表示面150bで反射された光によって、撮像部122の画角枠206を示す虚像を反射部150より被写体200側に結像可能とし、傾斜角が設定範囲に含まれていない場合に、発光部138の発光を停止し、撮像部122の画角枠206を示す虚像を結像不可能とする。そのため、撮像装置400は、画角枠206の誤認識を回避することで、画角枠206を適切に把握させることが可能となる。
【0073】
上述した基準枠204を定める焦点距離は、撮像対象、被写体200との距離、および、撮像者の感覚の個人差の影響を受けて最適な値が異なるため、操作入力に応じて調整可能とする。例えば、モニタ130を参照しながら焦点距離の最適値を選択可能とするキャリブレーション機能を備えてもよい。
【0074】
また、望遠側では画角枠206は小さく表示されて視認し難くなるおそれがあるため、画角枠として、例えば、撮像範囲の中心位置を示す、十文字、点、三角印などのポインタを表示してもよい。撮像者は、ポインタを視認することで、ポインタを中心とする所定範囲が撮像範囲であることを把握できる。
【0075】
また、上述した実施形態および変形例においては、表示部190は、レーザ光源(発光部138)およびMEMSミラー(MEMS制御部142、ミラー部140)で構成され、いわゆるMEMS方式により表示面150bに画角枠206を表示するようにした。しかしながら、表示部190は、反射型の液晶表示素子とプロジェクタ光学系で構成され、いわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式により表示面150bに画角枠206を表示するようにしてもよい。また、表示部190は、HUDに限らず、被写体からの光を透過可能な表示面を有する表示部であればよい。
【0076】
なお、本明細書の表示制御方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
A …光軸方向
100、400 …撮像装置
122 …撮像部
138 …発光部
146 …発光制御部
148 …中間スクリーン
150 …反射部
152 …傾斜検知部
190 …表示部
200 …被写体
206 …画角枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9