(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極は複数枚の正極タブが正極用導電部材を介して正極端子と電気的に接続され、前記負極は複数枚の負極タブが負極用導電部材を介して負極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、
前記正極タブ又は負極タブの少なくとも一方は、積層された状態で、積層方向の一端側のみに配置された前記正極用導電部材又は前記負極用導電部材に溶接部によって接合されており、前記接合されたタブのうち前記正極用導電部材又は負極用導電部材より離れた側にある最外層のタブは、溶接ナゲットの外周に沿って変形抑制手段を有しており、
前記変形抑制手段は、隣接する前記正極タブあるいは前記負極タブと反対側に凸となるように湾曲した環状の曲面部であることを特徴とする蓄電装置。
正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極は複数枚の正極タブが正極用導電部材を介して正極端子と電気的に接続され、前記負極は複数枚の負極タブが負極用導電部材を介して負極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、
前記正極タブ又は負極タブの少なくとも一方は、積層された状態で、積層方向の一端側のみに配置された前記正極用導電部材又は前記負極用導電部材に溶接部によって接合されており、前記接合されたタブのうち前記正極用導電部材又は負極用導電部材より離れた側にある最外層のタブは、溶接ナゲットの外周に沿って変形抑制手段を有しており、
前記変形抑制手段は、環状かつ厚さが外周側及び内周側から次第に薄くなる肉薄部であることを特徴とする蓄電装置。
正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極は複数枚の正極タブが正極用導電部材を介して正極端子と電気的に接続され、前記負極は複数枚の負極タブが負極用導電部材を介して負極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、
前記正極タブ又は負極タブの少なくとも一方は、積層された状態で前記正極用導電部材又は前記負極用導電部材に溶接部によって接合されており、前記接合されたタブのうち前記正極用導電部材又は負極用導電部材より離れた側にある最外層のタブは、溶接ナゲットの外周に沿って変形抑制手段を有しており、
前記変形抑制手段は、前記正極タブ及び前記負極タブを構成する材料よりも剛性の大きな材料がクラッドされたクラッド部であることを特徴とする蓄電装置。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。一般に、容量の大きな蓄電装置は電極組立体を収容するケースを備え、そのケース内に電極組立体が収容されている。そして、蓄電装置からの電力の取り出しは、電極組立体の正極及び負極に接続された電極端子を通して行われている。
【0003】
電極組立体には、例えば、複数の正極と複数の負極との間にセパレータを介在させた状態で積層した積層型の電極組立体や、帯状の正極と帯状の負極との間に帯状のセパレータを介在させた状態で捲回した捲回型の電極組立体がある。正極及び負極は、それぞれ複数枚のタブと呼ばれる金属箔の部分を有し、複数枚のタブが導電部材を介して正極端子あるいは負極端子に電気的に接続されている。複数枚のタブは、導電部材に対して複数枚積層された状態で抵抗溶接により溶接されている。蓄電装置が、電気自動車やハイブリッド自動車の走行モータの電源として使用される場合は、大電流充電や大電流放電及び大容量化が要求される。電極組立体では取り出す電力量が大きくなると、正極及び負極のタブの枚数が多くなり、数十枚以上となる場合もある。
【0004】
通常、タブは厚さが10〜20μmと薄い。そのため、
図14に示すように、枚数が多い状態で積層されたタブ61と導電部材62とを抵抗溶接(スポット溶接)により接合すると、導電部材62上に積層されたタブ61のうち導電部材62から離れた側(上側)に位置するタブ61が溶接ナゲット63の周囲において切断される場合がある。
【0005】
これは、抵抗溶接を行う際に、一対の溶接電極により、タブ61及び導電部材62が押圧された状態で両溶接電極間に電圧が印加されることにより、積層されたタブ61のうち上側に位置するタブ61が局所的に大きな曲率で曲がってしまうため、その部分で箔切れが生じると考えられる。
【0006】
従来、内部に発電要素(電極組立体)が収納された有底筒状の外装缶と、この外装缶の開口部を封口するとともに外部電極としての役割を有する封口体とを有し、この封口体と、発電要素の一方の電極と封口体とを電気的に接続する集電タブとが抵抗溶接法にて溶接された密閉型電池の製造方法が提案されている。そして、電極棒と集電タブとの間に溶接用部材(保護板)が介在された状態で抵抗溶接を行うことが開示されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、抵抗溶接に用いられる電極棒と集電タブとの間に溶接用部材(保護板)が介在する状態で抵抗溶接を行う方法では、溶接用部材の分だけ部品点数が増加し、抵抗溶接時に一対の溶接電極間に導電部材及び電極組立体のタブに加えて溶接用部材を所定位置に保持する必要があり、抵抗溶接の際の工数が増える。
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数の増加を抑制して、電極組立体のタブと導電部材との抵抗溶接時にタブの切断を防止することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する蓄電装置は、正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極は複数枚の正極タブが正極用導電部材を介して正極端子と電気的に接続され、前記負極は複数枚の負極タブが負極用導電部材を介して負極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、前記正極タブ又は負極タブの少なくとも一方は、積層された状態で
、積層方向の一端側のみに配置された前記正極用導電部材又は前記負極用導電部材
に溶接
部によって接合され
ており、前記
接合されたタブのうち前記正極用導電部材又は負極用導電部材より離れた側にある最外層のタブは、溶接ナゲットの外周に沿って変形抑制手段を有
しており、前記変形抑制手段は、隣接する前記正極タブあるいは前記負極タブと反対側に凸となるように湾曲した環状の曲面部である。ここで、「変形抑制」とは、抵抗溶接時に積層された状態のタブが溶接電極で押圧された際、タブに大きな曲率で曲がり、応力が集中する箇所が発生することを抑制する意味である。
【0011】
この構成によれば、蓄電装置の製造工程において、電極組立体の電極を電極端子と電気的に接続するためのタブ(正極タブ、負極タブ)と導電部材とを抵抗溶接する際、導電部材上に積層された複数枚のタブのうち導電部材と反対側に位置し、溶接電極に当接して押圧された状態となる最外層のタブは、溶接後に溶接ナゲットとなる部分の外周に沿って変形抑制手段を有する。そのため、抵抗溶接の際、積層されたタブが溶接電極で押圧されても、導電部材より離れた側にある最外層のタブは、大きな曲率で曲がり、応力が集中することが防止される。そのため、保護板を使用しなくても、抵抗溶接時に導電部材より離れた側にある最外層のタブが溶接ナゲットの周囲において切断されることが防止される。したがって、部品点数の増加を抑制して、電極組立体のタブと導電部材との抵抗溶接時にタブの切断を防止することができる。
【0012】
また、積層された状態のタブが溶接電極により押圧されると、導電部材より離れた側にある最外層のタブにて、曲面部が追従して変形する。そのため、従来は大きな曲率で曲がり、内部応力が集中していた溶接電極に接している箇所とその外側との境界部位において、曲率と応力集中が緩和される。したがって、抵抗溶接時に導電部材より離れた側にある最外層のタブの箔切れが抑制される。
上記課題を解決する蓄電装置は、正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極は複数枚の正極タブが正極用導電部材を介して正極端子と電気的に接続され、前記負極は複数枚の負極タブが負極用導電部材を介して負極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、前記正極タブ又は負極タブの少なくとも一方は、積層された状態で、積層方向の一端側のみに配置された前記正極用導電部材又は前記負極用導電部材に溶接部によって接合されており、前記接合されたタブのうち前記正極用導電部材又は負極用導電部材より離れた側にある最外層のタブは、溶接ナゲットの外周に沿って変形抑制手段を有しており、前記変形抑制手段は、環状かつ厚さが外周側及び内周側から次第に薄くなる肉薄部である。
【0013】
この構成によれば、積層された状態のタブが抵抗溶接時に溶接電極により押圧された際、肉薄部が追従して変形する。これにより、肉薄部を有するタブが、溶接電極に接する箇所とその外側との境界部位にて、大きな曲率で曲がることが抑制される。したがって、抵抗溶接時にタブの切断が防止される。
上記課題を解決する蓄電装置は、正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極は複数枚の正極タブが正極用導電部材を介して正極端子と電気的に接続され、前記負極は複数枚の負極タブが負極用導電部材を介して負極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、前記正極タブ又は負極タブの少なくとも一方は、積層された状態で前記正極用導電部材又は前記負極用導電部材に溶接部によって接合されており、前記接合されたタブのうち前記正極用導電部材又は負極用導電部材より離れた側にある最外層のタブは、溶接ナゲットの外周に沿って変形抑制手段を有しており、前記変形抑制手段は、前記正極タブ及び前記負極タブを構成する材料よりも剛性の大きな材料がクラッドされたクラッド部である。
【0014】
この構成によれば、クラッド部を有するタブは、大きな曲率で曲がり難くなり、クラッド部を有するタブより下側に位置するタブも大きな曲率で曲がることが抑制される。したがって、抵抗溶接時にタブの切断が防止される。
【0015】
前記変形抑制手段が形成された正極タブ又は負極タブは、積層された他の正極タブ又は負極タブよりも厚みが大きく設定されている。この構成によれば、変形の抑制された正極タブ又は負極タブが、内側に積層された正極タブ及び負極タブの変形を抑制する作用が大きくなり、正極タブ及び負極の箔切れが、抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品点数の増加を抑制して、電極組立体のタブと導電部材との抵抗溶接時にタブの切断を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を積層型の電極組立体を備えた二次電池に具体化した第1の実施形態を
図1〜
図7にしたがって説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース本体11a及びその開口部を覆う蓋体11bとで構成された四角箱状のケース11内に、積層型の電極組立体12及び電解液(図示せず)が収容されている。
【0020】
図1及び
図3に示すように、電極組立体12は、金属箔13の両面に活物質層14aを有する複数の正極14と、金属箔13の両面に活物質層15aを有する複数の負極15とが、両者の間にセパレータ16が介在する状態で積層されている。正極14及び負極15は、活物質層14a,15aが形成された部分が矩形状に形成されている。各正極14には、電極組立体12の一端面(
図1及び
図3において上端面)の左側寄りに正極タブ14bが突設されている。正極タブ14bは金属箔13の一部が活物質層14aの一端から突出するようにして形成されている。各負極15には、電極組立体12の一端面(
図1及び
図3において上端面)の右側寄りに負極タブ15bが突設されている。負極タブ15bは金属箔13の一部が活物質層15aの一端から突出するようにして形成されている。
【0021】
図1に示すように、電極組立体12の積層方向の両側には活物質層14a,15aを有さず、厚さが正極14及び負極15より厚い正極導電板17,18及び負極導電板19,20が、それぞれセパレータ16を介して1枚ずつ配置されている。正極導電板17,18は、正極14と同じ大きさに形成されるとともに、正極タブ14bと対向する位置に正極タブ17a,18aを有する。負極導電板19,20は、負極15と同じ大きさに形成されるとともに、負極タブ15bと対向する位置に負極タブ19a,20aを有する。正極導電板17,18及び負極導電板19,20は、厚さが例えば、0.1〜0.5mmが好ましい。なお、正極導電板17,18及び負極導電板19,20は、釘刺しや圧壊時に短絡し、蓄電装置(二次電池10)の安全性を高めるものであり、例えば特開2001−068156号公報などにも記載されている公知のものである。
【0022】
セパレータ16は、正極14と負極15との間、正極14と負極導電板19,20との間、負極15と正極導電板17,18との間の電気的絶縁性を確保するため、正極タブ14b,17a,18a及び負極タブ15b,19a,20aを除いた正極14及び負極15の矩形部より大きな矩形状に形成されている。二次電池10がリチウムイオン二次電池の場合、正極14用の金属箔13はアルミニウム箔が好ましく、負極15用の金属箔13は銅箔が好ましい。
【0023】
図1及び
図2に示すように、ケース11には、正極端子21及び負極端子22が蓋体11bから突出する状態で設けられている。正極端子21及び負極端子22は、蓋体11bに形成された孔11cに取り付けられたリング状の絶縁部材23を貫通する状態で設けられている。
【0024】
正極タブ14b,17a,18aは正極用導電部材24に抵抗溶接により電気的に接続されている。負極タブ15b,19a,20aは負極用導電部材25に抵抗溶接により電気的に接続されている。この実施形態では、正極用導電部材24及び負極用導電部材25は、正極導電板17,18及び負極導電板19,20の数倍の厚みを有し、正極端子21は正極用導電部材24と一体に形成され、正極タブ14b,17a,18aは正極用導電部材24に対して正極端子21が突設された側と反対側の端部において溶接されている。負極端子22は負極用導電部材25と一体に形成され、負極タブ15b,19a,20aは負極用導電部材25に対して負極端子22が突設された側と反対側の端部において溶接されている。
【0025】
図1及び
図4に示すように、電極組立体12における積層方向の一端側(
図4において左側)に位置する正極導電板17の正極タブ17aは、基端側に屈曲部を有し、電極組立体12の上端面に沿って延びるように形成されている。電極組立体12における積層方向の他端側(
図4において右側)に位置する正極導電板18の正極タブ18aは、基端側で屈曲されて電極組立体12の一端側に向かって延びた後、一端側で折り返して電極組立体12の上端面に沿って正極タブ17aの下側において延びるように形成されている。各正極タブ14bは、電極組立体12の一端側から他端側に向かって集められるとともに、2枚の正極タブ17a,18aの間に挟持された部分が電極組立体12の他端側から一端側に向かって延びるように配置されている。そして、正極用導電部材24は、正極タブ14b,17a,18aが電極組立体12の上端面に沿って延びる部分において積層された正極タブ14b,17a,18aの最上部に位置する正極タブ17a上に配置された状態で正極タブ14b,17a,18aに対して抵抗溶接されている。負極用導電部材25と負極タブ15b,19a,20aとの接続構造も同様に構成されている。
【0026】
図4に示すように、正極用導電部材24と反対側に位置する最外層の正極タブとしての正極タブ18aは、溶接ナゲット26の外周に沿って変形抑制手段としての環状の曲面部27を有する。曲面部27は、隣接する正極タブ14bと対向する側と反対側に凸となるように湾曲している。また、負極用導電部材25と反対側に位置する最外層の負極タブとしての負極タブ20aも、溶接ナゲット26の外周に沿って変形抑制手段としての環状の曲面部27を有する。ここで、「変形抑制」とは、抵抗溶接時に積層された状態のタブが溶接電極で押圧された際、タブに大きな曲率で曲がり、応力が集中する箇所が発生することを抑制する意味である。
【0027】
次に製造工程における正極タブ14b,17a,18aと正極用導電部材24との接合方法を説明する。なお、負極タブ15b,19a,20aと負極用導電部材25との接合方法も同様にして行われるため、正極タブ14b,17a,18aと正極用導電部材24との接合方法についてのみ説明する。
【0028】
図5に示すように、正極用導電部材24の上に、一方の正極導電板17の正極タブ17aが下側に位置する状態で電極組立体12を配置し、正極タブ17a上に各正極タブ14bが電極組立体12における積層方向の上側から、下側に向かって集められる。具体的に言えば、最も上側に位置する正極タブ14bが、他方の正極導電板18の正極タブ18aに当接する状態で各正極タブ14bが集められる。
【0029】
図5及び
図6に示すように、正極タブ18aには、抵抗溶接後に溶接ナゲットとなる部分の周囲に沿って変形抑制手段としての環状の曲面部27を有する。曲面部27は、隣接する正極タブ14bと対向する側と反対側に凸となるように湾曲している。
【0030】
次に抵抗溶接により正極タブ14b,17a,18aと正極用導電部材24とを接合する。
図7(a)に示すように、正極用導電部材24が下側に位置し、その上に正極タブ17a、複数の正極タブ14b、正極タブ18aの順に積層された状態で、一対の溶接電極50,51が正極タブ14b,17a,18aと正極用導電部材24とを挟持した状態で抵抗溶接が行われる。このとき、正極タブ18aと当接する溶接電極51は、曲面部27の内側において正極タブ18aを押圧する。
【0031】
溶接電極50,51が正極タブ14b,17a,18a及び正極用導電部材24を押圧する状態で電圧が印加されると、
図7(b)に示すように、正極タブ14b,17a,18a及び正極用導電部材24は溶接ナゲット26となる部分が溶融して溶接される。
【0032】
正極用導電部材24に対し、正極タブ14b,17a,18aは数分の一以下の厚みである為、溶接電極51の押圧により、正極用導電部材24より離れた側に位置する正極タブ14b,18aが相対的に大きく変形する。従来技術であれば、溶接電極51の押圧されている箇所、特に正極タブ18aにおいては溶接電極51に接している箇所、とその外側との境界部位にて最も大きな曲率で変形し、内部応力が集中する。そして、溶融時、この内部応力により境界部位にて箔切れが発生しやすくなる。
【0033】
しかし、この実施形態では、正極タブ18aにおいては溶接電極51に接している箇所の周辺に環状の曲面部27が形成されている為、溶接電極51による押圧時には境界部位に追従して曲面部27が変形する。このため、前述の境界部位における大きな曲率の変形と応力集中が緩和される。また、正極タブ18aは、曲面部27の変形により、曲面部27より外側の変形が抑制される。このため、正極タブ18aよりも内側に積層された正極タブ14bの変形も抑制される。そのため、保護板を使用しなくても、抵抗溶接時に正極用導電部材24から離れた側に位置する正極タブ18a,14bが溶接ナゲット26の周囲において切断されることが防止される。
【0034】
正極タブ14b,17a,18aと正極用導電部材24との溶接終了後、正極タブ17a,14b,18aが電極組立体12の積層方向の一端側から他端側に向かって曲げられて、
図4に示す状態になる。
【0035】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)二次電池10は、正極14及び負極15が絶縁された層状の構造を成し、正極14は複数枚の正極タブ17a,14b,18aが正極用導電部材24を介して正極端子21と電気的に接続され、負極15は複数枚の負極タブ19a,15b,20aが負極用導電部材25を介して負極端子22と電気的に接続された電極組立体12を備える蓄電装置である。そして、複数枚の正極タブ17a,14b,18aは積層された状態で正極用導電部材24に抵抗溶接で接合され、複数枚の負極タブ19a,15b,20aは積層された状態で負極用導電部材25に抵抗溶接で接合されている。積層された複数枚の正極タブ17a,14b,18aのうち、正極用導電部材24より離れた側にある最外層の正極タブ18aは溶接ナゲット26の外周に沿って変形抑制手段(曲面部27)を有する。積層された複数枚の負極タブ19a,15b,20aのうち、負極用導電部材25より離れた側にある最外層の負極タブ20aは溶接ナゲット26の外周に沿って変形抑制手段(曲面部27)を有する。
【0036】
この構成によれば、二次電池10の製造工程において、正極タブ17a,14b,18aと正極用導電部材24、あるいは負極タブ19a,15b,20aと負極用導電部材25とを抵抗溶接する際、保護板を使用しなくても、正極導電板18の一部である正極タブ18a、又は負極導電板20の一部である負極タブ20aに変形抑制手段を設けることで、抵抗溶接時に正極タブ18aや負極タブ20aが溶接ナゲット26の周囲において切断されることが防止される。したがって、部品点数の増加を抑制することができる。また、溶接ナゲットそのものを形成する箇所に、厚みや材質の変更など溶接条件に関わる変更を伴うものではない為、適用が容易である。
【0037】
(2)変形抑制手段は、隣接する正極タブ14bあるいは負極タブ15bと反対側に凸となるように湾曲した環状の曲面部27である。この構成によれば、変形抑制手段は、抵抗溶接工程において積層された状態の正極タブ17a,14b,18aあるいは負極タブ19a,15b,20aが溶接電極50,51により押圧された場合に、正極タブ18a又は負極タブ20aにて、曲面部27が追従して変形する。そのため、従来は大きな曲率で曲がり、内部応力が集中していた溶接電極51に接している箇所とその外側との境界部位において、曲率と応力集中が緩和される。したがって、抵抗溶接時に正極タブ18aあるいは負極タブ20aの箔切れが抑制される。
【0038】
(3)変形抑制手段により、変形抑制手段より外側での正極タブ18a又は負極タブ20aの変形が抑制される。また、最外層の正極タブ18a又は負極タブ20aの厚みが、他の正極タブ14b及び負極タブ15bより大きく設定されている。これにより、変形の抑制された正極タブ18a又は負極タブ20aが、内側に積層された正極タブ14b及び負極タブ15bの変形を抑制する作用が大きくなり、正極タブ14b及び負極タブ15bの箔切れが、抑制される。
【0039】
(4)また、曲面部27は、正極タブ18aあるいは負極タブ20aにプレス加工を行うことで形成することができ、変形抑制手段として正極タブ18a及び負極タブ20aを構成する材料よりも強度の大きな材料をクラッド(接合)したクラッド部を設ける場合に比べて、製造が容易になる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を
図8及び
図9にしたがって説明する。この実施形態では、電極組立体の構成が捲回型である点が第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0041】
図8及び
図9に示すように、電極組立体30は、帯状の金属箔31に活物質層32aが形成された正極32と、帯状の金属箔31に活物質層33aが形成された負極33とが帯状のセパレータ34を挟んだ状態で巻回された構成である。
【0042】
正極32及び負極33は、幅方向の片側に正極タブ32b及び負極タブ33bとなる活物質が塗布されていない領域が一定幅で存在するように活物質層32a,33aが形成されている。正極32及び負極33は、正極タブ32b及び負極タブ33bが電極組立体30の軸方向の反対側端部にそれぞれ配置される状態で巻回されている。
【0043】
図9に示すように、正極導電板35,36及び負極導電板37,38が、電極組立体30の長径方向に沿って延びる状態で、かつ巻回された正極32、負極33及びセパレータ34を挟むように設けられている。正極導電板35,36と負極導電板37,38との間には、セパレータ39が配置されている。正極導電板35,36は正極タブ35a,36aを有し、負極導電板37,38も図示しないが、負極タブをそれぞれ有する。正極タブ35a,36a及び負極タブは、正極32の正極タブ32bあるいは負極33の負極タブ33bより厚く形成されている。正極タブ35a,36aには正極タブ32bと対向する側と反対側に変形抑制部としての曲面部27(図示せず)を有する。
【0044】
図9に示すように、正極用導電部材40は、正極タブ32bに溶接される一対の接続代41aを有する接続部41と、正極端子に接続される端子接続部42とが連繋部43で繋がれた構成に形成されている。そして、一対の接続代41aが正極タブ32bの内周面と接触する状態に接続部41が配置された状態で、正極32の正極タブ32b及び正極導電板35,36の正極タブ35a,36aが正極用導電部材40と抵抗溶接で接合される。負極用導電部材も正極用導電部材40と同様に構成され、負極33の負極タブ33b及び負極導電板37,38の負極タブが負極用導電部材と抵抗溶接で接合される。この場合も、抵抗溶接の際、積層された正極タブ32bあるいは負極タブ33bのうち正極用導電部材40あるいは負極用導電部材から離れた側に位置する正極タブ32bあるいは負極タブの切断が防止される。
【0045】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図10に示すように、複数枚の正極タブ14bは、積層方向における正極用導電部材24と反対側にのみ正極タブ14bより厚い正極タブ18aが配置された状態で正極用導電部材24に抵抗溶接で溶接されてもよい。正極タブ14bと正極用導電部材24との間に正極タブ17aが存在しなくても、正極タブ14bは溶接電極50の押圧力により大きな曲率で曲がることがない。そのため、正極タブ14bと正極用導電部材24との間に正極タブ17aが存在しなくても、抵抗溶接時に正極タブ14bの切断が防止される。また、同様に、複数枚の負極タブ15bは、積層方向における負極用導電部材25と反対側にのみ負極タブ15bより厚い負極タブ20aが配置された状態で負極用導電部材25に抵抗溶接で溶接されてもよい。
【0046】
○
図11に示すように、変形抑制手段は、環状かつ厚さが外周側及び内周側から次第に薄くなる肉薄部28であってもよい。この構成によれば、積層された状態の正極タブ18a,14bあるいは負極タブ20a,15bが抵抗溶接時に溶接電極51により押圧された際、肉薄部28が追従して変形する。これにより、肉薄部28を有する正極タブ18aあるいは負極タブ20aが、溶接電極51に接する箇所とその外側との境界部位にて、大きな曲率で曲がることが抑制される。したがって、抵抗溶接時に正極タブ18a及び負極タブ20aの切断が防止される。
【0047】
○
図12に示すように、変形抑制手段は、正極タブ18a及び負極タブ20aを構成する材料よりも剛性の大きな材料がクラッド(接合)されたクラッド部29であってもよい。剛性の大きな材料としては、例えば、ステンレス鋼やニッケルが挙げられる。この構成によれば、クラッド部29を有する正極タブ18a及び負極タブ20aは、溶接電極51により押圧された際に大きな曲率で曲がり難くなる。そのため、クラッド部29を有する正極タブ18a及び負極タブ20aより下側に位置する正極タブ14b及び負極タブ15bも大きな曲率で曲がることが抑制される。したがって、抵抗溶接時に正極タブ18a,14b及び負極タブ20a,15bの切断が防止される。クラッド部29は、クラッド部29を構成する材料が、正極タブ18aあるいは負極タブ20aに形成された環状の溝内に嵌め込まれた状態で接合されても、溝を形成せずに接合されてもよい。
【0048】
○ 変形抑制手段としての、曲面部27、肉薄部28、クラッド部29は、円環状に限らず、例えば、四角環状、長円環状であってもよい。溶接電極50,51の先端部、即ち正極タブ18aや負極タブ20aあるいは正極用導電部材24や負極用導電部材25に当接する部分の形状が四角柱状や楕円柱状の場合は、四角環状や長円環状の方が好ましい。
【0049】
○ 巻回型の電極組立体30を備えた二次電池10において、
図13に示すように、電極組立体30は、正極32の正極タブ32b及び負極33の負極タブ33bが、それぞれ電極組立体30の巻回軸方向における同じ側の端部に位置するように形成された構成としてもよい。
【0050】
○ 正極14,32及び負極15,33は、金属箔13,31に活物質が塗布されて活物質層14a,15a,32a,33aが形成された構造に限らない。例えば、積層型の電極組立体12の正極14あるいは負極15は、集電体として複数の空孔を備える三次元構造の金属多孔体の空孔に、活物質が充填されて活物質層が形成され、金属多孔体の一端の多孔部が押しつぶされて板状となった部分でタブが形成された構造であってもよい。
【0051】
○ 積層型の電極組立体12の正極14あるいは負極15の活物質層14a,15aとして、活物質を板状に賦形したものを活物質層として使用してもよい。
○ 正極14,32及び負極15,33の活物質層14a,15a,32a,33aを保持する金属箔13,31に代えてメッシュ状の金属シートを使用してもよい。
【0052】
○ 正極タブ14b及び負極タブ15bは、金属箔13の一部を突出させて形成された構造に限らず、活物質層を支持(保持)する金属箔13の部分に別の金属箔を接合して形成してもよい。
【0053】
○ 正極端子21と正極用導電部材24あるいは負極端子22と負極用導電部材25は、それぞれ一体に形成された構成に限らず、別体に形成されたものを後から溶接あるいは接着材等で固着した構成としてもよい。
【0054】
○ 巻回型の場合、電極組立体30は、長円柱状や楕円柱に限らず、例えば、円柱状であってもよい。
○ 積層型の電極組立体12において、正極タブ14b及び負極タブ15bがそれぞれ電極組立体12の異なる端面から突出する構成としてもよい。
【0055】
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等の他の二次電池であってもよい。
○ 二次電池10は電解液が必須ではなく、例えば、セパレータ16,34,39が高分子電解質で形成されていてもよい。
【0056】
○ 最外層に配置される正極タブ18aは、複数枚の正極タブ14bより厚く形成されているが、最外層に配置される正極タブを、隣接される正極タブの厚みに対し、同等又はそれ以下としてもよい。前述の構成においても、もっとも箔切れが生じやすい最外層の正極タブに、変形抑制手段が設けられていることにより、箔切れが抑制される。同様に、最外層に配置される負極タブ20aは、複数枚の負極タブ15bより厚く形成されているが、最外層に配置される負極タブを、隣接される負極タブの厚みに対し、同等又はそれ以下としてもよい。
【0057】
○ 電極組立体12は、正極導電板17,18及び負極導電板19,20を備えていなくてもよい。
○ 蓄電装置は、二次電池10に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
【0058】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の蓄電装置の構成を備えた二次電池。