(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モールドを保持するためのモールド保持部と、転写基板を保持するための基板保持部と、被成形樹脂の液滴を吐出するインクジェットヘッドを有する液滴供給部と、軟X線照射方式の静電気除去装置と、を少なくとも備え、
前記静電気除去装置は前記モールド保持部に保持されるモールドに対して側方から軟X線を照射可能な位置にあり、
前記静電気除去装置から軟X線が照射されるときに、少なくとも液滴吐出口に軟X線が照射されないように前記インクジェットヘッドを駆動する駆動部を備えることを特徴とするインプリント装置。
前記駆動部は、前記静電気除去装置から照射される軟X線が照射範囲の外側の所定位置と被成形樹脂の液滴を供給する位置との間で前記インクジェットヘッドを移動可能とするものであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
前記駆動部は、前記インクジェットヘッドを回動することにより、前記静電気除去装置から照射される軟X線が直接到達不可能な位置と被成形樹脂の液滴を供給する位置との間で液滴吐出口を移動可能とするものであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
尚、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らず、また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。
[インプリント装置]
図1は本発明のインプリント装置の一実施形態を示す側面図であり、
図2は
図1に示されるインプリント装置の平面図である。
図1、
図2において、本発明のインプリント装置1は、モールド31を保持するためのモールド保持部2と、転写基板41を保持するための基板保持部4と、転写基板41上に被成形樹脂の液滴を吐出するインクジェットヘッド7、および、少なくともインクジェットヘッド7の液滴吐出口に軟X線が照射されることを防止するための駆動部8を備えた液滴供給部6と、軟X線照射方式の静電気除去装置10とを備えている。
【0012】
(モールド保持部2)
インプリント装置1を構成するモールド保持部2は、モールド31の凹凸構造領域32を有する面が基板保持部4に保持される転写基板41と対向可能となるようにモールド31を保持するものである。このモールド保持部2におけるモールド31の保持機構は、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構等であってよく、保持機構には特に制限はない。また、モールド保持部2は、昇降機構3により
図1に示す矢印Z方向で昇降可能とされている。このようなモールド保持部2の上方には、被成形樹脂として光硬化性樹脂を使用した場合の樹脂硬化のための光源12、光学系13が配設されている。
尚、
図2においては、モールド保持部2とモールド31のみを記載し、昇降装置3、光源12、光学系13の記載を省略している。
【0013】
(基板保持部4)
インプリント装置1を構成する基板保持部4は、インプリント用の転写基板41を保持するものであり、転写基板41の保持機構は、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構等であってよく、保持機構には特に制限はない。この基板保持部4は、図示しない駆動機構部によってXYステージ5上を、
図2にX方向、Y方向で示される水平面内で移動可能とされている。図示例では、基板保持部4は、転写基板供給位置にあり、XYステージ5上を、液滴供給部6のインクジェットヘッド7から樹脂の液滴の供給を受ける液滴供給位置、モールド保持部2に対向し転写を行う転写位置等に移動可能である。尚、本発明のインプリント装置は、図示例に限定されるものではなく、モールド保持部2、基板保持部4、インクジェットヘッド7の任意の部材を移動可能とし、これらの相対的な位置が変更可能とされている態様であってよい。
【0014】
(液滴供給部6)
インプリント装置1を構成する液滴供給部6は、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給するものであり、インクジェットヘッド7、このインクジェットヘッドを駆動するための駆動部8、インクジェットヘッド7へのインク供給部(図示せず)、および、インクジェットヘッド7と駆動部8やインク供給部を制御する制御部(図示せず)等を具備するインクジェット装置を備えている。尚、
図2においては、駆動部8は二点鎖線で示している。この駆動部8は、
図2に示されるX方向および/またはY方向でのインクジェットヘッド7の移動を可能とするものであり、図示例では、
図2に一点鎖線矢印xyで示されるように、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置(
図2に実線で示される位置)と、鎖線で示される位置との間でインクジェットヘッド7の往復移動を可能とするものである。そして、鎖線で示されるインクジェットヘッド7の位置は、後述する静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となるように設定されている。また、駆動部8は、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する際のインクジェットヘッド7の所望の動作を可能としている。
尚、本発明のインプリント装置では、上記の
図2に一点鎖線矢印xyで示されるインクジェットヘッド7の往復移動を可能とする駆動部8に、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する際のインクジェットヘッド7の所望の動作を可能とする供給時の駆動部も含まれているものであってよく、また、駆動部8とは別個に、供給時の駆動部を備えるものであってもよい。さらに、インプリント装置がインクジェットヘッド7を固定した状態で被成形樹脂の液滴を供給する場合には、このような供給時の駆動部を備えないものであってもよい。
【0015】
(静電気除去装置10)
インプリント装置1を構成する静電気除去装置10は、従来公知の軟X線照射方式の静電気除去装置であり、モールド保持部2に保持されるモールド31に対して側方から軟X線を照射できるように配設されている。この静電気除去装置10から照射される軟X線は、図示例では、中心角度θの放射状に照射(便宜的に任意の照射線を鎖線Rで示している)され、その照射中心Rcの方向が、モールド保持部2に保持されたモールド31と基板保持部4に保持された転写基板41とが対向し転写を行う転写位置の方向とされている。本発明における軟X線とは、真空紫外線(VUV)領域と軟X線領域を含む範囲の領域での光を指し、数値としては波長λが、0.1nm≦λ≦30nmの範囲の光を指す。
尚、上記の「モールド31に対して側方」とは、軟X線の照射中心Rcの方向が、モールド31の凹凸構造領域32を有する面の垂線(
図1に示される一点鎖線L)に対して90°±45°の範囲となることを意味する。軟X線の照射中心Rcの方向が上記の範囲から外れると、モールド31の除電効率が低下し、軟X線の照射パワーの増大を来たし好ましくない。
【0016】
このような本発明のインプリント装置1におけるインプリント動作の一例を説明する。まず、転写基板41を保持した基板保持部4がXYステージ5上を液滴供給位置に移動して、保持する転写基板41に、液滴供給部6のインクジェットヘッド7から被成形樹脂の液滴の供給を受ける。このとき、液滴供給部6のインクジェットヘッド7は、駆動部8により、
図2に実線で示される位置に存在する。その後、基板保持部4はXYステージ5上を転写位置に移動し、モールド保持部2と基板保持部4とがZ方向で近接し、これによりモールド31と転写基板41との間に被成形樹脂の液滴が展開され被成形樹脂層が形成される。次いで、光源12から光学系13を介して光照射が行われ、被成形樹脂層が硬化して凹凸構造が転写された転写樹脂層となる。
次に、駆動部8により、液滴供給部6のインクジェットヘッド7が
図2に鎖線で示される位置に移動され、静電気除去装置10からの軟X線の照射範囲外に退避した状態となる。次いで、静電気除去装置10から軟X線を照射することにより、モールド保持部2に保持されるモールド31に対して側方から軟X線が照射される。そして、モールド保持部2と基板保持部4とをZ方向で離間し、これにより転写樹脂層とモールド31が引き離され、転写樹脂層であるパターン構造体を転写基板41上に位置させた状態となる。
また、インプリント装置1では、液滴供給部6のインクジェットヘッド7が、
図2に鎖線で示される位置に移動され静電気除去装置10からの軟X線の照射範囲外に退避した状態であれば、転写基板41上に供給された樹脂液滴に悪影響が及ばない範囲で、静電気除去装置10から随時軟X線を照射することも可能である。
【0017】
このような本発明のインプリント装置では、少なくともインクジェットヘッドの液滴吐出口への軟X線の照射を回避しながら、モールド保持部に保持されたモールドに対する軟X線の照射による除電が可能であり、これにより、転写樹脂層とモールド31を引き離す際に発生する静電気によるモールド31の帯電が阻害されて、モールド31に異物が付着することが防止され、パターン構造体の欠陥、モールドの破損等が防止されて、高精度のパターン構造体を安定して作製することができる。
ここで、インクジェットヘッド7を駆動する駆動部8の実施形態について、
図3〜
図5に示す例を参照しながら説明する。尚、
図3〜
図5には、
図2に示すX方向、Y方向、
図1に示すZ方向に対応するように、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表示している。
本発明において駆動部8は、静電気除去装置10から軟X線が照射されるときに、少なくとも液滴吐出口に軟X線が照射されないようにインクジェットヘッド7を駆動するものである。
【0018】
図3は、
図2と同様に、インプリント装置の平面を示す図であり、
図3(A)に示される例では、駆動部8は、
図2に示されるX方向でインクジェットヘッド7の移動を可能とするものである。この駆動部8により、インクジェットヘッド7は、一点鎖線矢印xで示されるように、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置(
図3(A)に実線で示される位置)と、鎖線で示される位置との間で往復移動可能とされる。そして、鎖線で示されるインクジェットヘッド7の位置は、静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となるように設定されている。
また、
図3(B)に示される例では、駆動部8は、
図2に示されるY方向でインクジェットヘッド7の移動を可能とするものである。この駆動部8により、インクジェットヘッド7は、一点鎖線矢印yで示されるように、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置(
図3(B)に実線で示される位置)と、鎖線で示される位置との間で往復移動可能とされる。そして、鎖線で示されるインクジェットヘッド7の位置は、静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となるように設定されている。
また、駆動部8は、
図3(A)および
図3(B)に示した一点鎖線矢印xおよび一点鎖線矢印yの両方の方向にインクジェットヘッド7の移動を可能とするものであってもよい。
【0019】
図4は、
図1と同様に、インプリント装置の側面を示す図であり、
図4(A)に示される例では、駆動部8は、
図1に示されるZ方向でインクジェットヘッド7の移動を可能とするものである。この駆動部8により、インクジェットヘッド7は、一点鎖線矢印zで示されるように、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置(
図4(A)に実線で示される位置)と、鎖線で示される位置との間で往復移動可能とされる。そして、鎖線で示されるインクジェットヘッド7の位置は、静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となるように設定されている。尚、
図4では、静電気除去装置10からインクジェットヘッド7方向へ照射される軟X線の広がりの仰角(
図2にX方向、Y方向で示される水平面に対するZ方向の角度)をθ′として示している。
図1および
図2に示すように、被成形樹脂の液滴を供給する位置にあるときのインクジェットヘッド7は、中心角度θで放射状に照射される軟X線の照射中心Rcから外れているので、中心角度θで放射状に照射される軟X線のうち、インクジェットヘッド7方向へ照射される軟X線の広がりの最大仰角θ′は、上記の中心角度θの半分(θ/2)よりも小さい角度となる。
【0020】
また、
図4(B)に示される例では、駆動部8は、
図1に示されるZ方向、
図2に示されるY方向でインクジェットヘッド7の移動を可能とするものである。この駆動部8により、インクジェットヘッド7は、一点鎖線矢印yzで示されるように、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置(
図4(B)に実線で示される位置)と、鎖線で示される位置との間で往復移動可能とされる。そして、鎖線で示されるインクジェットヘッド7の位置は、静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となるように設定されている。
さらに、図示されていないが、駆動部8は、
図1に示されるZ方向と、
図2に示されるX方向でインクジェットヘッド7の移動を可能とするもの、あるいは、
図1に示されるZ方向と、
図2に示されるX方向、Y方向でインクジェットヘッド7の移動を可能とするものであってよい。いずれの場合も、インクジェットヘッド7は、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置と、静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となる位置との間で往復移動可能とされる。
図3および
図4に例示されるような駆動部8の機構は、特に制限はなく、例えば、インクジェットヘッド7を係止する部材と、当該部材を所定の軌道上で移動させる動力部とを有する機構等とすることができる。
【0021】
また、
図5は、
図1と同様に、インプリント装置の側面を示す図であり、この例では、駆動部8は、一点鎖線矢印で示されようにインクジェットヘッド7を回動可能とするものである。この駆動部8により、インクジェットヘッド7は、基板保持部4に保持された転写基板41上に被成形樹脂の液滴を供給する位置(
図5に実線で示される位置)と、鎖線で示される位置との間で回動可能とされる。そして、鎖線で示される状態に回動されたインクジェットヘッド7では、静電気除去装置10から照射される軟X線に対してインクジェットヘッド7自体が障害となり、その液滴吐出口7aに軟X線が直接到達不可能な状態となっている。この態様では、インクジェットヘッド7を構成する材質が軟X線を遮蔽可能であって、内部の被成形樹脂に軟X線が照射されないことが前提である。また、駆動部8によるインクジェットヘッド7の回動角度は、図示例では約90°であるが、静電気除去装置10から照射される軟X線が液滴吐出口7aに直接到達不可能な状態とすることができる範囲で、回動角度は適宜設定することができる。尚、
図5においても、
図4と同様に、静電気除去装置10からインクジェットヘッド7方向へ照射される軟X線の広がりの仰角をθ′として示している。
図5に例示されるような駆動部8の機構は、特に制限はなく、例えば、インクジェットヘッド7を係止する部材と、当該部材を所定の方向で回動させる動力部とを有する機構等とすることができる。
さらに、駆動部8は、インクジェットヘッド7を回動可能とし、かつ、上記の
図3および
図4のいずれかに示されるようなインクジェットヘッド7の移動を可能とするものであってもよい。
【0022】
上述のインプリント装置の実施形態は例示であり、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。例えば、モールド保持部2、転基板保持部4、液滴供給部6を筐体内部に配置し、筐体外部に配置した静電気除去装置10から軟X線を照射するような構成とすることができる。この場合、筐体の外部に配置した静電気除去装置10からの軟X線照射に支障を与えないような形状、大きさの開口部を筐体に設ける必要がある。また、駆動部8によるインクジェットヘッド7の移動において、静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外となる移動位置が、筐体の外部であってもよい。更に、静電気除去装置10も筐体内部に配置するような構成であってもよい。
また、図示しないインク供給部からインクジェットヘッド7へ被成形樹脂を供給する配管が樹脂製チューブのような軟X線を透過するような材質である場合、静電気除去装置10から照射される軟X線が、供給配管を透過して被成形樹脂に照射されることを防止するために、インクジェットヘッド7が静電気除去装置10から照射される軟X線の照射範囲外に退避したときに、供給配管も軟X線の照射範囲外に位置するように駆動部8を設定することができる。
【0023】
さらに、上述のインプリント装置1では、モールド保持部2側に配設した光源12から光学系13を介した光照射により被成形樹脂層を硬化させるように構成されているが、これは、使用するモールド31が石英等の光透過性材料からなることを前提としたものである。使用するモールド31が遮光性材料からなり、基板保持部4から転写基板41を介した光照射が可能である場合、光源12、光学系13は、基板保持部4側に配設することができる。また、使用するモールド31が光透過性材料からなるものであっても、基板保持部4から転写基板41を介した光照射が可能である場合、光源12、光学系13を基板保持部4側に配設してもよく、また、光源12、光学系13をモールド保持部2側、および、基板保持部4側の双方に配設してもよい。また、被成形樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合には、本発明のインプリント装置は、光源12、光学系13が配設されていない構成であってもよい。
【0024】
[インプリント方法]
本発明のインプリント方法は、液滴供給工程、接触工程、硬化工程、離型工程を有している。そして、モールドの凹凸構造を有する面に対して側方から軟X線をモールドに照射するように軟X線照射方式の静電気除去装置を配し、かつ、当該静電気除去装置から軟X線が照射されているときに、インクジェットヘッドの少なくとも液滴吐出口に軟X線が照射されないようにインクジェットヘッドを駆動するものとし、少なくとも離型工程では、静電気除去装置を用いてモールドの除電を行うものである。
このような本発明のインプリント方法を、上述の本発明のインプリント装置1を使用した場合を例として
図6を参照しながら説明する。尚、
図6では、転写基板とモールドのみを示し、インプリント装置1を構成する各部材は図示しておらず、以下の説明では、
図1および
図2に示されるインプリント装置1の対応する部材番号を括弧内に記載する。
【0025】
<液滴供給工程>
本発明では、転写基板41を保持した基板保持部(4)が液滴供給位置に移動し、液滴供給工程で、基板保持部(4)に保持されているインプリント用の転写基板41上の所望の領域に、液滴供給部(6)のインクジェットヘッド(7)から被成形樹脂の液滴51を吐出して供給する(
図6(A))。このような被成形樹脂の液滴51の供給時のインクジェットヘッド(7)の位置は、
図2において実線で示される位置である。
本発明のインプリント方法に使用する転写基板41は適宜選択することができ、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、金属基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板であってよい。また、例えば、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等の所望のパターン構造物が形成されたものであってもよい。
【0026】
被成形樹脂は、インクジェットヘッドからの吐出が可能な流動性を有するものであればよく、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。例えば、光硬化性樹脂としては、主剤、開始剤、架橋剤により構成され、また、必要に応じて、モールドとの付着を抑制するための離型剤や、転写基板41との密着性を向上させるための密着剤を含有しているものであってよい。そして、インプリント方法により製造するパターン構造体の用途、要求される特性、物性等に応じて、使用する被成形樹脂を適宜選択することができる。例えば、パターン構造体の用途がリソグラフィ用途であれば、エッチング耐性を有し、粘度が低く残膜厚みが少ないことが要求され、パターン構造体の用途が光学部材であれば、特定の屈折率、光透過性が要求され、これらの要求に応じて光硬化性樹脂を適宜選択することができる。但し、いずれの用途であっても、使用するインクジェットヘッドへの適合性を満たす特性(粘度、表面張力等)を具備していることが要求される。尚、インクジェットヘッドは、その構造および材質等に応じて、適合する液体の粘度、表面張力等が異なる。このため、使用する被成形樹脂の粘度や表面張力等を適宜に調整すること、あるいは、使用する被成形樹脂に適合するインクジェットヘッドを適宜に選択することが好ましい。
また、液滴供給部(6)のインクジェットヘッド(7)から転写基板41上に供給する被成形樹脂の液滴51の個数、隣接する液滴の距離は、個々の液滴の滴下量、必要とされる光硬化性樹脂の総量、基板に対する光硬化性樹脂の濡れ性、後工程である接触工程におけるモールド31と転写基板41との間隙等から適宜設定することができる。
【0027】
<接触工程>
次に、基板保持部(4)を液滴供給位置から転写位置に移動させ、モールド保持部(2)と基板保持部(4)とを近接させ凹凸構造を備えたモールド31と転写基板41を近接させて、このモールド31と転写基板41との間に樹脂の液滴51を展開して光硬化性樹脂層52を形成する(
図6(B))。
図示例では、モールド31は凸構造部位を有するメサ構造であり、凹凸構造領域32は凸構造部位に位置している。このようなモールド31の材質は適宜選択することができるが、光硬化性樹脂層を硬化させるための照射光が透過可能な透明基板を用いて形成することができ、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。モールド31の厚みは凹凸構造の形状、材料強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。尚、モールド31はメサ構造を具備しないものであってもよい。
【0028】
<硬化工程>
次いで、モールド31側から光照射を行い、光硬化性樹脂層52を硬化させて、モールド31の凹凸構造が転写された転写樹脂層55とする(
図6(C))。この硬化工程では、転写基板41が光透過性の材料からなる場合、転写基板41側から光照射を行ってもよく、また、転写基板41とモールド31の両側から光照射を行ってもよい。
また、被成形樹脂が熱硬化性樹脂、あるいは、熱可塑性樹脂である場合には、それぞれ被成形樹脂層52に対して加熱処理、あるいは、冷却(放冷)処理を施すことにより硬化させることができる。
【0029】
<離型工程>
次に、離型工程にて、転写樹脂層55とモールド31を引き離して、転写樹脂層55であるパターン構造体61を転写基板41上に位置させた状態とする(
図6(D))。
この離型工程では、駆動部(8)により、液滴供給部(6)のインクジェットヘッド(7)を、軟X線照射方式の静電気除去装置(10)からの軟X線の照射範囲外の位置(
図2に鎖線で示される位置)に移動させ、その後、静電気除去装置(10)から軟X線を照射して、モールド31の除電を行う。
静電気除去装置(10)は、モールド31の凹凸構造領域32を有する面に対して側方から軟X線をモールドに照射するように配置される。ここで、上記の「モールド31の凹凸構造領域32を有する面に対して側方」とは、所定の角度範囲で広角に照射される軟X線の照射中心方向が、モールド31の凹凸構造領域32を有する面の垂線(
図6(C)に示される一点鎖線L)に対して90°±45°の範囲となることを意味する。また、インクジェットヘッド(7)の少なくとも液滴吐出口に軟X線が照射されないようにインクジェットヘッド(7)を駆動する方法は、例えば、上述の本発明のインプリント装置の説明(
図3〜
図5参照)で挙げたような種々の方法を採用することができる。
【0030】
離型工程での静電気除去装置(10)からの軟X線の照射は、モールド31の除電が可能なように行うものであり、照射時期は、インクジェットヘッド(7)が少なくとも液滴吐出口に軟X線が照射されない状態にあれば、適宜設定することができる。例えば、転写樹脂層55とモールド31の引き離しに際して行うことができ、また、転写樹脂層55とモールド31の引き離しが完了した後に行ってもよい。さらに、硬化工程が終了した後、静電気除去装置(10)からの軟X線照射を開始し、転写樹脂層55とモールド31の引き離しが完了し、基板保持部(4)が移動を開始するまで軟X線照射を継続してもよい。
【0031】
上述の本発明のインプリント方法では、転写樹脂層とモールドとを引き離す剥離工程におけるモールドの帯電が抑制され、また、インクジェットヘッドの液滴吐出口への軟X線の照射を防止するので、モールドの破損、被成形樹脂の劣化等が防止され、これにより、高精度のパターン構造体を安定して作製することができる。そして、このような本発明のインプリント方法は、半導体デバイスの製造や、マスターモールドを用いたレプリカモールドの製造等に使用することができる。
上述のインプリント方法の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のインプリント方法では、インクジェットヘッド(7)が少なくとも液滴吐出口に軟X線が照射されない状態に駆動されていることを前提として、転写基板41上に供給された被成形樹脂の液滴51に悪影響が及ばない範囲で、接触工程、硬化工程においても静電気除去装置(10)から随時軟X線を照射してもよい。