(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材と、該透明基材上に形成された第1電極と、該第1電極上に形成されかつ発光層を含む有機化合物層と、該有機化合物層上に形成されかつ銀又は銀を主成分とする銀合金で形成された第2電極とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子を複数有し、該複数の有機エレクトロルミネッセンス素子の各透明基材を同じ側に向けて配列した有機エレクトロルミネッセンス素子群と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子群の前記透明基材側の面において、互いに隣り合う複数の前記有機エレクトロルミネッセンス素子間の継ぎ目部分を含む領域に設けられた光取り出し部材とを備え、
前記光取り出し部材が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子群の前記透明基材側の面において、互いに隣り合う複数の前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光領域間に形成される非発光領域に対応する領域の全域に渡って形成されている
面状発光体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る面状発光体の構成例を、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0015】
<1.第1の実施形態>
[面状発光体の構成]
図1A〜1Cに、本発明の第1の実施形態に係る面状発光体の概略構成図を示す。なお、
図1Aは、第1の実施形態に係る面状発光体の光取り出し面(発光面)の概略平面図である。また、
図1Bは、
図1A中のa−a断面図(図中のX方向に沿う断面図)であり、
図1Cは、
図1A中のb−b断面図(図中のY方向に沿う断面図)である。さらに、本実施形態では、4枚の有機EL素子10(以下、発光パネル10という)を2行×2列の形態で配列(タイリング)した面状発光体1を例に挙げ説明する。なお、発光パネル10の枚数や配列形態は、例えば用途等の条件に応じて適宜設定される。
【0016】
面状発光体1は、4枚の発光パネル10からなる有機EL素子群と、支持基板11と、各発光パネル10を支持基板11上に固定するための接着部材12と、4枚の発光パネル10間の継ぎ目部分に設けられた光取り出し部材13とを備える。なお、本実施形態の面状発光体1はボトムエミッション型の面状発光体であり、各発光パネル10で発生した光(以下、発光光hという)は、各発光パネル10の後述する透明基板21側の面21a(以下、光取り出し面21aという)から取り出される。
【0017】
本実施形態の面状発光体1では、互いに隣り合う4枚の発光パネル10間において、各発光パネル10の後述する透明基板21の側面同士が互いに接するように、4枚の発光パネル10を支持基板11上に配列する。この際、各発光パネル10の後述する封止材25側の面が、接着部材12を介して大型の支持基板11上に固定される。また、この際、配列された4枚の発光パネル10の光取り出し面(透明基板21側の面)が、互いに面一となるように、4枚の発光パネル10を支持基板11に取り付ける。ここで、支持基板11、接着部材12及び光取り出し部材13の各構成をより具体的に説明する。なお、発光パネル10の詳細な説明は後述する。
【0018】
(1)支持基板
支持基板11は、4枚の発光パネル10を、接着部材12を介して搭載した際に、その状態を保持可能な板状部材であれば、任意の板状部材で構成することができる。また、本実施形態では、発光光hを支持基板11側から取り出さないので、支持基板11は、光透過性を有する材料で形成する必要はなく、任意の材料で形成することができる。
【0019】
なお、面状発光体1をフレキシブルに屈曲する構成とする場合には、支持基板11を、屈曲性を有する可撓性基板で構成する。このような可撓性基板としては、例えば樹脂フィルムや、板厚が0.01mm〜0.50mm程度のガラス基板などを用いることができる。
【0020】
(2)接着部材
本実施形態では、各種工業分野において、粘着剤、接着剤等、又は、粘着材、接着材等の呼称で用いられる接着部材のうち、支持基板11又は封止材25上に塗布して、発光パネル10と支持基板11とを貼り合わせた後に、種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造体を形成する硬化型の接着部材12を用いる。すなわち、接着部材12は、紫外線のような光を照射するか、熱を加えるか、又は、加圧することによって接着部分が硬化する材料で形成される。
【0021】
上述のような物性を備えた接着部材12としては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、フッ素含有系、水性高分子−イソシアネート系、アクリル系等の硬化型接着剤、湿気硬化ウレタン接着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性接着剤、シアノアクリレート系の瞬間接着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間接着剤等の接着剤が挙げられる。
【0022】
(3)光取り出し部材
光取り出し部材13は、入射した光を透過させて放出する機能を有するシート状、フィルム状、板状、又は、膜状の光学部材(光学シート)で構成される。以下、光取り出し部材13の配置形態及び構成を詳細に説明する。
【0023】
光取り出し部材13は、透明基板21の光取り出し面21aにおいて、4枚の発光パネル10間の継ぎ目部分及びその付近の領域に設けられる。具体的には、
図1Aに示すように、光取り出し面21aにおいて、光取り出し部材13を、4枚の発光パネル10の発光領域SA間の領域、すなわち、互いに隣接する4枚の発光パネル10間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBに形成する。
【0024】
この際、本実施形態では、光取り出し面21a側から見て、平面視で、発光領域SAと重ならない領域に光取り出し部材13を形成する。なお、本実施形態では、発光領域SA間の非発光領域SBの50%以上の領域を光取り出し部材13で覆うことが好ましい。特に、
図1Aに示すように、発光領域SA間の非発光領域SB全体に渡って光取り出し部材13を形成することが好ましい。すなわち、発光領域SA間の非発光領域SBの100%の領域を光取り出し部材13で覆うことが好ましい。
【0025】
また、本実施形態では、透明基板21の光取り出し面21aにおいて、面状発光体1の外周端領域に形成される非発光領域SBには、光取り出し部材13を形成しない例を示すが、本発明はこれに限定されない。面状発光体1の外周端領域に形成される非発光領域SBにもまた、光取り出し部材13を設けてもよい。この場合にも、光取り出し面21a側から見て、平面視で、発光領域SAと重ならないように光取り出し部材13を形成する。
【0026】
上述のような形態で配置される光取り出し部材13は、光拡散シートや集光シートなどで構成される。光拡散シートとしては、従来、一般的に用いられている光拡散シートを用いることができる。例えば、シート表面に凹凸が形成された光拡散シートを用いることができる。
【0027】
また、集光シートとしては、プリズムシートと呼ばれる一般的な集光シートを用いることができ、例えば、液晶表示装置のLED(Light Emitting Diode)バックライト用に実用化されている集光シートを用いることができる。なお、集光シートとしては、例えば、頂角が90度であり、かつ、断面形状が三角形状である複数のストライプが、シート基材上にピッチ50μmで形成されたシートを用いることができる。なお、集光シートの表面の凹凸形状としては、様々な形状を適用することができ、例えば用途、必要とする集光特性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、集光シートの表面の凹凸形状が、ストライプの頂角が丸みを帯びた形状(断面形状が略三角形状)であってもよいし、ストライプのピッチをランダムに変化させた形状であってもよい。
【0028】
光取り出し部材13の構成は、上述した光拡散シートや集光シートなどを複数積層した構成であってもよい。この場合には、光取り出し部材13から取り出される発光光hの放射角(光取り出し角度)を調整することができる。例えば、複数の光拡散シートを積層した場合や集光シートの光取り出し面上に光拡散シートを積層した場合には、広い角度範囲に渡って発光光hを取り出すことができる。一方、例えば、複数の集光シートを積層した場合や光拡散シートの光取り出し面上に集光シートを積層した場合には、発光面から狭い角度範囲で発光光hを取り出すことができる。なお、光取り出し部材13に集光シートを用いる場合には、集光シートを構成するプリズムのストライプの形状やピッチを調整することにより、放射角を制御することもできる。なお、ある特定方向に取り出される光量が増える後者の場合(放射角が狭い場合)には、該方向における輝度が高くなるので、本発明を適用するアプリケーションに応じて、前者(放射角が広い場合)及び後者のいずれかを選択することができる。
【0029】
また、光取り出し部材13は、図示しない接着剤により、透明基板21に取り付けられる。なお、この接着剤は、高い光透過性を有することが好ましい。さらに、この接着剤は、透明基板21の屈折率と同程度の屈折率を有していてもよい。
【0030】
[面状発光体の作製手法]
次に、本実施形態の面状発光体1の作製手法を簡単に説明する。まず、透明基板21上に、陽極22、有機発光機能層23及び陰極24を形成する。また、この際、透明基板21上に、陰極引き出し電極24aも形成する。次いで、陽極22及び陰極24の各引き出し電極部分を露出させた状態で、かつ、少なくとも有機発光機能層23を完全に覆うように、封止材25を陰極24の上部に設ける。これにより、発光パネル10が得られる。
【0031】
次いで、4枚の発光パネル10を、支持基板11上に配列する。具体的には、接着部材12を介して、4枚の発光パネル10を支持基板11上に、2行×2列の形態でタイリングして貼り合わせる。この際、各発光パネル10の封止材25側の面を、接着部材12を介して、支持基板11上に貼りつける。また、この際、互いに隣り合う4枚の発光パネル10間では、対向する透明基板21の側面同士を接触させてタイリングする。
【0032】
そして、発光パネル10の光取り出し面21aの面内において、4枚の発光パネル10の発光領域SA間の非発光領域SBに、発光領域SAと重ならないようにして、光取り出し部材13を接着剤(不図示)により貼りつける。また、必要に応じて、各発光パネル10間において、各電極膜の引き出し電極を接続させる。本実施形態では、このようにして、面状発光体1を作製する。
【0033】
なお、光取り出し部材13は、発光パネル10毎に独立して設けてもよい。この場合には、各発光パネル10の透明基板21の光取り出し面21aにおいて、発光パネル10の継ぎ目側に配置される非発光領域SB上に光取り出し部材13を設けた後、光取り出し部材13を設けた発光パネル10を支持基板11上にタイリングする。
【0034】
なお、各発光パネル10の電気的な接続手法は、それぞれ独立に(並列に)駆動するように接続してもよい。この場合には、各発光パネル10に印加される電圧が一定になるので、発光パネル10間の特性ばらつきが小さくなる。
【0035】
また、互いに隣接する発光パネル10間において、各発光パネル10を直列に接続してもよい。さらに、4枚以上の発光パネル10を2次元状(2行×2列以上)にタイリングする場合には、一方の配列方向の発光パネル10間を直列で接続し、他方の配列方向の発光パネル10間を並列で接続してもよい。このように、複数の発光パネル10間において、直列に接続する部分を設けた場合には、面状発光体1の小型化を図ることができる。なお、互いに隣接する発光パネル10を直列接続する場合には、互いに隣接する複数の発光パネル10間の継ぎ目部分に露出した引き出し電極同士を例えば導電性テープで接続する。
【0036】
さらに、本実施形態の面状発光体1では、大型の支持基板11を用いて複数の発光パネル10を支持する構成例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、互いに隣り合う複数の発光パネル10間において、対向する透明基板21の側壁同士を接着剤で接合してもよい。この場合には、接着剤を発光パネルの支持部材として用いることができ、大型の支持基板11を別途設けなくてもよい。
【0037】
[発光パネルの全体構成]
次に、発光パネル10の構成をより詳細に説明する。
【0038】
発光パネル10は、
図1Bに示すように、透明基板21(透明基材)と、陽極22(第1電極)と、有機発光機能層23(有機化合物層)と、陰極24(第2電極)と、陰極引き出し電極24aと、封止材25とを備える。
【0039】
本実施形態では、透明基板21の光取り出し面21aとは反対側の面(膜積層面)上に、陽極22、有機発光機能層23及び陰極24をこの順で積層する。すなわち、透明基板21上において、陽極22及び陰極24は、有機発光機能層23によって互いに絶縁性が保たれた状態で配置される。また、陰極引き出し電極24aは、透明基板21の膜積層面において、陽極22と異なる領域形成され、該陰極引き出し電極24a上に陰極24の一部が形成される。これにより、陰極24が陰極引き出し電極24aに電気的に接続される。
【0040】
また、発光パネル10では、封止材25は、透明基板21の陰極24側の表面を覆うように形成される。なお、この際、封止材25は、少なくとも有機発光機能層23を覆うように形成される。また、本実施形態では、
図1Bに示すように、陽極22及び陰極24の引き出し電極部分が露出した状態となるように、封止材25を形成する。なお、
図1B及び1Cに示すように、本実施形態では、陽極22の引き出し電極部分22a及び陰極引き出し電極24aは、
図1A中のX方向と直交する各発光パネル10の一対の辺部付近にそれぞれ設けられる。
【0041】
発光パネル10は、有機材料のエレクトロルミネッセンスを利用した素子(有機EL素子)であり、上述のように、陽極22と陰極24との間に有機発光機能層23が挟持された構造を有する。なお、有機発光機能層23は、後述のように、少なくとも発光層を備えた有機材料層であり、陽極22から注入された正孔と、陰極24から注入された電子とが、発光層において再結合することにより発光光hが生じる。
【0042】
そして、本実施形態では、有機発光機能層23において発生した発光光hを、透明基板21の側から外部に取り出す。それゆえ、透明基板21側に配置される陽極22は、透明電極で構成される。一方、陽極22の対向電極となる陰極24は、反射電極(金属膜)で構成される。なお、本実施形態では、陰極24を、銀、又は、銀を主成分とした銀合金で形成し、反射率の高い反射電極で構成する。
【0043】
また、本実施形態の発光パネル10では、有機発光機能層23の劣化を防止するために、透明基板21の陰極24側の表面を封止材25で封止する。それゆえ、透明基板21の膜積層面の周縁には、発光パネル10を封止するためのスペースを設ける必要があり、有機発光機能層23は、透明基板21の中央に配置される。
【0044】
上記構成の発光パネル10では、透明基板21上において、陽極22と陰極24とにより有機発光機能層23が挟持された部分のみが、発光領域SAとなる。これに対して、透明基板21上において、発光領域SAの周囲領域は非発光領域SBとなる。
【0045】
以下、発光パネル10の各部及び各層の構成をより具体的に説明する。
【0046】
[透明基板]
透明基板21は、各種電極膜及び有機発光機能層23を支持する基板である。本実施形態では、有機発光機能層23で生じた発光光hを透明基板21の側から取り出すので、透明基板21は、可視光に対して高い光透過性を有する材料で形成される。例えば、透明基板21としては、ガラス基板、石英基板、透明樹脂フィルム等の板状部材を用いることができる。
【0047】
このうち、透明樹脂フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルを用いることができる。また、透明樹脂フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン等の材料を用いることができる。さらに、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類、又は、それらの誘導体を、透明樹脂フィルムの形成材料として用いることができる。
【0048】
また、透明樹脂フィルムの形成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、ポリアリレート類等の材料を用いることができる。さらに、例えば、アートン(登録商標:JSR社製)、又は、アペル(登録商標:三井化学社製)と呼ばれるシクロオレフィン系樹脂を、透明樹脂フィルムの形成材料として用いることもできる。
【0049】
透明基板21を透明樹脂フィルムで構成した場合、発光パネル10内への例えば水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、透明樹脂フィルムの表面に、無機材料からなるバリア膜、有機材料からなるバリア膜、又は、これらのバリア膜を積層したハイブリッド膜を設けてもよい。
【0050】
なお、上記バリア膜は、水蒸気透過度(測定環境:40℃、相対湿度90%RH)が、0.01g/(m
2・24h)以下となるようなバリア性フィルムであることが好ましい。また、バリア膜は、酸素透過度(測定環境:20℃、相対湿度100%RH)が10
−3cm
3/(m
2・24h・atm)以下であり、かつ、水蒸気透過度が10
−3g/(m
2・24h)以下となるような高バリア性フィルムであることが好ましい。さらに、バリア膜の水蒸気透過度が10
−5g/(m
2・24h)以下であり、かつ、酸素透過度が10
−5cm
3/(m
2・24h・atm)以下であることが特に好ましい。なお、本明細書でいう「水蒸気透過度」は、JIS−K−7129−1992に準拠した手法で測定された値であり、「酸素透過度」は、JIS−K−7126−1992に準拠した手法で測定された値である。
【0051】
上述した特性を有するバリア膜としては、例えば、酸化珪素膜、二酸化珪素膜、窒化珪素膜等の無機材料膜を用いることができる。さらに、バリア膜の脆弱性を改良するために、該無機材料膜と有機材料膜とを積層したハイブリッドバリア膜をバリア膜として用いてもよい。この場合、無機材料膜と有機材料膜との積層順は任意であるが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0052】
また、バリア膜の形成手法としては、バリア膜を透明基板21(透明樹脂フィルム)上に形成できる手法であれば任意の手法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法(特開2004−68143号公報参照)、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等の手法を用いることができる。なお、本実施形態では、特に、大気圧プラズマ重合法を用いることが好ましい。
【0053】
[陽極]
陽極22は、有機発光機能層23に正孔を供給する電極膜であり、正孔注入機能を発現し得る程度の大きな仕事関数(例えば4eV以上)を有する導電性材料で形成することができる。このような導電性材料としては、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物、及び、これらの混合物が用いられる。ただし、本実施形態では、陽極22の側から発光光hを取り出すので、光透過性を有する導電性材料を用いて陽極22を形成する。
【0054】
具体的には、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、酸化インジウムスズ(SnO
2−In
2O
3:ITO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の光透過性を有する導電性材料で陽極22を形成することができる。また、酸化インジウム亜鉛(In
2O
3−ZnO:例えばIDIXO(登録商標:出光興産社製))等の非晶質の透明電極材料で陽極22を形成することもできる。
【0055】
また、陽極22のシート抵抗は、数百Ω/sq.以下であることが好ましい。さらに、陽極22の膜厚は、形成材料に応じて適宜設定され、通常、約10〜1000nm、好ましくは約10〜200nmの範囲で設定される。
【0056】
上記構成の陽極22は、例えば蒸着やスパッタリングなどの手法により、透明基板21上に形成することができる。また、この際、フォトリソグラフィー技術等を用いて、陽極22を所望のパターン形状で形成してもよい。なお、陽極22において、パターン形状の精度を必要としない場合(精度が100μm以上程度の場合)には、陽極22を例えば蒸着やスパッタリングなどの手法により形成する際に、所望のパターン形状が形成されたマスクを介して、所望パターンの陽極22を透明基板21上に形成してもよい。
【0057】
また、有機導電性化合物のように塗布可能な導電性材料を用いて陽極22を形成する場合には、印刷方式、コーティング方式等の湿式成膜法を用いることができる。
【0058】
[陰極及び陰極引き出し電極]
陰極24は、有機発光機能層23に電子を供給する電極膜であり、本実施形態では、銀(Ag)、又は、銀を主成分とする銀合金により形成される。より好ましくは、陰極24は、銀、又は、銀含有量が90原子パーセント以上の銀合金により形成される。さらに好ましくは、陰極24は、銀、又は、銀含有量が95原子パーセント以上の銀合金により形成される。
【0059】
また、銀合金に含まれる金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、ネオジム(Nd)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)等を用いることができる。なお、銀合金には、これらの金属のうち、一種類の金属だけが含まれていてもよいし、複数種の金属が含まれていてもよい。
【0060】
陰極24は、有機発光機能層23で発生した発光光hをロス無く光取り出し面21aの側に反射させることが重要である。それゆえ、反射効率の観点では、陰極24の厚さは、60nm以上であることが好ましく、さらに、100nm以上であることが好ましい。
【0061】
上記構成の陰極24は、例えば蒸着やスパッタリング等の手法により形成することができる。なお、陰極24が銀合金の場合、陰極24の形成手法としては、例えば銀と含有させる金属とをそれぞれ別のボートに充填して多元蒸着する手法、又は、銀合金のターゲットを用いてスパッタリングする手法等を採用することができる。また、陰極24を所定のパターンで形成する場合には、上述した陽極22のパターン形成手法と同様の手法を採用することができる。
【0062】
また、陰極引き出し電極24aは、陽極22と同様に、透明基板21の膜積層面上に形成されるので、陽極22と同様の材料で形成することができる。特に、陰極引き出し電極24aの形成材料を陽極22のそれと同一にすることが好ましく、この場合には、陽極22と同時に、陰極引き出し電極24aを形成することができるので、発光パネル10の作製プロセスがより簡易になる。
【0063】
[有機発光機能層]
図2に、発光パネル10における有機発光機能層23の一構成例を示す。なお、
図2は、有機発光機能層23付近の概略断面図であり、説明の便宜上、陽極22及び陰極24も一緒に示す。
【0064】
図2に示す例では、有機発光機能層23は、発光層23aと、発光層23aの陽極22側に設けられた正孔輸送層23bと、発光層23aの陰極24側に設けられた電子輸送層23cとを備える。
【0065】
このような構成の有機発光機能層23では、陽極22から正孔輸送層23bを介して発光層23aに正孔が注入され、陰極24から電子輸送層23cを介して発光層23aに電子が注入される。そして、注入された正孔と、注入された電子とは発光層23aにおいて再結合することにより発光が生じる。発光層23aで発生した発光光hは、陽極22から外部に取り出される。以下に、有機発光機能層23を構成する各層について、より詳細に説明する。
【0066】
(1)発光層
発光層23aは、陽極22から供給された正孔と、陰極24から供給された電子とが再結合して発光光hを発生する層である。このような発光層23aは、ホスト材料及び発光性を有するゲスト材料(発光ドーパント化合物ともいう)を含有する。なお、発光層23a内では、ゲスト材料において発光させることにより、発光効率を高めることができる。
【0067】
また、発光層23aは、一層で構成してもよいし、互いに発光色(波長領域)の異なる複数の発光層を積層した構成にしてもよい。後者の場合には、各発光色間に中間層を設けてもよい。なお、中間層は、正孔阻止層または電子阻止層として機能させてもよい。
【0068】
ホスト材料としては、公知のホスト材料を用いることができ、その際、公知のホスト材料を単独で用いてもよいし、複数種のホスト材料を併用して用いてもよい。ホスト材料を複数種用いた場合には、発光層23a内における電荷の移動を調整することができ、発光パネル10の発光効率を高めることができる。また、後述する発光材料(ゲスト材料)を複数種用いることで互いに波長の異なる複数の発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0069】
このようなホスト材料としては、従来公知の低分子化合物を用いてもよいし、繰り返し単位をもつ高分子化合物を用いてもよい。例えば、ビニル基、エポキシ基等の重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)を、ホスト材料として用いてもよい。
【0070】
また、公知のホスト材料としては、正孔及び電子(キャリア)の輸送を担う物質であり、正孔輸送機能及び電子輸送機能を有し、発光の長波長化を防止する機能を有し、かつ、高ガラス転移点(Tg)を有する化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書でいう、「ガラス転移温度(Tg)」とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量)法を用いて、JIS−K7121に準拠した手法により求められる値である。
【0071】
それゆえ、ホスト材料としては、上述したように正孔輸送機能及び電子輸送機能、すなわち、キャリア輸送機能を有する材料を用いることが好ましい。しかしながら、一般には、有機材料のキャリア輸送機能(キャリア移動度)は電界強度に依存するので、電界強度依存性の高い材料では、正孔及び電子の注入・輸送のバランスが崩れやすい。このため、ホスト材料としては、キャリア移動度の電界強度依存性が小さい材料を用いるか、又は、電界強度依存性が同程度の材料を複数組み合わせて用いることが好ましい。この場合、発光パネル10における発光色のばらつきを最小限に抑えることができる。
【0072】
また、ホスト材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有する材料、又は、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す)などを用いることができる。
【0073】
なお、互いに発光色の異なる複数の発光層を、中間層を介して設ける構成では、中間層もまた、上記ホスト材料の性質と同様の性質を有する。それゆえ、中間層を構成する材料として、上述した物性を有する材料を用いることにより、発光パネルにおける発光色のばらつきを最小限に抑えることができる。
【0074】
一方、ゲスト材料としては、燐光発光材料(燐光性ドーパント)及び蛍光発光材料(蛍光性ドーパント)を用いることができ、特に、燐光発光材料を用いることが好ましい。また、複数のゲスト材料を混合してもよいし、燐光発光材料と蛍光発光材料とを同一の発光層23a中に混合してもよい。
【0075】
燐光発光材料は、燐光性化合物又は燐光発光性化合物とも言い、一般に、有機EL素子の発光層に使用される公知の材料の中から適宜選択して用いることができる。その中でも、燐光発光材料として、元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物を用いることが好ましく、さらには、イリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体を用いることが好ましい。そして、特に、燐光発光材料として、イリジウム化合物(イリジウム錯体)を用いることが好ましい。
【0076】
また、蛍光発光材料としては、例えば、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は、希土類錯体系蛍光体等の材料が挙げられる。
【0077】
上述のような発光性を有するゲスト材料は、一つの発光層23aに2種以上、含有されていてもよいし、発光層23a内のゲスト材料の濃度比が発光層23aの厚さ方向において変化していてもよい。
【0078】
以上説明したような、ホスト材料及びゲスト材料を用いて構成される発光層23a及び中間層は、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir Blodgett)法、インクジェット法、印刷法等の公知の薄膜成膜法によって形成することができる。
【0079】
(2)正孔輸送層,電子輸送層
陽極22及び発光層23a間、並びに、陰極24及び発光層23a間にそれぞれ設けられた正孔輸送層23b、並びに、電子輸送層23cは、発光層23aとの組み合わせを考慮して、従来公知の材料で形成することができる。
【0080】
(3)その他の構成層
本実施形態では、有機発光機能層23の層構成は、
図2に示す構成例に限定されず、従来から一般的に知られている任意の層構成を適用することができる。なお、有機発光機能層23は、少なくとも発光層23aを有する構成であれば、任意に構成することができる。
【0081】
例えば、陽極22と正孔輸送層23bとの間に正孔注入層を設け、陰極24と電子輸送層23cとの間に電子注入層を設けてもよい。さらに、正孔阻止層や電子阻止層等を必要に応じて適宜設けてもよい。なお、各種注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために設けられ、その形成材料としては、例えば「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている材料を適宜用いることができる。
【0082】
また、各電極膜(陽極22及び陰極24)の構造も、必要に応じて、多層構造にしてもよい。さらに、
図1A〜1Cには、透明基板21上に、陽極22、有機発光機能層23及び陰極24をこの順で形成した例を示したが、これらの層の積層順序を逆にしてもよい。
【0083】
(4)発光パネルの作製手法の一例
ここで、
図1A〜1Cに示す本実施形態の発光パネル10の素子本体部(透明基板21、有機発光機能層23及び各種電極膜)の作製手法の一例を説明する。
【0084】
まず、透明基板21の膜積層面上に、例えば蒸着法やスパッタリング等の手法により、陽極用物質からなる薄膜を積層して、陽極22を形成する。この際、陽極22の膜厚は、1μm以下、好ましくは、約10nm〜200nmの膜厚に設定する。また、この際、本実施形態では、透明基板21の膜積層面上において、陰極引き出し電極24aを陽極22と異なる領域に形成する。なお、陰極引き出し電極24aの膜構成は、陽極22の膜と同様の構成とし、陰極引き出し電極24aを陽極22と同時に形成することが好ましい。
【0085】
次いで、陽極22上に、有機発光機能層23を形成する。具体的には、陽極22上に、正孔輸送層23b、発光層23a及び電子輸送層23cの各有機化合物薄膜をこの順で成膜して、有機発光機能層23を形成する。
【0086】
なお、各有機化合物薄膜の成膜手法としては、上述したように、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、印刷法等を用いることができる。これらの手法の中でも、蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法を用いることが特に好ましい。これらの手法で各有機化合物薄膜を成膜した場合、例えば、均質な膜が得られ易い、ピンホールが生成され難い等の利点が得られる。なお、有機発光機能層23の形成工程において、全ての有機化合物薄膜を同じ成膜法で形成してもよいし、有機化合物薄膜毎に成膜法を変更してもよい。
【0087】
また、有機化合物薄膜の成膜法として蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する有機化合物の種類等の条件に応じて適宜設定される。具体的には、ボート加熱温度を約50℃〜450℃、真空度を約10
−6Pa〜10
−2Pa、蒸着速度を約0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度を約−50℃〜150℃、そして、膜厚を約0.1nm〜5μm(好ましくは5nm〜200nm)の各範囲からそれぞれ適宜選択して、蒸着条件を設定することが好ましい。
【0088】
上述のようにして有機発光機能層23を形成した後、有機発光機能層23上に、例えば蒸着法やスパッタリング等の手法により、銀又は銀を主成分とする銀合金からなる薄膜を積層して、陰極24を形成する。この際、陰極24の膜厚は、1μm以下、好ましくは、約60nm〜300nmの膜厚に設定する。また、この際、陰極24は、有機発光機能層23を介して陽極22に対して絶縁状態を保ちつつ、陰極引き出し電極24aと電気的に接続されるようなパターン形状で形成される。
【0089】
本実施形態では、上述のようにして、透明基板21上に有機発光機能層23及び各種電極膜を形成する。なお、上述した作製手法では、同じ成膜装置内で、一回の真空引きで一貫して陽極22、有機発光機能層23及び陰極24を形成するのが好ましいが、本発明はこれに限定されない。成膜工程毎に基板部材を成膜装置から取り出して、異なる成膜法を施して有機発光機能層23及び各種電極膜を形成してもよい。なお、その場合には、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0090】
[封止材]
封止材25は、発光パネル10の素子本体部(透明基板21、有機発光機能層23及び各種電極膜)を覆う部材である。本実施形態では、陽極22及び陰極24の引き出し電極部分を露出させた状態で、封止材25により、素子本体部を封止する。
【0091】
封止材25は、板状(フィルム状)の封止部材で構成することができる。この場合、封止材25として、一方の面に凹部が形成された略板状基材、すなわち、凹板状の封止部材を用いてもよいし、面が平坦な板状基材、すなわち、平板状の封止部材を用いてもよい。なお、板状(凹板状又は平板状)の封止材25は、間に素子本体部を挟んで、透明基板21と対向する位置に配置される。
【0092】
封止材25としては、例えば、ガラス板、ポリマー板、金属板等の透明基板を用いることができる。なお、ガラス板としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等の材料で形成された基板を用いることができる。また、ポリマー板としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等の材料で形成された基板を用いることができる。さらに、金属板としては、例えば、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金で形成された基板を用いることができる。
【0093】
なお、発光パネル10の薄型化という観点では、封止材25としてポリマー板、金属板等を用いることが好ましい。また、ポリマー板としては、酸素透過度が10
−3cm
3/(m
2・24h・atm)以下であり、かつ、水蒸気透過度が10
−3g/(m
2・24h)以下である基板を用いることが好ましい。さらに、ポリマー板の水蒸気透過度が10
−5g/(m
2・24h)以下であるか、又は、ポリマー板の酸素透過度が10
−5cm
3/(m
2・24h・atm)以下であることが好ましい。
【0094】
また、封止材25を凹板状の封止部材で構成する場合(缶封止する場合)、その凹部は、例えば、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等の処理により形成される。なお、封止材25を凹板状の封止部材で構成する場合、封止材25と発光パネル10の素子本体部(透明基板21、有機発光機能層23及び各種電極膜)との間の空隙に、例えば、窒素、アルゴン等の不活性気体や、フッ化炭化水素、シリコンオイル等の不活性液体を充填することが好ましい。また、封止材25と発光パネル10の素子本体部との間の空隙を真空状態にしてもよいし、空隙に吸湿性化合物を封入してもよい。
【0095】
なお、吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等を用いることができる。これらの化合物の中でも、吸湿性化合物として、硫酸塩、金属ハロゲン化物、又は、過塩素酸類を使用する場合には、無水塩を用いることが好ましい。
【0096】
また、封止材25として平板状の封止部材を用いる場合、封止材25と透明基板21との接着に用いる接着剤としては、アクリル酸系オリゴマー又はメタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化型又は熱硬化型接着剤や、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型接着剤などが挙げられる。また、エポキシ系等の熱硬化型又は化学硬化型(二液混合)接着剤を、接着剤として用いてもよい。さらに、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを、接着剤として用いてもよい。この他にも、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を、接着剤として用いてもよい。
【0097】
なお、上記各種接着剤の中でも、熱処理による発光パネル10の劣化を防止するために、室温から80℃までの温度範囲で接着硬化できるものを用いることが好ましい。また、上記各種接着剤中に乾燥剤を分散させてもよい。なお、封止部分への接着剤の塗布は、ディスペンサーを用いて行ってもよいし、スクリーン印刷により行ってもよい。
【0098】
さらに、封止材25として、封止膜を用いてもよい。膜封止の手法を用いる場合には、有機発光機能層23が封止膜で完全に覆われ、かつ、陽極22及び陰極24の引き出し電極部分が露出するように、封止膜を透明基板21上に設ける。
【0099】
このような封止膜としては、無機材料や有機材料からなる膜で構成することができる。なお、封止膜は、有機発光機能層23の劣化をもたらす、水分や酸素等の物質の浸入を抑制する機能を有する材料で形成される。このような性質を有する材料としては、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等の無機材料が挙げられる。さらに、封止膜の脆弱性を改良するために、封止膜の構造を、これらの無機材料からなる膜と、有機材料からなる膜とを積層した多層構造としてもよい。
【0100】
上述した封止膜の形成手法としては、任意の手法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等の手法を用いることができる。
【0101】
[保護膜、保護板]
図1B及び
図2には図示しないが、封止材25上に保護膜又は保護板を設けてもよい。保護膜又は保護板を設けた場合には、発光パネル10を機械的に保護することができ、発光パネル10及び面状発光体1の機械的強度の向上を図ることができる。特に、封止材25が、封止膜である場合には、発光パネル10に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜又は保護板を設けることが好ましい。
【0102】
上記構成の保護膜又は保護板としては、例えば、ガラス板、ポリマー板、ポリマーフィルム、金属板、金属フィルム、又は、ポリマー材料膜や金属材料膜などの膜を適用することができる。これらの部材のうち、特に、軽量化及び薄膜化という観点では、ポリマーフィルムを保護膜又は保護板として用いることが好ましい。
【0103】
[各種効果]
上述のように、本実施形態の面状発光体1では、2次元状に配列された複数の発光パネル10の光取り出し面21aにおいて、互いに隣接する複数の発光パネル10間の継ぎ目部分を含む非発光領域SB全面に渡って光取り出し部材13を設ける。
【0104】
この場合、各発光パネル10で発生した発光光hのうち、透明基板21の光取り出し面21aにおける全反射により、外部に放出されずに透明基板21内を伝搬する発光光hの一部は、
図1Bに示すように、透明基板21内で内部反射の繰り返しながら、光取り出し部材13が形成された非発光領域SBに到達する。そして、その発光光hの一部は、光取り出し部材13から取り出される。それゆえ、本実施形態では、互いに隣り合う発光領域SA間の非発光領域SBからも、光取り出し部材13を介して外部に発光光hの一部が取り出されるので、発光パネル10から取り出される発光光hの量が増大する。
【0105】
また、本実施形態の面状発光体1では、各発光パネル10の陰極24を銀又は銀を主成分とする銀合金で形成する。すなわち、陰極24を、高反射率の電極膜で構成する。
【0106】
すなわち、本実施形態では、互いに隣接する複数の発光パネル10間の継ぎ目部分を含む非発光領域SB(互いに隣り合う発光領域SA間の非発光領域SB)に光取り出し部材13を設け、かつ、各発光パネル10の陰極24を銀又は銀を主成分とする銀合金で形成する。このような構成にすることにより、光取り出し面21aの面内において、輝度の均一性を向上させることができる。なお、この効果については、後述の評価試験で詳細に説明する。
【0107】
また、本実施形態の面状発光体1は、複数の発光パネル10をタイリングした構成である。それゆえ、発光パネル10毎に品質検査を行い、不合格となった発光パネル10を不良品として排除することができる。すなわち、本実施形態の面状発光体1の構成では、良品の発光パネル10のみを用いて面状発光体1を作製することができる。したがって、大面積の面状発光体1を作製する際の歩留まりを向上させることができる。
【0108】
<2.第2の実施形態>
[面状発光体の構成]
図3A〜3Cに、本発明の第2の実施形態に係る面状発光体の概略構成図を示す。なお、
図3Aは、第2の実施形態に係る面状発光体の光取り出し面(発光面)側から見た概略平面図である。また、
図3Bは、
図3A中のc−c断面図(図中のX方向に沿う断面図)であり、
図3Cは、
図3A中のd−d断面図(図中のY方向に沿う断面図)である。
【0109】
なお、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、説明を簡略化するため、4枚の発光パネル30を2行×2列の形態で配列(タイリング)した面状発光体2を例に挙げ説明する。さらに、
図3A〜3Cに示す本実施形態の面状発光体2において、
図1A〜1Cに示す第1の実施形態の面状発光体1と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0110】
面状発光体2は、4枚の発光パネル30からなる有機EL素子群と、支持基板11と、各発光パネル30を支持基板11上に固定するための接着部材12と、4枚の発光パネル30間の継ぎ目部分に設けられた光取り出し部材13とを備える。なお、本実施形態の面状発光体2においても、発光パネル30で発生した発光光hは、発光パネル30の透明基板21の光取り出し面21aから取り出される。
【0111】
図3A〜3Cと
図1A〜1Cとの比較から明らかなように、本実施形態の面状発光体2において、発光パネル30以外の構成は、上記第1の実施形態の面状発光体1の対応する構成と同様である。それゆえ、ここでは、発光パネル30の構成についてのみ説明する。
【0112】
[発光パネルの構成]
発光パネル30は、透明基板21(透明基材)と、陽極22(第1電極)と、有機発光機能層23(有機化合物層)と、陰極24(第2電極)と、陰極引き出し電極24aと、封止材25と、4つの金属膜31とを備える。
【0113】
図3A〜3Cと
図1A〜1Cとの比較から明らかなように、本実施形態の発光パネル30では、上記第1の実施形態の発光パネル10において、さらに、4つの金属膜31を加えた構成である。それゆえ、ここでは金属膜31の構成についてのみ説明する。なお、本実施形態においても、発光パネル30の陰極24を、銀又は銀を主成分とする銀合金で形成する。
【0114】
4つの金属膜31は、透明基板21の光取り出し面21aとは反対側の面(膜積層面)上に形成され、面形状が正方形状の発光パネル30の4つの外周辺部付近にそれぞれ設けられる。この際、4つの金属膜31は、発光パネル30の非発光領域SBに形成される。
【0115】
そして、本実施形態では、
図3Bに示すように、金属膜31を形成する非発光領域SBに、各電極膜の引き出し電極(22a,24a)が形成されている場合には、該引き出し電極上に金属膜31を形成する。一方、
図3Cに示すように、金属膜31を形成する非発光領域SBに、各電極膜の引き出し電極が形成されていない場合には、透明基板21の膜積層面上に金属膜31を形成する。
【0116】
金属膜31は、銀、又は、銀を主成分とする銀合金で形成される。より好ましくは、金属膜31は、銀、又は、銀含有量が90原子パーセント以上の銀合金により形成される。さらに好ましくは、金属膜31は、銀、又は、銀含有量が95原子パーセント以上の銀合金により形成される。
【0117】
また、銀合金に含まれる金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、ネオジム(Nd)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)等を用いることができる。なお、銀合金には、これらの金属のうち、一種類の金属だけが含まれていてもよいし、複数種の金属が含まれていてもよい。
【0118】
また、金属膜31は、陰極24と同一材料で形成することが好ましい。この場合には、金属膜31と陰極24とを同一プロセスで同時に形成することができ、プロセスを簡便にすることができる。
【0119】
金属膜31のパターン形状は、陽極22と陰極24とを短絡させない形状であれば任意のパターン形状にし得る。なお、後述する金属膜31の作用(効果)を考慮した場合には、非発光領域SBに対する金属膜31の占める割合は大きい方が好ましく、例えば、非発光領域SBの50%以上の領域に金属膜31を設けることが好ましい。
【0120】
上記構成の金属膜31の形成手法としては、陰極24の形成手法と同様に、例えば蒸着やスパッタリング等の手法を用いるこができる。また、金属膜31を所定のパターン形状で形成する場合には、上述した陰極24のパターン形成手法と同様の手法を採用することができる。
【0121】
[金属膜の作用]
上記構成の本実施形態の面状発光体2では、上記第1の実施形態と同様に、各発光パネル30で発生した発光光hのうち、一部の発光光hは、透明基板21の光取り出し面21aにおける全反射により、外部に放出されずに透明基板21内を伝搬する。そして、光取り出し面21aで全反射された発光光hの一部は、
図3Bに示すように、透明基板21内で内部反射の繰り返しながら、光取り出し部材13が形成された非発光領域SBに到達する。
【0122】
この際、その非発光領域SBに到達した発光光hの一部は、光取り出し部材13から取り出され、残りの発光光hは、封止材25の側に透過する(漏れる)。しかしながら、本実施形態では、非発光領域SBの透明基板21の領域上には、銀又は銀を主成分とする銀合金で形成された高反射率を有する金属膜31が配置されているので、
図3Bに示すように、透明基板21から封止材25の側に漏れた発光光hは、この金属膜31で反射される。そして、金属膜31で反射した光は、光取り出し部材13側に戻り、光取り出し部材13から取り出される。それゆえ、本実施形態では、光取り出し部材13を介して外部に取り出される発光光hの量をより一層増加させることができる。
【0123】
[各種効果]
本実施形態の面状発光体2では、上述のように、各発光パネル10の透明基板21の光取り出し面21aとは反対側(封止材25側)の面において、各発光パネル10の非発光領域SBに金属膜31を設ける。これにより、該非発光領域SBにおいて、透明基板21の光取り出し面21aとは反対側の界面における発光光hの反射率を増加させ、該非発光領域SBから光取り出し部材13を介して外部に取り出される発光光hの量をさらに増加させることができる。
【0124】
また、本実施形態の面状発光体2では、上記第1の実施形態と同様に、透明基板21の光取り出し面21aにおいて、互いに隣接する複数の発光パネル30間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBに光取り出し部材13を設け、かつ、各発光パネル30の陰極24を銀又は銀を主成分とする銀合金で形成する。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、光取り出し面21aの面内において、輝度の均一性を向上させることができる。
【0125】
さらに、本実施形態の面状発光体2は、上記第1の実施形態と同様に、複数の発光パネル30をタイリングした構成である。それゆえ、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、大面積の面状発光体2を作製する際の歩留まりを向上させることができる。
【0126】
<3.第3の実施形態>
[面状発光体の構成]
図4に、第3の実施形態に係る面状発光体の概略断面構成図を示す。なお、
図4に示す本実施形態の面状発光体3において、
図1Bに示す第1の実施形態の面状発光体1と同様の構成には、同じ符号を付して示す。なお、図示しないが、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、4枚の発光パネル10を2行×2列の形態で配列(タイリング)して、面状発光体3が構成されているものとする。
【0127】
面状発光体3は、4枚の発光パネル10からなる有機EL素子群と、支持基板11と、各発光パネル10を支持基板11上に固定するための接着部材12と、4枚の発光パネル10間の継ぎ目部分に設けられた光取り出し部材13及び透明基板部材40とを備える。なお、本実施形態の面状発光体3においても、各発光パネル10で発生した発光光hを発光パネル10の透明基板21の光取り出し面21aから取り出す。また、本実施形態においても、各発光パネル10の陰極24を、銀又は銀を主成分とする銀合金で形成する。
【0128】
図4と
図1Bとの比較から明らかなように、本実施形態の面状発光体3では、上記第1の実施形態の面状発光体1において、透明基板21と光取り出し部材13との間に、さらに、透明基板部材40を設けた構成である。それゆえ、ここでは透明基板部材40についてのみ説明する。
【0129】
[透明基板部材]
透明基板部材40は、透明基板21の厚さを部分的に厚くするために設けられた部材である。透明基板部材40は、透明基板21の光取り出し面21aにおいて、互いに隣り合う4枚の発光パネル10間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBに形成され、かつ、発光領域SAと重ならない領域に形成される。なお、光取り出し部材13は、透明基板部材40上に設けられる。
【0130】
本実施形態では、透明基板部材40を、互いに隣り合う発光領域SA間の非発光領域SBの50%以上の領域を覆うように設けてもよいし、該非発光領域SBの全域(100%の領域)を覆うように設けてもよい(
図4の例)。さらに、透明基板部材40を、面状発光体3の外周縁部に位置する非発光領域SBに設けてもよい。また、本実施形態では、透明基板部材40を、光取り出し部材13と同様に、発光パネル10毎に設けてもよい。
【0131】
また、透明基板部材40は、透明基板21の光透過率と同等以上の光透過率を有する材料で形成されることが好ましい。また、透明基板部材40の屈折率n2は、透明基板21の屈折率n1に対して、n2≧n1−0.1の関係を満たすことが好ましい。
【0132】
透明基板部材40は、非発光領域SBにおける透明基板21の厚さを部分的に厚くするためのものであるので、その膜厚tをより厚くすることが好ましい。ただし、透明基板部材40の厚さが増大すると、面状発光体3の厚さも増大する。それゆえ、透明基板部材40の膜厚tは、有機EL素子を用いた面状発光体の特徴である薄型化を妨げることのない範囲内で適宜設定される。
【0133】
なお、透明基板部材40の形成材料は、上述した光透過率及び屈折率n2を満たす材料であれば任意の材料を用いることができる。例えば、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又は、PEN(ポリエチレンナフタレート)など、既知の材料を用いることができる。そして、透明基板部材40の形成材料は、これらの既知の材料の中から、透明基板21との組み合わせによって適宜選択される。
【0134】
なお、透明基板部材40は、図示しない接着剤によって透明基板21に取り付けられる。ここで用いる接着剤は、可視光に対してより高い光透過性を有することが好ましく、例えば90%以上の光透過性を有することが好ましい。また、接着剤の屈折率は、透明基板21の屈折率と同程度であって、両者の屈折率差が0.1以内であることが好ましい。
【0135】
[各種効果]
本実施形態の面状発光体3では、上述のように、透明基板21の光取り出し面21aにおいて、互いに隣り合う複数の発光パネル10間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBに透明基板部材40を設けて、実質、該非発光領域SBの透明基板21の厚みを厚くする。この場合、該非発光領域SBでは、透明基板21の界面における発光光hの反射回数が減るので、透明基板21内での内部反射の繰り返しによる発光光hの失活を抑制することができる。それゆえ、本実施形態では、非発光領域SBから光取り出し部材13を介して外部に取り出される発光光hの量をさらに増加させることができる。
【0136】
また、本実施形態の面状発光体3では、上記第1の実施形態と同様に、互いに隣接する複数の発光パネル10間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBに光取り出し部材13を設け、かつ、各発光パネル10の陰極24を銀又は銀を主成分とする銀合金で形成する。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、光取り出し面21aの面内において、輝度の均一性を向上させることができる。
【0137】
さらに、本実施形態の面状発光体3は、上記第1の実施形態と同様に、複数の発光パネル10をタイリングした構成である。それゆえ、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、大面積の面状発光体3を作製する際の歩留まりを向上させることができる。
【0138】
なお、本実施形態では、上記第1の実施形態の面状発光体(
図1A〜1C)に、透明基板部材40を適用する構成例を説明したが、本発明はこれに限定されず、上記第2の実施形態の面状発光体(
図3A〜3C)に、透明基板部材40を適用してもよい。
【0139】
<4.各種変形例及び応用例>
以下に、上記各種実施形態の面状発光体の各種変形例及び応用例について説明する。
【0140】
[変形例1]
上記各種実施形態の面状発光体では、大型の支持基板を用いて4枚の発光パネルを支持する構成例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、互いに隣り合う複数の発光パネル間において、対向する透明基板の側壁同士を接着剤で接合してもよい(変形例1)。この場合には、その接着剤を、4枚の発光パネルを支持するための支持部材として作用させることもでき、上記各種実施形態のように、大型の支持基板を別途設けなくてもよい。
【0141】
この例で接着剤は、少なくとも隣り合う複数の透明基板間に充填されていればよい。また、接着剤が、隣り合う複数の発光パネルの透明基板間だけでなく、封止材間の領域まで充填されていてもよい。
【0142】
なお、この例で用い得る接着剤としては、上記各種実施形態の接着部材と同様の材料を用いることができる。
【0143】
この例では、接着剤は、光透過性を有することが好ましく、その屈折率n3が透明基板の屈折率n1と同程度であることが好ましい。具体的には、接着剤の光透過性については、接着剤が可視光に対して高い光透過性を有することが好ましく、例えば、接着剤が可視光に対して90%以上の光透過性を有することが好ましい。また、接着剤の屈折率n3については、例えば、接着剤の屈折率n3と透明基板の屈折率n1との差|n3−n1|が、少なくとも0.2以下であればよく、差|n3−n1|が0.1以下であることが好ましい。
【0144】
上述のように接着剤の屈折率n3は、透明基板の屈折率n1に対して相対的に設定され、屈折率n3の絶対値に制約されない。例えば、透明基板の屈折率n1が1.5である場合には、接着剤の屈折率n3は1.3〜1.7程度に設定され、より好ましくは1.4〜1.6に設定される。このような物性を備えた接着剤の材料は、上述した接着部材の形成材料の中から、透明基板の屈折率n1を考慮して選択される。
【0145】
なお、接着剤の形成手法としては、互いに隣り合う複数の発光パネルの透明基板間に未硬化の接着剤を供給可能な手法であれば、任意の手法を用いることができる。例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、スプレー塗布、インクジェット法等の手法を、接着剤の形成手法として用いることができる。
【0146】
また、未硬化の接着剤の硬化手法は、接着剤毎に適する手法を適用する。例えば、光硬化型の接着剤を用いる場合には、光照射による有機発光機能層の劣化を防止するために、発光領域SAをマスクで覆った状態で光を照射して接着剤を硬化させる。また、熱硬化型の接着剤を用いる場合には、加熱による有機発光機能層の劣化を防止できる程度の低温加熱により接着剤を硬化させる。
【0147】
さらに、上述した硬化型の接着剤には、接着性を損なわない範囲で他の材料を添加してもよい。この場合、接着剤に対して添加する材料としては、ガラス、シリカ等の無機材料を分散させて用いてもよい。また、樹脂、粘着剤、又は、他の接着剤を添加してもよい。
【0148】
接着剤に添加する樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のような透明樹脂が用いられる。粘着剤としては、ウレタン系、エポキシ系、水性高分子−イソシアネート系、アクリル系等の粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、又は、ウレタン系、エポキシ系、水性高分子−イソシアネート系、アクリル系等の硬化型接着剤などが用いられる。さらに、各種のUV硬化樹脂、熱硬化樹脂等を添加樹脂として用いることができる。また、接着剤に対して光散乱性又は光反射性の材料を添加しても(分散させても)よい。
【0149】
[変形例2]
上記第2及び第3の実施形態の面状発光体では、互いに隣接する複数の発光パネル間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBからの光取り出し量を増加させる構成例を示したが、本発明はこれに限定されない。該非発光領域SBからの光取り出し量をさらに増加させるために、例えば、該非発光領域SBに低屈折率部材を設けてもよい(例えば、特開2001−202827号公報参照)。この場合、光取り出し部材と透明基板との間に、透明基板の屈折率(n1)よりも低い屈折率を有する低屈折率部材が設けられる。
【0150】
なお、低屈折率部材は、シート状、フィルム状、板状、又は、平坦な膜状の部材で構成することができる。また、低屈折率部材の膜厚は、この低屈折率部材の媒質中における光の波長よりも大きくすることが好ましく、例えば、該光の波長より10%以上大きな値に設定することが好ましい。これは、低屈折率部材の膜厚が媒質中における光の波長程度である場合には、低屈折率部材中に浸透したエバネッセント波(電磁波)が、低屈折率部材から染み出して透明基板内に入り込み、低屈折率部材を設けた効果が低減されるためである。
【0151】
また、低屈折率部材の形成材料としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は、一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率部材の屈折率は、約1.5以下であることが好ましい。なお、低屈折率部材の屈折率が低いほど、外部への光取り出し効率が高くなるので、低屈折率部材の屈折率は、1.35以下であることが好ましい。
【0152】
上記構成の低屈折率部材を用いることにより、非発光領域SBからの発光光hの取り出し量をさらに増加させることができる。
【0153】
[変形例3]
また、互いに隣接する複数の発光パネル間の継ぎ目部分を含む非発光領域SBからの光取り出し量をさらに増加させるために、例えば、該非発光領域SBに回折格子を設けてもよい(例えば、特開平11−283751号公報参照)。
【0154】
この場合、回折格子は、光取り出し部材と透明基板との間に設けることができる。また、光取り出し部材及び透明基板間に上述した各種光学部材(透明基板部材や低屈折率部材など)が設けられている場合には、光取り出し部材及び光学部材間、透明基板及び光学部材間、又は、各光学部材間に回折格子を設けることができる。この例では、特に、回折格子を、透明基板の光取り出し面(界面)に設けることが好ましい。
【0155】
この例で用いる回折格子は、例えば正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等の凹凸パターンの配列が二次元的に繰り返された構成の回折格子であり、二次元周期屈折率を有する回折格子であることが望ましい。これは、発光パネルで発生する発光光hは、あらゆる方向にランダムに放出されるため、所定方向にのみ周期的な屈折率分布を有する一般的な1次元回折格子では、該所定方向に伝搬する光のみを回折するので、光の取り出し効率がそれほど向上しない。しかしながら、回折格子の屈折率分布を二次元状の周期分布にすることにより、あらゆる方向に伝搬する光を回折格子で回折することができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0156】
なお、回折格子の周期は、媒質中における光の波長の約1/2〜3倍程度の長さに設定することが好ましい。
【0157】
上記構成の回折格子を用いることにより、発光パネルで発生した発光光hのうち、透明基板の界面での全反射等により外部に射出されない光の進行方向が、回折格子においてブラッグ回折により、屈折とは異なる特定の方向に変わる。この場合、透明基板の界面での全反射等により外部に放出されない光も、光取り出し部材に入射させて外部に取り出すことが可能になる。それゆえ、この例の構成においても、非発光領域SBからの発光光hの取り出し量をさらに増加させることが可能である。
【0158】
[応用例]
上述した各種実施形態及び各種変形例の面状発光体は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
【0159】
発光光源の例としては、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。
【0160】
なお、上述した各種実施形態及び各種変形例の面状発光体の用途は、上記用途に限定されず、特に、発光光源とカラーフィルターとを組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に好適である。また、上述した各種実施形態及び変形例の面状発光体を、発光光源とカラーフィルターとを組み合わせた液晶表示装置のバックライトとして用いる場合には、輝度をさらに高めるため、集光シートと組み合わせて用いることが好ましい。
【0161】
<5.各種実施例及び評価結果>
次に、実際に作製した本発明の面状発光体の各種実施例のサンプルの構成、並びに、各実施例で作製した面状発光体のサンプルに対して行った評価試験及びその結果を説明する。
【0162】
[発光パネルの構成及び作製手法]
まず、以下に説明する各種実施例の面状発光体で用いる発光パネルの構成及び作製手法について説明する。
図5に、各種実施例の面状発光体で用いる発光パネル100の概略構成断面を示す。
【0163】
発光パネル100は、透明基板101と、陽極102と、有機発光機能層103と、陰極104と、封止材105とを備える。そして、陽極102、有機発光機能層103、陰極104及び封止材105は、透明基板101の光取り出し面101aとは反対側の面上に、この順で形成される。なお、封止材105は、
図5に示すように、陽極102、有機発光機能層103及び陰極104を覆うように設けられる。ただし、この際、陽極102及び陰極104の引き出し電極部分が露出するように、封止材105を設ける。
【0164】
また、有機発光機能層103は、正孔注入層131と、正孔輸送層132と、青色発光層133と、中間層134と、緑色発光層135と、中間層136と、赤色発光層137と、正孔阻止層138と、電子輸送層139と、電子注入層140とを有する。なお、この例では、陽極102上に、正孔注入層131、正孔輸送層132、青色発光層133、中間層134、緑色発光層135、中間層136、赤色発光層137、正孔阻止層138、電子輸送層139及び電子注入層140がこの順で積層される。すなわち、この例では、発光層を、赤色、緑色及び青色の各発光層と、隣り合う発光層間に設けられた中間層とで構成する。
【0165】
次に、
図5に示す発光パネル100の作製手法を説明しながら、各層の構成(形成材料、膜厚等)を説明する。
【0166】
まず、透明基板101として、屈折率n1=1.51、厚さ0.7mm、面積50mm×50mmの透明ガラス基板を用意した。次いで、透明基板101の一方の面上に、膜厚150nmのITO(透明導電性材料)膜を所定パターンで成膜して、陽極102を形成した。なお、この際、この例では、
図5に示すように、透明基板101の一方の面において、陽極102とは異なる領域に陰極引き出し電極104aをITO膜で形成した。次いで、陽極102が形成された透明基板101を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄した。その後、洗浄された透明基板101を乾燥窒素ガスで乾燥し、さらに、乾燥後の透明基板101に対して、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0167】
次いで、陽極102が形成された透明基板101を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着すると共に、透明基板101の陽極102の形成面側に蒸着マスクを対向配置した。また、真空蒸着装置内の各蒸着用るつぼに、有機発光機能層103及び陰極104を構成する各材料を、各層の成膜に最適な量で充填した。なお、蒸着用るつぼには、モリブデン又はタングステンの抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0168】
次いで、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10
−4Paまで減圧した後、各材料が入った蒸着用るつぼに順次通電して加熱し、以下のようにして、陽極102上に、有機発光機能層103及び陰極104を形成した。
【0169】
まず、正孔注入層131の形成材料として、下記構造式(1)で表されるCuPc(銅フタロシアニン)を用い、この正孔注入材料を、陽極102上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ15nmの正孔注入層131を形成した。
【0171】
次いで、正孔輸送層132の形成材料として、下記構造式(2)(α−NPD)で表されるトリアリールアミン誘導体を用い、この正孔輸送材料を、正孔注入層131上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ25nmの正孔輸送層132を形成した。
【0173】
次いで、ホスト材料として、下記構造式(3)(DPVBi)で表されるジスチリルビフェニル誘導体を用い、かつ、青色ゲスト材料として、下記構造式(4)(Fir(pic))で表されるイリジウム錯体を用い、これらの材料を、正孔輸送層132上に、合計の蒸着速度(各材料の蒸着速度の和)0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚15nmの青色発光層133を形成した。なお、青色発光層133における青色ゲスト材料の割合は、3質量%とした。
【0176】
次いで、中間層134の形成材料として、下記構造式(5)(CBP)で表されるカルバゾール誘導体を用い、この中間層材料を、青色発光層133上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ5nmの中間層134を形成した。
【0178】
次いで、ホスト材料として、上記構造式(5)(CBP)で表されるカルバゾール誘導体を用い、かつ、緑色ゲスト材料として、下記構造式(6)(Ir(ppy)
3)で表されるイリジウム錯体を用い、これらの材料を、中間層134上に、合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚10nmの緑色発光層135を形成した。なお、緑色発光層135における緑色ゲスト材料の割合は、5質量%とした。
【0180】
次いで、中間層136の形成材料として、上記構造式(5)(CBP)で表されるカルバゾール誘導体を用い、この中間層材料を、緑色発光層135上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ5nmの中間層136を形成した。
【0181】
次いで、ホスト材料として、上記構造式(5)(CBP)で表されるカルバゾール誘導体を用い、かつ、赤色ゲスト材料として、下記構造式(7)(Ir(piq)
3)で表されるイリジウム錯体を用い、これらの材料を、中間層136上に、合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚10nmの赤色発光層137を形成した。なお、赤色発光層137における赤色ゲスト材料の割合は、8質量%とした。
【0183】
次いで、正孔阻止層138の形成材料として、下記構造式(8)(BAlq)で表されるアルミキノリノール錯体を用い、この正孔阻止材料を、赤色発光層137上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ15nmの正孔阻止層138を形成した。
【0185】
次いで、電子輸送層139の形成材料として、下記構造式(9)(Alq
3)で表されるアルミキノリノール錯体を用い、この電子輸送材料を、正孔阻止層138上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの電子輸送層139を形成した。
【0187】
次いで、電子注入層140の形成材料として、フッ化リチウム(LiF)を用い、この電子注入材料を、電子輸送層139上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ1nmの電子注入層140を形成した。
【0188】
最後に、陰極104の形成材料として、銀(Ag)又は銀合金を用い、この陰極材料を電子注入層140上に蒸着し、厚さ110nmの陰極104を形成した。なお、この際、
図5に示すように、陰極104の一部を、陰極引き出し電極104aの一部の領域上に形成し、陰極104と陰極引き出し電極104aとを電気的に接続した。また、この際、陽極102及び陰極104が有機発光機能層103を介して絶縁された状態となるように、陰極104を形成した。この例では、上述のようにして有機発光機能層103及び陰極104を形成した。
【0189】
次いで、透明基板101の陰極104側の面を、厚さ300μmのエポキシ樹脂で覆い、さらに、エポキシ樹脂上を厚さ12μmのアルミニウム箔で覆った。そして、エポキシ樹脂を硬化させ、エポキシ樹脂層及びアルミニウム箔からなる2層構造の封止材105を形成した。この際、陽極102及び陰極104の引き出し電極部分が透明基板101の周縁に露出した状態となるように、封止材105を形成した。
【0190】
なお、上述した、陽極102の形成から封止材105の形成までの工程は、有機電界発光素子を大気に接触させることなく、窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)内で一貫して行なった。また、有機発光機能層103の各層及び各電極膜の形成工程では、各層の形成に蒸着マスクを使用して、透明基板101の略中央に発光領域SAを形成した。具体的には、50mm×50mmのサイズの透明基板101の面内において、その中央の45mm×45mmのサイズの領域に発光領域SAを設け、該発光領域SAの周囲に幅2.5mmの非発光領域SBを設けた。
【0191】
以下に説明する各種実施例では、上述のようにして、発光パネル100を作製した。上記構成の発光パネル100では、青色発光層133、緑色発光層135及び赤色発光層137のそれぞれで発生した各色の発光光hが、ITO膜で構成された陽極102側、すなわち、透明基板101の光取り出し面101aから取り出される。
【0192】
[面状発光体の作製手法]
下記各種実施例では、上述のようにして作製した発光パネル100を4枚用意し、その4枚の発光パネル100を、支持基板上に、接着部材を介して2行×2列の形態で配置して取り付けた。なお、この際、互いに隣り合う4枚の発光パネル100間において、対向する透明基板101の側面同士が互いに接するように、4枚の発光パネル100を配置した。
【0193】
次いで、発光パネル100の光取り出し面101aにおいて、互いに隣り合う4枚の発光パネル100間の継ぎ目部分を含む領域に形成される非発光領域SBに、光取り出し部材を、接着剤を介して貼りつけた。この際、互いに隣り合う4枚の発光パネル100間の継ぎ目部分に形成される幅5mm(2.5mm×2)の非発光領域SB全域(100%)に渡って、光取り出し部材を取り付けた。なお、光取り出し部材には、光拡散シート(ライトアップ100NSH:きもと社製商品名)を用いた。以下に説明する各種実施例では、このようにして面状発光体を作製した。
【0194】
[実施例1]
実施例1では、上記第1の実施形態(
図1A〜1C)で説明した構成の面状発光体を作製した。
【0195】
(1)実施例1−1
実施例1−1の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀で形成した。
【0196】
(2)実施例1−2
実施例1−2の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀合金で形成した。具体的には、銀が97.4原子%、パラジウムが0.91原子%、及び、銅が1.69原子%の比率で含まれた銀合金で陰極104を形成した。
【0197】
(3)実施例1−3
実施例1−3の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀合金で形成した。なお、この例では、銀が90原子%、及び、マグネシウムが10原子%銅の比率で含まれた銀合金で陰極104を形成した。
【0198】
(4)実施例1−4
実施例1−4の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀合金で形成した。なお、この例では、銀が80原子%、及び、マグネシウムが20原子%銅の比率で含まれた銀合金で陰極104を形成した。
【0199】
(5)比較例1
比較例1の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104をアルミニウム(Al)で形成した。また、比較例1の面状発光体では、光取り出し部材(光拡散シート)を設けない構成とした。この例におけるその他の構成は、上述した各種実施例の面状発光体と同様の構成とした。
【0200】
(6)比較例2
比較例2の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104をアルミニウム(Al)で形成した。この例におけるその他の構成は、上述した各種実施例の面状発光体と同様の構成とした。
【0201】
(7)比較例3
比較例3の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀で形成したが、光取り出し部材(光拡散シート)を設けない構成とした。この例におけるその他の構成は、上述した各種実施例の面状発光体と同様の構成とした。
【0202】
(8)比較例4
比較例4の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀で形成したが、光取り出し部材(光拡散シート)を、面状発光体の光取り出し面101a全面(4枚の発光パネルの発光領域SA及び非発光領域SBを含む全領域)に渡って設けた。この例におけるその他の構成は、上述した各種実施例の面状発光体と同様の構成とした。
【0203】
[評価試験1]
評価試験1では、上述のようにして作製した実施例1−1〜1−4及び比較例1〜4の面状発光体の発光特性の評価を行った。具体的には、実施例1−1〜1−4及び比較例1〜4の面状発光体の陽極及び陰極の引き出し電極部分(外部取り出し電極)を電源に繋げて、全面発光させ、その際の発光パネル間の継ぎ目の視認性を評価した。
【0204】
なお、継ぎ目の視認性の評価については、面状発光体を全面発光させた状態で、面状発光体から5m離れた位置で、目視で発光状態を観察し、その観察結果を下記の基準に照らし合わせて視認性の評価を行った。下記表1に、評価試験1の結果を示す。
A:全く継ぎ目が視認されない。
B:殆ど継ぎ目が視認されない。
C:多少、継ぎ目が視認されるが、気にならない程度レベル。
D:継ぎ目が視認される。
E:継ぎ目が暗く、はっきり視認される。
【0206】
表1の結果から明らかなように、比較例1〜4の面状発光体では「E」評価又は「D」評価であったが、実施例1−1〜1−4の面状発光体では、「B」評価又は「C」評価が得られた。このことから、実施例1−1〜1−4の面状発光体のように、発光パネル100の陰極104を銀又は銀合金で形成し、かつ、光取り出し面101aにおいて、互いに隣り合う複数の発光パネル100間の継ぎ目部分に形成される非発光領域SBに光取り出し部材を設けることにより、継ぎ目部分の暗部が目立たなくなり、輝度の面内均一性が向上することが分かった。
【0207】
[実施例2]
実施例2では、上記第2の実施形態(
図3A〜3C)で説明した構成の面状発光体を作製した。すなわち、実施例2では、
図5に示す発光パネル100の非発光領域SBにおいて、透明基板101の光取り出し面101aとは反対側の領域に、銀又は銀合金からなる金属膜をさらに設けた。
【0208】
具体的には、上述した発光パネル100の作製工程において、陰極104を形成する際の蒸着マスクパターンを変更して、陰極104の形成と同時に、金属膜(厚さ110nm)を非発光領域SBに形成した。なお、この際、非発光領域SBにおける金属膜の占有面積が70%となるように、金属膜を形成した。
【0209】
実施例2において、銀又は銀合金からなる金属膜を追加したこと以外は、上記実施例1と同様にして面状発光体を作製した。なお、この例においても、上記実施例1と同様に、発光パネル100の光取り出し面101aにおいて、互いに隣り合う4枚の発光パネル100間の継ぎ目部分に形成される非発光領域SB全域に渡って、光取り出し部材を、接着剤を介して貼りつけた。
【0210】
(1)実施例2−1
実施例2−1の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀で形成した。
【0211】
(2)実施例2−2
実施例2−2の面状発光体では、
図5に示す発光パネル100において、陰極104を銀合金で形成した。具体的には、銀が97.4原子%、パラジウムが0.91原子%、及び、銅が1.69原子%の比率で含まれた銀合金で陰極104を形成した。
【0212】
[評価試験2]
評価試験2では、上述のようにして作製した実施例2−1及び2−2の面状発光体に対して、上記評価試験1と同様にして、発光特性(継ぎ目の視認性)の評価を行った。その評価結果を、下記表2に示す。なお、表2中の継ぎ目評価の基準は、上述した評価試験1と同様である。
【0214】
表2の結果から明らかなように、実施例2−1及び2−2の面状発光体では、「A」評価が得られた。このことから、非発光領域SBにおいて、透明基板101の光取り出し面101aとは反対側の領域に、銀又は銀合金からなる金属膜を設けることにより、継ぎ目部分の暗部が認識できず、輝度の面内均一性がより一層向上することが分かった。