特許第6032056号(P6032056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032056
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/02 20060101AFI20161114BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H02K9/02 Z
   H02K1/32 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-34334(P2013-34334)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-166018(P2014-166018A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘之
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−223805(JP,A)
【文献】 特開平3−112339(JP,A)
【文献】 実開昭60−174464(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00−9/28
H02K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にロータコアが設けられ軸受により回転可能に支持された回転軸を備えるものであって、
当該回転軸の一端部より他端部近傍まで軸中心線に沿って設けられた第1の流路と、
前記他端部近傍において前記第1の流路に設定される接続部で、当該第1の流路に対して略直交して接続され、前記回転軸の外周側に向かって開放された第2の流路とを備え、
前記回転軸の一端部より前記接続部に至る直前の第1の流路の流路面積と、
前記接続部の直後における第2の流路の流路面積の総和とを略同一に設定したことを特徴とする回転装置。
【請求項2】
前記回転軸の外周側に向かって、前記第2の流路の流路面積が増大するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転装置。
【請求項3】
前記第2の流路が回転軸の外周側で形成する開口における前記回転軸の回転方向に沿った円弧の長さが、少なくとも隣り合う第2の流路同士で異なるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転装置。
【請求項4】
前記第2の流路の少なくとも一部が、回転軸の他端部側に設けられたフランジ部に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転装置。
【請求項5】
前記フランジ部が、回転軸の他端部側に着脱可能な蓋部材を備えており、当該蓋部材を取り外した際に前記第1の流路及び第2の流路が前記回転軸の軸方向に開放されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータやダイナモ等の回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータやダイナモ等の回転装置として数多くのものが知られている。こうした回転装置は高回転数や高出力等の高い性能が要求されるに伴って、発熱対策がより重要となってきている。そこで、特殊な装置を付加することなく自らの回転によって冷却を行うことが可能な回転装置を提供するものとして、下記特許文献1のような提案がなされている。
【0003】
これに記載された回転装置は、概ね図12に示すような構成となっている。この回転装置はエンジン2の出力軸(出力シャフト)21に接続されるダイナモ501として構成されている。具体的には、ハウジング11の内部に、ステータコア3A及びコイル3Bを有するステータ3が配置され、その内側にロータ504が配置されている。ロータ504は、軸受12,12を介してハウジング11により回転自在に支持された回転軸(シャフト)505と、その外周面に固定されたロータコア4Aとを備えており、このロータコア4Aが上記ステータコア3Aの内側に位置するように配置されている。回転軸505の端部505bは、カップリング552を介して上記エンジンの出力軸21と接続されるようになっている。
【0004】
さらに、回転軸505の一方の端部505aより他方の端部505bまで連通する貫通孔506を軸中心に沿って設けるとともに、この回転軸505の端部505bに接続されるカップリング552の内部に上記貫通孔506と連通する空気室を構成する凹部508を形成し、この凹部508より外周に向かって放射状に6つの流路507を等配して形成している。
【0005】
こうすることで、カップリング552内部の流体である空気(Air)が遠心力で外部に流出して流路507内で負圧が発生し、この負圧の発生によって貫通孔506に端部505a側より空気が流入することで、回転軸505内に空気の流れが生じ冷却がなされるようになっている。
【0006】
図13は、カップリング552近傍を拡大して、空気の流れを模式的に示したものである。回転軸505内での空気の流れに着目すると、流路面積がほぼ一定である貫通孔506を通過した空気は、急激に流路面積が広がった凹部508内に一旦入り込む。そして、凹部508より、これに接続された6つの流路507に分岐して外周方向より空気が排出されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−223805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の構成では、ヘルムホルツ共鳴現象が生じることで特定の回転速度において大きな騒音が発生する場合がある。
【0009】
この現象は、開口近くの空気を質量体とし、内部の空気をバネとした共振系が構成されることによるものであり、開口近くの空気に共振周波数に相当する振動を生じさせる、すなわち、これに対応する速度で回転軸が回転した際に、共振が生じ騒音レベルが急激に増大することになる。
【0010】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、良好な回転軸の冷却効果を備えつつ、回転速度に依存する過大な騒音の発生を抑制することのできる回転装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明の回転装置は、外周にロータコアが設けられ軸受により回転可能に支持された回転軸を備えるものであって、当該回転軸の一端部より他端部近傍まで軸中心線に沿って設けられた第1の流路と、前記他端部近傍において前記第1の流路に設定される接続部で、当該第1の流路に対して略直交して接続され、前記回転軸の外周側に向かって開放された第2の流路とを備え、前記回転軸の一端部より前記接続部に至る直前の第1の流路の流路面積と、前記接続部の直後における第2の流路の流路面積の総和とを略同一に設定したことを特徴とする。
【0013】
このように構成すると、空気等の流体の内部で回転軸を回転させることで、第2の流路内の流体に遠心力が作用して、第1の流路より第2の流路に向けて流体の流れが生じ、回転軸、ロータコア及び軸受の冷却を行うことが可能となる。さらには、第1の流路から第2の流路にかけて流路面積が急激に増加する箇所がなくなるため、ヘルムホルツ共鳴現象の発生を抑制し、回転速度に依存する過大な騒音の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
また、流路の内部における流体の流れをより円滑に行わせて、冷却効果を高めるためには、前記回転軸の外周側に向かって、前記第2の流路の流路面積が増大するように形成していることが好ましい。
【0015】
また、回転軸の回転に伴って特定の周波数での加振力が励起されることを防ぎ、騒音の低減効果を一層高めるためには、前記第2の流路が回転軸の外周側で形成する開口における前記回転軸の回転方向に沿った円弧の長さが、少なくとも隣り合う第2の流路同士で異なるように設定されるように構成することが好適である。
【0016】
また、外部装置との連結の利便性や製作容易性を高めるとともに、第2の流路内の流体に対して働く遠心力を増大させ、第1の流路から第2の流路内に至る流体の流速を上げて冷却効率を高めることを可能とするためには、前記第2の流路の少なくとも一部が、回転軸の他端部側に設けられたフランジ部に形成されるように構成することが好適である。
【0017】
また、第1の流路や第2の流路の形成をより容易に行うことを可能として、製作精度を向上するとともに、製造コストの低減を可能とするためには、前記フランジ部が、回転軸の他端部側に着脱可能な蓋部材を備えており、当該蓋部材を取り外した際に前記第1の流路及び第2の流路が前記回転軸の軸方向に開放されるように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明によれば、回転軸の内部を流体が通過することで良好な冷却効果を有するとともに、回転速度に依存する過大な騒音の発生を抑制することのできる回転装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る回転装置の側断面図。
図2】同回転装置における回転軸の外部装置との連結部を一部破断して示す拡大斜視図。
図3図2の状態より蓋部材を取り外した状態を示す拡大斜視図。
図4】蓋部材を取り外した回転軸を連結部側より見た背面図。
図5】蓋部材を取り外した回転軸の要部を拡大して示す斜視図。
図6】第2の流路が形成する各縁部に曲面を追加した例を示す蓋部材を取り外した回転軸の背面図。
図7】ヘルムホルツ共鳴現象を説明するための模式図。
図8】気柱共鳴現象を説明するための模式図。
図9】本発明の考え方を説明するための模式図。
図10図1とは異なる形態で外部装置を接続した例を示す側断面図。
図11図1及び図10とは異なる形態で外部装置を接続した例を示す側断面図。
図12】従来の回転装置を一部破断して示す側面図。
図13】同回転装置の要部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る回転装置としてのダイナモ1を示す側断面図である。従来技術として説明するために用いた図12及び図13に示した回転装置501と共通する部分には、同一の符号を用いて説明を行う。
【0022】
図1に戻って、ダイナモ1は外部装置であるエンジン2と接続されて、当該エンジン2の出力によって発電を行うことが可能に構成されている。また、このダイナモ1は、エンジン2に対する負荷装置としても使用できるとともに、エンジン2の出力測定にも用いることができ、様々な条件におけるエンジン2の特性評価に利用することが可能である。さらに、こうした用途で用いる場合には、外部装置をエンジン2に限らず、トランスミッション等の様々なものに変更して接続することもできる。
【0023】
ダイナモ1はハウジング11を備え、その内部にステータコア3Aとコイル3Bとを有するステータ3が配置されている。そして、このステータ3の内側にはロータ4が設けられている。ロータ4は、軸方向に離間して配置した軸受12,12を介してハウジング11に対し回転自在に支持された回転軸5と、この外周に取り付けられたロータコア4Aとから構成されており、ロータコア4Aが上記ステータコア3Aの中心に位置するように配置されている。
【0024】
回転軸5には、一端部5aより他端部5bに向かって後述する第1の流路6が形成されるとともに、この第1の流路6に直交しつつ接続される第2の流路7が形成されており、これらの流路6,7に流体である空気(Air)が流れるようになっている。回転軸5は上記他端部5b側に、外部装置であるエンジン2との連結部となる大径のフランジ部52を備えており、エンジン2が備える出力軸21が端部に備えるフランジ部22と相対位置が変わらないように連結されている。こうすることで、回転軸5はエンジン2の出力軸21と一体的に回転するようになっている。
【0025】
図2は、回転軸5を上記フランジ部52側より見た斜視図であり、一部を破断して示したものである。なお、外部装置であるエンジン2(図1参照)については記載を省略してある。
【0026】
図中で示すように、回転軸5の端部5b側は、複数の部材によって構成されている。すなわち、円筒状に構成された軸本体51と、その外周面51bに固定されたフランジ部52と、このフランジ部52の外側端面に当接する円板状に形成された蓋部材54とが、同一の軸中心線Xを中心として配置されており、これらによって回転軸5が構成されている。蓋部材54の外周近傍の位置には、厚み方向に貫通する取付孔54aが6つ等配して設けられている。
【0027】
軸本体51と蓋部材54とを鋼等の同一材料を用いて製作することも可能であるが、蓋部材54を軸本体51とは異なる材質で形成することも可能である。例えば、蓋部材54をアルミ等の比較的硬度の小さな材質で形成する場合には、軸本体51との密着度を高め、後述する流路からの流体の漏れを抑制することができるとともに、外部装置側との位置ずれによる影響も緩和しつつ、より容易に連結を行うことも可能となる。また、蓋部材54をGFRP(ガラス強化繊維樹脂)等の絶縁材料を用いて製作することも可能であり、連結部の強度を保ちながら軸本体51と外部装置側との電気的な絶縁を図ることも可能となる。
【0028】
図2の状態より蓋部材54を取り去った状態を図3に示す。以下、各部の形状について詳細に説明を行う。
【0029】
軸本体51は軸中心線Xに沿って配置されるとともに、この軸中心線Xに沿った貫通孔51aが内部に形成され、この貫通孔51aと同軸状に形成された外周面51bを備えている。外周面51bの一部には、軸受12(図1参照)を取り付けるための取付部(図示せず)が設定されている。
【0030】
フランジ部52は、主として円筒部52aとその一端側に設けられた円板状の鍔部52bとから構成されている。円筒部52aは内周面52a1が上記軸本体51の外周面51bに当接するように嵌めこまれ、図示しない平行キー等の位置固定手段を用いて相対的に固定がなされている。鍔部52bの中心には、軸本体51の貫通孔51aと同寸法で滑らかに連続する貫通孔52cが形成されており、軸本体51の貫通孔51aとフランジ部52の貫通孔52cとにより回転軸5の軸中心線Xに沿って連続する一つの第1の流路6を構成している。また、上記貫通孔52cより外周側に向かって鍔部52bの端面52b1には、軸中心線Xより扇状に広がるように凹部52eが6つ形成されており、各凹部52eがそれぞれ第2の流路7を形成するようになっている。さらに、鍔部52bには、上記蓋部材54(図2参照)に形成された取付孔54aと同位相に設けられ、これとともに、外部装置2と接続するためのボルトを挿通させるための取付孔52dが外周近くの部位に6つ等配して設けられている。
【0031】
このように蓋部材54(図4参照)が取り付けられていない状態では、第1の流路6及び第2の流路7は、ともに回転軸5のフランジ部52側(図1における他端部5b側)を開放された状態となる。蓋部材54は、上述したように円板状に形成されており、フランジ部52の端面52b1に当接させて固定することで、第1の流路6及び第2の流路7のフランジ部52側は閉止される。このようにして、第1の流路6は、回転軸5の一端部5a(図1参照)側を始点として開放され、他端部5b(図1参照)側の終点が閉止された円筒状の流路を形成する。そして、第2の流路7は、第1の流路6の終点において接続されるとともに、軸方向に離間した扇形の平面によって挟まれた空間により形成されつつ、回転軸5の外周側に向かって延び、フランジ部52における鍔部52bの外周面52b2において開放されることになる。
【0032】
本実施形態において、第2の流路7は、3種類の形状からなる第2の流路7A〜7Cを2個ずつ設けたものとしている。また、各第2の流路7A〜7Cは、第1の流路6の終点、具体的には、フランジ部52における鍔部52bの貫通孔52cの内周面の一部の領域を接続部Cとして、この領域内において第1の流路6と接続され、第1の流路6を構成する貫通孔52c側に開口72A〜72Cをそれぞれ形成する。また、各第2の流路7A〜7Cは、フランジ部52における鍔部52bの外周面52b2及び蓋部材54(図2参照)との間で、矩形状の開口71A〜71Cをそれぞれ形成する。
【0033】
図4は、蓋部材54(図2参照)を取り外した状態において、回転軸5をフランジ部52側より軸方向に見た場合を示す背面図である。
【0034】
上述したように、第2の流路7A〜7Cは、第1の流路6に繋がる開口72A〜72Cより略放射状に広がって形成されており、これに伴い流路面積が外周方向に沿って徐々に増大するようになっている。ここで、流路面積とは第1の流路6及び第2の流路7において、内部を流れる空気の主流のなす方向に対して直交する面内における面積であり、第1の流路6においては軸中心線Xと直交する面により、第2の流路7においては外径方向に対して直交する面により切断した面積となる。
【0035】
第2の流路7A〜7Cが形成する外周側の開口71A〜71Cにおける回転軸5の回転方向に沿った円弧の長さL1〜L3は、それぞれ異なる大きさとなるように設定している。具体的には、本実施形態ではL1:L2:L3=2:1.5:1の関係となるようにしており、このように異なる大きさの開口71A〜71Cを有する第2の流路7A〜7Cが回転方向に沿って順に配置されることで、回転方向において隣り合う第2の流路7A〜7Cが互いに大きさの異なるものとなり、回転方向に不等ピッチを構成することになる。
【0036】
また、3種類の第2の流路7A〜7Cは、それぞれ2個ずつが180°反対の位置に設けられており、軸心を中心としたアンバランスが生じないようにしている。こうすることで、組立後の回転体において必要となるバランス修正作業の手間を軽減し、製作コストの低減を行うことが可能となっている。
【0037】
上述した円弧の長さL1〜L3の関係は、上述のものに限らず、L1:L2:L3=1:1.2:1.4等、様々な関係に変更することができる。ただし、第2の流路7A〜7Cが形成する内側の開口72A〜72Cについては、下記のような関係にすることを要する。
【0038】
すなわち、図3における接続部Cの直前における第1の流路6の流路面積をA1と定義し、接続部Cの直後における各第2の流路7A,7B,7Cの流路面積をA21,A22,A23と定義した場合、A1≒(A21+A22+A23+A21+A22+A23)となるようにしている。図9は、この関係を模式的に示したものであり、第1の流路6に相当する流路91が、接続部Cを介して6つの第2の流路7A〜7Cに対応する流路92A〜92Cに分岐した場合を示している。この場合において、流路91の接続部C直前の流路面積A1が、接続部C直後の流路92A〜92Cの流路面積A21〜A23の総和と略同一になるようにすることが肝要である。こうすることで、流路91,92A〜92Cの上流側から下流側にかけて流路面積が大きく変化する部位がなくなる。
【0039】
また、本実施形態においては、上記の形状を基本としつつ、さらに細部の形状の最適化を図っている。以下、その形状について説明を行う。
【0040】
図5は、第2の流路7(7A,7C)の一部を拡大して示したものである。
【0041】
第2の流路7が外周側に形成する開口71の縁部のうち、回転方向と直交する縁部P1を、図6で示すように面取りして曲面R1として仕上げている。また、図5で示す第2の流路7と第1の流路6との境界、すなわち第2の流路7が内周側に形成する開口72の縁部のうち、回転方向と直交する縁部P2を、図6で示すように面取りして曲面R2として仕上げている。さらには、図5で示す第2の流路7が内周側に形成する開口72の縁部のうち、第1の流路6と直交する縁部P3も同様に面取りして曲面として仕上げている。
【0042】
上述したように、図1で示す回転軸5の内部で第1の流路6と、これに直交するように接続された複数の第2の流路7とが設けられることで、次のような作用を生じる。
【0043】
すなわち、比較的大径とされたフランジ部52に第2の流路7が形成されているため、第2の流路7内の空気が大きな遠心力によって外周側に排出されることで、内部で負圧が生じる。そのため、回転軸5の中心に配された第1の流路6内に端部5a側より空気が流入し、第2の流路7を介して外周より排出される空気の流れが生じることになる。こうした空気によって、回転軸5は冷却され、間接的にロータコア4Aや軸受12も冷却されることになる。従って、高速・高出力といった過酷な条件で使用しても効率よく回転装置1全体を冷却することができ、安定して使用することが可能となる。さらに、特別な冷却装置を必要としないことから、安価に構成することができる。
【0044】
また、第2の流路7の流路面積が、空気が流れる外周方向に進むに従って大きくなるように構成しているため、第2の流路7内での空気の流れをより円滑にして流速を高め、冷却効果を高めることが可能となっている。
【0045】
ここで、単純に回転装置1の回転軸5の内部に流路を設けた場合には、回転速度に依存して騒音が急激に大きくなる場合がある。これは、従来技術として図12に示したような構成を採った場合、流路の途中に流路面積の著しい変化を生じることで、図7に模式的に示したようなヘルムホルツ共振系が構成されることによる。ヘルムホルツ共振系は、一般に本体部82と口部83とから構成される容器81内に、空気のような圧縮性を備えた流体が満たされた状態とされたモデルで表され、本体部82の内部の体積V1の流体82aの圧縮特性をバネ定数kのバネとして、口部83の内部の体積V2の流体83aを質量mの質量体84と置換した振動系に置換することができる。そして、口部83近くの流体に、振動系の共振周波数に近い周波数で振動を与えた場合に、系全体の振動が急激に増大することになる。
【0046】
本実施形態においては、第1の流路6と第2の流路7の流路面積の関係が、図9に模式的に示したように、上流から下流に亘って大きな変化を生じる部分がないようにしている。そのため、図7に示すようなモデルが内部で構成されることがなく、ヘルムホルツ共鳴現象の発生を抑制することが可能となっている。
【0047】
また、ヘルムホルツ共鳴現象と類似した騒音の発生要因としては、図8に模式的に示すような気柱共鳴現象も起こりうる。これは、両端に開口部86aが形成された円筒容器86の内部において、音が共鳴する現象であり、図8(a),(b)で例示するように、円筒容器86の長さが音波87,88の半波長の整数倍との関係がある場合に、音波が端部において反射して重なりあうことで増幅され、急減に音圧レベルが増大することになる。すなわち、回転装置1において、回転軸5を特定の回転速度で回転させた際に、その回転により生じる音の波長が、内部の流路6,7長さとの間で気柱共鳴現象を生じさせる特定の関係にある場合には、その音が増幅されることになる。
【0048】
本実施形態においては、上述したように、第2の流路7A〜7Cにおける外周側の開口71A〜71Cの回転軸5の回転方向に沿った円弧の長さL1〜L3を異ならせ、隣接するもの同士が異なる大きさとなるように設定することで、開口71A〜71Cが円周方向に不等ピッチをなすようにしている。そのため、同一の回転速度で回転軸5を回転させた場合であっても、開口71A〜71Cによる風切り音が一定周波数のものとはならず、様々な周波数帯が混ざり合ったホワイトノイズ化されたものとなる。従って、特定の周波数の音圧レベルが高まることがなく、第1の流路6及び第2の流路7の内部で気柱共鳴現象が生じたとしても、極端に大きな騒音の発生を抑制することができる。
【0049】
また、図5で示す第2の流路7における外周側の開口71及び内周側の開口72において、流体の流れと直交する縁部の一部を曲面として形成していることから、これらの部分における乱流の発生を抑制して、より一層の騒音の低減がなされるようになっている。
【0050】
以上のように、本実施形態における回転装置1は、外周にロータコア4Aが設けられ軸受12により回転可能に支持された回転軸5を備えるものであって、その回転軸5の一端部5aより他端部5b近傍まで軸中心線Xに沿って設けられた第1の流路6と、上記他端部5b近傍において第1の流路6に設定される接続部Cで、第1の流路6に対して略直交して接続され、回転軸5の外周側に向かって開放された第2の流路7A〜7C(7)とを備え、回転軸5の一端部5aより接続部Cに至る直前の第1の流路6の流路面積A1と、接続部Cの直後における第2の流路7A〜7C(7)の流路面積A21〜A23の総和とを略同一に設定するように構成したものである。
【0051】
こうすることで、流体としての空気が存在する環境下で回転軸5を回転させることで、第2の流路内7の空気に遠心力が作用して、第1の流路6より第2の流路7に向けて空気の流れが生じ、回転軸5、ロータコア4A及び軸受12の冷却を行うことが可能となっている。さらには、第1の流路6から第2の流路7にかけて流路面積が急激に増加する箇所がなくなるため、ヘルムホルツ共鳴現象の発生を抑制し、回転速度に依存する過大な騒音の発生を抑制することが可能となっている。
【0052】
また、回転軸5の外周側に向かって、第2の流路7の流路面積が増大するように形成されているため、第2の流路7内での空気の流れをより円滑にさせて、より一層冷却効果を高めることが可能となっている。
【0053】
また、第2の流路7が回転軸5の外周側で形成する開口71A〜71Cにおける回転軸5の回転方向に沿った円弧の長さL1〜L3が、少なくとも隣り合う第2の流路7Aと7B(7Bと7C、又は、7Cと7A)同士で異なるように設定されているため、回転軸5が回転した際に、第2の流路7が形成する開口71A〜71Cによって空気に生じる振動の周波数がホワイトノイズ化して、特定の周波数のみの振動が過大になることを防ぐことができるため、特定の振動により励起される回転軸5内の気柱共鳴系の空気の振動を抑制し、騒音を低下することが可能となっている。
【0054】
また、第2の流路7が、回転軸5の他端部5b側に設けられたフランジ部52に形成されるように構成しているため、他の部分よりも大径であるフランジ部52に第2の流路7を形成することで、第2の流路7内の空気に作用する遠心力を増大させ、第1の流路6から第2の流路7内に至る空気の流速を増大させて、さらに冷却効率を高めることができる。また、フランジ部52を外部装置2との連結に用いる場合には、連結のための加工と同時に第2の流路7の形成のための加工とを行えば良いため、製作コストをより低減することが可能となっている。
【0055】
また、フランジ部52が、回転軸5の他端部5b側に着脱可能な蓋部材54を備えており、この蓋部材54を取り外した際に第1の流路6及び第2の流路7が回転軸5の軸方向に開放されるように構成されているため、第1の流路6や第2の流路7の形成をより容易に行うことを可能として、製作精度を向上するとともに、製造コストの一層の低減を図ることが可能となっている。
【0056】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0057】
例えば、上述の実施形態における円弧L1〜L3の比は例示したものであって、上述したもの以外の比で構成してもよい。また、第2の流路7は円周方向に6つ設けることが必須ではなく、第1の流路6との面積の関係を上記と同一に維持する限り、個数を増減させるよう変更しても良い。ただし、回転軸5の冷却効率を考慮すると6つ以上にすることが好ましい。
【0058】
また、上述の実施形態では、第2の流路7の外側の開口71が形成する縁部のうち、回転方向に対して直交するもののみと曲面によって構成したが、他の縁部を同様に曲面に仕上げてもよく、さらに乱流の発生を抑制することが可能となる。
【0059】
また、上述の実施形態では別部材として構成していたフランジ部52と軸本体51とを一体として製作することも可能である。さらに、蓋部材54もこれらと一体として製作することが技術的には可能であるが、製作難度が上がり製造コストが高くなることから、別部材として構成することが好ましい。但し、実施形態において記載したように円板状に形成することは必須ではなく、フランジ部52より分割した際に、第1の流路6及び第2の流路7が軸方向に開放される構成であれば良い。また、一体的に構成することに利点がある場合には、特許文献1記載の構成のように、外部装置2側のフランジ部22を伴って、軸本体51に取り付けるカップリングとして構成することも可能である。
【0060】
また、上述の実施形態では、第2の流路7は、接続部Cにおいて第1の流路6より半径方向に直線的に拡大する放射状に広がるように構成していたが、外側に向かって広がるものであればよく、曲線状に広がるようなものであっても良い。同様に、第1の流路6も、流路内の流体抵抗が著しく増大するものでなく、急激な流路面積の増減を伴うものでなければ、流路の途中において流路面積が多少変化することは許容される。
【0061】
また、図10に示すように、外部装置2のフランジ部22と連結した際に、第1の流路6及び第2の流路7を軸方向に閉止することが可能であれば、このフランジ部22を蓋部材54(図1参照)の代わりとして用いることでも足りる。この場合、ロータ104の一部を構成する回転軸105は、回転軸本体51,フランジ部52のみから構成されることとなる。
【0062】
また、外部装置2との連結は、回転軸5と出力軸21とを直接的に行う必要はなく、図11に示すように、両端にフランジ211を形成された環状部材210等を介して接続してもよい。このような場合には、環状部材210の中心孔212にも流体が流入しうるため、蓋部材54を必須の構成要素として設けることを要する。
【0063】
さらには、本実施形態では流体として空気を用いていたが、圧縮性を有するものである限り、空気以外の流体を用いても上述した本発明の効果を得ることができる。
【0064】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…ダイナモ(回転装置)
4A…ロータコア
5…回転軸
5a…(回転軸の)一端部
5b…(回転軸の)他端部
6…第1の流路
7,7A〜7C…第2の流路
52…フランジ部
54…蓋部材
71,71A〜71C…(第2の流路の外側の)開口
72,72A〜72C…(第2の流路の内側の)開口
A1…第1の流路における接続部の直前の流路面積
A2…第2の流路における接続部の直後の流路面積の総和
A21〜A23…第2の流路(分岐流路)における接続部の直後の流路面積
C…接続部
R1,R2…曲面
X…軸中心線
図1
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