(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池用セパレータとして、金属板材に複数の襞状の張出し部を設けて、その張出し部間に水素,酸素等のガスや生成水を流すための流路を形成したものが知られている。このような燃料電池用セパレータを製造する際には、一般にダイとパンチとを設けた成形型により、金属板材に複数の張出し部をプレス成形している。この金属板材に対する張出し部の成形時には、材料の延びが部分的に異なるため、成形品に反りやうねりが発生しやすい。特に、金属材料を圧延することにより張出し部を成形する場合には、材料内部での周長の伸びが大きくなって、反りやうねりの発生が著しくなった。
【0003】
このように、成形品に発生する反りやうねりを抑制するために、例えば特許文献1〜特許文献3に開示されるようなセパレータや成形方法が従来から提案されている。
特許文献1には、金属板材に複数のガス流路用の張出し部を成形するとともに、その成形により塑性加工を受けた凹凸形状部分に細密な圧痕を設けたセパレータが示されている。このセパレータでは、張出し部の成形にともないセパレータの表裏に異なった伸び量が生じて、セパレータの表裏の残留応力が相違し、セパレータ全体に反りやうねりを生じるおそれがあるが、この反りやうねりが細密な圧痕の形成によって抑制されるとしている。
【0004】
特許文献2には、金属板材の中央部に複数のガス流路用の張出し部を成形するとともに、金属板材の外周縁部にリブを形成したセパレータが示されている。このセパレータでは、リブの形成によって金属板材の周縁部の剛性が高められることにより、張出し部の成形にともなう反りの発生が抑制されるとしている。
【0005】
特許文献3には、第1工程で金属板材の中央部に複数のガス流路用の張出し部を成形した後、第2工程で張出し部の長手方向と平行となる金属板材の周辺部を固定して、張出し部の長手方向と直交する周辺部のみに張出し部の圧延方向と同方向への引張力を加えるようにした成形方法が示されている。この成形方法では、第1工程において金属板材の圧延に伴って発生した歪を、第2工程において加えられる引張力により引き伸ばして是正するとしている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、この実施形態の成形方法及び成形装置は、燃料電池用セパレータの製造において採用される。燃料電池用のセパレータとなる金属板材21は、その表裏両面に複数の襞状の張出し部22が等間隔おきで交互に成形されている。金属板材21の材質としては、耐腐食性に優れた材料が用いられ、例えば、チタン,チタン合金やステンレススチールが用いられる。この実施形態では、チタンが用いられる。
【0016】
図3に示すように、成形加工前のフラットな金属板材21は全体が均一な厚さであって、厚さαの値は、0.06〜0.20mmの範囲内であり、この実施形態では、0,10mmである。
図2に示すように、成形加工後の金属板材21は、全体が均一な厚さであって、その厚さαの値は、0.04〜0.18mmの範囲内であり、この実施形態では、0.08mmである。前記張出し部22の配列ピッチρは、0.80〜2.10mmの範囲内であって、この実施形態では1.30mmである。張出し部22の底面と頂面との間の高さβは0.40〜0.80mmの範囲内であって、この実施形態では0.60mmである。
【0017】
図2に示すように、各張出し部22は前記のように金属板材21の表裏両面側に形成され、頂部221と、その頂部221の両側に連なる傾斜状の側壁部222とを備え、断面ほぼ台形状となるように形成されている。各張出し部22は、隣接する他の張出し部22と上下逆の形状であって、下向きの張出し部22の頂部221は底部であるが、この底部も頂部221として説明する。頂部221は、その幅方向の中央部のフラットな平坦部223と、その幅方向の両端部の湾曲部224とを備えている。湾曲部224は、円弧状をなし、その内面側の曲率半径δは、0.08〜0.15mmの範囲内であって、この実施形態では、0,12mmである。
図6(b)に示すように、頂部221の平坦部223に対する側壁部222の角度θは、10〜30度の範囲内であって、この実施形態では15度である。
【0018】
そして、
図3及び
図9に示す第1成形型23を用いた第1工程と、
図5及び
図9に示す第2成形型24を用いた後工程の第2工程と、
図7及び
図9に示す第3成形型31を用いた後工程の第3工程とにより、金属板材21に対する張出し部22の成形が行われる。
【0019】
図3に示すように、前記第1工程で用いられる第1成形型23は、ダイ25とそのダイ25に対して接離可能に対応配置されたパンチ26とから構成されている。ダイ25の上面には、凹部251及び凸部252が等間隔おきで交互に設けられている。パンチ26の下面には、ダイ25の凹部251及び凸部252に対応する凸部261及び凹部262が等間隔おきで交互に設けられている。
【0020】
図3及び
図9に示すように、前記凹部251及び凸部252,凸部261及び凹部262の各配列ピッチρ1は、前記張出し部22の配列ピッチρよりやや狭
い。凹部251,262の深さ,すなわち凸部252,凸部261の高さβ1は、
図2に示す張出し部22の高さβから金属板材21の厚さを減じた値より小さい。前記凸部252,261の先端部は断面円弧状をなし、その曲率半径δ1は0.10〜0.30mmの範囲内であって、この実施形態では、0.15mmである。前記凹部251及び凹部262は、断面楕円形をなし、その長半径は0.75〜1.50mmの範囲内,短半径は0.25〜0.65mmの範囲内であって、この実施形態では長半径は1.00mmで、短半径が0.50mmである。
【0021】
図5及び
図6に示すように、前記第2工程の第2成形型24は、ダイ28とそのダイ28に対して接離可能に対応配置されたパンチ29とから構成されている。ダイ28の上面には、断面台形状の凹部281及び凸部282が等間隔おきで交互に設けられている。パンチ29の下面には、ダイ28の凹部281及び凸部282に対応する断面台形状の凸部291及び凹部292が等間隔おきで交互に設けられている。前記凹部281,292の形状は、前記張出し部22の外面側の形状と近似しており、前記凸部282,291の形状は、張出し部22の内面側の形状と近似している。ただし、凹部281,292の幅方向の両端部の曲率半径δ3は、張出し部22の外面側の幅方向の両端部の曲率半径δよりわずかに小さくなっている。また、前記凹部281,292の配列ピッチρ2,すなわち凸部282,291の配列ピッチρ2は、
図3に示す第1成形型23の配列ピッチρ1よりやや狭い
。さらに、前記凹部281,292及び凸部282,291の側壁部の傾斜角度θ1は20度である。
【0022】
図7及び
図8に示すように、前記第3工程の第3成形型31は、ダイ32とそのダイ32に対して接離可能に対応配置されたパンチ33とから構成されている。ダイ32の上面には、断面台形状の凹部321及び凸部322が等間隔おきで交互に設けられている。パンチ33の下面には、ダイ32の凹部321及び凸部322に対応する断面台形状の凸部331及び凹部332が等間隔おきで交互に設けられている。凹部321,332及び凸部322,331の配列ピッチρ3は、第2成形型24の配列ピッチよりやや広く、第1成形型23の配列ピッチρ1よりやや狭い
。図6(b)及び
図8(b)に示すように、第3成形型31のダイ32及びパンチ33における凹部321,332及び凸部322,331の側壁面の傾斜角度θ3は、前記第2成形型24の傾斜角度θ1よりも小さい15度である。第3成形型31のその他の寸法は第2成形型24とほぼ同じであるが、パンチ33の下死点位置におけるダイ32及びパンチ33の凸部322,331の側壁面間の隙間の寸法は第3成形型31が第2成形型24よりやや狭くなっている。
【0023】
次に、この実施形態の成形方法を説明する。まず、この成形方法における第1工程について説明する。
図3に示すように、第1工程においては、第1成形型23のダイ25上にフラットな厚さ0.10mmの金属板材21がセットされる。この状態で、
図4(a)及び(b)に示すように、パンチ26がダイ25に向かって接近移動される。このため、パンチ26の凸部261及び凹部262とダイ25の凹部251及び凸部252との間で金属板材21が所定間隔おきに裏面側及び表面側へ交互に張出されて、波形状の初期張出し部27が成形される。この成形時には、初期張出し部27の頂部271がパンチ26及びダイ25の凸部261,252の押圧により引き伸ばされ、その初期張出し部27の両側に側壁部272が形成される。なお、ダイ25の下死点位置において、ダイ25及びパンチ26の凹部251,262の内底部と金属板材21とは金属板材21に対して圧延力が作用しない程度,つまり成形圧力が付与されない程度で軽く当接すればよく、あるいは当接することなく、それらの間に空間が形成されてもよい。
【0024】
そして、このとき、
図4(b)から明らかなように、第1成形型23の凸部261,252の曲率半径が凹部262,251の曲率半径より小さくなっているため、前記側壁部272と凹部262,251の内側面との間に空間255,265が形成される。なお、これらの空間255,265は、必ずしも形成される必要はなく、パンチ26及びダイ25が金属板材21に全面で当接してもよいが、当接したとしても、金属板材21に圧延力,すなわち成形圧力が作用しない程度の小さな接触圧とする。このため、
図4(b)に矢印で示すように、その頂部271の部分が引き延ばされるとともに、頂部271の部分の材料が拘束されることなく側壁部272側に移動されて、頂部271の肉厚が0.09mm程度までに薄くなる。
【0025】
第2工程においては、
図5に示すように、初期張出し部27を形成した金属板材21が第2成形型24のダイ28上にセットされた状態で、パンチ29がダイ28に向かって接近移動される。このため、
図6(a)に示すように、パンチ29及びダイ28の凸部291,282により、初期張出し部27の頂部271が対向するダイ28及びパンチ29の凹部281,292内に向かって押圧される。このため、初期張出し部27がさらに絞られるように引き延ばし加工される。ただし、この場合、
図3及び
図4(a)(b)に示す成形加工開始からの引き延ばし量は、フラット状態の金属板材21に対して最大40%であり、好ましくは20%以下である。
【0026】
そして、その後、
図6(b)に示すように、パンチ29及びダイ28における凸部291,282の側壁面と、対向するダイ28及びパンチ29における凹部281,292の側壁面との間で初期張出し部27の側壁部272が挟圧される。このため、側壁部272が圧延されて、側壁部272の肉厚が0.08mm強まで薄くなるとともに、側壁部272の傾斜角度θ1が20度の張出し部22が成形される。
図6(b)の状態においては、凸部291,282と凹部281,292との間の張出し部27の頂部271には、凸部291,282の先端面と凹部281,292の内面が当接しているが、挟圧力はほとんど作用せず、その頂部271の肉厚が減じることはない。
【0027】
また、
図6(b)の状態では、金属板材21の剛性に基づいて、凸部291,282の付け根部と金属板材21との間、凸部291,282の先端面の中央部と張出し部27の頂部271の内面との間に空間275,276が形成される。ただし、これらの空間275,276が形成されず、金属板材21とパンチ29及びダイ28とが全面で当接してもよいが、その当接圧力は、金属板材21に対して変形を付与しない程度のレベルにする。そして、
図6(b)の状態においては、圧延によって側壁部272の肉厚が減じるため、材料が矢印で示すように、張出し部22の頂部271側に移動される。このため、
図6(a)の状態の絞り加工によって頂部271の肉厚が減じたとしても、側壁部272側からの材料の移動によって、肉厚の減じた分が補われる。この場合、前記のように空間275,276が形成されるため、側壁部272から頂部271への材料の移動が円滑に行なわれる。そして、
図6(b)の状態では、このようにして、
図6(b)に矢印で示すように、初期張出し部27の側壁部272の材料が頂部271側に移動されて、成形される張出し部22の頂部221及び側壁部222の肉厚が0.08強mmに均一化される。
【0028】
以上のように、張出し部22を交互に形成するとともに、厚さを減じた金属板材21が加工される。そして、第1工程では、金属板材21の引き延ばしによる薄肉化と成形とが行なわれる。また、第2工程においては、金属板材21の圧延による材料移動によって薄肉化と成形とが行なわれる。
【0029】
そして、第3工程においては、
図7に示すように、張出し部22を形成した金属板材21が第3成形型31のダイ32上にセットされた状態で、パンチ33がダイ32に向かって接近移動される。すると、
図8(a)及び(b)に示すように、パンチ33及びダイ32における凸部331,322の側壁面と、対向するダイ32及びパンチ33における凹部321,332の側壁面との間で、張出し部22の側壁部222が圧延されるとともに、起立方向に整形される。これにより、張出し部22の側壁部222の傾斜角度θ3が15度に低減されるとともに、張出し部22の頂部221が幅方向に拡げられる。
【0030】
そして、このとき、金属板材21の剛性に基づき、凸部291,282の付け根部と金属板材21との間、凸部291,282の先端面の中央部と張出し部27の頂部271の内面との間に空間275,276が形成される。ただし、これらの空間275,276が形成されず、金属板材21とパンチ29及びダイ28とが全面で当接してもよいが、その当接圧力は、金属板材21に対して変形を付与しない程度のレベルにする。そして、
図8(b)の状態においては、圧延によって側壁部272の肉厚が減じるため、材料が矢印で示すように張出し部22の頂部271側に移動される。このため、
図8(a)の状態において頂部271が幅方向に拡げられてその肉厚が減じたとしても、側壁部272側からの材料の移動によって、減じた分が補われる。従って、頂部271の肉厚が極端に薄くなることはなく、しかも、頂部271には、引き延ばし力はほとんど作用しない。このようにして、張出し部22の肉厚が0.08mmに均一化される。そして、この場合も、前記のように空間275,276が形成されるため、側壁部272から頂部271への材料の移動が円滑に行なわれる。
【0031】
前記の第1〜第3工程において、第2工程で用いられる第2成形型24のパンチ29における張出し部成形用の凸部291及び凹部292の配列ピッチρ2が、前工程の第1工程で用いられる第1成形型23のパンチ26における張出し部成形用の凸部261及び凹部262の配列ピッチρ1より狭くなるように設定されている。当然、図示はしないが、第2成形型24のダイ28における凹部281及び凸部282の配列ピッチρ2も、第1工程で用いられる第1成形型23のダイ25における凹部251及び凸部252の配列ピッチρ1より狭くなるように設定されている。
【0032】
そして、第2工程において第2成形型24により初期張出し部27の側壁部272が圧延されて、初期張出し部27の材料内部で周長に伸びが発生するが、その周長の伸び量が前記ダイ28及びパンチ29における凹部281,292及び凸部282,291の配列ピッチρ2を狭くしたことによって補正される。つまり、第2工程の成形における初期張出し部27の周長の伸び量を見込んで、配列ピッチρ2の狭い凹部281,292及び凸部282,291により、初期張出し部27の側壁部272が圧延される。これにより、反りやうねりを抑えた張出し部22が成形される。
【0033】
また、第3工程で用いられる第3成形型31のダイ32及びパンチ33における凹部321,332及び凸部322,331の配列ピッチρ3が、第2成形型24のダイ28及びパンチ29における凹部281,292及び凸部282,291の配列ピッチρ2より広くされている。それとともに、第3工程で用いられる第3成形型31のダイ32及びパンチ33における凹部321,332及び凸部322,331の配列ピッチρ3が、第1工程で用いられる第1成形型23のダイ25及びパンチ26における凹部251,262及び凸部252,261の配列ピッチρ1より狭くされている。
【0034】
この第3工程においては、第3成形型31のダイ32及びパンチ33により、張出し部22の側壁部222が圧延されることなく起立方向に整形されるのみであるため、張出し部22の材料内部で周長に大きな伸びが発生することはない。このため、第3成形型31の配列ピッチρ3が第2成形型24の配列ピッチρ2と第1成形型23の配列ピッチρ1との間の値に設定されて、起立整形される張出し部22の最終の配列ピッチが第1成形型23の配列ピッチρ1に近づけられる。
【0035】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態において、第1工程においては、第1成形型23により金属板材21に初期張出し部27をその頂部271が他の部分より薄くなるように引き延ばしによって成形する。次の第2工程及び第3工程においては、第2成形型24により初期張出し部27の側壁部272を圧延して、前記張出し部22を成形する。
【0036】
このため、この実施形態では、第1工程に続く第2工程及び第3工程において第2成形型24及び第3成形型31により初期張出し部27の側壁部272が圧延されるとき、側壁部272の材料が頂部271側に移動される。よって、金属板材21の張出し部22の引き延ばし成形が、初期の張出し部27の成形を除いて圧延によって達成される。言い換えれば、引き延ばし成形は第1工程において行なわれ、他の工程は圧延工程である。従って、材料破断を招きやすい引き延ばし成形の割合を少なくできるため、金属板材21の破断を防止できる。従って、張出し部22が高くても、あるいは頂部271の幅が広くても金属板材21を破断することなく成形することができる。ちなみに、張出し部22が高く、頂部271の幅が広いほうが、冷却水やガス等を案内する機能が優れ、燃料電池のセパレータとして好ましい。
【0037】
(2) この実施形態では、前記のように、金属板材21を引き延ばしにより薄肉化するのは、第1工程だけで、その後の薄肉化は金属板材21を圧延して実行するため、金属板材21の破断を防止することができる。しかも、第1工程では、全長に対して20%しか引き延ばしをしないだけではなく、第2工程の圧延によって引き延ばされた部分に対して材料を移動させるため、さらに有効な破断防止効果を得ることができる。ちなみに、従来工法におけるピンホールやクラック等の破断発生による不良率は、10〜20%であったが、実施形態の工法によれば、0.02%まで低下した。
【0038】
(3) この実施形態では、張出し部27の引き延ばし成形された頂部271に対して側壁部272を圧延して材料を頂部271に供給するため、均一な肉厚の張出し部22を成形することができるとともに、引き延ばしによって形成された頂部271に材料を戻すことができる。このため、応力の集中を緩和できて、成形品の強度分布や応力分布のバランスが良好になり、前記と同様に破断に対する強度を高めることができるとともに、成形品の反りや歪みを抑制できて、高精度な成形品とすることができる。
【0039】
(4) この実施形態では、襞状の張出し部22を金属板材21の表裏に交互に形成している。このため、この成形品を燃料電池用セパレータとして用いた場合、両側の襞状の張出し部22によってセパレータの表裏両面にガス流路を有効に形成することができる。
【0040】
(5) この実施形態では、前記第1実施形態の第2工程の成形に続いて、第3工程において第3成形型31により張出し部22の側壁部222を起立方向に整形している。このため、この成形品を燃料電池用セパレータとして用いた場合、張出し部22の側壁部222の起立整形により、セパレータ上に設けられるガス流路の断面積を拡張することができる。
【0041】
(6) この実施形態では、第3工程において第3成形型31により張出し部22の頂部221を拡げている。このため、この成形品を燃料電池用セパレータとして用いた場合、張出し部22の頂部221の拡張により、他の接合プレートに対する張出し部22の頂部221の接合面積を大きく確保することができて、接合強度を高めることができる。これによって、セパレータの内側に設けられる発電部材への面圧が分散され、発電部材が破断しにくくなるとともに、セパレータ上に設けられるガスや冷却水等の流路の断面積を拡張することができて、発電効率が向上する。
【0042】
(7) この実施形態では、第2工程で用いられる第2成形型24のダイ28及びパンチ29における張出し部成形用の凹部281,292及び凸部282,291の配列ピッチρ2が、第1工程で用いられる第1成形型23のダイ25及びパンチ26における張出し部成形用の凹部251,262及び凸部252,261の配列ピッチρ1より狭くれている。
【0043】
このため、第2工程において第2成形型24により初期張出し部27の側壁部272が圧延される際に、初期張出し部27の材料内部で周長に伸びが発生しても、その周長の伸び量を第2成形型24における配列ピッチρ2の狭小によって補正することができる。よって、初期張出し部27の側壁部272の圧延にともなう周長の伸びにより、成形品に反りやうねりが発生するおそれを抑制することができる。
【0044】
(8) この実施形態では、第3工程で用いられる第3成形型31のダイ32及びパンチ33における凹部321,332及び凸部322,331の配列ピッチρ3が、第2成形型24の配列ピッチρ2より広くなるとともに、第1成形型23のダイ25及びパンチ26における凹部251,262及び凸部252,261の配列ピッチρ1より狭くされている。
【0045】
このため、成形にともなう金属板材21の延びを見込んで金属板材21を成形できるため、所要寸法の製品を高精度に成形できる。
(変更例)
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0046】
・ 金属板材21を燃料電池のセパレータ以外の他の用途,例えば放熱板の用途に用いること。
・ 前記第3工程に続いて、第4工程あるいはそれ以上の工程を実行すること。第4工程以上の工程としては、張出し部22の側壁部222をさらに起立させたり、所要箇所に孔をあけたりすることが考えられる。
【0047】
・ 第1工程の前に別工程を設けること。この別工程としては、研磨工程や、孔あけ工程等が考えられる。
・ 単一の張出し部のみを設けた金属板材に対して前記実施形態の成形方法を実施すること。
【0048】
・ 張出し部を前記実施形態とは別の用途に用いること。例えば、隣接する他の部材とのシール部を構成する突部等が具体化される。
・ パンチとダイと上下入れ換えること。