特許第6032059号(P6032059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032059
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車載機及び運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20161114BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20161114BHJP
   H04B 10/114 20130101ALI20161114BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   G08G1/09 H
   G08G1/16 A
   H04B9/00 114
   B60R21/00 628B
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-34930(P2013-34930)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-164519(P2014-164519A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】太田 和宏
【審査官】 倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−241100(JP,A)
【文献】 特開2004−295178(JP,A)
【文献】 特開2008−158588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
G01C 21/00 − 21/36
23/00 − 25/00
B60R 21/00
H04B 10/114
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の車両に搭載された、情報を重畳した光を発光する発光部から当該光を受信し、当該光に重畳していた情報を、情報を重畳した光を自車の前方に発光する発光部(13)を用いてさらに他の車両に送信する車載機(1)であって、
前記自車の後部に配置され、前記自車の後方から後側方にかけての所定の角度範囲に存在する後方他車の前記発光部から発せられた光を受光する第2受光部(16)と、
前記後方他車から発せられた光の方向に基づいて、前記自車の位置に対する当該後方他車の位置を特定する発光元車両方向特定部(176)と、
前記発光部を制御する発光制御部(174)とを備え、
前記発光制御部は、前記発光部を制御して、前記後方他車から発せられた光に重畳していた情報に、前記後方他車の位置を加えた情報を重畳した光を前記発光部から前記自車の前方に向けて発光させることを特徴とする車載機。
【請求項2】
複数の車両の各々に搭載され、情報を光を用いて送信する送信器(12)と、前記送信器で光を用いて送信された情報を受信する受信器(14)とを備える車載機(1)であって、
前記送信器は、自車の前方に光を発光する発光部(13)を有しており、
前記受信器は、自車の前方の所定の角度範囲までの前記光を受光する第1受光部(15)と、自車の後方から後側方にかけての所定の角度範囲までの前記光を受光する第2受光部(16)とを有しており、
他車の前記発光部で発光された光を前記第2受光部で受光した場合に、当該光を用いて送信されてきた当該他車の情報を、自車の前記発光部から発光する前記光を用いて送信する中継を行い、
交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への自車の進路変更である特定進路変更を推定する特定進路変更推定部(181)と、
他車の前記発光部から発光された前記光を前記第2受光部で受光した場合に、当該光の光源の位置を特定することで、当該光の発光元である当該他車の自車に対する方向である発光元車両方向が後方と後側方とのいずれであるかを少なくとも特定する発光元車両方向特定部(176)とを備え、
前記中継を行う場合に、送信されてきた前記他車の情報に、前記発光元車両方向特定部で特定した当該他車の自車に対する発光元車両方向も加えて送信し、
前記特定進路変更推定部で前記特定進路変更を推定した場合であって、対向する他車である対向車の前記発光部から発光された光を前記第1受光部で受光した場合に、当該光を用いて送信された当該対向車の情報をもとに、前記特定進路変更のタイミングについての情報の報知を行う報知部(182)を備えることを特徴とする車載機。
【請求項3】
請求項において、
前記対向車の情報は、前記対向車が当該対向車の後方に並ぶいずれかの後続車から、前記中継を1回又は複数回繰り返して受信した、当該後続車の後側方の車両についての情報に基づく情報であることを特徴とする車載機。
【請求項4】
請求項又はにおいて、
自車が停車している場合には、自車の後方に並ぶいずれかの後続車から、前記中継を複数回繰り返して受信した、各他車の情報のうち、前記後続車での前記中継を経た回数が所定回数以上の情報については、自車の前記送信器から送信する情報に加えない制限を行う中継回数制限部(174)を備えることを特徴とする車載機。
【請求項5】
請求項のいずれか1項において、
前記発光元車両方向特定部によって、前記第2受光部で受光した前記光の発光元である他車の前記発光元車両方向が自車の後側方と特定した場合、自車の後側方に車両が存在すると決定する存在決定部(178)を備え、
前記中継を行う場合に、自車の後側方に車両が存在することを示す車両存在情報も加えて送信し、
前記報知部は、前記対向車の情報に含まれる前記車両存在情報を受信した場合に、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項6】
請求項において、
前記送信器から送信する情報には、自車の車速及び加減速の少なくともいずれかの速度関連情報も含み、
自車の後方に並ぶいずれかの後続車から、前記中継を1回又は複数回繰り返して受信した情報に、当該後続車に対する前記発光元車両方向が当該後続車の後側方である、後続後側方車の速度関連情報が含まれていた場合には、この速度関連情報をもとに、当該後続後側方車の減速の有無を判定する減速有無判定部(179)を備え、
前記中継を行う場合に、前記減速有無判定部での判定結果である減速有無判定結果も加えて送信し、
前記報知部は、前記対向車の情報に含まれる前記車両存在情報を受信していない場合であっても、前記対向車の情報に含まれる前記減速有無判定結果として、前記後続後側方車の減速なしを示す情報を受信した場合には、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項7】
請求項において、
前記第1受光部は、自車の前方から前側方にかけての所定の角度範囲までを撮像範囲とする前方カメラであって、
前記前方カメラの撮像画像から、自車の前方に進行方向が同一の他車である前方車が存在するか否か、及び自車の前側方に進行方向が同一の他車である前側方車が存在するか否かを判定する撮像判定部(180)を備え、
前記中継を行う場合に、前記撮像判定部での判定結果である撮像判定結果も加えて送信し、
前記報知部は、前記対向車の情報に含まれる前記車両存在情報を受信していない場合であって、且つ、前記対向車の情報に含まれる前記減速有無判定結果として、前記後続後側方車の減速ありを示す情報を受信した場合であっても、前記対向車の情報に含まれる前記撮像判定結果として、前記対向車の前記後続後側方車に前記前方車が存在すること、及び前記対向車の前記後続車に前記前側方車が存在することのいずれかを示す情報を受信した場合には、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項8】
請求項のいずれか1項において、
前記対向車の情報に含まれる前記発光元車両方向が、当該対向車の後側方であることを示す情報であった場合に、当該対向車の後側方に車両が存在すると決定する存在決定部(17)を備え、
前記報知部は、前記存在決定部で前記対向車の後側方に車両が存在すると判定した場合に、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項9】
請求項において、
前記送信器から送信する情報には、自車の車速及び加減速の少なくともいずれかの速度関連情報も含み、
前記対向車の情報は、前記対向車が、当該対向車の後方に並ぶいずれかの後続車から、前記中継を1回又は複数回繰り返して受信した、当該後続車に対する前記発光元車両方向を含み、
前記対向車の情報に、前記後続車に対する前記発光元車両方向が当該後続車の後側方である、後続後側方車の速度関連情報が含まれていた場合には、この速度関連情報をもとに、当該後続後側方車の減速の有無を判定する減速有無判定部(17)を備え、
前記報知部は、前記存在決定部で前記対向車の後側方に車両が存在しないと判定した場合であっても、前記減速有無判定部で前記後続後側方車の減速なしと判定した場合には、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項10】
請求項において、
前記第1受光部は、自車の前方から前側方にかけての所定の角度範囲までを撮像範囲とする前方カメラであって、
前記前方カメラの撮像画像から、自車の前方に進行方向が同一の他車である前方車が存在するか否か、及び自車の前側方に進行方向が同一の他車である前側方車が存在するか否かを判定する撮像判定部(17)を備え、
前記送信器から送信する情報には、前記撮像判定部での判定結果である撮像判定結果も含み、
前記報知部は、前記存在決定部で前記対向車の後側方に車両が存在しないと判定した場合であって、且つ、前記減速有無判定部で前記後続後側方車の減速ありと判定した場合であっても、前記対向車の情報に含まれる前記撮像判定結果として、前記対向車の前記後続後側方車に前記前方車が存在すること、及び前記対向車の前記後続車に前記前側方車が存在することのいずれかを示す情報を受信した場合には、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項11】
請求項のいずれか1項において、
前記発光元車両方向特定部によって、前記第2受光部で受光した前記光の発光元である他車の前記発光元車両方向が自車の後側方と特定した場合、自車の後側方に車両が存在すると決定する存在決定部(178)を備え、
前記送信器は、前記存在決定部で自車の後側方に車両が存在すると判定した場合には、自車の前記発光部から発光する前記光を用いて、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行わせる指示である報知指示を送信し、
前記報知部は、前記対向車から前記報知指示を受信した場合に、前記特定進路変更を見合わせることを勧める旨の報知を行うことを特徴とする車載機。
【請求項12】
請求項1において、
前記送信器から送信する情報には、自車の車速及び加減速の少なくともいずれかの速度関連情報も含み、
自車の後方に並ぶいずれかの後続車から、前記中継を1回又は複数回繰り返して受信した情報に、当該後続車に対する前記発光元車両方向が当該後続車の後側方である後続後側方車の速度関連情報が含まれていた場合には、この速度関連情報をもとに、当該後続後側方車の減速の有無を判定する減速有無判定部(179)を備え、
前記送信器は、前記存在決定部で自車の後側方に車両が存在しないと判定した場合であっても、前記減速有無判定部で前記後続後側方車の減速なしと判定した場合には、前記報知指示を送信することを特徴とする車載機。
【請求項13】
請求項1において、
前記第1受光部は、自車の前方から前側方にかけての所定の角度範囲までを撮像範囲とする前方カメラであって、
前記前方カメラの撮像画像から、自車の前方に進行方向が同一の他車である前方車が存在するか否か、及び自車の前側方に、進行方向が同一の他車である前側方車が存在するか否かを判定する撮像判定部(180)を備え、
前記送信器から送信する情報には、前記撮像判定部での判定結果である撮像判定結果も含み、
前記送信器は、前記存在決定部で自車の後側方に車両が存在しないと判定した場合であって、且つ、前記減速有無判定部で前記後続後側方車の減速ありと判定した場合であっても、自車の後方に並ぶいずれかの後続車から、前記中継を1回又は複数回繰り返して受信した情報に含まれる前記撮像判定結果として、当該後続後側方車に前記前方車が存在すること、及び当該後続車に前記前側方車が存在することのいずれかを示す情報を受信した場合には、前記報知指示を送信することを特徴とする車載機。
【請求項14】
一方の車両と他方の車両とにそれぞれ搭載された車載機(1)によって、情報を重畳した光によって光通信を行い、前記他方の車両に搭載された表示装置(2)に運転支援情報を表示する運転支援システム(100)であって、
前記一方の車両の車載機は、
前記一方の車両の後部に配置され、前記一方の車両の後方から後側方にかけての所定の角度範囲に存在する後方他車の車載機から発せられた光を受光する第2受光部(16)と、
前記後方他車の前記車載機から発せられた光の方向に基づいて、前記一方の車両の位置に対する当該後方他車の位置を特定する発光元車両方向特定部(176)と、
前記一方の車両の前部に配置され、前記後方他車の前記車載機から発せられた光に重畳していた情報を、光に重畳させて前記一方の車両の前方に向けて発光する発光部(13)と、
前記発光部を制御する発光制御部(174)とを備え、
前記一方の車両と対向する車線の前記他方の車両の車載機は、
前記他方の車両の前部に配置され、前記一方の車両の前記発光部から発せられた光を受光する第1受光部(15)と、
前記第1受光部で受光した前記一方の車両からの光に重畳していた情報に基づいて、前記表示装置を制御する表示制御部(182)と、
自車両が対向直進車の進行方向に交わる側へ進入しようとして待機状態にあるかどうかを推定する自車待機状態推定部(181)とを備え、
前記一方の車両の前記発光制御部は、前記後方他車の前記車載機から発せられた光に重畳していた情報に、前記後方他車の位置を加えた情報を重畳した光を前記発光部から前記他方の車両に向けて発光させ、
前記他方の車両の表示制御部は、前記自車待機状態推定部によって前記他方の車両が前記待機状態にあると推定した場合に、前記一方の車両から発せられた光に重畳していた情報に基づいて、前記一方の車両と、当該一方の車両が走行する車線に隣接する車線の車両の情報とを前記運転支援情報として前記表示装置に表示させることを特徴とする運転支援システム。
【請求項15】
複数の車両の各々に搭載される請求項〜1のいずれか1項に記載の車載機(1)を含む運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する車載機、及びその車載機を含む運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、他の車両に搭載された同種の装置との間(つまり、車車間)で、光通信によって情報を送受する装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、光通信に係る通信光を送出する発光器と、その発光器が送出した通信光を受光する受光器とを備え、発光器を点滅させることによって他車両に対してメッセージを送出し、他車両の受光器によってそのようなメッセージを受信するシステムが開示されている。
【0003】
なお、光通信は、電波を用いる通信に比べ、指向性が高いために容易に相手を特定して通信を行うことができる利点や、電波環境が悪化した状態であっても通信を行うことができる利点があることが知られている。
【0004】
また、従来、車車間の通信によって、交差点に進入する車両同士で車両位置等の情報を交換し合い、同時期に交差点に進入するおそれのある他車がある場合に、その他車の存在を運転者に対して報知する装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−182268号公報
【特許文献2】特開2008−197740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、光通信は、容易に相手を特定して通信を行うことができる利点や電波環境が悪化した状態であっても通信を行うことができる利点があるため、特許文献2に開示されているような装置での車車間の通信に光通信を用いることも考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合には、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更が可能なタイミングや当該進路変更を禁止するタイミングといった進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが困難な場合があるという問題が生じる。詳しくは、以下の通りである。ここでは、左側通行が法制化されている地域を例に挙げて説明を行う。なお、右側通行が法制化されている地域では、左右が逆になる。
【0008】
自車両が交差点で右折待ちしている状態であって、対向車線が2車線以上であり、対向車線にも右折待ちの車両(以下、対向右折車両)が存在する場合、この対向右折車両に遮られ、自車両からの通信光が対向右折車両の陰の直進車両や左折車両といった車両に届かない場合がある。この場合には、自車両と対向右折車両の陰の車両との間で光通信を行うことができないので、自車両が対向右折車両の陰の車両から車両位置等の情報を得られない。よって、自車両側で対向右折車両の陰の車両の位置を判断できず、進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することができない。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することを可能にする車載機及び運転支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
載機に係る第1の発明は、他の車両に搭載された、情報を重畳した光を発光する発光部から当該光を受信し、当該光に重畳していた情報を、情報を重畳した光を自車の前方に発光する発光部(13)を用いてさらに他の車両に送信する車載機(1)であって、自車の後部に配置され、自車の後方から後側方にかけての所定の角度範囲に存在する後方他車の発光部から発せられた光を受光する第2受光部(16)と、後方他車から発せられた光の方向に基づいて、自車の位置に対する当該後方他車の位置を特定する発光元車両方向特定部(176)と、発光部を制御する発光制御部(174)とを備え、発光制御部は、発光部を制御して、後方他車から発せられた光に重畳していた情報に、後方他車の位置を加えた情報を重畳した光を発光部から自車の前方に向けて発光させることを特徴としている。
【0013】
これによれば、後方他車の発光部で発光された光を第2受光部で受光した場合には、発光元車両方向特定部で自車の位置に対する当該後方他車の位置を特定でき、自車の後側方車の存在を示す情報を、自車の前方の対向車に送信することが可能になる。また、自車の後側方車の存在が特定できると、自車の対向車の特定進路変更のタイミングについても精度良く判定可能となるので、自車の対向車の特定進路変更のタイミングについての情報を、自車の前方の対向車に送信することも可能になる。そして、これらの情報を対向車から受信した車両は、これらの情報をもとに、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。よって、対向車の陰の車両との光通信を行うことができない場合であっても、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。その結果、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【0014】
転支援システムに係る第2の発明は、一方の車両と他方の車両とにそれぞれ搭載された車載機(1)によって、情報を重畳した光によって光通信を行い、他方の車両に搭載された表示装置(2)に運転支援情報を表示する車車間通信システム(100)であって、一方の車両の車載機は、一方の車両の後部に配置され、一方の車両の後方から後側方にかけての所定の角度範囲に存在する後方他車の車載機から発せられた光を受光する第2受光部(16)と、後方他車の車載機から発せられた光の方向に基づいて、一方の車両の位置に対する当該後方他車の位置を特定する発光元車両方向特定部(176)と、一方の車両の前部に配置され、後方他車の車載機から発せられた光に重畳していた情報を、光に重畳させて一方の車両の前方に向けて発光する発光部(13)と、発光部を制御する発光制御部(174)とを備え、一方の車両と対向する車線の他方の車両の車載機は、他方の車両の前部に配置され、一方の車両の発光部から発せられた光を受光する第1受光部(15)と、第1受光部で受光した一方の車両からの光に重畳していた情報に基づいて、表示装置を制御する表示制御部(182)と、自車両が対向直進車の進行方向に交わる側へ進入しようとして待機状態にあるかどうかを推定する自車待機状態推定部(181)とを備え、一方の車両の発光制御部は、後方他車の車載機から発せられた光に重畳していた情報に、後方他車の位置を加えた情報を重畳した光を発光部から他方の車両に向けて発光させ、他方の車両の表示制御部は、自車待機状態推定部によって他方の車両が待機状態にあると推定した場合に、一方の車両から発せられた光に重畳していた情報に基づいて、一方の車両と、当該一方の車両が走行する車線に隣接する車線の車両の情報とを運転支援情報として表示装置に表示させることを特徴としている。
【0015】
これによれば、後方他車の発光部で発光された光を第2受光部で受光した場合には、発光元車両方向特定部で一方の車両の位置に対する当該後方他車の位置を特定でき、一方の車両の後側方車の存在を示す情報を、一方の車両の前方の対向車にあたる他方の車両に送信することが可能になる。また、一方の車両の後側方車の存在が特定できると、対向車の特定進路変更のタイミングについても精度良く判定可能となるので、一方の車両の対向車の特定進路変更のタイミングについての情報を、一方の車両の前方の対向車にあたる他方の車両に送信することも可能になる。そして、これらの情報を対向車から受信した他方の車両は、これらの情報をもとに、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。よって、他方の車両において、対向車の陰の車両との光通信を行うことができない場合であっても、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。その結果、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【0016】
載機に係る第3の発明は、複数の車両の各々に搭載され、情報を光を用いて送信する送信器(12)と、送信器で光を用いて送信された情報を受信する受信器(14)とを備える車載機(1)であって、送信器は、自車の前方に光を発光する発光部(13)を有しており、受信器は、自車の前方の所定の角度範囲までの光を受光する第1受光部(15)と、自車の後方から後側方にかけての所定の角度範囲までの光を受光する第2受光部(16)とを有しており、他車の発光部で発光された光を第2受光部で受光した場合に、当該光を用いて送信されてきた当該他車の情報を、自車の発光部から発光する光を用いて送信する中継を行い、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への自車の進路変更である特定進路変更を推定する特定進路変更推定部(181)と、他車の発光部から発光された光を第2受光部で受光した場合に、当該光の光源の位置を特定することで、当該光の発光元である当該他車の自車に対する方向である発光元車両方向が後方と後側方とのいずれであるかを少なくとも特定する発光元車両方向特定部(176)とを備え、中継を行う場合に、送信されてきた他車の情報に、発光元車両方向特定部で特定した当該他車の自車に対する発光元車両方向も加えて送信し、特定進路変更推定部で特定進路変更を推定した場合であって、対向する他車である対向車の発光部から発光された光を第1受光部で受光した場合に、当該光を用いて送信された当該対向車の情報をもとに、特定進路変更のタイミングについての情報の報知を行う報知部(182)を備えることを特徴としている。
【0017】
これによれば、他車の発光部で発光された光を第1受光部で受光することにより、その他車が対向車であることが特定できる。また、他車の発光部で発光された光を第2受光部で受光した場合には、発光元車両方向特定部でその他車が後続車か後側方車かの発光元車両方向を特定できる。
【0018】
自車に対する発光元車両方向から、自車の後側方車の存在が特定可能となるので、自車の後側方車の存在を示す情報を、自車の対向車に送信することが可能になる。また、自車の後側方車の存在が特定できると、自車の対向車の特定進路変更のタイミングについても精度良く判定可能となるので、自車の対向車の特定進路変更のタイミングについての情報を、自車の対向車に送信することも可能になる。そして、これらの情報を対向車から受信した車両は、これらの情報をもとに、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。よって、対向車の陰の車両との光通信を行うことができない場合であっても、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0019】
また、対向車から受信した当該対向車に対する発光元車両方向から、当該対向車の後側方車の存在を特定することも可能になる。この場合にも、対向車の陰の車両(以下、死角車)との光通信を行うことができない場合であっても、死角車の位置を特定可能となるので、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0020】
さらに、前述の中継を行うので、対向車の走行車線に隣接する車線の死角車に限らず、さらに隣の車線の死角車の存在についても、走行車線に隣接する車線の車両に対する発光元車両方向を中継によって間接的に受信することで特定可能となる。従って、この点でも、対向車の陰の車両との光通信を行うことができない場合であっても、特定進路変更のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0021】
その結果、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【0022】
転支援システムに係る第4の発明は、複数の車両の各々に搭載される第3の発明の車載機を含むことを特徴としている。よって、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】運転支援システム100の概略的な構成の一例を示す図である。
図2】車載機1の概略的な構成の一例を示す図である。
図3】発光部13、第1受光部15、第2受光部16の車両での搭載位置について説明を行うための図である。
図4】第1受光部15及び第2受光部16の、通信光を受光する範囲についての説明を行う。
図5】制御部17の概略的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6】制御部17での可視光通信処理のフローの一例を示すフローチャートである。
図7】制御部17での他車支援関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
図8】制御部17での自車支援関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下に示す実施形態は、左側通行が法制化されている地域に対応した実施形態であり、右側が法制化されている地域では、以下の実施形態と左右が逆になる。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明が適用された運転支援システム100の概略的な構成の一例を示す図である。図1に示す運転支援システム100は、複数の車両の各々に1つずつ搭載された車載機1を含んでいる。
【0026】
図1の車両HVは、交差点で右折待ちをしている車両であり、車両A1は車両HVの対向車線で右折待ちをしている対向車である。車両A2・A3・A4は、車両A1の後方に並んだ、車両A1の後続車であり、車両A2、A3、A4の順に車両A1と同一車線上に並んでいる。車両B1は、車両A1〜A4と同一進行方向の隣接車線を走行する直進車であり、車両HVにとっての対向直進車である。車両B2は、車両B1の後続車である。車両Cは、車両A1〜A4と同一進行方向の、車両B1〜B2の隣接車線を走行する直進車若しくは左折車である。ここでは、車両B1〜B2、及び車両Cは、車両HVにとって車両A1の陰の車両(つまり、死角の車両)であるものとする。
【0027】
なお、本実施形態では、特に説明のない限り、車両HV、車両A1〜A4、車両B1〜B2、及び車両Cに車載機1が搭載されているものとする。
【0028】
ここで、図2を用いて車載機1の概略的な構成について説明を行う。図2に示すように車載機1は、表示装置2、音声出力装置3と信号(情報)のやり取り可能に接続されている。一例としては、車載機1、表示装置2、音声出力装置3は、CAN(controller areanetwork)などの通信プロトコルに準拠した車載LANで各々接続されている構成とすればよい。また、車載機1は、図2に示すように、外部入力インターフェース(I/F)11、送信器12、受信器14、制御部17を備えている。
【0029】
表示装置2は、例えばフルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて構成することができる。また、音声出力装置3は、スピーカ等から構成され、車載機1の指示に基づいて警告音等を出力する。
【0030】
外部入力I/F11は、自車に搭載されたECUやセンサから、車両状態の情報を制御部17が取得するためのインターフェースである。例えば、外部入力I/F11には、CANなどの通信プロトコルに準拠した車載LAN等を介して、自車に搭載されたECUやセンサから車両状態の情報が入力されてくるものとする。
【0031】
車両状態の情報の一例としては、車輪速センサで得られた車速の信号、加減速センサで得られた加減速度の信号、ターンシグナルスイッチの信号、舵角センサの信号、イグニッション電源のオンオフの信号等がある。
【0032】
送信器12は、光を媒体にして通信を行う光通信の送信器であり、発光部13からなる。発光部13は、光通信に用いる通信光を送出する(つまり、情報を重畳した光を発光する)発光器であり、例えば可視光又は赤外線を送出する高輝度の発光ダイオードにより形成される。本実施形態では、光通信は、可視光を用いる可視光通信である場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0033】
受信器14は、光を媒体にして通信を行う光通信の受信器であり、第1受光部15及び第2受光部16からなる。第1受光部15及び第2受光部16は、それぞれ前方及び後方からの光通信に用いられる通信光を受光する受光器である。第1受光部15及び第2受光部16としては、例えばフレームレートが高速度の二次元のMOS(Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサによる撮像装置を用いる構成とすればよい。
【0034】
第1受光部15及び第2受光部16は、発光部13の点滅を検出することで、情報を受
信できるようになっている。第1受光部15及び第2受光部16としては、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等を用いる構成としてもよいが、本実施形態では上記撮像装置を用いる場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0035】
ここで、図3を用いて、発光部13、第1受光部15、第2受光部16の車両での搭載位置について説明を行う。発光部13は、自車の前方に、通信光の指向性の中心線が自車前方を向くよう搭載される。発光部13は、例えば自車の前部バンパに配置される構成などとすればよい。
【0036】
第1受光部15は、自車の前方や前側方からの通信光を受光するように、自車の前方に搭載される。第1受光部15は、例えば自車の前部バンパに配置される構成などとすればよく、発光部13と左右に並ぶように配置される構成としてもよいし、発光部13と上下に並ぶように配置される構成としてもよい。なお、第1受光部15は、請求項の前方カメラに相当する。
【0037】
第2受光部16は、自車の後方や後側方からの通信光を受光するように、自車の後方に搭載される。第2受光部16は、例えば自車の後部バンパに配置される構成などとすればよい。
【0038】
続いて、図4を用いて、第1受光部15及び第2受光部16の、通信光を受光する範囲についての説明を行う。図4のDが、第1受光部15が通信光を受光する範囲を示しており、Eが、第2受光部16が通信光を受光する範囲を示している。
【0039】
第1受光部15は、自車前方の所定の角度範囲までの通信光を受光する。ここでの通信光を受光する角度範囲とは、第1受光部15としての前述の撮像装置の撮像範囲にあたる。ここで言うところの所定の角度範囲とは、図4に示すように、自車と同一車線上の前方の車両(以下、前方車)だけでなく、自車と隣接する車線の前側方の車両(以下、前側方車)も上記撮像範囲に含まれる程度の範囲である。
【0040】
また、第2受光部16は、自車後方の所定の角度範囲までの通信光を受光する。ここでの通信光を受光する角度範囲とは、第2受光部16としての前述の撮像装置の撮像範囲にあたる。ここで言うところの所定の角度範囲とは、図4に示すように、自車と同一車線上の後方の車両(以下、後方車)だけでなく、自車と隣接する車線の後側方の車両(以下、後側方車)も上記撮像範囲に含まれる程度の範囲である。
【0041】
発光部13、第1受光部15、及び第2受光部16が以上のように設けられることにより、車載機1を搭載する車両は、対向車、後方車、後側方車から可視光通信によって送信される情報を受信できるようになっている。
【0042】
制御部17は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される。そして、制御部17は、外部入力I/F11、受信器14から入力された各種情報に基づき、各種処理を実行する。制御部17は、図5に示すように、機能ブロックとして、第1受信処理部171、第2受信処理部172、自車情報取得部173、送信処理部174、画像認識処理部175、送信元方向特定部176、カウント関連処理部177、第1死角車判定部178、減速有無判定部179、第2死角車判定部180、特定進路変更推定部181、及び報知処理部182を備えている。
【0043】
例えば、制御部17は、可視光通信によって情報を送受信したり、他の車両から可視光通信によって送信されてきた情報を中継してさらに他の車両に送信したりする可視光通信処理、他車の右折支援に関連する処理(以下、他車支援関連処理)、自車の右左折支援に関連する処理(以下、自車支援関連処理)等を行う。なお、他の車両から可視光通信によって送信されてきた情報を中継してさらに他の車両に送信する場合には、他の車両から送信されてきた情報を、自車から送信する情報に付加して他の車両に送信する。
【0044】
ここで、図6のフローチャートを用いて、制御部17での可視光通信処理についての説明を行う。なお、図6のフローチャートは、例えば自車のイグニッション電源がオンになったときに開始される構成とすればよい。
【0045】
ステップS1では、可視光通信によって送信された情報を第2受信処理部172で受信した場合(ステップS1でYES)には、ステップS6に移る。一方、可視光通信によって送信された情報を第2受信処理部172で受信していない場合(ステップS1でNO)には、ステップS2に移る。第2受信処理部172は、第2受光部16から出力される受光結果(撮像結果)をデコードできた場合に、情報を受信したものとする。第2受信処理部172は、第2受光部16を介して情報を受信するので、自車の後方車や後側方車からの情報を受信することになる。
【0046】
ステップS2では、自車からの情報の送信タイミングであった場合(ステップS2でYES)には、ステップS3に移る。一方、送信タイミングでなかった場合(ステップS2でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。ここで言うところの送信タイミングとは、例えば100msecごと等の所定の送信周期に従ったタイミングとする。
【0047】
ステップS3では、送信処理部174が第1送信データ生成処理を行って、ステップS4に移る。第1送信データ生成処理では、自車情報取得部173が取得していた自車の車両状態の情報と、その車両状態の情報の検出時刻を示すタイムスタンプとを含む送信データを生成する。自車情報取得部173は、外部入力I/F11を介して自車の車両状態の情報を取得する。送信データに含める自車の車両状態の情報としては、車速や加減速度がある。なお、送信データには、送信元の車載機1を特定するための識別子として、車載機1の機器IDも含む構成としてもよい。
【0048】
また、前側方車及び前方車の有無の情報も送信データに含める構成とすることが好ましい。前側方車及び前方車の有無については、第1受光部15での撮像結果に対して画像認識処理部175で周知の画像認識処理を行い、自車の左側の前側方車を検出できた場合に「前側方車あり」、自車の左側の前側方車を検出できなかった場合に「前側方車なし」とする構成とすればよい。また、自車の前方車を検出できた場合に「前方車あり」、自車の前方車を検出できなかった場合に「前方車なし」とする構成とすればよい。前側方車及び前方車の検出には、周知のオプティカルフローを利用して行う構成としてもよい。画像認識処理部175は、第1受光部15から出力される撮像結果を、第1受信処理部171を介して取得する構成とすればよい。
【0049】
ステップS4では、送信処理部174が送信処理を行って、ステップS5に移る。送信処理では、第1送信データ生成処理で生成した送信データをエンコードして、その結果得られる変調出力に応じて発光部13を点滅させることで、可視光通信によって情報を送信させる。
【0050】
ステップS5では、可視光通信処理の終了タイミングであった場合(ステップS5でYES)には、フローを終了する。一方、可視光通信処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS5でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。可視光通信処理の終了タイミングの一例としては、自車のイグニッション電源がオフになったときなどがある。
【0051】
可視光通信によって送信された情報を第2受信処理部172で受信した場合のステップS6では、送信元方向特定部176が、送信元方向特定処理を行って、ステップS7に移る。送信元方向特定処理では、情報の送信元の他車が自車の後方と後側方とのいずれであるかを特定する。言い換えると、第2受光部16で受光した通信光の発光元である他車の自車に対する方向(以下、発光元車両方向)が自車の後方と後側方とのいずれであるかを特定する。よって、送信元方向特定部176が請求項の発光元車両方向特定部に相当する。
【0052】
一例としては、送信元方向特定部176は、第2受光部16から出力される撮像結果上において、通信光に係る光源の座標値を検出し、この座標値により、発光元車両方向が自車の後方と後側方とのいずれであるかを特定する。
【0053】
ステップS7では、送信元方向特定部176で特定した方向が後方であった場合(ステップS7で「後方」)には、ステップS8に移る。一方、送信元方向特定部176で特定した方向が後側方であった場合(ステップS7で「後側方」)には、ステップS15に移る。
【0054】
ステップS8では、カウント関連処理部177がカウント付与処理を行って、ステップS9に移る。カウント付与処理では、特定した後方車から受信した情報のうち、当該後方車の情報についてカウントを付与する。詳しくは、後方車から受信した情報に、後方車の情報と、後方車が前述の中継を行った後方車以外の他車の情報とが含まれる場合、この後方車の情報についてのみカウントを付与する。
【0055】
なお、後方車から受信する情報のうちの、後方車の情報と、後方車以外の他車の情報とは、各車の情報を判別できるようなデータ構造となっているものとする。また、カウント付与処理で付与するカウントは、一例として「1」を付与するものとする。
【0056】
ステップS9では、後方車から受信した情報に、後方車以外の他車の情報が含まれる場合(ステップS9でYES)には、ステップS10に移る。一方、後方車以外の他車の情報が含まれない場合(ステップS9でNO)には、ステップS14に移る。
【0057】
ステップS10では、後方車以外の他車の情報にカウントが付与されていた場合(ステップS10でYES)には、ステップS11に移る。一方、後方車以外の他車の情報にカウントが付与されていなかった場合(ステップS10でNO)には、ステップS14に移る。前述のカウントは、後方車の情報について付与されるため、後方車に後続する車両(つまり、後続車)の情報には、自車に送信されてくる前に既にカウントが付与されていることになる。
【0058】
ステップS11では、カウント関連処理部177がカウント変更処理を行って、ステップS12に移る。カウント変更処理では、後方車以外の他車の情報に付与されていたカウントに1を加算する。後方車以外の他車の情報が、複数の他車の情報であり、それぞれにカウントが付与されていた場合には、各々のカウントに1を加算する。
【0059】
ステップS12では、カウント関連処理部177が条件判定処理を行う。条件判定処理では、自車が停車していて、且つ、後方車から受信した情報のうちに前述のカウントが所定値以上のものがあるか否かを判定する。そして、上記条件を満たすものがあると判定した場合(ステップS12でYES)には、ステップS13に移る。一方、上記条件を満たすものがないと判定した場合(ステップS12でNO)には、ステップS14に移る。
【0060】
一例としては、自車情報取得部173で取得する自車の車速が、実質的に0km/hと言える値(例えば5km/h以下など)である場合に、自車が停車していると判定すればよい。なお、自車が停車していることを条件に加えない構成としてもよい。また、所定値とは、後述する後続車の情報の中継台数をどの程度に制限したいのかによって定まる任意の値である。
【0061】
ステップS13では、送信処理部174が第2送信データ生成処理を行って、ステップS16に移る。第2送信データ生成処理では、自車情報取得部173が取得していた自車の車両状態の情報に加え、後方車から受信した情報を含む送信データを生成する。自車の車両状態の情報には、その車両状態の情報の検出時刻を示すタイムスタンプも付与する。
【0062】
後方車から受信した情報のうち、後方車の情報については、後方車の前側方車の有無の情報、後方車から受信した後方車の車両状態の情報、その車両状態の情報の検出時刻を示すタイムスタンプに加え、自車の送信元方向特定部176で特定した後方車の発光元車両方向(つまり、「後方」)、カウント付与処理で付与したカウント(一例として「1」)も付与する。後方車の前側方車の有無の情報は、後方車において検出されたものである。後方車の車両状態の情報は、自車の車両状態の情報と同種である。
【0063】
後方車から受信した情報のうち、条件判定処理でカウントが所定値以上と判定した後続車の情報については除外する。よって、送信処理部174が請求項の中継回数制限部に相当する。これによれば、停車している自車から所定台数以上後方の後続車の情報を中継しないことになる。つまり、後続車の情報の中継台数を制限できる。よって、右折支援への必要性が薄い遠方の後続車の情報は中継から省き、通信速度の確保や情報処理の負荷の低減を可能にできる。
【0064】
また、後方車から受信した情報のうち、除外する後続車以外の他車の情報については、当該他車の前側方車及び前方車の有無の情報、後方車から受信した当該他車の車両状態の情報、その車両状態の情報の検出時刻を示すタイムスタンプに加え、当該他車の発光元車両方向、カウント変更処理で加算後のカウントも付与する。なお、後方車の後側方車やさらに後方の後続車の後側方車の情報のように、カウントが付与されない情報の場合には、カウントは付与しない。
【0065】
上記他車の発光元車両方向は、自車の送信元方向特定部176で特定したものではなく、当該他車から可視光通信で情報を受信した車両の送信元方向特定部176で特定したものである。なお、送信データにおいて、各車の情報は、中継で追加された順に並び、各車を判別できるとともに、各車の並び順が判別できるようなデータ構造となっているものとする。
【0066】
ステップS14では、送信処理部174が第3送信データ生成処理を行って、ステップS16に移る。第2送信データ生成処理と同様にして、第3送信データ生成処理でも、自車情報取得部173が取得していた自車の車両状態の情報に加え、後方車から受信した情報を含む送信データを生成する。第2送信データ生成処理と異なる点は、カウントによる後続車の情報の除外が行われない点である。
【0067】
送信元方向特定部176で特定した方向が後側方であった場合のステップS15では、送信処理部174が第4送信データ生成処理を行って、ステップS16に移る。第4送信データ生成処理では、自車情報取得部173が取得していた自車の車両状態の情報に加え、後側方車から受信した情報を含む送信データを生成する。自車の車両状態の情報には、その車両状態の情報の検出時刻を示すタイムスタンプも付与する。
【0068】
後側方車から受信した情報のうち、後側方車の情報については、後側方車の前側方車及び前方車の有無の情報、後側方車から受信した後側方車の車両状態の情報、その車両状態の情報の検出時刻を示すタイムスタンプに加え、自車の送信元方向特定部176で特定した後側方車の発光元車両方向(つまり、「後側方」)も付与する。
【0069】
後側方車の前側方車の有無の情報は、後側方車において検出されたものである。後側方車の車両状態の情報は、自車の車両状態の情報と同種である。また、後側方車から受信した情報に、後側方車の後続車等の他車の情報も含まれていた場合には、これらの他車の情報も含む送信データを生成する。
【0070】
ステップS16では、自車からの情報の送信タイミングであった場合(ステップS16でYES)には、ステップS17に移る。一方、送信タイミングでなかった場合(ステップS16でNO)には、ステップS16のフローを繰り返す。ここで言うところの送信タイミングとは、ステップS2で説明した通りである。
【0071】
ステップS17では、送信処理部174が送信処理を行って、ステップS5に移る。送信処理では、第2送信データ生成処理や第3送信データ生成処理や第4送信データ生成処理で送信データを生成した場合には、この送信データをエンコードして、その結果得られる変調出力に応じて発光部13を点滅させることで、可視光通信によって情報を送信させる。
【0072】
なお、第2受信処理部172で逐次受信する他車の情報は、制御部17の電気的に書き換え可能なメモリに、自車の送信元方向特定部176で特定した発光元車両方向を付与して、受信した順や時刻が特定できるようにして一定期間や一定量だけ格納するものとする。
【0073】
図6のフローチャートでは、カウント付与処理でカウントとして「1」を付与する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、カウント関連処理部177での条件判定処理の条件に自車の停車を含まない構成とする場合には、カウント付与処理でカウントとして所定値を付与する構成としてもよい。この場合、カウント変更処理では、カウントを1加算するのではなく、1減算する構成とすればよい。この構成によっても、後続車の情報の中継台数を制限できる。
【0074】
続いて、図7のフローチャートを用いて、制御部17での他車支援関連処理についての説明を行う。なお、図7のフローチャートは、例えば自車のイグニッション電源がオンになったときに開始され、イグニッション電源がオフになったときに終了する構成とすればよい。
【0075】
ステップS21では、他車支援関連処理の開始タイミングであった場合(ステップS21でYES)には、ステップS22に移る。一方、他車支援関連処理の開始タイミングでなかった場合(ステップS21でNO)には、ステップS21のフローを繰り返す。
【0076】
他車支援関連処理の開始タイミングの一例としては、自車の停車を検出した場合や自車の車速が所定速度以下となった場合等がある。自車情報取得部173で取得する自車の車速が、実質的に0km/hと言える値(例えば5km/h以下など)である場合に、制御部17が自車の停車を検出する構成とすればよい。また、所定速度とは、例えば徐行程度の速度とすればよい。
【0077】
ステップS22では、第1死角車判定部178が第1死角車判定処理を行って、ステップS23に移る。第1死角車判定処理では、自車の後側方車からの情報を受信していた場合に、自車の後側方に車両が存在すると判定する。自車の後側方車からの情報を受信していたことは、メモリに格納した他車から受信した情報に、自車の送信元方向特定部176で特定した発光元車両方向「後側方」が付与された情報があることをもって判定すればよい。
【0078】
ステップS23では、第1死角車判定処理で自車の後側方車ありと判定した場合(ステップS23でYES)には、自車の後側方に車両が存在すると決定し、ステップS24に移る。一方、第1死角車判定処理で自車の後側方車なしと判定した場合(ステップS23でNO)には、ステップS25に移る。よって、第1死角車判定部178が請求項の存在決定部に相当する。
【0079】
ステップS24では、送信処理部174が第1情報送信処理を行って、ステップS33に移る。第1情報送信処理では、自車の後側方に車両が存在することを示す情報(以下、後側方車存在情報)を含む送信データを生成する。そして、生成したこの送信データをエンコードして、その結果得られる変調出力に応じて発光部13を点滅させることで、可視光通信によって情報を送信させる。
【0080】
ステップS25では、後続後側方車からの情報を受信していた場合(ステップS25でYES)には、ステップS26に移る。一方、後続後側方車からの情報を受信していなかった場合(ステップS25でNO)には、ステップS33に移る。
【0081】
一例として、自車の後方車から受信した情報のうちに、当該後方車の後側方車、若しくは当該後方車のいずれかの後続車の後側方車の情報が含まれていた場合に、後続後側方車からの情報を受信していたと判定する。また、自車の後方車からの情報を受信していたことは、メモリに格納した他車から受信した情報に、自車の送信元方向特定部176で特定した発光元車両方向「後方」が付与された情報があることをもって判定すればよい。
【0082】
ステップS26では、減速有無判定部179が減速有無判定処理を行って、ステップS27に移る。減速有無判定処理では、受信した後続後側方車の車両状態の情報から、当該後続後側方車の減速の有無を判定する。該等する後続後側方車が複数存在した場合には、並び順が自車からも最も近いものの情報を用いる構成とすればよい。
【0083】
例えば、車両状態の情報に加減速度の情報が含まれていた場合には、この加減速度の情報が示す加速度が0未満の場合に減速と判定する構成とすればよい。また、車両状態の情報に車速の情報が含まれていた場合には、逐次受信した後続後側方車の車速の情報から、タイムスタンプに基づいて、時間が前後する車速の情報を抽出し、これらの車速の情報から加速度を算出することで、減速の有無を判定する構成とすればよい。
【0084】
ステップS27では、減速有無判定処理で後続後側方車の減速ありと判定した場合(ステップS27でYES)には、ステップS29に移る。一方、減速有無判定処理で後続後側方車の減速なしと判定した場合(ステップS27でNO)には、ステップS28に移る。
【0085】
ステップS28では、送信処理部174が第2情報送信処理を行って、ステップS34に移る。第2情報送信処理では、自車の後続後側方車の減速なしを示す情報(以下、後続後側方車減速なし情報)を含む送信データを生成し、可視光通信によって送信させる。
【0086】
ステップS29では、第2死角車判定部180が第2死角車判定処理を行って、ステップS30に移る。第2死角車判定処理では、自車の後方に並ぶいずれかの後続車の前側方車、若しくは後続後側方車の前方車があるか否かを判定する。一例としては、メモリに格納した後続車から受信した情報のうちの、前側方車の有無の情報に、前側方車ありの情報があることをもって、後続車の前側方車があると判定すればよい。また、メモリに格納した後続後側方車から受信した情報のうちの、前方車の有無の情報に、前方車ありの情報があることをもって、後続後側方車の前方車があると判定すればよい。
【0087】
ステップS30では、第2死角車判定処理で自車の後続車に前側方車あり、若しくは自車の後続後側方車に前方車あり(つまり、死角車あり)と判定した場合(ステップS30でYES)には、ステップS31に移る。一方、第2死角車判定処理で自車の後続車に前側方車なし、及び自車の後続後側方車に前方車なしと判定した場合(ステップS30でNO)には、ステップS32に移る。よって、第2死角車判定部180が請求項の撮像判定部に相当する。
【0088】
ステップS31では、送信処理部174が第3情報送信処理を行って、ステップS34に移る。第3情報送信処理では、自車の後続車の前側方車が存在することを示す情報(以下、後続前側方車存在情報)を含む送信データを生成し、可視光通信によって情報を送信させる。なお、自車の後続後側方車の前方車が存在することは、自車の後続車の前側方車が存在することと同義である。
【0089】
ステップS32では、送信処理部174が第4情報送信処理を行って、ステップS34に移る。第4情報送信処理では、自車の後続車の前側方車が存在しないことを示す情報(以下、後続前側方車存在なし情報)を含む送信データを生成し、可視光通信によって情報を送信させる。
【0090】
ステップS33では、送信処理部174が第5情報送信処理を行って、ステップS34に移る。第5情報送信処理では、自車の後続後側方車の情報を可視光通信で取得できていないことを示す情報(以下、後続後側方車非取得情報)を含む送信データを生成し、可視光通信によって情報を送信させる。
【0091】
第1情報送信処理、第2情報送信処理、第3情報送信処理、第4情報送信処理、第5情報送信処理では、前述の可視光通信処理での送信周期に合わせて、前述の送信処理時の送信データに追加して情報を送信する構成としてもよいし、割り込みで情報を送信する構成としてもよい。また、便宜上、第1情報送信処理、第2情報送信処理、第3情報送信処理、第4情報送信処理、第5情報送信処理で送信する情報を、以降では報知関連情報と呼ぶ。
【0092】
ステップS34では、他車右折支援関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS34でYES)には、フローを終了する。一方、他車右折支援関連処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS34でNO)には、ステップS22に戻ってフローを繰り返す。
【0093】
他車右折支援関連処理の終了タイミングの一例としては、自車の車速が所定の閾値を越えた場合や自車の操舵角が所定値以上となった場合とすればよい。これによれば、自車が交差点での停車や徐行を終えた場合や交差点を右左折した場合に他車右折支援関連処理を終了することができる。
【0094】
続いて、図8のフローチャートを用いて、制御部17での自車支援関連処理についての説明を行う。なお、図8のフローチャートは、例えば自車のイグニッション電源がオンになったときに開始され、イグニッション電源がオフになったときに終了する構成とすればよい。
【0095】
ステップS41では、自車支援関連処理の開始タイミングであった場合(ステップS41でYES)には、ステップS42に移る。一方、自車支援関連処理の開始タイミングでなかった場合(ステップS41でNO)には、ステップS41のフローを繰り返す。
【0096】
自車支援関連処理の開始タイミングは、特定進路変更推定部181が自車の右折開始を推定した場合である。一例として、特定進路変更推定部181は、自車の停車を検出、且つ、右折のターンシグナルスイッチの信号を検出した場合に、自車の右折開始を推定する構成とすればよい。
【0097】
他にも、ナビゲーション装置の情報を利用できる場合には、自車位置が交差点に接近したことを検出、且つ、右折のターンシグナルスイッチの信号を検出した場合に、自車の右折開始を推定する構成としてもよい。また、右折のターンシグナルスイッチの信号の代わりに、右折方向への所定値以上の操舵角の変化を検出する構成としてもよい。特定進路変更推定部181は、外部入力I/F11を介して車速、ターンシグナルスイッチの信号、操舵角を取得する。
【0098】
ステップS42では、可視光通信によって送信された報知関連情報を第1受信処理部171で受信した場合(ステップS42でYES)には、ステップS43に移る。一方、可視光通信によって送信された報知関連情報を第1受信処理部171で受信していない場合(ステップS42でNO)には、ステップS45に移る。
【0099】
第1受信処理部171は、第1受光部15から出力される受光結果(撮像結果)をデコードして前述の報知関連情報を取得できた場合に、報知関連情報を受信したものとする。第1受信処理部171は、第1受光部15を介して情報を受信するので、自車の対向車からの情報を受信することになる。
【0100】
ステップS43では、報知処理部182が報知判定処理を行って、ステップS44に移る。報知判定処理では、受信した報知関連情報に応じた報知を行うよう判定する。一例としては、前述の後側方車存在情報を受信した場合には、対向車の後側方車が存在し、対向車の陰に車両が存在するので、右折を見合わせることを勧める旨の報知を行うよう判定する。
【0101】
前述の後続後側方車減速なし情報を受信した場合には、対向車の後続後側方車が存在し、対向車の陰に車両が存在する上、その車両の減速が行われていないので、右折を見合わせることを勧める旨の報知を行うよう判定する。前述の後続前側方車存在情報を受信した場合には、対向車の後続前側方車が存在し、対向車の陰に車両が存在するので、右折を見合わせることを勧める旨の報知を行うよう判定する。
【0102】
前述の後続前側方車存在なし情報を受信した場合には、対向車の後続前側方車が存在しないことが明らかで、対向車の陰に車両が存在しないので、右折タイミングである旨の報知を行うよう判定する。前述の後続後側方車非取得情報を受信した場合には、対向車の後続後側方車の存在が不透明で、対向車の陰に車両が存在するか否かが明らかでないので、気をつけて右折を行う旨の報知を行うよう判定する。
【0103】
なお、他車右折支援関連処理において、第3情報送信処理を行う場合に、前側方車ありの情報が得られた自車の後続車が自車から何台目の後続車であるかの情報も付与して送信を行う構成としてもよい。自車の後続車が自車から何台目の後続車であるかは、その後続車についてのカウントの値から算出すればよい。そして、自車右折支援関連処理の報知判定処理では、前側方車ありの情報が得られた対向車の後続車が当該対向車から何台目かに応じて、報知を行わせるメッセージを変更する構成とすればよい。
【0104】
また、前方車ありの情報が得られた自車の後続後側方車が自車から何台目の後続車にあたるかの情報も付与して送信を行う構成としてもよい。自車の後続後側方車が自車から何台目の後続車にあたるかは、その後続後側方車の情報を直接受信した後続車についてのカウントの値から算出すればよい。そして、自車右折支援関連処理の報知判定処理では、前方車ありの情報が得られた対向車の後続後側方車が当該対向車から何台目にあたるかに応じて、報知を行わせるメッセージを変更する構成とすればよい。
【0105】
例えば、対向車の後続車や後続後側方車が当該対向車から遠いと言える程度の台数分離れている場合には、右折タイミングである旨の報知を行うよう判定する構成とすればよい。一方、対向車の後続車や後続後側方車が当該対向車から近いと言える程度の台数分しか離れていない場合には、もうすぐ車両が見えるので目視まで待つ旨の報知を行うよう判定する構成とすればよい。
【0106】
ステップS44では、報知処理部182が報知処理を行って、ステップS45に移る。報知処理では、報知判定処理での判定結果に従った報知を表示装置2や音声出力装置3から行わせる。よって、報知処理部182が請求項の報知部に相当する。報知処理では、右折タイミングである旨の報知を行う場合にも、気をつけて進む旨の報知を重ねて行うものとする。
【0107】
ステップS45では、自車右折支援関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS45でYES)には、フローを終了する。一方、自車右折支援関連処理の終了タイミングでなかった場合(ステップS45でNO)には、ステップS42に戻ってフローを繰り返す。
【0108】
自車右折支援関連処理の終了タイミングの一例としては、自車の車速が所定の閾値を越えた場合や自車の操舵角が所定値以上となった場合とすればよい。これによれば、自車が交差点を右折した場合に自車右折支援関連処理を終了することができる。
【0109】
また、自車の後側方のさらに後側方、自車の後続車の後側方のさらに後側方の情報を受信していた場合には、この情報をもとに、後側方車を対象としたときと同様にして、後側方車のさらに後側方車の存在や減速の有無に応じた右折のタイミングについての報知を行う構成としてもよい。
【0110】
ここでは、自車の対向車に搭載されている車載機1の送信器12から送信された報知関連情報をもとに、自車右折支援関連処理における報知処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、前述した報知関連情報のような、自車の対向車が走行する車線に隣接する車線の車両の存在の有無についての情報を重畳した光を発光する発光部を有する車載機であれば、車載機1と同様の車載機以外の車載機の発光部が発光した光を受光し、自車右折支援関連処理における報知処理を行う構成としてもよい。よって、特定進路変更推定部181が請求項の自車待機状態推定部に相当し、報知処理部182が請求項の表示制御部に相当する。
【0111】
また、前述の可視光通信処理において、自車の後方車や後側方車に搭載されている車載機1の発光部13から受光した光をもとに送信元方向特定処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、例えば、情報を重畳した光を発光する発光部を有する車載機であれば、車載機1と同様の車載機以外の車載機の発光部が発光した光を受光し、送信元方向特定処理と同様の処理を行うことによって発光元車両方向を特定する構成としてもよい。この場合にも、特定した発光元車両方向を含む情報を送信処理部174が送信させる構成とすればよい。よって、この送信処理部174が請求項の発光制御部に相当する。
【0112】
ここで、本発明における作用効果について、具体的に図1を用いて説明を行う。ここでは、自車をHV、自車の対向車をA1、対向車の後続車をA2・A3・A4、対向車の後側方車をB1、対向車の後続後側方車をB2、対向車の後側方車のさらに後側方車をCとする。
【0113】
実施形態1の構成によれば、A1がB1から情報を受信していた場合に、A1の送信元方向特定部176で特定したB1の発光元車両方向を、自車HVが取得できる。よって、A1の陰のB1と直接に可視光通信を行うことができない場合であっても、B1の存在を自車HV側で認識することができ、右折のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0114】
また、A1の送信元方向特定部176でのB1の発光元車両方向の特定は、通信を行うための装置以外の、車両の側方を監視するカメラやレーダ等の自律センサを必要としない。よって、車両の側方を監視するカメラやレーダ等の自律センサを余分に設けるコストがかからないという利点がある。
【0115】
さらに、A1がB1を中継してCから情報を受信していた場合に、B1の送信元方向特定部176で特定したCの発光元車両方向を、自車HVが取得できる。よって、A1の陰のCと直接に可視光通信を行うことができない場合であっても、Cの存在を自車HV側で認識することができ、右折のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0116】
他にも、自車HVがB1から直接に情報を受信できた場合であって、且つ、B1がCから情報を受信していた場合に、B1の送信元方向特定部176で特定したCの発光元車両方向を、自車HVが取得できる。よって、B1の陰のCと直接に可視光通信を行うことができない場合であっても、Cの存在を自車HV側で認識することができ、右折のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0117】
また、A1がA2〜A3を中継してB2から情報を受信していた場合に、B2の減速の有無の情報を自車HVが取得できる。B2が減速なしの場合には、自車HVの右折を見合わせるべきであるので、B2の減速の有無から、自車HV側で右折のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0118】
これによれば、B1が車載機1を搭載していない車両であった場合にも、B2の減速の有無をもとに自車HVの右折のタイミングを判定することにより、B1・B2の車線上の車両を群として捉えることができる。つまり、A1〜A3が車載機1を搭載していることを前提とした場合、B1かB2のいずれかが車載機1を搭載していれば、運転支援システム100が成立することになる。よって、以上の構成によれば、車載機1を搭載しない車両が存在する場合であっても、運転支援システム100が成立する確率を高めることができる。
【0119】
さらに、A1がA2を中継してA4から情報を受信していた場合やA1がA2〜A3を中継してB2から情報を受信していた場合に、撮像結果から検出したA3の前側方車(つまりB1)の有無やB2の前方車(つまりB1)の有無の情報を、自車HVが取得できる。B1の存在が撮像結果から検出できる場合には、自車HVの右折を見合わせるべきであるので、B1以外の車両の撮像結果から検出したB1の存在の有無から、自車HV側で右折のタイミングについての報知を精度良く行うことが可能となる。
【0120】
これによれば、B1が車載機1を搭載していない車両であった場合にも、B1の存在を自車HV側で認識することができる。また、B2が減速ありの場合にも、B1の存在の有無が確定しないと自車HVの右折タイミングである旨の報知ができないが、B1の存在が撮像結果から検出できる場合には、B1の存在ありと確定することができるので、自車HV側で右折のタイミングについての報知を精度良く行うことがさらに可能となる。
【0121】
その結果、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【0122】
また、A1にとってのA2〜A4といった後続車の情報の中継台数を制限するので、右折支援への必要性が薄い、遠方の後続車の前側方車の有無の情報や、当該後続車が中継する後続後側方車の減速の有無や前方車の有無の情報は、自車HVへの中継しないように省くことができる。従って、車両間の可視光通信の通信速度の確保や情報処理の負荷の低減を可能にできる。
【0123】
なお、図6のフローチャートにおいて、ステップS29〜ステップS32の処理を省略し、自車の後続後側方車の減速ありを示す情報(後続後側方車減速あり情報)を含む送信データを生成し、可視光通信によって送信する構成としてもよい。そして、対向車から送信される後続後側方車減速あり情報を受信した場合に、自車右折支援関連処理において、報知処理部182が、気をつけて右折を行う旨の報知を行わせる構成としてもよい。
【0124】
(実施形態2)
本発明は前述の実施形態1に限定されるものではなく、次の実施形態2も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この実施形態2について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
実施形態2の運転支援システム100は、自車右折支援処理で報知判定処理を行う代わりに、他車右折支援処理で報知判定処理と同様の処理まで行う点を除けば、実施形態1の運転支援システム100と同様である。
【0126】
実施形態2では、第1情報送信処理の代わりに、報知処理部182が、右折を見合わせることを勧める旨の報知を行うよう判定する。第2情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、右折を見合わせることを勧める旨の報知を行うよう判定する。
【0127】
第3情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、右折を見合わせることを勧める旨の報知を行うよう判定する。第4情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、右折タイミングである旨の報知を行うよう判定する。第5情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、気をつけて右折を行う旨の報知を行うよう判定する。そして、各判定結果を含む送信データを生成し、可視光通信によって情報を送信させる。
【0128】
上記判定結果を含む情報を対向車から受信した車両では、報知処理部182が、前述の報知処理と同様に、上記判定結果に従った報知を表示装置2や音声出力装置3から行わせる。
【0129】
実施形態2の構成によっても、実施形態1の構成と同様に、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【0130】
(実施形態3)
本発明は前述の実施形態1に限定されるものではなく、次の実施形態3も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この実施形態3について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0131】
実施形態3の運転支援システム100は、他車右折支援処理を行わず、自車右折支援処理において、対向車について、他車右折支援処理と同様の処理を行う点を除けば、実施形態1の運転支援システム100と同様である。
【0132】
実施形態3では他車右折支援処理を行わない。そして、対向車から受信した対向車の情報のうちの、対向車の後側方車、対向車の後続車、対向車の後続後側方車の情報をもとに、対向車について、実施形態1の他車右折支援処理と同様の処理を行う。ただし、他車右折支援処理のうちのステップS21の処理、第1〜第5情報送信処理は行わない。
【0133】
具体的には、第1情報送信処理の代わりに、報知処理部182が、前述の後側方車存在情報に応じた報知と同様の報知を行わせる。第2情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、前述の後続後側方車減速なし情報に応じた報知と同様の報知を行わせる。
【0134】
第3情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、前述の後続前側方車存在情報に応じた報知と同様の報知を行わせる。第4情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、前述の後続前側方車存在なし情報に応じた報知と同様の報知を行わせる。第5情報送信処理の代わりには、報知処理部182が、前述の後続後側方車非取得情報に応じた報知と同様の報知を行わせる。
【0135】
実施形態3の構成によっても、実施形態1の構成と同様に、光通信を用いながらも、交差点での対向直進車の進行方向に交わる側への進路変更のタイミングを精度良くドライバに提案することが可能になる。
【0136】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1 車載機、2 表示装置、12 送信器、13 発光部、14 受信器、15 第1受光部、16 第2受光部、174 送信処理部(発光制御部)、176 送信元方向特定部(発光元車両方向特定部)、181 特定進路変更推定部(自車待機状態推定部)、182 報知処理部(報知部、表示制御部)、100 運転支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8