(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱落防止板の装着方向の前縁には、同脱落防止板が正規位置まで押し込まれた場合に前記端子台の基端側の裏面に設けられたロック部に嵌って抜け止めするべく弾性変位可能なロック片が突出形成されていることを特徴とする請求項1記載の機器用コネクタ。
前記脱落防止板の前記前縁における前記ロック片の側方には、前記ロック片が前記ロック部に係止したのち同ロック片の先端が前記ハウジングに突き当たる前において、前記端子台の裏面に設けられたストッパに当たって同脱落防止板の押し込みを規制する突当部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の機器用コネクタ。
前記脱落防止板の前記移動レールが設けられたのとは反対側の面における同脱落防止板の装着方向の後端部には、同装着方向に沿って延びた形態で補強リブが形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機器用コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記のような機器用コネクタは、周囲温度が大きく変化する環境で使用されるという事情があり、温度変化に伴い合成樹脂製のハウジングが膨張と収縮とを繰り返すと、圧入されたナットが早期に緩むことが懸念される。そのため、メンテナンス等によりボルトを緩めて端子同士の結合を外したのち、再度端子台に端子同士をボルト締めしようとした場合に、ナットの緩みで脱落しやすい状態となり、ボルト締め作業に手間取るおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、ナットの脱落を防止してボルト締め作業を能率良くしかも正確に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の機器用コネクタは、先端にボルト挿通孔を有し機器内に配された相手端子とボルト締めにより接続される複数の端子金具と、前記各端子金具を並列に装着可能で前記機器のケースの外面に取り付けられるハウジングと、前記各端子金具の先端を支持可能に前記ハウジングの前面側に突出形成され、同ハウジングの前記ケースの外面への装着に伴い同ケースを貫通して内方に突出する端子台と、前記端子台おける前記各端子金具の前記ボルト挿通孔と対応する位置ごとに開口され、前記ボルトと螺合するナットを回り止めして収容可能なナット収容孔と、前記ナットの脱落を防止するべく前記端子台の裏面側に装着され、前記各ナット収容孔と対応する位置ごとに前記ボルトの先端を逃がす逃がし孔が開口された脱落防止板と、が備えられ、前記端子台の裏面には、前記各ナット収容孔の両側の位置において前記端子台の突出方向に沿った固定レールが形成されるとともに、前記脱落防止板の対向面には前記固定レールに対して摺動可能に嵌合される移動レールが設けられ、前記脱落防止板は、前記移動レールが前記固定レールに摺動案内されつつ前記端子台の突出端側から同端子台の裏面を覆って押し込み装着される構成となって
おり、前記固定レールと前記移動レールとの摺接面のいずれか一方には、がた詰め用の突部が形成されているところに特徴を有する。
【0006】
脱落防止板は、移動レールを固定レールに嵌めて摺動させつつ押し込まれ、同脱落防止板における逃がし孔の形成された領域が、端子台のナット収容孔の開口を覆うことで、ナットの脱落が防止される。ケース内において、端子台に支持された端子金具に相手端子が重ねられ、ボルト挿通孔に通したボルトをナットに螺合して、レンチ等の工具で締め付けることにより両端子同士が接続される。すなわち、端子台に装着される脱落防止板を別途に備えたことにより、圧入した場合と比べて、ナット収容孔からのナットの脱落防止機能を長期に亘って発揮することができる。
【0007】
なお、上記のようにボルト締め作業を行う際、工具をボルトの頭部に当てるときに大きな衝撃的が加わる場合があり得、そうすると脱落防止板で押さえられたナットにも、ボルトの軸部の先端から衝撃力が加わる。一方、端子台はハウジングの前面に言わば片持ち状に突出形成されていることから、上記のようにナットに対して衝撃力が加わると、脱落防止板ともども端子台が前下がりに傾いて変形するおそれがある。このように端子台が傾いて変形すると、ナットも傾いてその軸線が、端子金具のボルト挿通孔の軸線と斜めに交差するようになり、ボルトをスムーズに締め付けることができず、極端な場合は締め付け不能となるおそれもある。
【0008】
それに対して本発明では、脱落防止板の装着手段として、端子台の裏面には、各ナット収容孔の両側の位置ごとに端子台の突出方向に沿った固定レールが形成されているから、この固定レールと脱落防止板の移動レールが組み合わせされて補強材として機能し、端子台が前下がりに傾き変形しようとするのを効果的に防止する。そのため、ナットが軸線の傾きのない正規姿勢に配され、結果ボルトのスムーズな締め付けが担保される。
本発明によれば、ナットを正規姿勢に配した上でナット収容孔からの脱落を確実に防止でき、ボルト締め作業を正確にかつ能率良く行うことができる。
【0009】
また、脱落防止板が両レール間のがたつきに起因してずれて装着されると、締め付けられたボルトの軸部の先端が逃がし孔の孔縁と干渉して、損傷を招くおそれがある。
それに対して本構成では、固定レールと移動レールの摺接面の間で突部が潰されることでがた詰めされ、脱落防止板は、逃がし孔がナット収容孔と整合した正規位置でがたつきなく装着される。その結果ボルトは、軸部の先端が逃がし孔に干渉することなく逃がされつつ締め付けられる。
また、以下のような構成としてもよい。
【0010】
(2)前記脱落防止板の装着方向の前縁には、同脱落防止板が正規位置まで押し込まれた場合に前記端子台の基端側の裏面に設けられたロック部に嵌って抜け止めするべく弾性変位可能なロック片が突出形成されている。
脱落防止板は、固定レールに沿って押し込まれ、ロック片がロック部に乗り上げて弾性変位し、正規位置まで押し込まれると、ロック片が復動変位してロック部に係止し、抜け止めされる。
【0011】
(3)前記脱落防止板の前記前縁における前記ロック片の側方には、前記ロック片が前記ロック部に係止したのち同ロック片の先端が前記ハウジングに突き当たる前において、前記端子台の裏面に設けられたストッパに当たって同脱落防止板の押し込みを規制する突当部が設けられている。
脱落防止板が正規位置まで押し込まれて、ロック片が復動変位してロック部に係止したのち、同ロック片の先端がハウジングに当たる前に突当部がストッパに当たることによって押し込みが停止される。ロック片がハウジングに当たって変形、破損等を招くことが防止される。
【0012】
(4)前記脱落防止板の前記移動レールが設けられたのとは反対側の面における同脱落防止板の装着方向の後端部には、同装着方向に沿って延びた形態で補強リブが形成されている。
補強リブが設けられたことにより、脱落防止板が前後方向の中央部を湾曲させるように反った形態に変形することが規制される。そのため、レール間の摺動抵抗が抑えられて脱落防止板の装着作業が容易となる。またロック片が設けられている場合は、ロック部から外れ難くなる。
【0013】
(5)前記脱落防止板には前記各逃がし孔を覆って膨出した蓋部が形成されている。
ボルトが締結された場合において、逃がし孔内に逃がされた軸部の先端が蓋部で覆われる。隣り合うボルトの軸部の間の絶縁を確実に採ることができる。逃がし孔を通ってナット収容孔内等に異物が侵入することが防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ナットを正規姿勢に配した上でナット収容孔からの脱落を確実に防止でき、ボルト締め作業を正確にかつ能率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1ないし
図10に基づいて説明する。
本実施形態の機器用コネクタCは、ハイブリッド車や電気自動車等に搭載されたモータやインバータ等の機器に電力を供給するために適用されるものであって、
図9に示すように、機器の金属製のケース1に取り付けられるようになっており、同ケース1には、正面長円形をなす取付孔2が貫通形成されている。
【0017】
機器用コネクタCは大まかには、合成樹脂製のハウジング20内に複数本の端子金具10が装着された構造であり、
図10に示すように、ハウジング20が機器のケース1の外面に取り付けられ、各端子金具10の先端側がハウジング20の前面に突設された端子台30に支持された形態で取付孔2を貫通してその内部に突出し、各端子金具10の先端に、ケース1内に配された相手端子5がボルト8の締め付けにより結合されるとともに、ハウジング20の後面(
図10の右方)には、ハーネスの端末に設けられた電線側コネクタ(図示せず)が嵌合接続されるようになっている。
【0018】
以下、機器用コネクタCの構造を説明するに当たって、上下方向については
図1を基準とし、端子台30における脱落防止板50の装着側を上方として説明する。したがって
図9及び
図10では、上下反転した形態を示している。
機器用コネクタCは、一部既述したように、ハウジング20と、図示3本の端子金具10と、ハウジング20をケース1に取り付けるための金属製のブラケット60と、端子台30に配されるナット35(四角ナット)と、同ナット35の脱落を防止するための脱落防止板50と、を備えて構成されている。
【0019】
端子金具10は、
図9に示すように丸ピン端子であって、先端側(同図の左側)には平板状の接続部11が圧潰されて形成され、同接続部11には、ボルト挿通孔12が開口されている。上記した3本の端子金具10は一定ピッチで並列され、ハウジング20内にインサート成形によって一体的に組み込まれている。
【0020】
ハウジング20の構造を説明する。ハウジング20は、
図1、
図2及び
図9に示すように、長円形断面をなす本体部21を備えており、本体部21内には、各端子金具10の長さ方向の中央部が挿通された端子挿通孔22が、一定ピッチで並列に形成されている。
本体部21の後面には、一回り大きい長円形の筒状をなす嵌合筒部24が後面に開口して形成され、電線側コネクタが嵌合可能となっている。嵌合筒部24の前端側の所定長さは、ケース1の取付孔2内に所定のクリアランスを持って嵌合可能となっている。
【0021】
本体部21の前面には、各端子挿通孔22の上縁部の位置から、詳しくは後記する端子台30が前方に向けて突出形成されている。各端子台30は、下端部同士が連結板31で結合されている。
3本の端子金具10は、
図9に示すように、長さ方向の中央部を端子挿通孔22に挿通し、後端側の丸ピン13を嵌合筒部24内に突出させるとともに、前端側の接続部11を端子台30の下面に沿わせた形態でハウジング20内に埋設されている。
【0022】
ハウジング20の嵌合筒部24における前側寄り(本体部21寄り)の位置の外周には、フランジ25が全周に亘って形成されている。フランジ25の前面の基端部には、前方に突出した受け部25Aが全周に亘って形成され、同受け部25Aの外周側に、長円形の環状をなす面パッキン15の装着部26が形成されている。面パッキン15は、ケース1の取付孔2における外面側の孔縁部2Aに当接可能である。
フランジ25の後面には、フランジ25の厚さよりも若干大きい高さを持った複数枚のリブ27が、周方向に間隔を開けて全周に亘って形成されている(リブ配設部28)。
【0023】
嵌合筒部24の後端部の外周には、リング装着溝29が全周に亘って形成されており、このリング装着溝29には、シールリング16(軸シール)が装着されるようになっている。シールリング16は、電線側コネクタ、厳密には同コネクタに設けられたシールドシェルとの間をシールするように機能する。
【0024】
端子台30についてさらに説明する。各端子台30には、平面正方形をなすナット収容孔33が、端子金具10の接続部11のボルト挿通孔12と同心に形成されている。ナット収容孔33内には、ナット35が若干のクリアランスを持って収容可能である。各端子台30に亘って形成された連結板31には、隣り合う端子台30、すなわち隣り合う端子金具10の間を仕切るようにして仕切壁36が立てられている。
【0025】
端子台30の上面側には、
図1に示すように、各ナット収容孔33に収容されたナット35の脱落を揃って防止するべく脱落防止板50が装着されるようになっている。脱落防止板50の構造並びに装着構造を説明する。
脱落防止板50は合成樹脂製であって、全端子台30のナット収容孔33を揃って覆うことが可能な横長の本体板51を有しており、この本体板51には、3個の円形の逃がし孔52が、ナット収容孔33と同一ピッチで並列して開口されている。各逃がし孔52は、ナット35に螺合されたボルト8の軸部8Bにおけるナット35から突出した先端を挿通して逃がす機能を果たす。
【0026】
装着構造については、
図2に示すように、各端子台30における上面部には、その左右両側縁に、一対の突条をなす固定レール40が張り出し形成されている。
図1に示すように、合計6本の固定レール40のうち、中央の4本の固定レール40Sは、端子台30の前縁から少し入った位置から、ナット収容孔33を少し越えた位置まで形成されている。一方、両端の2本の固定レール40Lは、同じく端子台30の前縁から少し入った位置から、本体部21の前面に達する位置まで延出形成されている。
【0027】
一方、脱落防止板50の下面には、
図3及び
図4に示すように、各逃がし孔52の左右両側の位置ごとに、一対の移動レール53が形成されている。一対の移動レール53は、対応した一対の固定レール40に摺動自由に嵌合するべく、互いに向き合う面が開口された溝状に形成されている。
合計6本の移動レール53のうち、中央の4本の移動レール53Sは、対応する固定レール40Sに合わせて短寸に形成されている一方、両端の2本の移動レール53Lは、対応する固定レール40Lに合わせて、装着方向の前方に延出した長尺に形成されている。全移動レール53の装着方向の後端には、閉鎖板53Aが形成されている。
【0028】
脱落防止板50の本体板51の挿入方向の前縁には、各逃がし孔52の前方に対応する位置ごとに、ロック孔55が開口されたロック片54が弾性変位可能に突出形成されている。一方、各端子台30の上面におけるナット収容孔33の後方に対応する位置ごとに、
図1及び
図9に示すように、ロック片54のロック孔55に嵌ってロックするロック突部42が形成されている。ロック突部42は、後面側が切り立った係止面43で、手前側の面が、上り勾配のガイド面44となっている。
【0029】
図1に示すように、脱落防止板50は、両端の移動レール53Lの先端を、両端の固定レール40Lに嵌めつつ、各ロック片54の先端を端子台30の前縁に載せた状態から、端子台30の上面に沿ってハウジング20の本体部21側に押し込まれ、途中から中央の短寸の移動レール53Sが固定レール40Sに嵌りつつ、固定レール40で案内されて押し込まれる。終盤になると、ロック片54が弾性撓みしてロック突部42に乗り上げながら押し込まれ、移動レール53の閉鎖板53Aが固定レール40の入口側の端部に当たる位置まで押し込まれると、ロック孔55がロック突部42の位置に達することで、ロック片54が復元変位しつつロック孔55にロック突部42が嵌り、脱落防止板50が抜け止めされて装着されるようになっている。
【0030】
なお、上記したロック突部42は、ハウジング20の本体部21の前面のすぐ手前に形成されているため、例えばレール40,53の寸法公差等により、ロック片54がロック突部42に係止したのちなお脱落防止板50が押し込まれ、ロック片54の先端が本体部21の前面に突き当たって塑性変形を招くことも懸念される。
そのため、脱落防止板50の本体板51の前縁における各ロック片54の間の2箇所には、突当板56が設けられる一方、端子台30の上面における各ロック突部42の間の2箇所には、上記の突当板56を突き当てて脱落防止板50の押し込みを規制するストッパ45が形成されている。特に、ロック片54がロック突部42に係止したのち同ロック片54の先端がハウジング20の本体部21に突き当たる前において、突当板56がストッパ45に突き当たる設定となっている。
【0031】
脱落防止板50の各移動レール53における下側の溝面53Uには、
図5に詳細に示すように、奥端寄り(装着方向の後端寄り)の位置に、がた詰め用の圧入リブ57が形成されている。
図1に示すように、脱落防止板50の上面における装着方向の後端部には、各逃がし孔52の間に位置する2箇所において、前後方向に延びた形態の補強リブ58が形成されている。
【0032】
ブラケット60はアルミダイキャスト製であって、
図8及び
図9に示すように、ハウジング20におけるフランジ25からリング装着溝29の手前までの領域の外周面を覆うべく、長円形の筒形に形成されている。ブラケット60はより詳細には、フランジ25(前面のパッキン装着部26と後面のリブ配設部28とを含む)の外周に緊密に嵌る大径部61の後方に、リング装着溝29の手前の領域の外周に緊密に嵌る小径部62が連設された段付き状に形成されている。
【0033】
ブラケット60の大径部61における正面視で右上と左下の角部には、
図2に示すように、取付部63が張り出し形成され、各取付部63には、同ブラケット60をケース1の外面に取り付けるべくボルト(図示せず)の挿通孔64が形成されている。
ブラケット60の下縁の中央位置には、大径部61の前面から少し後退した位置から小径部62の後面に至る厚さを持った接続部65が張り出し形成されている。この接続部65には、電線側コネクタに装着されたシールドシェル(図示せず)と締結するべくボルト(図示せず)が螺合されるねじ孔66が切られている。
【0034】
続いて、本実施形態の機器用コネクタCの組み立てとケース1に取り付ける手順の一例を説明する。
コネクタCを組み立てるに当たっては、3本の端子金具10をインサート成形により一体的に組み込んだハウジング20を準備したのち、
図1に示すように、各端子台30のナット収容孔33に、ナット35が回り止めされた形態で収容される。
そののち脱落防止板50が、既述した要領により、端子台30の上面を覆って装着される。簡単に繰り返すと、脱落防止板50は、移動レール53を固定レール40に嵌めて摺動させつつ、かつ終盤では圧入リブ57を潰しながら端子台30の上面に沿って押し込まれ、所定位置まで押し込まれたところで、ロック片54のロック孔55が弾性的にロック突部42に嵌って抜け止めされる。脱落防止板50の装着に伴い、本体板51が各ナット収容孔33を揃って覆い、但し各逃がし孔52がナット収容孔33と同心に配される。
【0035】
それとともに、ハウジング20のフランジ25の前面におけるパッキン装着部26に、面パッキン15が装着され、またハウジング20の後端部のリング装着溝29にシールリング16が嵌着される。
次に、ブラケット60がハウジング20の後端側から外嵌され、
図9に参照して示すように、ブラケット60の内周の段差部67が、ハウジング20のフランジ25の後面におけるリブ配設部28のリブ27に当たったところで嵌合が完了する。これによりコネクタCの組立が完了し、パッキン装着部26に装着された面パッキン15は、その前面が、ブラケット60の大径部61の前面から所定量突出する。
【0036】
このように組み立てられたコネクタCは、
図9に示すように、上下反転した姿勢とされたのち、端子台30側からケース1の取付孔2に挿入される。面パッキン15が取付孔2の外面側の孔縁部2Aに当たるまで挿入されたら、ブラケット60に設けられた取付部63の挿通孔64にボルトを通して、ケース1の外面の対応位置に形成されたねじ孔に螺合して締め付けると、
図10に示すように、面パッキン15が弾縮されつつブラケット60を介してハウジング20が固定される。
これにより、ハウジング20の端子台30が取付孔2を貫通してケース1内に突出した形態となり、また、ケース1の取付孔2の孔縁部2Aが面パッキン15でシールされる。
【0037】
コネクタCが取り付けられたら、ケース1内では、
図10に示すように、端子台30に支持された各端子金具10の接続部11に相手端子5が重ねられ、両ボルト挿通孔6,12にボルト8を通して回り止めされたナット35に螺合して、レンチ等の工具で締め付けることにより対応する端子5,10同士が接続される。
一方、ハウジング20の嵌合筒部24には電線側コネクタがシールされて嵌合されるとともに、同電線側コネクタのシールドシェルがブラケット60の接続部65にボルト締めされて接続される。そののち、電線側コネクタの端末部にゴムブーツが被着される。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、端子台30に設けたナット35の脱落防止手段として、端子台30に装着される脱落防止板50を別途に備えたから、圧入した場合と比べて、ナット収容孔33からのナット35の脱落防止機能を長期に亘って発揮することができる。
ここで、ボルト締め作業を行う際、レンチをボルト8の頭部8Aに衝撃的に当てる場合があり得、そうすると脱落防止板50で押さえられたナット35にも、ボルト8の軸部8Bの先端から衝撃力が加わる。一方、端子台30はハウジング20の本体部21の前面に片持ち状に突出形成されていることから、上記のようにナット35に対して衝撃力が加わると、脱落防止板50ともども端子台30が前下がりに傾いて変形するおそれがある。端子台30が傾いて変形するとナット35も傾いて、その軸線が端子金具10のボルト挿通孔12の軸線と斜めに交差するようになり、ボルト8をスムーズに締め付けることができず、極端な場合は締め付け不能となるおそれもある。
【0039】
それに対して本実施形態では、脱落防止板50の装着手段として、端子台30の上面(裏面)に、各ナット収容孔33の両側の位置ごとに端子台30の突出方向に沿った固定レール40が形成されているから、この固定レール40と移動レール53とが補強材として機能して、端子台30が前下がりに傾き変形しようとするのを効果的に防止する。そのため、ナット35が軸線の傾きのない正規姿勢に配され、結果ボルト8のスムーズな締め付けが担保される。
すなわち、ナット35を正規姿勢に配した上でナット収容孔33からの脱落を確実に防止でき、ボルト締め作業を正確にかつ能率良く行うことができる。
【0040】
また、脱落防止板50がレール40,53間のがたつき等に起因して位置ずれして装着されると、締め付けられたボルト8の軸部8Bの先端が逃がし孔52の孔縁と干渉して、損傷を招くおそれがある。
それに対して本実施形態では、固定レール40と移動レール53の摺接面の間で圧入リブ57が潰されることでがた詰めされ、脱落防止板50は、逃がし孔52がナット収容孔33と整合した正規位置でがたつきなく装着される。その結果ボルト8は、軸部8Bの先端が逃がし孔52に干渉することなく逃がされつつ締め付けられる。
【0041】
脱落防止板50の前縁におけるロック片54の側方には突当板56が設けられていて、脱落防止板50が正規位置まで押し込まれて、ロック片54が復動変位してロック突部42に係止したのち同ロック片54の先端がハウジング20の本体部21に当たる前に、同突当板56が端子台30に設けられたストッパ45に当たって押し込みが停止されるようになっている。そのため、ロック片54がハウジング20の本体部21に当たって変形、破損等を招くことが未然に防止される。
【0042】
さらに、脱落防止板50の上面(裏面)における後端部には補強リブ58が設けられているから、脱落防止板50が前後方向の中央部を湾曲させるように反った形態に変形することが規制される。そのため、ロック片54がロック突部42から外れ難くなり、不用意にロック片54が外れることを防止する。また、レール40,53間の不必要な摺動抵抗が抑えられて、脱落防止板50の装着作業が容易となる。
【0043】
<実施形態2>
図11は、本発明の実施形態2を示す。この実施形態2では、脱落防止板50Xの上面において、各逃がし孔52の間に位置する2箇所において形成された補強リブ58Xが、本体板51の後縁から突当板56の前縁に至る長さ領域に形成されている。その他の構造については、上記実施形態1と同様である。
この実施形態2によれば、脱落防止板50Xが前後方向の中央部を湾曲させるように反った形態に変形することがより確実に防止される。また、突当板56自身の補強にも有効である。さらに、補強リブ58Xは、隣り合う逃がし孔52の間を全長に亘って仕切ることになるから、隣り合う逃がし孔52からそれぞれ突出したボルト8の軸部8Bの先端の間を絶縁する機能にも優れたものとなる。
【0044】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を
図12及び
図13によって説明する。この実施形態3の脱落防止板50Yでは、上記実施形態1に例示した脱落防止板50に対し、各逃がし孔52の上面(裏面)側を覆うようにして、段付きのドーム状に膨出した蓋部70が形成されている。
この実施形態3によれば、ボルト8が締結された場合において、逃がし孔52内に逃がされた軸部8Bの先端が蓋部70で覆われることになる。そのため、隣り合うボルト8の軸部8Bの間の絶縁を確実に採ることができる。また、逃がし孔52を通ってナット収容孔33内等に異物が侵入することが防止され、例えば金属製の異物が侵入することに起因して、隣り合ったボルト8間がショートする事態を未然に防止できる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では3極すなわち端子台を3個備えたコネクタを例示したが、極数すなわち端子台の数は不問である。
(2)各端子金具の先端部の位置、すなわち各端子台の先端位置が不揃いのものにも、本発明は同様に適用可能である。
(3)上記実施形態では、端子台のストッパに当たって脱落防止板の押し込みを規制する突当部として、同脱落防止板から面一に延出した板状のもの(突当板)を例示したが、脱落防止板の上面に突出したもの等、形状は問わない。
(4)上記実施形態では、がた詰め用の圧入リブ(突部)を脱落防止板における移動レールの摺接面に形成した場合を例示したが、端子台に形成した固定レールの摺接面に形成してもよい。
【0046】
(5)実施形態3の脱落防止板についても、実施形態2に例示したように補強リブを全長に亘って形成した構造としてもよい。
(6)上記実施形態に例示したコネクタの組立手順はあくまでも一例であって、他の手順で組み立てるようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、別途備えられた電線側コネクタが嵌合接続される形式の機器用コネクタを例示したが、電線の端末に接続された端子金具を直接にハウジングに装着した形式の機器用コネクタについても、本発明は同様に適用することが可能である。