特許第6032047号(P6032047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032047
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/13 20060101AFI20161114BHJP
   H02P 21/10 20160101ALI20161114BHJP
【FI】
   H02P21/13
   H02P21/10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-27086(P2013-27086)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-158336(P2014-158336A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】東條 威士
(72)【発明者】
【氏名】稲積 祐敦
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−29028(JP,A)
【文献】 特開2011−135641(JP,A)
【文献】 特開2012−116372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/13
H02P 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相モータに流れる三相電流を検出する電流検出部と、
前記三相モータの回転子が回転する位相角を検出する回転検出部と、
検出された三相電流を、前記三相モータの回転子の位相角を基準とするdq座標軸上のd軸電流およびq軸電流に変換する検出電流変換部と、
前記d軸電流および前記q軸電流を、前記dq座標軸から誤差角度だけ遅れた推定座標軸であるγδ座標軸上のγ軸電流およびδ軸電流のそれぞれに変換する座標軸変換部と、
前記γ軸電流および前記δ軸電流を入力パラメータとした前記三相モータにおける見かけ上の誘起電圧である拡張誘起電圧に関するγδ座標軸上の拡張誘起電圧方程式に対する、前記回転検出部からの出力を用いた外乱オブザーバに基づいて、前記位相角の誤差角度を推定する誤差角度推定部と、
推定された誤差角度で前記位相角を補正する位相角補正部と、
補正後の位相角に基づいて、前記dq座標軸上の指令d軸電圧および指令q軸電圧を、指令三相電圧に変換する電圧変換部と、
前記指令三相電圧に基づいて、実際の三相電圧を生成して前記三相モータに印加することにより、前記三相電流を前記三相モータに流す電力変換部と、
を備えたモータ制御装置。
【請求項2】
前記検出電流変換部は、前記補正後の位相角を用いて、前記検出された三相電流を、前記d軸電流および前記q軸電流に変換する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記外乱オブザーバは、前記拡張誘起電圧を推定するための微分方程式であり、
前記誤差角度推定部は、前記外乱オブザーバに基づいて、前記γδ座標上のγ軸拡張誘起電圧およびδ軸拡張誘起電圧を求め、前記γ軸拡張誘起電圧および前記δ軸拡張誘起電圧から前記誤差角度を推定する、
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記外乱オブザーバは、前記位相角に基づく前記回転子の角速度をパラメータとする、
請求項1〜3のいずれか一つに記載のモータ制御装置。
【請求項5】
外部からの指令トルクに基づいて、前記dq座標軸上の指令d軸電流および指令q軸電流を算出する電流指令部と、
前記d軸電流と、前記q軸電流と、前記指令d軸電流と、前記指令q軸電流とに基づいて、前記指令d軸電圧および前記指令q軸電圧を演算する電圧演算部と、
をさらに備えた請求項1〜4のいずれか一つに記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三相同期モータ等のACモータの制御装置にインバータを適用する技術が普及し、従来と比較して格段に制御性能が向上している。インバータを適用したモータ制御装置では、外部からの指令トルクに基づくとともに、ACモータの電機子巻線に流れる各相の電流を検出してフィードバックすることで、印加する矩形波電圧の位相を制御したり、パルス幅変調(PWM)方式により電圧実効値を制御したりして電流を制御する場合が多い。
【0003】
このようなACモータのトルク制御方法として、U相、V相、W相の三相固定座標系における電圧方程式を、回転子の磁石の位相角を基準とするdq座標の二相回転座標系に変換して、ACモータの電流制御を行うベクトル制御が知られている。このベクトル制御では、制御装置でACモータの回転子の位相角を検出して角速度を演算し、dq座標軸上で制御演算を行って電流制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−298992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなベクトル制御では、ACモータの回転子の位相角を、角度センサであるレゾルバ等で検出するが、レゾルバ等で検出される位相角にはレゾルバ回転1次、2次等の誤差角度が生じることがある。このような誤差角度により、位相角に対する適切な電流制御が困難となり、トルク脈動やノイズ発生の原因となる。
【0006】
ここで、三相電流のオフセットをフィードバックしてACモータの電流制御を行ってトルク脈動やノイズ発生を回避する手法では、三相一周回分の電流値をフィードバックする必要があり、高応答な制御を実現することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のモータ制御装置は、三相モータに流れる三相電流を検出する電流検出部と、前記三相モータの回転子が回転する位相角を検出する回転検出部と、検出された三相電流を、前記三相モータの回転子の位相角を基準とするdq座標軸上のd軸電流およびq軸電流に変換する検出電流変換部と、前記d軸電流および前記q軸電流を、前記dq座標軸から誤差角度だけ遅れた推定座標軸であるγδ座標軸上のγ軸電流およびδ軸電流のそれぞれに変換する座標軸変換部と、前記γ軸電流および前記δ軸電流を入力パラメータとした前記三相モータにおける見かけ上の誘起電圧である拡張誘起電圧に関するγδ座標軸上の拡張誘起電圧方程式に対する、前記回転検出部からの出力を用いた外乱オブザーバに基づいて、前記位相角の誤差角度を推定する誤差角度推定部と、推定された誤差角度で前記位相角を補正する位相角補正部と、補正後の位相角に基づいて、前記dq座標軸上の指令d軸電圧および指令q軸電圧を、指令三相電圧に変換する電圧変換部と、前記指令三相電圧に基づいて、実際の三相電圧を生成して前記三相モータに印加することにより、前記三相電流を前記三相モータに流す電力変換部と、を備えた。当該構成により、一例として、制御の高応答性を維持しつつ、トルク脈動やノイズ発生を防止することができる。
【0008】
また、実施形態のモータ制御装置において、検出電流変換部は、補正後の位相角を用いて、検出された三相電流を、d軸電流およびq軸電流に変換する。当該構成により、一例として、ベクトル制御の精度を向上させることができる。
【0009】
また、実施形態のモータ制御装置において、外乱オブザーバは、拡張誘起電圧を推定するための微分方程式であり、誤差角度推定部は、外乱オブザーバに基づいて、γδ座標上のγ軸拡張誘起電圧およびδ軸拡張誘起電圧を求め、γ軸拡張誘起電圧およびδ軸拡張誘起電圧から誤差角度を推定する。当該構成により、一例として、制御の高応答性を維持しつつ、トルク脈動やノイズ発生を防止することができる。
【0010】
また、実施形態のモータ制御装置において、外乱オブザーバは、位相角に基づく回転子の角速度をパラメータとする。当該構成により、一例として、制御の高応答性を維持しつつ、トルク脈動やノイズ発生を防止することができる。
【0011】
また、実施形態のモータ制御装置において、外部からの指令トルクに基づいて、dq座標軸上の指令d軸電流および指令q軸電流を算出する電流指令部と、d軸電流と、q軸電流と、指令d軸電流と、指令q軸電流とに基づいて、指令d軸電圧および指令q軸電圧を演算する電圧演算部と、をさらに備えた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態のモータ制御装置100の全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、dq座標軸とγδ座標軸との関係を示す図である。
図3図3は、本実施形態のモータ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態のモータ制御装置100について説明する。図1は、実施形態のモータ制御装置100の全体構成を示すブロック図である。モータ制御装置100は、ソフトウェアで動作するコンピュータを含んで構成されており、制御対象は三相同期モータ110の三相電流iu、iv、iwであり、制御量は三相同期モータ110に印加する三相電圧vu、vv、vwである。ここで、本実施形態のモータ制御装置100および三相同期モータ110は、一例として、ハイブリッド車両に搭載されるが、これに限定されるものではない。
【0014】
三相同期モータ110は、図略の回転子コアに磁石を埋め込み、固定子コア(不図示)に電機子巻線を巻回して構成した埋込磁石同期モータである。ただし、三相モータであればよく、これに限定されるものではない。モータ制御装置100は、外部から受け取ったトルク指令Req_trqに等しいトルクを三相同期モータ110から出力すべく、制御演算を行って三相電圧vu、vv、vwを制御する。
【0015】
図1に示すように、モータ制御装置100は、2個の電流検出部108a、108bと、回転検出部107と、偏差演算器111と、検出電流変換部112と、座標軸変換部113と、誤差角度推定部114と、回転数演算部115と、電流指令部101と、電圧演算部120と、電圧変換部104と、電力変換部130とを主に備えている。
【0016】
2個の電流検出部108a、108bは、三相同期モータ110の電機子巻線に接続された三相の入力線のうちのV相入力線およびW相入力線にそれぞれ設けられている。電流検出部108a、108bは、例えば周知の変流器や分路抵抗器などを用いて構成することができ、V相電流ivおよびW相電流iwを検出して、その検出信号を検出電流変換部112に出力する。なお、検出電流変換部112は、三相電流iu、iv、iwのベクトル和がゼロであることを利用して、三相目のU相電流iuを演算する。
【0017】
回転検出部107は、三相同期モータ110の回転子が回転する位相角θを検出する角度センサである。本実施形態では、回転検出部107としてレゾルバを用いている。回転検出部107により検出された位相角θは、後述する偏差演算器111で補正され、補正後の位相角が回転数演算部115および電圧変換部104に送出される。
【0018】
検出電流変換部112は、検出した三相電流iu、iv、iwを、後述する補正後の位相角を用いて、dq座標軸上のd軸電流idおよびq軸電流iqに変換する。検出電流変換部112は、位相角θを用いた公知の変換式により、三相電流iu、iv、iwからd軸電流idおよびq軸電流iqを算出して、電圧演算部120に送出する。
【0019】
ここで、d軸電流idは、三相同期モータ110の電機子巻線に流れる電流(電機子電流)のd軸成分であり、q軸電流iqは、上記電機子電流のq軸成分である。また、d軸電圧vdは、三相同期モータ110の電機子巻線に印加する電圧(電機子電圧)のd軸成分であり、q軸電圧vqは、上記電機子電圧のq軸成分である。
【0020】
dq座標軸上で、三相同期モータ110の見かけ上の誘起電圧である拡張誘起電圧に関する拡張誘起電圧方程式は、d軸電流idおよびq軸電流iqを入力パラメータとして、次の(1)式で表される。
【0021】
【数1】
【0022】
(1)式の拡張誘起電圧方程式を、dq座標系からγδ座標系へ変換すると、(2)式に示すような、γ軸電流iγおよびδ軸電流iδを入力パラメータとした拡張誘起電圧方程式となる。
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、γδ座標軸は、dq座標軸から誤差角度だけ遅れた推定座標軸である。図2は、dq座標軸とγδ座標軸との関係を示す図である。図2に示すように、γδ座標軸は、dq座標軸から誤差角度だけ遅れた座標軸となっている。ここで、符号107aは、三相同期モータ110の回転子である。
【0025】
座標軸変換部113は、検出電流変換部112で変換されたdq座標軸上のd軸電流idおよびq軸電流iqを、図2に示すようなγδ座標軸上のγ軸電流iγおよびδ軸電流iδのそれぞれに変換する。
【0026】
ここで、γ軸電流iγは、三相同期モータ110の電機子巻線に流れる電流(電機子電流)のγ軸成分であり、δ軸電流iδは、上記電機子電流のδ軸成分である。また、γ軸電圧vγは、三相同期モータ110の電機子巻線に印加する電圧(電機子電圧)のγ軸成分であり、δ軸電圧vδは、上記電機子電圧のδ軸成分である。
【0027】
図1に戻り、誤差角度推定部114は、(2)式で示されるγδ座標軸上の拡張誘起電圧方程式に対する外乱オブザーバに基づいて、位相角θの誤差角度を推定する。
【0028】
誤差角度推定部114では、次の(3)式に示す外乱オブザーバが設定されている。
【0029】
【数3】
【0030】
この外乱オブザーバは、拡張誘起電圧を推定するための微分方程式であり、回転検出部107からの出力である位相角θに基づく角速度ωをパラメータとして用いている。
【0031】
誤差角度推定部114は、回転検出部107で検出された位相角θから回転子の角速度ωを求める。具体的には、誤差角度推定部114は、2回の検出で求めた位相角θの変化量を経過時間で除算して角速度 ωを算出する。そして、誤差角度推定部114は、γ軸電流iγ、δ軸電流iδ、γ軸電圧vγ、δ軸電圧vδを逐次入力し、(3)式の外乱オブザーバを公知の数値解析により解法することにより、γδ座標上のγ軸拡張誘起電圧(拡張誘起電圧のγ軸成分)およびδ軸拡張誘起電圧(拡張誘起電圧のδ軸成分)を推定する。そして、誤差角度推定部114は、γ軸拡張誘起電圧およびδ軸拡張誘起電圧から、次の(4)式を用いて誤差角度を推定する。
【0032】
【数4】
【0033】
ここで、(1)〜(4)式の導出は、非特許文献“森本茂雄・河本啓助・武田洋次:「推定位置誤差情報を利用したIPMSM の位置・速度センサレス制御」,電学論 D,Vol.122−D,No.5 pp.722−729(2002)”に詳述されている。
【0034】
偏差演算器111は、位相角補正部として機能し、(5)式で示されるように、回転検出部107で検出された位相角θから、誤差角度推定部114で推定された誤差角度を減算することにより、位相角θを補正する。
【0035】
【数5】
【0036】
回転数演算部115は、回転検出部107で検出された位相角θから、三相同期モータ110の回転子の回転数を算出し、算出した回転数を、ハイブリッド車両のECUに送出する。
【0037】
電流指令部101は、外部から受け取ったトルク指令Req_trqを指令d軸電流Req_idおよび指令q軸電流Req_iqに変換して、電圧演算部120に指令する。この変換処理は、例えば、最大トルク/電流制御法を用いて行うことができるが、これに限定されない。
【0038】
電圧演算部120は、検出電流変換部112から出力されるd軸電流idおよびq軸電流iq、電流指令部101から出力される指令d軸電流Req_idおよび指令q軸電流Req_iqに基づいて、指令d軸電圧Req_vdおよび指令q軸電圧Req_vqを演算し、電圧変換部104に指令する。
【0039】
具体的には、電圧演算部120は、図1に示すように、二つの偏差演算器102a,102bと2つの比例積分制御器(PI)103a,103bから構成される。偏差演算器102aは、指令d軸電流Req_idからd軸電流idを減算して偏差e_idを算出し、偏差e_idを比例積分制御器(PI)103aに受け渡す。比例積分制御器(PI)103aは、偏差e_idに対して所定の比例定数を乗算した値と偏差e_idを時間積分した値を加算して指令d軸電圧Req_vdを求め、指令d軸電圧Req_vdを電圧変換部104に出力する。
【0040】
また、偏差演算器102bは、指令d軸電流Req_iqからq軸電流iqを減算して偏差e_iqを算出し、偏差e_iqを比例積分制御器(PI)103bに受け渡す。比例積分制御器(PI)103bは、偏差e_iqに対して所定の比例定数を乗算した値と偏差e_iqを時間積分した値を加算して指令q軸電圧Req_vqを求め、指令q軸電圧Req_vqを電圧変換部104に出力する。
【0041】
電圧変換部104は、補正後の位相角θを用いた公知の変換式により、指令d軸電圧Req_vdおよび指令q軸電圧Req_vqを指令三相電圧Req_vu、Req_vv、Req_vwに変換し、電力変換部130に指令する。
【0042】
電力変換部130は、PWM制御部105とインバータ106から構成される。PWM制御部105は、指令三相電圧Req_vu、Req_vv、Req_vwから各相のデューティ比を決定してインバータ106に逐次出力する。インバータ106は、各相のデューティ比に基づき、実際の三相電圧vu、vv、vwを生成して三相同期モータ110の電機子巻線に印加する。これにより、三相同期モータ110の電機子巻線には三相電流iu、iv、iwが流れる。
【0043】
次に、以上のように構成された本実施形態のモータ制御処理について説明する。図3は、本実施形態のモータ制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図3では、モータ制御の全体処理の中で、位相角θ、v相電流およびw相電流の検出から、位相角θの補正までの処理について示している。
【0044】
まず、レゾルバ等の回転検出部107は、三相同期モータ110の回転子の位相角θを検出する(ステップS11)。そして、電流検出部108a、108bは、V相入力線およびW相入力線からそれぞれV相電流ivおよびW相電流iwを検出し(ステップS12)、各検出信号を検出電流変換部112に出力する。
【0045】
そして、検出電流変換部112は、三相電流iu、iv、iwのベクトル和がゼロであることを利用して、U相電流iuを算出する(ステップS13)。次に、検出電流変換部112は、三相電流iu、iv、iwをdq座標軸上のd軸電流idおよびq軸電流iqに変換する(ステップS14)。検出電流変換部112は、d軸電流idおよびq軸電流iqを、偏差演算器102a,102bと座標軸変換部113に出力する。
【0046】
座標軸変換部113は、d軸電流idおよびq軸電流iqを受け取り、d軸電流idおよびq軸電流iqをγδ座標軸上のγ軸電流iγおよびδ軸電流iδに変換する(ステップS15)。
【0047】
次に、誤差角度推定部114は、上述した(3)式の外乱オブザーバを公知の数値解析の手法により解法して、γ軸拡張誘起電圧の推定値とδ軸拡張誘起電圧の推定値を算出する(ステップS16)。そして、誤差角度推定部114は、γ軸拡張誘起電圧の推定値とδ軸拡張誘起電圧の推定値とを用いて、上述した(4)式から誤差角度を算出する(ステップS17)。
【0048】
次に、偏差演算器111は、上述した(5)式により、回転検出部107で検出された位相角θから、誤差角度推定部114で推定された誤差角度を減算することにより、位相角θを補正する(ステップS18)。補正後の位相角は、回転演算部115と検出電流変換部113と検出電流変換部112と電圧変換部104に出力される。検出電流変換部112では、三相電流iu、iv、iwを、補正後の位相角を用いて、dq座標軸上のd軸電流idおよびq軸電流iqに変換する。電圧変換部104では、補正後の位相角を用いて、指令d軸電圧Req_vdおよび指令q軸電圧Req_vqを指令三相電圧Req_vu、Req_vv、Req_vwに変換する。このように、補正後の位相角は、三相固定座標系と二相回転座標系との間の変換に使用される。
【0049】
このように本実施形態では、三相同期モータ110のdq座標軸上の拡張誘起電圧方程式をγδ座標軸に変換した拡張誘起電圧方程式に対する、レゾルバ等の回転検出部107の出力をパラメータに用いた外乱オブザーバを設定し、当該外乱オブザーバにより、拡張誘起電圧を推定して位相角の誤差角度を推定しているので、高応答で位相角θの補正を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では、補正後の位相角を、三相固定座標と二相回転座標との間の変換に利用しているので、ベクトル制御の精度を向上させることができる。このように本実施の形態では、ベクトル制御の精度が向上するため、制御の高応答性を維持しつつ、トルク脈動やノイズ発生を防止することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態では、拡張誘起電圧を推定して位相角の誤差角度を推定して位相角θの補正を行っているので、レゾルバ等の誤差の影響が少ない角速度を算出することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
101 電流指令部
102a、102b,111 偏差演算器
103a,103b 比例積分制御器(PI)
104 電圧変換部
105 PWM制御部
106 インバータ
107 回転検出部
108a、108b 電流検出部
110 三相同期モータ
111 偏差演算器
112 検出電流変換部
113 座標軸変換部
114 誤差角度推定部
115 回転数演算部
120 電圧演算部
130 電力変換部
図1
図2
図3