(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
幅方向に並設された一対の第1縦壁部、前記両第1縦壁部の下端間を連結する底壁部、及び前記両第1縦壁部の上端から互いの対向する幅方向内側に張り出して更に該第1縦壁部の下端側に折り返された一対の第1フランジを有するロアレールと、
前記両第1フランジ間で幅方向に並設された一対の第2縦壁部、前記両第2縦壁部の上端間を連結する蓋壁部、及び前記両第2縦壁部の下端から互いに離隔する幅方向外側にそれぞれ張り出して更に前記第1縦壁部及び前記第1フランジに包囲されるように折り返された一対の第2フランジを有し、前記ロアレールに対し相対移動可能に連結されるアッパレールと、
前記両第2縦壁部の幅方向内側で幅方向に延びる軸線周りに前記アッパレールに回動自在に連結され、上下方向への回動に伴い前記ロアレールと係脱することで前記ロアレール及び前記アッパレールの相対移動を選択的に係止するロック部材と、
前記底壁部に載置され、メモリピース付勢部材による上方への付勢力で前記アッパレールと係合するとともに前記ロアレールとの係合を解除し、前記メモリピース付勢部材の付勢力に抗した下方への押圧力で前記ロアレールと係合するとともに前記アッパレールとの係合を解除するメモリピースと、
前記両第2縦壁部の幅方向内側で幅方向に延びる軸線周りに前記アッパレールに回動自在に連結され、メモリリンク付勢部材による付勢力で前記ロック部材及び前記メモリピースを解放する初期回動位置を保持するとともに、前記メモリリンク付勢部材の付勢力に抗して解除方向に回動することで前記相対移動の係止を解除する回動方向に前記ロック部材を押圧するとともに前記メモリピースを下方に押圧するメモリリンクと、
前記アッパレールの上部に回動自在に連結され、レバー付勢部材による付勢力で前記メモリリンクを解放する初期回動位置を保持するとともに、シートバックの前倒しに伴い前記レバー付勢部材の付勢力に抗して回動することで前記解除方向に前記メモリリンクを押圧するレバー部材と、
前記アッパレール内に固定され、前記シートバックの前倒しに伴い前記アッパレールがシート前方に移動した後にシート後方に移動した際に前記メモリピースに当接して、移動前の前記ロアレール及び前記アッパレールの相対位置でシート後方への移動を係止するストッパ部材とを備えた、車両用シートスライド装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、車両用シートスライド装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両前後方向を「前後方向」という。
図13に示すように、車両フロア2には、ロアレール3が前後方向に延在する態様で固定されるとともに、該ロアレール3には、アッパレール4がロアレール3に対し前後方向に相対移動可能に装着されている。つまり、本実施形態では、ロアレール3及びアッパレール4の長手方向であってそれらの相対移動方向(シート前後方向)は前後方向に一致している。
【0030】
なお、ロアレール3及びアッパレール4は、幅方向(
図1において紙面に直交する方向)でそれぞれ対をなして配設されており、ここでは前方(シート前方)に向かって左側に配置されたものを示している。そして、両アッパレール4には、乗員の着座部を形成するシート5が固定・支持されている。このシート5は、シート座面を形成するシートクッション7と、該シートクッション7の後端部において回動軸O周りに傾動自在に支持されたシートバック8とを備えて構成される。なお、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動は基本的に係止状態にあって、該係止状態を解除するための解除ハンドル6が設けられている。
【0031】
図1に示すように、ロアレール3は、板材からなり、幅方向両側で上下方向に延びる一対の第1縦壁部11及びこれら第1縦壁部11の下端間を連結する底壁部12を有する。そして、各第1縦壁部11の上端には、幅方向内側に張り出して更に第1縦壁部11の下端側に折り返された第1フランジ13が連続形成されている。
【0032】
また、
図2に併せ示すように、ロアレール3の各第1フランジ13の長手方向中間部には、当該方向に所定の間隔をもってその先端(下端)から上向きに複数の切り欠き13aが形成されるとともに、各隣り合う切り欠き13a間に複数の四角歯状の係止爪13bが形成されている。従って、複数の係止爪13bは、前記所定の間隔をもってロアレール3の長手方向に並設されている。
【0033】
図3(a)に示すように、各第1縦壁部11及び底壁部12の連結部位は、外向き斜め下方に凸となる断面略円弧形状の第1下側ボールガイド18を形成する。一方、各第1フランジ13の第1縦壁部11との連結部位は、外向き斜め上方に凸となる断面略円弧形状の第1上側ボールガイド13cを形成する。
【0034】
アッパレール4は、板材からなり、ロアレール3の両第1フランジ13間で上下方向に延びる一対の第2縦壁部14及びこれら第2縦壁部14の上端間を連結する蓋壁部15を有する。そして、各第2縦壁部14の下端には、幅方向外側に張り出して更に第1縦壁部11及び第1フランジ13に包囲されるように折り返された第2フランジ16が連続形成されている。
【0035】
つまり、ロアレール3及びアッパレール4は、開口側が互いに突き合わされた略U字状のレール断面をそれぞれ有しており、主として第1フランジ13及び第2フランジ16の係合によって上下方向に抜け止めされている。これらロアレール3及びアッパレール4により形成されるレール断面は、矩形状をなすいわゆる箱形である。ロアレール3は、アッパレール4と協働して空間Sを形成する。
【0036】
なお、各第2フランジ16の下端部位は、内向き斜め上方に凸となる断面略円弧形状の第2下側ボールガイド19を形成する。一方、各第2フランジ16の上端部位は、内向き斜め下方に凸となる断面略円弧形状の第2上側ボールガイド16aを形成する。
【0037】
各第2下側ボールガイド19及びこれに対向する第1下側ボールガイド18間、並びに各第2上側ボールガイド16a及びこれに対向する第1上側ボールガイド13c間には、複数の球体状のボール20aが介設されている。
【0038】
図1に示すように、各ボール20aは、前後方向(レール長手方向)に延在する樹脂製のホルダ20bに装着される。各ホルダ20bに装着されるボール20aは、ホルダ20bの前端部に配置された一対及び後端部に配置された一対の合計4個である。アッパレール4は、ロアレール3との間で各ボール20aを転動させる態様で、該ロアレール3に対し長手方向(前後方向)に摺動自在に支持されている。
【0039】
アッパレール4の両第2縦壁部14には、それらの長手方向中央部において幅方向に連通する略四角形の透孔14aがそれぞれ形成されている。また、アッパレール4の両第2フランジ16の上端部位(第2上側ボールガイド16a)には、それらの長手方向における透孔14aの位置に合わせて略四角形の切り欠き16bがそれぞれ形成されている。各切り欠き16bは、上方に開いて幅方向に連通している。
【0040】
また、
図3(a)に示すように、両第2縦壁部14には、透孔14aの車両前方で幅方向に連通する互いに同心の円形の軸取付孔14b,14cがそれぞれ形成されている。一方の軸取付孔14bの内径は、他方の軸取付孔14cの内径よりも小さく設定されている。そして、両第2縦壁部14には、軸取付孔14b,14cに両端部の挿入された円柱状の支持軸22が支持されている。この支持軸22の中心線が幅方向に延びることはいうまでもない。
【0041】
なお、支持軸22は、軸取付孔14bに挿入される一方の端部において該当の第2縦壁部14に締結されており、軸取付孔14cに挿入される他方の端部において該当の第2縦壁部14に対し幅方向に移動自在に連結されている。これは、ロアレール3及びアッパレール4間に前述のボール20a等を介設することに伴ってアッパレール4の断面形状に変形が生じた際に、支持軸22の幅方向への移動によってこれを吸収するためである。また、軸取付孔14b,14c(支持軸22)は、上下方向において第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16a(上下一対のボール20aの摺動部)の中央部に配置されている。これは、前述の態様でアッパレール4の断面形状に変形が生じた際の軸取付孔14b,14cの変形を最小限に抑えるためである。
【0042】
図1に示すように、アッパレール4内には、両第2縦壁部14の幅方向内側で、支持軸22によりロックレバー30が回動自在に連結されている。すなわち、ロックレバー30は、前後方向に延在する板材からなる柄部31を備える。柄部31は、その長手方向に延在する一対の縦壁部32が幅方向に並設される態様で立設されている。これら両縦壁部32間の幅方向の距離は、アッパレール4の両第2縦壁部14間の幅方向の距離よりも小さく設定されている。そして、両縦壁部32は、各々の前端部において接続壁33により上端縁間が幅方向に接続されるとともに、各々の後端部において天板部34により上端縁間が幅方向に接続されている。
【0043】
両縦壁部32には、支持軸22(軸取付孔14b,14c)と同等の上下方向の位置で前後方向に延在する長孔35がそれぞれ形成されている。この長孔35の短手方向(上下方向)の開口幅は、支持軸22の直径と同等に設定されている。両長孔35には、柄部31の両縦壁部32がアッパレール4の両第2縦壁部14に幅方向に挟まれた状態で、両軸取付孔14b,14cに両端部の挿入等される支持軸22が挿通される。これにより、柄部31は、長孔35の範囲で前後方向の移動が許容された状態でアッパレール4に対して上下方向に回動自在に連結されている。
【0044】
また、ロックレバー30は、柄部31の後端部下部に固着された板材からなるロックプレート39を備える。
図3(b)に併せ示すように、このロックプレート39は、透孔14a及び切り欠き16bを幅方向に貫通する態様で前後方向及び幅方向に広がっている。そして、ロックプレート39には、各第1フランジ13に対向して上下方向に開口する係止孔39bが形成されている。係止孔39bは、前後方向に複数(3個)が前記所定の間隔をもって並設されており、ロアレール3の長手方向で隣り合う複数(3個)の係止爪13bと合致可能な位置に配置されている。
【0045】
そして、
図3(b)に実線で示すように、ロックプレート39が上昇するようにロックレバー30が支持軸22周りに回動するとき、各係止孔39bに対応する係止爪13bを嵌入可能となっている。各係止孔39bに対応する係止爪13bを嵌入するとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。一方、
図3(b)に2点鎖線で示すように、ロックプレート39が下降するようにロックレバー30が支持軸22周りに回動するとき、各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れるように設定されている。このとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。
【0046】
なお、ロックプレート39の幅方向の寸法は、アッパレール4の両第2上側ボールガイド16a間の幅方向の距離よりも大きく、且つ、第2上側ボールガイド16aよりも下方の両第2フランジ16間の幅方向の距離よりも小さく設定されている。従って、ロックプレート39は、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止状態で切り欠き16bを幅方向に貫通するものの、前記相対移動係止の解除状態で第2フランジ16と干渉することはない。
【0047】
図1に示すように、アッパレール4内には、1本の線材からなるロックスプリング50が配置される。このロックスプリング50は、平面視において前側に開口する略コ字状に成形されている。そして、ロックスプリング50は、その長手方向中間部を上方に湾出してなる楔部53を有するとともに、後端部を上方に屈曲してなるレバー側係止端部54を有する。また、ロックスプリング50の前端部は、レール側係止端部55を形成する。
図2に併せ示すように、ロックスプリング50は、支持軸22の上方から該支持軸22を楔部53に挟入し、ロックプレート39の下方から該ロックプレート39にレバー側係止端部54を挿通・固定し、レール側係止端部55をアッパレール4の蓋壁部15下面に当接させることで、アッパレール4等に支持されている。
【0048】
このとき、ロックスプリング50は、レバー側係止端部54においてロックプレート39が上昇する側、即ち各係止孔39bに対応する係止爪13bが嵌入する側にロックレバー30を回動付勢する。また、ロックスプリング50は、その反力で楔部53において支持軸22を下方に、即ち長孔35の長手方向に交差する方向に付勢することで長孔35内での支持軸22の前後方向の移動を係止する。つまり、長孔35内での支持軸22の前後方向の位置は、ロックスプリング50の楔部53によって付勢・保持されている。
【0049】
なお、前記解除ハンドル6は、筒材を曲げ成形してなり、アッパレール4の前側開口端から該アッパレール4内に挿入され、柄部31の前端部が挿入されることでロックレバー30に連結される。従って、解除ハンドル6は、基本的に支持軸22周りにロックレバー30と一体回動する。そして、解除ハンドル6の前端が持ち上がると、該解除ハンドル6と共にロックレバー30がロックスプリング50の付勢力に抗して支持軸22周りにロックプレート39が下降する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる側に回動する。
【0050】
ここで、解除ハンドル6の操作力が解放されているものとする。このとき、ロックスプリング50の付勢力により、解除ハンドル6と共にロックレバー30が支持軸22周りにロックプレート39が上昇する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bに嵌入する側に回動されることで、前述の態様でロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。そして、アッパレール4に支持されるシート5の前後方向の位置が保持される。
【0051】
その後、解除ハンドル6がその前端を持ち上げるように操作されたとする。このとき、ロックスプリング50の付勢力に抗して、解除ハンドル6と共にロックレバー30が支持軸22周りにロックプレート39が下降する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる側に回動されることで、前述の態様でロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。そして、アッパレール4に支持されるシート5の前後方向の位置調整が可能になる。
【0052】
次に、対をなすロアレール3等のうち、片側のロアレール3等の周辺構造について説明する。
図4(a)、(b)に示すように、ロアレール3の底壁部12には、その長手方向に前記所定の間隔をもって複数の円形の下側係止孔12aが形成されている。そして、底壁部12には、アッパレール4の両第2縦壁部14間の距離よりも小さい幅を有する板材からなる略長尺状のメモリガイド25が複数の下側係止孔12aに沿って延設されている。このメモリガイド25は、その幅方向両端部を互いに対向する幅方向内側に折返してなる一対のガイド爪26を有して断面略C字形状を呈しており、その幅方向中央部には、複数の下側係止孔12aにそれぞれ対向して複数の円形の挿通孔27が形成されている。従って、複数の挿通孔27も、前記所定の間隔をもってロアレール3の長手方向に並設されている。なお、挿通孔27の内径は、下側係止孔12aの内径よりも大きく設定されている。
【0053】
メモリガイド25には、メモリピース60が載置されている。
図8及び
図9(a)、(b)に併せ示すように、このメモリピース60は、メモリベース61と、メモリピン62と、係止プレート63と、外れ防止プレート64と、例えばコイルスプリングからなるメモリピース付勢部材としての第1付勢部材65及び第2付勢部材66とを備えて構成される。
【0054】
メモリベース61は、メモリガイド25の幅と同等の幅を有して略ブロック状に成形されており、メモリガイド25(ロアレール3)に沿って前後方向(シート前後方向)に移動自在となっている。すなわち、メモリベース61には、その幅方向両端面から互いの対向する幅方向内側に凹む一対のガイド溝61aが前後方向の全長に亘って形成されている。メモリベース61は、これら両ガイド溝61aにメモリガイド25の両ガイド爪26が前後方向に摺動自在に係入されることで、両ガイド爪26に案内されつつメモリガイド25に沿って前後方向に移動する。
【0055】
また、メモリベース61には、上方に開口する略四角形のガイド穴61bが形成されるとともに、前記下側係止孔12aの内径と同等の内径を有してガイド穴61bの底壁を貫通する円形の挿通孔61cが形成されている。そして、メモリベース61のガイド穴61bには、第1付勢部材65が収容されるとともに、該第1付勢部材65に挿通される態様でメモリピン62が装着される。このメモリピン62は、ガイド穴61bの外形に合わせて略四角柱状に成形された本体部62aを有しており、該本体部62aにおいてガイド穴61bにより上下方向の移動が案内されている。このとき、メモリピン62は、本体部62aが第1付勢部材65に載置されることで上方に移動する側に常時付勢される。
【0056】
メモリピン62は、本体部62aよりも幅方向及び前後方向に縮小されてその上側に突出する略四角柱状の頭部62bを有するとともに、挿通孔61cと同心で本体部62aから第1付勢部材65を貫通しつつ下側に突出する略円柱状の係止部62cを有する。係止部62cの外径は、挿通孔61c(下側係止孔12a)の内径と同等に設定されている。
【0057】
なお、本体部62aには、その幅方向全長に亘って後端面の上下方向中間部から車両前方に凹む略U字溝状の被係止溝62dが形成されている。また、本体部62aの上面は、頭部62bとの境界位置に略四角環状の段差部62eを形成する。
【0058】
さらに、メモリベース61には、その上下方向中間部で後端面及びガイド穴61b間を前後方向に連通する円形の収容孔61dが形成されている。この収容孔61dの内径は、ガイド穴61bの幅方向の開口幅よりも小さく設定されている。そして、この収容孔61dには、第2付勢部材66が収容されている。
【0059】
また、メモリベース61には、収容孔61dの上下方向中央部の位置で前後方向に連通するプレートガイド孔61eが形成されている。このプレートガイド孔61eは、幅方向に延在するスリット形状を呈している。プレートガイド孔61eの幅方向の開口幅は、ガイド穴61bの幅方向の開口幅よりも大きく設定されており、従って、ガイド穴61b及び収容孔61dの各々の内壁面は、プレートガイド孔61eにより幅方向両外側に溝状に切り欠かれている。そして、このプレートガイド孔61eには、その車両前方から係止プレート63が前後方向に摺動自在に挿入・案内されている。すなわち、係止プレート63は、プレートガイド孔61eの幅方向の開口幅と同等の幅を有する略四角板状に成形されており、車両前方からプレートガイド孔61eに嵌挿されている。このとき、
図9(a)、(b)に示すように、係止プレート63は、その後端部が収容孔61dに進入して第2付勢部材66に圧接することで、車両前方に常時付勢されるようになっている。
【0060】
係止プレート63の中央部には、略四角形の透孔63aが形成されている。この透孔63aの幅方向の開口幅は、ガイド穴61bの幅方向の開口幅(本体部62aの幅)と同等に設定されており、前後方向の開口幅は、ガイド穴61bの前後方向の開口幅(本体部62aの前後方向の長さ)よりも大きく設定されている。
【0061】
図9(a)に示すように、ガイド穴61bにおいて第1付勢部材65により上方に付勢されるメモリピン62は、基本的に被係止溝62dよりも下方の本体部62aにおいて透孔63aを貫通している。従って、第2付勢部材66に付勢される係止プレート63の車両前方への移動は、透孔63aのシート後側縁部63cが本体部62aに当接することで係止されている。このとき、ガイド穴61b(及び透孔63a)内でのメモリピン62の上下方向の移動が許容される。
【0062】
一方、
図9(b)に示すように、ガイド穴61b内でメモリピン62が第1付勢部材65の付勢力に抗して下方に移動し、被係止溝62dが係止プレート63の上下方向の位置に到達すると、第2付勢部材66の付勢力で車両前方に移動する透孔63aのシート後側縁部63cが被係止溝62dに嵌入する。このとき、ガイド穴61b(及び透孔63a)内でのメモリピン62の上下方向の移動が規制される。
【0063】
なお、係止プレート63の前端部は、下方から後方に略弓形に折り返されて被押圧部63bを形成する。
さらに、メモリベース61には、プレートガイド孔61eの上方で前端面及びガイド穴61b間を前後方向に連通する略四角形の前側掛止孔61fが形成されるとともに、収容孔61dの下方で後端面及びガイド穴61b間を前後方向に連通する略四角形の後側掛止孔61gが形成されている。そして、外れ防止プレート64は、これら前側掛止孔61f及び後側掛止孔61gにおいてメモリベース61に固定されている。すなわち、外れ防止プレート64は、板材からなり、メモリベース61の上面に沿って広がるとともに、前端部及び後端部から下方に前側掛止爪64a及び後側掛止爪64bをそれぞれ延出する。外れ防止プレート64は、メモリベース61の上面に当接する状態でその前側掛止爪64a及び後側掛止爪64bが前側掛止孔61f及び後側掛止孔61gにそれぞれ嵌入されることでメモリベース61に固定されている。
【0064】
外れ防止プレート64の中央部には、略四角形の頭部挿入孔64cが形成されている。この頭部挿入孔64cの幅方向の開口幅及び前後方向の開口幅は、頭部62bの幅及び前後方向の長さとそれぞれ同等に設定されている。そして、
図9(a)に示すように、第1付勢部材65に上方に付勢されるメモリピン62は、その頭部62bが頭部挿入孔64cに嵌挿されている。従って、第1付勢部材65に付勢されるメモリピン62の上方への移動は、段差部62eが頭部挿入孔64cの周縁部に当接することで係止されている。つまり、外れ防止プレート64は、メモリピン62の最上方位置を規制して該メモリピン62の上方への抜け止めをしている。なお、外れ防止プレート64は、係止プレート63を車両前方に付勢する第2付勢部材66の後端に圧接すること該第2付勢部材66の車両後方への抜け止めを併せて行っている。
【0065】
ここで、
図9(a)に示すように、メモリピン62が上方に移動して段差部62eが頭部挿入孔64cの周縁部に当接する状態(段差部62eによりメモリピン62の上方への移動が係止される状態)では、頭部62bが外れ防止プレート64から上方に大きく突出している。このとき、挿通孔61cからの係止部62c先端の突出長が僅少又は皆無になるように設定されており、メモリピース60は、メモリガイド25(底壁部12)の長手方向に移動可能である。
【0066】
一方、
図9(b)に示すように、下方に移動したメモリピン62の被係止溝62dに係止プレート63の透孔63aのシート後側縁部63cが嵌入してメモリピン62の上下方向への移動が係止される状態では、係止部62cがメモリベース61から下方に大きく突出している。従って、このときに係止部62cの下側に前記下側係止孔12a(挿通孔27)が開口していれば、係止部62cの先端が挿通孔27及び下側係止孔12aを貫通する。このとき、メモリピース60は、ロアレール3(底壁部12)に固定されてその長手方向に移動不能となる。
【0067】
図4(a)に示すように、アッパレール4には、ロックレバー30の車両後方で、板材からなるストッパ部材70が固定・支持されている。すなわち、ストッパ部材70は、メモリベース61よりも上方、且つ、該メモリベース61から相対的に大きく突出しているメモリピン62(頭部62b)よりも下方の位置で前後方向に延びる支持壁部71を有するとともに、該支持壁部71よりも拡幅されてその前端から下方に延びる押圧片72を有し、更に支持壁部71の後端から車両後方上側に延びる略L字状の取付片73を有する。ストッパ部材70は、取付片73を蓋壁部15と共に上下方向に貫通する締結具78によりアッパレール4に締結されている。
【0068】
また、
図10に併せ示すように、ストッパ部材70は、押圧片72の幅方向両端から車両前方に延びる一対の被支持フランジ74を有する。これら被支持フランジ74には、幅方向に連通する円形の軸挿通孔74aがそれぞれ形成されている。
図11に示すように、これら両被支持フランジ74間の幅方向の距離は、アッパレール4の両第2縦壁部14間の幅方向の距離と同等に設定されている。そして、両第2縦壁部14には、幅方向に連通する互いに同心の円形の軸取付孔14d,14eがそれぞれ形成されている。一方の軸取付孔14dの内径は、他方の軸取付孔14eの内径よりも小さくされている。そして、両第2縦壁部14には、軸取付孔14d,14eに両端部の挿入された円柱状の固定ピン79が支持されている。この固定ピン79の中心線が幅方向に延びることはいうまでもない。
【0069】
なお、固定ピン79は、軸取付孔14dに挿入される一方の端部において該当の第2縦壁部14に締結されており、軸取付孔14eに挿入される他方の端部において該当の第2縦壁部14に対し幅方向に移動自在に連結されている。これは、ロアレール3及びアッパレール4間に前述のボール20a等を介設することに伴ってアッパレール4の断面形状に変形が生じた際に、固定ピン79の幅方向への移動によってこれを吸収するためである。また、軸取付孔14d,14e(固定ピン79)は、上下方向において第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16a(上下一対のボール20aの摺動部)の中央部に配置されている。これは、前述の態様でアッパレール4の断面形状に変形が生じた際の軸取付孔14d,14eの変形を最小限に抑えるためである。
【0070】
以上により、ストッパ部材70は、締結具78及び固定ピン79により前後の2箇所でアッパレール4に堅固に固定・支持されている。
図10に示すように、ストッパ部材70は、支持壁部71の前端部の幅方向両端から押圧片72に沿って下方に延びる一対のストッパ片75を有する。
図4(a)に示すように、これらストッパ片75は、その車両後方で係止プレート63よりも上方のメモリベース61に対向している。一方、押圧片72は、その車両後方で係止プレート63に対向している。つまり、ストッパ部材70は、アッパレール4と共に車両後方に移動する際に、両ストッパ片75においてメモリベース61に当接可能であるとともに、押圧片72において係止プレート63(被押圧部63b)に当接可能である。特に、両ストッパ片75がメモリベース61に当接する状態では、押圧片72は、第2付勢部材66の付勢力に抗して係止プレート63を車両後方に移動させており、これにより、第1付勢部材65により上方に付勢されるメモリピン62は、その頭部62bを外れ防止プレート64から上方に大きく突出させている。
【0071】
なお、
図10に併せ示すように、支持壁部71の中央部には、上下方向に連通する略十字状の上側係止孔71aが形成されている。この上側係止孔71aの幅方向の開口幅及び前後方向の開口幅は、メモリピン62の頭部62bの幅及び前後方向の長さとそれぞれ同等に設定されている。そして、ストッパ部材70が両ストッパ片75においてメモリベース61に当接する状態では、第1付勢部材65により上方に付勢されるメモリピン62は、その頭部62bが上側係止孔71aに嵌挿されるようになっている。
【0072】
従って、メモリピン62(メモリピース60)は、ロアレール3(メモリガイド25)に沿って前後方向に移動可能である一方で、ストッパ部材70が固定されるアッパレール4に対して前後方向に移動不能である。すなわち、メモリピン62は、メモリベース61から上方に突出する状態にあるときにアッパレール4と係合するとともにロアレール3との係合を解除する。そして、ロアレール3に対してアッパレール4が前後方向の移動するとき、メモリピン62(メモリピース60)も一体で前後方向に移動する。あるいは、ロックレバー30によりロアレール3に対するアッパレール4の前後方向の移動が規制されるとき、メモリピン62(メモリピース60)の前後方向の移動も規制される。このとき、メモリピン62の係止部62cの下側に複数の下側係止孔12a(挿通孔27)のいずれか一つが開口するように設定されている。
【0073】
なお、既述のように、メモリピン62の係止部62cがメモリベース61から下方に大きく突出してその先端が挿通孔61c,27及び下側係止孔12aを貫通するとき、メモリピース60はロアレール3(底壁部12)に固定されてその長手方向に移動不能となる。このとき、メモリベース61から下方に突出するメモリピン62の頭部62bは、支持壁部71よりも下方に位置するように設定されている。これにより、例えばメモリピン62の頭部62bが上側係止孔71aから外れることで、メモリピース60を残置したままでのアッパレール4の車両前方への移動が許容される。すなわち、メモリピン62は、メモリベース61から下方に突出する状態にあるときにロアレール3と係合するとともにアッパレール4との係合を解除する。
【0074】
図10に示すように、ストッパ部材70は、支持壁部71の後端部の幅方向両端から上方に延びる一対の取付フランジ76を有する。そして、ストッパ部材70には、両取付フランジ76の幅方向内側で、幅方向に軸線の延びる取付ピン77によりメモリリンク80が回動自在に連結されている。すなわち、メモリリンク80は、板材からなり、車両前方に向かって先細りとなる略三角形の天板部81を有するとともに、該天板部81の幅方向両端から下方に延びる一対の縦壁部82を有する。そして、メモリリンク80は、両取付フランジ76に挟まれる両縦壁部82後端部において、両取付フランジ76と共に幅方向に貫通する取付ピン77により回動自在に連結されている。
【0075】
図4(a)に示すように、メモリリンク80は、ストッパ部材70の支持壁部71に沿ってその上方を車両前方に延びており、その前端部はロックレバー30(天板部34)の後端部上方にまで到達している。そして、各縦壁部82の前端部は、ロックレバー30(天板部34)に対向して下方に湾出する略円弧状の押圧部82aを形成する。従って、
図4(a)から
図5(a)への変化で示すように、メモリリンク80が取付ピン77を中心に図示反時計回転方向(以下、「解除方向」ともいう)に回動すると、両押圧部82aに押圧されるロックレバー30がロックスプリング50の付勢力に抗して支持軸22周りにロックプレート39が下降する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる側に回動するようになっている。
【0076】
また、天板部81の前後方向中央部には、上側係止孔71aに対向して下方に突出する略舌片状の押圧突部83が固着されている。従って、
図4(a)から
図5(a)への変化で示すように、メモリリンク80が取付ピン77を中心に図示反時計回転方向に回動すると、押圧突部83が上側係止孔71aに挿入される。このとき、上側係止孔71aにメモリピン62の頭部62bが嵌入していれば、メモリピン62は、押圧突部83に押圧されてメモリベース61から下方に突出するとともに、前述の態様で係止プレート63により上下方向の移動が係止される。なお、押圧突部83に押圧されるメモリピン62が係止プレート63により上下方向の移動が係止されるときのメモリリンク80の回動位置では、両押圧部82aに押圧されるロックレバー30は、ロックプレート39の各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる回動位置に到達するように設定されている。
【0077】
なお、取付ピン77周りには、例えば捩りコイルスプリングからなるメモリリンク付勢部材85が巻回されている。このメモリリンク付勢部材85は、一端がストッパ部材70(支持壁部71)に係止され、他端がメモリリンク80(天板部81)に係止されて、該メモリリンク80を図示時計回転方向に回動付勢する。メモリリンク80は、メモリリンク付勢部材85による付勢力でロックレバー30及びメモリピース60(メモリピン62)を解放する初期回動位置を保持するようになっている。
【0078】
アッパレール4の蓋壁部15には、メモリリンク80の前端部に対向して上下方向に連通する略四角形の挿入孔15Aが形成されている。そして、メモリリンク80等の近傍となるアッパレール4の上部には、適宜のブラケットを介してレバー部材としての第1のベルクランクリンク90が幅方向に軸線の延びる支持軸91周りに回動自在に連結されている。この第1のベルクランクリンク90は、板材からなり、支持軸91を中心とする下側斜め前方の径方向に延出する略L字状の押圧片90aを有するとともに、支持軸91を中心とする下方の径方向に延出する略I字状の取付片90bを有する。
【0079】
そして、押圧片90aの下側斜め後方に屈曲する先端部は、支持軸91を中心とする図示反時計回転方向で挿入孔15A(及びメモリリンク80の前端部)に対向しており、該挿入孔15Aにより当該回転方向の回動軌跡が開放されている。従って、
図4(a)から
図5(a)への変化で示すように、第1のベルクランクリンク90が支持軸91を中心に図示反時計回転方向に回動すると、挿入孔15Aを通過する押圧片90aの先端部に押圧されるメモリリンク80がメモリリンク付勢部材85の付勢力に抗して取付ピン77周りに前記解除方向に回動する。
【0080】
なお、支持軸91周りには、例えば捩りコイルスプリングからなる第1のレバー付勢部材92が巻回されている。この第1のレバー付勢部材92は、一端が第1のベルクランクリンク90に係止され、他端が支持軸91に係止されて、該第1のベルクランクリンク90を図示時計回転方向に回動付勢する。第1のベルクランクリンク90は、第1のレバー付勢部材92による付勢力でメモリリンク80を解放する初期回動位置を保持するようになっている。
【0081】
また、第1のベルクランクリンク90には、取付片90bにおいて解除ケーブル93の一方の端末93aが係止されている。この解除ケーブル93は、取付片90bから車両後方に延びており、その他方の端末はシートバック8に連結されている。解除ケーブル93は、シートバック8が着座状態から前傾した状態(以下、「前倒し」ともいう)にあるとき、取付片90bを車両後方に引っ張ることで、第1のレバー付勢部材92の付勢力に抗して第1のベルクランクリンク90を支持軸91周りに図示反時計回転方向に回動させる。このとき、押圧片90aの先端部に押圧されるメモリリンク80がメモリリンク付勢部材85の付勢力に抗して取付ピン77周りに前記解除方向に回動することは既述のとおりである。
【0082】
ここで、
図4(a)、(b)に示すように、シートバック8が前倒しされておらず、第1のベルクランクリンク90が第1のレバー付勢部材92による付勢力でメモリリンク80を解放する初期回動位置に保持されているものとする。そして、メモリリンク80がメモリリンク付勢部材85による付勢力でロックレバー30及びメモリピース60(メモリピン62)を解放する初期回動位置に保持されているものとする。また、メモリピン62が第1付勢部材65の付勢力によりメモリベース61から突出してストッパ部材70(アッパレール4)と係合するとともにロアレール3との係合を解除しているものとする。このとき、メモリピン62(係止部62c)の下側に複数の下側係止孔12a(挿通孔27)のいずれか一つが開口することは既述のとおりである。
【0083】
この状態で、解除ハンドル6の操作力が解放されていれば、前述の態様でロックレバー30によりロアレール3に対する相対移動が係止されるアッパレール4と共に、メモリピン62(メモリピース60)の移動も係止される。
【0084】
一方、解除ハンドル6が操作されると、ロックレバー30によるロアレール3に対する相対移動の係止が解除されるアッパレール4と共に、メモリピン62(メモリピース60)が移動可能となる。つまり、解除ハンドル6の操作を経てアッパレール4を前後方向に移動させる際には、メモリピース60も一体で前後方向に移動する。
【0085】
すなわち、シートバック8が着座状態にあるときには、メモリピース60はアッパレール4と一体で前後方向に移動する。
次に、
図4(a)、(b)に示す状態で、シートバック8が前倒しされると、
図5(a)、(b)への変化で示すように、第1のベルクランクリンク90が支持軸91を中心に図示反時計回転方向に回動し、該第1のベルクランクリンク90(押圧片90aの先端部)に押圧されるメモリリンク80が前記解除方向に回動する。
【0086】
これに伴い、メモリリンク80の両押圧部82aに押圧されるロックレバー30がロアレール3に対するアッパレール4の相対移動の係止を解除する。同時に、メモリリンク80の押圧突部83に押圧されるメモリピン62がメモリベース61から下方に突出することで、ロアレール3と係合するとともにストッパ部材70(アッパレール4)との係合を解除する。このとき、
図6(a)、(b)への変化で示すように、アッパレール4は、メモリピン62(メモリピース60)をロアレール3に残置したまま車両前方に移動可能となる。
【0087】
なお、ロックレバー30は、シートバック8が前倒し状態にある限り、メモリリンク80の両押圧部82aに押圧され続けることになり、従って、ロアレール3に対するアッパレール4の相対移動の係止の解除状態を維持する。つまり、シートバック8が前倒し状態では、アッパレール4(シート5)は、周知のストッパ機構により車両前方への移動が規制されるまで、当該方向の移動が許容される(いわゆるウォークイン動作)。また、アッパレール4が車両前方に移動する直前の状態又は車両前方に移動した任意の状態で、シートバック8が引き起こされて前倒しが解消されると、ロックレバー30は、初期回動位置に復帰するメモリリンク80の両押圧部82aから解放されて、ロアレール3に対するアッパレール4の相対移動を係止する。
【0088】
シートバック8の前倒し状態のまま、車両前方に移動していたアッパレール4がその後に車両後方に移動してくると、
図7(a)への変化で示すように、まず、ストッパ部材70の押圧片72が係止プレート63(被押圧部63b)に接触する。この段階では、ストッパ部材70の両ストッパ片75及びメモリベース61は前後方向に離隔されている。
【0089】
その後、アッパレール4が車両後方に更に移動してくると、
図7(b)への変化で示すように、ストッパ部材70の両ストッパ片75がメモリベース61に当接することで、アッパレール4の車両後方への移動が係止される。すなわち、シートバック8が前倒し状態にあるときに、シート後方に移動するストッパ部材70の両ストッパ片75(アッパレール4)がメモリベース61に当接するようになっている。つまり、アッパレール4は、シートバック8の前倒しに伴い車両前方に移動する直前の位置(記憶された位置)で停止する。同時に、ストッパ部材70の押圧片72に押圧される係止プレート63が車両後方に移動することで、該係止プレート63によるメモリピン62の上下方向への移動係止が解除される。ただし、これに代わってメモリピン62上にメモリリンク80の押圧突部83が進入してくることになり、該押圧突部83によりメモリピン62の上方への移動が係止される。
【0090】
その後、シートバック8が引き起こされて前倒しが解消されると、
図4(a)への変化で示すように、第1のベルクランクリンク90が支持軸91を中心に図示時計回転方向に回動して初期回動位置に復帰する。また、第1のベルクランクリンク90(押圧片90aの先端部)から解放されたメモリリンク80も初期回動位置に復帰する。
【0091】
これに伴い、メモリリンク80の両押圧部82aから解放されたロックレバー30は、ロアレール3に対するアッパレール4の相対移動を係止する。同時に、メモリリンク80の押圧突部83から解放されたメモリピン62がメモリベース61から突出することで、ストッパ部材70(アッパレール4)と係合するとともにロアレール3との係合を解除する。
【0092】
以上により、シートバック8の前倒しに伴いアッパレール4が車両前方(シート前方)に移動した後にシート後方に移動した際に、シートバック8の前倒しの解消を経て移動前の状態が復帰される。
【0093】
次に、対をなすロアレール3等のうち、前述とは反対側のロアレール3等の周辺構造について説明する。
図12(a)、(b)に示すように、当該側のロアレール3には、メモリガイド25やメモリピース60が配設されていない。同様に、当該側のアッパレール4には、ストッパ部材70やメモリリンク80が配設されていない。そして、アッパレール4の蓋壁部15には、ロックレバー30の後端部に対向して上下方向に連通する略四角形の挿入孔15Bが形成されている。そして、ロックレバー30の後端部の近傍となるアッパレール4の上部には、適宜のブラケットを介して第2のレバー部材としての第2のベルクランクリンク95が幅方向に軸線の延びる支持軸96周りに回動自在に連結されている。この第2のベルクランクリンク95は、板材からなり、支持軸96を中心とする下側斜め前方の径方向に延出する略L字状の押圧片95aを有するとともに、支持軸96を中心とする下方の径方向に延出する略I字状の取付片95bを有する。
【0094】
そして、押圧片95aの下側斜め後方に屈曲する先端部は、支持軸96を中心とする図示時計回転方向で挿入孔15B(及びロックレバー30の後端部)に対向しており、該挿入孔15Bにより当該回転方向の回動軌跡が開放されている。従って、
図12(a)から
図12(b)への変化で示すように、第2のベルクランクリンク95が支持軸96を中心に図示時計回転方向に回動すると、挿入孔15Bを通過する押圧片95aの先端部に押圧されるロックレバー30がロアレール3に対するアッパレール4の相対移動の係止を解除する。
【0095】
なお、支持軸96周りには、例えば捩りコイルスプリングからなる第2のレバー付勢部材97が巻回されている。この第2のレバー付勢部材97は、一端が第2のベルクランクリンク95に係止され、他端が支持軸96に係止されて、該第2のベルクランクリンク95を図示反時計回転方向に回動付勢する。第2のベルクランクリンク95は、第2のレバー付勢部材97による付勢力でロックレバー30を解放する初期回動位置を保持するようになっている。
【0096】
また、第2のベルクランクリンク95には、取付片95bにおいて解除ケーブル98の一方の端末98aが係止されている。この解除ケーブル98は、取付片95bから車両後方に延びており、その他方の端末はシートバック8に連結されている。解除ケーブル98は、シートバック8の前倒しに伴い取付片95bを車両後方に引っ張ることで、第2のレバー付勢部材97の付勢力に抗して第2のベルクランクリンク95を支持軸96周りに図示時計回転方向に回動させる。このとき、押圧片95aの先端部に押圧されるロックレバー30がロアレール3に対するアッパレール4の相対移動の係止を解除することは既述のとおりである。
【0097】
シートバック8の前倒しに伴うロックレバー30による前記相対移動の係止の解除タイミングは、前述した側のロックレバー30による前記相対移動の係止の解除タイミングと同期するように設定されている。
【0098】
シートバック8の前倒しに伴いアッパレール4が車両前方に移動する直前の状態又は車両前方に移動した任意の状態で、シートバック8が引き起こされて前倒しが解消されると、ロックレバー30は、初期回動位置に復帰する第2のベルクランクリンク95から解放されて、ロアレール3に対するアッパレール4の相対移動を係止する。このときのロックレバー30による前記相対移動の係止タイミングも、前述した側のロックレバー30による前記相対移動の係止タイミングと同期するように設定されている。
【0099】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、ロックレバー30、メモリピース60、メモリリンク80、及びストッパ部材70は、ロアレール3及びアッパレール4の形成する空間S内に収まって配置されている。そして、第1のベルクランクリンク90によりメモリリンク80を介して、前記相対移動の係止を解除する回動方向にロックレバー30を押圧し、且つ、ロアレール3と係合等する下方にメモリピース60を押圧することができる。従って、基本的に第1のベルクランクリンク90及び第1のレバー付勢部材92のみがロアレール3及びアッパレール4の外部(アッパレール4の上部)に配置されることになり、レール外部に要する配置スペースがより削減される。
【0100】
なお、メモリピース60は、アッパレール4と係合等する状態にあればその下方に収まって外部に露出することはない。一方、メモリピース60は、ロアレール3と係合等する状態にあれば、シート前方への移動に伴いアッパレール4がメモリピース60を通過すると、その上方で外部に露出することになる。つまり、メモリピース60が「ロアレール3及びアッパレール4の形成する空間S内に収まって配置される」ことは、厳密には「ロアレール3及びアッパレール4をそれらの相対移動方向に投影した空間内に収まって配置される」ことを意味している。
【0101】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、レール外部に要する配置スペースをより削減することができる。
【0102】
(2)本実施形態では、メモリリンク80は、前記解除方向への回動に伴い、アッパレール4の長手方向における支持軸22(ロックレバー30の軸線)及び取付ピン77(メモリリンク80の軸線)間の位置で、ロックレバー30を下方に押圧することで、前記相対移動の係止を解除する回動方向にロックレバー30を回動させる。この場合、メモリリンク80及びロックレバー30は、それらの係合位置(メモリリンク80によるロックレバー30の押圧位置)を挟んでアッパレール4の長手方向における両側に回動自在に配設されることで、該アッパレール4の長手方向における空間を有効利用することができる。
【0103】
特に、ロックレバー30及びメモリリンク80は、軸線同士が平行な単純な回動になることで、配置スペースの制約されたアッパレール4内にあって第1のベルクランクリンク90のみでの連動が比較的容易になり、それらの作動の同期も容易に行うことができる。
【0104】
(3)本実施形態では、ストッパ部材70をアッパレール4に支持する固定ピン79は、一方の端部が該当側の第2縦壁部14に固着され、他方の端部が該当側の第2縦壁部14に幅方向に移動自在に挿通される。従って、ロアレール3及びアッパレール4間にボール20aが介設されてアッパレール4の断面形状に変形が生じたとしても、固定ピン79の幅方向への移動によってこれを吸収することでストッパ部材70の変形を抑制することができる。そして、メモリリンク80に取付ピン77を介して連結されたメモリリンク80の回動が不安定になる可能性を低減することができる。
【0105】
(4)本実施形態では、固定ピン79は、上下方向で第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16a間の中央部に配置されている。従って、第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16aにおいて、ロアレール3及びアッパレール4間にそれぞれボール20aが介設されてアッパレール4の断面形状に変形が生じたとしても、固定ピン79は該変形による影響を受けにくくなる。これにより、ストッパ部材70の変形をいっそう抑制することができる。
【0106】
(5)本実施形態では、ストッパ部材70は、メモリリンク80を支持等する取付ブラケットとして兼用されることで、部品点数を削減することができる。
(6)本実施形態では、シートバック8の前倒しに伴いアッパレール4がシート前方に移動する前のロアレール3及びアッパレール4の相対位置(記憶された相対位置)の復帰に係るメモリピース60等を一対のうちの一側にのみ配設すればよいため、例えば両側に配設する場合に比べて部品点数を削減することができる。そして、第1のベルクランクリンク90が非配置となる他側では、シートバック8の前倒しに伴い第2のレバー付勢部材97の付勢力に抗して第2のベルクランクリンク95がその初期回動位置から回動すると、ロックレバー30が前記相対移動の係止を解除する回動方向に押圧される。これにより、ロックレバー30は、前記相対移動の係止を解除する。つまり、シートバック8の前倒しに伴い、両側のロックレバー30を連動させて前記相対移動の係止を解除させることができる。
【0107】
(7)本実施形態では、前記相対位置を記憶する状態では、メモリピース60はそれ自体でメモリピン62とロアレール3との係合状態を維持することができるため、装置全体としての構造をより簡易化・コンパクト化することができる。
【0108】
(8)本実施形態では、段差部62e及び外れ防止プレート64の当接により、第1付勢部材65の付勢力によりメモリベース61から突出するメモリピン62の最上方位置が規制されるため、該メモリピン62のメモリベース61からの脱落を抑制することができる。
【0109】
(9)本実施形態では、第2付勢部材66の付勢力によりメモリピン62の被係止溝62dに透孔63aのシート後側縁部63cを嵌入する、極めて簡易な構造でメモリピン62の上方への移動を係止することができる。あるいは、シート後方への押圧力によりメモリピン62の被係止溝62dに嵌入する透孔63aのシート後側縁部63cを外す、極めて簡易な構造でメモリピン62の上方への移動係止を解除することができる。
【0110】
(10)本実施形態では、メモリベース61に対するメモリピン62の上下方向の進退に伴う上側係止孔71a及び下側係止孔12aとの選択的な嵌挿による極めて簡易な構造で、メモリピン62をロアレール3及びアッパレール4に選択的に係合させることができる。
【0111】
(11)本実施形態では、固定ピン79によるアッパレール4へのストッパ部材70の固定位置は、前記記憶された相対位置への復帰時のストッパ部材70(両ストッパ片75)及びメモリピース60(メモリベース61)の当接位置の近傍に配置されることで、それらの当接時の強度を好適に確保することができる。
【0112】
(12)本実施形態では、ロックレバー30(柄部31)をアッパレール4に支持する支持軸22は、一方の端部が該当側の第2縦壁部14に固着され、他方の端部が該当側の第2縦壁部14に幅方向に移動自在に挿通される。従って、ロアレール3及びアッパレール4間にボール20aが介設されてアッパレール4の断面形状に変形が生じたとしても、支持軸22の幅方向への移動によってこれを吸収することでロックレバー30の変形を抑制することができ、ひいてはロックレバー30の回動が不安定になる可能性を低減することができる。
【0113】
(13)本実施形態では、支持軸22は、上下方向で第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16a間の中央部に配置されている。従って、第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16aにおいて、ロアレール3及びアッパレール4間にそれぞれボール20aが介設されてアッパレール4の断面形状に変形が生じたとしても、支持軸22は該変形による影響を受けにくくなる。これにより、ロックレバー30の変形をいっそう抑制することができる。
【0114】
(14)本実施形態では、ストッパ部材70(押圧片72)に、メモリピン62の上方への移動を係止する係止プレート63を車両後方に押圧する機能を併せて付与したことで、部品点数を削減することができる。
【0115】
(15)本実施形態では、シートバック8の前倒しに伴い、アッパレール4が車両前方に移動する直前の状態又は車両前方に移動した任意の状態(記憶された相対位置及び最前方位置間の任意の配置状態)で、シートバック8が引き起こされて前倒しが解消されたとする。このとき、ロックレバー30は、初期回動位置に復帰するメモリリンク80から解放されることで、ロアレール3に対するアッパレール4の相対移動を係止することができる。つまり、前記記憶された相対位置への復帰がなくても、ロアレール3に対するアッパレール4の相対移動を係止することができる。つまり、前記記憶された相対位置への復帰がなくても、例えば乗員がシート5に着座すべくシートバック8の前倒しを解消すれば、自ずとシート5を前後方向に移動不能にすることができる。
【0116】
(16)本実施形態では、メモリピース60の前後方向の移動を案内するメモリガイド25を設けたことで、停止中・移動中に関わらずメモリピース60の幅方向への位置ずれを抑えることができる。
【0117】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、メモリピース60及びその周辺構造は一例である。例えば、係止プレート63及び第2付勢部材66を割愛してもよい。この場合、特許文献1のようにシートバック8の前倒し後にアッパレール4がシート前方に移動する際にメモリピン62の上方に進入可能なメモリ保持ブラケットを設け、該メモリ保持ブラケットによりメモリピン62を下方に押圧し続けてロアレール3との係合状態等を保持すればよい。
【0118】
・前記実施形態において、外れ防止プレート64に代えて、メモリベース61にメモリピン62の段差部62eの当接可能な段差部を形成し、メモリベース61から突出するメモリピン62の最上方位置を規制してもよい。この場合、例えばメモリベース61に対してメモリピン62を上方に組み付けるようにすればよい。
【0119】
・前記実施形態において、第1付勢部材65により上方に付勢されるメモリピン62がメモリベース61から外れないのであれば、外れ防止プレート64を割愛してもよい。
・前記実施形態において、係止プレート63の後側部に適宜の係止爪を切り起こし、該係止爪をメモリピン62の被係止溝62dに嵌入させてメモリピン62の上方への移動を係止してもよい。この場合、係止プレート63自体の上下方向の位置と、被係止溝62dに嵌入する係止爪の上下方向の位置とがずれていてもよい。
【0120】
・前記実施形態において、メモリガイド25を割愛してもよい。
・前記実施形態において、メモリリンク80は、アッパレール4に直に支持される取付ピン(77)周りに回動自在に連結されていてもよい。この場合、取付ピンは、一側の第2縦壁部14(軸取付孔)に挿入される一方の端部において該当の第2縦壁部14に締結され、他側の第2縦壁部14(軸取付孔)に挿入される他方の端部において該当の第2縦壁部14に対し幅方向に移動自在に連結されていてもよい。これにより、ロアレール3及びアッパレール4間に前述のボール20a等を介設することに伴ってアッパレール4の断面形状に変形が生じた際に、取付ピンの幅方向への移動によってこれを吸収することができる。また、取付ピン(軸取付孔)を、上下方向において第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16a(上下一対のボール20aの摺動部)の中央部に配置してもよい。
【0121】
なお、このときの取付ピンは、ストッパ部材70とは独立していてもよい。ただし、取付ピンがストッパ部材70にも連結されていれば、該ストッパ部材70は当該取付ピンにおいてもアッパレール4に支持されることになり、ストッパ部材70の支持強度を向上させることができる。
【0122】
・前記実施形態において、上側係止孔(71a)をアッパレール4に形成して、メモリベース61から突出するメモリピン62(頭部62b)と直に係合させてもよい。つまり、メモリピン62との係合等に係る上側係止孔は、ストッパ部材70とは独立していてもよい。
【0123】
・前記実施形態において、メモリピース60を両ロアレール3に配設するとともに、ストッパ部材70及びメモリリンク80を両アッパレール4に配設してもよい。つまり、シートバック8の前倒し後の復帰動作に係る機構(メモリ機構)を両側のロアレール3等に配設してもよい。
【0124】
・前記実施形態において、第1のベルクランクリンク90(支持軸91)の軸線は幅方向に沿っていなくてもよい。同様に、第2のベルクランクリンク95(支持軸96)の軸線は幅方向に沿っていなくてもよい。
【0125】
・前記実施形態において、第1及び第2のベルクランクリンク90,95に連結される解除ケーブル93,98は、シートバック8との連結部位で1本に繋がる分岐ケーブルであってもよい。
【0126】
・前記実施形態において、第1及び第2のベルクランクリンク90,95の一方に連結される該当の解除ケーブル93,98を割愛して、第1及び第2のベルクランクリンク90,95をトルクロッドで連結してもよい。
【0127】
・前記実施形態において、メモリリンク80の前記解除方向は、前記相対移動の係止を解除するロックレバー30の回動方向と同一の回動方向であってもよい。
・前記実施形態において、固定ピン79の両端部は、共に両第2縦壁部14に固着されていてもよい。
【0128】
・前記実施形態において、固定ピン79は、上下方向で第2下側ボールガイド19及び第2上側ボールガイド16a間の中央部に配置されていなくてもよい。
・前記実施形態において、1枚の板材にて柄部及びロックプレートの一体形成されたロックレバーであってもよい。
【0129】
・前記実施形態において、ロックレバー30(柄部31)に、長孔35に代えて丸孔を形成し、該丸孔に支持軸22を嵌挿してアッパレール4にロックレバー30を回動自在に連結してもよい。
【0130】
・前記実施形態において、ロアレール3は、複数枚の板材を溶接などで結合した構造であってもよい。
・前記実施形態において、アッパレール4は、複数枚の板材を溶接などで結合した構造であってもよい。
【0131】
・前記実施形態において、シートバック8の前倒しに伴うアッパレール4(シート5)の車両前方への移動は、適宜の付勢部材の付勢力を利用して行うものであってもよいし、乗員等により手動で行うものであってもよい。
【0132】
・前記実施形態において、ロアレール3及びアッパレール4(車両用シートスライド装置)は、シート5に対し各1本ずつ配設される構成であってもよいし、各3本以上ずつ配設される構成であってもよい。
【0133】
・前記各実施形態において、ロアレール及びアッパレールの相対移動方向は、例えば車両幅方向であってもよい。