(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷凍サイクル装置(10)にて高圧冷媒を放熱させる放熱器(12)から流出した冷媒を前記旋回空間(30b)内へ導く冷媒流入通路(30a)を形成する流入通路形成部材(34)を備え、
前記冷媒流入通路(30a)を流通する冷媒と前記気液分離空間(30h)内の冷媒が熱交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエジェクタ。
前記駆動手段(37)は、温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入された封入空間(37b)および前記封入空間(37b)内の前記感温媒体の圧力に応じて変位する圧力応動部材(37a)を有して構成され、
前記ボデー(30)には、前記吸引冷媒を流入させる流入空間(30e)が形成されており、
前記感温媒体は、少なくとも前記流入空間(30e)内の冷媒の温度が伝達されることによって圧力変化するものであることを特徴とする請求項6に記載のエジェクタ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1〜
図4を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ13は、
図1の全体構成図に示すように、冷媒減圧手段としてエジェクタを備える冷凍サイクル装置、すなわち、エジェクタ式冷凍サイクル10に適用されている。さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置に適用されており、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。
【0023】
また、エジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0024】
エジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。具体的には、本実施形態の圧縮機11は、1つのハウジング内に固定容量型の圧縮機構11a、および圧縮機構11aを駆動する電動モータ11bを収容して構成された電動圧縮機である。
【0025】
この圧縮機構11aとしては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。また、電動モータ11bは、後述する制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。
【0026】
また、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介して車両走行用エンジンから伝達された回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機であってもよい。この種のエンジン駆動式の圧縮機としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機等を採用することができる。
【0027】
圧縮機11の吐出口側には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dにより送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
【0028】
より具体的には、この放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮部12a、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄えるレシーバ部12b、およびレシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風される外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する過冷却部12cを有して構成される、いわゆるサブクール型の凝縮器である。
【0029】
冷却ファン12dは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口側には、エジェクタ13の冷媒流入口31aが接続されている。
【0030】
エジェクタ13は、放熱器12から流出した過冷却状態の高圧液相冷媒を減圧させて下流側へ流出させる冷媒減圧手段としての機能を果たすとともに、高速度で噴射される冷媒の吸引作用によって後述する蒸発器14から流出した冷媒を吸引(輸送)して循環させる冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能を果たす。さらに、本実施形態のエジェクタ13は、減圧させた冷媒の気液を分離する気液分離手段としての機能も果たす。
【0031】
エジェクタ13の具体的構成については、
図2、
図3を用いて説明する。なお、
図2における上下の各矢印は、エジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に搭載した状態における上下の各方向を示している。
【0032】
本実施形態のエジェクタ13は、
図2に示すように、複数の構成部材を組み合わせることによって構成されたボデー30を備えている。このボデー30は、角柱状の金属もしくは樹脂等にて形成されてエジェクタ13の外殻を形成するハウジングボデー31、ハウジングボデー31の内部に固定された、アッパーボデー32、ミドルボデー33、ロワーボデー34等によって構成されている。
【0033】
より具体的には、ハウジングボデー31の内部には、その軸方向が鉛直方向(上下方向)に延びる円柱状の空間が形成されている。この円柱状の空間は、上方側が閉塞されており、下方側が外部に開口している。そして、この円柱状の空間の内周壁面に、上方側から順に、アッパーボデー32、ミドルボデー33、ロワーボデー34の外周側が圧入によって固定されている。
【0034】
また、ハウジングボデー31には、放熱器12から流出した冷媒を内部へ流入させる冷媒流入口31a、蒸発器14から流出した冷媒を吸引する冷媒吸引口31b、ボデー30の内部に形成された気液分離空間30hにて分離された液相冷媒を蒸発器14の冷媒入口側へ流出させる液相冷媒流出口31c、および気液分離空間30hにて分離された気相冷媒を圧縮機11の吸入側へ流出させる気相冷媒流出口31d等が形成されている。
【0035】
さらに、
図2に示すように、冷媒流入口31aは、気相冷媒流出口31dの鉛直方向下方側に配置され、液相冷媒流出口31cは、冷媒吸引口31bの鉛直方向下方側に配置されている。また、
図3に示すように、冷媒流入口31aと液相冷媒流出口31cは、ハウジングボデー31の内部に形成された円柱状の空間の中心軸に対して対称となる位置に開口している。同様に、気相冷媒流出口31dと冷媒吸引口31bについても、中心軸に対して対称となる位置に開口している。
【0036】
まず、ハウジングボデー31に形成された流入出口31a〜31dのうち、冷媒流入口31aは、ミドルボデー33の下方側とロワーボデー34の上方側との間に形成される空間に連通している。この空間は、放熱器12から流出した冷媒をボデー30の内部に形成された旋回空間30bへ導く冷媒流入通路30aを構成している。
【0037】
ミドルボデー33は、
図2の一点鎖線で示す中心軸方向から見たときに円形状に形成されて、中心部に表裏を貫通する貫通穴が形成された下側円板状部材33aおよび上側円板状部材33b、並びに、下側円板状部材33aと上側円板状部材33bとの間に配置されて、下側円板状部材33aと上側円板状部材33bとを連結する円筒状部材33cを有して構成されている。
【0038】
下側円板状部材33aは、平板状に形成されており、外周部がハウジングボデー31の内周壁面に固定されている。円筒状部材33cは、下側円板状部材33aからロワーボデー34の反対側(すなわち、上方側)に突出しており、内部に円柱状の空間を形成している。この空間は、内部へ流入した冷媒を中心軸周りに旋回させる旋回空間30bを構成している。
【0039】
円筒状部材33cの内部に形成された円柱状の空間(旋回空間30b)の中心軸は、ハウジングボデー31の内部に形成された円柱状の空間の中心軸と同軸上に配置されている。さらに、旋回空間30bの外径は、下側円板状部材33aの貫通穴の径と同等に形成されている。
【0040】
これに対して、上側円板状部材33bの貫通穴の径は、旋回空間30bの外径よりも小さく形成されている。また、上側円板状部材33bの貫通穴も、旋回空間30bの中心軸と同軸上に配置されている。さらに、上側円板状部材33bの外径は、下側円板状部材33aの外径よりも小さく、かつ、円筒状部材33cの外径よりも大きく形成されている。
【0041】
また、上側円板状部材33bの上方側には、2つの円錐状部材の底面同士を貼り合わせた形状(そろばん玉状の形状)に形成された冷媒通路形成部材35が配置されている。この冷媒通路形成部材35は、上側円板状部材33bの貫通穴内に形成される最小通路面積部33dにおける通路断面積を変化させるとともに、上側円板状部材33bの貫通穴から流出した冷媒の流れ方向を径方向外周側へ向ける冷媒通路を形成する機能を果たす。
【0042】
より具体的には、冷媒通路形成部材35は、その中心軸が旋回空間30bの中心軸と同軸上に配置されており、下方側の頂部に配置された先細先端部35aが上側円板状部材33bの貫通穴の内部に挿入されている。これにより、上側円板状部材33bの貫通穴と冷媒通路形成部材35の下方側の先端部との間に、冷媒通路面積が最も縮小した最小通路面積部33dが形成されている。
【0043】
さらに、上側円板状部材33bの貫通穴と先細先端部35aとの間には、最小通路面積部33dよりも冷媒流れ上流側に形成されて最小通路面積部33dに至るまでの冷媒通路面積が徐々に縮小する先細空間30cが形成されている。また、上側円板状部材33bの上面と冷媒通路形成部材35の下方側の円錐状の外周壁面との間には、冷媒通路面積を徐々に拡大させる末広空間30dが形成されている。
【0044】
本実施形態では、このように先細空間30cおよび末広空間30dを形成することによって、先細空間30cから末広空間30dへ至る冷媒通路の通路断面積を、ラバールノズルと同様に変化させている。そして、先細空間30cから末広空間30dへ至る冷媒通路にて、気液混合状態の冷媒の流速を二相音速より高い値となるように加速して、末広空間30dから径方向外周側へ向かって噴射している。
【0045】
従って、先細空間30cから末広空間30dへ至る冷媒通路は、ノズルとして機能するノズル通路を構成している。また、このノズル通路は、上側円板状部材33bと冷媒通路形成部材35との間に形成されているので、中心軸方向に垂直な断面が円環状(円形状から同軸上に配置された小径の円形状を除いたドーナツ形状)に形成されている。
【0046】
一方、冷媒通路形成部材35の上方側の頂部には、ハウジングボデー31の上面に配置された、ステッピングモータからなる電動アクチュエータ36のシャフト36aが連結されている。この電動アクチュエータ36は、冷媒通路形成部材35を上下方向に変位させる駆動手段であって、制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0047】
従って、電動アクチュエータ36が、冷媒通路形成部材35を上方側へ変位させると、上側円板状部材33bの貫通穴内に挿入された先細先端部35aが上方側へ移動して、最小通路面積部33dにおける通路断面積が増加する。また、電動アクチュエータ36が、冷媒通路形成部材35を下方側へ変位させると、先細先端部35aが下方側へ移動して、最小通路面積部33dにおける通路断面積が減少する。
【0048】
ロワーボデー34は、中心軸方向から見たときに円形状に形成された平板状部材であり、ロワーボデー34の板面は下側円板状部材33aの板面と平行に配置されている。さらに、ロワーボデー34の外周部は、ハウジングボデー31の内周壁面に固定されている。また、ロワーボデー34には、ミドルボデー33側(すなわち、上方側)へ突出する複数の整流板34aが形成されている。
【0049】
これらの複数の整流板34aは、
図3に示すように、円筒状部材33cの内部に形成された円柱状の空間の外周に沿って環状に配置されている。さらに、これらの整流板34aの板面は、中心軸方向から見たときに外周側から内周側へ向かう冷媒の流れを中心軸回りに旋回させるように傾斜あるいは湾曲している。
【0050】
従って、冷媒流入口31aを介して冷媒流入通路30aへ冷媒を流入させると、この冷媒は、冷媒流入通路30aの外周側から内周側へ向かって流れる際に、複数の整流板34aの板面に沿って流れる。これにより、複数の整流板34aの内周側の空間、すなわち円筒状部材33cの内部に形成された円柱状の旋回空間30bへ流入する冷媒に旋回流れを生じさせることができる。
【0051】
そして、旋回空間30bで旋回する冷媒が、ミドルボデー33の上側円板状部材33bと冷媒通路形成部材35との間に形成されたノズル通路を通過する際に減圧されて、径方向外周側へ向かって噴射される。なお、末広空間30dから噴射される冷媒は、旋回空間30bにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。
【0052】
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、冷媒流入口31aから冷媒流入通路30aへ冷媒を流入させる際に、冷媒を冷媒流入通路30aの外周の接線方向に流入させることで、旋回空間30bへ流入する冷媒の旋回流れを促進している。
【0053】
ここまでの説明から明らかなように、ロワーボデー34は、特許請求の範囲に記載された流入通路形成部材を構成しており、円筒状部材33cは、旋回空間形成部材を構成しており、ミドルボデー33の上側円板状部材33bは、ノズル通路形成部材を構成しており、冷媒通路形成部材35の先細先端部35aは、面積調整部材を構成している。
【0054】
つまり、本実施形態では、旋回空間形成部材およびノズル通路形成部材が、ボデー30(具体的には、ミドルボデー33)に一体的に構成されている。もちろん、ミドルボデー33を複数の部材で構成し、旋回空間形成部材およびノズル通路形成部材をボデー30に対して別部材で構成してもよい。さらに、本実施形態では、面積調整部材が、冷媒通路形成部材35に一体的に構成されている。
【0055】
ここで、本実施形態の旋回空間30bは円柱状に形成されているので、旋回空間30b内では、冷媒が旋回することによって生じる遠心力の作用によって、中心軸側の冷媒圧力が外周側の冷媒圧力よりも低下する。そこで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、旋回空間30b内の中心軸側の冷媒圧力を、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させるようにしている。
【0056】
このような旋回空間30b内の中心軸側の冷媒圧力の調整は、複数の整流板34aの数量や傾斜角度を調整すること、あるいは、複数の整流板34aの配置を調整すること(例えば、増速翼列配置にすること)等によって行うことができる。
【0057】
次に、ハウジングボデー31に形成された流入出口31a〜31dのうち、冷媒吸引口31bは、ハウジングボデー31の上面の下方側とアッパーボデー32の上方側との間に形成される空間に連通している。この空間は、冷媒吸引口31bから吸引された冷媒を流入させる流入空間30eを構成しており、この流入空間30eも円柱状の空間として形成され、その中心軸は旋回空間30bの中心軸等と同軸上に配置されている。
【0058】
さらに、本実施形態では、冷媒吸引口31bから流入空間30eへ冷媒を流入させる際に、冷媒を流入空間30eの外周の接線方向に流入させることで、流入空間30e内の冷媒を旋回空間30b内の冷媒と同方向に旋回させている。なお、前述した電動アクチュエータ36のシャフト36aは、流入空間30eの中心部を上下方向に貫通するように配置されている。
【0059】
アッパーボデー32は、中心軸方向から見たときに円形状に形成されて、中心部に表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状部材である。さらに、アッパーボデー32の外周部は、ハウジングボデー31の内周壁面に固定されている。
【0060】
アッパーボデー32の下方側には、前述の冷媒通路形成部材35が配置されている。そして、アッパーボデー32の下面と冷媒通路形成部材35の上方側の円錐状の外周壁面との間には、流入空間30eと冷媒通路形成部材35の下方側に形成された末広空間30dの冷媒出口側とを連通させる吸引通路30fが形成されている。この吸引通路30fは、中心軸方向に垂直な断面が円環状に形成されており、流入空間30e側から流入した冷媒を径方向外周側へ向けて流出させる。
【0061】
さらに、冷媒通路形成部材35の外周側であって、ミドルボデー33の上側円板状部材33bの上面とアッパーボデー32の下面との間には、末広空間30dから噴射された噴射冷媒と、冷媒吸引口31bから流入空間30eおよび吸引通路30fを介して吸引された吸引冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧空間としてのディフューザ空間30gが形成されている。
【0062】
このディフューザ空間30gは、中心軸方向に垂直な断面が円環状に形成されており、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒が内周側から外周側へ向かって流れる。従って、混合冷媒の流れ方向に向かって冷媒通路面積を徐々に拡大させて、混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギへ変換させて混合冷媒を昇圧させることができる。
【0063】
なお、末広空間30dからディフューザ空間30gへ噴射される噴射冷媒、および吸引通路30fからディフューザ空間30gへ流入する吸引冷媒は、いずれも旋回空間30bにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。従って、ディフューザ空間30gを流通する冷媒およびディフューザ空間30gから流出する冷媒についても、旋回空間30bにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。
【0064】
このように噴射冷媒と吸引冷媒が互いに同方向に流れる速度成分を有していることにより、ディフューザ空間30gにて噴射冷媒と吸引冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させることができる。
【0065】
ディフューザ空間30gの外周側には、ディフューザ空間30gから流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間30hが形成されている。この気液分離空間30hは、ハウジングボデー31内に形成された空間のうち、アッパーボデー32の下方側から、ミドルボデー33の下側円板状部材33aの上方側の至る範囲に円筒状に形成されている。
【0066】
前述の如く、ディフューザ空間30gから流出する冷媒は、旋回空間30bにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。従って、この気液分離空間30h内では遠心力の作用によって冷媒の気液が分離されることになり、分離された液相冷媒は、気液分離空間30hの下方側に貯留される。
【0067】
ここで、
図2に示すように、気液分離空間30hの底面は、ミドルボデー33の下側円板状部材33aによって形成されており、気液分離空間30hの中心部には、ミドルボデー33の円筒状部材33cが配置されている。
【0068】
そこで、本実施形態では、ミドルボデー33を伝熱性に優れる金属(例えば、アルミニウム)あるいは熱伝導性樹脂等で形成することによって、気液分離空間30h内の液相冷媒と円筒状部材33cの内部に形成される旋回空間30b内の冷媒との熱交換を可能とし、さらに、気液分離空間30h内の液相冷媒と下側円板状部材33aの下方側に形成される冷媒流入通路30aを流通する冷媒との熱交換を可能としている。
【0069】
また、ハウジングボデー31に形成された流入出口31a〜31dのうち、液相冷媒流出口31cは、気液分離空間30hの下方側に連通して、気液分離空間30hにて分離された液相冷媒を流出させる。また、気相冷媒流出口31dは、気液分離空間30hの上方側に連通して、気液分離空間30hにて分離された液相冷媒を流出させる。
【0070】
さらに、液相冷媒流出口31cには、
図1に示すように、蒸発器14の入口側が接続されている。蒸発器14は、エジェクタ13にて減圧された低圧冷媒と送風ファン14aから車室内へ送風される送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。
【0071】
送風ファン14aは、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。蒸発器14の出口側には、エジェクタ13の冷媒吸引口31bが接続されている。さらに、エジェクタの13の気相冷媒流出口31dには、圧縮機11の吸入側が接続されている。
【0072】
次に、図示しない制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この制御装置は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、上述の各種電気式の制御対象機器11b、12d、14a、36等の作動を制御する。
【0073】
また、制御装置には、車室内温度を検出する内気温センサ、外気温を検出する外気温センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、蒸発器14の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、放熱器12出口側冷媒の温度を検出する出口側温度センサおよび放熱器12出口側冷媒の圧力を検出する出口側圧力センサ等の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
【0074】
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が制御装置へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
【0075】
なお、本実施形態の制御装置は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、本実施形態では、圧縮機11の電動モータ11bの作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が吐出能力制御手段を構成している。
【0076】
次に、上記構成における本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の作動を
図4のモリエル線図を用いて説明する。まず、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が圧縮機11の電動モータ11b、冷却ファン12d、送風ファン14a、冷媒通路形成部材35を変位させる電動アクチュエータ36等を作動させる。これにより、圧縮機11が冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。
【0077】
圧縮機11から吐出された高温高圧状態の気相冷媒(
図4のa4点)は、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された送風空気(外気)と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて放熱した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された送風空気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる(
図4のa4点→b4点)。
【0078】
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒は、エジェクタ13の先細空間30cから末広空間30dへ至る冷媒通路によって形成されるノズル通路にて等エントロピ的に減圧されて、末広空間30dから噴射される(
図4のb4点→c4点)。この際、制御装置は、蒸発器14出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定値に近づくように、電動アクチュエータ36の作動を制御する。
【0079】
そして、末広空間30dから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、蒸発器14から流出した冷媒が冷媒吸引口31b、流入空間30eおよび吸引通路30fを介して吸引される。さらに、末広空間30dからから噴射された噴射冷媒と吸引通路30f等を介して吸引された吸引冷媒は、ディフューザ空間30gへ流入する(
図4のc4点→d4点、h4点→d4点)。
【0080】
ディフューザ空間30gでは冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する(
図4のd4点→e4点)。ディフューザ空間30gから流出した冷媒は気液分離空間30hにて気液分離される(
図4のe4点→f4点、e4点→g4点)。
【0081】
気液分離空間30hにて分離された液相冷媒は液相冷媒流出口31cから流出して、蒸発器14へ流入する。蒸発器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発し、送風空気が冷却される(
図4のg4点→h4点)。一方、気液分離空間30hにて分離された気相冷媒は気相冷媒流出口31dから流出して、圧縮機11へ吸入され再び圧縮される(
図4のf4点→a4点)。
【0082】
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、以上の如く作動して、車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10では、ディフューザ空間30gにて昇圧された冷媒を圧縮機11に吸入させるので、圧縮機11の駆動動力を低減させて、サイクル効率(COP)を向上させることができる。
【0083】
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、放熱器12としてサブクール型の凝縮器を採用しているので、通常の運転条件では、エジェクタ13へ流入させる冷媒を過冷却液相冷媒とすることができる。従って、本実施形態のエジェクタ13によれば、以下に説明するように、従来技術のノズル効率に相当するエネルギ変換効率を効果的に向上させることができる。
【0084】
つまり、本実施形態のエジェクタ13によれば、旋回空間30bにて過冷却液相冷媒を旋回させて、旋回空間30b内の旋回中心側の冷媒圧力を、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させることができる。これにより、旋回空間30b内の冷媒を、旋回中心軸の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在する気液混合状態とすることができる。
【0085】
そして、このように旋回中心軸側に気相冷媒が偏在する気液混合状態の冷媒を、先細空間30cから末広空間30dへ至る冷媒通路によって形成されるノズル通路へ流入させることで、先細空間30cにて壁面沸騰および界面沸騰によって液相冷媒の沸騰を促進することができる。これにより、最小通路面積部33dの近傍の冷媒の状態を、気相冷媒と液相冷媒が均質に混合した理想的な気液混合状態とすることができる。
【0086】
さらに、この理想的な気液混合状態となった冷媒に閉塞(チョーキング)を生じさせて、冷媒の流速を二相音速以上となるまで加速することができる。そして、二相音速以上となった冷媒を、末広空間30dへ流入させることで、通路面積の拡大によって、さらに加速することができる。これにより、ノズル通路にて冷媒の圧力エネルギを速度エネルギへ変換する際のエネルギ変換効率(従来技術のノズル効率に相当)を効果的に向上させることができる。
【0087】
ところが、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10のように、放熱器12としてサブクール型の凝縮器を採用する構成であっても、例えば、外気温が比較的高くなる運転条件等では、放熱器12にて冷媒を過冷却液相状態となるまで冷却することができず、エジェクタ13に比較的乾き度の高い気液二相冷媒が流入してしまうことがある。
【0088】
そして、旋回空間30bへ比較的乾き度の高い気液二相冷媒が流入してしまうと、旋回空間30bからノズル通路へ流入する気液混合状態の冷媒における液相冷媒の割合が低下して、最小通路面積部33dの近傍で沸騰させることのできる液相冷媒の量が減ってしまうおそれがある。その結果、ノズル通路から噴射される噴射冷媒を充分に増速させることができなくなり、ノズル通路におけるエネルギ変換効率を充分に向上させることができなくなってしまうおそれがある。
【0089】
これに対して、本実施形態のエジェクタ13によれば、旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒が熱交換可能に構成されているので、ノズル通路にて減圧されて温度低下した気液分離空間30h内の冷媒によって、旋回空間30b内の冷媒を冷却することができる。
【0090】
従って、旋回空間30bへ流入する冷媒が、比較的乾き度の高い気液二相冷媒になっていても、旋回空間30b内でこの冷媒の乾き度を低下させることができ、ノズル通路へ流入する気液混合状態の冷媒の液相冷媒の割合が低下してしまうことを抑制できる。これにより、最小通路面積部33dの近傍で沸騰させることのできる液相冷媒の量が減ってしまうことを抑制できる。
【0091】
その結果、旋回空間30bへ流入する冷媒の状態によらず、ノズル通路から噴射される噴射冷媒を充分に増速させることができ、ノズル通路におけるエネルギ変換効率を充分に向上させることができる。
【0092】
さらに、本実施形態では、旋回空間30bを、旋回空間形成部材を構成する円筒状部材33cの内周側に形成し、気液分離空間30hを、円筒状部材33cの外周側に形成しているので、極めて容易に旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒とを熱交換可能とする構成を実現できる。
【0093】
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒が熱交換可能に構成されていることに加えて、冷媒流入通路30aを流通する冷媒と気液分離空間30h内の冷媒が熱交換可能に構成されているので、より一層、効果的に旋回空間30b内の冷媒を冷却することができる。その結果、ノズル通路におけるエネルギ変換効率を確実に向上させることができる。
【0094】
さらに、本実施形態では、冷媒流入通路30aを、気液分離空間30hの鉛直方向下方側に形成しているので、極めて容易に旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の液相冷媒とを熱交換可能とする構成を実現できる。
【0095】
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、噴射冷媒の流れ方向および吸引冷媒の流れ方向を中心軸側から外周側へ導く冷媒通路形成部材35を備え、ディフューザ空間30gの形状を、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒が中心軸側から外周側へ流れる形状としている。
【0096】
これにより、従来技術の如く、ディフューザ空間30gがノズルの軸線方向に延びる形状に形成される構成に対して、ディフューザ空間の中心軸方向の寸法が拡大してしまうことを抑制できる。その結果、エジェクタ13全体としての体格の大型化を抑制できる。
【0097】
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、駆動手段としての電動アクチュエータ36を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて面積調整部材である先細先端部35aを変位させて、最小通路面積部33dにおける通路断面積を調整することができる。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じてエジェクタ13を適切に作動させることができる。
【0098】
ここで、本実施形態の末広空間30dは、ロワーボデー34の上側円板状部材33bの上面と冷媒通路形成部材35の下方側の円錐状の外周壁面との間に形成され、吸引通路30fは、アッパーボデー32の下面と冷媒通路形成部材35の上方側の円錐状の外周壁面との間に形成されている。従って、電動アクチュエータ36が先細先端部35aを変位させるために冷媒通路形成部材35を変位させると、末広空間30dおよび吸引通路30fの冷媒通路面積も変化してしまう。
【0099】
これに対して、本実施形態では、電動アクチュエータ36が冷媒通路形成部材35を変位させた際の末広空間30dおよび吸引通路30fの通路断面積の変化度合が、最小通路面積部33dにおける通路断面積の変化度合よりも充分小さく設定されているので、末広空間30dおよび吸引通路30fの通路断面積の変化がエジェクタ13のエネルギ変換効率に及ぼす影響は少ない。
【0100】
また、本実施形態のエジェクタ13では、圧縮機11の吐出口側に接続される冷媒流入口31aおよび圧縮機11の吸入側に接続される気相冷媒流出口31dをハウジングボデー31の同一の側面に配置し、この面に対向する側面に蒸発器14の冷媒入口側へ接続される液相冷媒流出口31cおよび蒸発器14の冷媒出口側へ接続される冷媒吸引口31bを配置している。
【0101】
さらに、冷媒流入口31aを気相冷媒流出口31dの鉛直方向下方側に配置して、液相冷媒流出口31cを冷媒吸引口31bの鉛直方向下方側に配置している。このような流入出口31a〜31dの配置は、一般的な車両用空調装置に適用される冷凍サイクル装置の減圧装置であるボックス型の温度式膨張弁における流入出口の配置と同様である。従って、本実施形態のエジェクタは、一般的な車両用空調装置に適用される冷凍サイクル装置の減圧装置として用いる際に高い取付互換性を発揮できる。
【0102】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、
図5に示すように、面積調整部材である先細先端部35aを変位させる駆動手段の構成を変更した例を説明する。なお、
図5では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。本実施形態の駆動手段37は、アッパーボデー32の内部であって、流入空間30eの下方側、かつ、アッパーボデー32の中心部に設けられた貫通穴の外周側に配置されている。
【0103】
この駆動手段37は、圧力応動部材である円形薄板状のダイヤフラム37aを有して構成されている。より詳細には、
図5に示すように、ダイヤフラム37aは、アッパーボデー32の内部に形成された円柱状の空間を上下の2つの空間に仕切るように、溶接等の手段によって固定されている。
【0104】
ダイヤフラム37aによって仕切られた2つの空間のうち上方側(流入空間30e側)の空間は、蒸発器14流出冷媒の温度に応じて圧力変化する感温媒体が封入される封入空間37bを構成している。この封入空間37bには、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒と同一組成の感温媒体が予め定めた密度となるように封入されている。従って、本実施形態における感温媒体は、R134aとなる。
【0105】
一方、ダイヤフラム37aによって仕切られた2つの空間のうち下方側の空間は、図示しない連通路を介して、蒸発器14流出冷媒を導入させる導入空間37cを構成している。従って、封入空間37bに封入された感温媒体には、流入空間30eと封入空間37bとを仕切る蓋部材37dおよびダイヤフラム37aを介して、蒸発器14流出冷媒の温度が伝達される。
【0106】
ここで、
図5から明らかなように、本実施形態のアッパーボデー32の上方側には、流入空間30eが形成され、アッパーボデー32の下方側には、吸引通路30fが形成されている。
【0107】
従って、駆動手段37の少なくとも一部は、中心軸の径方向から見たときに、流入空間30eおよび吸引通路30fによって上下方向から挟まれる位置に配置され、中心軸方向から見たときに、流入空間30eおよび吸引通路30fと重合する位置に配置されている。これにより、封入空間37bに蒸発器14流出冷媒の温度が伝達され、封入空間37bの内圧は、蒸発器14流出冷媒の温度に応じた圧力となる。
【0108】
さらに、ダイヤフラム37aは、封入空間37bの内圧と導入空間37cへ流入した蒸発器14流出冷媒の圧力との差圧に応じて変形する。このため、ダイヤフラム37aは弾性に富み、かつ熱伝導が良好で、強靱な材質にて形成することが好ましく、例えば、ステンレス(SUS304)等の金属薄板にて形成されることが望ましい。
【0109】
また、ダイヤフラム37aの中心部には、円柱状の作動棒37eの上端側が溶接等の手段によって接合され、作動棒37eの下端側には冷媒通路形成部材35の最外周側が固定されている。これにより、ダイヤフラム37aと冷媒通路形成部材35が連結され、ダイヤフラム37aの変位に伴って冷媒通路形成部材35および先細先端部35aが変位し、最小通路面積部33dにおける通路断面積が調整される。
【0110】
具体的には、蒸発器14流出冷媒の温度(過熱度)が上昇すると、封入空間37bに封入された感温媒体の飽和圧力が上昇し、封入空間37bの内圧から導入空間37cの圧力を差し引いた差圧が大きくなる。これにより、ダイヤフラム37aは、最小通路面積部33dにおける通路断面積を拡大させる方向(鉛直方向下方側)に先細先端部35aを変位させる。
【0111】
一方、蒸発器14流出冷媒の温度(過熱度)が低下すると、封入空間37bに封入された感温媒体の飽和圧力が低下して、封入空間37bの内圧から導入空間37cの圧力を差し引いた差圧が小さくなる。これにより、ダイヤフラム37aは、最小通路面積部33dにおける通路断面積を縮小させる方向(鉛直方向上方側)に先細先端部35aを変位させる。
【0112】
このように蒸発器14流出冷媒の過熱度に応じてダイヤフラム37aが、冷媒通路形成部材35を上下方向に変位させることによって、蒸発器14流出冷媒の過熱度が予め定めた所定値に近づくように、最小通路面積部33dにおける通路断面積を調整することができる。なお、作動棒37eとアッパーボデー32との隙間は、図示しないO−リング等のシール部材によってシールされており、作動棒37eが変位してもこの隙間から冷媒が漏れることはない。
【0113】
また、冷媒通路形成部材35の底面は、ミドルボデー33の上側円板状部材33bの上方側に、末広空間30dを上下方向に横切るように配置されたコイルバネ40の荷重を受けている。
【0114】
このコイルバネ40は、冷媒通路形成部材35に対して、最小通路面積部33dにおける通路断面積を縮小する側(
図5では、上方側)に付勢する荷重をかけており、この荷重を調整することで、冷媒通路形成部材35の開弁圧を変更して、狙いの過熱度を変更することもできる。
【0115】
ここで、末広空間30dから噴射される冷媒は、コイルバネ40の巻き線間を流れるので、コイルバネ40として、末広空間30dにおける冷媒の流れを阻害しにくい線径あるいはピッチのものを採用することが望ましい。
【0116】
また、本実施形態では、アッパーボデー32の内部に複数(具体的には、
図5に示すように2つ)の円柱状の空間を設け、この空間の内部にそれぞれ円形薄板状のダイヤフラム37aを固定して2つの駆動手段37を構成しているが、駆動手段37の数はこれに限定されない。なお、駆動手段37を複数箇所に設ける場合は、それぞれ中心軸に対して等角度間隔で配置されていることが望ましい。
【0117】
さらに、中心軸方向から見たときに円環状に形成される空間内に、円環状の薄板で形成されたダイヤフラムを固定し、複数の作動棒でこのダイヤフラムと冷媒通路形成部材35とを連結する構成としてもよい。その他のエジェクタ13およびエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は、第1実施形態と同様である。
【0118】
従って、本実施形態のエジェクタ13においても、旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒が熱交換可能に構成され、さらに、冷媒流入通路30aを流通する冷媒と気液分離空間30h内の冷媒が熱交換可能に構成されているので、第1実施形態と同様に、旋回空間30bへ流入する冷媒の状態によらず、ノズル通路におけるエネルギ変換効率を充分に向上させることができる。
【0119】
また、本実施形態のエジェクタ13によれば、駆動手段37をアッパーボデー32の内部に配置し、封入空間37bに封入された感温媒体に対して、少なくともアッパーボデー32の上方側に形成された流入空間30e内の冷媒の温度が電圧されるようにしている。これにより、アッパーボデー32が占有するスペースを有効に活用することができ、より一層エジェクタ13全体としての体格の大型化を抑制できる。
【0120】
さらに、封入空間37bが流入空間30eおよび吸引通路30fによって囲まれる位置に配置されているので、外気温の影響等を受けることなく蒸発器14流出冷媒の温度を感温媒体に良好に伝達して、封入空間37b内の圧力を変化させることができる。つまり、封入空間37b内の圧力を蒸発器14流出冷媒の温度に応じて精度良く変化させることができる。
【0121】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0122】
(1)上述の実施形態では、旋回空間形成部材を構成する円筒状部材33cの内周側に旋回空間30bを形成し、円筒状部材33cの外周側に気液分離空間30hを形成することによって、旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒との熱交換を可能とした例を説明したが、旋回空間30bおよび気液分離空間30hの配置関係はこれに限定されない。例えば、旋回空間30bの下方側に気液分離空間30hを配置して、旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒とを熱交換させるようにしてもよい。
【0123】
また、上述の実施形態では、旋回空間30bの下方側に冷媒流入通路30aを形成することによって、旋回空間30b内の冷媒と冷媒流入通路30aを流通する冷媒との熱交換を可能とした例を説明したが、旋回空間30bおよび気液分離空間30hの配置関係はこれに限定されない。例えば、旋回空間30bの外周側に冷媒流入通路30aを螺旋状に配置して、旋回空間30b内の冷媒と冷媒流入通路30aを流通する冷媒とを熱交換させるようにしてもよい。
【0124】
(2)上述の実施形態では、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒が中心軸側から外周側へ流れる円環状の形状としているが、ディフューザ空間30gはこれに限定されない。例えば、旋回空間30b内の冷媒と気液分離空間30h内の冷媒との熱交換が可能であれば、従来技術の如く、ディフューザ空間30gは、ノズルの軸線方向に延びる形状に形成されていてもよい。
【0125】
(3)上述の第2実施形態では、先細先端部35aを変位させる駆動手段37として、温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入された封入空間37bおよび封入空間37b内の感温媒体の圧力に応じて変位するダイヤフラム37aを有して構成されたものを採用した例を説明したが、駆動手段はこれに限定されない。
【0126】
例えば、感温媒体として温度によって体積変化するサーモワックスを採用してもよいし、駆動手段として形状記憶合金性の弾性部材を有して構成されたものを採用してもよい。さらに、第2実施形態と同様に駆動手段として電動モータによって冷媒通路形成部材35を変位させるものを採用してもよい。
【0127】
(4)上述の実施形態では、エジェクタ13の液相冷媒流出口31cおよび気液分離器60の液相冷媒流出口の詳細について説明していないが、これらの冷媒流出口に冷媒を減圧させる減圧手段(例えば、オリフィスやキャピラリチューブからなる側固定絞り)を配置してもよい。
【0128】
(5)上述の実施形態では、本発明のエジェクタ13を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両用空調装置に適用した例を説明したが、本発明のエジェクタ13を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
【0129】
(6)上述の実施形態では、ハウジングボデー31の内部に、上方側から順にアッパーボデー32、ミドルボデー33、ロワーボデー34の外周側が圧入によって固定した例を説明したが、ハウジングボデー31に対するアッパーボデー32、ミドルボデー33およびロワーボデー34の固定は、これに限定されない。他の手段で固定する場合は、ハウジングボデー31の内周側と、アッパーボデー32、ミドルボデー33およびロワーボデー34の外周側との間に、Oリング等のシール部材を介在させることが望ましい。
【0130】
(7)上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。また、上述の実施形態では、エジェクタ13のボデー30の構成部材を金属で形成した例を説明したが、それぞれの構成部材の機能を発揮可能であれば材質は限定されない。従って、これらの構成部材を樹脂にて形成してもよい。
【0131】
(8)上述の実施形態では、冷媒通路形成部材35として、2つの円錐状部材の底面同士を貼り合わせた形状に形成されたものを採用した例を説明したが、円錐状部材とは、完全な円錐形状に形成されている部材に限定されず、円錐に近い形状、一部に円錐形状を含んだ形状、あるいは、円錐形状、円柱形状、円錐台形状等を組み合わせた形状で形成されているという意味を含んでいる。
【0132】
具体的には、軸方向断面形状が二等辺三角形となるものに限定されることなく、頂点を挟む二辺が内周側に凸となる形状、頂点を挟む二辺が外周側に凸となる形状、さらに断面形状が半円形状となるものを採用してもよい。