(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の緊急車両通知装置1は、位置検出部10、車車間通信部20、表示部30、出力音生成部40、スピーカ50、表示終了キー55、制御部60を備えており、車両に搭載される。以下、緊急車両通知装置1が搭載された車両を自車両という。
【0016】
位置検出部10は、衛星からの電波に基づいて自装置の位置を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)で用いられるGNSS受信機を備えている。このGNSS受信機が受信した信号に基づいて、現在位置の座標を検出する。
【0017】
車車間通信部20は、他車両に搭載された車車間通信部20との間で無線通信を行う通信部である。本実施形態の車車間通信部20は、700MHz帯の周波数を用いており、また、通信距離は数百mであり、同報通信を行うものとする。ただし、それ以外の周波数帯、たとえば、5GHz帯、2.4GHz帯の周波数を用いてもよい。
【0018】
本実施形態では、図示しない緊急車両も車車間通信部20と位置検出部10を備えている。緊急車両は、位置検出部10が検出した現在位置を含む緊急車両情報を車車間通信部20から送信する。この緊急車両情報には、緊急車両の位置に加え、緊急車両の進行方位、緊急走行状態であるか否かを示す情報が含まれている。
【0019】
自車両の車車間通信部20は、緊急車両が送信する上記緊急車両情報を受信する。よって、自車両の車車間通信部20が請求項の無線受信部に相当する。
【0020】
表示部30は、車室内の運転者が視認可能な位置に設置される。表示部30は、
図6、7に例示している緊急車両通知画像70を表示する。
【0021】
出力音生成部40は、DA変換部やアンプを備えており、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、且つ、増幅してスピーカ50に出力する。スピーカ50は、車室内に音を出力するためのものであり、出力音生成部40が生成したアナログ信号が入力され、このアナログ信号を音に変換して車室内に出力する。
【0022】
表示終了キー55は、運転者に操作されるキーであり、この表示終了キー55が操作されると、制御部60は、後述する
図3、4に示す処理を強制終了して、表示部30に緊急車両通知画像70を表示することを終了する。
【0023】
制御部60は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに記憶されているプログラムを実行する。このプログラムを実行することで、制御部60は、相対関係決定部61、位置通知処理部62として機能する。
【0024】
相対関係決定部61は、位置検出部10が検出した現在位置と、車車間通信部20が受信した緊急車両情報に含まれている緊急車両の現在位置とから、自車両に対する緊急車両の相対位置を決定する。よって、この相対関係決定部61は請求項の相対位置決定部に相当する。また、相対関係決定部61は、それら2つの現在位置から、自車両から見た緊急車両の方位(以下、緊急車両の相対方位)、自車両から緊急車両までの距離、緊急車両の進行方位線も決定する。緊急車両の進行方位線は、緊急車両の位置を始点として、緊急車両の進行方向を示す線である。
【0025】
位置通知処理部62は、状態判定部621と支援処理部622を備える。状態判定部621は、車車間通信部20が、緊急走行状態である緊急車両の緊急車両情報を受信した場合、その緊急車両に対する判定状態を、接近判定中、エリア判定中、エリア進入中、それらのいずれでもない、の4つの判定状態のいずれかに判定する。
【0026】
これら4つの判定状態は、基本的には、緊急車両の相対位置が、周辺エリア内、近傍エリア内、直近エリア内、周辺エリア外である場合にそれぞれ対応する。
図5に示すように、直近エリアは、自車両の現在位置およびその直近に設定された半径R2の円形エリアである。近傍エリアは、直近エリアのすぐ外側に設定された円環エリアであり、外周円が半径R1、内周円が半径R2である。周辺エリアは、近傍エリアのすぐ外側に設定された円環エリアであり、外周円が半径R0、内周円が半径R1である。
【0027】
上記R0、R1、R2は予め設定されており、たとえば、R0は150m〜200mの範囲の長さに設定されている。半径R1はR0よりも短い長さであり、たとえば100m前後に設定されている。R2はR1よりも短い長さであり、たとえば50mに設定されている。
【0028】
支援処理部622は、運転者に対する支援処理として、状態判定部621が判定した判定状態により定まる緊急車両通知処理を実行する。相対関係決定部61、位置通知処理部62の詳細処理は、
図3、4に示すフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0029】
制御部60は、緊急車両が送信した、緊急走行状態であることを示す緊急車両情報を車車間通信部20が受信した場合、
図3に示す処理を開始する。車車間通信で送信する緊急車両情報には、緊急走行状態であるか否かを示すフラグが含まれており、このフラグがセットされている場合に、緊急走行状態であることを示す緊急車両情報を受信したと判断する。
【0030】
ステップS1では、緊急車両に対して、接近判定中という状態を決定済みか否かを判断する。接近判定中は、後述するステップS4で決定する。したがって、ステップS3がYesとなると接近判定中と決定することになる。接近判定中と決定していない場合には(S1:No)、ステップS2に進み、接近判定中と決定済みである場合には、ステップS6へ進む。このステップS1の処理は状態判定部621の処理である。
【0031】
ステップS2では、周辺存在判定処理を行うための演算をする。周辺存在判定処理は、緊急車両が自車両の周辺に存在するようになったかどうかを判定する処理であり、具体的には、ステップS3の処理である。ステップS3の処理のために、ステップS2では、緊急車両の位置、進行方位、自車両から緊急車両までの距離を決定する。このステップS2の処理は相対関係決定部61の処理である。
【0032】
次のステップS3、S4は、状態判定部621の処理である。ステップS3では、
図5に示す半径R0の円よりも内側に緊急車両が位置しているか否かを判断するために、自車両から緊急車両までの距離が閾値R0以下であるか否かを判断する。
【0033】
加えて、緊急車両の進行方位が自車両に近づく方位であるか否かも判断する。後者の判断は進行方位の判断である。進行方位の判断は、具体的には、緊急車両の進行方位線が、自車両の前後方向線および自車両を中心とする半径R1の円の少なくともいずれかと交差するか否かを判断する。この進行方位の判断は、緊急車両が自車両の周辺に存在していても、自車両にそれほど近づかずに自車両から遠ざかる場合を除外するための判断である。
【0034】
自車両から緊急車両までの距離が半径R0よりも長い、または、緊急車両の進行方位は自車両に近づく方位でないと判断した場合にはステップS3をNoとする。緊急車両の進行方位が自車両に近づく方位でないとは、緊急車両の進行方位線が、自車両の前後方向線および自車両を中心とする半径R1の円のいずれとも交差しないことを意味する。
【0035】
進行方位の判断により、たとえば、
図5に示すP1に位置していても、進行方位線L0となる場合には、ステップS3の判断結果はNoとなる。
【0036】
ステップS3の判断結果がNoである場合には、ステップS1へ戻る。なお、緊急走行状態であることを示す緊急車両情報が受信できなくなった場合には、
図2の処理を終了する。ステップS3の判断結果がYesである場合には、ステップS4へ進む。
【0037】
ステップS4では、緊急車両に対する判定状態を接近判定中とし、さらに、接近判定中に対する支援処理の実行を支援処理部622に指示する。ステップS4を実行した後はステップS5に進む。
【0038】
ステップS5は支援処理部622の処理である。ステップS5では、ステップS4または後述するステップS9、S16で決定した緊急車両の状態に基づいて定まる支援処理を実行する。この処理は、緊急車両の存在を、音と表示の一方または両方により運転者に報知する処理である。ステップS4により接近判定中に対する支援を指示された場合、ステップS5では、音のみにより緊急車両の存在を報知する。ステップS9、S15の後に実行するステップS5の支援内容は後述する。ステップS5を実行後は、ステップS1へ戻る。
【0039】
ステップS4、S5を実行した後では、ステップS1の判断はYesになり、ステップS6へ進む。ステップS6では、緊急車両に対して、エリア判定中という状態を決定済みか否かを判断する。エリア判定中は、後述するステップS9で決定する。エリア判定中と決定していない場合には(S6:No)、ステップS7へ進み、エリア判定中と決定済みである場合には、
図4のステップS13へ進む。
【0040】
ステップS7では、接近離脱判定処理を行うための演算をする。接近離脱判定処理は、緊急車両が、直近エリアに進入しそうであるか、あるいは、直近エリアから離脱したすぐ後であるかを判定する処理である。具体的には、ステップS8、S10の処理である。ステップS8、S10の処理のため、ステップS7では、自車両から緊急車両までの距離を決定する。このステップS7の処理は相対関係決定部61の処理である。
【0041】
ステップS8〜S11は、状態判定部621の処理である。ステップS8では、自車両から緊急車両までの距離が閾値R1以下であるか否かを判断する。ステップS8の判断結果がYesであればステップS9へ進み、NoであればステップS10へ進む。
【0042】
ステップS9では、緊急車両に対する判定状態をエリア判定中とする。さらに、表示部30に表示する緊急車両通知画像70において、緊急車両の位置を示すために、車両存在色とする表示領域、すなわち表示区画パターンを決定する。
【0043】
図6に緊急車両通知画像70を示している。本実施形態の緊急車両通知画像70は、いずれも正方形であり、かつ、同じ大きさの4つの表示区画71、72、73、74と、自車両マーク75を備える。緊急車両の状態がエリア判定中であれば、上記4つの表示区画71〜74のうち、緊急車両の位置に応じて定まる互いに隣り合う2つの表示区画71〜74を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する。
【0044】
ステップS9では緊急車両の位置を前後左右の4つに分類する。なお、前後左右は位置ではなく方向であるが、ステップS9を実行する場合、自車両から緊急車両までの距離はR1以下である。よって、ステップS9において方向を決定することは、実質的に緊急車両の位置を決定することになる。
【0045】
前後左右の4つのいずれに分類するかを決定する方法は次の通りである。
図7に示す、自車両を始点として緊急車両を通る緊急車両方位線Aと自車両の前後方向線80と間の角度Dが45度以下または315度以上であれば、緊急車両は自車両の前方に位置していると決定する。この角度Dが45度より大きく135度未満であれば、緊急車両は自車両の右方向に位置していると決定する。この角度Dが135度以上225度未満であれば、緊急車両は自車両の後方に位置していると決定する。この角度Dが225度以上315度未満であれば、緊急車両は自車両の左方向に位置していると決定する。
【0046】
ステップS9を実行する場合、自車両から緊急車両までの距離は、多くの場合、R2〜R1の間である。よって、緊急車両が前方に位置していると決定するのは、
図7に示す前方範囲81内に緊急車両が位置している場合である。また、緊急車両が右方向に位置していると決定するのは、
図7に示す右方向範囲82内に緊急車両が位置している場合である。また、緊急車両が後方に位置していると決定するのは、
図7に示す後方範囲83内に緊急車両が位置している場合である。また、緊急車両が左方向に位置していると決定するのは、
図7に示す左方向範囲84内に緊急車両が位置している場合である。これら前方範囲81、右方向範囲82、後方範囲83、左方向範囲84は、全体で円環形状となり、それぞれは円弧帯形状である。
【0047】
緊急車両が自車両の後方に位置していると決定したときは、自車両マーク75の後方の2つの表示区画73、74を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する。緊急車両が自車両の左方向に位置していると決定したときは、自車両マーク75の左側の2つの表示区画71、73を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する。緊急車両が自車両の前方に位置していると決定したときは、自車両マーク75前側の2つの表示区画71、72を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する。緊急車両が自車両の右方向に位置していると決定したときは、自車両マーク75の右側の2つの表示区画72、74を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する。緊急車両の位置を示す表示区画パターンを決定したら、エリア判定中に対する支援処理の実行を支援処理部622に指示する。ステップS9を実行した後はステップS5に進む。
【0048】
ステップS9を実行した後のステップS5では、ステップS9で決定した表示区画パターンを所定の車両存在色に変更する。この車両存在色はたとえば黄色である。また、出力音生成部40に対して、スピーカ50から緊急車両の方向を示す音声を出力させる指示を出す。ステップS5を実行後は前述のように、ステップS1に戻る。
【0049】
ステップS8の判断結果がNoである場合に実行するステップS10では、ステップS7の処理の結果、自車両から緊急車両までの距離が閾値R0以上であったか否かを判断する。ステップS10の判断結果がYesであればステップS11へ進む。この場合、緊急車両は、一旦は自車両の周辺に存在していたが、既に、自車両を中心とする閾値R0の円の外まで遠ざかっている状態である。
【0050】
そこで、ステップS11では、支援終了指示を支援処理部622に出力する。続くステップS12は支援処理部622が行う処理である。そのステップS12では、支援処理を終了する。ステップS12はステップS11の後に実行する以外に、
図4のステップS19、S24を実行した後にも実行する。ステップS11を実行した場合には、一度、エリア判定中としていることから、ステップS9において表示部30に緊急車両通知画像70を表示している。そこで、ステップS11を実行した後に実行するステップS12では、表示部30に表示している緊急車両通知画像70を消去する。ステップS12を実行したら、ステップS1へ戻る。
【0051】
ステップS7の実行時において、緊急車両の位置が、閾値R0から閾値R1の間であると、ステップS10の判断結果がNoになる。ステップS10の判断結果がNoであれば、接近判定中という状態が継続する。本実施形態では、緊急車両に対する判定状態を接近判定中とした場合、一度のみ、音による報知を行う。音による報知が何度も行われると、運転者が煩わしく感じる恐れがあるからである。ステップS10を実行した状態では、既に、一度、音による報知を実行済みである。そこで、ステップS10の判断結果がNoであれば、そのままステップS1へ戻る。
【0052】
ステップS9を実行した後、ステップS1へ戻った直後は、ステップS6がYesとなる。ステップS6がYesになると、
図4に示すステップS13へ進む。
図4に示す処理のうち、ステップS14、S21は、相対関係決定部61の処理であり、残りのステップは状態判定部の処理である。
【0053】
ステップS13では、緊急車両に対して、エリア進入中という状態を決定済みか否かを判断する。エリア進入中は、後述するステップS16で決定する。エリア進入中と決定していない場合には(S13:No)、ステップS14へ進み、エリア進入中と決定済みである場合には、
図4のステップS19へ進む。
【0054】
ステップS14では、エリア進入離脱判定処理を行うための演算をする。エリア進入離脱判定処理は、緊急車両が、直近エリアに進入した状態であるか否か、および、直近エリアから離脱していく状態であるか否かを判定する処理である。エリア進入離脱判定処理は、具体的には、ステップS15、S17、S18の処理である。
【0055】
ステップS14では、自車両から緊急車両までの距離、緊急車両の相対方位、緊急車両の軌跡、緊急車両の進行方位を決定する。緊急車両の軌跡は、車車間通信部20が受信した緊急車両情報に含まれている緊急車両の位置を蓄積したものを軌跡とする。
【0056】
ステップS15では、ステップS14の処理結果を用い、自車両から緊急車両までの距離が閾値R2以下か否かを判断する。このステップS15の判断結果がYesであればステップS16へ進み、NoであればステップS17へ進む。
【0057】
ステップS16では、緊急車両に対する判定状態をエリア進入中とする。さらに、表示部30に表示している緊急車両通知画像70において緊急車両の位置を示す表示区画を決定する。前述したように、本実施形態における緊急車両通知画像70は、4つの表示区画71〜74を備えている。ステップS9では、4つの表示区画71〜74のうち、緊急車両の位置に応じて定まる互いに隣り合う2つの表示区画71〜74を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定していた。
【0058】
これに対し、ステップS16では、4つの表示区画71〜74のうちのいずれか1つの表示区画71〜74を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する。ステップS9の実行時には、緊急車両は近傍エリアに位置しているのに対して、ステップS16の実行時には、近傍エリアよりも狭い直近エリアを4分割して、緊急車両の位置を示すからである。なお、緊急車両の位置を示す表示区画パターンが一つの表示区画である場合には、表示区画パターンを単に表示区画という。
【0059】
緊急車両の相対方位が0度以上90度未満であれば、緊急車両は
図7に示す右前直近範囲85に位置している。緊急車両の相対方位が90度以上180度未満であれば、緊急車両は
図7に示す右後直近範囲86に位置している。緊急車両の相対方位が180度以上2700度未満であれば、緊急車両は
図7に示す左後直近範囲87に位置している。緊急車両の相対方位が270度以上360度未満であれば、緊急車両は
図7に示す左前直近範囲88に位置している。
【0060】
緊急車両の位置が右前直近範囲85であれば、表示区画72を、緊急車両の位置を示す表示区画に決定する。緊急車両の位置が右後直近範囲86であれば、表示区画74を、緊急車両の位置を示す表示区画に決定する。緊急車両の位置が左後直近範囲87であれば、表示区画73を、緊急車両の位置を示す表示区画に決定する。緊急車両の位置が左前直近範囲88であれば、表示区画71を、緊急車両の位置を示す表示区画に決定する。
【0061】
図7から分かるように、右前直近範囲85、右後直近範囲86、左後直近範囲87、左前直近範囲88に比較して、前方範囲81、右方向範囲82、後方範囲83、左方向範囲84は広い。よって、前方範囲81、右方向範囲82、後方範囲83、左方向範囲84に対応する表示区画パターンは、緊急車両の位置精度が悪くても変動が少ない。
【0062】
緊急車両の位置を示す表示区画を決定したら、エリア進入中に対する支援処理の実行を支援処理部622に指示する。ステップS16を実行した後はステップS5に進む。
【0063】
ステップS16を実行した後のステップS5では、ステップS16で決定した表示区画を所定の車両存在色に変更する。この車両存在色は、ステップS9の後に実行するステップS5とは異なる色、たとえば薄赤色である。なお、ステップS9の後に実行する場合と異なり、音声の出力は行わない。何度も音声が出力されると、運転者が煩わしいと感じてしまう恐れがあるからである。
【0064】
ステップS15の判断結果がNoである場合に実行するステップS17では、ステップS14の処理結果をもとに、自車両から緊急車両までの距離が閾値R1以上となったか否かを判断する。ステップS17は、ステップS6がYes、つまり、エリア判定中という状態を決定済みである場合に実行する。そして、エリア判定中という状態を決定するのは、自車両から緊急車両までの距離が閾値R1以下となった場合である(S8)。よって、ステップS17を実行する場合、自車両から緊急車両までの距離が一度はR1以下となっている。したがって、自車両から緊急車両までの距離が閾値R1以上となっていれば、緊急車両は自車両から遠ざかったと判断できる。ステップS17の判断結果がNoであればステップS18へ進み、YesであればステップS19へ進む。
【0065】
ステップS18では、緊急車両が自車両の真横または正面を通過し、かつ、緊急車両の進行方位が自車両から離れる方位であるか否かを判断する。この判断には、緊急車両の軌跡、緊急車両の進行方位線Lを用いる。
【0066】
前述のように、ステップS17を実行する状態では、自車両から緊急車両までの距離が一度はR1以下となっている。これは緊急車両が近くに存在していることを意味する。このような近くの位置において、緊急車両が自車両の真横や正面を通過した場合、運転者は、緊急車両を視認できている可能性が高い状態であると考えられる。
【0067】
このように、運転者が緊急車両を視認できている可能性が高い状態において、緊急車両の進行方位が自車両から離れる方位であれば、緊急車両の存在を通知する支援は必要ないと考えられる。なお、緊急車両の進行方位が自車両から離れる方位か否かは、緊急車両の進行方位線Lが、自車両の前後方向線と交差するか否かにより判断する。
【0068】
ステップS18の判断結果がYesである場合もステップS19へ進む。ステップS19では、緊急車両通知支援を終了することを支援処理部622に指示する。ステップS19を実行する状態では、緊急車両に対する判定状態はエリア判定中であることから、表示部30に緊急車両通知画像70を表示している。よって、このステップS19では、緊急車両通知画像70の表示をオフにすることを指示する。ステップS19を実行した後は、
図3のステップS12へ進む。
【0069】
ステップS18の判断結果がNoであればステップS20へ進む。ステップS18の判断結果がNoになる場合、緊急車両に対する判定状態はエリア判定中が継続していることになる。そこで、ステップS20では、ステップS9と同様にして、緊急車両の位置を示す表示区画パターンを再決定する。そして、再決定した緊急車両の位置を示す表示区画パターンを、支援処理部622に指示する。ステップS20を実行した後は、
図3のステップS5に進む。
【0070】
ステップS16で緊急車両の状態をエリア進入中と判定した後、ステップS1へ戻った直後は、ステップS6、S13がYesになる。ステップS13がYesになると、ステップS21へ進む。
【0071】
ステップS21では、直近エリアを離脱したか否かを判定するエリア離脱判定処理を行うための演算をする。上記エリア離脱判定処理は、ステップS22、S23の処理である。
【0072】
ステップS21でも、自車両から緊急車両までの距離、緊急車両の相対方位、緊急車両の軌跡、緊急車両の進行方位を決定する。
【0073】
ステップS22では、ステップS21の処理結果を用い、自車両から緊急車両までの距離が閾値R2以上か否かを判断する。このステップS22の判断結果がYesであればステップS24へ進み、NoであればステップS23へ進む。
【0074】
ステップS23では、緊急車両が自車両の真横または正面を通過し、かつ、緊急車両の進行方位が自車両から離れる方位であるか否かを判断する。このステップS23の判断の趣旨はステップS18と同じである。ステップS23の判断結果がYesであればステップS24へ進む。
【0075】
ステップS24では、緊急車両通知支援を終了することを支援処理部622に指示する。ステップS24を実行する状態では、緊急車両に対する判定状態はエリア進入中であることから、表示部30に緊急車両通知画像70を表示している。よって、このステップS24では、緊急車両通知画像70の表示をオフにすることを指示する。ステップS24を実行した後は、
図3のステップS12へ進む。
【0076】
ステップS23の判断結果がNoであればステップS25へ進む。ステップS23の判断結果がNoになる場合、緊急車両に対する判定状態はエリア進入中が継続していることになる。そこで、ステップS25では、ステップS16と同様にして、緊急車両の位置を示す表示区画を再決定する。そして、再決定した緊急車両の位置を示す表示区画を、支援処理部622に指示する。ステップS25を実行した後は、
図3のステップS5に進む。
【0077】
<緊急車両通知画像70の表示例>
次に、
図3、4に示した処理に従った緊急車両通知画像70の表示例を説明する。
【0078】
<表示例1>
表示例1は、緊急車両が
図5に示す進行方位線L1を通る場合であり、進行方位線L1上の点P11〜P15における緊急車両通知画像70の表示例を、各点P11〜P15に対応させて
図8に示している。
【0079】
点P11では、緊急車両は周辺エリア内に存在しているので、
図3のステップS3がYesになり、ステップS4にて接近判定中とする。接近判定中では音のみの報知であり、緊急車両通知画像70は表示しない。
【0080】
緊急車両の位置が点P12になると、ステップS8がYesとなり、ステップS9にてエリア判定中とする。このとき、緊急車両は後方範囲83に位置しているため、
図8に示すように、2つの表示区画73、74を車両存在色で表示する。
【0081】
緊急車両の位置が点P13になると、ステップS15がYesになり、ステップS16にてエリア進入中とする。このとき、緊急車両は右後直近範囲86に位置しているため、
図8に示すように、表示区画74を、それまでとは異なる車両存在色で表示する。
【0082】
点P13からは、
図4のステップS22、S23がともにNoとなる状態が継続し、表示区画74を継続して車両存在色で表示する。緊急車両の位置が点P14になると、自車両の横位置を通過したことになる。しかし、緊急車両の進行方位が自車両に接近する方位であるので、ステップS23は、それまでと同様、Noとなる。ただし、続くステップS25において、車両存在色で表示する表示区画を、表示区画72に変更する。
【0083】
そして、緊急車両の位置が点P15になると、ステップS22がYesとなり、ステップS24を実行するので、緊急車両通知画像70の表示をオフにする。
【0084】
<表示例2>
表示例2は、緊急車両が
図5に示す進行方位線L2を通る場合であり、進行方位線L2上の点P21〜P23における緊急車両通知画像70の表示例を、各点P21〜P23に対応させて
図9に示している。
【0085】
点P21では、緊急車両は周辺エリア内に存在しているので、音のみで報知を行い(S3〜S5)、緊急車両通知画像70は表示しない。
【0086】
緊急車両の位置が点P22になると、エリア判定中となる。このとき、緊急車両は前方範囲81に位置しているため、
図9に示すように、2つの表示区画71、72を車両存在色で表示する。
【0087】
緊急車両の位置が点P23になると、すなわち、緊急車両が自車両の正面を通過すると、ステップS18がYesになる。そのため、緊急車両はまだ近傍エリア内に存在しているが、緊急車両通知画像70の表示をオフにする。
【0088】
<表示例3>
表示例3は、緊急車両が
図5に示す進行方位線L3を通る場合であり、進行方位線L3上の点P31〜P35における緊急車両通知画像70の表示例を、各点P31〜P35に対応させて
図10に示している。
【0089】
点P31では、緊急車両は周辺エリア内に存在しているので、音のみで報知を行い(S3〜S5)、緊急車両通知画像70は表示しない。
【0090】
緊急車両の位置が点P32になると、エリア判定中となる。このとき、緊急車両は右方向範囲82に位置しているため、
図10に示すように、2つの表示区画72、74を車両存在色で表示する。
【0091】
緊急車両の位置が点P33の場合、ステップS18の判断を実行する事になる。点P33の位置では、緊急車両は自車両の横位置を通過している。しかし、進行方位線L3が自車両の前後方向線80と交差するため、接近方位であることになり、ステップS18はNoとなる。よって、点P32のときと同じ表示を継続する。
【0092】
緊急車両の位置が点P34になると、エリア進入中とする。このとき、緊急車両は右前直近範囲85に位置しているため、
図10に示すように、表示区画72を、それまでとは異なる車両存在色で表示する。
【0093】
緊急車両の位置が点P35になると、すなわち、緊急車両が自車両の正面を通過すると、ステップS18がYesになる。そのため、緊急車両はまだ直近エリア内に存在しているが、緊急車両通知画像70の表示をオフにする。
【0094】
<実施形態の効果>
以上、説明した本実施形態よれば、緊急車両の相対位置が近傍エリア内である場合には(S8:Yes)、隣り合う2つの表示区画を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する(S9)。これに対して、緊急車両の相対位置が直近エリア内である場合には(S15:Yes)、1つの表示区画を、緊急車両の位置を示す表示区画パターンに決定する(S16)。
【0095】
つまり、本実施形態では、緊急車両の相対位置が近傍エリア内である場合には、緊急車両の相対位置が直近エリア内である場合よりも、緊急車両通知画像70において車両存在色とする表示区画パターンの大きさを大きくしている。したがって、運転者は、緊急車両通知画像70において車両存在色となっている表示区画パターンの大きさにより、緊急車両までの距離を把握することができる。
【0096】
しかも、緊急車両の位置が近傍エリア内である場合に表示区画パターンにそれぞれ対応させている範囲81〜84は、緊急車両の位置が直近エリア内である場合に表示区画パターンに対応させている直近範囲85〜88よりも広い。よって、緊急車両までの距離がそれほど近くなくても、緊急車両が直近に存在している場合と同じ範囲を一つの表示区画パターンに対応させる場合に比較して、緊急車両の位置が変動しても、車両存在色とする表示区画パターンは変化しないことが多い。これにより、緊急車両の位置測定精度が悪く、緊急車両情報に含まれている位置の変動が大きいとしても、車両存在色となっている表示区画パターンの位置が、緊急車両の実際の移動とは無関係に変動してしまうことも抑制できる。
【0097】
さらに、一般に、緊急車両が自車両にそれほど接近していない場合には、大雑把に緊急車両はどちらの方向に存在しているかが分かり、かつ、まだそれほど近くに存在していないことが分かれば十分であると考える運転者が多いと推定できる。そして、緊急車両が自車両の近くまできたときは、より細かくどこに緊急車両が存在しているかを知りたいと考える運転者が多いと推定できる。本実施形態の緊急車両通知画像70は、このような運転者の一般的な考えに適合した表示が行われるので、運転者は、緊急車両通知画像70を見ることで、緊急車両の位置に応じた必要な情報を速やかに認識できる。
【0098】
また、本実施形態の緊急車両通知画像70が備える表示区画は4つであり、緊急車両が直近エリア内に位置している場合に表示区画パターンとする表示区画を、緊急車両が近傍エリア内に位置している場合に表示区画パターンとする表示区画にも用いている。そして、緊急車両が近傍エリア内に位置している場合、2つの表示区画を表示区画パターンとしていた。これにより、緊急車両が直近エリア内に位置している場合と、近傍エリアに位置している場合とで、別々の表示区画を用いるよりも、表示区画パターンの視認性が低下することを抑制しつつ、緊急車両通知画像70を小さくすることができる。
【0099】
ところで、緊急車両が直近エリア内に位置している場合の各表示区画パターンに対応する直近範囲85〜88は、緊急車両が近傍エリア内に位置している場合の各表示区画パターンに対応する範囲81〜84よりも狭い。そのため、緊急車両が直近エリア内に位置していると、緊急車両情報に含まれている位置の変動により、表示区画パターンの位置が変動してしまう可能性が高い。
【0100】
しかし、本実施形態では、緊急車両の位置が直近エリア内となった後(S15:Yes)、直近エリア外となった場合(S22:Yes)、緊急車両の位置が近傍エリア内か否かを判断せず、すなわち、緊急車両の位置が近傍エリア内であっても、緊急車両通知画像70の表示を終了している(S24、S12)。
【0101】
また、本実施形態では、緊急車両の相対位置が近傍エリア内または直近エリア内であっても、緊急車両が自車両の正面または真横を通過したことに基づいて、緊急車両通知画像70の表示を終了する(S18、S19、S23、S24、S12)。
【0102】
これらは、緊急車両の存在を通知する支援が必要ない状態を早めに判断して、緊急車両通知画像70の表示を早めに終了していることになる。これらにより、車両存在色となっている表示区画パターンの位置が、緊急車両の実際の移動とは無関係に変動してしまうこと、特に抑制できる。
【0103】
また、本実施形態では、運転者が表示終了キー55を操作した場合には、緊急車両通知画像70の表示を強制終了する。これによっても、車両存在色となっている表示区画パターンの位置が、緊急車両の実際の移動とは無関係に変動してしまうこと抑制できる。
【0104】
また、本実施形態では、緊急車両の位置が近傍エリアの外側に設定された周辺エリア内であるかも判断しており、緊急車両の位置が周辺エリア内である場合にも、緊急車両の位置を運転者に通知している。しかし、この通知は、音声により行っている(S4、S5)。これによっても、車両存在色となっている表示区画パターンの位置が変動してしまうことを抑制できる。
【0105】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0106】
<変形例1>
前述の実施形態では、表示区画は正方形であったが、表示区画の形状は正方形である必要はなく、また、互いに同一の形状である必要もない。たとえば、緊急車両通知画像の全体形状が円形であり、表示区画は、その円を複数に分割した形状でもよい。
【0107】
<変形例2>
前述の実施形態では、緊急車両が直近エリア内に位置している場合に表示区画パターンとする表示区画を、緊急車両が近傍エリア内に位置している場合に表示区画パターンとする表示区画にも用いていた。しかし、これに限られず、たとえば、
図7に示した範囲81〜88を、それぞれ表示区画とする緊急車両通知画像を用いて、緊急車両の位置を示してもよい。
【0108】
<変形例3>
また、前述の実施形態では、自車両が走行中か停止中かは判断せずに、
図3、4の処理を実行していた。しかし、
図3、4の処理を実行するのは、自車両が停車中の場合とし、自車両が走行中である場合には、緊急車両通知画像は表示せず、緊急車両の相対位置を音声で通知してもよい。
【0109】
<変形例4>
また、
図4のステップS18、S23では、緊急車両が自車両の正面や真横を通過したか否かを判断していた。しかし、完全な正面や真横ではなく、正面に近い正面領域、真横に近い真横領域内で任意に設定した線を通過したことを判断してもよい。正面領域は、たとえば、自車両の車幅を前方に延長した領域であり、真横領域は、たとえば、車長を自車両の側方に延長した領域である。
【0110】
<変形例5>
表示区画パターンの全体が全て車両存在色とされる必要はない。たとえば、表示区画パターンの一部に、緊急車両の形状を示す図形を、車両存在色を用いて示してもよい。
【0111】
<変形例6>
緊急車両情報は、緊急車両から直接受信する場合に限られず、路車間通信により受信してもよい。
【0112】
<変形例7、8>
緊急車両の相対速度を考慮し、相対速度が所定値以上である場合には、緊急車両の位置が、前述の実施形態において支援処理(S5)を行わない位置であっても、緊急車両の存在を通知するようにしてもよい(変形例7)。また、緊急車両の進行方位線Lが自車両のすぐ近くを通る場合、たとえば、自車両から10m以内を通る場合、予めそのことを通知するようにしてもよい(変形例8)。