特許第6032167号(P6032167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032167
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】物体検知装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20161114BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20161114BHJP
   G01S 13/93 20060101ALI20161114BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B60R19/48 B
   G01S7/03 240
   G01S13/93 220
   B60R21/00 624B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-197670(P2013-197670)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-63196(P2015-63196A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔次
(72)【発明者】
【氏名】立畑 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 実
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287950(JP,A)
【文献】 特開2007−030535(JP,A)
【文献】 特開2007−085751(JP,A)
【文献】 特開2013−127367(JP,A)
【文献】 特開2002−264743(JP,A)
【文献】 特開2006−103533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/48
B60R 21/00
G01S 7/03
G01S 13/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル開口部の後方に配置され且つ車両進行方向前方の物体を検知する物体検知装置の取付構造において、
車体前後方向に延びる左右1対の前後方向フレームの上端部を連結する車幅方向に延びる第1車幅方向部材と、
前記左右1対の前後方向フレームの下端部を連結する車幅方向に延びる第2車幅方向部材と、
前記物体検知装置を装着するための取付ブラケットとを備え、
前記取付ブラケットの左右方向の両端部は、前記第1,第2車幅方向部材のうち一方の車幅方向部材に支持され且つ取付ブラケットの上下方向の一端部は、他方の車幅方向部材に支持されたことを特徴とする物体検知装置の取付構造。
【請求項2】
前記取付ブラケットの左右両端部が前記第2車幅方向部材に支持され且つ取付ブラケットの上端部が前記第1車幅方向部材に支持されたことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置の取付構造。
【請求項3】
前記左右1対の前後方向フレームは、左右1対のフロントフレームの下方に設けられ且つ前端部に衝撃吸収用のエクステンション部材が夫々装着された左右1対のサブフレームであり、
前記第1,第2車幅方向部材が前記左右1対のサブフレームの前端部に架着されたことを特徴とする請求項2に記載の物体検知装置の取付構造。
【請求項4】
前記左右1対のフロントフレームの前端部に夫々設けられた衝撃吸収用の左右1対のクラッシュカンに架着されたバンパレインフォースメントを有し、
前記物体検知装置は、その前端部が前記バンパレインフォースメントの前端部よりも車体後方に位置するように配設されたことを特徴とする請求項3に記載の物体検知装置の取付構造。
【請求項5】
前記第2車幅方向部材の左側部分と右側部分とは車幅方向外側程車体後方へ移行することを特徴とする請求項3又は4に記載の物体検知装置の取付構造。
【請求項6】
前記取付ブラケットが、前記物体検知装置を支持する取付板部と、前記第1車幅方向部材から前方に張り出した上側取付脚部と、前記第2車幅方向部材から前方に張り出した左右1対の取付脚部とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の物体検知装置の取付構造。
【請求項7】
前記取付ブラケットが前記第2車幅方向部材の前側位置に配設され、
前記物体検知装置のハーネスが物体検知装置の側方位置から前記第1車幅方向部材に移行すると共に前記第1車幅方向部材に沿って配索されたことを特徴とする請求項5に記載の物体検知装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置の取付構造に関し、特に物体検知装置の取付ブラケットを左右1対の前後方向フレームを連結する第1車幅方向部材と第2車幅方向部材とに支持させた物体検知装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダユニットの1つであるミリ波レーダは、
(1)ミリ波帯域(30〜300GHz)の電波を用いて100m程度の検知領域の状況を探知できる
(2)雨、雪、霧等であっても使用可能であり、天候に左右されない
(3)光に比べて、物体の色や形状の影響が少ない
(4)超音波に比べて、大気状態の影響を受けない
(5)小型化及びコストダウンを図れる
等のメリットを有しているため、車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置、例えば先行車両との距離を検知して、その先行車両との車間距離を一定に保った状態で走行するオートクルーズや、先行車両を含む車両前方の障害物を検知して、乗員に警告したり或いはシートベルトを巻き取るアクティブセーフテシステム等に採用されている。
【0003】
一方で、この種のミリ波レーダは、
(1)障害物を検知する検知軸の向きが検知領域の方向に位置設定されていなければ、十分な性能を発揮できない
(2)検知部前方の遮蔽物によって照射領域が影響を受ける
(3)検知部近傍の金属部材によって検知精度が影響を受ける
等のデメリットを有しているため、車体前端のフロントバンパに設けられたグリル開口部の後方に所定の支持剛性を備えた取付ブラケットを介して装着されている。尚、電波透過性のある金属(例えばインジウム)を蒸着することで遮蔽物の影響は低減することができるものの、電波透過性金属は高価な金属であるため、生産コストの面から、通常、ミリ波レーダの配置設計で対応する傾向にある。
【0004】
特許文献1の物体検知装置の取付構造は、バルクヘッドのアッパフレーム(アッパシュラウドともいう)とロアフレーム(ロアシュラウドともいう)との間で且つ車幅方向中央寄り位置に上下方向に延びる1対のパイプブラケットと、グリル開口部の後方に配置されたミリ波レーダ装置を支持すると共に1対のパイプブラケットに固定されたベースプレートと、1対のパイプブラケットの中段部を連結するクロスブラケットとを備え、車両衝突時、後退するフロントバンパの移動方向をミリ波レーダ装置の下方に誘導するガイド部材をクロスブラケットに設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−85751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の物体検知装置の取付構造は、物体検知装置の支持剛性を確保しつつ、車両衝突時、後退するフロントバンパをガイド部材によってミリ波レーダ装置から離隔する方向へ案内するため、フロントバンパとミリ波レーダ装置との干渉を防止することができる。
しかし、特許文献1の1対のパイプブラケットは、バルクヘッドのアッパフレームとロアフレームとに亙って架設されると共に上下4ヶ所で車体側に固定されているため、ブラケットの構造が大型化する。ブラケットが大型化した場合、重量や生産コストが増加することに加え、グリル開口部のうち遮蔽される領域が増加し、エンジンルーム内に導入される走行風量が減少し、ラジエータ等の冷却性能が低下する虞がある。
【0007】
ミリ波レーダ装置を支持するベースプレートが1対のパイプブラケットの中段部に固定されるため、各フレームに対する固定部とベースプレートとが離隔し、パイプブラケットが長尺化する。それ故、衝突荷重によってアッパフレーム又はロアフレームに微小な歪が発生した場合であっても、ベースプレートにパイプブラケットの各固定部に発生した歪の影響が増幅して伝達され、ミリ波レーダ装置の検知軸に位置ずれが発生し、誤検出を招く虞もある。
【0008】
本発明の目的は、物体検知装置の取付ブラケットを小型化しつつ、物体検知装置の検知軸の位置ずれを防止可能な物体検知装置の取付構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の物体検知装置の取付構造は、グリル開口部の後方に配置され且つ車両進行方向前方の物体を検知する物体検知装置の取付構造において、車体前後方向に延びる左右1対の前後方向フレームの上端部を連結する車幅方向に延びる第1車幅方向部材と、前記左右1対の前後方向フレームの下端部を連結する車幅方向に延びる第2車幅方向部材と、前記物体検知装置を装着するための取付ブラケットとを備え、前記取付ブラケットの左右方向の両端部は、前記第1,第2車幅方向部材のうち一方の車幅方向部材に支持され且つ取付ブラケットの上下方向の一端部は、他方の車幅方向部材に支持されたことを特徴としている。
【0010】
この請求項1の物体検知装置の取付構造では、前後方向フレームの上端部と下端部とを第1,第2車幅方向部材によって格子状に連結したため、前後方向フレームの車幅方向剛性を増加することができ、前突時、前後方向フレームに入力した前突荷重を効率よく分散伝達することができる。また、前後方向フレームの上端部と下端部とを連結する第1,第2車幅方向部材によって取付ブラケットを支持したため、取付ブラケットの上下長を短縮化することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記取付ブラケットの左右両端部が前記第2車幅方向部材に支持され且つ取付ブラケットの上端部が前記第1車幅方向部材に支持されたことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記左右1対の前後方向フレームは、左右1対のフロントフレームの下方に設けられ且つ前端部に衝撃吸収用のエクステンション部材が夫々装着された左右1対のサブフレームであり、前記第1,第2車幅方向部材が前記左右1対のサブフレームの前端部に架着されたことを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記左右1対のフロントフレームの前端部に夫々設けられた衝撃吸収用の左右1対のクラッシュカンに架着されたバンパレインフォースメントを有し、前記物体検知装置は、その前端部が前記バンパレインフォースメントの前端部よりも車体後方に位置するように配設されたことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明において、前記第2車幅方向部材の左側部分と右側部分とは車幅方向外側程車体後方へ移行することを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記取付ブラケットが、前記物体検知装置を支持する取付板部と、前記第1車幅方向部材から前方に張り出した上側取付脚部と、前記第2車幅方向部材から前方に張り出した左右1対の取付脚部とを備えたことを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項5の発明において、前記取付ブラケットが前記第2車幅方向部材の前側位置に配設され、前記物体検知装置のハーネスが物体検知装置の側方位置から前記第1車幅方向部材に移行すると共に前記第1車幅方向部材に沿って配索されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、取付ブラケットの上下長を短縮化できるため、物体検知装置の取付ブラケットの構造を小型化することができる。
取付ブラケットの左右方向の両端部を第1,第2車幅方向部材のうち一方の車幅方向部材に支持し且つ取付ブラケットの上下方向の一端部を他方の車幅方向部材に支持したため、物体検知装置の検知軸回りの回動と上下振動とを同時に抑制することができ、前後方向フレームの車幅方向剛性を増加することによって前後方向フレームに入力した前突荷重を効率よく分散伝達できるため、車体側フレームの変形に伴う物体検知装置の検知軸の位置ずれを防止することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、取付ブラケットの重量が掛かる下側部分を左右方向の両端部の2ヶ所で支持するため、能率良く3点支持することができ、一層小型化の推進を図ることができる。
請求項3の発明によれば、前突時、衝突エネルギをエクステンション部材の座屈変形で吸収でき、車体側フレームの変形に伴う物体検知装置の検知軸の位置ずれを防止することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、物体検知装置の検知精度を維持しつつ、前突時、衝突エネルギをクラッシュカンの座屈変形で吸収でき、車体側フレームの変形に伴う物体検知装置の検知軸の位置ずれを防止することができる。
請求項5の発明によれば、オフセット衝突時、物体検知装置の検知軸の位置ずれを生じることなくエクステンション部材によって衝突エネルギを吸収することができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、第2車幅方向部材の前方突出量を抑えることにより前後方向フレームの車幅方向剛性を増加しつつ、物体検知装置の照射領域と検知精度とを確保することができる。
請求項7の発明によれば、前突時、第2車幅方向部材よりも車体後方の第1車幅方向部材を利用してハーネスの損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係るミリ波レーダの取付構造を含む車両の前部車体構造の縦断面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図2の正面図である。
図4】ミリ波レーダの取付構造の斜視図である。
図5図4の要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。尚、本実施例では、車両の前後方向を前後方向とし、車両の左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について図1図5に基づいて説明する。
図1図2に示すように、本実施例では、物体検知装置として、車両Vの進行方向前方の物体までの距離を測定する距離測定機能と車両Vの進行方向前方の物体に対する相対速度を測定する速度測定機能とを有するミリ波レーダ1を備えた車両Vの物体検知装置の取付構造を例として説明する。
【0021】
まず、ミリ波レーダ1の取付構造が適用される車両Vの前部車体構造について説明する。
この車両Vの前部車体構造は、車体前後方向に延びる左右1対のフロントフレーム2と、これら左右1対のフロントフレーム2の前端部に夫々設けられた衝撃吸収用の左右1対のクラッシュカン3と、左右1対のフロントフレーム2の下方に配設された左右1対のサブフレーム4と、これら左右1対のサブフレーム4の前端部に夫々設けられた衝撃吸収用の左右1対のエクステンション部材5と、左右1対のクラッシュカン3の前端部に架設されたバンパレインフォースメント(以下バンパレインという)6と、このバンパレイン6の前側部分を覆うフロントバンパ7と、脚払い部材8等を備えている。尚、車両Vの前部車体構造は、左右対称構造であるため、以下、左側の構造について主に説明する。
【0022】
フロントフレーム2は、閉断面状に構成され、前方から前突荷重が作用したとき、座屈変形と屈曲変形とを組み合わせた複合モード制御によって衝突エネルギを吸収可能に構成されている。クラッシュカン3は、閉断面状に構成され、前方から前突荷重が作用したとき、座屈変形によって衝突エネルギを吸収可能に構成されている。
左右1対のフロントフレーム2と左右1対のクラッシュカン3との接合部分には、車幅方向に延びる略方形枠状のラジエータシュラウド(図示略)が設けられ、車両Vの走行風によって熱交換を行うラジエータ及びオイルクーラを支持している(何れも図示略)。
バンパレイン6は、アルミの押出成形で形成され、その内部には中空の空洞部が複数設けられ、前突時、座屈変形により衝突エネルギを吸収可能に構成されている。
【0023】
サブフレーム4は、サスペンション部材(図示略)を支持可能に構成され、その前端が側面視にてフロントフレーム2の前端よりも前方に配置されている。
図1図3に示すように、サブフレーム4の前端部分には、正面視にて略矩形状の連結部材10を間に介してエクステンション部材5が接合されている。
連結部材10は、後方へ屈曲された上壁部10aがフロントフレーム2の前端部にブラケット13を介して締結されている。左右1対の連結部材10の上壁部10aの車幅方向内側部分は、第1車幅方向メンバ11によって連結され、左右1対の連結部材10の下部の車幅方向内側部分は、第2車幅方向メンバ12によって連結されている。
【0024】
第1車幅方向メンバ11は、断面L字状に形成され、車幅方向に略直線状に延びるように構成されている。ここで、第1車幅方向メンバ11と左右1対の連結部材10の上半部が、左右1対のサブフレーム4の上端部を連結する第1車幅方向部材に相当している。
第2車幅方向メンバ12は、断面L字状に形成され、車幅方向外側ほど後方へ移行する左側部分12a及び右側部分12aと、左右方向の両側部分12aの車幅方向内側端部を略直線状に連結する中央部分12bとから形成されている。ここで、第2車幅方向メンバ12と左右1対の連結部材10の下半部が、左右1対のサブフレーム4の下端部を連結する第2車幅方向部材に相当している。これにより、前後方向に延びる左右1対のフロントフレーム2と左右1対のサブフレーム4との間を左右1対の連結部材10を介して連結し、左右1対のサブフレーム4の前端部分に車幅方向に延びる第1車幅方向メンバ11と第2車幅方向メンバ12によって格子構造を形成したため、各部位に作用した前突荷重を他の部位に能率的に伝達分散することができる。
【0025】
図1図3に示すように、左右1対のエクステンション部材5は、閉断面状に構成され、その前端が側面視にてバンパレイン6の前端よりも若干後側位置に配置されている。このエクステンション部材5は、前方から前突荷重が作用したとき、座屈変形によって衝突エネルギを吸収可能に構成されている。
第2車幅方向メンバ12の下方には、車幅方向に延びる脚払い部材8が配設されている。合成樹脂製の脚払い部材8は、左端部と右端部とが左右1対の支持ブラケット9を介して左右1対の連結部材10の前部に固着されている。
【0026】
フロントバンパ7は、合成樹脂成形品として構成され、バンパレイン6、左右1対のエクステンション部材5及び脚払い部材8等の前方に配設されている。
フロントバンパ7には、左右方向に亙って車幅方向に長いグリル開口部7aが形成されている。グリル開口部7aは、車幅方向中央部分がバンパレイン6の上方位置からエクステンション部材5(サブフレーム4)の下方位置に亙る上下方向幅を有し、その内周縁部には、略格子状に形成されたグリル部材(図示略)が装着されている。
【0027】
次に、ミリ波レーダ1の取付構造について説明する。
ミリ波レーダ1は、略直方体状に形成された車載用レーダユニットであって、その前側表面が合成樹脂製のカバー部材1aによって一様に覆われている。このミリ波レーダ1は、60GHz帯の周波数帯域の電波を照射し、受信した障害物からの反射波の伝搬時間等に基づき障害物の相対速度や離隔距離を検知可能に構成されている。ミリ波レーダ1の具体構造については、周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0028】
図1図3に示すように、ミリ波レーダ1は、平面視にて、ミリ波レーダ1の検知軸Gが車幅中央部を通る前後軸上に位置し、側面視にて、グリル開口部7aの後方においてバンパレイン6の下方位置で且つその前端部がバンパレイン6の前端部よりも車体後方位置になるように配設されている。ミリ波レーダ1の前端部は、検出精度上、側面視にてバンパレイン6の前端部よりも僅かに後方位置に設定することが好ましい。
【0029】
図1図5に示すように、ミリ波レーダ1は、金属製取付ブラケット20を介して第1,第2車幅方向メンバ11,12に支持されている。
取付ブラケット20は、ミリ波レーダ1を支持するための略矩形状の取付板部21と、取付板部21の上端から後方へ張り出した上側取付脚部22と、取付板部21の左端及び右端から夫々張り出した左右1対の取付脚部23が一体的にプレス成形されている。
取付板部21は、複数のボルト穴(図示略)が設けられ、ミリ波レーダ1を前面に配置した状態で背面から複数のボルト31により締結固定している。
【0030】
図5に示すように、左側取付脚部23は、断面略L字状に形成され、後側先端部分にボルト穴23aが設けられている。右側取付脚部23は左側取付脚部23と左右対称に構成されている。左右1対の取付脚部23を中央部分12bの中央部に設けられた1対のボルト穴12cにボルト33を介して締結したとき、正面視にてミリ波レーダ1の検知軸Gが中央部分12bに重なり合うように配置され、ミリ波レーダ1の検知軸G回りの回動が規制されている。
【0031】
上側取付脚部22は、断面略L字状に形成され、後側先端部分にボルト穴22aが設けられている。上側取付脚部22の前後方向長は、取付脚部23の前後方向長よりも長く形成されている。上側取付脚部22を第1車幅方向メンバ11の中央に設けられたボルト穴11aにボルト32を介して締結したとき、ミリ波レーダ1の上下振動が規制されている。
第1車幅方向メンバ11から前方へ張り出した上側取付脚部22と、第2車幅方向メンバ12から前方へ張り出した左右1対の取付脚部23を備えているため、第2車幅方向メンバ12の前後方向移行量を増加することなく、ミリ波レーダ1をグリル開口部7aの近傍位置に配設することができる。
【0032】
図2図3に示すように、ミリ波レーダ1は、車体内部に配設されたコントロールユニット(図示略)にハーネス15を介して電気的に接続されている。
ハーネス15は、ミリ波レーダ1の左端部分に形成されたコネクタ部1bにその先端部が接続され、左側部分12aの上端部に装着されたクリップ34に途中部が保持されている。クリップ34に保持されたハーネス24は、上方へ立上るように屈曲され、第1車幅方向メンバ11に沿って左方へ配索されている。その後、ハーネス24は、連結部材10の車幅方向内側上部においてクリップ35に保持され、ここから車体後方へ案内される。
【0033】
次に、実施例1に係る物体検知装置の取付構造の作用・効果について説明する。
この物体検知装置の取付構造によれば、取付ブラケット20の上下長を短縮化できるため、ミリ波レーダ1の取付ブラケット20の構造を小型化することができる。
取付ブラケット20の左右1対の取付脚部23を第2車幅方向メンバ12に支持し且つ取付ブラケット20の上側取付脚部22を第1車幅方向メンバ11に支持したため、ミリ波レーダ1の検知軸G回りの回動と上下振動とを同時に抑制することができ、サブフレーム4の車幅方向剛性を増加することによってサブフレーム4に入力した前突荷重を効率よく分散伝達できるため、車体側フレームの変形に伴うミリ波レーダ1のの検知軸Gの位置ずれを防止することができる。
【0034】
取付ブラケット20の左右1対の取付脚部23が第2車幅方向メンバ12に支持され且つ取付ブラケット20の上側取付脚部22が第1車幅方向メンバ11に支持されたため、取付ブラケットの重量が掛かる下側部分を左側取付脚部23と右側取付脚部23との2ヶ所で支持でき、能率良く3点支持することができ、一層小型化の推進を図ることができる。
左右1対の前後方向フレームは、左右1対のフロントフレーム2の下方に設けられ且つ前端部に衝撃吸収用のエクステンション部材5が夫々装着された左右1対のサブフレーム4であり、第1,第2車幅方向メンバ11,12が左右1対のサブフレーム4の前端部に架着されたため、前突時、衝突エネルギをエクステンション部材5の座屈変形で吸収でき、車体側フレームの変形に伴うミリ波レーダ1の検知軸Gの位置ずれを防止することができる。
【0035】
左右1対のフロントフレーム2の前端部に夫々設けられた衝撃吸収用の左右1対のクラッシュカン3に架着されたバンパレイン6を有し、ミリ波レーダ1は、その前端部がバンパレイン6の前端部よりも車体後方に位置するように配設されたため、ミリ波レーダ1の検知精度を維持しつつ、前突時、衝突エネルギをクラッシュカン3の座屈変形で吸収でき、車体側フレームの変形に伴うミリ波レーダ1の検知軸Gの位置ずれを防止することができる。
第2車幅方向メンバ12の左側部分12aと右側部分12bとは車幅方向外側程車体後方へ移行するため、オフセット衝突時、ミリ波レーダ1の検知軸Gの位置ずれを生じることなくエクステンション部材5によって衝突エネルギを吸収することができる。
【0036】
取付ブラケット20が、ミリ波レーダ1を支持する取付板部21と、第1車幅方向メンバ11から前方に張り出した上側取付脚部22と、第2車幅方向メンバ12から前方に張り出した左右1対の取付脚部2とを備えたため、第2車幅方向メンバ12の前方突出量を抑えることによりサブフレーム4の車幅方向剛性を増加しつつ、ミリ波レーダ1の照射領域と検知精度とを確保することができる。
取付ブラケット20が第2車幅方向メンバ12の前側位置に配設され、ミリ波レーダ1のハーネス15がミリ波レーダ1の側方位置から第1車幅方向メンバ11に移行すると共に第1車幅方向メンバ11に沿って配索されているため、前突時、第2車幅方向メンバ12よりも後方の第1車幅方向メンバ11を利用してハーネス15の損傷を回避することができる
【0037】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、物体検知装置としてミリ波レーダの例を説明したが、超音波レーダ等他のレーダユニットに適用しても良い。また、CCDカメラや赤外線カメラ等レーダ以外の各種物体検知装置に適用することも可能である。
【0038】
2〕前記実施例においては、取付ブラケットの上部を第1車幅方向メンバに1点支持し且つ取付ブラケットの左右方向の両端部を第2車幅方向メンバに2点支持した例を説明したが、取付ブラケットの左右方向の両端部を第1車幅方向メンバに2点支持し且つ取付ブラケットの下部を第2車幅方向メンバに1点支持しても良い。この際、第1車幅方向メンバの中央部分を第2車幅方向メンバよりも前方に突出させ、ミリ波レーダの検知軸を第1車幅方向メンバに重なり合うように配置することが好ましい。
【0039】
3〕前記実施例においては、前後方向に延びる左右1対のサブフレームの上端部と下端部とを夫々連結する第1,第2車幅方向メンバに取付ブラケットを支持させた例を説明したが、車体側に支持されたフレームであれば良く、他の車体フレームであっても同様の効果を奏することができる。また、第1,第2車幅方向メンバが直接的に左右1対のサブフレームの上端部と下端部とを夫々連結するものであっても良い。
【0040】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、物体検知装置の取付ブラケットを左右1対の前後方向フレームを連結する第1車幅方向部材と第2車幅方向部材とに支持させた物体検知装置の取付構造において、物体検知装置の取付ブラケットを小型化しつつ、物体検知装置の検知軸の位置ずれを防止する。
【符号の説明】
【0042】
1 ミリ波レーダ
2 フロントフレーム
3 クラッシュカン
4 サブフレーム
5 エクステンション部材
6 バンパレイン
10 連結部材
11 第1車幅方向メンバ
12 第2車幅方向メンバ
12a 左側(右側)部分
15 ハーネス
20 取付ブラケット
21 取付板部
22 上側脚部
23 取付脚部
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5