特許第6032188号(P6032188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032188
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】クリア層を有した加飾品とその成形方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
   B62D1/06
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-248484(P2013-248484)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105037(P2015-105037A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】安井 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝幸
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−2498(JP,A)
【文献】 特開平10−226338(JP,A)
【文献】 実開昭60−43469(JP,U)
【文献】 特開2001−71914(JP,A)
【文献】 特開2010−264742(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0149074(US,A1)
【文献】 特表2013−540610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の芯材と、
該芯材を、断面周方向の全周にわたって覆うとともに、前記芯材の断面周方向に沿って分割された複数の分割体から構成されて、ベース部及び該ベース部の表面側に設けられた加飾層を具備してなる形状保持性を有した筒状の装飾カバーと、
前記芯材を覆った前記装飾カバーの断面周方向の全周にわたる前記加飾層の外表面を、被覆するように、型成形により形成される透明なクリア層と、
を備えて構成され、
前記装飾カバーの前記ベース部が、前記加飾層を設けて前記クリア層に被覆される大径部と、該大径部の両端部から該大径部より前記芯材側に接近する段差部と、前記大径部から離れるように、前記段差部の内周縁から延設される小径部と、を備えて構成され、
前記各分割体が、前記芯材の周囲への配設時、前記芯材の周囲で相互に連なった筒状体を形成するように、構成され、
前記クリア層が、前記小径部の両端末側の全周に露出部を残して、前記加飾層を含めた前記大径部から前記段差部を経た前記小径部までの外周を被覆するように、配設され、
前記装飾カバーの両端に、前記加飾層に隣接して、前記小径部を覆うカバー部材が配設されて、構成されていることを特徴とするクリア層を有した加飾品。
【請求項2】
前記装飾カバーの前記大径部と前記芯材との間に、前記芯材と前記装飾カバーとに接触可能として前記装飾カバーを支持可能なスペーサが、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のクリア層を有した加飾品。
【請求項3】
前記芯材が、車両用のステアリングホイールの操舵時に把持するリング部の棒状として円環状に連なって構成される芯材とし、
前記リング部が、平面周方向にかけて、前記加飾層を木意匠とした前記装飾カバーと、外表面側に皮革部を設けてなる前記カバー部材と、を配設させて、
前記加飾品が皮巻きステアリングホイールとして構成されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のクリア層を有した加飾品。
【請求項4】
前記装飾カバーの前記小径部の外表面側に、前記皮革部の端部を支持する支持部と、該支持部と前記大径部との間に配置されて前記皮革部の端末を嵌め込む木目込み溝と、を設けてなる延設部が、前記クリア層の成形材料を延設させるように、型成形により形成されていることを特徴とする請求項3に記載のクリア層を有した加飾品。
【請求項5】
棒状の芯材と、
該芯材を、断面周方向の全周にわたって覆うとともに、前記芯材の断面周方向に沿って分割された複数の分割体から構成されて、ベース部及び該ベース部の表面側に設けられた加飾層を具備してなる形状保持性を有した筒状の装飾カバーと、
前記芯材を覆った前記装飾カバーの断面周方向の全周にわたる前記加飾層の外表面を、被覆するように、型成形により形成される透明なクリア層と、
を備えて構成され、
前記装飾カバーの前記ベース部が、前記加飾層を設けて前記クリア層に被覆される大径部と、該大径部の両端部から該大径部より前記芯材側に接近する段差部と、前記大径部から離れるように、前記段差部の内周縁から延設される小径部と、を備えて構成され、
前記各分割体が、前記芯材の周囲への配設時、前記芯材の周囲で相互に連なった筒状体を形成するように、構成され、
前記クリア層が、前記小径部の両端末側の全周に露出部を残して、前記加飾層を含めた前記大径部から前記段差部を経た前記小径部までの外周を被覆するように、配設され、
前記装飾カバーの両端に、前記加飾層に隣接して、前記小径部を覆うカバー部材が配設されて、構成されていることを特徴とするクリア層を有した加飾品の成形方法であって、
前記芯材の周囲に前記装飾カバーの前記各分割体を配設させ、前記小径部の露出部の部位を支持部位として、型開きさせたクリア層成形型にセットし、型閉めして前記クリア層を成形することを特徴とするクリア層を有した加飾品の成形方法。
【請求項6】
前記装飾カバーの前記大径部と前記芯材との間に、前記芯材と前記装飾カバーとに接触可能として前記装飾カバーを支持可能な合成樹脂製のスペーサを設けて、前記クリア層成形型に、セットする構成とするとともに、
前記スペーサが、前記芯材の周囲に型成形により、形成されていることを特徴とする請求項5に記載のクリア層を有した加飾品の成形方法。
【請求項7】
前記芯材が、車両用のステアリングホイールの操舵時に把持するリング部の棒状として円環状に連なって構成される芯材とし、
前記リング部が、平面周方向にかけて、前記加飾層を木意匠とした前記装飾カバーと、外表面側に皮革部を設けてなる前記カバー部材と、を配設させて、
前記加飾品が皮巻きステアリングホイールとして構成されていることを特徴とする請求項5若しくは請求項6に記載のクリア層を有した加飾品の成形方法。
【請求項8】
前記装飾カバーの前記小径部の外表面側に、前記皮革部の端部を支持する支持部と、該支持部と前記大径部との間に配置されて前記皮革部の端末を嵌め込む木目込み溝と、を設けてなる延設部を、前記クリア層成形型の成形時に、前記クリア層とともに成形することを特徴とする請求項7に記載のクリア層を有した加飾品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵時に把持するリング部の木意匠部位にクリア層を設けた車両用の皮巻きステアリングホイール等のクリア層を有した加飾品とその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加飾品、例えば、皮巻きステアリングホイールでは、操舵時に把持するリング部が、アルミニウム合金等からなる芯材の周囲に、装飾カバーと、皮革部を設けてなるカバー部材と、を平面周方向に沿って配設させて構成されていた(例えば、特許文献1,2参照)。装飾カバーは、外表面側の加飾層に木意匠を設けて構成され、木材自体から形成されたり、あるいは、硬質の合成樹脂材料のベース材の表面に木意匠を設けたシート材を接合させて構成され、そして、リング部の断面周方向に沿って複数(上下二つ)に分割される分割体から構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−018336号公報
【特許文献2】特開2013−018458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のステアリングホイールでは、装飾カバーに光沢をつけて、意匠性を高めるために、装飾カバーの外表面にクリア層を設けることが望まれる。そしてその際、マスキング等が必要なディップ方式やスプレー塗布方式等に比べて、手間をかけずに、かつ、装飾カバーの外表面に一定の膜厚とするように、型成形によってクリア層を設けることが考えられる。しかし、そのような構成とする場合、従来構成では、装飾カバーの裏面側にクリア層を形成する成形材料が進入して、成形材料の圧力が低下し、クリア層に気泡を発生させて、外観不良となる虞れが生ずる。
【0005】
この対処のため、装飾カバーの端末側に、クリア層の成形材料が進入する進入穴部位を塞ぐように、接着剤を充填したり、あるいは、特許文献2のような別ピースを設けることが考えられる。しかしながら、このような場合には、それらを行う工数が必要となって、簡便に、気泡の発生を抑制した奇麗なクリア層を設けた皮巻きステアリングホイール等の加飾品を製造し難い。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、クリア層を簡便に奇麗に形成できるクリア層を有した加飾品とその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクリア層を有した加飾品は、棒状の芯材と、
該芯材を、断面周方向の全周にわたって覆うとともに、前記芯材の断面周方向に沿って分割された複数の分割体から構成されて、ベース部及び該ベース部の表面側に設けられた加飾層を具備してなる形状保持性を有した筒状の装飾カバーと、
前記芯材を覆った前記装飾カバーの断面周方向の全周にわたる前記加飾層の外表面を、被覆するように、型成形により形成される透明なクリア層と、
を備えて構成され、
前記装飾カバーの前記ベース部が、前記加飾層を設けて前記クリア層に被覆される大径部と、該大径部の両端部から該大径部より前記芯材側に接近する段差部と、前記大径部から離れるように、前記段差部の内周縁から延設される小径部と、を備えて構成され、
前記各分割体が、前記芯材の周囲への配設時、前記芯材の周囲で相互に連なった筒状体を形成するように、構成され、
前記クリア層が、前記小径部の両端末側の全周に露出部を残して、前記加飾層を含めた前記大径部から前記段差部を経た前記小径部までの外周を被覆するように、配設され、
前記装飾カバーの両端に、前記加飾層に隣接して、前記小径部を覆うカバー部材が配設されて、構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る加飾品では、装飾カバーを構成する分割体を、芯材の断面周方向で、芯材を覆うように配設させれば、芯材の周囲で筒状体となる。そして、クリア層は、大径部から段差部を経た小径部の露出部までの外表面に形成されることから、小径部の露出部の縁が見切りとなり、露出部の部位がクリア層成形型の支持部位となって、クリア層成形型のキャビティ部位で、配置位置精度よく、装飾カバーがセット可能となる。また、その成形型のキャビティ部位では、装飾カバーの大径部から段差部を経た小径部までが、芯材の断面周方向で連なった筒状体を形成することから、芯材側にクリア層の成形材料が進入する隙間が無く、成形時における成形圧の低下を招かないため、気泡が発生せずに、奇麗にクリア層を成形できる。
【0009】
また、露出部は、カバー部材で覆われることから、クリア層が設けられなくとも、加飾品の意匠性を低下させない。
【0010】
そして勿論、クリア層が、マスキングが必要なディッピング方式やスプレー塗布方式と相違し、マスキングしたりそのマスキング材を外す手間が不要な型成形により形成できることから、手間無く、かつ、膜厚も一定にできて、高品質の奇麗な加飾部を形成できる。
【0011】
したがって、本発明に係るクリア層を有した加飾品では、装飾カバーにおける大径部に連なる段差部と小径部とを利用して、クリア層を簡便に奇麗に形成できる。
【0012】
そして、本発明に係るクリア層を有した加飾品では、前記装飾カバーの前記大径部と前記芯材との間に、前記芯材と前記装飾カバーとに接触可能として前記装飾カバーを支持可能なスペーサが、配設されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、加飾品における芯材の外周から離れて装飾カバーの大径部が配設されても、スペーサを介在させて、大径部が芯材に支持可能となることから、装飾カバー(大径部)の芯材に対する位置ずれ(ぶれ)や凹みを防止できる。
【0014】
また、本発明に係る加飾品では、前記芯材が、車両用のステアリングホイールの操舵時に把持するリング部の棒状として円環状に連なって構成される芯材とし、
前記リング部が、平面周方向にかけて、前記加飾層を木意匠とした前記装飾カバーと、外表面側に皮革部を設けてなる前記カバー部材と、を配設させて、
皮巻きステアリングホイールとして構成することができる。
【0015】
また、本発明に係る加飾品を皮巻きステアリングホイールとする場合には、前記装飾カバーの前記小径部の外表面側に、前記皮革部の端部を支持する支持部と、該支持部と前記大径部との間に配置されて前記皮革部の端末を嵌め込む木目込み溝と、を設けてなる延設部が、前記クリア層の成形材料を延設させるように、型成形により形成されていてもよい。
【0016】
このような構成では、皮革部の端末を奇麗に木目込み溝に嵌め込むことができることから、皮革部の端末処理を奇麗に行うことができる。そしてまた、延設部が、クリア層の成形時に同時に成形できることから、芯材の周囲に、別途、組み付ける構成と相違し、簡便に、皮巻きステアリングホイールを製造することができる。
【0017】
本発明に係るクリア層を有した加飾品の成形方法は、棒状の芯材と、
該芯材を、断面周方向の全周にわたって覆うとともに、前記芯材の断面周方向に沿って分割された複数の分割体から構成されて、ベース部及び該ベース部の表面側に設けられた加飾層を具備してなる形状保持性を有した筒状の装飾カバーと、
前記芯材を覆った前記装飾カバーの断面周方向の全周にわたる前記加飾層の外表面を、被覆するように、型成形により形成される透明なクリア層と、
を備えて構成され、
前記装飾カバーの前記ベース部が、前記加飾層を設けて前記クリア層に被覆される大径部と、該大径部の両端部から該大径部より前記芯材側に接近する段差部と、前記大径部から離れるように、前記段差部の内周縁から延設される小径部と、を備えて構成され、
前記各分割体が、前記芯材の周囲への配設時、前記芯材の周囲で相互に連なった筒状体を形成するように、構成され、
前記クリア層が、前記小径部の両端末側の全周に露出部を残して、前記加飾層を含めた前記大径部から前記段差部を経た前記小径部までの外周を被覆するように、配設され、
前記装飾カバーの両端に、前記加飾層に隣接して、前記小径部を覆うカバー部材が配設されて、構成されていることを特徴とするクリア層を有した加飾品の成形方法であって、
前記芯材の周囲に前記装飾カバーの前記各分割体を配設させ、前記小径部の露出部の部位を支持部位として、型開きさせたクリア層成形型にセットし、型閉めして前記クリア層を成形することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る成形方法では、分割体を芯材の周囲に配設させて、筒状体の装飾カバーを形成すれば、装飾カバーにおける小径部の露出部の部位を、支持部位として、型開きしたクリア層成形型にセットできることから、位置精度良く、芯材を覆った装飾カバーをキャビティ内に配置させることができ、成形するクリア層の膜厚を薄くしても、均等な厚さでクリア層を成形することができる。
【0019】
勿論、クリア層自体も、気密性を確保できるような進入穴部位の無い筒状体、すなわち、加飾層を含めた大径部から段差部を経た小径部の露出部までの芯材の周囲で連なった筒状体、の外周側に成形されることから、成形材料が芯材側に進入して成形圧を低下させることが防止され、気泡を発生させずに、型成形によって、簡便かつ奇麗に形成することができる。
【0020】
また、本発明に係る成形方法では、前記装飾カバーの前記大径部と前記芯材との間に、前記芯材と前記装飾カバーとに接触可能として前記装飾カバーを支持可能な合成樹脂製のスペーサを設けて、前記クリア層成形型に、セットする構成とするとともに、
前記スペーサが、前記芯材の周囲に型成形により、形成されていることが望ましい。
【0021】
このような構成では、装飾カバー(大径部)の芯材に対する位置ずれ(ぶれ)や凹みを防止できるスペーサを、別途、芯材に組み付ける場合に比べて、容易に、芯材周囲に配設することができる。
【0022】
さらに、本発明に係る成形方法では、前記芯材が、車両用のステアリングホイールの操舵時に把持するリング部の棒状として円環状に連なって構成される芯材とし、
前記リング部が、平面周方向にかけて、前記加飾層を木意匠とした前記装飾カバーと、外表面側に皮革部を設けてなる前記カバー部材と、を配設させてなる皮巻きステアリングホイールの製造に利用してもよい。そしてこの場合には、既述したように、装飾カバーの加飾層を覆うクリア層を、気泡を発生させず、かつ、均等な薄い肉厚として、奇麗に成形することができることとなる。
【0023】
またその際、本発明に係る成形方法では、前記装飾カバーにおける前記小径部の外表面側に、前記皮革部の端部を支持する支持部と、該支持部と前記大径部との間に配置されて前記皮革部の端末を嵌め込む木目込み溝と、を設けてなる延設部を、前記クリア層成形型の成形時に、前記クリア層とともに成形することが望ましい。
【0024】
このような構成では、皮革部の端末処理を行う支持部と木目込み溝とを設けた延設部を、クリア層の成形時に同時に成形して、形成することができることから、延設部を、手間無く容易に、所定の位置に配置させることができ、皮巻きステアリングホイールの製造工程を低減することに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態の加飾品としての皮巻きステアリングホイールの平面図である。
図2図1のII−II部位の概略縦断面図である。
図3図1のIII−III部位の概略縦断面図である。
図4】実施形態のステアリングホイールに使用する上側の分割体の平面図と底面図である。
図5】実施形態のステアリングホイールに使用する下側の分割体の底面図と平面図である。
図6】上側と下側の分割体の断面図であり、それぞれ、図4のVIA−VIA部位、図4のVIB−VIB部位、図5のVIC−VIC部位、図5のVID−VID部位を示す。
図7】実施形態のステアリングホイール芯金にスペーサを成形した状態の第1完成前ハンドルを示す平面図である。
図8】第1完成前ハンドルの断面図であり、図7のVIIIA−VIIIA部位とVIIIB−VIIIB部位とを示す。
図9】実施形態のスペーサを成形する成形型に、ステアリングホイール芯金をセットして型締めした状態を示す概略縦断面図である。
図10】実施形態のスペーサを成形したステアリングホイール芯金に、分割体を配設した状態の第2完成前ハンドルを示す部分平面図である。
図11】実施形態のステアリングホイールにおいて、クリア層を成形した状態の第3完成前ハンドルを示す部分平面図である。
図12】実施形態のクリア層を成形する成形型を示す概略縦断面図であり、加飾部の成形部位付近の断面を示す。
図13】実施形態のクリア層を成形する成形型を示す概略縦断面図であり、リング部の前端付近におけるリング部周方向に沿った断面を示す。
図14】実施形態のクリア層を成形する成形型を示す概略縦断面図であり、延設部の成形部位とクリア層を設けない露出部の部位との断面を示す。
図15】他の実施形態の加飾品を示す正面図である。
図16図15に示す加飾品の概略縦断面図であり、図15の XVI− XVI部位に対応する。
図17図15に示す加飾品の概略縦断面図であり、図16のXVII−XVII部位に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態で製造する加飾品は、図1〜3に示すように、皮巻きのステアリングホイールWとしている。このステアリングホイールWは、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されるボス部Bと、リング部Rとボス部Bとを連結する三本のスポーク部Sと、を備えて構成され、内部に、ステアリングホイール芯金1が配設されている。
【0027】
また、このステアリングホイールWでは、ボス部Bの上面側には、各スポーク部Sの皮革部36を設けてなるカバー部材35に接近するように、パッドPが配設されている。
【0028】
そして、カバー部材35の皮革部36は、各スポーク部Sのリング部R近傍と、左右の左スポーク部SL,SR付近から後スポーク部SBまでのリング部Rの後部RBと、にわたって配設され、リング部Rの前部RFには、図1〜3に示すように、木意匠を有した加飾層15を外表面に表出させた装飾カバー10が配設されている。換言すれば、リング部Rの外観は、その平面周方向に沿って、カバー部材35の皮革部36と、装飾カバー10におけるクリア層28の加飾本体部29により被覆された加飾層15とで、二分される構成としている。
【0029】
なお、カバー部材35の皮革部36は、天然皮革若しくは合成皮革等から形成され、芯金1の後述するリング芯金部2の周囲に形成された軟質の発泡ウレタン等からなる被覆層38の外表面に、接着剤を利用しつつ、巻き付けられ、前端側の左右の端部36aにおける端末36bが、後述する延設部30に設けられた木目込み溝31に接着剤を利用しつつ、嵌合されて配設されている。
【0030】
そして、ステアリングホイール芯金1は、図7に示すように、リング部Rに配設される棒状として円環状に連ならせたリング芯金部2、中央のボス部Bに配設されるボス芯金部4、及び、リング芯金部2とボス芯金部4とを連結するスポーク部Sに配設されるスポーク芯金部3、から構成され、ボス芯金部4には、図示しないステアリングシャフトとの連結部位となるボス4aが中央に配設されている。ステアリングホイール芯金1は、ボス4aを鋼製としている他、他の部位は、アルミニウム等の軽合金材料からなるダイキャスト製として、リング芯金部2は、断面逆U字形に形成されている(図3参照)。
【0031】
また、リング部Rの前部RF側の内部には、図2,3,7,8に示すように、リング芯金部2の周囲に、ポリプロピン等の硬質の合成樹脂製のスペーサ7が、形成されている。スペーサ7は、スペーサ7を成形する射出成型用の成形型40(図9参照)を型開きさせた状態で、芯金1をセットして、型締め後、スペーサ7の成形材料M1を、ゲート40bからキャビティ40a内に注入して、成形されている。
【0032】
成形型40は、図9に示すように、分割型41(41A,41B)を備えて構成され、分割型41A,41Bは、それぞれ、型締め時にキャビティ40aを形成するキャビティ用型面41aを備え、さらに、分割型41Aには、ボス4aを嵌め込むセットピン41bが配設されている。
【0033】
なお、ステアリングホイール芯金1にスペーサ7を成形した成形品は、第1完成前ハンドルH1となる。
【0034】
そして、スペーサ7は、図2,3,7,8に示すように、装飾カバー10の後述する大径部12の内周側のエリアに配設され、断面形状を略四角形として、上面7aと下面7bとのそれぞれの内側縁と外側縁とに、三角柱状の突起7cを設け、さらに、ボス4aから放射状に延びた直線状の凹溝17dを設けた他、上面7aと下面7bとを平らな平面として構成されている。
【0035】
装飾カバー10は、図2,3,10に示すように、形状保持性を有したPC/ABSアロイ等の硬質の合成樹脂材料からなるベース部11と、ベース部11の表面側に設けられて木意匠を表出させたシート材からなる加飾層15と、から構成されている。
【0036】
ベース部11は、外表面に加飾層15を設ける断面略円環状とした曲管状の大径部12と、大径部12の両端に配置されて、大径部12からリング芯金部2に接近する段差部13(13L,13R)と、大径部12から離れるように、段差部13L,13Rの内周縁から延設されて、大径部12より小径とした断面略円環状の曲管状の小径部14(14L,14R)と、から構成されている。小径部14L,14Rは、端末側に、外径寸法を等しくして曲がる円筒状の曲管部14bを備え、段差部13L,13R側に、曲管部14bから凹むような環状溝14aを配設させている。加飾層15は、大径部12の外周面に配設されている。
【0037】
そして、この装飾カバー10は、図3,4〜6に示すように、リング芯金部2の断面周方向に沿って分割された複数(実施形態では上下二つ)の分割体17(17U,17D)から構成されている。すなわち、実施形態の場合、分割体17U,17Dは、スペーサ7で被覆されたリング芯金部2の断面周方向の全周にわたって覆うように配設されている。
【0038】
各分割体17U,17Dは、それぞれ、加飾層15を有した大径部12を構成する大径構成部18と、段差部13を構成する連結壁部19と、小径部14(14L,14R)を構成する小径構成部20(20L,20R)と、を備えて構成される。分割体17U,17Dは、リング芯金部2の周囲への配設時、リング芯金部2の周囲で相互に連なった筒状体の装飾カバー10を形成できるように、構成されている。
【0039】
詳しく述べれば、上下の分割体17U,17Dの相互の合わせ面17a,17bは、リング部Rの平面周方向に沿って(ボス4aの軸心と直交方向に沿って)形成され、上方の断面逆U字状の分割体17U側の合わせ面17aは、その断面の両端面に配設され、下方の断面U字状の分割体17Dの合わせ面17bは、合わせ面17aと平行に突き合わされる平面として、内周側に突条17cを備えて構成されている。このような合わせ面17a,17bは、大小の差は有るものの、大径構成部18と小径構成部20とにおいて、同様に構成されている(図12,14参照)。そして、合わせ面17a,17b相互を接着剤を使用しつつ突き合わせて接合させつつ、分割体17U,17Dをリング芯金部2の周囲に配設させ、さらに、その状態で、クリア層成形型45にセットして型締めした際(この時、後述する露出部24が成形型45の分割型46A,46Bに挟持される)(図13のB,14のB参照)、筒状体の装飾カバー10は、クリア層28の成形圧(約1.5MPa)に対応できる気密性を有するように、構成されている。
【0040】
また、小径構成部20L,20Rは、環状溝14aを構成する凹部21(21L,21R)と、曲管部14bを構成する割り面部22(22L,22R)と、を配設させて構成されている。割り面部22L,22Rの端末側は、クリア層28の設けられない露出部(非被覆部)24(24L,24R)となり、割り面部22L,22Rの凹部21L,21R側は、クリア層28を形成する成形材料M2に被覆される被覆部25となる。なお、露出部24(24L,24R)は、既述したように、成形型45の型締め時の分割型46の支持部位となる。
【0041】
さらに、実施形態の場合、装飾カバー10の大径部12の内周側には、ボス4aから放射状の一文字状に配設されるリブ12a,12bと、×状のリブ12c,12dとが、配設されている。リブ12a,12cは、スペーサ7の上面7aと接触可能となるように、分割体17U側に配設され、リブ12b,12dは、スペーサ7の下面7bに接触可能となるように、分割体17D側に配設されている。これらのリブ12a,12b,12c,12dは、常時、圧接状態でスペーサ7の上面7aや下面7bと接触する必要は無く、強く押圧された際、装飾カバー10が、リング芯金部2に対してずれたり、あるいは、凹むことを防止できるように、配設されている。
【0042】
なお、一文字状のリブ12a,12bは、リング部Rを上方から見て、リング部Rの平面周方向に沿う突起7c間に配設され、×状のリブ12c,12dは、ボス4aの放射方向に沿ったスペーサ7の内周縁と外周縁との突起7c,7cに、「×」の中央交差部を配置させるように、配設される。スペーサ7の凹溝7dに対応する位置のリブ12a,12bは、凹溝7d内に挿入されるように、他のものに比べて高さを高くしている。
【0043】
また、スペーサ7の周囲を含めて、リング芯金部2の周囲に、加飾層15を接着済みの分割体17U,17D相互を接着させて装飾カバー10を配設した製品は、第2完成前ハンドルH2となる。
【0044】
クリア層28は、透明なウレタンから型成形、実施形態の場合、反応射出成形、により形成されている。そして、クリア層28は、加飾本体部29と左右両端側の延設部30,30と、を備えて、小径部14(14L,14R)の端末側の全周に露出部24L,24Rを残して、加飾層15を含めた大径部12から小径部14L,14Rの被覆部25L,25Rまでの外周を被覆するように、配設される。加飾本体部29は、装飾カバー10の加飾層15が光沢を備えるように、加飾層15の外表面を被覆する。延設部30,30は、装飾カバー10の小径部14L,14Rの外表面側に形成される。延設部30は、皮革部36の端部36aを支持する円柱状の支持部32と、支持部32と大径部12との間に配置されて皮革部36の端末36bを嵌め込む木目込み溝31と、を備えて構成されている。
【0045】
このクリア層28を成形する反応射出成形型45は、図12〜14に示すように、鋼材等からなる金属製とした一対の分割型46(46A,46B)から構成されて、型締め時に、図12図13のB、図14のAに示すように、クリア層28を成形可能なキャビティ45aを備え、さらに、キャビティ45aには、所定のミキシングヘッドを経て、クリア層28を形成する成形材料(透明ウレタン材料)M2を注入するゲート45bが配設されている。そして、分割型46A,46Bは、キャビティ用型面46aに隣接して、小径部14L,14Rの露出部24L,24Rの外周面を挟持して支持可能な支持面46bを配設させている。
【0046】
なお、第2完成前ハンドルH2を型開きした成形型45にセットして、型締めした際には、加飾層15の周囲に、クリア層28の薄肉の加飾本体部29を成形できるように、隙間hが配設されることとなる。実施形態の場合、加飾本体部29は、厚さ寸法t0を0.7mmとしている。
【0047】
この皮巻きステアリングホイールWの製造工程について説明すれば、まず、ステアリングホイール芯金1を準備し、セットピン41bにボス4aを嵌める等して、型開きさせたスペーサ7を成形する射出成形用の成形型40(図9参照)にステアリングホイール芯金1をセットして、型締めし、所定のゲート40bからキャビティ40a内に、成形材料M1を注入して、スペーサ7を成形し、図7に示す第1完成前ハンドルH1を製造する。
【0048】
ついで、第1完成前ハンドルH1のスペーサ7の上下に、加飾層15を大径構成部18の外表面に貼り付けた分割体17U,17Dを配設しつつ、接着剤を利用して、合わせ面17a,17b相互を接着させて、リング芯金部2の周囲に、スペーサ7を介在させて、装飾カバー10を配設し、図10に示す第2完成前ハンドルH2を製造する。
【0049】
その後、ボス4aを所定のセットピンに嵌める等して、型開きさせたクリア層28を成形する反応射出成形用の成形型45(図12〜14参照)に、第2完成前ハンドルH2をセットし、型締めし、所定のゲート45bからキャビティ45a内に成形材料M2を注入して、クリア層28を成形し、図11に示す第3完成前ハンドルH3を製造する。
【0050】
その後、リング部Rの後部RB側のリング芯金部2の部位やリング部R近傍のスポーク芯金部3の周囲に、軟質の発泡ウレタンからなる被覆層38を成形し、そして、被覆層38の外表面に、接着剤を利用しつつ、皮革部36を巻き付けるとともに、前端側の左右の端部36aを延設部30の支持部32に支持させ、端末36bを延設部30の木目込み溝31に接着剤を利用しつつ、嵌合させれば、皮巻きのステアリングホイールWを製造することができる。なお、被覆層38の成形時には、ウレタン材料がリング芯金部2や装飾カバー10の内周側に侵入しないように、装飾カバー10の両端部33側に充填材34を設けて成形する。
【0051】
このように製造する実施形態の加飾品としてのステアリングホイールWでは、装飾カバー10を構成する分割体17(17U,17D)を、ステアリングホイール芯金1におけるリング芯金部2の断面周方向で、スペーサ7を介在させて、リング芯金部2を覆うように配設させれば、図2,3,10,12,14に示すように、リング芯金部2の周囲で筒状体となる。そして、クリア層28は、図11に示すように、筒状体の装飾カバー10の大径部12から段差部13(13L,13R)を経た小径部14(14L,14R)の露出部24(24L,24R)までの外表面に形成されることから、図13,14に示すように、小径部14の露出部24の縁が見切り26となり、露出部24の部位がクリア層成形型45の支持部位となって、クリア層成形型45のキャビティ45aの部位で、配置位置精度よく、装飾カバー10がセットされる。また、その成形型45のキャビティ45aの部位では、装飾カバー10の大径部12から段差部13を経た小径部14までが、リング芯金部2の断面周方向で連なった筒状体を形成することから、リング芯金部2側にクリア層28の成形材料M2が進入する隙間が無く、成形時における成形圧の低下を招かないため、気泡が発生せずに、奇麗にクリア層28を成形できる。
【0052】
また、露出部24は、カバー部材35で覆われることから、成形するクリア層28が設けられなくとも、加飾品としてのステアリングホイールWの意匠性を低下させない。
【0053】
そして勿論、クリア層28が、マスキングが必要なディッピング方式やスプレー塗布方式と相違し、マスキングしたりそのマスキング材を外す手間が不要な型成形(実施形態では反応射出成形)により形成できることから、手間無く、かつ、膜厚も一定にできて、高品質の奇麗な加飾部16、すなわち、木意匠の加飾層15がクリア層28の膜厚の加飾本体部29に被覆されて光沢を放ち、豪華に見える加飾部16、を形成できる。
【0054】
したがって、実施形態のクリア層28を有した加飾品としてステアリングホイールWでは、装飾カバー10における大径部12に連なる段差部13と小径部14とを利用して、クリア層28を簡便に奇麗に形成できる。
【0055】
換言すれば、実施形態の成形方法では、分割体17をリング芯金部2の周囲に配設させて、筒状体の装飾カバー10を形成すれば、装飾カバー10における小径部14の露出部24の部位を、支持部位として、型開きしたクリア層成形型45にセットできることから、位置精度良く、リング芯金部2を覆った装飾カバー10をキャビティ45a内に配置させることができ、成形するクリア層28の加飾本体部29の膜厚を薄くしても、均等な厚さでクリア層28の加飾本体部29を成形することができる。
【0056】
勿論、クリア層28自体も、気密性を確保できるような進入穴部位の無い筒状体、すなわち、加飾層15を含めた大径部12から段差部13を経た小径部14の露出部24までのリング芯金部2の周囲で連なった筒状体、の外周側に成形されることから、成形材料M2がリング芯金部2側に進入して成形圧を低下させることが防止され、気泡を発生させずに、型成形(実施形態では反応射出成形)によって、簡便かつ奇麗に形成することができる。
【0057】
したがって、実施形態の成形方法では、装飾カバー10における大径部12に連なる段差部13と小径部14とを利用して、加飾品としてのステアリングホイールWに設けるクリア層28の加飾本体部29を簡便に奇麗に形成できる。
【0058】
また、実施形態のステアリングホイールWでは、装飾カバー10の大径部12とリング芯金部2との間に、リング芯金部2と装飾カバー10とに接触可能として装飾カバー10を支持可能なスペーサ7が、配設されている。
【0059】
そのため、実施形態では、ステアリングホイールWにおけるリング芯金部2の外周から離れて装飾カバー10の大径部12が配設されても、スペーサ7を介在させて、大径部12がリング芯金部2に支持可能となることから、装飾カバー10(大径部12)のリング芯金部2に対する位置ずれ(ぶれ)や凹みを防止できる。
【0060】
そして、実施形態の成形方法では、スペーサ7を、別途、リング芯金部2に組み付けて配設するのではなく、型成形により、リング芯金部2に周囲に配設させており、容易に、スペーサ7をリング芯金部2の周囲に配設することができる。
【0061】
また、実施形態では、芯材を、車両用のステアリングホイールWの操舵時に把持するリング部Rの棒状として円環状に連なって構成されるリング芯金部2とし、そのリング部Rの平面周方向にかけて、加飾層15を木意匠とした装飾カバー10と、外表面側に皮革部36を設けてなるカバー部材35と、を配設させて、加飾品を、皮巻きのステアリングホイールWとして例示している。
【0062】
そして、加飾品としての皮巻きステアリングホイールWにおいて、実施形態では、装飾カバー10の小径部14の外表面側に、皮革部36の端部36aを支持する支持部32と、支持部32と大径部12との間に配置されて皮革部36の端末36bを嵌め込む木目込み溝31と、を設けてなる延設部30が、クリア層28の成形材料M2を延設させるように、型成形により形成されている。
【0063】
そのため、実施形態では、皮革部36の端末36bを木目込み溝31に嵌め込むことができることから、皮革部36の端末処理を奇麗に行うことができる。
【0064】
そしてまた、実施形態の成形方法では、延設部30をクリア層28の成形時に同時に成形できることから、リング芯金部2の周囲に、延設部を、手間無く容易に、所定の位置に配置させることができて、皮巻きステアリングホイールWを容易に製造することができる。
【0065】
また、実施形態では、加飾品として、皮巻きのステアリングホイールWを例示したが、加飾品としては、ステアリングホイールWに限定されるものではなく、型成形により形成するクリア層を有した製品であればよい。そして、例えば、図15〜17に示すように、加飾品としては、把持部51の外表面に型成形により形成される透明ウレタンからなるクリア層78を設けたアシストグリップAGでもよい。
【0066】
このアシストグリップAGは、U字形状として、把持部51と、把持部51の両端から延びる二つの腕部52と、を備えて構成され、腕部52,52の先端に、車室内のルーフサイドレール等のボディ側に取付可能な取付部52aが設けらて構成されている。
【0067】
把持部51は、剛性を有した四角パイプ状の金属若しくは硬質の合成樹脂からなる芯材55と、芯材55の周囲を囲む四角パイプ状の装飾カバー60と、装飾カバー60の外表面を覆うクリア層78と、装飾カバー60の両端の小径部64の周囲に配置されるカバー部材85と、を備えて構成される。装飾カバー60は、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂製のベース部61と、ベース部61の大径部62の外表面に貼着される木意匠を表出させたシート材(加飾層)65と、から構成される。
【0068】
ベース部61は、太い断面四角環状とした大径の大径部62と、大径部62の左右両端で芯材55側に接近する段差部63,63と、段差部63と連なって大径部62から離れるように延設される細い断面四角環状の小径の小径部64,64と、を備えて構成され、大径部62の外表面に加飾層65が配設されている。
【0069】
そして、装飾カバー60は、二つに分割される分割体67(67A,67B)から構成され、分割体67A,67B相互を接着されば、芯材55の断面周方向で連なった四角筒状体を形成することができる。
【0070】
クリア層78は、大径部62の加飾層65の外周を覆う加飾本体部79と、段差部63を経た小径部64の外周を覆う延設部80と、から構成される。延設部80は、小径部64,64の端末側を被覆せずに、露出部74を設けて、小径部64,64を被覆している(図17参照)。
【0071】
カバー部材85は、小径部64の周囲における腕部52との間に嵌合される四角環状の光沢を有した金属環86と、把持部51の両側から延びる腕部52,52自体と、から構成される。腕部52,52は、把持部51の端部の嵌合部52bを、芯材55に嵌合して接着させることにより、金属環86とともに、小径部64の周囲や端末を覆うカバー部材85を構成する。
【0072】
このアシストグリップAGでも、装飾カバー60を構成する分割体67を、芯材55の断面周方向で、芯材55を覆うように配設させれば、芯材55の周囲で筒状体となる。そして、クリア層78は、大径部62から段差部63を経た小径部64の露出部74までの外表面に形成されることから、小径部64の露出部74の縁が見切り76となり、露出部74の部位がクリア層成形型の支持部位となって、クリア層成形型のキャビティ部位で、配置位置精度よく、装飾カバー60がセット可能となる。また、その成形型のキャビティ部位では、装飾カバー60の大径部62から段差部63を経た小径部64,64までが、芯材55の断面周方向で連なった筒状体を形成することから、芯材55側にクリア層78の成形材料が進入する隙間が無く、成形時における成形圧の低下を招かないため、気泡が発生せずに、奇麗にクリア層78を成形できる。
【0073】
また、露出部74は、カバー部材85で覆われることから、クリア層78が設けられなくとも、加飾品としてのアシストグリップAGの意匠性を低下させない。
【0074】
そして勿論、クリア層78が、マスキングが必要なディッピング方式やスプレー塗布方式と相違し、マスキングしたりそのマスキング材を外す手間が不要な型成形により形成できることから、手間無く、かつ、膜厚も一定にできて、高品質の奇麗な加飾部66を形成でき、実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0075】
なお、このアシストグリップAGでは、クリア層78を成形した後、小径部64,64の周囲に金属環86,86を嵌めて、腕部52,52の嵌合部52bを把持部51の芯材55に、接着させつつ嵌め込めば、製造することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…(芯材)ステアリングホイール芯金、2…(芯材)リング芯金部、7…スペーサ、10…装飾カバー、11…ベース部、12…大径部、13(13L,13R)…段差部、14(14L,14R)…小径部、15…加飾層、17(17U,17D)…分割体、24(24L,24R)…露出部、28…クリア層、29…加飾本体部、30…延設部、31…木目込み溝、32…支持部、35…カバー部材、36…皮革部、36a…端部、36b…端末、45…(クリア層)成形型、45a…キャビティ、
W…(加飾品)皮巻きステアリングホイール、
55…芯材、60…装飾カバー、61…ベース部、62…大径部、63…段差部、64…小径部、65…加飾層、67(67A,67B)…分割体、74…露出部、78…クリア層、79…加飾本体部、80…延設部、85…カバー部材、M2…(クリア層用)成形材料、
AG…(加飾品)アシストグリップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
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図17