(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032123
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
B62D25/20 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-105110(P2013-105110)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-223892(P2014-223892A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】日比野 達也
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3591507(JP,B2)
【文献】
特開2001−270465(JP,A)
【文献】
特開2012−166743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体の前後方向に延びる左右一対のフレーム部材と、
前記車両の前輪の後方側において前記フレーム部材よりも車幅方向外側に配置され、該フレーム部材に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、
前記前輪の前方において前記フレーム部材に支持される第1の部分と、該第1の部分から車幅方向外側に延びる第2の部分とを有し、前記車両のオフセット前面衝突時に車両前方から前記第2の部分に所定以上の衝突荷重が作用した際に、前記第1の部分を支点として前記第2の部分が車体後側に回動し、前記第2の部分で前記前輪のホイール部の前側を車幅方向内側に押すとともに該ホイール部の後側を車幅方向外側に移動させ、前記ホイール部を前記フレーム部材との間に挟持する挙動制御部材と、
を具備したことを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
前記挙動制御部材の前記第2の部分は、前記第2の部分が前記フレーム部材との間に前記ホイール部を挟持した状態において、車体後側に向かって車幅方向外側に斜めに延びるよう配置されるガイド部を有したことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記挙動制御部材は、前記第2の部分が車体後側に回動した状態において、少なくとも前記ホイール部の後端の一部が前記サイドシルよりも車幅方向外側に突き出る方向に前記ホイール部を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記挙動制御部材の前記第1の部分は、前記第2の部分が車体後側に回動する際に変形する脆弱部を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記挙動制御部材の前記第1の部分は、前記第2の部分が車体後側に回動できるよう前記第2の部分を前記フレーム部材に支持する軸部を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記フレーム部材がサイドメンバで構成され、前記第1の部分が該サイドメンバに支持され、前記第2の部分が前記第1の部分から該車両のフロントバンパに向かって車幅方向外側に斜めに延びて、前記フロントバンパに連結されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前部を構成する車体前部構造に係り、特に車両の前方からサイドメンバよりも車幅方向外側の前輪付近に入力するオーバーラップ量の小さなオフセット衝突を考慮した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に衝突荷重が入力する場合を想定して、乗員を保護するための車体前部構造が種々提案されている。例えば特許文献1に記載されている車体前部構造では、車体の斜め前外側から相手車両が衝突する場合を想定して、前輪の前方でバンパの後側に硬質発泡ウレタンからなるエネルギー吸収部材を配置し、かつ、前輪の後方のサイドシルの前側に、硬質発泡ウレタンからなるエネルギー吸収部材を配置している。そして相手車両が斜め前外側から衝突した場合、衝突荷重の入力方向にバンパが変形するとともに前輪が前記エネルギー吸収部材を介してサイドシルの前面に当たり、衝突荷重がサイドシルに伝達されるように構成されている。
【0003】
一方、特許文献2の車体前部構造では、車体の正面から相手車両が衝突する場合を想定して、前輪の前方でバンパの後側に硬質系のクッション材からなるエネルギー吸収部材を配置し、かつ、前輪の内側の側面に対向するサイドフレーム(サイドメンバ)にV字状の脆弱部を形成している。そして相手車両が正面方向から衝突した場合、前記サイドフレームの前記脆弱部が変形することにより、前輪の前側を車体内側に移動させつつ、衝突荷重が前輪を介してサイドシルの前端部に伝達されるように構成されている。つまり、特許文献1,2ともに衝突荷重をサイドフレームとサイドシルとの両方で分散して受けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−249079号公報
【特許文献2】特許第3591507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の前面衝突には、衝突相手物が自車のサイドメンバの車幅方向外側の面に沿って前方から移動してくるようなオーバーラップ量の小さなオフセット衝突(スモールオーバーラップ衝突と呼ぶ)がある。このような衝突形態の場合、衝突相手物を骨格部材であるサイドメンバで受けることができないため、衝突相手物がキャビン側へ大きく侵入してくる。このとき、前輪を介してサイドシルのみで衝突相手物を受けることになる。そのため、大きな衝突荷重がサイドシルに集中して入力されることになるので、サイドシルが変形しやすく乗員が乗っているキャビン付近の変形が大きくなることがある。
【0006】
前記のような特許文献1,2に記載の車体前部構造では、前輪がサイドシルに当たるように構成されている。このため、衝突荷重の大きさによっては、スモールオーバーラップ衝突の際に、相手車両によって押された自車の前輪がサイドシルに当たることによりサイドシルが変形し、キャビンが大きく変形するおそれがある。
【0007】
本発明は、オーバーラップ率が小さいオフセット衝突であるスモールオーバーラップ衝突時に、前方から入力する衝突荷重が前輪を介してサイドシルに入力することを抑制し、キャビンが変形する程度を小さくすることができる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車体前部構造の1つの実施形態は、車両の車体の前後方向に延びる左右一対のフレーム部材と、前記車両の前輪の後方側において前記フレーム部材よりも車幅方向外側に配置され、該フレーム部材に沿って車体の前後方向に延びる左右一対のサイドシルと、挙動制御部材とを具備している。該挙動制御部材は、前記前輪の前方において前記フレーム部材に支持される第1の部分と、該第1の部分から車幅方向外側に延びる第2の部分とを有し、前記車両のオフセット前面衝突時に車両前方から前記第2の部分に所定以上の衝突荷重が作用した際に、前記第1の部分を支点として前記第2の部分が車体後側に回動し、前記第2の部分で前記前輪のホイール部の前側を車幅方向内側に押すとともに該ホイール部の後側を車幅方向外側に移動させ、前記ホイール部を前記フレーム部材との間に挟持する
前記挙動制御部材の前記第2の部分は、前記第2の部分が前記フレーム部材との間に前記ホイール部を挟持した状態において、車体後側に向かって車幅方向外側に斜めに延びるよう配置されるガイド部を有していてもよい。また前記挙動制御部材は、前記第2の部分が車体後側に回動した状態において、少なくとも前記ホイール部の後端の一部が前記サイドシルよりも車幅方向外側に突き出る方向に前記ホイール部を移動させるようにしてもよい。
【0009】
前記挙動制御部材の前記第1の部分は、前記第2の部分が車体後側に回動する際に変形する脆弱部を有していてもよい。また前記第1の部分は、前記第2の部分が車体後側に回動できるよう前記第2の部分を前記フレーム部材に支持する軸部を有していてもよい。さらに前記フレーム部材がサイドメンバで構成され、前記第1の部分が該サイドメンバに支持され、前記第2の部分が前記第1の部分から該車両のフロントバンパに向かって車幅方向外側に斜めに延びて、前記フロントバンパに連結されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車体前部構造によれば、車体前方からサイドメンバの車幅方向外側の面に沿って衝突してくる衝突相手物(例えば衝突相手車両)とのオーバーラップ率が小さいスモールオーバーラップ衝突において、衝突相手物が前輪のホイール部を介してサイドシルを押すことが抑制される。これにより、サイドシルに入力される衝突荷重が減少してサイドシルの変形が抑制されるので、キャビンが変形する程度を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る車体前部構造を備えた車体の前部の斜視図。
【
図3】
図1に示された車体の前部を下方から見た底面図。
【
図4】
図3に示された車体の前部がオフセット衝突によって変形した状態の底面図。
【
図5】第2の実施形態に係る車体前部構造を備えた車体の一部の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を備えた車両について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1は、車両の車体10の前部を示す斜視図、
図2は車体10の前部の側面図である。矢印X1で示す方向が車両の前方(車体前方)、矢印X2が車両の後方(車体後方)、矢印Yが車両の幅方向(車幅方向)を示している。
図2の矢印Z1は車体上方、矢印Z2は車体下方を示している。
【0013】
この車体10は、車両の前方から見て左右1対のサイドメンバ11,12を有している。サイドメンバ11,12は車体10の骨格をなすフレーム部材の一例であり、それぞれ車体10の前後方向に延びている。サイドメンバ11,12の前部11a,12aの両側に前輪23,24が配置されている。前輪23,24の車体後側には、サイドメンバ11,12に沿ってサイドシル13,14が設けられている。サイドシル13,14は、サイドメンバ11,12よりも車幅方向外側に配置されている。サイドシル13,14の前端から上方に向かってフロントピラー15,16が延びている。
【0014】
サイドシル13,14間に配置されるクロスメンバ20およびフロア部材の上方には、乗員が乗るキャビン(車室)21が形成されている。キャビン21には乗員が座るシートが配置されている。キャビン21の前方にエンジンルーム22が形成されている。サイドメンバ11,12の前部11a,12aはエンジンルーム22に向かって延びている。
【0015】
サイドメンバ11,12の後部11b,12bは、キャビン21に向かって延びている。フロントピラー15,16間には、車幅方向に延びるカウルトップ部材25やデッキクロスメンバ26なども配置されている。
【0016】
サイドメンバ11,12の前端は、互いにフロントエンドクロスメンバ30によって結合されている。フロントエンドクロスメンバ30は車幅方向に延びている。
図2に示すようにフロントエンドクロスメンバ30の前側にフロントバンパ31が配置されている。サイドメンバ11,12の前部11a,12aの上方にアッパフレーム35,36が設けられている。アッパフレーム35,36の前端は、互いにフロンドエンドアッパーバー37によって結合されている。
【0017】
図3は、車体10を下方からみた底面図である。サイドメンバ11,12の下面側に、車幅方向に延びるサスペンションクロスメンバ40が配置されている。サスペンションクロスメンバ40の両端部40a,40bは、それぞれサイドメンバ11,12に固定されている。サスペンションクロスメンバ40の両端部40a,40bには、フロントサスペンションの一部をなすサスペンションアーム41,42が設けられている。サスペンションアーム41,42の上側には、ショックアブソーバや懸架用コイルばねが配置されている。
図3に示されたフロントサスペンションの一例は独立懸架方式のストラット形サスペンションであるが、例えばウイッシュボーン形やその他の形式のサスペンションであってもよい。
【0018】
左右一対のサスペンションアーム41,42は、車体10の中心線Cを境として左右対称形状であって、互いに共通の構造であるため、以下に一方の前輪23を支持するサスペンションアーム41を代表して説明する。
【0019】
このサスペンションアーム41は、前側のピボット部45と後側のピボット部46とを中心として、サイドメンバ11に対し上下方向に回動可能に支持されている。またこのサスペンションアーム41は、前輪23のアクスルハブ47を支持する車輪支持部48を有している。サスペンションアーム41は、車輪支持部48から前側のピボット部45に向かって車幅方向に延びる第1の腕部51と、車輪支持部48から後側のピボット部46に向かって斜め後ろ方向に延びる第2の腕部52とを有している。
【0020】
前輪23,24は、それぞれ、金属製のホイール部60と、ホイール部60の外周に装着された空気入りタイヤ61を含んでいる。ホイール部60は、鋼板のプレス成形品であってもよいし、あるいはアルミニウム合金の鍛造品あるいは鋳造品であってもよい。これら前輪23,24は、それぞれ、アクスルハブ47を介してサスペンションアーム41,42の車輪支持部48によって支持されている。
【0021】
サイドメンバ11,12の前部11a,12aには、前輪23、24の前方において、それぞれ、車幅方向外側に突出される挙動制御部材71,72が設けられている。サイドメンバ11,12と挙動制御部材71,72とは、車体前部構造の一部をなしている。これら挙動制御部材71,72は、車体10の中心線C(
図3に示す)を境として左右対称形状であるが、構造は互いに共通であるため、以下に一方のサイドメンバ11に取付けられた挙動制御部材71を代表して説明する。
挙動制御部材71は、サイドメンバ11と同様に鉄鋼等の金属からなり、その基端部がサイドメンバ11の車幅方向外側の面11cに固定されて支持されている。すなわちこの挙動制御部材71は、車幅方向外側の面11cに固定される基端部である第1の部分75と、第1の部分75から車体前方側に向かって車幅方向外側に斜めに延びる第2の部分76とを有している。挙動制御部材71の先端側、すなわち第2の部分76の先端77は、フロントバンパ31に接続されている。
【0022】
挙動制御部材71の第1の部分75は、前輪23よりも前側の位置において、サイドメンバ11の車幅方向外側の面11cに溶接等の固定手段によって固定されている。この固定手段にボルトやリベットが使用されてもよい。挙動制御部材71の第2の部分76の先端77は、第1の部分75よりも車体前側に位置し、例えば樹脂リベット等の係脱可能な接続手段によってフロントバンパ31に接続されている。
【0023】
挙動制御部材71の第2の部分76は、衝突相手物W(
図4に示す)が車体10の前方からサイドメンバ11に沿って前輪23に向かって進入してきたときに、衝突相手物Wが当たることができるように、通常の状態(衝突前の状態)では、サイドメンバ11の車幅方向外側の面11cからフロントバンパ31の端部31aに向かって斜め前方に延びた状態とされている。
【0024】
そして、この第2の部分76は、前方から所定以上の衝突荷重F1(挙動制御部材71を変形させるような荷重)が作用した際に、第1の部分75を支点として先端側が車体後側に回動するよう構成されている。しかもこの第2の部分76は、前方からの衝突荷重F1によって車体後側に回動したときに、第2の部分76が描く軌跡Mが前輪23のホイール部60の前端60aと重なる長さを有している。つまり、第2の部分76が車体後側に回動するとホイール部60の前端60aに当該第2の部分76が当接する長さとされている。そして、最終的には、第2の部分76とサイドメンバ11の車幅方向外側の面11cとの間でホイール部60の前端60a側の部位が挟持される構成となっている。
【0025】
なお、挙動制御部材71の第1の部分75の車体後側の部位(面)には、衝突荷重F1が作用した際に第2の部分76の回動の起点となる脆弱部80が設けられている。脆弱部80の一例はV形あるいはU形に形成された凹部あるいは溝であるが、これ以外に例えば薄肉部や孔を第1の部分75に形成することによって、前方から入力する所定以上の衝突荷重によって第2の部分76が第1の部分75を支点として車体後側に回動することを助長できる形状であればよい。
【0026】
また、挙動制御部材71は、衝突相手物Wと当接して当該衝突相手物Wが車体10から相対的に離れる方向、すなわち車幅方向外側に案内するガイド部78を有している。このガイド部78は、第2の部分76の車体前側の部位(面)で構成され、第2の部分76が前方からの衝突荷重F1(
図4に示す)によって車体後側に回動することで車幅方向外側に向いた状態とされる。ガイド部78は、ホイール部60の前端60a付近が第2の部分76とサイドメンバ11との間に挟まれた状態において、第1の部分75から車体後側に向かって車幅方向外側に斜めに延びるよう配置され、衝突相手物Wがガイド部78に沿って相対的に移動するよう案内する。
【0027】
以下に、挙動制御部材71,72を備えた車体前部構造の衝突時の作用について、一方の挙動制御部材71を代表して説明する。
図4は、スモールオーバーラップ衝突を想定した場合であり、衝突相手物(インパクタ)Wが車体10のサイドメンバ11よりも車幅方向外側の部分に前方からオフセット衝突した状態を示している。この明細書で言うスモールオーバーラップ衝突とは、衝突相手物Wが車体10の前方から自車のサイドメンバ11(または12)の車幅方向外側の面11c(または12c)に沿って前輪23(または124)に向かって進入してくる衝突のことで、衝突相手物Wとのオーバーラップ量が比較的小さいオフセット前面衝突である。
【0028】
サイドメンバ11よりも車幅方向外側において、車体10の前方から前記衝突荷重F1が車体10の前部に入力すると、最初にまず自車のフロントバンパ31の端部31aが衝突相手物Wによって押されることにより車体後側に変形する。衝突相手物Wがさらに車体後方に移動してくると、衝突相手物Wが挙動制御部材71の第2の部分76に当たり、第2の部分76が車体後側に押されることにより、第1の部分75を支点として後側に回動する。
【0029】
第2の部分76が車体後側に回動する途中で、第2の部分76の先端77付近が前輪23のホイール部60の前端60a付近に車幅方向外側から当たる。このとき車輪支持部48に入力する衝突荷重の一部は、サスペンションアーム41の第1の腕部51と第2の腕部52とを介してサイドメンバ11に伝達され、サイドメンバ11によって受け止められる。
【0030】
図4に示すように挙動制御部材71の第2の部分76がホイール部60の前端60a付近に当たることにより、ホイール部60の前側がサスペンションアーム41の車輪支持部48を中心に車幅方向内側に移動されてサイドメンバ11と挙動制御部材71の第2の部分76との間に挟み込まれた状態となる。同時にホイール部60の後端60bが車体外側に向かってサイドメンバ11から離れる方向に回動する。すなわちホイール部60の後端60bの少なくとも一部がサイドシル13よりも車幅方向外側に突き出る方向にホイール部60が移動される。このためホイール部60がサイドシル13に向かって移動することが抑制される上、ホイール部60の後端60bがサイドシル13に対して当接しにくい状態とされる。このため、サイドシル13への衝突荷重の伝達が抑制される。
【0031】
また
図4に示すように挙動制御部材71の第2の部分76が車体後側に回動し、かつ、第2の部分76とサイドメンバ11との間にホイール部60の前端60a付近が挟まれた状態において、第2の部分76の車体前側の面が車幅方向外側を向き、第1の部分75から車体後側に向かって車幅方向外側に斜めに延びるガイド部78が形成される。
【0032】
このガイド部78に沿って衝突相手物Wが車体後方に移動するため、ガイド部78と衝突相手物Wとの接触部に生じる車幅方向の分力によって、車体10と衝突相手物Wとを互いに車幅方向に離す方向の力(横力)が発生する。これにより、衝突相手物Wが車体後側に向かって相対移動しつつ車体10から離れる方向(
図4に矢印F2で模式的に示す方向)に衝突相手物Wが押される。すなわち、ガイド部78に沿って衝突相手物Wが車幅方向外側に相対的に移動するよう案内されるため、衝突相手物Wから前輪23(ホイール部60)に入力される車体後方への力(衝突荷重)が減少され、前輪23(ホイール部60)の車体後方(サイドシル13側)への移動がより一層抑制される。その結果、サイドシル13への衝突荷重の集中が緩和されるので、サイドシル13の変形が抑制され、キャビン21の変形の程度も小さくすることができる。
【0033】
図5は、第2の実施形態の車体前部構造を備えた車体の一部を下方から見た底面図である。左右1対の挙動制御部材71´,72´は車体の中心線Cを境に左右対称形であるが、構造は互いに共通であるため、一方の挙動制御部材71´を代表して説明する。この挙動制御部材71´は、第1の部分75が軸部90によってサイドメンバ11に対して車体前後方向に回動可能に支持されている。軸部90は、前方からの前記オフセット衝突荷重が入力したときに、第2の部分76が第1の部分75を支点として車体後側に回動できるように、第2の部分76を回動可能に支持している。
【0034】
またこの第2の実施形態の挙動制御部材71´の第2の部分76の先端77付近には、前記衝突荷重によって第2の部分76が軌跡Mを描きながら車体後側に回動した状態において、ホイール部60の前端60a付近に掛かりやすい形状の引っ掛け部91を設けている。それ以外の構成と作用についてこの第2の実施形態の車体前部構造は前記第1の実施形態の車体前部構造(
図1〜
図4)と共通であるため、両者に共通の部位に同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
なお本発明を実施するに当たり、サイドメンバ等のフレーム部材や挙動制御部材の構成や配置をはじめとして、車体前部構造を構成する具体的な要素を種々に変更して実施できることは言うまでもない。例えば挙動制御部材がサイドメンバ以外のフレーム部材に取付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…車体、11,12…サイドメンバ(フレーム部材)、13,14…サイドシル、23,24…前輪、41,42…サスペンションアーム、60…ホイール部、61…タイヤ、71,72…挙動制御部材、71´,72´…挙動制御部材、75…第1の部分、76…第2の部分、78…ガイド部、80…脆弱部、W…衝突相手物。