(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、格子の機械的強度を向上させるとともに、格子の電気抵抗を小さくして、蓄電池用格子における電位分布を均一化することをその主たる初期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明による蓄電池用格子は、矩形状をなす枠骨と、前記枠骨の四辺のうち第1辺部から枠外に突出した耳部と、前記第1辺部と前記第1辺部に対向する第2辺部とを接続するメイン骨と、少なくとも前記メイン骨から分岐し、前記メイン骨を軸とした両側に向かい、且つ、前記第2辺部側に向かって斜めに延びる複数の第1サブ骨と、を備え、前記複数の第1サブ骨のうち少なくとも一部が、屈曲していることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、枠骨の耳部が設けられた第1辺部と第2辺部とを接続するメイン骨を有しているので、耳部と枠骨の第2辺部との電流経路を短くすることができる。また、少なくともメイン骨から斜めに延びる複数の第1サブ骨を有しているので、枠骨の第2辺部におけるメイン骨との接続部から離れた部分で生じた電流が耳部へ至る経路を短くすることができる。したがって、格子全体において、電気抵抗を小さくすることができ、格子における電位分布を均一化することができる。また、矩形状をなす枠骨を両側に有することから、機械的強度及び電気抵抗を向上させることができる。
【0010】
特に、複数の第1サブ骨のうち少なくとも一部が屈曲しているので、この第1サブ骨を第1辺部(第2辺部)の延在方向と平行に近づくように屈曲させれば、第1辺部の延在方向の伸びを抑えることができ、この第1サブ骨をメイン骨の延在方向と平行に近づくように屈曲させれば、メイン骨の延在方向の伸びを抑えることができる。これにより、枠骨の縦横比に応じて屈曲角度を適宜調整することで、例えば、縦長、横長、正方形などの格子の形状によらず、格子の升目に活物質を充填し、極板を形成して電池を構成した際に、活物質の脱落を抑制し電池の寿命性能を向上させることができる。
【0011】
前記第1サブ骨が、屈曲した屈曲点を境界として分割された複数の分割骨からなり、各第1サブ骨において、前記メイン骨から最も遠い分割骨の前記メイン骨に対する傾斜角度が、前記メイン骨に接続された分割骨の前記傾斜角度よりも大きいことが望ましい。これならば、第1辺部の延在方向の引張応力は、メイン骨から最も遠い側の分割骨に最もかかりやすいので、この分割骨を第2辺部と平行となるように近づけて第1辺部の延在方向と平行な成分を多くすることで、第1辺部の延在方向の伸びを抑制することができる。また、メイン骨に接続された分割骨をメイン骨と平行となるように近づけてメイン骨の延在方向と平行な成分を多くすることで、耳部へ至る経路を短くすることができる。したがって、格子全体において、電気抵抗をより小さくすることができ、格子における電位分布をより均一化することができる。
【0012】
各第1サブ骨において、前記複数の分割骨の前記メイン骨に対する傾斜角度が、前記メイン骨から離れるに従って大きくなることが望ましい。これならば、メイン骨から離れるに従って複数の分割骨それぞれの傾斜角度を段階的に第2辺部と平行となるように近づけて、第1辺部の延在方向の引張応力を受けやすい分割骨ほど、第1辺部の延在方向と平行な成分が増えていくので、第2辺部の延在方向の伸びをより効果的に抑制することができる。
【0013】
前記メイン骨から最も遠い前記分割骨が、前記第2辺部と平行であり、前記枠骨における前記第1辺部と前記第2辺部とを接続する部分に接続されていることが望ましい。これならば、メイン骨から最も遠い側の分割骨において、第1辺部の延在方向と平行な成分を最大にして、第2辺部の延在方向の伸びをより一層効果的に抑制することができる。
【0014】
前記メイン骨が、前記第1辺部の前記耳部が設けられた位置に接続されており、前記枠骨の前記第1辺部の延在方向に間隔をあけて配置され、前記枠骨の前記第1辺部から前記第2辺部まで延びる複数の第2サブ骨をさらに有していることが望ましい。これならば、複数の第2サブ骨を有することで、メイン骨の延在方向の伸びを抑えることができる。それゆえに、屈曲した第1サブ骨を第1辺部の延在方向とより平行に近づけて、第1辺部の延在方向の伸びを抑えることが可能となる。
【0015】
前記複数の第1サブ骨が、前記複数の第2サブ骨のいずれかと交わる位置で屈曲することが望ましい。これならば、蓄電池用格子を打ち抜き加工で製造する場合、容易に製造を行うことができる。また、仮に、第1サブ骨が第2サブ骨と交わる位置で第1サブ骨が屈曲しないと、第1サブ骨の屈曲した屈曲点には角が存在し、応力が集中して切れやすい。しかしながら、第1サブ骨が第2サブ骨と交わる位置で第1サブ骨が屈曲するので、屈曲点の角をなくすことができ、第1サブ骨を切れにくくすることができる。
【0016】
前記蓄電池用格子が、鉛合金からなることが望ましい。これならば、本発明を鉛蓄電池の格子に適用することができる。
【0017】
前記蓄電池用格子が、打ち抜き加工により形成されることが好ましい。これならば、鋳造加工により形成された格子に比べて、格子の厚みを薄くすることができ、格子材料を減らして、コストを低減することができる。また、圧延された条材を使用する事で、鋳造加工より成形された格子に比べ耐腐食性を向上させる事ができ、電池寿命を向上させる事ができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、格子の電気抵抗を小さくして、蓄電池用格子における電位分布を均一化することができ、格子の伸びを抑制した蓄電池用格子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る蓄電池用格子の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態においては、鉛蓄電池に用いられる格子を例に挙げて説明する。また、図面における紙面上下左右方向をそのまま上下左右方向と規定して説明する。
【0021】
本実施形態の格子1は、鉛蓄電池の発電要素である電極群における正極板又は負極板の一部材として用いられるものである。なお、この格子1を正極板に用いる場合には、格子1に正極活物質(二酸化鉛)が充填されている。一方、この格子1を負極板に用いる場合には、格子1に負極活物質(海綿状鉛)が充填されている。
【0022】
具体的に格子1は、鉛合金からなり厚さ一定の圧延シートをパンチングにより打ち抜き加工して得られるものである。
図1に示すように、格子1は、枠骨2と、前記枠骨2内において上下方向に直線状に延びるように複数設けられている縦骨3(第2サブ骨)と、前記枠骨2内において傾斜して形成された複数のサブ骨4(第1サブ骨)とを備える。
【0023】
枠骨2は、概略矩形状をなし、枠外に突出した耳部21が設けられた第1辺部2a、第1辺部2aと対向する第2辺部2b、第1辺部2a及び第2辺部2bと略直交する第3辺部2c及び第4辺部2dを有する。第3辺部2cは、第1辺部2aと第2辺部2bとの一方端部を接続している。第4辺部2dは、第1辺部2aと第2辺部2bとの他方端部を接続している。
【0024】
複数の縦骨3は、第1辺部aにおける耳部21との接続部直下から下方に延びる1又は複数(本実施形態では1本)のメイン3Xを含んでいる。
【0025】
メイン骨3Xは、枠骨2の第1辺部2a及び当該第1辺部2aに対向する第2辺部2bに略直交して直線状に延在しており、平面視において、上方から下方に行くに従って幅寸法が小さくなる先細り形状である。これにより、集電部である耳部近傍の電気量が多い部分を太くし、電気量が少ない部分を細くすることによって、極板材料の使用量を抑えながら、効率よく集電することができる。
【0026】
また、メイン骨3Xの左右両側にある複数の縦骨3は、第1辺部2aの左右方向(延在方向)に等間隔をあけて配置されている。なお、メイン骨3Xの左右両側にある複数の縦骨3は、メイン骨3Xから離れるに従って、縦骨3の幅寸法が小さくなるように構成されてもよい。これにより、集電された電気量に応じて最適な縦骨3の間隔とすることができる。その他、複数の縦骨3は、メイン骨3Xから離れるに従って、幅寸法が小さくなるように構成しても良い。
【0027】
複数のサブ骨4は、
図1に示すように、メイン骨3Xの左側に配置されて斜め下方に延びるサブ骨4(4M)と、メイン骨3Xの右側に配置されて斜め下方に延びるサブ骨4(4N)とを有している。メイン骨3Xに接続された最も上部のサブ骨4Mとサブ骨4Nは、第1辺部aにおける耳部21との接続部直下から斜め下方に延びている。なお、サブ骨4Mの一部(本実施形態では1本)は、第1辺部2aから分岐して斜め下方に延びる。また、サブ骨4Mの一部(本実施形態では複数のサブ骨4Mのうち最も下部の1本)、及び、サブ骨4Nの一部(本実施形態では複数のサブ骨4Nのうち最も下部の1本)は、第3辺部2c及び第4辺部2dではなく、縦骨3と交わる位置に端部が設けられている。
【0028】
つまり、サブ骨4Mは、上端部がメイン骨3X又は第1辺部2aに接続されており、下端部が第3辺部2c又は縦骨3に接続されている。また、サブ骨4Nは、上端部がメイン骨3Xに接続されており、下端部が第4辺部2d又は縦骨3に接続されている。
【0029】
ここで、複数のサブ骨4Mは、縦骨3と交わる位置で1回屈曲している。そして、屈曲した屈曲点において2つの分割骨に分けられている。この2つの分割骨は、メイン骨3Xに最も近い位置に配置される第1分割骨4aと、第1分割骨4aに接続するとともにメイン骨3Xから最も遠い位置に配置される第2分割骨4bとを備える。
【0030】
図2は、
図1において矩形形状に囲まれた部分Aを拡大した拡大図である。
図2に示すように、第1分割骨4aはメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ1)が75度となるように配置されており、第2分割骨4bはメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ2)が90度となるように配置されている。そのため、これら2つの分割骨4a、4bは、メイン骨3Xに対する傾斜角度が90度を超えない範囲で傾くとともに、第2分割骨4bの傾斜角度(θ2)は、第1分割骨4aの傾斜角度(θ1)よりも大きくなるように設けられている。
なお、分割骨4a、4bのメイン骨に対する傾斜角度(θ1、θ2)は、90度を超えない範囲で適宜変更することができる。
【0031】
また、複数のサブ骨4Mは、同じ縦骨3xと交わる位置で屈曲している。すなわち、複数のサブ骨4Mと縦骨3xの屈曲点は、上下方向に沿って位置する。複数のサブ骨4において、第1分割骨4aと第2分割骨4bとの間の屈曲点が縦骨3x上に位置している。
【0032】
一方で、サブ骨4Nは、第1辺部2a又はメイン骨3Xとの接続部分から直線状に第1辺部2aから第2辺部2bに向かって屈曲することなく延在している。このサブ骨4Nのメイン骨3Xに対する傾斜角度は75度である。
【0033】
ここで、本実施形態における蓄電池用格子(実施例1〜実施例5)、及び、比較のための蓄電池用格子(比較例1)について、電位ドロップ解析、引張試験、及び、電位分布解析を行った。
【0034】
実施例1〜5は、第1実施形態と同様にサブ骨4Mが1回屈曲してメイン骨3Xに対する傾斜角度が異なる2つの分割骨、第1分割骨4aと第2分割骨4bとに分かれている。
そして、第1分割骨4aのメイン骨3Xに対する傾斜角度は75度であり、第2分割骨4bのメイン骨3Xに対する傾斜角度は、実施例の番号が大きくなるにつれて、それぞれ、90度、87度、84度、81度、78度である。本実施例1〜5の格子は、格子寸法[幅(mm)×高さ(mm)]を137.0×115.0とし、格子厚さ(mm)を一定とし、格子質量(g)を36.8とした。
【0035】
比較例1は、格子寸法[幅(mm)×高さ(mm)]を137.0×115.0とし、格子厚さ(mm)を一定とし、格子質量(g)を36.8としたエキスパンド格子である。
【0036】
<電位ドロップ及び電位分布解析>
実施例1〜5、及び、比較例1に対して、耳上端部に1Aの電流を流し、枠骨の第1辺部を基準(0V)としたときの、第2辺部の電位ドロップ(電圧降下)及び電位分布解析を行った。
このとき、従来のエキスパンド格子である比較例1の電位ドロップ量を100%として実施例1〜5の電位ドロップ量の割合を求めた。また、電位分布の均一性を○(良)、×(不可)で表した。
【0037】
<引張試験>
実施例1〜5、及び、比較例1に対して、左右方向に引張荷重を負荷しCAE解析上で引張試験を行った。
このとき、電位ドロップ解析と同様に従来のエキスパンド格子である比較例1の引張伸び量を100%として、実施例1〜5の引張伸び量の割合を求めた。
【0038】
<解析結果>
電位ドロップ解析、引張試験及び電位分布解析の結果を表1、
図3に示す。
【表1】
【0039】
表1に示すように、実施例1〜5の電位ドロップ量は、比較例1の電位ドロップ量に対して56%又は57%まで低下した。また、実施例1〜5の電位分布の均一性は、○(良)であり、比較例1の電位分布の均一性×(不可)よりも優れていた。このことから、実施例1〜5の本発明の蓄電池用格子は、比較例1の従来のエキスパンド格子に比べると、格子の電気抵抗が小さく、格子の電位分布が均一化されていることが分かる。
【0040】
また、表1に示すように、実施例1〜5の引張伸び量は、比較例1の引張伸び量に対して43%〜60%まで低下した。そのため、実施例1〜5の本発明の蓄電池用格子は、比較例1の従来のエキスパンド格子に比べると引張伸び量が小さくなり、伸びを抑制できることが分かる。
【0041】
さらに、
図3は、表1の結果をもとに縦軸に引張伸び量の割合、横軸に第2分割骨4bのメイン骨に対する傾斜角度を示すグラフである。実施例1〜5において、第2分割骨4bのメイン骨に対する傾斜角度が大きくなるほど、引張伸び量を抑制出来ることが分かる。そして、この傾斜角度が90度となる実施例1で最も良い結果が得られた。
【0042】
これは、第2辺部2bの延在方向(左右方向)の引張荷重は、メイン骨から最も遠い位置に配置される第2分割骨4bに最もかかりやすいので、第2分割骨4bの傾斜角度を、第1分割骨4aの傾斜角度よりも大きくなるように構成することで、第2分割骨4bの左右方向にかかる引張荷重を支持する成分が増し、左右方向の伸びを抑制することができたためである。そして、左右方向の成分が最大となる90度の傾斜角度で、左右方向の伸びを最も効果的に抑えることができた。
【0043】
上述したように構成された第1実施形態における蓄電池用格子1によれば、以下のような効果を有する。
【0044】
枠骨2の第1辺部2aにおける耳部21との接続部から第2辺部2bまで延びるメイン骨3Xを有しているので、耳部21と枠骨2の第2辺部2bとの距離を最短距離で結ぶことができる。また、少なくともメイン骨3Xから斜めに延びる複数のサブ骨4を有しているので、枠骨2の第2辺部2bにおけるメイン骨3Xとの接続部から離れた部分で生じた電流が耳部21へ至る経路を短くすることができる。したがって、格子1全体において、電気抵抗を小さくすることができ、格子1における電位分布を均一化することができる。また、矩形状をなす枠骨2を有することから、機械的強度を向上させることができる。
【0045】
特に、複数のサブ骨4のうち少なくとも一部が、メイン骨3Xから離間するにつれて1回屈曲し、このサブ骨4を第1辺部2a(第2辺部2b)の延在方向、つまり左右方向に屈曲しているので、この左右方向の伸びを抑制することができる。これにより、枠骨2の縦横比に応じて屈曲角度を適宜調整することで、例えば、縦長、横長、正方形などの格子の形状によらず、格子の升目に活物質を充填し、極板を形成して電池を構成した際に、活物質の脱落を抑制し電池の寿命性能を向上させることができる。
【0046】
2つの分割骨4a、4bのそれぞれが、前記メイン骨3Xに対して90度以下の傾斜角度を有するので、第2辺部2bから第1辺部2aに向かって延在するように屈曲する分割骨がなく、電流が流れる経路を短く構成して電流分布を均一化することができる。
【0047】
2つの分割骨4a、4bのうち、第2分割骨4bのメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ2)が、第1分割骨4aのメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ1)よりも大きいので、左右方向の引張応力が最もかかりやすい第2分割骨4bを、第2辺部2bと平行となるように近づけて、第2分割骨4bの左右方向にかかる引張荷重を支持する成分を多くして左右方向の伸びを抑制することができる。
【0048】
蓄電池用格子1が打ち抜き加工により形成されるので、鋳造加工により形成された格子1に比べて、格子1の厚みを薄くすることができる。つまり、格子材料を削減でき、コストを低減することができる。
また、サブ骨4が縦骨3と交わる位置でサブ骨4が屈曲するので、蓄電池用格子1を打ち抜き加工で容易に製造を行うことができる。
さらに、仮に、サブ骨4が縦骨3と交わる位置でサブ骨4が屈曲しないと、サブ骨4の屈曲点には角が存在し、応力が集中して切れやすいが、本実施形態では、サブ骨4が縦骨3と交わる位置でサブ骨4が屈曲するので、屈曲点の角をなくしてサブ骨4を切れにくくすることができる。
【0049】
第2実施形態の蓄電池用格子1について図面を参照して説明する。なお、以下では第1実施形態の蓄電池用格子1と同一又は対応する部材には同一の符号を付している。
【0050】
第2実施形態の蓄電池用格子1は、
図4に示すように、複数のサブ骨4M,4Nがともに、縦骨3xと交わる位置で1回屈曲して、この屈曲点において2つの分割骨に分けられている。
【0051】
この2つの分割骨は、メイン骨3Xに最も近い位置に配置される第3分割骨4cと、メイン骨3Xから最も遠い位置に配置される第4分割骨4dとを備える。
【0052】
第3分割骨4cはメイン骨3Xに対する傾斜角度が75度となるように配置されており、第4分割骨4dはメイン骨3Xに対する傾斜角度が90度となるように配置されている。
【0053】
上述したように構成された第2実施形態における蓄電池用格子によれば、第1サブ骨4M,4Nがともに1回屈曲しているので、メイン骨3Xの両側において格子1の左右方向の伸びを抑制することができる。第2実施形態における蓄電池用格子は、第1実施形態における蓄電池用格子と同様の効果を奏することができる。
【0054】
第3実施形態の蓄電池用格子1について図面を参照して説明する。なお、以下では第1実施形態の蓄電池用格子1と同一又は対応する部材には同一の符号を付している。
【0055】
第3実施形態の蓄電池用格子1は、
図5に示すように、複数のサブ骨4Mが2回屈曲して3つの分割骨に分かれている。
この3つの分割骨は、メイン骨3Xに最も近い位置に配置される第5分割骨4eと、第5分割骨4eに接続される第6分割骨4fと、第6分割骨4fに接続されるとともに、メイン骨3Xから最も遠い位置に配置される第7分割骨4gとを備える。
【0056】
図6は、
図5において矩形形状に囲まれた部分Bを拡大した拡大図である。
図7に示すように、第5分割骨4eはメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ3)が60度となるように配置され、第6分割骨4fはメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ4)が90度となるように配置され、第7分割骨4gはメイン骨3Xに対する傾斜角度(θ5)が75度となるように配置されている。
そのため、これら3つの分割骨4e、4f、4gは、メイン骨3Xに対する傾斜角度が90度を超えない範囲で傾くとともに、第6、第7分割骨4f、4g(θ4、θ5)は、第5分割骨4eの傾斜角度(θ3)よりも大きくなるように設けられている。
なお、分割骨4e、4f、4gのメイン骨に対する傾斜角度(θ3、θ4、θ5)は、90度を超えない範囲で適宜変更することができる。
【0057】
また、複数のサブ骨4Mは、同じ縦骨3y、3zで屈曲している。具体的には、複数のサブ骨4において、第5分割骨4eと第6分割骨4fとの間の屈曲点が縦骨3yに位置しており、第6分割骨4fと第7分割骨4gとの間の屈曲点が縦骨3zに位置している。
【0058】
ここで、本実施形態における蓄電池用格子(実施例6〜実施例9)、及び、比較のための蓄電池用格子(比較例1)についても、電位ドロップ解析及び電位分布解析を行った。
【0059】
実施例6〜9は、第3実施形態と同様にサブ骨4Mが2回屈曲してメイン骨3Xに対する傾斜角度が異なる3つの分割骨、第5分割骨4e、第6分割骨4f、第7分割骨4gに分かれている。
実施例6は、第5分割骨4eのメイン骨3Xに対する傾斜角度が60度であり、第6分割骨4fのメイン骨3Xに対する傾斜角度が75度であり、第7分割骨4gのメイン骨3Xに対する傾斜角度が90度である。
実施例7は、第5分割骨4eのメイン骨3Xに対する傾斜角度が60度であり、第6分割骨4fのメイン骨3Xに対する傾斜角度が90度であり、第7分割骨4gのメイン骨3Xに対する傾斜角度が75度である。
実施例8は、第5分割骨4eのメイン骨3Xに対する傾斜角度が75度であり、第6分割骨4fのメイン骨3Xに対する傾斜角度が60度であり、第7分割骨4gのメイン骨3Xに対する傾斜角度が90度である。
実施例9は、第5分割骨4eのメイン骨3Xに対する傾斜角度が75度であり、第6分割骨4fのメイン3Xに対する傾斜角度が90度であり、第7分割骨4gのメイン骨3Xに対する傾斜角度が60度である。
なお、本実施例6〜9の格子は、格子寸法[幅(mm)×高さ(mm)]を137.0×115.0とし、格子厚さ(mm)を一定とし、格子質量(g)を36.8とした。また、比較例1の格子は、段落[0035]で記載した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
<試験結果>
電位ドロップ解析及び電位分布解析の結果を表2に示す。
【表2】
【0061】
表2に示すように、実施例6〜9の電位ドロップ量は、比較例1の電位ドロップ量に対して56%まで低下した。また、実施例6〜9の電位分布の均一性は、○(良)であり、比較例1の電位分布の均一性×(不可)よりも優れていた。このことから、実施例6〜9の本発明の蓄電池用格子は、比較例1の従来のエキスパンド格子に比べると、格子の電気抵抗が小さく、格子の電位分布が均一化されていることが分かる。
【0062】
第4実施形態の蓄電池用格子1について図面を参照して説明する。なお、以下では第1実施形態の蓄電池用格子1と同一又は対応する部材には同一の符号を付している。
【0063】
第4実施形態における蓄電池用格子1は、
図7に示すように、複数のサブ骨4M、4Nが、ともに一回屈曲し、この屈曲点において2つの分割骨に分かれている。
【0064】
図8は、
図7において矩形形状に囲まれた部分Cを拡大した拡大図である。
図8に示すように、2つの分割骨は、メイン骨3Xに対する傾斜角度(θ6)が75度である第6分割骨4hと、メイン骨3Xに対する傾斜角度(θ7)が90度である第7分割骨4iとに分かれている。
【0065】
しかして、サブ骨4の屈曲点が第1〜3実施形態と異なり、第3辺部2c又は第4辺部2dの略中央に配置された屈曲点が、その上下方向の両側に配置される屈曲点よりもメイン骨3Xに近づくように配置されている。つまり、第3辺部2c又は第4辺部2dの略中央に配置する第7分割骨4iが、その上下方向の両側に配置する第7分割骨4iよりも、左右方向の長さが長くなるように設けられている。
【0066】
また、第4実施形態では、この屈曲点が、縦骨3との交差部分のみではなく、縦骨3と縦骨3との間に位置するように設けられている。さらに、この屈曲点が、平面視において、縦骨3上に直線状に配置されるのではなく、第3辺部2c又は第4辺部2dを弦として概略弧Rを描くように配置される。
【0067】
上述したように構成された第4実施形態における蓄電池用格子1によれば、サブ骨4の屈曲点が、第3辺部2c又は第4辺部2dの略中央に向かうに従って、よりメイン骨3Xと近い位置に配置されるので、メイン骨3Xに対して90度に傾斜する第7分割骨4iを、第3辺部2c又は第4辺部2dの略中心部分に向かって左右方向により長く配置することができる。これにより、最も左右方向の伸びが生じやすい第3辺部2c又は第4辺部2dの略中心部分において左右方向の成分を増やし、左右方向の伸びをより効果的に抑制することができる。
【0068】
なお、本発明は前記実施形態に限られたものではない。
【0069】
前記実施形態では、鉛蓄電池に用いられる格子を例に挙げて説明したが、これに限られず、ニッケル水素電池など活物質を充填する格子に適用することができる。
【0070】
また、前記実施形態では、格子は、打ち抜き加工により形成されていたが、鋳造加工により形成されてもよい。
【0071】
さらに、前記実施形態では、サブ骨の屈曲回数は1回または2回であったが、3回以上屈曲していてもよい。また、サブ骨のメイン骨に対する傾斜角度は0度〜90度の間で任意に定めることができる。
【0072】
加えて、前記実施形態では、サブ骨の屈曲点は、縦骨と交わる位置であったが、縦骨と交わらない位置で屈曲してもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、サブ骨が両側に分岐したメイン骨は、耳部直下から延在していたが、耳部から左右方向のいずれかにずれて配置されていてもよい。
【0074】
メイン骨の左右方向の両側に屈曲するサブ骨が配置されている場合、このサブ骨の屈曲回数が、メイン骨の左側と右側で異なるように構成してもよい。
【0075】
また、メイン骨から斜め下方に伸びるサブ骨の一部のみが屈曲し、それ以外のサブ骨は屈曲せずにそのまま伸びるように構成してもよい。
【0076】
さらに、屈曲する複数のサブ骨において、その屈曲回数がそれぞれ異なるように構成してもよい。
【0077】
本発明は、上記実施形態に限られたものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。