特許第6032097号(P6032097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032097銀ナノワイヤーの製造方法、該方法で得られた銀ナノワイヤー及び該銀ナノワイヤーを含有するコーティング剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032097
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】銀ナノワイヤーの製造方法、該方法で得られた銀ナノワイヤー及び該銀ナノワイヤーを含有するコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20161114BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20161114BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20161114BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20161114BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20161114BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B22F9/24 E
   B22F1/00 K
   H01B1/22 A
   H01B1/00 F
   H01B5/00 F
   H01B13/00 501Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-69168(P2013-69168)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189888(P2014-189888A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 裕司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】板井 信吾
(72)【発明者】
【氏名】安池 伸夫
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0196788(US,A1)
【文献】 特開平11−290674(JP,A)
【文献】 特開2012−140701(JP,A)
【文献】 特表2013−531133(JP,A)
【文献】 特表2014−505787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)の存在下で、銀化合物を加熱する工程を含むことを特徴とする銀ナノワイヤーの製造方法(但し、ポリビニルピロリドンを用いる場合を除く)
【請求項2】
前記銀化合物として、銀の無機酸塩を用いる請求項1に記載の銀ナノワイヤーの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程をアルカリ金属の無機酸塩の存在下で行う請求項1又は2に記載の銀ナノワイヤーの製造方法。
【請求項4】
前記ポリマーとして、数平均分子量(Mn)が1万〜50万であるポリマーを用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤーの製造方法。
【請求項5】
前記ポリマーとして、分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜5であるポリマーを用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤーの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程を、ポリオール、水及び1価のアルコールから選ばれる溶媒の存在下で行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤーの製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程を60〜300℃で行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ナノワイヤーの製造方法、該方法で得られた銀ナノワイヤー及び該銀ナノワイヤーを含有するコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の透明電極に使用されるITO(酸化インジウムスズ)膜の代替となる高透明性・高導電性薄膜の原料として、銀ナノワイヤーが近年注目されており、斯かる銀ナノワイヤーは、一般に、ポリビニルピロリドンとエチレングリコール等の存在下で銀化合物を加熱することによって製造されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ポリビニルピロリドンが水溶性を示すため、上記のようなポリビニルピロリドンを使用して製造した銀ナノワイヤーは、コーティング剤として使用する場合に、残存するポリビニルピロリドンとの親和性の高いもの(水やアルコール等)を溶剤として用いる必要があり、光学フィルム等のプラスチック基材の表面にコートしにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−505358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、コーティング剤に用いた場合にプラスチック基材の表面にコートしやすい銀ナノワイヤーの製造方法、該方法で得られた銀ナノワイヤー及び該銀ナノワイヤーを含有するコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)、ポリ(N−ビニル−2−オキサゾリドン)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)及びポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)から選ばれる1種以上のポリマーの存在下で、銀化合物を加熱することによって、コーティング剤に用いた場合にプラスチック基材の表面にコートしやすい銀ナノワイヤーを製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)、ポリ(N−ビニル−2−オキサゾリドン)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)及びポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)から選ばれる1種以上のポリマーの存在下で、銀化合物を加熱する工程を含むことを特徴とする銀ナノワイヤーの製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記製造方法で得られた銀ナノワイヤーを提供するものである。
【0009】
更に、本発明は、上記銀ナノワイヤーを含有するコーティング剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、コーティング剤に用いた場合にプラスチック基材の表面にコートしやすい銀ナノワイヤーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得た銀ナノワイヤーの形状を示す顕微鏡写真である。
図2】実施例2で得た銀ナノワイヤーの形状を示す顕微鏡写真である。
図3】実施例3で得た銀ナノワイヤーの形状を示す顕微鏡写真である。
図4】実施例4で得た銀ナノワイヤーの形状を示す顕微鏡写真である。
図5】実施例5で得た銀ナノワイヤーの形状を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の銀ナノワイヤーの製造方法は、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)、ポリ(N−ビニル−2−オキサゾリドン)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)及びポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)から選ばれる1種以上のポリマーの存在下で、銀化合物を加熱する工程を含むことを特徴とする。銀ナノワイヤーは、直径がナノオーダーである銀のナノファイバーのことをいう。
【0013】
本発明で用いる銀化合物としては、銀塩、酸化銀等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、後述するアルカリ金属の無機酸塩を用いる場合は、該アルカリ金属の無機酸塩が溶解する溶媒に可溶な銀化合物を用いることで、反応を均質に行うことができる。
上記銀化合物の中でも、銀塩が好ましい。斯かる銀塩は無機塩と有機塩とに大別されるが、工業的入手の容易性の観点から、無機塩が好ましい。
【0014】
銀化合物の具体例としては、硝酸銀(AgNO3)、ヘキサフルオロホスフェート銀(AgPF6)、硼弗化銀(AgBF4)、過塩素酸銀(AgClO4)、塩素酸銀(AgClO3)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)、フッ化銀(AgF)、炭酸銀(Ag2CO3)、硫酸銀(Ag2SO4)、酢酸銀(AgO2CCH3)、トリフルオロ酢酸銀(AgO2CCF3)が挙げられ、銀ナノワイヤ―の製造効率及び目的の銀ナノワイヤ―の形状が得られる観点から、硝酸銀、過塩素酸銀、塩素酸銀、フッ化銀、ヘキサフルオロホスフェート銀、硼弗化銀、トリフルオロ酢酸銀が好ましく、硝酸銀、ヘキサフルオロホスフェート銀、硼弗化銀、トリフルオロ酢酸銀がより好ましい。
【0015】
本発明で用いるポリマーは、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)、ポリ(N−ビニル−2−オキサゾリドン)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)及びポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)から選ばれる1種以上のポリマーである。該ポリマーは保護コロイド性が低いが、それにも拘わらず、斯かるポリマーを用いることによって銀化合物から銀ナノワイヤーが得られる。
上記ポリマーとしては、銀ナノワイヤーの製造効率及び工業用の光学フィルム等に均一にコートするために使用される有機溶剤への溶解性の観点から、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)が好ましい。
【0016】
上記ポリマーの数平均分子量(Mn)としては、1万〜50万が好ましく、1万〜30万がより好ましく、1万〜20万が更に好ましい。
また、上記ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、1万〜100万が好ましく、1万〜50万がより好ましく、1万〜40万が更に好ましい。
また、上記ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)としては、1.3〜5が好ましく、1.3〜5.0がより好ましい。
これら数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布を制御することで、銀ナノワイヤーの形状(直径及び長さ)をコントロールしうる。
なお、上記数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0017】
なお、上記ポリマーは、市販品を使用してもよく、常法に従い対応するモノマーから合成して使用してもよい。
【0018】
上記ポリマーの合計使用量は特に限定されないが、銀化合物1モルに対し、通常1〜12モル当量程度であり、好ましくは3〜9モル当量である。
【0019】
また、上記加熱は、上記ポリマーとともにアルカリ金属の無機酸塩の存在下で行うのが好ましい。斯かるアルカリ金属の無機酸塩としては、アルカリ金属の硝酸塩、アルカリ金属の亜硝酸塩が好ましく、アルカリ金属の硝酸塩がより好ましい。
具体的には、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム等が挙げられ、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0020】
上記アルカリ金属の無機酸塩の合計使用量は特に限定されないが、銀化合物1モルに対し、通常0.1〜20モル当量程度であり、好ましくは1〜6モル当量である。
【0021】
また、アルカリ金属の無機酸塩を用いる場合、これと共にアルカリ金属ハロゲン化物を用いてもよい。斯かるアルカリ金属ハロゲン化物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩化物;臭化ナトリウム、臭化カリウム等のアルカリ金属臭化物;ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属ヨウ化物等が挙げられ、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0022】
上記アルカリ金属ハロゲン化物の合計使用量は特に限定されないが、銀化合物1モルに対し、通常1×10-7〜1×10-1モル当量程度であり、好ましくは1×10-6〜1×10-2モル当量である。
【0023】
また、上記加熱において、4級アンモニウム塩を更に用いてもよい。斯かる4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩化物や、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム臭化物等が挙げられ、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、得られるワイヤー形状の観点から、テトラブチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0024】
上記4級アンモニウム塩の合計使用量は特に限定されないが、銀化合物1モルに対し、通常0〜1モル当量程度であり、好ましくは0〜0.5モル当量である。
【0025】
また、上記加熱は溶媒の存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、ポリオール、水、1価のアルコール等が挙げられ、還元作用を得る観点から、ポリオールを含む溶媒が好ましい。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール等が挙げられ、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
上記ポリオールの中でも、2価アルコールが好ましく、下記式(A)で表されるものがより好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。
【0026】
HO−C24−(OC24n−OH ・・・(A)
【0027】
上記式(A)中、nは0〜10の整数を示し、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3である。
【0028】
上記ポリオールの合計使用量は特に限定されないが、銀化合物100質量部に対し、通常1万〜10万質量部程度であり、好ましくは1.5万〜6万質量部である。
また、上記溶媒の合計使用量は特に限定されないが、銀化合物100質量部に対し、通常1万〜10万質量部程度であり、好ましくは1.5万〜6万質量部である。
【0029】
また、銀化合物の加熱温度は特に限定されないが、通常60〜300℃であり、好ましくは100〜200℃である。また、加熱時間は、通常0.5〜48時間であり、好ましくは0.5〜24時間である。
なお、上記加熱工程によって生成した銀ナノワイヤーは、必要に応じて洗浄、遠心分離等による精製をして得ることができる。
【0030】
そして、後記実施例に記載のとおり、上記本発明の製造方法によれば、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーを使用せずに銀ナノワイヤーを得ることができる。したがって、斯かる製造方法で得られる銀ナノワイヤーにはポリビニルピロリドン等の付着がなく、コーティング剤に用いた場合に溶剤として有機溶剤を選択することができるため、プラスチック基材の表面にコートしやすい。また、本発明の製造方法によれば、数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布を制御することで、銀ナノワイヤーの形状(直径及び長さ)をコントロールしうる。
【0031】
また、得られる銀ナノワイヤーの直径は、40〜250nm程度であり、長さは、1〜50μm程度である。
なお、銀ナノワイヤーの直径及び長さは、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0032】
本発明のコーティング剤は、上記本発明の製造方法によって得られた銀ナノワイヤーを含有するものである。コーティング剤中の銀ナノワイヤーの含有量としては、乾燥工程の負荷軽減観点及び凝集を抑える観点から、0.1〜99質量%が好ましく、0.3〜95質量%がより好ましい。
【0033】
また、本発明のコーティング剤は溶剤を含んでいてもよいが、プラスチック基材の表面へのコートのしやすさの観点から、有機溶剤が好ましい。
上記有機溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のアルキレングリコール系溶剤;アルキレングリコールのアルキルエーテル系溶剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機溶剤とともに水を併用していてもよい。
【0034】
また、本発明のコーティング剤には、上記本発明の製造方法で用いるポリマーを添加することができる。添加量は特に限定されないが、銀ナノワイヤー100質量部に対し、通常0.01〜10質量部程度であり、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0035】
なお、本発明のコーティング剤には、必要に応じて、上記以外の各種の添加剤等(例えば、界面活性剤、重合性化合物、重合体、酸化防止剤、腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤)を含有することができる。
【0036】
また、本発明のコーティング剤を塗布する基材は特に限定されるものではなく、樹脂、ガラス、セラミック、紙等の絶縁性材料;半導体材料や金属等の導体が挙げられるが、本発明のコーティング剤は、プラスチック基材のコートに特に有用である。プラスチック基材は光学フィルム等に用いられる。
上記プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート基材、トリアセチルセルロース基材、ポリエチレンナフタレート基材、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン基材、ポリアクリル基材、ポリスチレン基材、ポリウレタン基材、エポキシ樹脂基材、ポリ塩化ビニル系基材、ポリアミド系基材等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
<分子量測定>
ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)の分子量は東ソー製HLC−8220GPC(溶媒:DMF、送液量0.5mL/min、検量線:Polystyrene standard、カラム:TOSOH TSKguardcolumn SuperH−H、TSKgel SuperHM−H)を用いて測定した。
<銀ナノワイヤーの形状の観測>
銀ナノワイヤーの形状(長さ・直径)は、日本電子株式会社製 走査型電子顕微鏡JEM−6010LA(加速電圧10〜20kV、エミッション電流83〜88μA)を用いて観測した。
【0039】
合成例1 ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)の合成(1)
【0040】
【化1】
【0041】
N−ビニル−ε−カプロラクタム(2.09g/15.0mmol)とアゾイソブチロニトリル(25.0mg/0.15mmol)をアンプル管に入れ減圧乾燥した後、クロロベンゼン15mLを添加した。次いで、この溶液を数回凍結脱気した後に封管し、60℃で16時間加熱撹拌した。得られた溶液をヘキサン200mLに添加し、生成した白色沈殿物をろ過し、12時間減圧乾燥することでポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)を得た(収量1.90g)。このポリマーは、Mn:16000、Mw:39000、Mw/Mn:2.4であった(以下、このポリマーをPNVCL1とも称する)。
【0042】
合成例2 ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)の合成(2)
N−ビニル−ε−カプロラクタム(2.09g/15.0mmol)とアゾイソブチロニトリル(24.6mg/0.15mmol)をアンプル管に入れ減圧乾燥した後、クロロベンゼン3.0mLを添加した。次いで、この溶液を数回凍結脱気した後に封管し、60℃で16時間加熱撹拌した。得られた粘性溶液をクロロベンゼンで希釈した後ヘキサン200mLに添加し、生成した白色沈殿物をろ過し、12時間減圧乾燥することでポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)を得た(収量1.76g)。このポリマーは、Mn:65000、Mw:158000、Mw/Mn:2.4であった(以下、このポリマーをPNVCL2とも称する)。
【0043】
合成例3 ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)の合成(3)
N−ビニル−ε−カプロラクタム(37.58g/0.27mol)とアゾイソブチロニトリル(0.44g/2.70mmol)をアンプル管に入れ減圧乾燥した後、クロロベンゼン55.11mLを添加した。次いで、この溶液を数回凍結脱気した後に封管し、60℃で16時間加熱撹拌した。得られた粘性溶液をクロロベンゼンで希釈した後ヘキサン2000mLに添加し、生成した白色沈殿物をろ過し、12時間減圧乾燥することでポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)を得た(収量35.75g)。このポリマーは、Mn:31000、Mw:102000であった。
次いで、得られたポリマー30gをクロロベンゼン500mLに溶解させた後、この溶液にヘキサン500mLを滴下し、デカンテーションすることで粘性液体を得た。
そして、この時の上澄み液にさらにヘキサンを滴下することで、再度粘性液体を得、得られた粘性液体をヘキサンに滴下することで生成した白色沈殿物をろ過し、12時間減圧乾燥することで、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)を得た(収量6.30g)。このポリマーは、Mn:18000、Mw:81000、Mw/Mn:4.5であった(以下、このポリマーをPNVCL5とも称する)。
また、最初のデカンテーション後に得られた粘性液体をクロロベンゼンで希釈した後、再度ヘキサンを滴下することで再度粘性液体を得た。この操作を5回繰り返し、4回操作後と5回操作後に得られた粘性液体をそれぞれヘキサンに滴下することで生成した白色沈殿物をろ過し、12時間減圧乾燥することで、次の2種のポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)を得た。
4回目の操作後に得られたポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)は、収量1.33g、Mn:98000、Mw:195000、Mw/Mn:2.0であった(以下、このポリマーをPNVCL4とも称する)。
5回目の操作後に得られたポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)は、収量2.31g、Mn:140000、Mw:237000、Mw/Mn:1.7であった(以下、このポリマーをPNVCL3とも称する)。
【0044】
実施例1 銀ナノワイヤーの製造(1)
合成例1で得られたPNVCL1(0.55g/3.96mmol:モノマーユニット換算)を溶解させたエチレングリコール溶液10mLと、AgNO3(0.15g/0.88mmol)を溶解させたエチレングリコール溶液7.5mLとを混合し、PNVCL1含有溶液を調製した。
一方、KNO3(0.36g/3.60mmol)を添加した0.766mmol/L−NaCl水溶液50μLとエチレングリコール10mLとを混合し、160℃で10分間撹拌した。この溶液に、先に調製したPNVCL1含有溶液を滴下し、さらに1時間160℃で加熱撹拌することで灰色懸濁液を得た。得られた灰色懸濁液を蒸留水及びアセトンで洗浄・遠心分離(2000rpm、30分)を数回行うことで銀ナノワイヤー(長さL≦20μm、直径d≦250nm)を得た。得られた銀ナノワイヤーの形状を図1に示す。
【0045】
実施例2 銀ナノワイヤーの製造(2)
PNVCL1をPNVCL2に変更した以外は実施例1と同様にして銀ナノワイヤー(長さL≦40μm、直径d≦250nm)を得た。得られた銀ナノワイヤーの形状を図2に示す。
【0046】
実施例3 銀ナノワイヤーの製造(3)
PNVCL1をPNVCL3に変更した以外は実施例1と同様にして銀ナノワイヤー(長さL≦50μm、直径d≦250nm)を得た。得られた銀ナノワイヤーの形状を図3に示す。
【0047】
実施例4 銀ナノワイヤーの製造(4)
PNVCL1をPNVCL4に変更した以外は実施例1と同様にして銀ナノワイヤー(長さL≦50μm、直径d≦250nm)を得た。得られた銀ナノワイヤーの形状を図4に示す。
【0048】
実施例5 銀ナノワイヤーの製造(5)
PNVCL1をPNVCL5に変更した以外は実施例1と同様にして銀ナノワイヤー(長さL≦20μm、直径d≦250nm)を得た。得られた銀ナノワイヤーの形状を図5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5