(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。「材料」には材質や素材の意味を含む。
【0016】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、アウターロータ型回転電機に適用する例であって、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
図1に示す回転電機10Aは、回転電機10の一例である。本形態では、ロータ20A、軸受30、ステータ40A、支軸70Aなどを有する。
【0017】
ロータ20Aは、ロータ20の一例であり、フレーム21,ロータコア22,磁石23などを有する。フレーム21は、ステータ40Aの外周側に配置され、材料や形状を問わない。このフレーム21は、ロータコア22を固定するための「
ロータ用被固定部材」に相当する。電磁ノイズを遮蔽するシールド材料(例えば板金、金属メッシュ、発泡金属、導電性樹脂等)で成形してもよく、非磁性体で成形してもよい。シールド材料には、磁化されにくい材料(例えばアモルファス鋼板等)を用いるのが望ましい。非磁性体には、電気的な絶縁性を有する樹脂や、非磁性金属(例えばアルミニウム,銅,亜鉛,オーステナイト系ステンレス等)などを含む。本形態のフレーム21は、断面で示すようにカップ形状に成形される。すなわち、動力(回転力)を外部に伝達するための中心部と、ロータコア22や磁石23を固定するための周縁部とがそれぞれ曲げられる形状である。
【0018】
ロータコア22の構成は任意であり、例えば積層体・単体・分割構成等が該当する。本形態では後述するように電磁鋼板を積層して形成するが、鋳造や研削加工等で構成してもよく、複数の分割コアを非取付体に取り付けて構成してもよい。ロータコア22の固定は、周縁部の内周側に成形されたボス等(図示を省略する)に対して行ってもよく、周縁部の内周側に直接行ってもよい。磁石23の固定は、ロータコア22と同様の固定で行ってもよく、ロータコア22に成形されたツバ等(図示を省略する)でかしめてもよい。ロータコア22に中空部を設け、当該中空部に磁石23を挿入(圧入を含む)してもよい。かしめや挿入を除く固定手段は、ロータ20Aの回転数や回転中に外部から受ける力にかかわらず、強固に固定可能な任意の固定手段を適用してよい。
【0019】
磁石23は、本形態では永久磁石を用いるが、電磁石を用いてもよい。永久磁石には、磁場を発生させる任意の永久磁石を用いてよい。例えば、フェライト磁石,アルニコ磁石,サマリウムコバルト磁石,ネオジム鉄ボロン磁石,サマリウム鉄窒素磁石などが該当する。特にフェライト磁石は、保磁力が高く減磁しにくく、錆びにくい特性がある。
【0020】
軸受30は、ロータ20Aと支軸70Aとの間に介在され、ベアリングやグリースなどを有する。ベアリングには導電性ベアリングを用いるとよく、グリースには導電性グリースを用いるとよい。導電性ベアリングは、導電性材料(例えば銅や鉄等の金属材料)で成形される。導電性グリースは、グリースに導電性物質を混在させたものである。当該軸受30によって、ロータ20Aが支軸70Aに対して回転自在になる。
【0021】
ステータ40Aは、ステータコア41や巻線42などを有する。ステータコア41は磁性体で形成され、巻線42を巻き回すための複数のスロット(図示を省略する)を有する。ステータ40Aの構成は任意であり、例えば積層体・単体・分割構成等が該当する。積層体の場合は、上述したステータコア41Aと同様に電磁鋼板を積層する。磁性体には、硬質磁性体である磁石や、軟質磁性体(例えば鉄,ケイ素鋼,パーマロイ,センダスト,パーメンジュール,ソフトフェライト,アモルファス磁性合金,ナノクリスタル磁性合金などの材料からなる物)などを含む。
【0022】
ステータコア41は支軸70Aと固定されるならば、固定方法を問わない。図示するように固定手段F1によって固定してもよく、ステータコア41にあけた貫通穴に支軸70Aを圧入してもよく、その他の固定方法で固定してもよい。固定手段F1は、ステータコア41を支軸70Aに固定できれば任意である。本形態では、図示するように、ボルトやネジ等の締結部材を用いる締結を適用する。その他、母材を溶かすことでハンダ付けやアーク溶接等を行う接合や、接着剤を用いる接着などを適用してもよく、二以上の固定方法を適宜に選択して適用してもよい。固定手段F1を導電性材料で成形する場合には、「
ステータ用導通手段」に相当する。
【0023】
支軸70Aは、「
ステータ用被固定部材」に相当し、導電性材料で成形される非回転軸である。本形態では、軸本体71やフランジ部72などを有する。フランジ部72は必要に応じて設けられ、軸本体71に対するステータ40Aを強固に固定するために補う。実線のようにステータ40Aの片側に対して設けてもよく、実線と二点鎖線とで示すようにステータ40Aの片側に対して設けてもよい。図示するように、ステータ40Aおよびフランジ部72を貫通する穴を設けて、固定手段F1を用いて固定するとよい。
【0024】
支軸70Aにフランジ部72を設けない場合は、他の固定方法で固定してもよい。例えば、ステータコア41にあけた貫通穴に支軸70Aを圧入して固定してもよい。ステータコア41および支軸70Aのうちで一方にキーを設けるとともに、他方にキー溝を設けて、キー溝にキーを嵌め込んで固定してもよい(例えばJIS B1301,JIS B1302,JIS B1303を参照)。要するに、ステータコア41と支軸70Aとが固定できればよい。
【0025】
支軸70Aの一部(
図1では端部)には、外部接続部50Aを備えてもよい。外部接続部50Aは、図示するように軸線方向AXに取り付ける金属部材(例えばピンやボルト等)や、端部に接合(例えば溶接やハンダ付け等)して取り付ける端子などが該当する。支軸70Aは、外部機材80との間で接地されるならば、接続方法を問わない。図示するように、外部接続部50Aと外部機材80との間で導電線60を用いて接続してもよく、支軸70Aを外部機材80とダイレクトに接続してもよい。外部機材80は、基準電位を同電位(接地電位)で維持できる装置や部品などであれば問わない。この接続によって支軸70Aを接地できる。
【0026】
以下では、2つの部材間における掛止例について、
図2〜
図5を参照しながら説明する。
図2と
図3にはステータコア41Aと軸本体71との掛止例を示し、
図4と
図5にはロータコア22Aとフレーム21との掛止例を示す。
【0027】
図2に示す掛止例は、ステータコア41Aの凸状部413を軸本体71のスリット部711に掛止する例である。ステータコア41Aは、支軸70Aの軸線方向AXに複数枚の電磁鋼板411を積層する。電磁鋼板411の形状は問わず、平面板でもよく、非平面板(曲面板や凹凸を有する板等である。以下同じ。)でもよい。一部の電磁鋼板411(1枚以上の電磁鋼板411)については、軸本体71に向かう方向(交差方向DC;図面右方向)の長さが異なるように構成する。電磁鋼板411は、スリット部711と掛止できれば任意の形状で成形してよい。本形態の電磁鋼板411は、端部を加工しないものと、軸本体71側の端部を加工してテーパ412を設けるものとを混在させる。図示しないが、全部の電磁鋼板411について、端部を加工しない構成としてもよく、軸本体71側の端部を加工してテーパ412を設ける構成としてもよい。積極的に長さを異ならせるのではなく、ステータコア41Aを積層体に成形する過程で一部の電磁鋼板411が軸本体71に向かう方向にずれて結果的に凸状部413が成形されてもよい。
【0028】
軸本体71には、1以上のスリット部711を交差方向DCに成形する。交差方向DCは軸線方向AXと交差する方向であり、直交方向を含む。スリット部711は、電磁鋼板411の端部と掛止できれば任意の形状で成形してよい。例えば、図示するような凹状の溝でもよく、線状の切り込みでもよく、階段状の段差などが該当する。電磁鋼板411の板厚T1はスリット部711のスリット幅W1以上となるように設定するとよい(T1≧W1)。板厚T1がスリット幅W1よりも大きい場合には、圧力をかけながらスリット部711に嵌め込む(いわゆる圧入)とよい。
【0029】
図3に示す掛止例は、
図2に示す掛止例と比べて凹凸関係が逆になる。すなわち、軸本体71の凸状部713をステータコア41Aのスリット部414(図示するテーパ412や、凹部、溝、切り込み等を含む)に掛止する例である。ステータコア41Aにかかる一部の電磁鋼板411は、軸本体71に向かう方向とは反対方向(交差方向DC;図面左方向)の長さが異なるように構成する。言い換えると、軸本体71側のステータコア41Aにスリット部414が成形されるように構成すればよい。軸本体71は、交差方向DCに突出する複数の突起部712を設ける。電磁鋼板411の端部と突起部712とが掛止できれば、双方の形状を問わない。電磁鋼板411の板厚T2は、突起部712の相互間の間隔(すなわちスリット幅W2)以上となるように設定するとよい(T2≧W2)。板厚T2がスリット幅W2よりも大きい場合には、圧力をかけながらスリット部711に嵌め込む(いわゆる圧入)とよい。
【0030】
図4に示す掛止例は、ロータコア22Aの凸状部223をフレーム21Aのスリット部211に掛止する例である。ロータコア22Aは、図面上下方向に複数枚の電磁鋼板221を積層する。電磁鋼板221の形状は問わず、平面板でもよく、非平面板でもよい。一部の電磁鋼板221(1枚以上の電磁鋼板221)については、フレーム21Aに向かう方向(図面右方向)の長さが異なるように構成する。電磁鋼板221は、スリット部211と掛止できれば任意の形状で成形してよい。本形態の電磁鋼板221は、端部を加工しないものと、フレーム21A側の端部を加工してテーパ222を設けるものとを混在させる。図示しないが、全部の電磁鋼板221について、端部を加工しない構成としてもよく、フレーム21A側の端部を加工してテーパ222を設ける構成としてもよい。積極的に長さを異ならせるのではなく、ロータコア22Aを積層体に成形する過程で一部の電磁鋼板221がフレーム21Aに向かう方向にずれて結果的に凸状部223が成形されてもよい。
【0031】
フレーム21Aには、1以上のスリット部211を図面左右方向に成形する。図面左右方向は軸線方向AXと交差する方向であり、直交方向を含む。スリット部211は、電磁鋼板221の端部と掛止できれば任意の形状で成形してよい。例えば、図示するような凹状の溝でもよく、線状の切り込みでもよく、階段状の段差などが該当する。電磁鋼板221の板厚T3はスリット部211のスリット幅W3以上となるように設定するとよい(T3≧W3)。板厚T3がスリット幅W3よりも大きい場合には、圧力をかけながらスリット部211に嵌め込むとよい。
【0032】
図5に示す掛止例は、
図4に示す掛止例と比べて凹凸関係が逆になる。すなわち、フレーム21Aの凸状部213をロータコア22Aのスリット部224(図示するテーパ222や、凹部、溝、切り込み等を含む)に掛止する例である。ロータコア22Aにかかる一部の電磁鋼板221は、フレーム21Aに向かう方向とは反対方向(図面左方向)の長さが異なるように構成する。言い換えると、フレーム21A側のロータコア22Aにスリット部224が成形されるように構成すればよい。フレーム21Aは、図面左右方向に突出する複数の突起部212を設ける。電磁鋼板221の端部と突起部212とが掛止できれば、双方の形状を問わない。
【0033】
図示しないが、
図2に示す掛止例と
図3に示す掛止例との組み合わせが実現されるように、対応する2つの部材を成形してもよい。すなわち、ステータコア41Aは凸状部413とスリット部414とを備えるように成形し、軸本体71にはスリット部711と被係合部714とを備えるように成形する。このように構成すれば、
図2と
図3に示す掛止例の作用効果が得られる。
【0034】
また、
図4に示す掛止例と
図5に示す掛止例とを組み合わせが実現されるように、対応する2つの部材を成形してもよい。すなわち、ロータコア22Aは凸状部223とスリット部224とを備えるように成形し、フレーム21Aはスリット部211と凸状部213とを備えるように成形する。このように構成すれば、
図4と
図5に示す掛止例の作用効果が得られる。
【0035】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
【0036】
(1)ステータ40A(回転電機用ステータ)において、支軸70Aに一以上のスリット部711を備えるか(
図2を参照)、ステータコア41Aに一以上のスリット部414を備え(
図3を参照)、ステータコア41Aと支軸70Aとが対向する面の凸状部413,713をスリット部414,711に掛止させる構成とした(
図1〜
図3を参照)。この構成によれば、凸状部413,713をスリット部414,711に掛止させることにより、長期間に亘る振動を受ける場合でもステータコア41Aと支軸70Aとの間の摩耗を抑制することができる。支軸70Aが導電性を有する場合には、ステータコア41Aと導通させることができるので、経年劣化によるステータ40A全体の電位変動を抑制できる。したがって、フレーム21をシールド材料で成形するか否かにかかわらず、低ノイズ性能を長期間に亘って保証できる。
【0037】
(2)スリット部414,711は、軸線方向AXに対して交差する交差方向DCに成形される構成とした(
図2,
図3を参照)。この構成によれば、ステータコア41Aと支軸70Aとが掛止されているので、軸線方向AXに発生する振動に伴う摩耗を抑制することができる。
【0038】
(3)ステータコア41Aは、支軸70Aに向かう方向(交差方向DC)の長さが異なる電磁鋼板411を含めて積層され、コア全体を導通させる固定手段F1(
ステータ用導通手段)を備える構成とした(
図2,
図3を参照)。この構成によれば、固定手段F1によってステータコア41Aの全体が導通されて同電位になり、支軸70Aとの掛止(接触)によって支軸70Aとも導通する。
【0039】
(4)ステータコア41Aは、電磁鋼板411の端部にテーパ412を設ける構成とした(
図2を参照)。この構成によれば、スリット部414のスリット幅W1にかかわらす掛止し易くなる。
【0040】
(5)電磁鋼板411の板厚T1は、スリット部711のスリット幅W1以上で成形する構成とした(
図2を参照)。この構成によれば、スリット部711と掛止し易くなり、圧入によって支軸70Aに対してステータコア41Aを固定することもできる。
【0041】
(12a)
ステータ用被固定部材は
、支軸70A(軸70
)である構成とした(図
1を参照)。この構成によれば、支軸70
Aからも冷却が可能になるので、冷却に有利な構造になる。
【0042】
(13a)ロータ20A(回転電機用ロータ)と支軸70A(軸70)との間には、導電性ベアリングまたは導電性グリースのうち一方または双方を含む軸受30を有する構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、ロータ20Aと支軸70Aとを常時導通させることができる。よって、軸電圧を軽減でき、ベアリング電流が減ることでベアリングの寿命も延ばすこともできる。
【0043】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、インナーロータ型回転電機に適用する例であって、
図6〜
図10を参照しながら説明する。なお、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
図6に示す回転電機10Bは、回転電機10の一例である。本形態では、ロータ20B、軸受30、ステータ40B、回転軸70Bなどを有する。
【0045】
ステータ40Bは、ステータコア41,巻線42,フレーム43などを有する。ステータコア41と巻線42については実施の形態1と同様である。ステータコア41はフレーム43と固定されるならば、固定方法を問わない。図示するように固定手段F2によって固定してもよく、所定形状に成形したフレーム43にステータコア41を圧入してもよく、その他の固定方法で固定してもよい。固定手段F2は、固定手段F1と同様に、ステータコア41をフレーム43に固定できれば任意である。固定手段F2を導電性材料で成形する場合には、「
ステータ用導通手段」に相当する。図示しないが、ステータコア41をフレーム43に圧入する場合には、フレーム43にネジなど導線を引き出せる構造としてもよい。要するに、直接的または間接的にステータコア41やフレーム43を接地できればよい。
【0046】
フレーム43は、ステータ40Bの外周側に配置され、材料や形状を問わない。このフレーム43は、
ステータコア41を固定するための「
ステータ用被固定部材」に相当する。電磁ノイズを遮蔽するシールド材料で成形してもよく、非磁性体で成形してもよい。シールド材料には、磁化されにくい材料を用いるのが望ましい。本形態のフレーム43は、実施の形態1に示すフレーム21と同様に成形される。すなわち、回転電機10B自体を取り付けて固定するための中心部と、ステータコア41を固定するための周縁部とがそれぞれ曲げられる形状である。本形態では、図示するように固定手段F2を用いて、ステータ40Bをフレーム43に固定する。その他、フレーム43の周縁部の内周側に成形されたボス等(図示を省略する)に対して行ってもよく、周縁部の内周側に直接行ってもよい。
【0047】
フレーム43の一部(
図6では端部)には、外部接続部50Bを備えてもよい。外部接続部50Bは、金属部材や、端部に接合して取り付ける端子などが該当する。
図6に示す例の外部接続部50Bは固定手段F2と兼ねる。図示するように、外部接続部50Bと外部機材80との間で導電線60を用いて接続してもよく、フレーム43を外部機材80とダイレクトに接続してもよい。図示しないが、ステータコア41をフレーム43に圧入する場合には、フレーム43にネジなど導線を引き出せる構造としてもよい。要するに、直接的または間接的にフレーム43を接地できれば、接続方法を問わない。
【0048】
軸受30は、ステータ40Bと回転軸70Bとの間に介在され、ベアリングやグリースなどを有する。ベアリングやグリースについては実施の形態1と同様である。当該軸受30によって、ロータ20Bがステータ40Bに対して回転自在になる。
【0049】
回転軸70Bは、導電性材料で成形される「
ロータ用被固定部材」であり、本形態では軸本体73やフランジ部74などを有する。フランジ部74は必要に応じて設けられ、軸本体73に対して
ロータ20Bを強固に固定するために補う。実線のように
ロータ20Bの片側に対して設けてもよく、実線と二点鎖線とで示すように
ロータ20Bの片側に対して設けてもよい。図示するように、
ロータ20Bおよびフランジ部74を貫通する穴を設けて、固定手段F3を用いて固定するとよい。
【0050】
回転軸70Bにフランジ部74を設けない場合は、他の固定方法で固定してもよい。例えば、ロータコア22にあけた貫通穴に回転軸70Bを圧入して固定してもよい。ロータコア22および回転軸70Bのうちで一方にキーを設けるとともに、他方にキー溝を設けて、キー溝にキーを嵌め込んで固定してもよい(例えばJIS B1301,JIS B1302,JIS B1303を参照)。要するに、ロータコア22と回転軸70Bとが固定できればよい。
【0051】
ロータ20Bは、ロータ20の一例であり、ロータコア22や磁石23などを有する。磁石23については実施の形態1と同様である。ロータコア22は、回転軸70B(具体的には軸本体73)に掛止し、固定手段F3によって回転軸70Bに固定される。
【0052】
以下では、2つの部材間における掛止例について、
図7〜
図10を参照しながら説明する。
図7と
図8にはロータコア22Bと軸本体73との掛止例を示し、
図9と
図10にはステータコア41Bとフレーム43との掛止例を示す。
【0053】
図7に示す掛止例は、ロータコア22Bの凸状部227を軸本体73のスリット部731に掛止する例である。ロータコア22Bは、
図4,
図5に示すロータコア22Aと同様に、回転軸70Bの軸線方向AXに複数枚の電磁鋼板225を積層する。電磁鋼板225の形状は問わず、平面板でもよく、非平面板でもよい。一部の電磁鋼板225(1枚以上の電磁鋼板225)については、軸本体73に向かう方向(交差方向DC;図面右方向)の長さが異なるように構成する。電磁鋼板225は、スリット部731と掛止できれば任意の形状で成形してよい。本形態の電磁鋼板225は、端部を加工しないものと、軸本体73側の端部を加工してテーパ226を設けるものとを混在させる。図示しないが、全部の電磁鋼板225について、端部を加工しない構成としてもよく、軸本体73側の端部を加工してテーパ226を設ける構成としてもよい。積極的に長さを異ならせるのではなく、ロータコア22Bを積層体に成形する過程で一部の電磁鋼板225が軸本体73に向かう方向にずれて結果的に凸状部227が成形されてもよい。
【0054】
軸本体73には、1以上のスリット部731を交差方向DCに成形する。スリット部731は、
図2に示すスリット部711と同様に、電磁鋼板225の端部と掛止できれば任意の形状で成形してよい。電磁鋼板225の板厚T5はスリット部731のスリット幅W5以上となるように設定するとよい(T5≧W5)。板厚T5がスリット幅W5よりも大きい場合には、圧力をかけながらスリット部731に嵌め込むとよい。
【0055】
図8に示す掛止例は、
図7に示す掛止例と比べて凹凸関係が逆になる。すなわち、軸本体73の凸状部733をロータコア22Bのスリット部228(図示するテーパ226や、凹部、溝、切り込み等を含む)に掛止する例である。ロータコア22Bにかかる一部の電磁鋼板225は、軸本体73に向かう方向とは反対方向(交差方向DC;図面左方向)の長さが異なるように構成する。言い換えると、軸本体73側のロータコア22Bにスリット部228が成形されるように構成すればよい。軸本体73は、交差方向DCに突出する複数の突起部712を設ける。電磁鋼板225の端部と突起部712とが掛止できれば、双方の形状を問わない。電磁鋼板225の板厚T6は、突起部712の相互間の間隔(スリット幅W6以上となるように設定するとよい(T6≧W6)。板厚T6がスリット幅W6よりも大きい場合には、圧力をかけながらスリット部731に嵌め込むとよい。
【0056】
図9に示す掛止例は、ステータコア41Bの凸状部417をフレーム43Aのスリット部431に掛止する例である。ステータコア41Bは、
図2,
図3に示すステータコア41Aと同様に、図面上下方向に複数枚の電磁鋼板415を積層する。電磁鋼板415の形状は問わず、平面板でもよく、非平面板でもよい。一部の電磁鋼板415(1枚以上の電磁鋼板415)については、フレーム43Aに向かう方向(図面右方向)の長さが異なるように構成する。電磁鋼板415は、スリット部431と掛止できれば任意の形状で成形してよい。本形態の電磁鋼板415は、端部を加工しないものと、フレーム43A側の端部を加工してテーパ416を設けるものとを混在させる。図示しないが、全部の電磁鋼板415について、端部を加工しない構成としてもよく、フレーム43A側の端部を加工してテーパ416を設ける構成としてもよい。積極的に長さを異ならせるのではなく、ステータコア41Bを積層体に成形する過程で一部の電磁鋼板415がフレーム43Aに向かう方向にずれて結果的に凸状部417が成形されてもよい。
【0057】
フレーム43Aには、1以上のスリット部431を図面左右方向に成形する。スリット部431は、電磁鋼板415の端部と掛止できれば任意の形状で成形してよい。例えば、図示するような凹状の溝でもよく、線状の切り込みでもよく、階段状の段差などが該当する。電磁鋼板415の板厚T7はスリット部431のスリット幅W7以上となるように設定するとよい(T7≧W7)。板厚T7がスリット幅W7よりも大きい場合には、圧力をかけながらスリット部431に嵌め込むとよい。
【0058】
図10に示す掛止例は、
図9に示す掛止例と比べて凹凸関係が逆になる。すなわち、フレーム43Bの凸状部433をステータコア41Bのスリット部418(図示するテーパ416や、凹部、溝、切り込み等を含む)に掛止する例である。ステータコア41Bにかかる一部の電磁鋼板415は、フレーム43Bに向かう方向とは反対方向(図面左方向)の長さが異なるように構成する。言い換えると、フレーム43B側のステータコア41Bにスリット部418が成形されるように構成すればよい。フレーム43Bは、図面左右方向に突出する複数の突起部432を設ける。電磁鋼板415の端部と突起部432とが掛止できれば、双方の形状を問わない。
【0059】
図示しないが、
図7に示す掛止例と
図8に示す掛止例との組み合わせが実現されるように、対応する2つの部材を成形してもよい。すなわち、ロータコア22Bは凸状部227とスリット部228とを備えるように成形し、軸本体73にはスリット部731と凸状部733とを備えるように成形する。このように構成すれば、
図7と
図8に示す掛止例の作用効果が得られる。
【0060】
また、
図9に示す掛止例と
図10に示す掛止例とを組み合わせが実現されるように、対応する2つの部材を成形してもよい。すなわち、ステータコア41Bは凸状部417とスリット部418とを備えるように成形し、フレーム43はスリット部431と凸状部433とを備えるように成形する。このように構成すれば、
図9と
図10に示す掛止例の作用効果が得られる。
【0061】
上述した実施の形態2によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
【0062】
(6)ロータ20B(回転電機用ロータ)において、回転軸70Bに一以上のスリット部731を備えるか(
図7を参照)、ロータコア22Bに一以上のスリット部228を備え(
図8を参照)、ロータコア22Bと回転軸70Bとが対向する面の凸状部227,733をスリット部228,731に掛止させる構成とした(
図7,
図8を参照)。この構成によれば、突状部をスリット部228,731に掛止させることにより、長期間に亘る振動を受ける場合でもロータコア22Bと回転軸70Bとの間の摩耗を抑制することができる。回転軸70Bが導電性を有する場合には、ロータコア22Bと導通させることができるので、経年劣化によるロータ20B全体の電位変動を抑制できる。
【0063】
(7)スリット部228,731は、軸線方向AXに対して交差する交差方向DCに形成される構成とした(
図7,
図8を参照)。この構成によれば、ロータコア22Bと回転軸70Bとが掛止されているので、軸線方向AXに発生する振動に伴う摩耗を抑制することができる。
【0064】
(8)ロータコア22Bは、回転軸70Bに向かう方向の長さが異なる電磁鋼板225を含めて積層され、コア全体を導通させる固定手段F3(
ロータ用導通手段)を備える構成とした(
図6を参照)。この構成によれば、固定手段F3によってロータコア22Bの全体が導通されて同電位になり、回転軸70Bとの掛止(接触)によって回転軸70Bとも導通する。
【0065】
(9)ロータコア22Bは、スリット部731との掛止にかかる電磁鋼板225の端部にテーパ226を有する構成とした(
図7を参照)。この構成によれば、スリット部731のスリット幅W5にかかわらす掛止し易くなる。
【0066】
(10)電磁鋼板225の板厚T5は、スリット部731のスリット幅W5以上で成形する構成とした(
図7を参照)。この構成によれば、スリット部731と掛止し易くなり、かつ、圧入によって回転軸70Bに対して固定することもできる。
【0067】
(12b)
ステータ用被固定部材
は、フレーム43(43A,43B)である構成とした(図
6を参照)。この構成によれば
、フレーム43からも冷却が可能になるので、冷却に有利な構造になる。
【0068】
(13b)ステータ40B(回転電機用ステータ)と回転軸70B(軸70)との間には、導電性ベアリングまたは導電性グリースのうち一方または双方を含む軸受30を有する構成とした(
図6を参照)。この構成によれば、ステータ40Bと回転軸70Bとを常時導通させることができる。よって、軸電圧を軽減でき、ベアリング電流が減ることでベアリングの寿命も延ばすこともできる。
【0069】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、実施の形態1に示す回転電機10Aと、実施の形態2に示す回転電機10Bとのうち一方または双方を搭載する車両について、
図11を参照しながら説明する。回転電機10Aや回転電機10Bについては回転電機10として記載し、構成や作用等のような詳細な説明を省略する。
【0070】
図11に示す車両100は、エンジン101と回転電機10とを備えるハイブリッド車両である。すなわち、動力源としてエンジン101と回転電機10とを用いる。回転電機10Aに備える外部接続部50A(
図1を参照)や、実施の形態2に示す回転電機10Bに備える外部接続部50B(
図6を参照)と接続される導電線60は、エンジン101、ステアリング102、シャシー103、ボディ104のうちで一以上と接続する。エンジン101、ステアリング102、シャシー103、ボディ104のいずれでも、基準電位と同電位(接地電位)を維持することができる。よって、回転電機10(10A,10B)のステータコア41やロータコア22を接地することができる。軸受30に導電性ベアリングや導電性グリースを用いると、ステータコア41およびロータコア22の双方が接地されるので、電位変動に伴う電磁ノイズの発生をより確実に防止することができる。
【0071】
上述した実施の形態3によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、回転電機10(10A,10B)の構成については実施の形態1と同様であるので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
(11)実施の形態1に示す回転電機10Aと、実施の形態2に示す回転電機10Bとのうちで一方または双方を有し、支軸70Aやフレーム
43(
ステータ用被固定部材)には外部機材80と電気的に接続して接地できる外部接続部50A,50Bを有する構成とした(
図1,
図6,
図11を参照)。この構成によれば、外部接続部50A,50Bと外部機材80との電気的な接続により、ステータコア41Aやロータコア22Bを接地することができる。回転電機10(10A,10B)の通電に伴って生じるステータコア41Aやロータコア22Bの電位変動を防止し、電位変動に伴う電磁ノイズの発生を防止することができる。よって、回転電機10を構成する他の要素や、他の電気機器等に影響を与えない。
【0073】
(14)外部機材80は、車両100のエンジン101、ステアリング102、シャシー103、ボディ104のうちで一以上である構成とした(
図11を参照)。この構成によれば、支軸70Aやフレーム
43(
ステータ用被固定部材)を介して、ステータコア41やロータコア22を確実に接地することができる。よって、安価かつ低電磁ノイズが可能な回転電機10(10A,10B)を提供することができる。
【0074】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜3に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0075】
上述した実施の形態1では、
図2〜
図5に示すような掛止例で掛止する構成とした。また、実施の形態2では、
図6〜
図10に示す掛止例で掛止する構成とした。これらの形態に代えて、実施の形態1,2に示す掛止例を除いて、他の形態で掛止する構成してよい。他の形態で掛止する掛止例として、
図12と
図13に一例を示す。
図12と
図13には
図2の変形例を示すが、
図3〜
図5や
図6〜
図10の掛止例にも同様に適用できる。
【0076】
図12に示す掛止例は、複数の電磁鋼板411の端部に成形されるテーパ412のうちで、1以上の電磁鋼板411の端部に成形されるテーパ412についてテーパ面の成形を異ならせる。具体的には、テーパ412を成形する所定枚数(
図12では5枚)の電磁鋼板411のうち、一部枚数(
図12では2枚)の電磁鋼板411について図面上下方向のテーパ面を逆にして成形する。テーパ面の成形を異ならせることで、軸線方向AXの両方向に対して振動による摩耗を抑制することができる。
【0077】
図13に示す掛止例は、電磁鋼板411の端部に係合部419を成形し、当該係合部419と係合する被係合部714を軸本体71に成形する構成である。係合部419と被係合部714は、これらが係合できれば任意の形状で成形してよい。図示するように、係合部419は凸状部413でもあり、被係合部714は軸本体71の凹状部でもある。凹凸の係合によって軸線方向AXに対して振動による摩耗を抑制することができ、係合部419と被係合部714の係合によって交差方向DCに対して振動による摩耗を抑制することができる。
【0078】
上述した実施の形態1〜3、
図2〜
図5に示すような掛止例や
図6〜
図10に示す掛止例で掛止する構成とした。すなわち、軸線方向AXと交差する交差方向DCで掛止し、軸線方向AXに生じる振動の影響を受けないように構成した。これらの形態に代えて(あるいは加えて)、対応する2つの部材間で掛止できる形状であって、
図2,
図3,
図7,
図8に示す平面(軸線方向AXおよび交差方向DC)と交差する方向(一例として直交方向)に凹凸形状を成形する構成としてもよい。一例として、ステータコア41やロータコア22等の対応する端部に凹凸形状(切り欠き等)を成形し、当該凹凸形状等と掛止できる形状で軸70やフレーム21,43等の対応する部位を成形すればよい。この構成によれば、
図2,
図3,
図7,
図8に示す平面と交差する方向に対して振動による摩耗を抑制することができる。
【0079】
上述した実施の形態3では、外部機材80として、エンジン101、ステアリング102、シャシー103、ボディ104のうちで一以上を適用する構成とした(
図11を参照)。この形態に代えて、導電線60を用いて外部接続部50との間で接続することができる他の外部機材を適用してもよい。他の外部機材は、例えばシートフレームや、制御装置(ECUやカーナビゲーション等を含む)などが該当する。要するに、ステータコア41やロータコア22の電位変動を吸収して同電位を維持できればよい。他の外部機材を適用しても、実施の形態3と同様の作用効果を得ることができる。