(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングを形成する一対のシリンダブロックには第1シリンダボアと第2シリンダボアとがそれぞれ形成されており、対となる前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとには、両頭ピストンが往復動可能に収容されており、クランク室には、回転軸に一体回転可能に固定される駆動力伝達部材と、該駆動力伝達部材を介して前記回転軸から駆動力を得て回転するとともに前記回転軸に対する傾角が変更される斜板とが収容されており、前記斜板には、前記斜板の傾角を変更可能な移動体が連結されており、前記斜板に係留された前記両頭ピストンが前記斜板の傾角に応じたストロークで往復動する両頭ピストン型斜板式圧縮機であって、
前記駆動力伝達部材及び前記移動体は、前記回転軸の軸方向において前記斜板に対して一方側に配置され、前記ハウジング内には、制御ガスが導入されて内部の圧力が変更されることで前記移動体を前記回転軸の軸方向に移動させる制御圧室が、前記移動体により区画され、
前記斜板には、前記回転軸の軸方向において前記斜板に対して他方側で前記回転軸に支持される支持部材が設けられており、
前記斜板は、前記駆動力伝達部材、前記移動体及び前記支持部材を介して前記回転軸に支持されて、前記回転軸に対する傾角が規定されることを特徴とする両頭ピストン型斜板式圧縮機。
前記回転軸は、前記斜板の最大傾角時において前記斜板の中心と前記回転軸の中心軸線とが一致するとともに、前記斜板の最小傾角時において前記斜板の中心が前記回転軸の中心軸線よりも前記支持部材側に位置するように、前記斜板の傾角の変更に伴って前記支持部材を案内する案内面を有していることを特徴とする請求項1に記載の両頭ピストン型斜板式圧縮機。
前記案内面は、前記斜板の傾角が最小傾角から増大する方向に前記移動体が移動するにつれて、前記支持部材が前記回転軸の中心軸線から離間するように案内される傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記斜板の傾角が増大する方向に前記移動体が移動するにつれて、前記回転軸の中心軸線に対する傾斜角度が漸減していくことを特徴とする請求項2に記載の両頭ピストン型斜板式圧縮機。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして、例えば特許文献1の両頭ピストン型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」と記載する)がある。
図13及び
図14に示すように、特許文献1の圧縮機100のハウジング101は、シリンダブロック102と、シリンダブロック102の前端を弁板103aを介して閉塞するフロントハウジング104と、シリンダブロック102の後端を弁板103bを介して閉塞するリヤハウジング105とからなる。
【0003】
シリンダブロック102の中央部には貫通孔102hが形成されており、貫通孔102hにはフロントハウジング104を貫通する回転軸106が設けられている。シリンダブロック102における回転軸106の周囲には、シリンダボア107が複数形成されており、各シリンダボア107には両頭ピストン108が収容されている。また、シリンダブロック102にはクランク室102aが形成されており、クランク室102aには、回転軸106から駆動力を得て回転する傾角可変な斜板109が収容されている。そして、両頭ピストン108は、シュー110を介して斜板109に係留されている。また、フロントハウジング104及びリヤハウジング105には、各シリンダボア107に連通する吸入室104a,105a及び吐出室104b,105bが形成されている。
【0004】
シリンダブロック102の貫通孔102hの後端には、アクチュエータ111が配設されている。アクチュエータ111の内部には、回転軸106の後端側が収容されている。そして、アクチュエータ111は、その内部が回転軸106の後端側に対して摺動自在であるとともに、アクチュエータ111の周縁が貫通孔102hに対して摺動自在となっている。アクチュエータ111と弁板103bとの間には、押圧ばね112が介在されている。押圧ばね112は、アクチュエータ111を回転軸106の先端側に付勢している。押圧ばね112の付勢力は、クランク室102a内の圧力とのバランスで設定されている。
【0005】
貫通孔102hにおけるアクチュエータ111よりも後方側は、弁板103bの貫通孔を介してリヤハウジング105に形成された圧力調節室117(制御圧室)に連通している。圧力調節室117は、圧力調節回路118を介して吐出室105bに連通している。圧力調節回路118には圧力制御弁119が配設されている。アクチュエータ111の移動量は、圧力調節室117の圧力により調節される。
【0006】
アクチュエータ111の前方には、スラスト軸受113を介して第1連結体114が設置されている。第1連結体114には回転軸106が貫通しており、第1連結体114は、その内部が回転軸106に対して摺動自在になっている。そして、第1連結体114は、アクチュエータ111の摺動に伴い、回転軸106に沿って軸方向に摺動するようになっている。また、第1連結体114の周縁には、外方に延びる第1アーム114aが設けられている。第1アーム114aには、回転軸106の軸方向に対して斜めに切り欠かれた第1ピン案内溝114hが形成されている。
【0007】
また、斜板109の前方には、第2連結体115(駆動力伝達部材)が設置されている。第2連結体115は回転軸106と一体回転可能に回転軸106に固定されている。第2連結体115の周縁には、第1アーム114aとは略対称の位置で外方に延びる第2アーム115aが設けられている。第2アーム115aには、回転軸106の軸方向に対して斜めに貫通する第2ピン案内溝115hが形成されている。
【0008】
斜板109における第1連結体114側の面には、第1アーム114aに向けて延びる一対の第1支持耳109aが設けられている。第1アーム114aは、各第1支持耳109aの間に配置されている。そして、各第1支持耳109aと第1アーム114aとは、第1ピン案内溝114hに挿通される第1連結ピン114pにより回動自在に連結されている。
【0009】
斜板109における第2連結体115側の面には、第2アーム115aに向けて延びる一対の第2支持耳109bが設けられている。第2アーム115aは、各第2支持耳109bの間に配置されている。そして、各第2支持耳109bと第2アーム115aとは、第2ピン案内溝115hに挿通される第2連結ピン115pにより回動自在に連結されている。そして、斜板109は、回転軸106から第2連結体115を介して駆動力を得て回転運動を行う。
【0010】
圧縮機100において、吐出容量を減少させるときには、圧力制御弁119を閉じて圧力調節室117の圧力を低くする。これにより、圧力調節室117の圧力、及び押圧ばね112の付勢力よりもクランク室102aの圧力が高くなり、
図13に示すように、アクチュエータ111が弁板103bに向かって移動する。このとき、第1連結体114は、クランク室102aの圧力によりアクチュエータ111側に押圧される。この第1連結体114の移動により、第1連結ピン114pが第1ピン案内溝114hで案内されて、各第1支持耳109aが反時計回りに回転する。この各第1支持耳109aの回転に伴って、各第2支持耳109bが反時計回りに回転し、第2連結ピン115pが第2ピン案内溝115hに案内される。これにより、斜板109の傾角が小さくなり、両頭ピストン108のストロークが小さくなって吐出容量が減る。
【0011】
一方、圧縮機100において、吐出容量を増加させるときには、圧力制御弁119を開いて吐出室105bからの高圧ガス(制御ガス)を圧力調節回路118を介して圧力調節室117に導入し、圧力調節室117の圧力を高くする。これにより、圧力調節室117の圧力、及び押圧ばね112の付勢力が、クランク室102aの圧力よりも高くなり、
図14に示すように、アクチュエータ111が斜板109に向かって移動する。このとき、第1連結体114は、アクチュエータ111により押圧されて、第2連結体115側に移動する。この第1連結体114の移動により、第1連結ピン114pが第1ピン案内溝114hで案内されて、各第1支持耳109aが時計回りに回転する。この各第1支持耳109aの回転に伴って、各第2支持耳109bが時計回りに回転し、第2連結ピン115pが第2ピン案内溝115hに案内される。これにより、斜板109の傾角が大きくなり、両頭ピストン108のストロークが大きくなって吐出容量が増える。よって、アクチュエータ111及び第1連結体114は、斜板109の傾角を変更するために回転軸106の軸方向に移動可能な移動体を構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1の圧縮機100のように、各シリンダボア107に両頭ピストン108が収容されている構成では、シリンダブロック102の内部において、回転軸106の径方向外側で両頭ピストン108が往復直線運動を行っている。このため、シリンダブロック102の内部において、第2連結体115、アクチュエータ111及び第1連結体114を収容するスペースは、両頭ピストン108が往復直線運動を行う領域よりも回転軸106の径方向内側に限定される。さらに、圧縮機100では、例えば、車両に搭載するスペースの制約上、小型化が図られるため、シリンダブロック102の内部において、第2連結体115、アクチュエータ111及び第1連結体114を収容するスペースも限られている。よって、シリンダブロック102の内部において、第2連結体115、アクチュエータ111及び第1連結体114を収容するスペースを極力コンパクト化して、圧縮機100の大型化を抑制することが望まれている。しかし、アクチュエータ111のコンパクト化に伴い、斜板109の傾角の変更をスムーズに行うことができなくなってしまう虞がある。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化を抑制しつつも、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる両頭ピストン型斜板式圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する両頭ピストン型斜板式圧縮機は、ハウジングを形成する一対のシリンダブロックには第1シリンダボアと第2シリンダボアとがそれぞれ形成されており、対となる前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとには、両頭ピストンが往復動可能に収容されており、クランク室には、回転軸に一体回転可能に固定される駆動力伝達部材と、該駆動力伝達部材を介して前記回転軸から駆動力を得て回転するとともに前記回転軸に対する傾角が変更される斜板とが収容されており、前記斜板には、前記斜板の傾角を変更可能な移動体が連結されており、前記斜板に係留された前記両頭ピストンが前記斜板の傾角に応じたストロークで往復動する両頭ピストン型斜板式圧縮機であって、前記駆動力伝達部材及び前記移動体は、前記回転軸の軸方向において前記斜板に対して一方側に配置され、前記ハウジング内には、制御ガスが導入されて内部の圧力が変更されることで前記移動体を前記回転軸の軸方向に移動させる制御圧室が、前記移動体により区画され、前記斜板には、前記回転軸の軸方向において前記斜板に対して他方側で前記回転軸に支持される支持部材が設けられており、前記斜板は、前記駆動力伝達部材、前記移動体及び前記支持部材を介して前記回転軸に支持されて、前記回転軸に対する傾角が規定される。
【0016】
これによれば、回転軸から斜板に対して力が作用する部位を、駆動力伝達部材と斜板との連結部位から極力遠ざけることができる。よって、駆動力伝達部材と斜板との連結部位を中心とした斜板に対する力のモーメントの釣り合いを考えると、斜板に対して作用する力を極力小さくすることができるため、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる。さらに、支持部材が、回転軸の軸方向において駆動力伝達部材及び移動体から斜板を挟んで反対側に配置されている。このため、支持部材が、回転軸の軸方向において斜板に対して一方側に配置されている場合に比べると、両頭ピストンが往復動を行う領域よりも回転軸の径方向内側のスペースに必要となる駆動力伝達部材及び移動体の収容スペースをコンパクト化することができる。その結果、両頭ピストン型斜板式圧縮機の体格の大型化を抑制しつつも、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる。
【0017】
上記両頭ピストン型斜板式圧縮機において、前記回転軸は、前記斜板の最大傾角時において前記斜板の中心と前記回転軸の中心軸線とが一致するとともに、前記斜板の最小傾角時において前記斜板の中心が前記回転軸の中心軸線よりも前記支持部材側に位置するように、前記斜板の傾角の変更に伴って前記支持部材を案内する案内面を有していることが好ましい。
【0018】
斜板における回転軸を挟んで支持部材とは反対側の部位の回転軸の中心軸線から最外径までの距離と、斜板における支持部材側の部位の回転軸の中心軸線から最外径までの距離とは、斜板の傾角の変更に伴って変位する。ここで、例えば、斜板の最大傾角時において斜板の中心が回転軸の中心軸線よりも支持部材とは反対側に位置するとともに、斜板の最小傾角時において斜板の中心と回転軸の中心軸線とが一致するように支持部材が案内面によって案内される場合を考える。この場合、斜板の傾角の変更の途中で、斜板の中心が回転軸の中心軸線から回転軸を挟んで支持部材とは反対側へ大きく離間してしまう。すると、斜板における回転軸を挟んで支持部材とは反対側の部位の外周縁の回転軸の中心軸線に対する最大離間距離が、斜板における支持部材側の部位の外周縁の回転軸の中心軸線に対する最大離間距離よりも大きくなってしまう。その結果、斜板における回転軸を挟んで支持部材とは反対側の部位の外周縁が、回転軸の中心軸線から最も離間したときに、斜板が両頭ピストンに干渉してしまうことを回避するために、両頭ピストンにおける斜板側の部位に逃げ部(凹部)を形成しておく必要がある。
【0019】
そこで、斜板の最大傾角時において斜板の中心と回転軸の中心軸線とが一致するとともに、斜板の最小傾角時において斜板の中心が回転軸の中心軸線よりも支持部材側に位置するように支持部材を案内面によって案内する。これによれば、斜板の傾角の変更の途中で、斜板の中心が回転軸の中心軸線から回転軸を挟んで支持部材とは反対側へ大きく離間してしまうことを抑制することができる。そして、斜板における回転軸を挟んで支持部材とは反対側の部位の外周縁の回転軸の中心軸線に対する最大離間距離と、斜板における支持部材側の部位の外周縁の回転軸の中心軸線に対する最大離間距離とを同じに設定することが可能となる。よって、斜板が両頭ピストンに干渉してしまうことを回避するために、両頭ピストンにおける斜板側の部位に逃げ部を形成する必要が無くなり、両頭ピストンの強度を確保することができる。
【0020】
上記両頭ピストン型斜板式圧縮機において、前記案内面は、前記斜板の傾角が最小傾角から増大する方向に前記移動体が移動するにつれて、前記支持部材が前記回転軸の中心軸線から離間するように案内される傾斜部を有し、前記傾斜部は、前記斜板の傾角が増大する方向に前記移動体が移動するにつれて、前記回転軸の中心軸線に対する傾斜角度が漸減していくことが好ましい。
【0021】
支持部材と傾斜部との接触部においては、斜板から支持部材を介して傾斜部に法線方向の力が作用する。そして、傾斜部と支持部材との接触部においては、力の釣り合いの関係により、傾斜部に作用する法線方向の力の反力が、傾斜部から支持部材を介して斜板に作用する。この斜板に作用する力は、移動体の移動方向に直交する方向(垂直方向)の成分を有する力と、移動体の移動方向(水平方向)の成分を有する力とに分解される。
【0022】
最小傾角付近の斜板の傾角の制御を行う際の制御圧室の圧力は、吸入圧に近づいている。制御圧室の圧力を吸入圧よりも小さくすることはできないため、最小傾角付近の斜板の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室の圧力が吸入圧を下回ってしまうと、最小傾角付近の斜板の傾角の制御を行うことができなくなってしまう。しかし、移動体の移動方向の成分を有する力は、傾斜部から支持部材及び斜板を介して移動体に伝達される。この移動体に伝達された移動体の移動方向の成分を有する力は、斜板の傾角が最小傾角から増大する方向に移動体が移動する際に、移動体の移動を妨げる力となり得る。よって、制御圧室の圧力を比較的大きくしなければ、移動体の移動を行うことができなくなる。その結果、最小傾角付近の斜板の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室の圧力が吸入圧を下回ってしまうことを抑制することができ、最小傾角付近の斜板の傾角の制御性を向上させることができる。
【0023】
最大傾角付近の斜板の傾角の制御を行う際の制御圧室の圧力は、吐出圧に近づいている。制御圧室の圧力を吐出圧よりも大きくすることはできないため、最大傾角付近の斜板の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室の圧力が吐出圧を上回ってしまうと、最大傾角付近の斜板の傾角の制御を行うことができなくなってしまう。しかし、斜板の傾角が増大する方向に移動体が移動していくと、傾斜部における回転軸の中心軸線に対する傾斜角度が漸減していくことから、傾斜部と支持部材との接触部において作用する移動体の移動方向の成分を有する力は小さくなっていく。その結果、斜板の傾角が増大する方向に移動体が移動する際の移動体の移動を妨げる力を少なくすることができ、移動体を移動させるために必要となる制御圧室の圧力を小さくすることができる。よって、最大傾角付近の斜板の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室の圧力が吐出圧を上回ってしまうことを抑制することができ、最大傾角付近の斜板の傾角の制御性を向上させることができる。
【0024】
上記両頭ピストン型斜板式圧縮機において、前記斜板には前記駆動力伝達部材に向けて突出する突起が設けられており、前記駆動力伝達部材は、前記突起が摺接可能なガイド面を有しており、前記斜板の傾角変更に伴い、前記回転軸の中心軸線に対する前記ガイド面の傾斜角度が変化することが好ましい。
【0025】
対となるシリンダボア内に両頭ピストンが往復動可能に収容されている構成においては、両頭ピストンから斜板に対して作用する圧縮反力は、斜板の傾角を減少させようとする。さらに、対となるシリンダボア内に両頭ピストンが往復動可能に収容されている構成においては、斜板の傾角が減少していくにつれて、一方の圧縮室ではデッドボリュームが増加していくが、他方の圧縮室ではデッドボリュームの大幅な増加を伴うことなく吐出行程が行われる。ここで、斜板の傾角が最大傾角の状態から減少することに伴い、一方の圧縮室でデッドボリュームが大きくなっていくと、一方の圧縮室の吸入行程で、吸入圧まで低下する再膨張の時間が長くなり、両頭ピストンから斜板に対して作用する斜板の傾角が減少する方向の力が大きくなっていく。
【0026】
そして、斜板の傾角が所定の傾角まで減少して、一方の圧縮室のデッドボリュームが所定の大きさになると、一方の圧縮室から冷媒ガスが吐出されなくなる。よって、斜板の傾角が、所定の傾角から最小傾角まで減少する過程においては、一方の圧縮室では、吐出圧まで到達しなくなるため、冷媒ガスの吐出と吸入とが行われず、冷媒ガスの圧縮と膨張とが繰り返されるのみとなる。その結果、一方の圧縮室の圧力による両頭ピストンを押圧する力が小さくなっていき、両頭ピストンから斜板に対して作用する傾角が減少する方向への力が小さくなっていく。
【0027】
ここで、斜板の傾角が、最小傾角から所定の傾角までの間で変更される過程においては、一方の圧縮室における冷媒ガスの再膨張による両頭ピストンから斜板に対して斜板の傾角が減少する方向へ作用する力が比較的小さいため、斜板の傾角を、最小傾角の状態から所定の傾角まで増大させるには、制御圧室の圧力を大きくしていくだけでよい。そして、斜板の傾角が、所定の傾角から最大傾角までの間で変更される過程においては、斜板の傾角が所定の傾角であるときが、一方の圧縮室における冷媒ガスの再膨張による両頭ピストンから斜板に対して斜板の傾角が減少する方向へ作用する力が最も大きくなっている。
【0028】
すなわち、斜板の傾角が所定の傾角であるときには、両頭ピストンから斜板に対して作用する圧縮反力と、一方の圧縮室での冷媒ガスの再膨張による両頭ピストンから斜板に対して斜板の傾角が減少する方向へ作用する力との合力が最も大きくなっている。さらに、斜板の傾角が、所定の傾角の状態から最大傾角に増大していくにつれて、一方の圧縮室に生じるデッドボリュームが小さくなっていくことから、一方の圧縮室における冷媒ガスの再膨張による両頭ピストンから斜板に対して斜板の傾角が減少する方向へ作用する力が小さくなっていく。
【0029】
よって、斜板の傾角を維持するための制御圧室の圧力は、斜板の傾角が所定の傾角のときに最も大きくなり、斜板の傾角が、所定の傾角の状態から最大傾角に増大していくにつれて小さくなっていくことになる。その結果、従来では、斜板の傾角を所定の傾角から最大傾角まで増大させるために要する制御圧室の圧力と、斜板の傾角を最小傾角から所定の傾角まで増大させるために要する制御圧室の圧力との間で、制御圧室の圧力が同じ値になってしまう領域が存在することになり、斜板の傾角を正確に制御することが困難となっていた。
【0030】
そこで、両頭ピストンから斜板に対して作用する斜板の傾角が減少する方向への力を受け止めることができるように、回転軸の中心軸線に対するガイド面の傾斜角度を変化させることで、両頭ピストンから斜板に対して作用する斜板の傾角が減少する方向への力を低減させることができる。その結果、制御圧室の圧力を大きくしていくだけで、斜板の傾角が、最小傾角から最大傾角まで増加するように設定することができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、大型化を抑制しつつも、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を
図1〜
図7にしたがって説明する。なお、両頭ピストン型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」と記載する)は車両に搭載されている。
【0034】
図1に示すように、圧縮機10のハウジング11は、互いに接合された第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13と、前方側(一方側)の第1シリンダブロック12に接合されたフロントハウジング14と、後方側(他方側)の第2シリンダブロック13に接合されたリヤハウジング15とから構成されている。第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13は、ハウジング11を形成する一対のシリンダブロックである。
【0035】
フロントハウジング14と第1シリンダブロック12との間には、第1弁・ポート形成体16が介在されている。また、リヤハウジング15と第2シリンダブロック13との間には、第2弁・ポート形成体17が介在されている。
【0036】
フロントハウジング14と第1弁・ポート形成体16との間には、吸入室14a及び吐出室14bが区画されている。吐出室14bは吸入室14aの外周側に配置されている。また、リヤハウジング15と第2弁・ポート形成体17との間には、吸入室15a及び吐出室15bが区画されている。さらに、リヤハウジング15には、圧力調整室15cが形成されている。圧力調整室15cは、リヤハウジング15の中央部に位置しており、吸入室15aは、圧力調整室15cの外周側に配置されている。さらに、吐出室15bは吸入室15aの外周側に配置されている。各吐出室14b,15b同士は、図示しない吐出通路を介して接続されている。そして、吐出通路は図示しない外部冷媒回路に接続されている。
【0037】
第1弁・ポート形成体16には、吸入室14aに連通する吸入ポート16a、及び吐出室14bに連通する吐出ポート16bが形成されている。第2弁・ポート形成体17には、吸入室15aに連通する吸入ポート17a、及び吐出室15bに連通する吐出ポート17bが形成されている。各吸入ポート16a,17aには、図示しない吸入弁機構が設けられるとともに、各吐出ポート16b,17bには、図示しない吐出弁機構が設けられている。
【0038】
ハウジング11内には回転軸21が回転可能に支持されている。回転軸21において、中心軸線Lが延びる方向(回転軸21の軸方向)に沿った一端側であり、ハウジング11の前方側(一方側)に位置する前端部側は、第1シリンダブロック12に貫設された軸孔12hに挿通されている。そして、回転軸21の前端は、フロントハウジング14内に位置している。また、回転軸21において、中心軸線Lが延びる方向に沿った他端側であり、ハウジング11の後方側(他方側)に位置する後端部側は、第2シリンダブロック13に貫設された軸孔13hに挿通されている。そして、回転軸21の後端は、圧力調整室15c内に位置している。
【0039】
回転軸21は、その前端部側が軸孔12hを介して第1シリンダブロック12に回転可能に支持されるとともに、後端部側が軸孔13hを介して第2シリンダブロック13に回転可能に支持されている。フロントハウジング14と回転軸21との間にはリップシール型の軸封装置22が介在されている。
【0040】
ハウジング11内には、第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13により区画されたクランク室24が形成されている。クランク室24には、回転軸21から駆動力を得て回転するとともに、回転軸21に対して軸方向へ傾動可能な斜板23が収容されている。斜板23には、回転軸21を挿通する挿通孔23aが形成されている。
【0041】
第1シリンダブロック12には、第1シリンダブロック12の軸方向に貫通形成される第1シリンダボア12aが回転軸21の周囲に複数(
図1では1つの第1シリンダボア12aのみ図示)配列されている。各第1シリンダボア12aは、吸入ポート16aを介して吸入室14aに連通するとともに、吐出ポート16bを介して吐出室14bに連通している。第2シリンダブロック13には、第2シリンダブロック13の軸方向に貫通形成される第2シリンダボア13aが回転軸21の周囲に複数(
図1では1つの第2シリンダボア13aのみ図示)配列されている。各第2シリンダボア13aは、吸入ポート17aを介して吸入室15aに連通するとともに、吐出ポート17bを介して吐出室15bに連通している。第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13aは、前後で対となるように配置されている。対となる第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13a内には、両頭ピストン25が前後方向へ往復動可能にそれぞれ収容されている。
【0042】
各両頭ピストン25は、一対のシュー26を介して斜板23の外周部に係留されている。そして、回転軸21の回転にともなう斜板23の回転運動が、シュー26を介して両頭ピストン25の往復直線運動に変換される。各第1シリンダボア12a内には、両頭ピストン25と第1弁・ポート形成体16とによって第1圧縮室20aが区画されている。各第2シリンダボア13a内には、両頭ピストン25と第2弁・ポート形成体17とによって第2圧縮室20bが区画されている。
【0043】
第1シリンダブロック12には、軸孔12hに連続するとともに軸孔12hよりも大径である第1大径孔12bが形成されている。第1大径孔12bは、クランク室24に連通している。クランク室24と吸入室14aとは、第1シリンダブロック12及び第1弁・ポート形成体16を貫通する吸入通路12cにより連通している。
【0044】
第2シリンダブロック13には、軸孔13hに連続するとともに軸孔13hよりも大径である第2大径孔13bが形成されている。第2大径孔13bは、クランク室24に連通している。クランク室24と吸入室15aとは、第2シリンダブロック13及び第2弁・ポート形成体17を貫通する吸入通路13cにより連通している。
【0045】
第2シリンダブロック13の周壁には吸入口13sが形成されている。吸入口13sは外部冷媒回路に接続されている。そして、外部冷媒回路から吸入口13sを介してクランク室24に吸入された冷媒ガスは、吸入通路12c,13cを介して吸入室14a,15aに吸入される。よって、吸入室14a,15a及びクランク室24は、吸入圧領域となっており、圧力がほぼ等しくなっている。
【0046】
回転軸21には、第1大径孔12b内に配置される環状のフランジ部21fが突設されている。回転軸21の軸方向において、フランジ部21fと第1シリンダブロック12との間にはスラスト軸受27aが配設されている。
【0047】
回転軸21におけるフランジ部21fよりも後方側であって、且つ斜板23よりも前方側には、回転軸21と一体回転可能な環状の駆動力伝達部材31が固定されている。駆動力伝達部材31は、環状の本体部31aと、本体部31aにおける斜板23側の端面から斜板23側に向けて突出する一対のアーム31bとを有する。一対のアーム31b間の底部には、ガイド面31cが形成されている。
【0048】
また、斜板23の上端側(
図1における上側)には、駆動力伝達部材31に向けて突出する突起23cが設けられている。突起23cは、一対のアーム31b間に挿入されており、一対のアーム31bに挟まれた状態で一対のアーム31b間をガイド面31cに沿って移動可能である。突起23cの先端部はガイド面31cを摺接可能である。斜板23は、一対のアーム31bに挟まれた突起23cとガイド面31cとの連係により回転軸21の軸方向へ傾動可能であるとともに、回転軸21の駆動力が一対のアーム31bを介して突起23cに伝達されて、斜板23が回転運動を行う。斜板23が回転軸21の軸方向へ傾動する際、突起23cの先端部は、ガイド面31c上をスライド移動するようになっている。
【0049】
フランジ部21fと駆動力伝達部材31との間には、駆動力伝達部材31に対して回転軸21の軸方向に移動可能な有底円筒状の移動体32が配置されている。よって、駆動力伝達部材31及び移動体32は、第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13の内部において、両頭ピストン25が往復動を行う領域よりも回転軸21の径方向内側のスペースに収容されており、回転軸21の軸方向において斜板23に対して前方側(一方側)に配置されている。
【0050】
移動体32は、回転軸21を挿通する挿通孔32eが形成された円環状の底部32aと、底部32aの外周縁から回転軸21の軸方向に沿って延びるとともに回転軸21を覆う筒部32bとから形成されている。移動体32は、筒部32bの内周面321bが、駆動力伝達部材31の本体部31aの外周面311aに摺接しながら回転軸21の軸方向の移動を許容される。そして、移動体32は、回転軸21と一体回転可能になっている。筒部32bの内周面321bと駆動力伝達部材31の本体部31aとの間はシール部材33によりシールされている。
【0051】
底部32aの回転軸21が挿通される部位には、駆動力伝達部材31に向けて回転軸21の軸方向に突出する凸部32fが設けられている。凸部32fの内周面には、環状の保持溝32dが形成されている。保持溝32dには、挿通孔32eと回転軸21との間をシールするシール部材34が保持されている。そして、駆動力伝達部材31と移動体32とにより制御圧室35が区画されている。
【0052】
回転軸21には、回転軸21の軸方向に沿って延びる第1軸内通路21aが形成されている。第1軸内通路21aの後端は、圧力調整室15cに開口している。さらに、回転軸21には、回転軸21の径方向に沿って延びる第2軸内通路21bが形成されている。第2軸内通路21bの一端は第1軸内通路21aの先端に連通するとともに、他端は制御圧室35に開口している。よって、制御圧室35と圧力調整室15cとは、第1軸内通路21a及び第2軸内通路21bを介して連通している。
【0053】
図2に示すように、圧力調整室15cと吸入室15aとは抽気通路36を介して連通している。抽気通路36にはオリフィス36aが設けられており、抽気通路36を流れる冷媒ガスの流量がオリフィス36aにより絞られる。また、圧力調整室15cと吐出室15bとは給気通路37を介して連通している。給気通路37上には電磁式の制御弁37sが設けられている。制御弁37sは、吸入室15aの圧力に基づき給気通路37の開度を調整することが可能になっている。そして、制御弁37sにより、給気通路37を流れる冷媒ガスの流量が調整される。
【0054】
吐出室15bから給気通路37、圧力調整室15c、第1軸内通路21a、及び第2軸内通路21bを介した制御圧室35への冷媒ガスの導入と、制御圧室35から第2軸内通路21b、第1軸内通路21a、圧力調整室15c、及び抽気通路36を介した吸入室15aへの排出が行われることにより、制御圧室35の内部の圧力が変更される。そして、制御圧室35とクランク室24との圧力差に伴って移動体32が駆動力伝達部材31に対して回転軸21の軸方向に移動するようになっている。よって、制御圧室35に導入される冷媒ガスは、移動体32を回転軸21の軸方向に移動させるために制御圧室35に導入される制御ガスである。
【0055】
図1に示すように、移動体32の筒部32bの先端には、斜板23側に向けて突出する連結部32cが設けられている。連結部32cには、円柱状のピン41を挿通可能な長孔形状の挿通孔32hが形成されている。また、斜板23の下端側(
図1における下側)には、ピン41を挿通可能な円孔状の挿通孔23hが形成されている。そして、ピン41によって連結部32cが斜板23の下端側に連結されている。ピン41は、挿通孔23hに圧入されることにより斜板23に対して拘束されるとともに、挿通孔32hにスライド移動可能に保持されている。
【0056】
斜板23における駆動力伝達部材31とは反対側の端面には、筒部材42が一体的に設けられている。筒部材42の貫通孔42hは、斜板23の挿通孔23aに連通するとともに、貫通孔42hの内側には、回転軸21が挿通されている。筒部材42には、貫通孔42h内に開口する一対の挿通孔42aが形成されている。そして、両挿通孔42aには、円柱状の当接ピン43が挿通されるとともに、当接ピン43は、貫通孔42h内を横切るように架け渡されている。当接ピン43は、回転軸21の軸方向において斜板23に対して後方側(他方側)に配置されている。
【0057】
回転軸21は、斜板23の傾角の変更に伴って当接ピン43を案内する案内面44を有している。案内面44は、斜板23から離間するにつれて回転軸21の中心軸線Lに近づくように直線状に傾斜している。
【0058】
上記構成の圧縮機10において、制御弁37sの弁開度を減少させると、吐出室15bから給気通路37、圧力調整室15c、第1軸内通路21a、及び第2軸内通路21bを介して制御圧室35へ導入される冷媒ガスの量が少なくなる。そして、制御圧室35から第2軸内通路21b、第1軸内通路21a、圧力調整室15c、及び抽気通路36を介して冷媒ガスが吸入室15aへ排出されることにより、制御圧室35の圧力が吸入室15aの圧力に近づく。よって、制御圧室35とクランク室24との圧力差が少なくなることで、移動体32が回転軸21の軸方向に案内されながら、底部32aが駆動力伝達部材31に近づくように移動する。
【0059】
図3に示すように、ピン41が、挿通孔32hの内側でスライド移動するとともに、突起23cがガイド面31c上を回転軸21に近づくようにスライド移動する。さらに、当接ピン43が回転軸21の中心軸線Lに近づくように案内面44に沿ってスライド移動する。その結果、斜板23の下端側が、駆動力伝達部材31に対して離間する方向へ揺動する。これにより、斜板23の傾角が小さくなり、両頭ピストン25のストロークが小さくなって吐出容量が減る。
【0060】
制御弁37sの弁開度を増大させると、吐出室15bから給気通路37、圧力調整室15c、第1軸内通路21a、及び第2軸内通路21bを介して制御圧室35へ導入される冷媒ガスの量が多くなる。このため、制御圧室35の圧力が吐出室15bの圧力に近づく。よって、制御圧室35とクランク室24との圧力差が大きくなることで、移動体32が回転軸21の軸方向に案内されながら、底部32aが駆動力伝達部材31から離間するように移動する。
【0061】
図1に示すように、ピン41が、挿通孔32hの内側でスライド移動するとともに、突起23cがガイド面31c上を回転軸21から離間するようにスライド移動する。さらに、当接ピン43が回転軸21の中心軸線Lから離間するように案内面44に沿ってスライド移動する。その結果、斜板23の下端側が、駆動力伝達部材31に対して接近する方向へ揺動する。これにより、斜板23の傾角が大きくなり、両頭ピストン25のストロークが大きくなって吐出容量が増える。このように、移動体32が、回転軸21の軸方向の移動を許容されることで、制御圧室35の内部の圧力変更に応じた斜板23の傾角変更が行われる。
【0062】
図4に示すように、当接ピン43は、斜板23の最大傾角θmax時において、斜板23の中心Oと回転軸21の中心軸線Lとが一致するように、案内面44に案内される。また、
図5に示すように、当接ピン43は、斜板23の最小傾角θmin時において、斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lよりも当接ピン43側に位置するように、案内面44に案内される。よって、案内面44は、斜板23の最大傾角θmax時において、斜板23の中心Oと回転軸21の中心軸線Lとが一致するとともに、斜板23の最小傾角θmin時において、斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lよりも当接ピン43側に位置するように、傾斜角度が設定されている。
【0063】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、圧縮機10においては、両頭ピストン25から斜板23に対して圧縮反力P1,P2が作用する。この圧縮反力P1,P2は、斜板23の傾角を変更させるように斜板23に対して作用する。斜板23の傾角が最大傾角θmaxと最小傾角θminとの間の状態では、圧縮反力P1の方が圧縮反力P2よりも大きくなる。斜板23は、圧縮反力P1,P2を受けることによって、回転軸21の径方向(
図4の上方向)に移動しようとする。このとき、斜板23から当接ピン43を介して回転軸21の案内面44に力F1が作用する。すなわち、当接ピン43は回転軸21に支持される支持部材である。
【0064】
また、回転軸21の外周面のうち、回転軸21の案内面44側の面は、案内面44以外で斜板23とは接していない。挿通孔23aは、挿通孔23aの内周面のうち、案内面44側の部位231aが回転軸21に接しないように形成されている。
図4及び
図5に示すように、斜板23の最大傾角θmaxから最小傾角θminのいずれの傾角でも、挿通孔23aの内周面のうち、案内面44側の部位231aは回転軸21に接しない。斜板23は、駆動力伝達部材31、移動体32及び当接ピン43を介して回転軸21に支持されて、回転軸21に対する傾角が規定されている。
【0065】
そして、力の釣り合いの関係により、回転軸21の案内面44に作用する力F1の反力F2が回転軸21の案内面44から当接ピン43を介して斜板23に作用する。ここで、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位(突起23cとガイド面31cとの接触部位)を中心とした斜板23に対する力のモーメントを考えると、反力F2が作用する部位が、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位に近いほど、反力F2は大きくなる。
【0066】
本実施形態では、当接ピン43が、回転軸21の軸方向において斜板23に対して後方側に配置されている。すなわち、当接ピン43は、回転軸21の軸方向において駆動力伝達部材31から斜板23を挟んで反対側に配置されている。これによれば、反力F2が作用する部位が、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位から極力遠ざかっている。よって、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位を中心とした斜板23に対する力のモーメントにおいて、反力F2が極力小さくなるため、斜板23の傾角の変更がスムーズに行われる。
【0067】
さらに、当接ピン43が、回転軸21の軸方向において駆動力伝達部材31及び移動体32から斜板23を挟んで反対側に配置されている。このため、当接ピン43が、回転軸21の軸方向において斜板23に対して前方側に配置されている場合に比べると、両頭ピストン25が往復動を行う領域よりも回転軸21の径方向内側のスペースに必要となる駆動力伝達部材31及び移動体32の収容スペースがコンパクト化される。
【0068】
また、当接ピン43を配置している側に、駆動力伝達部材31及び移動体32が配置されていないため、回転軸21の軸方向において、当接ピン43の配置スペースが確保される。このため、当接ピン43が、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位から大きく離間する。
【0069】
斜板23における回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側の部位の回転軸21の中心軸線Lから最外径までの距離H1と、斜板23における当接ピン43側の部位の回転軸21の中心軸線Lから最外径までの距離H2とは、斜板23の傾角の変更に伴って変位する。
【0070】
図6では、斜板23の傾角の変更に伴う回転軸21の中心軸線Lに対する斜板23の中心Oの変位を実線L10で示している。
ここで、例えば、斜板23の最大傾角θmax時において斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lよりも当接ピン43とは反対側に位置するとともに、斜板23の最小傾角θmin時において斜板23の中心Oと回転軸21の中心軸線Lとが一致するように当接ピン43が案内面44によって案内される場合を考える。この場合、斜板23の傾角の変更の途中で、斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lから回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側へ大きく離間してしまう。
【0071】
すると、斜板23における回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側の部位の外周縁の回転軸21の中心軸線Lに対する最大離間距離が、斜板23における当接ピン43側の部位の外周縁の回転軸21の中心軸線Lに対する最大離間距離よりも大きくなってしまう。その結果、斜板23における回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側の部位の外周縁が、回転軸21の中心軸線Lから最も離間したときに、斜板23が両頭ピストン25に干渉してしまうことを回避するために、両頭ピストン25における斜板23側の部位に逃げ部(凹部)を形成しておく必要がある。
【0072】
本実施形態では、斜板23の最大傾角θmax時において斜板23の中心Oと回転軸21の中心軸線Lとが一致するとともに、斜板23の最小傾角θmin時において斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lよりも当接ピン43側に位置するように当接ピン43を案内面44によって案内する。これによれば、
図6において実線L10で示すように、斜板23の傾角の変更の途中で、斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lから回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側へ大きく離間してしまうことが抑制される。
【0073】
図7では、斜板23の傾角の変更に伴う斜板23における回転軸21を挟んだ当接ピン43とは反対側の部位の回転軸21の中心軸線Lからの最外径の変位を実線L11で示すとともに、斜板23の傾角の変更に伴う斜板23における当接ピン43側の部位の回転軸21の中心軸線Lからの最外径の変位を破線L12で示している。
【0074】
図7に示すように、斜板23における回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側の部位の外周縁の回転軸21の中心軸線Lに対する最大離間距離と、斜板23における当接ピン43側の部位の外周縁の回転軸21の中心軸線Lに対する最大離間距離とが同じ距離Hxとなる。よって、斜板23が両頭ピストン25に干渉してしまうことを回避するために、両頭ピストン25における斜板23側の部位に逃げ部を形成する必要が無くなる。
【0075】
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)回転軸21から斜板23に対して作用する反力F2を受ける当接ピン43が、回転軸21の軸方向において斜板23に対して後方側に配置されている。すなわち、当接ピン43は、回転軸21の軸方向において駆動力伝達部材31から斜板23を挟んで反対側に配置されている。これによれば、回転軸21から斜板23に対して反力F2が作用する部位を、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位から極力遠ざけることができる。よって、駆動力伝達部材31と斜板23との連結部位を中心とした斜板23に対する力のモーメントの釣り合いを考えると、斜板23に対して作用する反力F2を極力小さくすることができるため、斜板23の傾角の変更をスムーズに行うことができる。さらに、当接ピン43が、回転軸21の軸方向において駆動力伝達部材31及び移動体32から斜板23を挟んで反対側に配置されている。このため、当接ピン43が、回転軸21の軸方向において斜板23に対して前方側に配置されている場合に比べると、両頭ピストン25が往復動を行う領域よりも回転軸21の径方向内側のスペースに必要となる駆動力伝達部材31及び移動体32の収容スペースをコンパクト化することができる。その結果、圧縮機10の体格の大型化を抑制しつつも、斜板23の傾角の変更をスムーズに行うことができる。
【0076】
(2)回転軸21は、斜板23の傾角の変更に伴って当接ピン43を案内する案内面44を有している。案内面44は、斜板23の最大傾角θmax時において斜板23の中心Oと回転軸21の中心軸線Lとが一致するとともに、斜板23の最小傾角θmin時において斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lよりも当接ピン43側に位置するように当接ピン43を案内可能に形成されている。これによれば、斜板23の傾角の変更の途中で、斜板23の中心Oが回転軸21の中心軸線Lから回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側へ大きく離間してしまうことを抑制することができる。そして、斜板23における回転軸21を挟んで当接ピン43とは反対側の部位の外周縁の回転軸21の中心軸線Lに対する最大離間距離と、斜板23における当接ピン43側の部位の外周縁の回転軸21の中心軸線Lに対する最大離間距離とを同じに設定することが可能となる。よって、斜板23が両頭ピストン25に干渉してしまうことを回避するために、両頭ピストン25における斜板23側の部位に逃げ部を形成する必要が無くなり、両頭ピストン25の強度を確保することができる。
【0077】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を
図8〜
図10にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0078】
図8及び
図9に示すように、案内面44は、斜板23の傾角が最小傾角θminから増大する方向に移動体32が移動するにつれて、当接ピン43が回転軸21の中心軸線Lから離間するように案内される傾斜部44aを有している。傾斜部44aは、斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動するにつれて、回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が漸減していくように弧状に湾曲している。
【0079】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
当接ピン43と傾斜部44aとの接触部においては、斜板23から当接ピン43を介して傾斜部44aに法線方向の力F3が作用する。そして、傾斜部44aと当接ピン43との接触部においては、力の釣り合いの関係により、傾斜部44aに作用する法線方向の力F3の反力である力F4が、傾斜部44aから当接ピン43を介して斜板23に作用する。この斜板23に作用する力F4は、移動体32の移動方向に直交する方向(垂直方向)の成分を有する力F4yと、移動体32の移動方向(水平方向)の成分を有する力F4xとに分解される。
【0080】
最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御を行う際の制御圧室35の圧力は、吸入圧に近づいている。制御圧室35の圧力を吸入圧よりも小さくすることはできないため、最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室35の圧力が吸入圧を下回ってしまうと、最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御を行うことができなくなってしまう。
【0081】
図8に示すように、移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは、傾斜部44aから当接ピン43及び斜板23を介して移動体32に伝達される。この移動体32に伝達された移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは、斜板23の傾角が最小傾角θminから増大する方向に移動体32が移動する際に、移動体32の移動を妨げる力となり得る。よって、制御圧室35の圧力を比較的大きくしなければ、移動体32の移動を行うことができなくなる。
【0082】
図10には、傾斜部44aが、斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動するにつれて、回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が漸減していくように弧状に湾曲している場合の制御圧室35の圧力と斜板23の傾角との関係を実線L13で示している。また、案内面44が、斜板23から離間するにつれて回転軸21の中心軸線Lに近づくように直線状に傾斜している場合(第1の実施形態の案内面44の場合)の制御圧室35の圧力と斜板23の傾角との関係を破線L14で示している。
【0083】
斜板23の傾角が最小傾角θmin付近になっているときには、傾斜部44aと当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは、案内面44と当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力よりも大きくなっている。その結果、
図10に示すように、最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室35の圧力が吸入圧を下回ってしまうことが抑制され、最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御性が向上する。
【0084】
最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御を行う際の制御圧室35の圧力は、吐出圧に近づいている。制御圧室35の圧力を吐出圧よりも大きくすることはできないため、最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室35の圧力が吐出圧を上回ってしまうと、最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御を行うことができなくなってしまう。
【0085】
図9に示すように、斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動していくと、傾斜部44aにおける回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が漸減していくことから、傾斜部44aと当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは小さくなっていく。その結果、斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動する際の移動体32の移動を妨げる力が少なくなり、移動体32を移動させるために必要となる制御圧室35の圧力が比較的小さくても、移動体32の移動を行うことが可能となる。
【0086】
斜板23の傾角が最小傾角θmax付近になっているときには、傾斜部44aと当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは、案内面44と当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力よりも小さくなっている。その結果、
図10に示すように、最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室35の圧力が吐出圧を上回ってしまうことが抑制され、最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御性が向上する。
【0087】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)及び(2)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(3)案内面44は、斜板23の傾角が最小傾角θminから増大する方向に移動体32が移動するにつれて、当接ピン43が回転軸21の中心軸線Lから離間するように案内される傾斜部44aを有している。傾斜部44aは、斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動するにつれて、回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が漸減していく。これによれば、傾斜部44aと当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは、傾斜部44aから当接ピン43及び斜板23を介して移動体32に伝達される。この移動体32に伝達された移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは、斜板23の傾角が最小傾角θminから増大する方向に移動体32が移動する際に、移動体32の移動を妨げる力となり得る。よって、制御圧室35の圧力を比較的大きくしなければ、移動体32の移動を行うことができなくなる。その結果、最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室35の圧力が吸入圧を下回ってしまうことを抑制することができ、最小傾角θmin付近の斜板23の傾角の制御性を向上させることができる。
【0088】
(4)斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動していくと、傾斜部44aにおける回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が漸減していくことから、傾斜部44aと当接ピン43との接触部において作用する移動体32の移動方向の成分を有する力F4xは小さくなっていく。その結果、斜板23の傾角が増大する方向に移動体32が移動する際の移動体32の移動を妨げる力を少なくすることができ、移動体32を移動させるために必要となる制御圧室35の圧力を小さくすることができる。よって、最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御を行う際に必要となる制御圧室35の圧力が吐出圧を上回ってしまうことを抑制することができ、最大傾角θmax付近の斜板23の傾角の制御性を向上させることができる。
【0089】
(5)従来から、対となる第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13a内に両頭ピストン25が往復動可能に収容されている構成においては、第2圧縮室20bではデッドボリュームの大幅な増加は生じないものの、多少のデッドボリュームの増加は生じている。しかし、本実施形態によれば、傾斜部44aの形状によって、斜板23における軸方向の位置を変更することが可能となる。このため、斜板23の傾角が変更された場合であっても、傾斜部44aの形状によっては、第2圧縮室20bのデッドボリュームを一定に保つことが可能となる。すなわち、傾斜部44aの形状を適宜設定することで、デッドボリュームの調整を行うことが可能となる。
【0090】
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を
図11及び
図12にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0091】
図11に示すように、ガイド面31cは、斜板23側に向けて膨出するように弧状に湾曲している。よって、ガイド面31cは、斜板23の傾角変更に伴い、回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が変化している。
【0092】
次に、第3の実施形態の作用について説明する。
対となる第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13a内に両頭ピストン25が往復動可能に収容されている構成においては、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する圧縮反力P1,P2は、斜板23の傾角を減少させようとする。
【0093】
さらに、対となる第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13a内に両頭ピストン25が往復動可能に収容されている構成においては、斜板23の傾角が減少していくにつれて、第1圧縮室20aではデッドボリューム(上死点位置にある両頭ピストン25と第1弁・ポート形成体16との間のクリアランス)が増加していく。一方、第2圧縮室20bではデッドボリュームの大幅な増加を伴うことなく吐出行程が行われる。ここで、斜板23の傾角が最大傾角θmaxの状態から減少することに伴い、第1圧縮室20aでデッドボリュームが大きくなっていくと、第1圧縮室20aの吸入行程で、吸入圧まで低下する再膨張の時間が長くなり、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する斜板23の傾角が減少する方向の力が大きくなっていく。
【0094】
そして、斜板23の傾角が所定の傾角θxまで減少して、第1圧縮室20aのデッドボリュームが所定の大きさになると、第1圧縮室20aから冷媒ガスが吐出されなくなる。よって、斜板23の傾角が、所定の傾角θxから最小傾角θminまで減少する過程においては、第1圧縮室20aでは、吐出圧まで到達しなくなるため、冷媒ガスの吐出と吸入とが行われず、冷媒ガスの圧縮と膨張とが繰り返されるのみとなる。その結果、第1圧縮室20aの圧力による両頭ピストン25を押圧する力が小さくなっていき、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する傾角が減少する方向への力が小さくなっていく。
【0095】
ここで、
図12において、ガイド面31cが直線状に傾斜しており、回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が一定の場合(第1の実施形態の場合)における制御圧室35の圧力と斜板23の傾角との関係を破線L15で示す。斜板23の傾角が、最小傾角θminから所定の傾角θxまでの間で変更される過程においては、第1圧縮室20aにおける冷媒ガスの再膨張による両頭ピストン25から斜板23に対して斜板23の傾角が減少する方向へ作用する力が比較的小さい。よって、
図12に示すように、斜板23の傾角を、最小傾角θminの状態から所定の傾角θxまで増大させるには、制御圧室35の圧力を大きくしていくだけでよい(破線L1における点O〜点Pの状態)。
【0096】
そして、斜板23の傾角が、所定の傾角θxから最大傾角θmaxまでの間で変更される過程においては、斜板23の傾角が所定の傾角θxであるときが第1圧縮室20aにおける冷媒ガスの再膨張による両頭ピストン25から斜板23に対して斜板23の傾角が減少する方向へ作用する力が最も大きくなっている。
【0097】
すなわち、斜板23の傾角が所定の傾角θxであるときには、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する圧縮反力P1,P2と、第1圧縮室20aでの冷媒ガスの再膨張による両頭ピストン25から斜板23に対して斜板23の傾角が減少する方向へ作用する力との合力が最も大きくなっている。
【0098】
さらに、斜板23の傾角が、所定の傾角θxの状態から最大傾角θmaxに増大していくにつれて、第1圧縮室20aに生じるデッドボリュームが小さくなっていくことから、第1圧縮室20aにおける冷媒ガスの再膨張による両頭ピストン25から斜板23に対して斜板23の傾角が減少する方向へ作用する力が小さくなっていく。
【0099】
よって、斜板23の傾角を維持するための制御圧室35の圧力は、斜板23の傾角が所定の傾角θxのときに最も大きくなり、斜板23の傾角が、所定の傾角θxの状態から最大傾角θmaxに増大していくにつれて小さくなっていくことになる(破線L1における点P〜点Qの状態)。その結果、従来では、斜板23の傾角を所定の傾角θxから最大傾角θmaxまで増大させるために要する制御圧室35の圧力と、斜板23の傾角を最小傾角θminから所定の傾角θxまで増大させるために要する制御圧室35の圧力との間で、制御圧室35の圧力が同じ値になってしまう領域Z1が存在することになる。よって、斜板23の傾角を正確に制御することが困難となっていた。
【0100】
図11に示すように、本実施形態では、ガイド面31cと突起23cとの接触部において、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する斜板23の傾角が減少する方向への力が受け止められるように、ガイド面31cの傾斜角度が調整されている。その結果、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する斜板23の傾角が減少する方向への力が低減される。このため、
図12において実線L16で示すように、制御圧室35の圧力を大きくしていくだけで、斜板23の傾角が、最小傾角θminから最大傾角θmaxまで増加するように設定される。
【0101】
したがって、第3の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)及び(2)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(6)斜板23の傾角変更に伴い、回転軸21の中心軸線Lに対するガイド面31cの傾斜角度が変化している。これによれば、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する斜板23の傾角が減少する方向への力を受け止められることができるように、回転軸21の中心軸線Lに対するガイド面31cの傾斜角度を変化させることで、両頭ピストン25から斜板23に対して作用する斜板23の傾角が減少する方向への力を低減することができる。その結果、制御圧室35の圧力を大きくしていくだけで、斜板23の傾角が、最小傾角θminから最大傾角θmaxまで増加するように設定することができる。
【0102】
(7)本実施形態によれば、ガイド面31cの形状によって、斜板23における軸方向の位置を変更することが可能となる。このため、斜板23の傾角が変更された場合であっても、ガイド面31cの形状によっては、第2圧縮室20bのデッドボリュームを一定に保つことが可能となる。すなわち、ガイド面31cの形状を適宜設定することで、デッドボリュームの調整を行うことが可能となる。
【0103】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記各実施形態において、案内面44が傾斜部44aを有しており、且つガイド面31cが、斜板23の傾角変更に伴い、回転軸21の中心軸線Lに対する傾斜角度が変化していてもよい。
【0104】
○ 上記各実施形態において、例えば、斜板23の最大傾角θmax時及び最小傾角θmin時において斜板23の中心Oと回転軸21の中心軸線Lとが一致するように当接ピン43が案内面44によって案内されるようになっていてもよい。