(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のバスリングは、前記保持部材の軸方向に沿って互いに平行に並列配置され、前記軸方向に隣り合う2つのバスリングのうち、少なくとも一方のバスリングが絶縁体によって被覆されている、
請求項1に記載の集配電リング。
環状に配置された複数のティースに巻き回された複数相の巻線に対して集配電を行う複数のバスリングと、前記複数のバスリングを保持する樹脂からなる保持部材とを備えた集配電リングの製造方法であって、
前記複数のバスリングの軸方向に沿って相対移動し、型締めによって前記複数のバスリングの周方向に沿った環状の成形空間を形成する一対の金型を用い、
前記成形空間内に前記複数のバスリングが支持された状態で溶融樹脂を前記成形空間に注入して前記保持部材を成形し、
前記金型は、第1の金型部材及び第2の金型部材を有し、
前記第1の金型部材には、前記複数のバスリングをそれぞれ支持する複数の溝部が形成され、
前記第2の金型部材には、前記複数の溝部に対向し、前記複数のバスリングの外周面の少なくとも一部に接触する接触面が形成され、
前記複数のバスリングは、前記第1の金型部材の前記複数の溝部と前記第2の金型部材の前記接触面との間に挟持された状態で型締めされる、
集配電リングの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動機1の概略の構成例を説明するために示す模式図である。
【0012】
(電動機1の構成)
この電動機1は、固定子であるステータ11と、回転子であるロータ12と、ステータ11に駆動電流を配電する集配電リング2とを備えている。
【0013】
ステータ11は、磁性材料からなる複数のティース110に複数相の巻線111,112,113を巻き回してなる。各ティース110には、U相の巻線111、V相の巻線112、又はW相の巻線113が巻き回されている。U相の巻線111、V相の巻線112、及びW相の巻線113は、この順序でステータ11の周方向(
図1の時計回り方向)に沿って配置されている。
【0014】
U相の巻線111の一端は第1の引き出し線111aとして、またU相の巻線111の他端は第2の引き出し線111bとして、それぞれ構成されている。同様に、V相の巻線112の一端は第1の引き出し線112aとして、他端は第2の引き出し線112bとして構成されている。また、W相の巻線113の一端は第1の引き出し線113aとして、他端は第2の引き出し線113bとして構成されている。
【0015】
ロータ12は、図略の軸受によってステータ11と同軸上で回転可能に支持されたシャフト120と、シャフト120の外周面に固定された複数の磁極を有する磁石121とを有している。
【0016】
集配電リング2は、第1〜第3のバスリング21〜23と、保持部材3とを備えている。第1〜第3のバスリング21〜23は、図略のインバータから出力される駆動電流を電動機1のU相,V相,W相の各巻線111,112,113にそれぞれ配電する。これらの第1〜第3のバスリング21〜23は、ステータ11と同心状に配置されている。第1〜第3のバスリング21〜23の端部21b,22b,23bには、U相,V相,W相の駆動電流の供給を受ける給電端子21c,22c,23cがそれぞれ接続されている。
【0017】
第1のバスリング21には、U相の巻線111の第1の引き出し線111aが接続されている。第2のバスリング22には、V相の巻線112の第1の引き出し線112aが接続されている。第3のバスリング23には、W相の巻線113の第1の引き出し線113aが接続されている。
【0018】
また、電動機1は、U相の巻線111の第2の引き出し線111b、V相の巻線112の第2の引き出し線112b、及びW相の巻線113の第2の引き出し線113bが接続された環状の中性相バスリング20を備えている。中性相バスリング20は、ステータ11及び第1〜第3のバスリング21〜23と同心状に配置されている。
【0019】
U相の巻線111、V相の巻線112、及びW相の巻線113には、図略のインバータから位相が120°ずつずれた正弦波状の駆動電流が供給され、ステータ11に回転磁界を形成する。磁石121は、回転磁界による吸引力及び反発力により回転力を受け、この回転力によってシャフト120が回転する。
【0020】
(集配電リング2の構成)
図2は、第1の実施の形態に係る集配電リング2を示し、(a)は斜視図、(b)は集配電リング2の軸方向から見た正面図、(c)は(b)におけるB部拡大図である。
図3は、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20を示す部分拡大図である。
【0021】
図3に示すように、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20は、環状に形成されて集配電リング2の軸方向に沿って互いに平行に並列配置され、樹脂からなる保持部材3(
図2(a)及び(b)参照)によって相互に固定されている。本実施の形態では、集配電リング2の軸方向において、上側から中性相バスリング20、第1のバスリング21、第2のバスリング22、第3のバスリング23の順に配列されている。
【0022】
図3に示すように、第1のバスリング21は、周方向の複数箇所に形成された引き出し線挿通部21aと、複数の引き出し線挿通部21aの間に形成された複数の円弧部21dとを有している。複数の引き出し線挿通部21aは、複数の円弧部21dの径方向内側に突出している。
【0023】
同様に、第2のバスリング22は、周方向の複数箇所に形成された複数の引き出し線挿通部22aと、複数の引き出し線挿通部22aの間に形成された複数の円弧部22dとを有している。複数の引き出し線挿通部22aは、複数の円弧部22dの径方向内側に突出している。
【0024】
また同様に、第3のバスリング23は、周方向の複数箇所に形成された複数の引き出し線挿通部23aと、複数の引き出し線挿通部23aの間に形成された複数の円弧部23dとを有している。複数の引き出し線挿通部23aは、複数の円弧部23dの径方向内側に突出している。
【0025】
中性相バスリング20は、周方向の複数箇所に形成された複数の引き出し線挿通部20aと、複数の引き出し線挿通部20aの間に形成された複数の円弧部20dとを有している。複数の引き出し線挿通部20aは、複数の円弧部20dの径方向外側に突出している。つまり、第1〜第3のバスリング21〜23の引き出し線挿通部21a,22a,23aは、円弧部21d,22d,23dの径方向内側に突出し、中性相バスリング20の引き出し線挿通部20aは、円弧部20dの径方向外側に突出している。
【0026】
本実施の形態では、中性相バスリング20は24個の引き出し線挿通部20aを有し、第1〜第3のバスリング21〜23はそれぞれ8個の引き出し線挿通部21a,22a,23aを有している。すなわち、引き出し線挿通部の数が最も多い中性相バスリング20における引き出し線挿通部20aの突出方向と、他の第1〜第3のバスリング21〜23における引き出し線挿通部21a,22a,23aの突出方向とが逆向きに形成されている。なお、第1〜第3のバスリング21〜23の引き出し線挿通部21a,22a,23aの数(8個)を足し合わせた数(24個)は、中性相バスリング20の引き出し線挿通部20aの数(24個)に一致している。
【0027】
図2(a)及び(b)に示すように、保持部材3は、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20に沿った環状であり、その周方向の複数箇所に第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20を径方向に露出させる露出部としての複数(本実施の形態では12個)の凹部31が形成されている。凹部31は、
図2(b)及び(c)に示すように、保持部材3の内周面3aに開口310を有し、開口310から第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20を径方向内方に臨ませる窪みである。なお、凹部31は、保持部材3の外周面3bに開口を有し、この開口から第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20を径方向外方に臨ませる窪みとして形成されていてもよい。
【0028】
複数の凹部31のうち、
図2(a)に示すように周方向に並んだ3つの凹部31を第1乃至第3の凹部31a,31b,31cとすると、第1の凹部31aと第2の凹部31bとの間には、第1のバスリング21の引き出し線挿通部21a及び第2のバスリング22の引き出し線挿通部22aが配置されている。第2の凹部31bと第3の凹部31cとの間には、第3のバスリング23の引き出し線挿通部23a及び第1のバスリング21の引き出し線挿通部21aが配置されている。第3の凹部31cと第1の凹部31aとの間には、第2のバスリング22の引き出し線挿通部22a及び第3のバスリング23の引き出し線挿通部23aが配置されている。すなわち、隣り合う凹部31の間には、2つの引き出し線挿通部が配置されている。なお、凹部31は、隣り合う凹部31の間に1つの引き出し線挿通部が配置されるように形成されてもよい。
【0029】
保持部材3には、集配電リング2をステータ11に取り付けるための複数(本実施の形態では5つ)の取付部32が集配電リング2の径方向外側に突出して形成されている。取付部32には、集配電リング2をステータ11に固定させるためのボルト5を挿通させる挿通孔320が形成されている。なお、
図2(a)及び(b)では、1つのボルト5のみが図示されている。
【0030】
図4は、
図2(a)のA−A線断面図である。
【0031】
本実施の形態では、第1〜第3のバスリング21〜23が絶縁体212,222,232によって被覆され、中性相バスリング20は絶縁体によって被覆されていない。なお、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20は、絶縁性を確保するため、軸方向に隣り合う2つのバスリングのうち、少なくとも一方のバスリングが絶縁体によって被覆されていればよい。つまり、絶縁体に被覆されていない2つのバスリングが隣り合わなければよい。
【0032】
より具体的には、第1のバスリング21は、銅等の良伝導性の金属からなる金属導体211と、金属導体211の外周を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁体212とを有して構成され、この金属導体211を屈曲して引き出し線挿通部21a(
図3参照)が形成されている。
図4に示すように、引き出し線挿通部21aは、絶縁体212が除去された部分に形成されている。
【0033】
同様に、第2のバスリング22は、銅等の良伝導性の金属からなる金属導体221と、金属導体221の外周を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁体222とを有して構成され、この金属導体221を屈曲して引き出し線挿通部22a(
図3参照)が形成されている。引き出し線挿通部22aは、絶縁体222が除去された部分に形成されている。
【0034】
また同様に、第3のバスリング23は、銅等の良伝導性の金属からなる金属導体231と、金属導体231の外周を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁体232とを有して構成され、この金属導体231を屈曲して引き出し線挿通部23a(
図3参照)が形成されている。引き出し線挿通部23aは、絶縁体232が除去された部分に形成されている。
【0035】
中性相バスリング20は、第1〜第3のバスリング21〜23と異なり銅等の良伝導性の金属からなる金属導体201で構成され、この金属導体201を屈曲して引き出し線挿通部20a(
図3参照)が形成されている。なお、中性相バスリング20は裸線であるため、引き出し線挿通部20aは、第1〜第3のバスリング21〜23の引き出し線挿通部21a,22a,23aよりも小さく形成されている。
【0036】
(集配電リング2の製造方法)
次に、集配電リング2の製造方法について、以下に説明をする。
図5は、第1の実施の形態に係る集配電リング2の製造工程の一例を示し、保持部材3の凹部31における断面図である。
【0037】
集配電リング2の製造方法は、後述する金型4の成形空間40内に第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20を配置する配置工程と、成形空間40内に第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20が支持された状態で溶融樹脂30を成形空間40に注入する注入工程とを有する。
【0038】
金型4は、第1の金型41、第2の金型42、及び第3の金型43から構成されている。第1の金型41には、第1のバスリング21が支持される第1の溝部421、第2のバスリング22が支持される第2の溝部422、第3のバスリング23が支持される第3の溝部423、及び中性相バスリング20が支持される中性相用溝部420が、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20の周方向に沿って形成されている。第1〜第3の溝部421〜423及び中性相用溝部420は、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20の軸方向に沿って互いに平行に形成されている。
【0039】
配置工程では、固定された第3の金型43に第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20を配置し、第1の金型41を径方向内側から外側に向かって移動させる。このとき、第1のバスリング21を第1の溝部421に、第2のバスリング22を第2の溝部422に、第3のバスリング23を第3の溝部423に、中性相バスリング20を中性相用溝部420に、それぞれ保持させる。第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20が保持された第1の金型41と、第3の金型43の第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20に対向するバスリング対向面43aとの間には、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20が、第1〜第3の溝部421〜423及び中性相用溝部420から外れない程度の隙間が介在していてもよい。
【0040】
次に、第2の金型42を第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20の軸方向上方から第1の金型41及び第3の金型43に向かって移動させ、第1の金型41及び第3の金型43に組み合わせる。これにより、成形空間40が形成される。
【0041】
注入工程では、配置工程において形成された成形空間40に熱によって溶融した溶融樹脂30を流し込む。溶融樹脂30は自然冷却によって硬化(固化)し、保持部材3が得られる。第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20は、この保持部材3の内部に保持される。第1の金型41及び第2の金型42を取り外すことにより、
図2(a)及び(b)に示す集配電リング2が得られる。
【0042】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
【0043】
(1)集配電リング2は、複数の凹部31を支持して保持部材3を環状に形成することにより、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20の軸方向に沿って相対移動する一対の金型4(第1の金型41及び第2の金型42)を用いて保持部材3をモールド成形することが可能である。これにより、集配電リング2の周方向の複数箇所に複数の独立した保持部材を形成する場合に比べて、製造装置の構成を簡略化することができる。
【0044】
(2)第1〜第3のバスリング21〜23は、保持部材3の軸方向に沿って互いに平行に並列配置され、それぞれのバスリングは絶縁体212,222,232によって金属導体211,221,231が被覆されているため、金属導体211,221,231が互いに接触することによって発生する漏電、あるいは保持部材3の表面に沿って電流が流れることによる漏電を抑止することができる。
【0045】
(3)保持部材3は、一体の円環形状のモールド体でありながらも、露出部としての凹部31が形成されているので、保持部材3に熱膨張等に起因する応力が印加されたとしても保持部材3に印加される当該応力を緩和することが可能である。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図6から
図9を参照して説明する。これらの図において、第1の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る集配電リング2Aを示し、(a)は斜視図、(b)は集配電リング2Aの軸方向から見た正面図、(c)は(a)におけるC部拡大図である。なお、
図6(b)では、第1〜第3の給電線63,73,83及び給電端子630,730,830について図示を省略している。
図7は、第2の実施の形態に係る第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9を示す部分拡大図である。
図8は、
図6(b)のD−D線断面図である。
【0048】
(集配電リング2Aの構成)
本実施の形態に係る集配電リング2Aは、複数のティース110に巻き回されたU相の巻線111、V相の巻線112、及びW相の巻線113(
図1参照)に対して集配電を行う第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9と、第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9を保持する環状の保持部材3Aとを備えている。
【0049】
図7に示すように、第1のバスリング6は、ロータ12(
図1参照)の回転軸線を中心とする環状の絶縁電線からなる第1の環状導電体61と、第1の環状導電体61から径方向内方に突出した複数の第1の接続端子62と、第1の環状導電体61に給電するための第1の給電線63及び給電端子630とを有している。第1の環状導電体61は、
図8に示すように、銅等の良伝導性の金属からなる金属導体611と、金属導体611の外周を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁体612とを有して構成されている。
【0050】
同様に、第2のバスリング7は、ロータ12(
図1参照)の回転軸線を中心とする環状の絶縁電線からなる第2の環状導電体71と、第2の環状導電体71から径方向内方に突出した複数の第2の接続端子72と、第2の環状導電体71に給電するための第2の給電線73及び給電端子730とを有している。第2の環状導電体71は、
図8に示すように、銅等の良伝導性の金属からなる金属導体711と、金属導体711の外周を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁体712とを有して構成されている。
【0051】
また同様に、第3のバスリング8は、ロータ12(
図1参照)の回転軸線を中心とする環状の絶縁電線からなる第3の環状導電体81と、第3の環状導電体81から径方向内方に突出した第3の接続端子82と、第3の環状導電体81に給電するための第3の給電線83及び給電端子830とを有している。第3の環状導電体81は、
図8に示すように、銅等の良伝導性の金属からなる金属導体811と、金属導体811の外周を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁体812とを有して構成されている。
【0052】
中性相バスリング9は、円弧状に形成された複数の円弧状導電体9aからなり、これらの円弧状導電体9aが保持部材3Aの周方向に沿って配置されることにより、全体として環状に構成されている。円弧状導電体9aは、所定の形状に形成された板状の導電性部材を塑性変形させて形成されている。円弧状導電体9aは、複数箇所で屈曲されて円弧状に形成された円弧部91と、円弧部91から径方向内方に突出した中性相接続端子92とを一体に有している。
【0053】
図7及び
図8に示すように、第1〜第3のバスリング6〜8は、集配電リング2Aの軸方向に沿って互いに平行に並列配置されている。中性相バスリング9は、第1〜第3のバスリング6〜8よりも集配電リング2Aの径方向内側に配置されている。第1の接続端子62、第2の接続端子72、第3の接続端子82、及び中性相接続端子92は、それぞれ集配電リング2Aの軸方向から見てJ字形状であり、中性相バスリング9の円弧部91よりも径方向内方に突出している。
【0054】
本実施の形態に係る保持部材3Aは、
図6(a)及び(b)に示すように、第1〜第3のバスリング6〜8を保持する第1の基部31Aと、中性相バスリング9を保持する第2の基部32Aと、第1〜第3のバスリング6〜8及び第1〜第3の給電線63,73,83の接続部分を保持する給電線保持部33Aとを一体に有している。
【0055】
第1の基部31Aは、内周面31Aaに複数の第1の凹部311Aが形成され、外周面31Abに複数の第2の凹部312Aが形成されている。第1〜第3のバスリング6〜8の径方向内側(第1の基部31Aの内周面31Aa)の複数箇所に形成された第1の凹部311Aは、保持部材3Aの軸方向端面に開口311Aaを有して保持部材3Aの軸方向に延びる穴である。より具体的には、第1の凹部311Aは、第1の基部31Aの軸方向における上面31Ac(第1のバスリング6側)に開口311Aaを有し、第2の基部32Aの軸方向における上面32Ac側に向かって延びる穴として形成されている。
【0056】
第1〜第3のバスリング6〜8の径方向外側(第1の基部31Aの外周面31Ab)の複数箇所に形成された第2の凹部312Aは、保持部材3Aの外周面(第1の基部31Aの外周面31Ab)に開口312Aaを有して開口312Aaから第1〜第3のバスリング6〜8を径方向外方に臨ませる窪みである。
【0057】
(集配電リング2Aの製造方法)
次に、集配電リング2Aの製造方法について、以下に説明をする。
図9は、第2の実施の形態に係る集配電リング2Aの製造工程の一例を示し、
図6(b)におけるE−E線断面図である。
【0058】
本実施の形態に係る集配電リング2Aの製造方法は、金型4A及び第3の金型43Aの間に形成された成形空間40A内に第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9を配置する配置工程と、成形空間40A内に第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9が支持された状態で溶融樹脂30を成形空間40Aに注入する注入工程とを有する。
【0059】
金型4Aは、第1の金型41A、第2の金型42A、及び第3の金型43Aから構成されている。第1の金型41Aには、保持部材3Aの第1の凹部311Aを形成する複数の突部410Aが設けられている。突部410Aは、第2の金型42Aに向かって延びる棒状であり、第1〜第3のバスリング6〜8の外周面の少なくとも一部に接触する接触面410Aaを有している。なお、突部410Aは、第2の金型42A側に設けられていてもよい。
【0060】
第3の金型43Aには、第1のバスリング6が支持される第1の溝部101、第2のバスリング7が支持される第2の溝部102、及び第3のバスリング8が支持される第3の溝部103が、第1〜第3のバスリング6〜8の周方向に沿って形成されている。第1〜第3の溝部101〜103は、第1〜第3のバスリング6〜8の軸方向に沿って互いに平行に形成されている。
【0061】
配置工程では、固定された第2の金型42Aに第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9を配置し、第3の金型43Aを径方向外側から内側に向かって移動させる。このとき、第1のバスリング6を第1の溝部101に、第2のバスリング7を第2の溝部102に、第3のバスリング8を第3の溝部103に、それぞれ保持させる。
【0062】
次に、第1の金型41Aを第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9の軸方向上方から第2の金型42A及び第3の金型43Aに向かって移動させ、第1の金型41Aを第2の金型42A及び第3の金型43Aに組み合わせる。第1の金型41Aの凸部410Aは、第1〜第3のバスリング6〜8と中性相バスリング9との間に挿入され、凸部410Aの接触面410Aaが第1〜第3のバスリング6〜8の外周面に接触する。第1〜第3のバスリング6〜8は、第1〜第3の溝部101〜103と凸部410Aの接触面410Aaとの間に挟持される。これにより、成形空間40Aが形成される。
【0063】
注入工程では、配置工程において形成された成形空間40Aに熱によって溶融した溶融樹脂30を流し込む。溶融樹脂30は自然冷却によって硬化(固化)し、保持部材3Aが得られる。第1〜第3のバスリング6〜8は保持部材3Aの第1の基部31Aの内部に保持され、中性相バスリング20は保持部材3Aの第2の基部32Aの内部に保持される。第1の金型41、第2の金型42、及び第3の金型43Aを取り外すことにより、
図6(a)及び(b)に示す集配電リング2Aが得られる。
【0064】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)乃至(3)の作用及び効果の他に、以下のような作用及び効果が得られる。
【0065】
(4)集配電リング2Aは、第1〜第3のバスリング6〜8の径方向内側の複数箇所に第1の凹部311Aが形成され、第1〜第3のバスリング6〜8の径方向外側の複数箇所に第2の凹部312Aが形成されているため、第1〜第3のバスリング6〜8を径方向の内側及び外側から支持することができる。したがって、保持部材3Aをモールド成形する際の注入工程における第1〜第3のバスリング6〜8の移動(ずれ)を抑制することが可能である。
【0066】
(5)第1の金型41Aに軸方向に延びる突部410Aを形成し、金型4Aの型締めの際、この突部410Aを第1〜第3のバスリング6〜8の径方向内側に配置することにより、保持部材3Aのモールド成形時における第1〜第3のバスリング6〜8の移動(ずれ)をより抑制することができる。つまり、突部410Aは、第1の金型41Aの一部であり、型締めと同時に突部410Aが第3の金型43Aとの間に第1〜第3のバスリング6〜8を挟む位置に配置されるので、製造装置の複雑化を招来することなく第1〜第3のバスリング6〜8のずれを抑制することができる。
【0067】
(6)第1〜第3のバスリング6〜8は、第3の金具43Aに形成された第1〜第3の溝部101〜103と第1の金型41Aに形成された凸部410Aの接触面410Aaとの間に挟持された状態で型締めされるため、溶融樹脂30を成形空間40A内に流し込む際、第1〜第3のバスリング6〜8が第1〜第3の溝部101〜103から外れてしまうことを抑制することができる。
【0068】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0069】
[1]環状に配置された複数のティース(110)に巻き回された複数相の巻線(111,112,113)に対して集配電を行う複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)と、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)を保持する樹脂からなる保持部材(3/3A)とを備え、前記保持部材(3/3A)は、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)に沿った環状であり、その周方向の複数箇所に前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)を径方向に露出させる露出部(31/第1の凹部311A及び第2の凹部312A)が形成されている集配電リング(2/2A)。
【0070】
[2]前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)は、前記保持部材(3/3A)の軸方向に沿って互いに平行に並列配置され、前記軸方向に隣り合う2つのバスリングのうち、少なくとも一方のバスリングが絶縁体(212,222,232/612,712,812)によって被覆されている、[1]に記載の集配電リング(2/2A)。
【0071】
[3]前記露出部(第1の凹部311A及び第2の凹部312A)は、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)の径方向内側の複数箇所、及び前記複数のバスリング第1〜第3のバスリング6〜8の径方向外側の複数箇所に形成されている、[1]又は[2]に記載の集配電リング(2A)。
【0072】
[4]前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)の径方向内側の複数箇所に形成された前記露出部(第1の凹部311A)は、前記保持部材(3A)の軸方向端面(上面31Ac)に開口(311Aa)を有して前記保持部材(3A)の軸方向に延びる穴であり、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)の径方向外側の複数箇所に形成された前記露出部(第2の凹部312A)は、前記保持部材(3A)の外周面(31Ab)に開口(312Aa)を有して前記開口(312Aa)から前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)を径方向外方に臨ませる窪みである、[3]に記載の集配電リング(2A)。
【0073】
[5]環状に配置された複数のティース(110)に巻き回された複数相の巻線(111,112,113)に対して集配電を行う複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)と、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)を保持する樹脂からなる保持部材(3/3A)とを備えた集配電リング(2/2A)の製造方法であって、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)の軸方向に沿って相対移動し、型締めによって前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)の周方向に沿った環状の成形空間(40/40A)を形成する一対の金型(4/4A)を用い、前記成形空間(40/40A)内に前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20/第1〜第3のバスリング6〜8及び中性相バスリング9)が支持された状態で溶融樹脂(30)を前記成形空間(40/40A)に注入して前記保持部材(3/3A)を成形する集配電リング(2/2A)の製造方法。
【0074】
[6]前記金型(4A)は、第1の金型部材(第3の金型43A)及び第2の金型部材(第1の金型41A)を有し、前記第1の金型部材(第3の金型43A)には、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)をそれぞれ支持する複数の溝部(第1〜第3の溝部101〜103)が形成され、前記第2の金型部材(第1の金型41A)には、前記複数の溝部(第1〜第3の溝部101〜103)に対向し、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)の外周面の少なくとも一部に接触する接触面(410Aa)が形成され、前記複数のバスリング(第1〜第3のバスリング6〜8)は、前記第1の金型部材(第3の金型43A)の前記複数の溝部(第1〜第3の溝部101〜103)と前記第2の金型部材(第1の金型41A)の前記接触面(410Aa)との間に挟持された状態で型締めされる、[5]に記載の集配電リングの製造方法。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0076】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、第1の実施の形態では、中性相バスリング20の引き出し線挿通部20aが円弧部20dの径方向外側に突出していたが、これに限らず、中性相バスリング20及び第1〜第3のバスリング21〜23のうち少なくとも1つのバスリングの引き出し線挿通部が円弧部の径方向外側に突出していればよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、第1〜第3のバスリング21〜23,6〜8は、それぞれ絶縁体212,222,232,612,712,812で被覆されていたが、これに限らず、軸方向に隣り合う2つのバスリングのうち、少なくとも一方のバスリングが絶縁体によって被覆されていればよい。
【0078】
また、上記実施の形態で用いられた金型4,4Aは、保持部材3,3Aをモールド成形する趣旨を逸脱しない範囲であれば、その形状及び動作について特に制限はない。
【0079】
また、上記第1の実施の形態において、第3の金型43のバスリング対向面43aを第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20の外周面に接触させながら、成形空間40内に溶融樹脂30を流し込んでもよい。これにより、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20は、第1〜第3の溝部421〜423及び中性相用溝部420とバスリング対向面43aとの間に挟持されるため、溶融樹脂30を成形空間40内に流し込む際、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20が第1〜第3の溝部421〜423及び中性相用溝部420から外れてしまうことを抑制することができる。
【0080】
また、上記第1の実施の形態において、第2の金型42に第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20の外周面に接触する接触面を有する接触部を設けてもよい。これにより、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20は、第1〜第3の溝部421〜423及び中性相用溝部420と第2の金型42の接触部との間に挟持されるため、溶融樹脂30を成形空間40内に流し込む際、第1〜第3のバスリング21〜23及び中性相バスリング20が第1〜第3の溝部421〜423及び中性相用溝部420から外れてしまうことを抑制することができる。