(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗物用シートの側方から加わる衝撃に応じてインフレータから供給される膨張用ガスにより、前記乗物用シートに着座した乗員の側方で展開及び膨張するエアバッグ本体を有するエアバッグを備え、
前記エアバッグ本体は第1膨張室と、縦区画部を介して前記第1膨張室の前側に隣接する第2膨張室と、前記第1膨張室及び前記第2膨張室のうち少なくとも前記第2膨張室に対し横区画部を介して下側に隣接し、前記乗員の腰部の側方で膨張する第3膨張室とに区画され、
前記横区画部は、略前後方向に延びるとともに、その後端部から前下方に向けて延びる弁体部を備えており、
前記第1膨張室及び前記第2膨張室を連通させる連通孔が前記縦区画部に設けられ、
前記エアバッグ本体内には、前記インフレータの少なくともガス噴出部を取り囲んで略上下方向に延びるガス流通路が、前記第1膨張室及び前記第3膨張室に跨って設けられ、
前記ガス流通路は、前記エアバッグ本体の後部において略上下方向に延びて前記横区画部に交差する筒状のインナチューブにより構成され、
前記インナチューブは、結合部により前記横区画部に結合され、
前記インナチューブの上端部には、前記第1膨張室のうち前記乗員の肩部の側方で膨張する箇所に面して上開口部が設けられ、前記インナチューブの下端部には、前記第3膨張室に面して下開口部が設けられ、
前記インナチューブの上端部は、前記第1膨張室の上端部に位置しており、
前記インナチューブは、その下端部から前下方に向けて延びる延出部を備えており、
前記下開口部には、前記第3膨張室から前記第1膨張室への膨張用ガスの流通を規制する逆止弁が設けられており、
前記逆止弁は、前記横区画部の弁体部と前記インナチューブの延出部とが相互に結合されて構成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
乗物用シートの側方から加わる衝撃に応じてインフレータから供給される膨張用ガスにより、前記乗物用シートに着座した乗員の側方で展開及び膨張するエアバッグ本体を有するエアバッグを備え、
前記エアバッグ本体は第1膨張室と、縦区画部を介して前記第1膨張室の前側に隣接する第2膨張室と、前記第1膨張室及び前記第2膨張室のうち少なくとも前記第2膨張室に対し横区画部を介して下側に隣接し、前記乗員の腰部の側方で膨張する第3膨張室とに区画され、
前記横区画部は、略前後方向に延びるとともに、その後端部から前下方に向けて延びる弁体部を備えており、
前記第1膨張室及び前記第2膨張室を連通させる連通孔が前記縦区画部に設けられ、
前記エアバッグ本体内には、前記インフレータの少なくともガス噴出部を取り囲んで略上下方向に延びるガス流通路が、前記第1膨張室及び前記第3膨張室に跨って設けられ、
前記ガス流通路は、前記エアバッグ本体の後部において略上下方向に延びて前記横区画部に交差する筒状のインナチューブにより構成され、
前記インナチューブは、結合部により前記横区画部に結合され、
前記インナチューブの上端部には、前記第1膨張室のうち前記乗員の肩部の側方で膨張する箇所に面して上開口部が設けられ、前記インナチューブの下端部には、前記第3膨張室に面して下開口部が設けられ、
前記上開口部は、前記連通孔より上側に位置しており、
前記インナチューブは、その下端部から前下方に向けて延びる延出部を備えており、
前記下開口部には、前記第3膨張室から前記第1膨張室への膨張用ガスの流通を規制する逆止弁が設けられており、
前記逆止弁は、前記横区画部の弁体部と前記インナチューブの延出部とが相互に結合されて構成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、サイドエアバッグ装置の第1実施形態として、乗物としての車両に装備されるサイドエアバッグ装置について、
図1〜
図20を参照して説明する。
【0028】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)についての中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とするものとする。また、各図においては、「前方」、「後方」、「車内側」、「車外側」を、それぞれ「前」、「後」、「内」、「外」と記載するものとする。
【0029】
また、車両用シートには、標準的な体格を有する乗員(大人)が、予め定められた姿勢(正規の姿勢)で着座しているものとする。
図1及び
図2に示すように、車両10において側壁部11の車内側の近傍には、乗物用シートとして車両用シート12が配置されている。ここで、側壁部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応する側壁部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応する側壁部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
【0030】
車両用シート12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立するシートバック14とを備えている。車両用シート12は、シートバック14が前方を向く姿勢で車両10に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
【0031】
シートバック14は、シートバック本体15と、そのシートバック本体15の幅方向についての両側部に設けられた一対のサイドサポート部16とを備えている。シートバック本体15は後側へ傾斜しており、乗員Pの上半身を後側から支える。両サイドサポート部16は、シートバック本体15から前方へ突出しており、シートクッション13に腰掛けてシートバック本体15に凭れた乗員Pの上半身の車幅方向についての動きを規制する。
【0032】
次に、シートバック14において、車外側のサイドサポート部16を含む車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック14内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、
図3に示すように、シートバック14内の車外側部分に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部17」という)は、金属板を曲げ加工することによって形成されている。サイドフレーム部17を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド18が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード19が配置されている。なお、シートパッド18は表皮によって被覆されているが、
図3ではその表皮の図示が省略されている。後述する
図17についても同様である。
【0033】
シートパッド18内において、サイドフレーム部17の車外側近傍には収納部21が設けられている。この収納部21には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。
【0034】
収納部21の角部からは、斜め前かつ車外側に向けてスリット22が延びている。シートパッド18の前側の角部18cとスリット22とによって挟まれた箇所(
図3において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ40によって破断される破断予定部23を構成している。
【0035】
エアバッグモジュールAMは、インフレータアセンブリ30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。
<インフレータアセンブリ30>
図3〜
図5に示すように、インフレータアセンブリ30は、ガス発生器としてのインフレータ31と、そのインフレータ31を覆うリテーナ32とを備えている。第1実施形態では、インフレータ31として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ31は略上下方向に延びる略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ31は、その下端部にガス噴出部31aを有している。また、インフレータ31の上端部には、同インフレータ31への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0036】
なお、インフレータ31としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0037】
一方、リテーナ32は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ31をエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部17に締結する機能を有する部材である。リテーナ32の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって、略上下方向へ延びる略筒状に形成されている。リテーナ32の少なくとも下端は開放端32aとなっている。リテーナ32においてガス噴出部31aの略前方となる箇所には窓部33が設けられている。そして、インフレータ31から噴出された膨張用ガスの多くが、開放端32a及び窓部33を通じてリテーナ32の略下方及び略前方へ噴き出される。
【0038】
リテーナ32には、これを上記サイドフレーム部17に取付けるための係止部材として、複数本のボルト34が固定されている。
なお、インフレータアセンブリ30は、インフレータ31とリテーナ32とが一体になったものであってもよい。
【0039】
図1及び
図2に示すように、エアバッグ40の外殻部分はエアバッグ本体41によって構成されている。
<エアバッグ本体41>
図4は、エアバッグ本体41が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)のエアバッグモジュールAMを示している。また、
図5(a)は、エアバッグモジュールAMの内部構造を示すべく、
図4の非膨張展開状態のエアバッグ本体41が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールAMを乗員Pとともに示している。
【0040】
図4及び
図5(a)に示すように、エアバッグ本体41は、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、その中央部分に設定した折り線42に沿って前方へ二つ折りして車両用シート12の幅方向(車幅方向)に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ本体41の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを本体布部43(
図5(a)参照)といい、車外側に位置するものを本体布部44(
図4参照)というものとする。
【0041】
なお、第1実施形態では、折り線42がエアバッグ本体41の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線42が他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ本体41は折り線42に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ本体41は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片を、袋状となるように結合させることにより形成される。さらに、エアバッグ本体41は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
【0042】
エアバッグ本体41においては、両本体布部43,44の外形形状が、折り線42を対称軸として互いに線対称の関係にある(
図6参照)。各本体布部43,44の形状・大きさは、エアバッグ本体41が車両用シート12と側壁部11との間で展開及び膨張したときに、その車両用シート12に着座している乗員Pの上半身の多くの部分(腰部PPから肩部PSにかけての部位)の側方となる領域を占有し得るように設定されている。
【0043】
上記両本体布部43,44としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0044】
両本体布部43,44の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部45においてなされている。第1実施形態では、周縁結合部45の大部分は、両本体布部43,44の周縁部のうち、後端部(折り線42の近傍部分)を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。この点は、後述する外結合部72,84,85、内結合部73,93、結合部76,77、中央結合部111及び周縁結合部112についても同様である。
【0045】
上記縫製に関し、
図4〜
図12及び
図18では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方から見た状態を示している(
図4における周縁結合部45等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線であり、これは、例えば布片の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸を示している(
図5(a)における内結合部93等参照)。3番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線であり、これは、縫製部分を通る断面に沿った縫糸の断面を示している(
図5(a)における周縁結合部45等参照)。
【0046】
図4〜
図6に示すように、両本体布部43,44間であって、周縁結合部45によって囲まれた空間は、膨張用ガスによって乗員Pの上半身の側方で展開及び膨張することにより、同上半身の多くの部分を拘束して衝撃から保護するための膨張部46となっている。
【0047】
なお、周縁結合部45は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する外結合部72,84,85、内結合部73,93、結合部76,77、中央結合部111及び周縁結合部112についても同様である。
【0048】
二つ折りされた状態の各本体布部43,44の後端部であって上下方向についての中間部分には、折り線42に交差するスリット47が形成されている。両本体布部43,44においてスリット47の周りには補強部48が設けられている。補強部48は、両本体布部43,44におけるスリット47の周りを糸で縫うことで補強して、同部分が裂けるのを防止するためのものである。
【0049】
両本体布部43,44においてスリット47よりも上側部分は、他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられた内折り部49となっている。内折り部49の上端部は、上述した周縁結合部45によって両本体布部43,44の他の部分に結合されている。また、上記内折り部49の形成に伴い、スリット47が略円形に開かれて、上記インフレータアセンブリ30の挿入口51が形成されている。
【0050】
また、車内側の本体布部43について、上記折り線42の近傍であって上記スリット47の下方となる複数箇所(2箇所)には、上記リテーナ32のボルト34を挿通させるためのボルト孔52があけられている。各ボルト孔52の周りには、上記補強部48と同様に、本体布部43における各ボルト孔52の周りを糸で縫うことで補強してなる補強部53が設けられている。
【0051】
図5(a)に示すように、膨張部46の内部は、横区画部64及び縦区画部81により複数の部屋に区画されている。縦区画部81及び横区画部64は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有している。
【0052】
<横区画部64>
図5(a)及び
図6に示すように、横区画部64は強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えば織布等からなる1枚の布片を、その中央部分の折り線65に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分をエアバッグ本体41の両本体布部43,44の下部間に架設することにより形成されている。両本体布部43,44の下部とは、乗員Pの腰部PPと胸部PTとの境界部分の側方となる箇所である。
【0053】
なお、横区画部64は、折り線65に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。
横区画部64の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置する部分を構成布部66といい、車外側に位置するものを構成布部69というものとする(
図16参照)。
【0054】
車内側の構成布部66は、本体布部43の後端部から前端部まで延びる本体構成布部67と、その本体構成布部67の後端部から前下方へ向けて延びる延出部68とを備えている。車外側の構成布部69は、本体布部44の後端部から前端部まで延びる本体構成布部70と、その本体構成布部70の後端部から前下方へ向けて延びる延出部71とを備えている。
【0055】
上記のように二つ折りされた横区画部64は、折り線65を上記折り線42に合致させた状態で両本体布部43,44間に配置されている(
図16、
図20)。車内側の本体構成布部67は、その上側の周縁部に沿って設けられた外結合部72によって車内側の本体布部43に結合されている。同様に、車外側の本体構成布部70は、その上側の周縁部に沿って設けられた外結合部72によって車外側の本体布部44に結合されている。さらに、両本体構成布部67,70は、それらの下側の周縁部に沿って設けられた内結合部73によって相互に結合されている。
【0056】
さらに、上記両本体構成布部67,70の前端部は、上述した周縁結合部45によって両本体布部43,44の前端部に対し、共縫いにより結合されている。
膨張部46において横区画部64よりも下側の空間は、車両用シート12に着座している乗員Pの腰部PPの側方で展開及び膨張する第3膨張室63となっている。横区画部64が両本体布部43,44間において上下方向についての中央部よりも下方に設けられることで、第3膨張室63は、横区画部64よりも上側の部屋の総容量よりも少ない容量を有している。
【0057】
また、横区画部64は、膨張部46が展開及び膨張したとき、車幅方向に緊張させられた状態となり、膨張部46の同方向の厚みを規制する(
図20参照)。
<縦区画部81>
それぞれエアバッグ40の内部構造を示す
図13〜
図16では、各部材が厚みを省略して描かれている。また、
図13では、各内結合部93がジグザグ状に描かれている。
図5、
図13及び
図14に示すように、エアバッグ本体41が非膨張展開状態となっているときには、縦区画部81は、両本体布部43,44の間において、横区画部64に対し交差する方向である略上下方向に延びる折り線82に沿って前方へ二つ折りされている。この二つ折り状態の縦区画部81は、折り線82を両周縁部よりも上流側(インフレータアセンブリ30側)に位置させた状態で本体布部43,44の間に配設されている。
【0058】
図4及び
図10に示すように、二つ折り状態の縦区画部81の上端部は、上述した周縁結合部45によって両本体布部43,44の上端部に対し、共縫いにより結合されている。
【0059】
また、二つ折り状態の縦区画部81は、その下部において、横区画部64の両構成布部66,69の間に配置され、両本体構成布部67,70の後部に重ねられている。二つ折り状態の縦区画部81の下端部は、上述した内結合部73によって、横区画部64の両本体構成布部67,70に対し、共縫いにより結合されている。
【0060】
図6に示すように、上記縦区画部81は、展開させられた状態では、折り線82に沿う方向(以下「縦方向」という)の寸法が、同折り線82に直交する方向(以下「横方向」という)の寸法よりも長い形状を有している。
図10に示すように、縦区画部81は、横区画部64の両本体構成布部67,70に重ならない箇所では、自身の周縁部に沿って設けられた外結合部84によって本体布部43,44に結合されている。また、縦区画部81は、両本体構成布部67,70に重なる箇所では、上記各周縁部に沿って上記外結合部84の下側に設けられた外結合部85によって、本体構成布部67,70にのみ結合されている(
図15参照)。
【0061】
縦区画部81は、上記の結合により両本体布部43,44間に架設されている。縦区画部81は、エアバッグ本体41が非膨張展開状態となったときには、二つ折りされた状態となる(
図5(a)、
図13〜
図15参照)。また、縦区画部81は、第1膨張室61が膨張したとき、横方向(車幅方向)に緊張させられた状態となり(
図18参照)、第1膨張室61の同方向の厚みを規制する。
【0062】
図5(a)に示すように、横区画部64よりも上側であって、縦区画部81よりも後側の膨張室は第1膨張室61を構成し、縦区画部81よりも前側の膨張室は第2膨張室62を構成している。縦区画部81は、第1及び第2膨張室61,62が展開及び膨張したとき、乗員Pの上半身の後半部と前半部との境界部分の近傍に位置するように配置されている。第1膨張室61は、乗員Pの上半身のうち、肩部PSの側方及び胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張する。また、第2膨張室62は、胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する。
【0063】
縦区画部81は、
図10及び
図18に示すように、縦方向(上下方向)に並べられた2つの布片86,87からなる。両布片86,87は、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えば織布等からなる。
【0064】
図18に示すように、上下両布片86,87では、それらの端部88,89の端縁88e,89e同士が合致させられた状態で、端部88,89同士が帯状に重ね合わされている。上下両布片86,87は、それぞれ帯状をなす一対の重ね合わせ部91と、それ以外の箇所(以下「非重ね合わせ部92」という)との境界部分において、横方向(車幅方向)へ延びる内結合部93によって結合されている。
【0065】
なお、縦区画部81における上側の布片86及び下側の布片87の少なくとも一方は、折り線82に沿って2枚に分割されてもよい。
さらに、
図5(a)及び
図7に示すように、エアバッグ本体41内には、インフレータ31の少なくともガス噴出部31aを取り囲んで略上下方向に延びるガス流通路100が、第1膨張室61及び第3膨張室63に跨って設けられている。
【0066】
<ガス流通路100>
ガス流通路100は、エアバッグ本体41の後部において略上下方向に延びて横区画部64に交差する筒状のインナチューブ101によって構成されている。インナチューブ101は、エアバッグ本体41内の後端部において、ガス噴出部31aを含むインフレータ31の下半部と、窓部33を含むリテーナ32の下半部とを包み込んだ状態で配置されており、インフレータ31から噴出された膨張用ガスを上方又は下方へ向かうように整流する。
【0067】
インナチューブ101の形成のために、上記エアバッグ本体41と同様に、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えば織布等からなる1枚の布片が用いられている。
【0068】
インナチューブ101は上記布片を、その中央部分に設定した、上下方向へ延びる折り線102に沿って前方へ二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を筒状となるように結合させることにより形成されている。
【0069】
なお、インナチューブ101は、折り線に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。
インナチューブ101の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置する部分を構成布部103といい、車外側に位置するものを構成布部106というものとする。車内側の構成布部103は、略上下方向に細長い略矩形状の本体構成布部104と、その本体構成布部104の下端部から前下方へ向けて延びる延出部105とを備えて構成されている。本体構成布部104の上端部は第1膨張室61の上端部に位置している。本体構成布部104において、上述した本体布部43のボルト孔52に対応する箇所にはボルト孔109があけられる。延出部105は、上述した横区画部64における車内側の延出部68と略同一の形状を有している。
【0070】
車外側の構成布部106は、略上下方向に細長い略矩形状の本体構成布部107と、その本体構成布部107の下端部から前下方へ向けて延びる延出部108とを備えて構成されている。本体構成布部107の上端部は第1膨張室61の上端部に位置している。延出部108は、上述した横区画部64における車外側の延出部71と略同一の形状を有している。
【0071】
両本体構成布部104,107において、上述したエアバッグ本体41のスリット47に対応する箇所には、折り線102に跨ってスリット113が形成される。
なお、上記ボルト孔109及びスリット113は、インナチューブ101をエアバッグ本体41に組付ける過程、より詳しくは、後述する中央結合部111が設けられた後に形成されてもよい。
【0072】
上記のように二つ折りされたインナチューブ101は、折り線102を上記折り線42,65に合致させた状態で両構成布部66,69の間に配置されている。インナチューブ101は、折り線102に沿って設けられた中央結合部111(
図8参照)によってエアバッグ本体41及び横区画部64に結合されている。また、二つ折りされたインナチューブ101は、本体構成布部104,107の対向する周縁部に沿って設けられた周縁結合部112によって相互に結合されている。
【0073】
周縁結合部112は略上下方向へ直線状に延びている。周縁結合部112の上端部は、インナチューブ101の上端から下方へ一定距離離れた箇所に位置している。すなわち、本体構成布部104,107の上端部は周縁結合部112によって相互に結合されておらず、この箇所は、第1膨張室61のうち乗員Pの肩部PSの側方で膨張する箇所に面して開口する上開口部114となっている。また、周縁結合部112の下端部は、本体構成布部104,107の下端部に位置している。
【0074】
また、二つ折りされた両本体構成布部104,107の上端部は、上述した周縁結合部45によって両本体布部43,44の後上端部に対し、共縫いにより結合されている。
そして、インフレータアセンブリ30の大部分は、略上下方向へ延びる姿勢にされて、エアバッグ本体41内の後端部に収容されている。インフレータアセンブリ30の上部は、挿入口51を通り、エアバッグ本体41の外部に露出している。リテーナ32のボルト34は、ボルト孔109,52に挿通されている。こうした挿通により、インフレータアセンブリ30がインナチューブ101及びエアバッグ本体41に対し位置決めされた状態で係止されている。この状態では、ガス噴出部31aが、第1膨張室61の後部であって、第3膨張室63に接近した箇所に位置している。
【0075】
横区画部64及びインナチューブ101には、下開口部74及び逆止弁75が設けられ、縦区画部81には連通孔94及び調圧弁97が設けられている。
<下開口部74及び逆止弁75>
図5(a),(b)及び
図6に示すように、横区画部64における上記内結合部73は、各本体構成布部67,70の後部において結合を解除されている。表現を変えると、折り線65を跨ぐ部分では、両本体構成布部67,70を結合させる内結合部73が設けられていない。このように、内結合部73が設けられていない部分である、結合を解除された箇所と、インナチューブ101において対応する箇所である下端部とは、第3膨張室63に面して開口する下開口部74を構成している。
【0076】
逆止弁75は、下開口部74での膨張用ガスの流通を制御する弁であり、第1膨張室61から第3膨張室63への膨張用ガスの流入を許容するが、その逆の流通である流出(逆流)を規制する弁である。
【0077】
二つ折りされた両延出部68,71の前側の周縁部と、同じく二つ折りされた両延出部105,108の前側の周縁部とは、それらの周縁部に沿って設けられた結合部76によって相互に結合されている。この結合部76の上端部は、上記内結合部73の後端部に繋がっている。二つ折りされた両延出部68,71の後部と、同じく二つ折りされた両延出部105,108の後部とは、それらの後側の周縁部に沿って設けられた結合部77によって相互に結合されている。結合部76,77は、いずれも前側ほど低くなるように傾斜している。
【0078】
さらに、二つ折りされた両延出部68,71において結合部77よりも後側部分と、同じく二つ折りされた両延出部105,108において結合部77よりも後側部分とは、上述した周縁結合部45によって両本体布部43,44の後下端部に対し、共縫いにより結合されている。車内側の延出部68,105において、下開口部74と両結合部76,77とによって囲まれた箇所は、逆止弁75の車内側の弁体部78を構成している。また、車外側の延出部71,108において、下開口部74と両結合部76,77とによって囲まれた箇所は、逆止弁75の車外側の弁体部79を構成している。
【0079】
そして、逆止弁75は、両弁体部78,79の一方が他方から離間することで膨張用ガスの流通を許容する。このときの逆止弁75の動作態様を「開弁」という。また、逆止弁75は、両弁体部78,79が、それらの少なくとも一部において互いに接触することで、膨張用ガスの流通を規制する。このときの逆止弁75の動作態様を「閉弁」という。
【0080】
<連通孔94及び調圧弁97>
図5(a),(b)及び
図18に示すように、連通孔94及び調圧弁97は、縦区画部81において、縦及び横の両方向についての略中央部分に設けられている。詳しくは、縦区画部81における上記内結合部93は、その一部である、折り線82を跨ぐ部分において結合を解除されている。表現を変えると、両重ね合わせ部91と非重ね合わせ部92との境界部分において、折り線82を跨ぐ部分では、上下両布片86,87を結合させる内結合部93が設けられていない。このように内結合部93が設けられていない部分である、結合を解除された箇所は、横方向(車幅方向)に延びて、第1膨張室61と第2膨張室62とを連通させるスリットからなる連通孔94を構成している。
【0081】
連通孔94は、上記ガス流通路100の上開口部114よりも膨張用ガスの流動抵抗が大きくなるように形成されている。より詳しくは、連通孔94は、開かれたときの流路面積が、上開口部114が開かれたときの流路面積よりも小さくなるように形成されている。
【0082】
調圧弁97は、連通孔94での膨張用ガスの流通を制御することで、第1膨張室61及び第2膨張室62の各内圧を調整する弁である。より詳しくは、調圧弁97は、第1膨張室61が膨張して乗員Pを拘束する前には閉弁して、同第1膨張室61の膨張用ガスが連通孔94を通じて第2膨張室62へ流出するのを規制する。調圧弁97は、第1膨張室61が乗員Pを拘束するときには、その拘束に伴い加わる外力による縦区画部81の緊張状態の変化に応じて開弁して上記規制を解除する。
【0083】
重ね合わせ部91であって、連通孔94と端縁88eとの間の部分は、調圧弁97の弁体部95を構成し、連通孔94と端縁89eとの間の部分は、調圧弁97の弁体部96を構成している。両弁体部95,96が、それらの少なくとも一部、例えば先端部95t,96tにおいて互いに接触することで、両弁体部95,96間での膨張用ガスの流通が規制される(
図19(a),(b)参照)。このときの調圧弁97の動作態様を「閉弁」という。また、連通孔94が開かれ、かつ弁体部95の全体が弁体部96の全体から離間することで、両弁体部95,96間での膨張用ガスの流通が可能となる(
図19(c)参照)。このときの調圧弁97の動作態様を「開弁」という。
【0084】
そして、両重ね合わせ部91は非重ね合わせ部92との境界部分において、上方又は下方(第1実施形態では上方)へ折り曲げられて、同非重ね合わせ部92に重ねられている。さらに、折り曲げられた帯状の両重ね合わせ部91は、内結合部93に沿う方向(横方向:車幅方向)の両端部において、前述した外結合部84により、エアバッグ本体41の対応する本体布部43,44及び非重ね合わせ部92に対し、共縫いにより結合されている(
図5(a)、
図18参照)。
【0085】
上記調圧弁97は、膨張用ガスが縦区画部81の連通孔94を通過する際の抵抗となる。そのため、膨張用ガスが連通孔94を通過する際の流動抵抗は、調圧弁97が設けられていない場合の流動抵抗よりも大きい。従って、膨張用ガスが連通孔94を通過する際の流動抵抗は、上記ガス流通路100の上開口部114を通過する際の流動抵抗よりも一層大きくなっている。
【0086】
上記のようにして、第1実施形態のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグ40が構成されている。次に、このエアバッグ40を製造する方法について、
図7〜
図12を参照しながら、横区画部64及び縦区画部81を両本体布部43,44に架設する方法を中心に説明する。この製造に際しては、次の第1〜第5の5つの結合工程が順に行なわれる。
【0087】
<第1結合工程>
図7に示すように、第1結合工程では、エアバッグ本体41及び横区画部64がともに展開させられる。エアバッグ本体41としては、スリット47、補強部48,53及びボルト孔52が予め形成されたものが用いられる。折り線65を折り線42に合致させた状態で、横区画部64がエアバッグ本体41の下部上に重ねられる。車内側の本体構成布部67が、その上側の周縁部に沿って本体布部43に縫合されるとともに、車外側の本体構成布部70が、その上側の周縁部に沿って本体布部44に縫合されることで、外結合部72が設けられる。
【0088】
<第2結合工程>
図7及び
図8に示すように、第2結合工程では、上記のように横区画部64が結合されたエアバッグ本体41に加え、インナチューブ101が展開させられる。折り線102を折り線42,65に合致させた状態で、インナチューブ101がエアバッグ本体41上及び横区画部64上に重ねられる。
【0089】
インナチューブ101の下部が、折り線102の一部に沿ってエアバッグ本体41及び横区画部64に縫合されることで中央結合部111が設けられる。この中央結合部111により、インナチューブ101がエアバッグ本体41及び横区画部64に対し、位置決めされた状態で仮止めされる。
【0090】
車内側の構成布部103において、本体布部43のボルト孔52に対応する箇所にボルト孔109があけられる。両構成布部103,106において、エアバッグ本体41のスリット47に対応する箇所にスリット113が入れられる。
【0091】
図9に示すように、インナチューブ101が折り線102に沿って前方へ二つ折りされて、構成布部103と構成布部106とが重ね合わされる。本体構成布部104,107が対向する周縁部に沿って上下方向に縫合されることで周縁結合部112が形成される。この周縁結合部112によって本体構成布部104,107が相互に結合されて、筒状にされる。
【0092】
<第3結合工程>
図10に示すように、第3結合工程では、エアバッグ本体41の後部と、横区画部64の後部とが折り線42,65に沿って二つ折りされる。エアバッグ本体41の後部を除く部分と、横区画部64の後部を除く部分とは展開させられる。
【0093】
上記のように一部が展開させられた状態のエアバッグ本体41上及び横区画部64上に、展開させられた状態の縦区画部81が重ねられる。この縦区画部81としては、上下一対の布片86,87が内結合部93によって結合されて、連通孔94及び調圧弁97の形成されたものが用いられる。
【0094】
縦区画部81の一対の周縁部において、横区画部64の両構成布部66,69に重ならない箇所が本体布部43,44に縫合されることで、一対の外結合部84が形成される。また、縦区画部81の両周縁部において両構成布部66,69に重なる箇所が本体構成布部67,70のみに縫合されることで、上記外結合部84の下側に一対の外結合部85が形成される。両外結合部85により、縦区画部81の横区画部64に対する結合が行なわれる。
【0095】
なお、両外結合部84の形成は両外結合部85の形成よりも早いタイミングで行なわれてもよいし、遅いタイミングで行なわれてもよい。
<第4結合工程>
図11に示すように、第4結合工程では、上記第3結合工程において少なくとも一部が展開されている部分(エアバッグ本体41、横区画部64及び縦区画部81)がさらに縦区画部81の折り線82(
図10参照)に沿って二つ折りされる。この状態で、両本体構成布部67,70のうち、下側の周縁部同士が縫合されることによって、内結合部73と下開口部74とが形成される。両延出部68,71,105,108の前側の周縁部同士が縫合されることで結合部76が形成され、後側の周縁部同士が縫合されることで結合部77が形成される。両結合部76,77の形成により、横区画部64及びインナチューブ101の交差部分に、弁体部78,79を有する逆止弁75が形成される。また、逆止弁75が形成されることで、インナチューブ101の横区画部64に対する結合も一緒に行なわれる。
【0096】
なお、この第4結合工程に際しては、同
図11に示すように、エアバッグ本体41の本体布部43,44において外結合部72よりも下側部分が上外方へ折り曲げられる等して、横区画部64が露出させられる。
図11では、車外側の本体布部44の一部については、破断された状態で図示されている。
【0097】
<第5結合工程>
図11及び
図12に示すように、第5結合工程では、両本体布部43,44においてスリット47よりも上側部分が、他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられて、内折り部49が形成される。この状態で、本体布部43,44の周縁部同士が縫合されることで、周縁結合部45が設けられる。この周縁結合部45によって両本体布部43,44が結合されるとともに、内折り部49の上端部が本体布部43,44の他の部分に対し、共縫いにより結合される。そのほか、横区画部64における本体構成布部67,70毎の前端部が本体布部43,44の前端部に対し、共縫いにより結合されるとともに、延出部68,71,105,108において結合部77よりも後側部分が本体布部43,44の後下端部に対し、共縫いにより結合される。さらに、それぞれ二つ折りされた縦区画部81及びインナチューブ101における各上端部が、本体布部43,44の上端部に対し、共縫いにより結合される。
【0098】
このようにして、本体布部43,44間に横区画部64及び縦区画部81が架設されるとともに、横区画部64にインナチューブ101が交差してなるエアバッグ40が形成される。
【0099】
ところで、
図3に示すように、インフレータアセンブリ30及びエアバッグ40を主要な構成部材として有する上記エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ40(
図4、
図5参照)が折り畳まれることにより、コンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの収納部21に対し、収納に適したものとするためである。
【0100】
収納用形態にされたエアバッグモジュールAMでは、上記のようにリテーナ32から延びて、インナチューブ101及びエアバッグ本体41の本体布部43に挿通されたボルト34がサイドフレーム部17に挿通され、このボルト34にナット35が締付けられている。この締付けにより、インフレータアセンブリ30がエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部17に取付けられている。
【0101】
なお、インフレータアセンブリ30は、上述したボルト34及びナット35とは異なる部材によってサイドフレーム部17に取付けられてもよい。また、リテーナ32が用いられることなくインフレータ31がサイドフレーム部17に直接取付けられてもよい。
【0102】
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに衝撃センサ121及び制御装置122を備えている。衝撃センサ121は加速度センサ等からなり、車両10の側壁部11(
図2参照)等に設けられており、同側壁部11に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置122は、衝撃センサ121からの検出信号に基づきインフレータ31の作動を制御する。
【0103】
さらに、車両10には、車両用シート12に着座している乗員Pをその車両用シート12に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、
図1等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
【0104】
上記のようにして、第1実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。次に、サイドエアバッグ装置の作用として、代表的な動作の態様(モード)について説明する。
図19(a)〜(c)は、調圧弁97及び縦区画部81の形態が、膨張用ガスの供給開始後、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については省略・簡略化されている。
【0105】
このサイドエアバッグ装置では、側突等により車両10の側壁部11に対し側方から衝撃が加わらないときには、制御装置122からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、インフレータ31から膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ40は、収納用形態で収納部21に収納され続ける(
図3参照)。
【0106】
これに対し、車両10の走行中に、側突等により側壁部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ121によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置122からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力される(
図1、
図2参照)。この作動信号に応じて、インフレータ31のガス噴出部31aから膨張用ガスが噴出される。膨張用ガスの一部は、
図5に示すリテーナ32の窓部33を通って前方へ流れ、インナチューブ101に当たって、流れの向きを上方又は下方へ変えられる。膨張用ガスによりインナチューブ101が膨張し、エアバッグ本体41の後部においてインナチューブ101の周りの部分が上下方向に展開及び膨張する。
【0107】
膨張用ガスは、ガス流通路100の上端部に至ると、上開口部114から、第1膨張室61のうち乗員Pの肩部PSの側方で膨張する箇所に向けて流れる。そのため、エアバッグ本体41の上記箇所に膨張用ガスが速やかに供給される。この膨張用ガスにより、第1膨張室61における上記箇所とその周辺箇所とが展開及び膨張を開始する。
【0108】
一方、リテーナ32の下側の開放端32aから噴出された膨張用ガスと、インナチューブ101によって流れの向きを下方へ変えられた膨張用ガスとは、ガス流通路100の下端部に至ると、下開口部74から逆止弁75を通じて第3膨張室63に向けて流れる。膨張用ガスが逆止弁75を通過している期間には、両弁体部78,79には、円筒状になろうとする力が発生する。そのため、膨張用ガスは、下開口部74と両弁体部78,79の間とを通り第3膨張室63に速やかに供給される。
【0109】
ここで、第3膨張室63の容量が、第1膨張室61及び第2膨張室62の総容量よりも少ないことから、仮に、ガス流通路100の上開口部114と下開口部74とを同量の膨張用ガスが通過するものとすると、第3膨張室63が第1膨張室61及び第2膨張室62よりも速く膨張用ガスで満たされる。
【0110】
横区画部64が、膨張する第1膨張室61及び第3膨張室63によって、横方向(車幅方向)に引っ張られる。また、インフレータ31からの膨張用ガスの供給が続くことで、第3膨張室63の内圧が上昇していく。
【0111】
第1膨張室61の上記膨張開始に伴い、二つ折り状態の縦区画部81が、膨張する第1膨張室61によって、横方向(車幅方向)に引っ張られる。
図19(a)に示すように、調圧弁97の両弁体部95,96に対しては、その重なり方向(厚み方向)から内圧PIが加わる。両弁体部95,96は、この内圧PIにより面全体で互いに密着し、両弁体部95,96間での膨張用ガスの流通を規制する自己シール状態となる。さらに、折り曲げられて縦区画部81の非重ね合わせ部92に重ねられた重ね合わせ部91が、内圧によりその非重ね合わせ部92に押付けられ(
図18参照)、両弁体部95,96が一層閉じられやすくなる。
【0112】
ここで、
図6に示すように、縦区画部81は、横方向(車幅方向)よりも縦方向(上下方向)に長く形成されている。このことから、縦区画部81では、横方向(車幅方向)に対し、縦方向(上下方向)に対するよりも強いテンションが掛かりやすい。第1実施形態では、連通孔94は、この強いテンションの掛かりやすい横方向(車幅方向)に延びているため、閉じられやすい。
【0113】
さらに、第1膨張室61が展開及び膨張したときには、縦区画部81の非重ね合わせ部92に対するだけでなく、重ね合わせ部91に対しても横方向(車幅方向)に強いテンションが掛かる。これは、重ね合わせ部91の両端部が本体布部43,44に結合されてからである。
【0114】
両弁体部95,96が、それらの少なくとも一部において互いに接触すると、調圧弁97が閉弁した状態となる。第1膨張室61内の膨張用ガスは、両弁体部95,96の間及び連通孔94を通って第2膨張室62へ流出することを規制される。この規制により、第1膨張室61に膨張用ガスが溜まり、専ら第1膨張室61の内圧が上昇する。
【0115】
第1実施形態では、膨張部46のうち、横区画部64よりも上側部分が縦区画部81によって2つに区画されていて、その一方が第1膨張室61とされていることから、第1膨張室61の容積は、縦区画部81により区画されていない場合の容積よりも小さい。そのため、第1膨張室61の内圧は、縦区画部81により区画されていない場合よりも早く上昇を開始し、しかも高くなる。
【0116】
なお、このときには、膨張部46が未だ乗員Pに接していない。
上記内圧の上昇により、第1膨張室61及び第3膨張室63が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消(展開)しながら膨張していくと、シートバック14のシートパッド18が第1膨張室61及び第3膨張室63によって押圧され、破断予定部23(
図3参照)において破断される。
図17に示すように、第1膨張室61及び第3膨張室63は、それぞれ一部を収納部21に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から前方へ飛び出す。
【0117】
ここで、上述したように、第1膨張室61のうち乗員Pの肩部PSの側方で膨張する箇所に対し、膨張用ガスが速やかに供給されることから、同箇所が肩部PSと側壁部11との間で速やかに展開及び膨張し、同箇所の内圧が早期に上昇する。
【0118】
また、膨張用ガスが縦区画部81の連通孔94を通過するときに受ける流動抵抗は、同膨張用ガスがガス流通路100の上開口部114を通過するときに受ける流動抵抗よりも大きい。そのため、連通孔94では、上開口部114に比べ膨張用ガスが通過しにくい。すなわち、膨張用ガスは、第1膨張室61から第2膨張室62へは、ガス流通路100の上開口部114から第1膨張室61に流れる場合よりも流れにくい。従って、第1膨張室61のうち肩部PSの側方で膨張する箇所が、同第1膨張室61の他の箇所や第2膨張室62よりも優先的に展開及び膨張する。
【0119】
また、第3膨張室63に対し膨張用ガスが速やかに供給されることから、その第3膨張室63が乗員Pの腰部PPと側壁部11との間で速やかに展開及び膨張し、同第3膨張室63の内圧が早期に上昇する。
【0120】
また、第1実施形態では、ガス噴出部31aが自身の下端部に位置するようにインフレータ31が配置されていて、ガス噴出部31aがガス流通路100の上開口部114よりも下開口部74に近い箇所に位置している。このことから、膨張用ガスは、下開口部74から第3膨張室63に優先的に供給されて、同第3膨張室63の内圧が速やかに上昇する。
【0121】
そして、膨張用ガスが第1膨張室61の全体に行き渡ることで、その第1膨張室61において、乗員Pの上記肩部PSの側方とは異なる箇所、例えば胸部PTの後半部が展開及び膨張する。このときには、第2膨張室62は未だ膨張してないか、膨張していたとしても僅かであり、その内圧は低い。
【0122】
なお、
図18に示すように、横方向(車幅方向)に引っ張られた縦区画部81は緊張した状態となる。この緊張状態の縦区画部81により、第1膨張室61の同方向の膨張厚みが規制される。また、
図20に示すように、横方向(車幅方向)に引っ張られた横区画部64は緊張した状態となる。この緊張状態の横区画部64により、第1膨張室61及び第3膨張室63の同方向の膨張厚みが規制される。
【0123】
側壁部11がさらに車内側へ進入することで、乗員Pの肩部PSが第1膨張室61によって車内側へ押圧され始める。
そして、上記第1膨張室61による肩部PSの押圧及び胸部PTの後半部の押圧と、第3膨張室63による腰部PPの押圧とによって、乗員Pが車内側へ移動させられて拘束される。この移動により、乗員Pと側壁部11との間隔が拡げられ、第2膨張室62の展開及び膨張のための空間が確保される。
【0124】
ところで、上記押圧に際し、膨張部46の横区画部64よりも上側部分は、専ら第1膨張室61が展開及び膨張していることから、乗員Pが膨張部46の圧力を受けながら接触する箇所は専ら第1膨張室61である。
【0125】
両弁体部95,96がそれらの面全体で密着した(閉じられた)状態で、第1膨張室61内に膨張用ガスが供給され続ける一方、側壁部11から加わる外力により、調圧弁97が開弁し始める。
【0126】
すなわち、第1膨張室61への膨張用ガスの供給期間の途中からは、乗員Pの拘束に伴う外力が加わって膨張部46が変形する。これに伴い、縦区画部81に対し横方向(車幅方向)に強く掛かっていたテンションが減少し、縦方向(上下方向)に掛かるテンションが増加する。
【0127】
また、膨張部46の上記変形に伴い第1膨張室61の内圧PIがさらに上昇して、縦区画部81が第2膨張室62側へ押圧されて(
図19(b)参照)、同縦区画部81に掛かるテンションが変化する。そして、上記テンションの変化により、縦方向及び横方向のテンションの差が小さくなる。縦区画部81に位置する連通孔94の変形が許容され、同縦区画部81に位置する弁体部95,96の作動が許容されるようになる。
【0128】
一方、重ね合わせ部91は非重ね合わせ部92に重ねられ、横方向(車幅方向)についての両端部において、外結合部84によって本体布部43,44に結合されている。そのため、重ね合わせ部91において外結合部84に近い部分では、重ね合わされた状態を維持しようとする力が強い。しかし、この力は、外結合部84から遠ざかるに従い小さくなり、横方向(車幅方向)についての中央部分、すなわち両弁体部95,96において最小となる。そのため、縦方向(上下方向)へ引っ張られた重ね合わせ部91は、弁体部95,96及びその近傍部分においてのみ同方向へ変形する。
【0129】
連通孔94が縦方向(上下方向)へある程度開くと、重ね合わせ部91では、
図19(b)に示すように、第1膨張室61の高い内圧PIを受けた両弁体部95,96においてのみ、連通孔94を通って第2膨張室62へ押し出される(反転される)。この連通孔94の上下方向の幅W1が狭いときには、先端部95t,96t同士が接触し合い、調圧弁97が閉じる。
【0130】
そして、連通孔94の幅W1の増大により、
図19(c)に示すように、先端部95t,96tが離れ、調圧弁97が開弁した状態になると、上記流通規制が解除され、第1膨張室61内の膨張用ガスは連通孔94と両弁体部95,96の間とを順に通って第2膨張室62へ流出することを許容される。
【0131】
上記膨張用ガスの流出により、第1膨張室61の内圧が上昇から低下に転ずる。ただし、側壁部11は車内側へ依然として進入し続けていて、膨張部46が第1膨張室61において乗員Pに押付けられる。
【0132】
また、膨張用ガスの流入により第2膨張室62が膨張を開始するとともに、同第2膨張室62の内圧が上昇し始める。第2膨張室62が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消(展開)しようとする。
【0133】
このときには、第2膨張室62は、上記第1膨張室61よりも低い内圧で、耐衝撃性が肩部PSよりも低い胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する。この際、上述したように、側壁部11と乗員Pの上半身との間隔が、第1膨張室61及び第3膨張室63によって拡げられていて、第2膨張室62の展開及び膨張のための空間が確保されていることから、第2膨張室62は、こうした間隔の拡大が行なわれない場合よりも、前方へ向けて展開及び膨張しやすい。
【0134】
そして、第2膨張室62の内圧の上昇開始から少し遅れて、車内側へ進入する側壁部11により、第1膨張室61に加え、第2膨張室62が乗員Pの上半身に接触し押し付けられ始める。同上半身が第1膨張室61に加え、第2膨張室62によって拘束され始める。
【0135】
このように、第1膨張室61、第2膨張室62及び第3膨張室63がそれぞれ展開及び膨張したエアバッグ40が、乗員Pの上半身と、車内側へ進入してくる側壁部11との間に介在する。このエアバッグ40によって上半身が車内側へ押圧されて拘束される。そして、側壁部11を通じて上半身に伝わる側方からの衝撃が、膨張部46によって緩和されて、同上半身が保護される。
【0136】
ここで、乗員Pの上半身に対し側方から衝撃が加わった場合の耐衝撃性は、一般に、後半部において前半部よりも勝っている。これは、後半部には背骨があり、肋骨がその後部において背骨に接続されているのに対し、肋骨の前部は、上記背骨のような強度を有するものに接続されていないからである。そのため、横区画部64よりも上側の膨張室の展開及び膨張に伴い乗員Pの上半身に側方から作用する膨張部46の内圧は、前半部において後半部よりも低いことが望ましい。
【0137】
この点、第1実施形態では、膨張部46のうち横区画部64よりも上側部分は、前後方向については、縦区画部81が、上半身の前半部と後半部との境界部分の近傍に位置するように膨張する。膨張部46が展開及び膨張した状態では、上記後半部の側方近傍には第1膨張室61が位置し、上記前半部の側方近傍には第2膨張室62が位置する。従って、エアバッグ40による乗員Pの拘束初期には、前半部よりも耐衝撃性の高い後半部は、早期に内圧が高くなる第1膨張室61によって押圧される。また、同拘束初期には、耐衝撃性の比較的低い前半部は、内圧が第1膨張室61ほど高くならない第2膨張室62によって押圧される。
【0138】
図5に示すように、インフレータ31からの膨張用ガスの噴出が停止し、第3膨張室63内の膨張用ガスが、第1膨張室61側へ流れようとすると、逆止弁75の両弁体部78,79が、第3膨張室63内の高い圧力を受けて押圧され、互いに接触する。逆止弁75が閉弁された状態となり、第3膨張室63の膨張用ガスが、両弁体部78,79間及び下開口部74を通って第1膨張室61へ逆流することを規制される。
【0139】
従って、乗員Pの腰部PPを保護するのに適切な内圧にまで高められた第3膨張室63の内圧がその高い状態に維持される。
その後も、逆止弁75は、膨張用ガスが第1膨張室61から第3膨張室63へ流入することは許容するが、第3膨張室63内の膨張用ガスが第1膨張室61へ逆流することを規制する。そのため、例えばサイドエアバッグ装置が乗員Pの腰部PPを拘束することで第3膨張室63の内圧が上昇したとしても、上記逆止弁75により、第3膨張室63内の膨張用ガスが第1膨張室61へ逆流することを規制される。乗員Pの上半身のうち耐衝撃性の高い部位である腰部PPが、内圧の高い第3膨張室63によって効果的に拘束され、衝撃から保護される。また、第1膨張室61の内圧が、腰部PPの拘束に伴う第3膨張室63の圧力変動の影響を受けて上昇することが起こりにくい。
【0140】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)エアバッグ本体41の膨張部46を、第1膨張室61と、連通孔94の設けられた縦区画部81を介して第1膨張室61の前側に隣接する第2膨張室62と、横区画部64を介して第1及び第2膨張室61,62の下側に隣接し、乗員Pの腰部PPの側方で膨張する第3膨張室63とに区画する。エアバッグ本体41内には、インフレータ31の少なくともガス噴出部31aを取り囲んで上下方向に延びるガス流通路100を、第1膨張室61及び第3膨張室63に跨って設ける。そして、ガス流通路100の上端部に、第1膨張室61のうち乗員Pの肩部PSの側方で膨張する箇所に面して上開口部114を設け、ガス流通路100の下端部に、第3膨張室63に面して下開口部74を設けている(
図5(a))。
【0141】
そのため、エアバッグ本体41のうち、乗員Pの肩部PS及び腰部PPの側方で膨張する箇所に速やかに膨張用ガスを供給し、肩部PS及び腰部PPを速やかに拘束及び保護することができる。
【0142】
(2)横区画部64をエアバッグ本体41の下部に設けることで、第3膨張室63の容量を、第1膨張室61及び第2膨張室62の総容量よりも少なく設定している(
図5(a))。
【0143】
そのため、第3膨張室63をより一層速く展開及び膨張させることができる。
(3)下開口部74に、第3膨張室63から第1膨張室61への膨張用ガスの流通を規制する逆止弁75を設けている(
図5(a))。
【0144】
そのため、乗員Pの上半身のうち耐衝撃性の高い部位である腰部PPを、内圧の高い状態に保持された第3膨張室63によって効果的に拘束し、衝撃から保護することができる。
【0145】
(4)ガス流通路100を、エアバッグ本体41の後部において上下方向に延びて横区画部64に交差する筒状のインナチューブ101によって構成する。そして、インナチューブ101を、結合部76,77、周縁結合部45及び中央結合部111によって横区画部64に結合している(
図6〜
図8)。
【0146】
そのため、上下方向に延びる筒状のインナチューブ101をエアバッグ本体41の後部に配置し、このインナチューブ101を、エアバッグ本体41の一対の本体布部43,44の間に架設された横区画部64に対し、上記結合部76,77,45,111によって結合するといった簡易な構成により、ガス流通路100を形成することができる。
【0147】
(5)ガス流通路100の上開口部114を、縦区画部81の連通孔94よりも膨張用ガスの流動抵抗が小さくなるように形成している(
図5(a)、
図6)。
そのため、第1膨張室61のうち肩部PSの側方で膨張する箇所を、同第1膨張室61の他の箇所や第2膨張室62よりも早期に展開及び膨張させることができる。
【0148】
(6)インフレータ31として長尺状をなし、かつ一方の端部にガス噴出部31aを有するものを用いる。そして、インフレータ31を、略上下方向に延び、かつガス噴出部31aが下端部に位置するように配置している(
図5(a))。
【0149】
そのため、膨張用ガスをガス流通路100の下開口部74から第3膨張室63に優先的に供給して、同第3膨張室63の内圧を速やかに上昇させることができる。
(第2実施形態)
次に、サイドエアバッグ装置の第2実施形態について、
図21〜
図25を参照して説明する。
【0150】
図21及び
図22に示すように、第2実施形態のサイドエアバッグ装置は、エアバッグ40が、エアバッグ本体41、横区画部64、縦区画部81及びインナチューブ101を備えて構成されている点で第1実施形態と共通している。第2実施形態は、逆止弁75が横区画部64及びインナチューブ101のうちインナチューブ101にのみ設けられている点で第1実施形態と異なっている。
【0151】
より詳しくは、インナチューブ101には延出部105,108が形成されているが、横区画部64には、延出部68,71が形成されていない。これに伴い、横区画部64には、結合部76,77及び周縁結合部45が形成されていない。二つ折りされた両延出部105,108の前側の周縁部には、その周縁部に沿って結合部116が設けられている。この結合部116は、第1実施形態での結合部76に代わるものであり、周縁結合部112の下方に位置し、両延出部105,108の前側の周縁部を相互に結合している。
【0152】
車内側の延出部105において、下開口部74と両結合部116,77とによって囲まれた箇所は、逆止弁75の車内側の弁体部78を構成している。また、車外側の延出部108において、下開口部74と両結合部116,77とによって囲まれた箇所は、逆止弁75の車外側の弁体部79を構成している。
【0153】
さらに、インナチューブ101と横区画部64とは、弁体部78,79の直上において、折り線65,102に対し略直交する方向に延びるように設けられた結合部115によって相互に結合されている。結合部115の両端部は、周縁結合部112と結合部116との間を通り、インナチューブ101の両側縁部の近傍に位置している。この結合部115は、上記両弁体部78,79を逆止弁75として機能させたときに、第3膨張室63内の膨張用ガスが、インナチューブ101と横区画部64との隙間から第1膨張室61へ逆流するのを規制するために設けられている。
【0154】
上記のようにして、第2実施形態のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグ40が構成されている。次に、このエアバッグ40を製造する方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0155】
図23に示すように、第1結合工程に先立ち、横区画部64にインナチューブ101を結合する工程が行なわれる。この工程では、横区画部64及びインナチューブ101がともに展開させられる。折り線102を折り線65に合致させた状態で、インナチューブ101の下部が横区画部64の中央部上に重ねられる。インナチューブ101が、延出部105,108の直上において、折り線102に対し略直交する方向に沿って横区画部64に縫合されることで、結合部115が設けられる。この結合部115により、インナチューブ101が横区画部64に対し、延出部105,108の直上において結合される。
【0156】
第1結合工程では、横区画部64をエアバッグ本体41に結合する外結合部72が設けられるが、この作業は、
図24に示すように、インナチューブ101において結合部115よりも上側部分が、横区画部64から遠ざかる側である前側へ折り曲げられる等して、横区画部64のうち外結合部72の形成予定箇所が露出された状態で行なわれる。
【0157】
図25に示すように、第2結合工程では、展開状態のインナチューブ101をエアバッグ本体41に結合する中央結合部111が形成される。また、インナチューブ101にボルト孔109及びスリット113が形成される。
【0158】
さらに、インナチューブ101が上述した
図9と同様に、折り線102に沿って前方へ二つ折りされて、構成布部103と構成布部106とが重ね合わされる。両本体構成布部104,107が対向する周縁部に沿って縫合されることで周縁結合部112が形成される。この周縁結合部112によって本体構成布部104,107が相互に結合される。また、両延出部105,108が対向する周縁部に沿って縫合されることで結合部116が形成される。この結合部116によって、延出部105,108が相互に結合される。
【0159】
その後、第1実施形態で説明したのと同様に、第3結合工程〜第5結合工程が順に行なわれる。
ただし、第4結合工程では、結合部76の形成は行なわれない。これは、横区画部64から延出部68,71が割愛されたこと、両延出部105,108の前側の周縁部同士を結合する結合部116が既に形成されているためである。
【0160】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する。
このように構成された第2実施形態のサイドエアバッグ装置によれば、
図21に示すように、インナチューブ101の弁体部78,79が逆止弁75として機能する。
【0161】
インフレータ31のガス噴出部31aから噴出されて開放端32aから下方へ吹き出す膨張用ガス、及びガス噴出部31aから噴出された後、インナチューブ101によって流れの向きを下方へ変えられた膨張用ガスは、ガス流通路100の下端部に至ると、下開口部74からインナチューブ101の逆止弁75を通じて第3膨張室63に向けて流れる。そのため、第3膨張室63に膨張用ガスが速やかに供給される。
【0162】
インフレータ31からの膨張用ガスの噴出が停止し、第3膨張室63内の膨張用ガスが、第1膨張室61側へ流れようとすると、両弁体部78,79が、第3膨張室63内の高い圧力を受けて押圧され、互いに接触し、逆止弁75が閉弁された状態となる。また、インナチューブ101は、延出部105,108の直上に設けられた結合部115によって横区画部64に結合されていて、インナチューブ101と横区画部64との間には隙間がない。これらのことから、第3膨張室63の膨張用ガスが第1膨張室61へ逆流することを規制される。
【0163】
従って、第2実施形態によれば、上記(1)〜(6)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
(7)インナチューブ101の延出部105,108のみによって逆止弁75を構成している(
図21、
図22)。
【0164】
そのため、逆止弁75をより簡単な構成で成立させることができる。また、横区画部64から延出部68,71を割愛したため、横区画部64の形状を単純化し、同横区画部64を容易に形成することもできる。
【0165】
(第3実施形態)
次に、サイドエアバッグ装置の第3実施形態について、
図26〜
図30を参照して説明する。
【0166】
図26及び
図27に示すように、第3実施形態のサイドエアバッグ装置は、エアバッグ40がエアバッグ本体41、横区画部64、縦区画部81及びインナチューブ101を備えて構成されている点で第1及び第2実施形態と共通している。第3実施形態は、逆止弁75及び調圧弁97が設けられていない点で第1及び第2実施形態と異なっている。
【0167】
より詳しくは、横長の横区画部64は、その中央部分に設定された折り線65に沿って前方へ二つ折りされている。横区画部64は、その折り線65を縦区画部81の折り線82に合致させた状態でエアバッグ本体41の両本体布部43,44の間に配置されている。横区画部64に、延出部68,71、結合部76,77,116は形成されていない。
【0168】
縦区画部81は略上下方向へ延びる単一の布片によって構成されており、その上端部はエアバッグ本体41の上端部に重ねられ、下端部は横区画部64の後端部に重ねられている。縦区画部81の上下方向についての中間部分には、常時開口する一対の連通孔94が貫通されている。縦区画部81には調圧弁97が設けられていない。
【0169】
ガス流通路100の上開口部114は、縦区画部81の連通孔94よりも膨張用ガスの流動抵抗が小さくなるように形成されている。そのために、上開口部114の流路面積は連通孔94の流路面積よりも大きく設定されている。
【0170】
膨張部46において、縦区画部81及び横区画部64よりも後側の部屋は第1膨張室61を構成し、縦区画部81よりも前側であり、かつ横区画部64よりも上側の部屋は第2膨張室62を構成し、横区画部64よりも下側の部屋は第3膨張室63を構成している。
【0171】
インナチューブ101には延出部105,108が形成されていない。インナチューブ101の下端部はエアバッグ本体41の後部下端部に重ねられている。二つ折りされたインナチューブ101の本体構成布部104,107を相互に結合する周縁結合部112の下端部は、インナチューブ101の下端部から上方へ一定距離離れた箇所に位置している。すなわち、本体構成布部104,107の下端部は周縁結合部112によって相互に結合されておらず、この箇所は、第3膨張室63に面して開口する下開口部74となっている。
【0172】
上記のようにして、第3実施形態のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグ40が構成されている。次に、このエアバッグ40を製造する方法について、第1及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0173】
大きな相違点は、インナチューブ101をエアバッグ本体41に仮止めする工程と、横区画部64を外結合部72によってエアバッグ本体41に結合する工程とが、第1及び第2実施形態とは逆の順に行なわれることである。
【0174】
すなわち、
図28に示すように、エアバッグ本体41及びインナチューブ101がともに展開させられる。折り線102を折り線42に合致させた状態で、インナチューブ101がエアバッグ本体41の上に重ねられる。インナチューブ101の下端部が、エアバッグ本体41の下端部、より詳しくは周縁結合部45の形成予定箇所の近くに縫合されることで、結合部115が設けられる。この結合部115により、インナチューブ101の下端部がエアバッグ本体41の下端部に対し、位置決めされた状態で仮止めされる。車内側の構成布部103において、本体布部43のボルト孔52に対応する箇所にボルト孔109があけられる。両構成布部103,106において、エアバッグ本体41のスリット47に対応する箇所にスリット113が入れられる。
【0175】
次に、同
図28において二点鎖線の矢印で示すように、インナチューブ101が折り線102に沿って二つ折りされて、構成布部103と構成布部106とが重ね合わされる。本体構成布部104,107が対向する周縁部に沿って縫合されることで周縁結合部112が形成される。この周縁結合部112によって本体構成布部104,107が相互に結合されて、筒状にされる。
【0176】
続いて、
図29に示すように、エアバッグ本体41の後部と、インナチューブ101とが折り線42,102に沿って前方へ二つ折りされる。エアバッグ本体41の後部を除く部分は展開させられる。
【0177】
上記のように一部が展開させられた状態のエアバッグ本体41の上に、展開させられた状態の横区画部64が重ねられる。詳しくは、車内側の構成布部66が対応する本体布部43の下部上に重ねられ、車外側の構成布部69が対応する本体布部44の下部上に重ねられる。
【0178】
車内側の本体構成布部67が、その上側の周縁部に沿って本体布部43の下部に縫合されるとともに、車外側の本体構成布部70が、その上側の周縁部に沿って本体布部44の下部に縫合されることで、外結合部72が設けられる。
【0179】
続いて、
図30に示すように、上記一部が展開させられた状態のエアバッグ本体41上及び横区画部64上に、展開させられた状態の縦区画部81が重ねられる。
縦区画部81の一対の周縁部において、両構成布部66,69に重ならない箇所が本体布部43,44に縫合されることで、一対の外結合部84が形成される。
【0180】
また、両周縁部において両構成布部66,69に重なる箇所が本体構成布部67,70のみに縫合されることで、外結合部84の下側に一対の外結合部85が形成される。
なお、両外結合部84の形成は両外結合部85の形成よりも早いタイミングで行なわれてもよいし、遅いタイミングで行なわれてもよい。
【0181】
その後、第1実施形態で説明したのと同様に、第4〜第5結合工程が順に行なわれる。
ただし、第4結合工程では、両本体構成布部67,70のうち、下側の周縁部同士が縫合されることによって内結合部73が形成される。結合部76の形成は行なわれない。両本体構成布部67,70が内結合部73によって相互に連結され、両本体布部43,44の間に横区画部64が架設される。
【0182】
上記以外の構成は第1及び第2実施形態と同様である。そのため、第1及び第2実施形態と同様の要素については同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する。
上記サイドエアバッグ装置によれば、
図26に示すように、ガス噴出部31aから噴出されて開放端32aから下方へ吹き出す膨張用ガス、及びガス噴出部31aから噴出された後、インナチューブ101によって流れの向きを下方へ変えられた膨張用ガスは、ガス流通路100の下端部に至ると、下開口部74から第3膨張室63に供給される。
【0183】
なお、逆止弁75が設けられていないため、インフレータ31からの膨張用ガスの噴出が停止した状態では、第3膨張室63内の膨張用ガスが第1膨張室61側へ逆流することが起こり得る。そのため、第3実施形態では、第3膨張室63の内圧を高い状態に維持したい場合には、別途にそのための手段を講ずる必要がある。
【0184】
従って、第3実施形態によれば、上記(1),(2),(5),(6)と同様の効果が得られる。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
【0185】
<膨張部46について>
・エアバッグ40は、その略全体が上記実施形態のように膨張部46からなるものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0186】
<横区画部64について>
・横区画部64は、エアバッグ本体41の両本体布部43,44間に布片を架設してなるテザーに代え、両本体布部43,44を互いに接触させた状態で縫合(結合)してなるシームによって構成されてもよい。
【0187】
<逆止弁75について>
・逆止弁75は、横区画部64及びインナチューブ101とは別部材によって形成されてもよい。
【0188】
<第1及び第2実施形態における縦区画部81について>
・縦区画部81の両周縁部は、本体布部43,44に対し、第1膨張室61内で結合されてもよいし、第2膨張室62内で結合されてもよい。
【0189】
また、両周縁部の一方が第1膨張室61内で結合され、他方が第2膨張室62内で結合されてもよい。
・重ね合わせ部91において、両弁体部95,96として機能するのは、連通孔94に対応する部分(連通孔94の近傍部分、より正確には、連通孔94と端縁88e,89eとの間の部分)である。そのため、第1膨張室61の展開及び膨張時に、両弁体部95,96の少なくとも先端部95t,96tが接触して閉じられるのであれば、重ね合わせ部91において、連通孔94に対応しない部分(非近傍部分)の形態が変更されてもよい。例えば、重ね合わせ部91において連通孔94に対応しない部分(非近傍部分)については、部分的又は全体的に結合されてもよい。この結合の手段としては、縫合であってもよいし、接着であってもよい。このように変更されることで、重ね合わせ部91において連通孔94に対応する部分だけ両弁体部95,96として作動させ、対応しない部分が不要に動く現象、例えば、ばたつく現象を抑制することができる。
【0190】
そのほかにも、重ね合わせ部91において連通孔94に対応しない箇所の少なくとも一部に切欠きが入れられてもよい。
・縦区画部81と両弁体部95,96とは、互いに異なる部材によって構成されてもよい。
【0191】
・内結合部93において結合を解除される箇所は、必ずしも折り線82を跨ぐ部分に設けられなくてもよく、折り線82から、同折り線82に直交する方向へ外れた箇所に設けられてもよい。また、両内結合部93間の結合を解除される箇所は、複数設けられてもよい。
【0192】
・両弁体部95,96を含む一対の重ね合わせ部91は、膨張部46の展開及び膨張前に第1膨張室61に代えて、第2膨張室62に配置されてもよい。
・二つ折り状態の縦区画部81は、折り線82を周縁部よりも下流側に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部46に配設されてもよい。この場合、両弁体部95,96を含む重ね合わせ部91が、膨張部46の展開及び膨張前に第2膨張室62に配置されてもよい。
【0193】
・縦区画部81として、上記実施形態とは異なる外形形状を有するものが用いられてもよい。この場合、乗員Pの上半身のうち、第1膨張室61によって拘束及び保護したい箇所に応じて縦区画部81の外形形状が変更されることが望ましい。これに伴い、縦区画部81を本体布部43,44に結合する外結合部84の形態が上記実施形態とは異なるものとなる。例えば、乗員Pの肩部PSをより広い領域で拘束及び保護したい場合には、外結合部84が上記各実施形態よりも前側に設けられてもよい。例えば、外結合部84のうち、上側の布片86を本体布部43,44に結合する部分については、上部ほど前側に位置するように傾斜した形態で設けられてもよい。
【0194】
・調圧弁97が割愛され、連通孔94が第3実施形態におけるのと同様な構成(常時開口している孔)に変更されてもよい。
<第3実施形態における縦区画部81について>
・連通孔94が、第1及び第2実施形態におけるのと同様な構成(開閉する孔)に変更され、調圧弁97が追加されてもよい。
【0195】
<エアバッグモジュールAMの収納部21について>
・車両用シート12のシートバック14に代えて、側壁部11に収納部21に相当する箇所が設けられ、ここにエアバッグモジュールAMが組み込まれてもよい。
【0196】
<インナチューブ101について>
・インナチューブ101の形状は、次の条件を満たす範囲内で変更可能である。
条件1:インフレータ31の少なくともガス噴出部31aを取り囲んでいること。
【0197】
条件2:横区画部64に交差した状態で略上下方向に延び、第1膨張室61及び第3膨張室63に跨っていること。
従って、例えば、インナチューブ101はインフレータ31の全体を取り囲むものであってもよい。
【0198】
<その他>
・上記サイドエアバッグ装置は、シートバック14が車両の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シート12が配置された車両において、その車両用シート12に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、同衝撃から乗員Pを保護するタイプのサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0199】
・上記サイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記サイドエアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等における乗物用シートに装備されるサイドエアバッグ装置にも適用可能である。