(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032088
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/02 20060101AFI20161114BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20161114BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
F23G5/02 ZZAB
B09B5/00 L
F23G5/50 H
F23G5/50 Q
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-62759(P2013-62759)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185835(P2014-185835A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】植竹 規人
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特公平04−076058(JP,B2)
【文献】
特開2005−024126(JP,A)
【文献】
特開平07−071736(JP,A)
【文献】
特開平05−215318(JP,A)
【文献】
特開昭53−080770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/02
B09B 5/00
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピットと、廃棄物を焼却する焼却装置と、廃棄物燃焼熱によりボイラにて蒸気を発生させタービンにより発電を行う発電装置と、貯留ピットに貯留されている廃棄物を取り出し焼却装置へ搬送供給する搬送供給装置とを有し、該搬送供給装置は、貯留ピットの上方位置に設けられた搬送クレーンであって、昇降動し吊下位置が水平方向に可動となっているバケットを有し、該バケットが閉状態で廃棄物を掴んで取出し、開閉動作により廃棄物を掴んで落下させ攪拌混合する廃棄物処理装置において、
廃棄物処理装置は、貯留ピット内における部位により異なった水分率分布を形成している廃棄物の水分率分布を調整する水分率調整装置を備え、
該水分率調整装置は、貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を計測する水分率計測手段と、水分率計測手段により計測された水分率分布にもとづき、バケットの開閉、位置移動を制御する制御部を有し、
該制御部は、貯留ピットから取り出されて焼却装置へ搬送供給されるべき廃棄物の好ましい水分率の範囲を所定範囲として設定しており、水分率計測手段により計測された水分率分布にもとづき、廃棄物の水分率が所定範囲となっている部位にバケットを移動させ、かかる部位の廃棄物を掴んで搬送クレーンにより焼却装置へ搬送供給するように制御し、廃棄物の水分率が所定範囲でない部位と周辺の部位にて、バケットを開閉させてかかる部位の廃棄物と周辺の廃棄物とを攪拌混合して、廃棄物の水分率が所定範囲となる部位を形成させ、水分率計測手段による計測で廃棄物の水分率が所定範囲となったかかる部位の廃棄物をバケットが掴んで搬送クレーンにより焼却装置へ搬送供給するように制御し、常に水分率が所定範囲に収まっている廃棄物を焼却装置へ搬送供給し、
焼却装置は、廃棄物の水分率から廃棄物の発熱量を算出する発熱量算出手段と、焼却装置へ供給する燃焼用空気の供給量を調整する供給空気量調整手段と、水分率計測手段で計測された廃棄物の水分率から算出された廃棄物の発熱量に適応する燃焼用空気の供給量となるように供給空気量調整手段を調整する供給空気量制御手段とを有し、
焼却装置で水分率が所定範囲の廃棄物の供給を受け、廃棄物の水分率に対し適切な供給量で燃焼用空気の供給を受けて、廃棄物を焼却し、発電装置で安定した蒸気発生量と安定した発電量で発電することを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
貯留装置は、外部からの廃棄物が搬入される前段ピットと、該前段ピットから搬送された廃棄物を受ける後段ピットと、前段ピットと後段ピットとの間に設けられた破砕機とを有し、水分率計測手段と搬送供給装置が後段ピットに対して設けられていることとする請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
廃棄物を貯留ピットに受け入れて一時貯留し、廃棄物を焼却装置で焼却し、廃棄物燃焼熱によりボイラにて蒸気を発生させタービンを備えた発電装置により発電し、貯留ピットに貯留されている廃棄物を取り出し搬送供給装置としての搬送クレーンで焼却装置へ搬送供給し、貯留ピットの上方位置で搬送クレーンのバケットを降下してバケットで廃棄物を掴んで取出し、該バケットの開閉動作により廃棄物を掴んで落下させることで攪拌混合する廃棄物処理方法において、
貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を水分率計測手段で計測し、水分率計測手段により計測された水分率分布にもとづき、バケットの開閉、位置移動を制御部により制御することで、貯留ピット内における部位により異なった水分率分布を形成している廃棄物の水分率分布を調整し、
上記制御部での制御は、貯留ピットから取り出されて焼却装置へ搬送供給されるべき廃棄物の好ましい水分率の範囲を所定範囲として設定して、水分率計測手段により計測された水分率分布にもとづき、廃棄物の水分率が所定範囲となっている部位にバケットを移動させ、かかる部位の廃棄物を掴んで搬送クレーンにより焼却装置へ搬送供給するように制御し、廃棄物の水分率が所定範囲でない部位と周辺の部位において、バケットを開閉させてかかる部位の廃棄物と周辺の廃棄物とを攪拌混合して、廃棄物の水分率が所定範囲となる部位を形成させ、水分率計測手段による計測で廃棄物の水分率が所定範囲となったかかる部位の廃棄物をバケットが掴んで搬送クレーンにより焼却装置へ搬送供給するように制御し、常に水分率が所定範囲に収まっている廃棄物を焼却装置へ搬送供給するようになっており、
焼却装置での廃棄物の焼却は、廃棄物の水分率から廃棄物の発熱量を算出し、焼却装置へ供給する燃焼用空気の供給量を調整し、水分率計測手段で計測された廃棄物の水分率から算出された廃棄物の発熱量に適応する燃焼用空気の供給量となるように供給空気量調整手段を調整するようにして行い、
焼却装置で水分率が所定範囲の廃棄物の供給を受け、廃棄物の水分率に対し適切な供給量で燃焼用空気の供給を受けて、廃棄物を焼却して発電装置により、安定した蒸気発生量と安定した発電量で発電することを特徴とする廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物の水分率を所定範囲内にすることで焼却装置における廃棄物の燃焼により発生する発熱量を安定させる廃棄物処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物焼却施設においては、焼却炉へ廃棄物を投入する前に廃棄物の性状を把握することは行われることがなく、廃棄物焼却炉に廃棄物が投入された後に燃焼中の操業データ(炉内温度、排ガス中酸素濃度等)により、廃棄物焼却炉での熱バランスを求め、廃棄物の発熱量を演算し、焼却炉に供給する燃焼空気量を調整するフィードバック制御が一般的である。したがって、焼却炉へ供給される廃棄物の性状が時々刻々変化する実際の操業では制御に遅れが生じ、時には焼却炉で発生した可燃性ガスが完全に燃焼されず、燃焼排ガス中に未燃ガスが残存することがあった。
【0003】
そこで、特許文献1には廃棄物を焼却炉へ供給する供給通路が形成された供給装置を該焼却炉のごみ投入口の直前位置に設け、該供給通路を通過する廃棄物の比重および水分含有率を該供給通路の通過中に計測することで廃棄物の性状を焼却前に求め、廃棄物の性状に基づき焼却炉での燃焼に必要な空気量を演算して供給空気量を制御する焼却炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-283444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1では、焼却の前に廃棄物性状を求め、燃焼空気量を調整することとしているが、しかしながら、焼却炉へ供給される廃棄物の含有水分率等の性状変化が大きい場合は、たとえ焼却前に廃棄物性状を求めることができたとしても、的確に供給空気量を制御して燃焼制御するのは困難であり、燃焼排ガス中に未燃ガスが残存することがある。特に、特許文献1では、廃棄物の性状は、廃棄物が供給通路を通過中に計測されるので、通過点の前後で性状が大きく変わっていると、計測値も大きく変動して燃焼制御が困難となる。これは、供給される廃棄物内で性状分布が不均一となっている場合に生じる。
【0006】
また、近年においては廃棄物の燃焼熱を有効利用してボイラにて蒸気を発生させてタービンにより発電を行う廃棄物焼却施設が増加している。この場合は、廃棄物の性状を焼却直前に把握できたとしても、上述のように、計測を供給通路の通過中に行ったのでは、実際に投入される廃棄物の性状を調整できないので、廃棄物の焼却によって得られる燃焼熱は変動して蒸気の発生量は大きく変動し、発電量が不安定となる。
【0007】
本発明は、このような特許文献1における事情に鑑み、廃棄物処理装置における焼却炉へ供給される廃棄物の含有水分率等の性状が変動したり含有水分率分布が不均一であっても、これに対応でき、廃棄物の燃焼、ひいては発電量が安定する廃棄物処理装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、廃棄物処理装置そして方法に関し、次のように構成することで上述の課題が解決される。
【0009】
<廃棄物処理装置>
本発明の廃棄物処理装置は、廃棄物を受け入れて一時貯留する貯留ピットを備えた貯留装置と、廃棄物を焼却する焼却装置と、貯留装置に貯留されている廃棄物を取り出す取出し装置を可動に備えていて廃棄物を焼却装置へ搬送供給する搬送供給装置とを有する廃棄物処理装置において、
廃棄物処理装置は水分率調整装置を備え、該水分率調整装置は、貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を計測する水分率計測手段と、貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を調整するために該廃棄物を攪拌混合する攪拌混合手段と、該攪拌混合手段及び取出し装置を制御する攪拌混合取出し制御手段とを有し、
上記攪拌混合取出し制御手段は、水分率計測手段により計測された水分率分布にもとづき、上記攪拌混合手段を作動させて貯留ピット内に廃棄物の水分率が所定範囲である部位を形成し、取出し装置を作動させて該部位の廃棄物を取り出すように、攪拌混合手段及び取出し装置を制御することを特徴として構成される。
【0010】
かかる構成の本発明によると、廃棄物の水分率は、焼却装置への廃棄物の供給前に、しかも貯留装置における貯留状態で水分率計測手段により計測される。水分率は貯留ピット内の廃棄物の水分率分布として計測され、水分率分布に偏りがあってその水分率が所定範囲に入っていないときには、廃棄物は攪拌混合手段によって周辺の廃棄物と攪拌混合されて水分率が所定範囲である部位を形成する。取出し装置がこの部位における廃棄物を取り出して、これを焼却装置へ搬送供給する。かくして、焼却装置へは、所定範囲の水分率の廃棄物が供給されることとなり、焼却装置での廃棄物燃焼ひいては発生熱を利用する発電量が安定する。
【0011】
本発明において、貯留装置は、外部からの廃棄物が搬入される前段ピットと、該前段ピットから搬送された廃棄物を受ける後段ピットと、前段ピットと後段ピットとの間に設けられた破砕機とを有し、水分率計測手段と取出し装置が後段ピットに対して設けられていて廃棄物が取出し装置により後段ピットから焼却装置へ搬送供給されるようになっているようにすることができる。こうすることで、後段ピットで水分率を計測していても、その計測に影響をもたらすことなく、前段ピットへ外部から廃棄物を搬入することができる。また、廃棄物が袋体に入ったり固まっていたりするときには、破砕機により破砕されるので、攪拌混合がしやすく、また、水分率分布が正しく計測される。
【0012】
本発明において、取出し装置は、廃棄物を貯留装置から焼却装置へ搬送供給するための搬送クレーンに吊下して設けられ廃棄物を掴むバケットを有し、該バケットの吊下位置が水平方向に可動となっていて、該バケットが攪拌混合手段をも兼ねているようにすることが好ましい。こうすることで、通常、廃棄物処理装置に取出し装置として備えられている設備であるバケットを攪拌混合装置としても用いることができ、追加設備をなくし、設備の簡素化を図れる。
【0013】
本発明において、焼却装置は、廃棄物の水分率から廃棄物の発熱量を算出する発熱量算出手段と、焼却装置へ供給する燃焼用空気の供給量を調整する供給空気量調整手段と、水分率計測手段で検出された廃棄物の水分率から算出された廃棄物の発熱量に適応する燃焼用空気の供給量となるように供給空気量調整手段を調整する供給空気量制御手段とを有していることが好ましい。こうすることで、計測した廃棄物の水分率の計測結果に対し適切な燃焼用空気の供給を行い適切な燃焼を行うことができる。
【0014】
<廃棄物処理方法>
かくして、本発明は、廃棄物処理方法に関しては、貯留装置の貯留ピットへ廃棄物を受け入れて一時貯留し、貯留装置に貯留されている廃棄物を取出し装置で取り出して該廃棄物を搬送供給装置で焼却装置へ搬送供給して処理する方法において、
貯留ピット内の廃棄物の水分率分布を水分率計測手段で計測し、
水分率計測手段により計測された水分率分布にもとづき、貯留ピット内の廃棄物を攪拌混合手段で攪拌して廃棄物の水分率が所定範囲である部位を形成し、
取出し装置を作動して該部位の廃棄物を取り出すことを特徴として構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、以上のように、廃棄物の貯留装置のピット内での廃棄物の水分率を計測して、廃棄物ピット内の廃棄物の水分率分布を求め、水分率分布の情報により、水分率が所定範囲の部位を形成するように廃棄物の攪拌・混合を行い、水分率が所定範囲に入っている部位の廃棄物を、取出し装置により取り出して廃棄物焼却装置に廃棄物を供給することとしたので、廃棄物は貯留装置内に貯留されている状態で水分率が計測されて攪拌混合されることとなり、水分率が所定範囲である部位が確実に形成され、その部位の廃棄物が取り出されて焼却装置へ供給されることで、焼却装置での廃棄物の燃焼が安定し、その結果、発熱量により得られる発電量も安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態としての廃棄物処理装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面の
図1にもとづき、本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の廃棄物処理装置は、大別すると、廃棄物を一時貯留する貯留装置Iと、廃棄物を焼却する焼却装置IIと、上記貯留装置Iから廃棄物を取り出して焼却装置へ搬送供給する搬送供給装置IIIとを有している。
【0019】
貯留装置Iは、好ましい形態として、外部からの廃棄物Pを受け入れる前段ピット11と、該前段ピット11から移動されてくる廃棄物Pを受ける後段ピット12との分離配置された二つのピットを有していると共に、両ピット11,12間に破砕機13をも有している。
【0020】
廃棄物Pは、廃棄物収集車(図示せず)によりもち込まれ上記前段ピット11へ投入され、所定量づつ後段ピット12へ移送されるが、その途中で、破砕機13により、廃棄物が袋に入っている場合にこの袋が裂断されることで袋外に分散して取り出され、また廃棄物が大型のものは小さく破砕される。かくして、廃棄物Pは、処理に適した状態そしてサイズで後段ピット12内に一時貯留される。
【0021】
本実施形態において、上記破砕機13自体は公知の形式のもので十分であり、二つの筒状の回転体を対向して配置し、両回転体の外周面に破砕のための刃、歯、突起等が設けられていて廃棄物が両回転体の外周面間で挟圧されながら送られることとするもの、あるいは、往復動する圧縮部材や突起部材を備えているもの等、種々適用可能である。要は、廃棄物を収めている袋を裂断し、大型廃棄物を小さく破砕する能力を備えていればよい。
【0022】
上記破砕機13で破砕され落下排出される廃棄物を受ける後段ピット12は、前段ピット11よりも大容量となっており、側壁上部には水分率調整装置の一部をなす水分率計測手段として例えば、赤外線水分率計測計14が取り付けられている。上記水分率調整装置は、この赤外線水分率計測計14と、後述の攪拌混合手段としてクレーンに設けられたバケットと、該バケットを開閉そしてその位置を移動させるように制御する攪拌混合取出し制御手段とから成っている。
【0023】
水分率計測計自体は、公知の形式のものでよく、例えば、赤外線水分率計測計や静電容量式水分率計を用いることができる。
【0024】
赤外線水分率計測計は廃棄物への赤外線の照射方向を移動させることで、廃棄物の任意の部位について計測できるので異なる部位を単体あるいは少数の計測計でスキャンするのに好都合である。これに対し、静電容量式水分率計は、一対をなす二つの電極間の静電容量により計測された廃棄物の静電容量に対応して水分率を算出するものであり、一方の電極をピットの一方の側壁にそして他方の電極をピットの他方側壁もしくは底壁に設ける必要があり、したがって異なる部位での水分率を計測するには、電極対が上記異なる部位での廃棄物を挟むように位置して設けることとなる。かくして、スキャンするか複数位置に配された赤外線水分率計あるいは静電容量式水分率計等の水分率計測計により廃棄物の水分率分布を得る。
【0025】
上記後段ピット12の上方位置には、搬送供給装置IIIとしての搬送クレーン15が設けられている。該搬送クレーン15は、天井に設置された走行案内のためのレール16、該レール16に走行自在に支持された巻上機(図示せず)から吊下されたワイヤ17と該ワイヤ17の下端に設けられたバケット18とを有している。該バケット18は開閉駆動されると共に、ワイヤ17の巻上げにより昇降動し、また上記巻上機のレール16での走行により水平方向における吊下位置を移動するようになっている。上記バケット18は、閉状態で後段ピット12内廃棄物Pを掴んで取り出す取出し装置を形成するが、開閉動作によって廃棄物Pを攪拌混合するので、攪拌混合手段としても機能する。この取出し装置そして攪拌混合手段としてのバケット18の開閉そしてその位置の移動は、上記水分率計測手段としての赤外線水分率計測計14での計測により得られた水分率分布にもとづき、後述の攪拌混合取出し制御手段によって制御される。上述した水分率計測手段、攪拌混合手段、そして攪拌混合取出し制御手段により水分率調整装置が構成される。
【0026】
上記攪拌混合取出し制御手段は、上記赤外線水分率計測計14からの検出信号を受けて、上記バケット18の開閉そして位置移動を制御する制御部(図示せず)を有している。該制御部は、後段ピット12から取り出されるべき廃棄物の水分率が所定範囲として設定されており、上記赤外線水分率計測計14による計測で得られた水分率分布にもとづき、廃棄物の水分率が所定範囲となっている部位にバケット18を移動させ、また、水分率が所定範囲となっていないときにはバケット18を開閉させて周囲の廃棄物と攪拌混合して廃棄物の水分率が所定範囲の部位を生ずるように、上記バケットの動作を制御し、さらには、かかる部位の廃棄物Pを掴んで後段ピット12から取り出して焼却装置IIへ供給するように、搬送クレーン15をも制御している。
【0027】
焼却装置IIは、廃棄物Pの供給を受けるホッパ22Aを上端に有し該ホッパ22Aから廃棄物Pを炉内に落下投入するシュート22が設けられた焼却炉21として形成されている。該焼却炉21は、例えば、火格子式焼却炉として形成することができる。火格子式焼却炉の場合、炉内底部に設けられている火格子(図示せず)の下方から燃焼用空気を、供給空気量調整装置24を経て炉内の燃焼室23に供給する風箱24Aが炉底に設けられている。上記火格子は該火格子上の廃棄物を図にて右方向に送るように作動している。
【0028】
上記焼却炉21は、燃焼室23の後流側上部が二次燃焼室となっていて、その上方に排気部25が設けられている。二次燃焼室と排気部25の排気口25Aとの間の位置には、二次燃焼で得られる熱を回収するボイラ(図示せず)が配設されている。上記排気口25Aは、後流側に設けられた集塵機や排ガス無害化装置(図示せず)に接続されていて、焼却炉21から排出される排ガスは無害化された後に、大気に放出されるようになっている。
【0029】
焼却装置IIは、焼却炉21での廃棄物の燃焼状態を廃棄物の水分率に対して最良にするように上記供給空気量調整装置24を調整可能としており、該供給空気量調整装置24に加え、廃棄物の水分率から廃棄物の発熱量を算出する発熱量算出手段(図示せず)と、貯留装置IIに設けられた既出の水分率計測手段で検出された廃棄物の水分率から算出された廃棄物の発熱量に適応する供給空気量となるように供給空気量調整手段を調整する供給空気量制御手段(図示せず)をも有している。該供給空気量調整手段は、既出の攪拌混合取出し制御手段と別々に構成されていなくとも両制御手段を合わせて一つの制御装置とすることも可能である。
【0030】
このように構成された本実施形態の廃棄物処理装置にあっては、廃棄物は、次の要領で、その水分率が制御されて焼却処理される。
【0031】
廃棄物収集車で収集された廃棄物Pは、先ず、貯留装置Iの前段ピット11へ投入される。廃棄物Pは適宜手段により、後段ピット12の受入余剰能力そして破砕機13の処理能力に応じた量が、破砕機13を経て後段ピット12へ移送される。破砕機13では、ビニール等の袋に入っている廃棄物は袋が裂断されて袋外に分散し、大型のものは破砕されて小サイズのものとされる。かくして、廃棄物Pは、処理に適した状態そしてサイズで後段ピット12内に一時貯留される。
【0032】
廃棄物Pは、収集される場所や時期等の条件によって、その水分率が異なっている。したがって、後段ピット12内に貯留されている廃棄物Pは水分率が廃棄物の後段ピット12内における部位により変わっている水分率分布を形成している。また、後段ピット12内の廃棄物Pは、バケット18により取り出されそして新たな廃棄物が前段ピット11から移送されてくるので、上記水分率分布の様子は時間の経過によっても変わってくる。本実施形態では、かかる状態のもとで、水分率は赤外線水分率計測計14により、常時あるいは比較的短い周期で計測されている。
【0033】
攪拌混合取出し制御手段は、赤外線水分率計測計14の計測により得られた水分率分布にもとづき、取出し装置としてのバケット18の位置を、廃棄物Pの水分率が所定範囲内にある廃棄物の部位へ移動させ、該部位での廃棄物をバケット18で掴み、ワイヤ17を巻上機で巻き上げることにより後段ピット12外へ取り出し、巻上機をレール16に沿って移動させることで、上記廃棄物を焼却装置のホッパ22A内へ落下投入する。
【0034】
後段ピット12内で、位置によって水分率の高低差が大きく水分率分布が偏っていて水分率が所定範囲に入っていないときには、攪拌混合取出し制御手段はバケット18に開閉動作を行う指令を発して周辺の廃棄物を攪拌混合する。この攪拌混合により廃棄物の水分率が所定範囲の部位が形成されるようになる。かくして、攪拌混合取出し制御手段は、水分率が所定範囲になった該部位の廃棄物を取り出すようにバケット18に指令を発する。このようにして、本実施形態では、常に廃棄物の水分率が所定範囲に収まっている状態で焼却炉21のホッパ22Aへ落下投入して該焼却炉21へ搬送供給される。
【0035】
ホッパ22Aから落下投入された廃棄物Pは、シュート22を経て焼却炉21の火格子上に廃棄物の堆積層を形成する。火格子は、下流側(図にて右方向)へ廃棄物を送り出す動作を伴っており、該廃棄物は燃焼しながら下流側へ移動する。焼却炉21は、その底部で火格子の下方へ複数の風箱24Aから燃焼用空気を受けており、この燃焼用空気が火格子上の廃棄物の堆積層を透過上昇し燃焼室23での廃棄物の燃焼に寄与する。
【0036】
燃焼装置IIは、焼却炉21へ供給された廃棄物について、赤外線水分率計測計14で計測された廃棄物の水分率にもとづき、この水分率から算出された廃棄物の発熱量に適応する供給空気量となるように、供給空気量制御手段の指令にしたがい上記燃焼用空気量が供給空気量調整装置24により調整される。上記発熱量は、予め種々の水分率に対応して求められた発熱量の関係を蓄積しているデータベースあるいは両者の関係式を有している発熱量算出手段から、特定の水分率に対応する発熱量を算出して得られる。かくして、焼却炉内の廃棄物の水分率に応じて、上記発熱量を得るために適した供給量の燃焼用空気が供給される。
【0037】
本実施形態では、燃焼用空気は火格子の下方に供給される一次燃焼用空気として例示したが、一次燃焼用空気と二次燃焼用空気の合計の空気量として、同様に供給空気量を制御することとしてもよい。
【0038】
本実施形態では、搬送クレーンのバケットが攪拌混合手段と取出し手段の両手段を兼ねる例として説明したが、両手段を別途の部材で構成してもよい。また、貯留装置における貯留ピットを、前段ピットと後段ピットに分ける構成としたが、分けずに一つのピットで形成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
I 貯留装置
II 焼却装置
III 搬送供給装置
11 前段ピット
12 後段ピット
13 破砕機
14 水分率計測手段(水分率計測計)
15 搬送クレーン
18 攪拌混合手段:取出し装置(バケット)
21 焼却炉
24 供給空気量調整装置