特許第6032172号(P6032172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032172
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】台車のキャスタ位置決め機構
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20161114BHJP
   A61G 3/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B60P3/00 N
   A61G3/00 702
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-210900(P2013-210900)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-74305(P2015-74305A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年1月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [販売] トヨタ車体株式会社が、ネッツトヨタ秋田株式会社に、台車のキャスタ位置決め機構を使用した自動車を販売 [販売日] 平成25年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英明
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−098775(JP,A)
【文献】 実開平03−118941(JP,U)
【文献】 特開2001−129023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
A61G 3/00
B60B 33/00
A61G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の台車の格納位置に設けられており、前記台車のキャスタを前記格納位置で位置決めする台車のキャスタ位置決め機構であって、
前記台車が前記格納位置まで移動するときに、前記台車の移動方向を向いているキャスタの向きを、前記台車の移動方向に対して交差する所定方向に向けられるように構成されており、
前記キャスタが前記所定方向を向くことで、前記台車が前記格納位置から離れる方向に移動する際に、前記キャスタが予め決められた方向にのみ水平回転するように構成されていることを特徴とする台車のキャスタ位置決め機構。
【請求項2】
請求項1に記載された台車のキャスタ位置決め機構であって、
前記台車の移動方向に対して、平面視において交差するように配置されたガイド部を備えており、
前記ガイド部は、前記台車が前記格納位置まで移動する際に、前記キャスタの水平回転軸心よりも前記台車の移動方向において後方の位置で前記キャスタと当接して、前記キャスタの向きを前記ガイド部と向き合うようにガイドすることで、前記キャスタの向きを前記所定方向に向けるように構成されていることを特徴とする台車のキャスタ位置決め機構。
【請求項3】
請求項2に記載された台車のキャスタ位置決め機構であって、
前記ガイド部は、車室内の床面に対してなだらかに隆起するように構成されていることを特徴とする台車のキャスタ位置決め機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された台車のキャスタ位置決め機構と、
前記台車の移動方向に沿って延びるように配置され、前記台車が前記格納位置まで移動する際に、前記台車の移動方向を直線状にガイドする台車ホルダとを備えていることを特徴とする車両における台車位置決め機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内に載せられるストレッチャー等の台車に設けられたキャスタの位置決め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のキャスタ位置決め機構に関する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1のキャスタ位置決め機構500は、図11に示すように、一対の車輪止め腕部501,501を備えている。台車20(図2参照)を任意の停止位置まで移動させた後に、キャスタ位置決め機構500を台車20のキャスタ24の側面方向から装着することで、前記車輪止め腕部501,501がキャスタ24の車輪25と床面との間に差し込まれて、車輪25の転動を禁止する。これにより、キャスタ24を台車20の移動方向を向いた状態で固定できる。
キャスタ位置決め機構500を外して、台車20をキャスタ24の向きの反対方向(直線Rt上を図示右方向)に移動させると、台車20のキャスタ24は、例えば、図11の一点鎖線で示すように、水平回転軸心Rを中心に時計回り方向、あるいは図示省略した反時計回りに水平回転していき、最終的には、二点鎖線で示すように反対方向を向いた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−182176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記台車20をキャスタ24の反対方向に移動させる場合、キャスタ24が、時計回り方向と反時計回り方向のいずれの方向に水平回転することになるかは、台車20を移動させる際の微妙な力加減や、床面の状態等の種々の要因が関わるため、通常使用する状態では予測することはできない。
このため、前記台車20を、スペースが限られている車室内で使用する場合、キャスタ24が水平回転する方向によっては、その水平回転動作の途中で周辺の部材と干渉してしまうことがある。例えば、台車20が車室内の格納位置から車両後方向に移動する際に、台車20のキャスタ24が、仮に、反時計回り方向に水平回転してしまった場合には、図12に示すように、支柱13(車室積載物の一部)と干渉してしまうことがある。このような場合には、キャスタ24がそれ以上水平回転できなくなるため、台車20を格納位置から引き出し難くなることがあった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的な課題は、車室内の格納位置から台車を引き出す際に、台車のキャスタが周辺の部材と干渉しないようにして、台車を容易に引き出せるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、次の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車室内の台車の格納位置に設けられており、前記台車のキャスタを前記格納位置で位置決めする台車のキャスタ位置決め機構であって、前記台車が前記格納位置まで移動するときに、前記台車の移動方向を向いているキャスタの向きを、前記台車の移動方向に対して交差する所定方向に向けられるように構成されており、前記キャスタが前記所定方向を向くことで、前記台車が前記格納位置から離れる方向に移動する際に、前記キャスタが予め決められた方向にのみ水平回転するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、格納位置から台車が引き出される際に、キャスタが所定方向を向いた状態から予め決められた方向にのみ水平回転するようになる。即ち、キャスタの回転方向を格納位置の周辺の部材(障害物)と干渉しないように設定することで、台車を格納位置から周辺の部材(障害物)と干渉しないように引き出せるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、台車の移動方向に対して、平面視において交差するように配置されたガイド部を備えており、前記ガイド部は、前記台車が格納位置まで移動する際に、キャスタの水平回転軸心よりも前記台車の移動方向において後方の位置で前記キャスタと当接して、前記キャスタの向きを前記ガイド部と向き合うようにガイドすることで、前記キャスタの向きを所定方向に向けるように構成されていることを特徴とする。
ここで、台車のキャスタは、台車の移動方向に対して、平面視において交差するように配置されたガイド部と向き合うようにガイドされる。このため、ガイド部と向き合う方向を前記所定方向と一致させることで、台車が格納位置まで移動する際に、自動的に、キャスタを所定方向に向けた状態にすることができるようになる。即ち、キャスタを所定方向に向けるための専用の操作が不要となり、使い勝手が良くなる。
【0009】
請求項3の発明によると、ガイド部は、車室内の床面に対してなだらかに隆起するように構成されていることを特徴とする。
即ち、ガイド部は、急な段差の無い構造となっている。このため、例えば、車室内の乗員が移動する際に、ガイド部につまずくことがなくなる。
【0010】
請求項4の発明は、車両における台車位置決め機構であって、請求項1から請求項3のいずれかに記載された台車のキャスタ位置決め機構と、前記台車の移動方向に沿って延びるように配置され、前記台車が格納位置まで移動する際に、前記台車の移動方向を直線状にガイドする台車ホルダとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、車室内の格納位置から台車を引き出す際に、台車のキャスタが周辺の部材と干渉しないようにして、台車を容易に引き出せるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る台車のキャスタ位置決め機構を備える車両の模式平面図である。
図2】台車の側面図である。
図3】上記実施形態に係る台車のキャスタ位置決め機構を表す側面斜視図である。
図4】上記実施形態に係る台車のキャスタ位置決め機構と台車のキャスタとが当接した状態を表す側面模式図である。
図5】上記実施形態に係る台車のキャスタ位置決め機構によって、台車のキャスタが、台車の移動方向に対して所定角度斜めの方向を向いた状態となる様子を表す模式平面図である。
図6】上記実施形態に係る台車のキャスタ位置決め機構によって、台車のキャスタが、台車の移動方向に対して所定角度斜めの方向を向いた状態となる様子を表す斜視図である。
図7】上記実施形態において、台車の移動方向に対して所定角度斜めの方向を向いた状態となったキャスタが、台車の後方向移動に伴って後方向を向いた状態となる様子を表す模式平面図である。
図8】本発明の変形例に係る台車のキャスタ位置決め機構を表す側面斜視図である。
図9】本発明の実施形態2に係る台車のキャスタ位置決め機構によって、台車のキャスタが、台車の移動方向に対して所定角度斜めの方向を向いた状態となる様子を表す模式平面図である。
図10】上記実施形態において、台車の移動方向に対して所定角度斜めの方向を向いた状態となったキャスタが、台車の後方向移動に伴って後方向を向いた状態となる様子を表す模式平面図である。
図11】従来のキャスタ位置決め機構を使用した台車のキャスタが、前方向を向いた状態から時計回り方向に水平回転する様子を表す模式上面図である。
図12】従来のキャスタ位置決め機構を車室内で使用した場合に、台車のキャスタが反時計回り方向に水平回転した様子を表す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1図7に基づいて、本発明の実施形態1に係る台車のキャスタ位置決め機構の説明を行う。
なお、図中の前後左右、及び上下は、車両の前後左右、及び上下に対応している。
また、図5図7では、後記するキャスタ24の車輪25の動作をわかりやすくするため、キャスタ24を図4に示すZ線断面の模式図で表し、さらに、通常視認できない車輪25の車輪接地面S(車輪25の下端部分)を図示している。また、図5図7では、台車20の移動方向を示すために、水平回転軸心Rの移動方向を直線Rtで表現している。
また、図5図7では、図を見やすくするため、便宜上、ストレッチャーホルダ14の構成(第1フック141,ホルダ本体145)を省略して図示している。
【0014】
<車両10の概要について>
本実施形態について説明する前に、先ず、車両10の概要、及び、台車20について説明する。
この車両10は、図1に示すように、バックドア11を備えており、このバックドア11によって開閉される開口部を通って、ストレッチャー20(以下、台車20という)が車室内の格納位置まで移動できるようになっている。また、格納位置から車両後方向(格納位置から離れる方向)へと移動することで、前記開口部から台車20を降ろすことができる。
車両10の車室内には、台車20を車室内に位置決めするための台車位置決め機構15が設けられている。台車位置決め機構15は、台車20を車室内に固定するストレッチャーホルダ14と、後記するキャスタ位置決め機構30とを備えている。ストレッチャーホルダ14は、図1に示すように、車両前後方向に延びるホルダ本体部145と、台車20の支柱23(231,232)に前方向から引っ掛かる第1及び第2フック141,142と、台車20の支柱23(232)を後側から支持するストッパ部143と、前記ストッパ部143のロック状態とアンロック状態とを切替えるハンドル部144とを備えている。ストレッチャーホルダ14の第1フック141は、ホルダ本体部145に沿って伸縮可能であり、常時後方向に付勢されるように構成されている。車両10に載せられた台車20の支柱231,232(後記する)に対してストレッチャーホルダ14の第1及び第2フック141,142を引っ掛けることで、台車20の車幅方向の移動を規制して、台車20が、ストレッチャーホルダ14のホルダ本体部145に沿う方向(車両前後方向)にのみ直線状に移動するようにガイドする。ストレッチャーホルダ14は、台車20が格納位置にあるとき、第1及び第2フック141,142と、ストッパ部143とによって、台車20の支柱23を車両前後方向から挟持することで、台車20を車室内の格納位置に固定することができる。
即ち、ストレッチャーホルダ14が、本発明に係る台車ホルダに相当する。
【0015】
<台車20について>
台車20は、図2に示すように、傷病人を横臥させることがきる台車本体部21と、前記台車本体部21を支持する足回り部22とを備えている。台車20の足回り部22には、支柱23(右方向前側の支柱231,右方向後側の支柱232,左方向前側の支柱233,左方向後側の支柱234)が設けられており、支柱23の下端部には、それぞれキャスタ24(241,242,243,244)が取付けられている。
キャスタ24は、車輪25と、前記車輪25を転動可能に支持する車輪架台26とを備えている。キャスタ24は、いわゆる旋回キャスタであり、上記したように、水平回転軸心Rを中心に水平回転自在に構成されている。キャスタ24は、図2に示すように、キャスタ取付け部27によって、台車20の足回り部22の支柱23の下端部に、水平回転軸心Rと同軸で取付けられている。キャスタ24の車輪25の車輪接地面Sは、図2に示すように、水平回転軸心Rに対して偏心した状態となっている。このため、キャスタ24が台車20の移動方向に対して交差する方向を向いている状態で台車20が移動すると、キャスタ24は、台車20の移動方向を向くように水平回転することになる。
【0016】
<キャスタ位置決め機構30の構造について>
次に、キャスタ位置決め機構30について説明する。
キャスタ位置決め機構30は、図1に示すように、台車20の格納位置で、台車20の右方向前側のキャスタ241が位置することになる車室内の床面16に配置されている。キャスタ位置決め機構30は、台車20が格納位置まで移動するときに、車両前方向を向いた台車20のキャスタ241を、前記所定方向に向けるためのものである。キャスタ位置決め機構30は、図3に示すように、キャスタ位置決め機構30を車室内の床面16に対して固定するベース部31と、前記ベース部31から上方に張り出すガイド部33とを備えている。
キャスタ位置決め機構30のベース部31は、図3に示すように、略直角な頂点を有する略台形状の板構造に形成されている。ベース部31には、キャスタ位置決め機構30を車室内の床面16に対して固定するための図示しないネジが通される係合孔32が、車両前後方向に延びるように形成されている。
【0017】
キャスタ位置決め機構30のガイド部33は、上記したように、キャスタ位置決め機構30のベース部31から上方に張り出すように形成されている。ガイド部33は、台車20の重量及び傷病人の体重を受けても、その形状を維持できるように比較的高い剛性を備える素材で構成されている。ガイド部33は、ガイド部本体34と、前記ガイド部本体34の両端部分に位置するガイド部端部35とから構成されている。
【0018】
ガイド部33のガイド部本体34は、図3に示すように、その長手方向が、台車20の移動方向に対して、例えば、車両右後方向から左前方向へと、平面視において所定角度(例えば、45度)で交差するように配置されている。ガイド部本体34は、その断面が二等辺三角形状になるように形成されている。即ち、ガイド部本体34は、ガイド面341とガイド対面342とから構成されている。
ガイド面341は、図3に示すように、ガイド部本体34の車両後側の斜面部分に設けられている。このガイド面341は、車室内の床面16に対して、例えば、30度の角度で上下方向に傾斜するように構成されている。即ち、ガイド面341の傾斜の上下方向は、図3に示すように、前記ガイド部本体34の長手方向に対して直交する方向になっている。ガイド面341は、図4図5に示すように、台車20が格納位置まで移動する際に、前記格納位置の近傍において、キャスタ241の車輪25の外周面右側25Rと、キャスタ当接部341tの部分で当接するように配置されている。このとき、ガイド部341のキャスタ当接部341tは、図4図5に示すように、キャスタ241の水平回転軸心Rよりも台車20の移動方向において後方の位置で、キャスタ241の車輪25の外周面右側25Rと当接するように構成されている。
【0019】
ガイド部33のガイド部本体34のガイド対面342は、図3に示すように、ガイド部本体34のガイド面341の反対側、つまり、ガイド部本体34の前側の斜面部分に設けられている。このガイド対面342は、ガイド面341と同様に、車室内の床面16に対して、例えば、30度の角度で上下方向に傾斜するように構成されている。
また、ガイド部33のガイド部端部35は、上記したように、ガイド部本体34の長手方向両端部に設けられている。ガイド部端部35は、図3に示すように、ガイド部本体34と一体成形によって設けられており、車室内の床面16に対して、例えば、30度の角度で上下方向に傾斜するように構成されている。即ち、キャスタ位置決め機構30のガイド部33の壁面(ガイド面341,ガイド対面342,ガイド部端部35)は、全て、車室内の床面16に対してなだらかに隆起した構造となっている。このため、例えば、車室内の乗員が移動する際に、ガイド部33につまずくことがなくなる。
【0020】
<キャスタ位置決め機構30の働き>
次に、キャスタ位置決め機構30の働きを説明する。
先ず、車両10に載せられた台車20の支柱231,232に対してストレッチャーホルダ14の第1フック141,第2フック142を引っ掛ける。この状態で、台車20をストレッチャーホルダ14のホルダ本体145に沿って車両前方向へと移動させると、キャスタ241は、図5に示すように、台車20の移動方向(車両前方向)を向いた状態F1で、キャスタ位置決め機構30に接近する。台車20が格納位置の近傍まで移動すると、キャスタ241の車輪25の外周面右側25Rと、ガイド面341のキャスタ当接部341tとが、水平回転軸心Rよりも台車20の移動方向において後方の位置で当接した状態F2となる。この状態から、台車20が車両前方向へと移動すると、キャスタ241は、ガイド面341のキャスタ当接部341tと当接した状態のまま、水平回転軸心Rの位置で車両前方に引っ張られることになる。そうすると、キャスタ241は、車輪25の外周面右側25Rでガイド面341のキャスタ当接部341tと摺接しながら車両前方向に移動し、徐々に時計回り方向に水平回転していく状態F3となる。そして、台車20が格納位置まで到達すると、キャスタ241の車輪25の外周面前側25Fがガイド面341と当接し、キャスタ241がガイド面341と向き合う方向(所定方向)を向いた状態Kとなる。即ち、キャスタ241は、ガイド部33の働きによって、台車20の移動方向に対して交差する所定方向(例えば、台車20の移動方向に対して45度で交差する右斜め前の方向)に向けられたことになる。なお、この所定方向は、ガイド面341の配置角度、即ち、ガイド部本体34が台車20の移動方向に対して交差する際の角度によって設定される。キャスタ241がKの状態にあるとき、キャスタ241の車輪接地面Sは、図5の二点鎖線で示すように、直線Rtに対して、水平回転軸心Rを中心に時計回り方向にオフセットしている。ここで、ストレッチャーホルダ14のハンドル部144を操作すると、ストッパ部143が図1に示すようなロック状態となり、第1及び第2フック141,142と共に台車20の支柱23を挟持して台車20を車室内に固定する。
【0021】
次に、格納位置にある台車20を車室外に移動させるためには、先ず、ストレッチャーホルダ14のハンドル部144を操作してストッパ部143をアンロック状態にした後に、台車20を車両後方向(格納位置から離れる方向)に引き出す。すると、図7に示すように、キャスタ241の水平回転軸心Rが直線Rt上を車両後方向に移動するため、キャスタ241はガイド面341と向き合う方向(所定方向)を向いた状態Kから、水平回転軸心Rの位置で車両後方向に引っ張られることになる。この時、キャスタ241の車輪接地面Sは、上記したように、直線Rtに対してオフセットした位置で、床面16からの摩擦力を受けているため、キャスタ241は、図7のB1,B2で示すように、水平回転軸心Rを中心として確実に時計回り方向に水平回転して、台車20の格納位置から離れる移動方向(車両後方向)を向いた状態B3となる。
【0022】
<実施形態1の長所>
本発明によると、格納位置から車両後方向(格納位置から離れる方向)に台車20が引き出される際に、キャスタ241が、台車20の移動方向に対して交差する所定方向(例えば、台車20の移動方向に対して45度で交差する右斜め前の方向)を向いた状態から、時計回り方向にのみ水平回転するようになる。即ち、キャスタの回転方向を格納位置の周辺の部材(支柱13等)と干渉しないように設定することで、台車20を格納位置から周辺の部材と干渉しないように引き出せるようになる。
また、台車20のキャスタ241は、台車20の移動方向に対して、平面視において交差するように配置されたガイド部33と向き合うようにガイドされる。このため、ガイド部33と向き合う方向を前記所定方向(台車20の移動方向に対して45度で交差する右斜め前の方向)と一致させることで、台車20が格納位置まで移動する際に、自動的に、キャスタ241を所定方向に向けた状態にすることができるようになる。即ち、キャスタ241を所定方向に向けるための専用の操作が不要となり、使い勝手が良くなる。
また、ガイド部33は、急な段差の無い構造となっている。このため、例えば、車室内の乗員が移動する際に、ガイド部33につまずくことがなくなる。
【0023】
[変形例]
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、本実施形態では、ガイド部33が、傾斜面(ガイド面341,ガイド対面342)を有する形状に形成されている例を示したが、ガイド部33の形状はこの例に限定されない。例えば、ガイド部は、長手方向が台車20の移動方向に対して平面視において交差するような円柱形状のものであっても良いし、車室内の床面16から直立するような壁状のものであっても良い。
また、実施形態1では、予め決められた方向として、キャスタ241が時計回り方向にのみ水平回転する例を示した。しかし、例えば、格納位置の左側のスペースが狭い場合等では、キャスタ243を反時計回り方向にのみ水平回転させるような構造にしても構わない。この場合、ガイド部33のガイド部本体34は、実施形態1の例とは逆に、その長手方向が、台車20の移動方向に対して、車両左後方向から右前方向へと、平面視において所定角度で交差するように配置される。このとき、格納位置の近傍では、車輪25の外周面左側25Lが、ガイド面341のキャスタ当接部341tと当接した状態となり、格納位置では、キャスタ241が台車20の移動方向に対して左斜め前の方向を向いた状態となる。
また、実施形態1で例示した具体的な角度は、あくまで一例に過ぎないため、適宜設定されるもので良い。例えば、格納位置においてキャスタ241が向けられる所定方向は、台車20の移動方向に対して右斜めの方向であれば良く、台車20の移動方向に対して45度で交差していなくても良い。なお、キャスタ241が台車20の移動方向に対して交差する角度は、上記したように、ガイド部33を台車20の移動方向に対して平面視において交差するように配置するときの角度によって設定される。
【0024】
また、実施形態1では、キャスタ位置決め機構30のガイド部33がガイド部本体34とガイド部端部35とから構成されており、ガイド部本体34が平面状のガイド面341及びガイド対面342とから構成される例を示した。しかし、ガイド部33の構造は、例えば、図8に示すように、曲面形状のガイド対面442であっても良いし、ガイド部端部35が無いようなものであっても良い。
また、実施形態1では、格納位置にある台車20の右方向前側のキャスタ241の周辺のみに、1つだけキャスタ位置決め機構30を配置する構成を例示したが、キャスタ位置決め機構30を複数配置しても、何ら問題は無い。つまり、キャスタ位置決め機構30を、他のキャスタ242,243,244の周辺にも配置して、それぞれの向きを変更できるように構成しても良い。
【0025】
[実施形態2]
以下、図9,10に基づいて、本発明の実施形態2に係るキャスタ位置決め機構50の説明を行う。なお、図9図10では、キャスタ24の車輪25の動作をわかりやすくするために、便宜上、図5図7と同様に、いくつかの構造を省略等して図示している。
本実施形態に係るキャスタ位置決め機構50は、実施形態1に係るキャスタ位置決め機構30が車室内の床面16から上方に張り出す凸部として設けられているのに対して、車室内の床面16から下方に窪む凹部として設けられている。実施形態1に係るキャスタ位置決め機構30と同一部材については同一番号を付して説明を省略する。
【0026】
本実施形態に係るキャスタ位置決め機構50は、車室内の床面16よりも、一段階下方に窪んだ凹部16dとして形成されている。キャスタ位置決め機構50は、図9に示すように、周囲に凹部壁面58を有している。キャスタ位置決め機構50は、車両前後方向に延びるように形成されるレール部57と、台車20が格納位置にあるときにキャスタ241が位置する箇所に設けられ、レール部57の前端部と連続するように形成される回転スペース部56と、から構成されている。
レール部57は、図9に示すように、その側方が車両前後方向に延びるように形成されたレール部壁面58rによって規定されているため、台車20が格納位置まで移動する際に、そのキャスタ241を車両前後方向にガイドすることができる。回転スペース部56は、図9に示すように、回転スペース部壁面58hによって規定されている。この回転スペース部壁面58hのうち、車両前側の壁面に設定されているガイド面541は、台車20の移動方向に対して、例えば、車両右後方向から左前方向へと、平面視において所定角度(例えば、45度)で交差するように形成されている。このガイド面541は、実施形態1のガイド面341と同様の働きをする構造である。即ち、ガイド面541は、図9に示すように、台車20が格納位置まで移動する際に、前記格納位置の近傍で、キャスタ241の車輪25の車輪外周面右側25Rと、水平回転軸心Rよりも台車20の移動方向において後方の位置で、キャスタ当接部541tの部分で当接するように構成されている。これにより、キャスタ241がガイド面541と向き合う方向(所定方向)を向いた状態Kになるようにガイドすることができる。回転スペース部56は、図10に示すように、台車20が車両後方向(格納位置から離れる方向)に移動する際に、キャスタ241が時計回り方向に水平回転しても、キャスタ241の車輪25の外周面後側25Bと干渉しないような形状、及び、スペースを有して形成されている。
本実施形態に係るキャスタ位置決め機構50では、実施形態1に例示したような車室床面に対して張り出す凸構造のものではなく、車室床面に対して窪む凹構造の機構を用いて、格納位置における台車20のキャスタ241を所定方向に向けることができるようになる。
【0027】
[変形例]
もちろん、上記した実施形態2のキャスタ位置決め機構50の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更が加えられて構成されるものであってもよい。
例えば、実施形態2では、キャスタ位置決め機構50が、回転スペース部56とレール部57とによって構成されている例を示した。しかし、キャスタ位置決め機構50が、回転スペース部56のみで構成されている構造であっても良い。
【符号の説明】
【0028】
R 水平回転軸心
14 ストレッチャーホルダ(台車ホルダ)
15 台車位置決め機構
20 台車
24 キャスタ
30 キャスタ位置決め機構
33 ガイド部


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