(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記血圧値入力手段に前記血圧値が入力されてからの経過時間に基づき、前記補正手段により補正された血圧値の信頼度を算出する信頼度算出手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の血圧計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脈波信号の波形が異常となる原因には、外乱や計測上の問題(例えば患者の体動等)によるものと、心疾患等のため、脈波自体が通常とは異なることによるものとがある。血圧計には、脈波信号の波形が異常となる原因に応じて、適切な対応が求められる。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、上述した課題を解決できる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の血圧計は、脈波信号に基づき血圧値を推定する血圧計であって、血圧値の推定に用いた前記脈波信号について、以下の条件(a1)〜(a3)から成る群から選択される1以上の条件である条件(a)、及び以下の条件(b)が充足されるか否かを判断する判断手段と、条件(a)が充足される場合、再計測を促す表示を行う第1の表示手段と、条件(b)が充足される場合、血圧値の入力を促す表示を行う第2の表示手段と、血圧値を入力可能な血圧値入力手段とを備えることを特徴とする。
(a1)前記脈波信号のSNRが所定の閾値以下である。
(a2)前記脈波信号、又はその脈波信号を微分処理して得られる信号(例えば、1階微分信号や2階微分信号等)における、一拍ごとの波形同士の相関が所定の閾値以下である。
(a3)前記脈波信号から算出した特徴量における、一拍ごとのばらつきが所定の閾値以上である。
(b)前記特徴量が、所定の異常値に該当する。
【0007】
本発明の血圧計は、条件(a)が充足される場合(外乱や計測上の問題(例えば患者の体動等)がある可能性が高い場合)は、第1の表示を行うことができる。また、条件(b)が充足される場合(心疾患等のため、脈波自体が通常とは異なる可能性が高い場合)は、第2の表示を行うことができる。よって、本発明の血圧計は、脈波信号の波形が異常となる原因に応じて、適切な対応を行うことができる。
【0008】
条件(a)は、例えば、(a1)〜(a3)のうちの1個とすることができる。この場合、その1個が充足されると、条件(a)が充足されたと判断することができる。また、条件(a)は、例えば、(a1)〜(a3)のうちのn個(nは2、又は3)とすることができる。この場合、例えば、n個のうちの1個でも充足されると、条件(a)が充足されたと判断することができる。あるいは、n個のうちの所定数(例えば、n、又は(n−1)個)が充足されると、条件(a)が充足されたと判断するが、所定数未満が充足されても、条件(a)は充足されていないと判断してもよい。
【0009】
本発明の血圧計は、例えば、心電を取得する心電取得手段を備え、前記判断手段は、以下の条件(c)も判断し、前記第2の表示手段は、条件(c)が充足される場合も、血圧値の入力を促す表示を行うことができる。
(c)心電が所定の異常パターンに該当する。
【0010】
この場合、第2の表示を一層適切に表示することができる。
本発明の血圧計は、例えば、患者の皮膚温を取得する皮膚温取得手段を備え、前記判断手段は、以下の条件(d)も判断し、前記第1の表示手段は、条件(d)が充足される場合も、再計測を促す表示を行うことができる。
(d)前記皮膚温が所定の閾値以下である。
【0011】
この場合、第1の表示を一層適切に表示することができる。
前記血圧値入力手段は、例えば、ユーザの入力操作、又は無線通信により前記血圧値を入力可能なものとすることができる。この場合、血圧値の入力が一層容易になる。
【0012】
本発明の血圧計は、例えば、前記血圧値入力手段に入力された血圧値と、前記脈波信号に基づき推定された血圧値との差Δを算出する差Δ算出手段と、前記血圧値の入力後に取得された前記脈波信号に基づき推定された血圧値を、前記差Δを用いて補正する補正手段とを備えることができる。
【0013】
この場合、差Δを用いて、血圧値を補正することが可能になる。その結果、一層精度が高い血圧値を得ることが可能になる。
本発明の血圧計は、例えば、前記血圧値入力手段に前記血圧値が入力されてからの経過時間に基づき、前記補正手段により補正された血圧値の信頼度を算出する信頼度算出手段を備えることができる。
【0014】
この場合、ユーザは、差Δを用いて補正された血圧値の信頼度を容易に知ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.血圧計1の構成
血圧計1の構成を
図1及び
図2に基づき説明する。血圧計1は、
図1に示すように、脈波センサ3、温度計5、心電センサ7、入力部9、ディスプレイ11、無線通信部13、及び制御部15を備える。
【0017】
脈波センサ3は、
図2Bに示すように、血圧計1の背面側に設けられ、発光ダイオード(LED)17、及びフォトダイオード(PD)19を備える。脈波センサ3上に患者の指101をのせたとき、LED17が照射する緑色の光(5000Å〜8000Åの波長を含む光)は、患者の指の毛細血管内で反射され、その反射光はPD19により受光される。PD19は、反射光を電気信号(脈波信号)に変換し、出力する。
【0018】
温度計5は、患者の皮膚に装着され、皮膚温を測定可能な温度計である。心電センサ7は、患者の心電を測定可能な周知の心電センサである。
入力部9は、ユーザが入力操作を行うことができる構成である。入力部9は、
図2Aに示すように、タッチパネル方式の操作ボタン21、23を有する。操作ボタン21は、後述する血圧測定処理の実行を指示する操作ボタンである。また、入力部9は、操作ボタン21、23以外にも、血圧計1の状態に応じて、各種指示を行うための操作ボタンを表示することができる。
【0019】
ディスプレイ11は、画像を表示可能な液晶ディスプレイである。ディスプレイ11は、
図2Aに示すように、血圧計1の正面側に設けられている。無線通信部13は、外部の機器と無線通信を行う周知の構成である。
【0020】
制御部15は、CPU、ROM、RAM等を備える周知のコンピュータであって、血圧計1の各部材を制御する。また、制御部15は、後述する処理を実行する。
なお、制御部15は、判断手段、差Δ算出手段、補正手段、及び信頼度算出手段の一実施形態である。ディスプレイ11及び制御部15は、第1の表示手段及び第2の表示手段の一実施形態である。入力部9及び無線通信部13は、血圧値入力手段の一実施形態である。心電センサ7は、心電取得手段の一実施形態である。温度計5は、皮膚温取得手段の一実施形態である。
【0021】
2.血圧計1が実行する処理
(2−1)血圧値測定処理
血圧計1が実行する血圧値測定処理を
図3〜
図6に基づき説明する。血圧値測定処理は、ユーザが操作ボタン21を押圧したときに実行される。
【0022】
図3のステップ1では、脈波センサ3を用いて患者の脈波信号を取得し、心電センサ7を用いて患者の心電を取得し、温度計5を用いて患者の皮膚温を取得する。
ステップ2では、フィルタリングにより、脈波信号及び心電の波形からノイズを除去する。また、フィルタリングにより、微分処理を行ってもよい。
【0023】
ステップ3では、脈波信号についてSNR(信号とノイズの比)を算出する。
ステップ4では前記ステップ3で算出したSNRが20dB以上であるか否かを判断する。20dB以上である場合はステップ5に進み、20dB未満である場合はステップ21に進む。
【0024】
ステップ5では、脈波信号の波形を、一拍ごとに切り出す。
ステップ6では、前記ステップ5で切り出した1拍ごとの波形同士の相関を算出する。
ステップ7では、前記ステップ6で算出した相関が0.5以上であるか否かを判断する。0.5以上である場合はステップ8に進み、0.5未満である場合はステップ21に進む。
【0025】
ステップ8では、脈波信号から、特徴量(脈波特徴量)を抽出する。この特徴量は、具体的には、脈波波形の最大値や最大値の時間、2階微分波形のピーク値(順にa−f値)等である。
【0026】
ステップ9では、前記ステップ8で抽出した特徴量について、所定拍数分の標準偏差(ばらつきの一実施形態)を計算する。すなわち、脈波信号における一拍ごとにそれぞれ特徴量を抽出し、それら特徴量の標準偏差を計算する。この標準偏差は、中央値を1として規格化したものである。
【0027】
ステップ10では、前記ステップ9で計算した標準偏差が0.5未満であるか否かを判断する。0.5未満である場合はステップ11に進み、0.5以上である場合はステップ21に進む。
【0028】
ステップ11では、前記ステップ8で抽出した特徴量が異常値に該当するか否かを判断する。異常値とは、具体的には、2階微分波形の1番目のピーク(a値)と6番目のピーク(f値)との比f/aが0未満であることである。異常値に該当しない場合はステップ12に進み、異常値に該当する場合はステップ22に進む。
【0029】
ステップ12では、前記ステップ1で取得した心電に不整脈(心電の異常パターンの一実施形態)が存在するか否かを判断する。不整脈が存在しない場合はステップ13に進み、不整脈が存在する場合はステップ22に進む。
【0030】
ステップ13では、前記ステップ1で取得した皮膚温が正常な範囲(例えば30℃以上の範囲)内であるか否かを判断する。正常な範囲内である場合はステップ14に進み、正常な範囲外である場合はステップ21に進む。
【0031】
ステップ14では、周知の方法を用いて、脈波信号に基づき、血圧値を推定する。具体的には、脈波信号から特徴量を算出し、その特徴量を周知の血圧推定モデルにあてはめ、血圧値を得る。
【0032】
ステップ15では、前記ステップ14で推定した血圧値に対する信頼度を算出する。信頼度は、複数の要素から選択される1以上を用いて算出することができる。複数の要素としては、以下のものが挙げられる。
(i)前記ステップ3で計算したSNR。SNRが40以上であれば信頼度が高く、40未満であれば信頼度が低いとすることができる。
(ii)前記ステップ6で算出した相関。相関が0.8以上であれば信頼度が高く、0.8未満であれば信頼度が低いとすることができる。
(iii)前記ステップ9で算出した標準偏差。標準偏差が0.2未満であれば信頼度が高く、0.2以上であれば信頼度が低いとすることができる。
(iv)前記ステップ8で抽出した特徴量。特徴量が−0.1未満であれば信頼度が高く、−0.1以上であれば信頼度が低いとすることができる。
(v)前記ステップ1で取得した皮膚温。皮膚温が32℃以上であれば信頼度が高く、32℃未満であれば信頼度が低いとすることができる。
【0033】
複数の要素を用いて信頼度を算出する場合は、各要素における信頼度を総合して判断することができる。また、複数の要素を用いて信頼度を算出する場合、複数の要素のうち、一つでも信頼度が低いことを示すものがあれば、最終的に、信頼度が低いと判断してもよい。また、一つの要素を用いて信頼度を算出してもよい。
【0034】
ステップ16では、前記ステップ15で算出した信頼度が所定の閾値以上であるか否かを判断する。所定の閾値以上である場合はステップ17に進み、閾値未満である場合はステップ18に進む。
【0035】
ステップ17では、前記ステップ14で推定した血圧値と、前記ステップ15で算出した信頼度とを、ディスプレイ11に表示する。その表示例を
図4に示す。
図4に示す例では、信頼度を色で表現しており、信頼度が高いことは、青色で表現する。
【0036】
一方、前記ステップ16で否定判断された場合はステップ18に進み、信頼度が低いと判断された原因が、計測上の問題にあるか否かを判断する。
具体的には、信頼度の算出に用いた要素のうち、計測上の問題に関連する要素(例えば、SNR、相関、皮膚温)が信頼度の低さを示している場合は、信頼度が低いと判断された原因が計測上の問題にあると判断し、ステップ19に進む。一方、計測上の問題に関連する要素が信頼度の低さを示していない場合は、信頼度が低いと判断された原因が計測上の問題ではなく、患者の特性(脈波信号の波形自体の特性)にあると判断し、ステップ20に進む。
【0037】
ステップ19では、前記ステップ14で推定した血圧値と、前記ステップ15で算出した信頼度とを、ディスプレイ11に表示するとともに、再計測を教示する(促す)表示を行う。その表示例を
図5に示す。
図5に示す例では、信頼度を色で表現しており、血圧値は推定できたが、その信頼度が低いことを、黄色で表現する。また、再計測を教示する表現として「体動がありました。安静にして、再測定して下さい。」が表示される。
【0038】
このとき、
図5に示すように、ディスプレイ11には再計測を指示する操作ボタン24が表示される。操作ボタン24はタッチパネル方式の操作ボタンであり、入力部9の一部である。ユーザは、操作ボタン24を押圧することができる。ユーザが操作ボタン24を押圧すると、血圧値測定処理が最初から実行される。
【0039】
ステップ20では、前記ステップ14で推定した血圧値と、前記ステップ15で算出した信頼度とを、ディスプレイ11に表示するとともに、血圧値の入力を教示する(促す)表示を行う。その表示例を
図6に示す。
図6に示す例では、信頼度を色で表現しており、血圧値は推定できたが、その信頼度が低いことを、黄色で表現する。また、血圧値の入力を教示する表現として「今後の計測のために、血圧値を入力して下さい。」が表示される。
【0040】
このとき、
図6に示すように、ディスプレイ11には、血圧値の入力を指示する操作ボタン23が表示される。ユーザは、操作ボタン23を押圧することができる。ユーザが操作ボタン23を押圧すると、後述する血圧値入力処理が実行される。
【0041】
一方、前記ステップ7、10、13のうちのいずれかで否定判断された場合はステップ21に進み、再計測を教示する表示をディスプレイ11に行う。例えば、ディスプレイ11に、
図5と同様の表示(ただし、血圧値は表示されず、信頼度は、
図5の場合よりもさらに低い場合の表示)が表示される。このときも、ディスプレイ11に、再計測を指示する操作ボタン24が表示される。ユーザが操作ボタン24を押圧すると、血圧値測定処理が最初から実行される。
【0042】
また、前記ステップ11、12のうちのいずれかで肯定判断された場合はステップ22に進み、血圧値の入力を教示する表示をディスプレイ11に行う。例えば、
図6と同様の表示(ただし、血圧値は表示されず、代わりに、「血圧値が算出されませんでした。」が表示され、信頼度は、
図6の場合よりもさらに低い場合の表示)が表示される。このとき、ディスプレイ11に、血圧値の入力を指示する操作ボタン23が表示される。ユーザが操作ボタン23を押圧すると、後述する血圧値入力処理が実行される。
(2−2)血圧値入力処理
血圧計1が実行する血圧値入力処理を
図7〜
図10に基づき説明する。血圧値入力処理は、前記ステップ20、22において、血圧値入力を教示する表示が行われたとき、ディスプレイ11に表示される、血圧値の入力を指示する操作ボタン23(
図6参照)をユーザが押圧したときに実行される。
【0043】
図7のステップ101では、
図8に示す選択画面をディスプレイ11に表示する。この画面には、直接入力を選択する操作ボタン25と、無線通信での取得を選択する操作ボタン27とが表示される。操作ボタン25、27はタッチパネル方式の操作ボタンであり、入力部9の一部である。ユーザは、操作ボタン25、又は操作ボタン27を押圧することができる。
【0044】
ステップ102では、選択画面において、直接入力を選択する操作ボタン25が押圧されたか否かを判断する。操作ボタン25が押圧されなかった場合はステップ103に進み、押圧された場合はステップ112に進む。
【0045】
ステップ103では、選択画面において、無線通信での取得を選択する操作ボタン27が押圧されたか否かを判断する。操作ボタン27が押圧された場合はステップ104に進み、押圧されなかった場合は本処理を終了する。
【0046】
ステップ104では、
図9に示すように、他の血圧計103から、患者の血圧値を無線通信により取得する。なお、他の血圧計103は、予め患者の血圧値を測定し、その値を保存している。また、他の血圧計103は、血圧計1の無線通信部13との間で無線通信を実行可能な構成を備える。
【0047】
また、本ステップ104では、血圧値を無線通信で取得している間、
図10Aに示す画面をディスプレイ11に表示する。この画面は、血圧値を無線通信で取得中であることを示す。
【0048】
ステップ105では、前記ステップ104において血圧値を取得することに成功したか否かを判断する。成功した場合はステップ106に進み、失敗した場合はステップ110に進む。
【0049】
ステップ106では、
図10Bに示す画面をディスプレイ11に表示する。この画面は、血圧値の取得が完了したことを示す。また、この画面は、YESの操作ボタン29とNOの操作ボタン31とを有する。操作ボタン29、31はタッチパネル方式の操作ボタンであり、入力部9の一部である。ユーザは、取得された血圧値を保存したい場合、操作ボタン29を押圧することができ、また、取得された血圧値を保存したくない場合、操作ボタン31を押圧することができる。
【0050】
ステップ107では、操作ボタン29が押圧されたか否かを判断する。押圧された場合はステップ108に進み、押圧されなかった場合は本処理を終了する。
ステップ108では、
図10Cに示す画面をディスプレイ11に表示する。この画面は、無線通信により取得された血圧値を表す。
【0051】
ステップ109では、取得された血圧値を保存する。また、血圧値と関連付けて、血圧値を取得した日時も記憶する。
一方、前記ステップ105で否定判断された場合はステップ110に進み、
図10Dに示す画面をディスプレイ11に表示する。この画面は、血圧値の再取得を指示する操作ボタン33と、血圧値の取得を止めることを指示する操作ボタン35とを有する。操作ボタン33、35はタッチパネル方式の操作ボタンであり、入力部9の一部である。ユーザは、血圧値の再取得を行いたい場合、操作ボタン33を押圧することができ、また、再取得を行いたくない場合、操作ボタン35を押圧することができる。
【0052】
ステップ111では、操作ボタン33が押圧されたか否かを判断する。押圧された場合はステップ104に進み、押圧されなかった場合は本処理を終了する。
また、前記ステップ102で、直接入力を選択する操作ボタン25が押圧された場合はステップ112に進み、血圧値を入力するためのフォーマットをディスプレイ11に表示する。このとき、ユーザは、入力部9に対する入力操作により、フォーマットに血圧値を入力することができる。
【0053】
ステップ113では、フォーマットに対する血圧値の入力が終了したか否かを判断する。終了した場合はステップ114に進み、未だ終了していない場合はステップ113の前に戻る。
【0054】
ステップ114では、フォーマットに入力された血圧値を記憶する。また、入力された血圧値と関連付けて、入力した日時も記憶する。
3.血圧計1が奏する効果
(3−1)血圧計1は、前記ステップ3で計算したSNRが低い場合、前記ステップ6で算出した相関が低い場合、前記ステップ9で計算した標準偏差が大きい場合、及び患者の皮膚温が低い場合(いずれも、外乱や計測上の問題(例えば患者の体動等)がある可能性が高い場合)は、再計測を促す表示を行う。
【0055】
また、血圧計1は、特徴量が異常値に該当する場合、及び心電に不整脈が存在する場合(いずれも、患者の特性により、血圧値の測定を正確に行えない場合)には、血圧値の入力を促す表示を行う。
【0056】
よって、血圧計1は、血圧値を正確に測定できない原因に応じて、適切な対応を行うことができる。
(3−2)血圧計1は、直接入力(ユーザの入力操作による入力)、又は無線通信により血圧値を入力可能である。そのため、血圧値の入力が容易である。
<第2の実施形態>
1.血圧計1の構成
本実施形態の血圧計1の構成は、前記第1の実施形態と同様である。
【0057】
2.血圧計1が実行する処理
(2−1)血圧値測定処理
血圧計1が実行する血圧値測定処理を
図11〜
図14に基づき説明する。血圧値測定処理は、ユーザが操作ボタン21を押圧したときに実行される。
【0058】
図11におけるステップ201〜221は、基本的には前記第1の実施形態における前記ステップ1〜21と同様である。
本実施形態では、ステップ211において、特徴量が異常値に該当すると判断した場合と、ステップ212において、心電に不整脈が存在すると判断した場合とは、ステップ222に進む。ステップ222では、過去の血圧値入力処理により入力された血圧値が存在するか否かを判断する。血圧値入力処理により入力された血圧値が存在する場合はステップ213に進み、存在しない場合はステップ223に進む。このステップ223は、前記ステップ22と同様である。
【0059】
また、本実施形態では、ステップ214において血圧値を推定する処理が前記第1の実施形態とは一部相違する。
ステップ211、又は212で肯定判断され(特徴量が異常値に該当するか、不整脈が存在し)、ステップ222で肯定判断された(血圧値入力処理により入力された血圧値が存在する)場合、以下の式(1)で定義される差Δを算出する。
【0060】
式(1):差Δ=X−Y
ここで、Xは、血圧値入力処理により入力された血圧値である。また、Yは、Xを入力したときに、血圧計1が、前記ステップ14と同様の方法で、脈波信号に基づき推定した血圧値である。
【0061】
そして、ステップ201で取得した脈波信号に基づき推定した血圧値(補正前の血圧値とする)に、差Δを加えて補正する。補正後の値を、補正後の血圧値とする。ステップ217、219、220では、血圧値として、補正後の血圧値を表示する。補正後の血圧値は、
図12に示す画面により表示することができる。この画面は、血圧値が補正されたことと、補正に用いた血圧値の入力日を示している。
【0062】
なお、補正の対象となる、補正前の血圧値は、血圧値入力処理による血圧値の入力後に取得された脈波信号に基づき推定された血圧値である。
一方、ステップ211、212の両方で否定判断した場合は、前記ステップ14と同様の方法で血圧値を推定し、その血圧値をステップ217、219、220で表示する。
【0063】
また、ステップ214において差Δを用いて血圧値を補正した場合、ステップ215で信頼度を算出する要素の一つとして、少なくとも、入力された血圧値の入力日を用いる。すなわち、入力日が古いほど(血圧値が入力されてからの経過時間が長いほど)、信頼度が低いと判断する。なぜならば、入力日が古いほど、差Δが不正確になり易く、補正後の血圧値が不正確になり易いからである。血圧値の入力日と信頼度との関係は、例えば、以下のようにすることができる。
【0064】
入力日が1週間以内:信頼度高
入力日が1ヶ月以内:信頼度中
入力日が1ヶ月超:信頼度低
信頼度は、入力された血圧値の入力日のみに基づき算出してもよいし、入力された血圧値の入力日と、他の要素(SNR、相関、標準偏差、特徴量、皮膚温)とを総合して算出してもよい。
【0065】
また、ステップ214において差Δを用いて血圧値を補正し、ステップ218において否定判断した場合、信頼度が低い原因は、血圧値の入力日が古いことになる。この場合、ステップ220において、
図13に示す画面を表示できる。この画面は、血圧値の入力日を示すとともに、血圧値の再入力を促している。
(2−2)血圧値入力処理
本実施形態の血圧計1は、基本的には前記第1の実施形態と同様に、血圧値入力処理を実行する。ただし、本実施形態では、前記ステップ109、114の前に、
図14に示す画面をディスプレイ11に表示する。この画面は、YESの操作ボタン37と、NOの操作ボタン39とを有する。
【0066】
ユーザは、操作ボタン37、39のいずれかを押圧できる。操作ボタン37が押圧された場合、その後、前記ステッププ214の処理を実行するときに、入力された血圧値を用いた血圧値の補正が上述した方法で実行される。一方、操作ボタン39が押圧された場合は、その後、前記ステッププ214の処理を実行するときに、(ステップ211、又は212で肯定判断され、ステップ222で肯定判断された場合でも、)血圧値の補正が実行されず、補正前の血圧値がそのまま用いられる。
【0067】
3.血圧計1が奏する効果
(3−1)本実施形態の血圧計1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏することができる。
(3−2)本実施形態の血圧計1は、入力された血圧値を用いて、血圧値を補正することができる。その結果、一層精度が高い血圧値を得ることが可能になる。
(3−3)本実施形態の血圧計1は、血圧値の入力日に基づき、補正後の血圧値の信頼度を判断することができる。そのため、ユーザは、補正後の血圧値の信頼度を容易に知ることができる。
<その他の実施形態>
(1)前記ステップ6、206において相関を算出するとき、脈波信号を微分処理して得られる信号(例えば、1階微分信号や2階微分信号等)の波形における相関を算出してもよい。
(2)前記第1、第2の実施形態において、SNRについての判断(前記ステップ4、204)、相関について判断(前記ステップ7、207)、標準偏差についての判断(前記ステップ10、210)、及び皮膚温についての判断(前記ステップ13、213)のうち、選択された1〜3の判断を行い、選択されなかった判断は省略してもよい。
(3)前記ステップ9、219において、標準偏差以外の、ばらつきを表すパラメータ(例えば、最大値と最小値との差等)を算出し、前記ステップ10、210ではそのパラメータについて判断してもよい。
(4)前記ステップ12、212では、不整脈以外の、心電の異常パターン(例えばQRS幅の異常やQT時間の異常等)の有無を判断してもよい。
(5)前記ステップ8、208で抽出する特徴量は、上述したもの以外であってもよく、例えば、脈波波形の最大値や最大値の時間、2階微分波形のピーク値(順にa−f値)、それらピーク値の比(f/a等)、脈波伝播速度(PTT)、心拍周期(RR)等を用いることができる。
(6)前記第1、第2の実施形態において、血圧計1は、血圧値の入力手段として、直接入力による手段と、無線通信による手段とのうちの一方のみを有していてもよい。
(7)前記第1、第2の実施形態の構成の全部又は一部を適宜選択し、組み合わせてもよい。