(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032209
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物及びそれを含む中空成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 77/02 20060101AFI20161114BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20161114BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20161114BHJP
C08K 5/435 20060101ALI20161114BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20161114BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
C08L77/02
C08L23/26
C08K5/101
C08K5/435
B32B1/08 B
B32B27/34
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-539570(P2013-539570)
(86)(22)【出願日】2012年9月7日
(86)【国際出願番号】JP2012072916
(87)【国際公開番号】WO2013058027
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-231557(P2011-231557)
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100173772
【弁理士】
【氏名又は名称】角野 ゆり子
(72)【発明者】
【氏名】久保 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡村 繁数
(72)【発明者】
【氏名】藤井 広昭
(72)【発明者】
【氏名】片山 真也
【審査官】
藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−132850(JP,A)
【文献】
特開2000−328469(JP,A)
【文献】
特開2008−018702(JP,A)
【文献】
特開2001−018307(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/071301(WO,A1)
【文献】
特開2003−292612(JP,A)
【文献】
特開2002−181250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 77/02
B32B 1/08
B32B 27/34
C08K 5/101
C08K 5/435
C08L 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PA6/12(成分A)、可塑剤(成分B)及び変性ポリオレフィン(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aが、ε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸から誘導される単位aと、アミノドデカン酸又はω−ラウロラクタムから誘導される単位bとを含み、前記成分Aの構成単位中、前記単位aが、60〜98重量%であり、前記単位bが40〜2重量%であり、
前記ポリアミド樹脂組成物中、
前記成分Aの含有量が50〜98重量%であり、
前記成分Bの含有量が20〜1重量%であり、
前記成分Cの含有量が30〜1重量%であり、
前記成分Bが、アリールスルホン酸アミド誘導体及びヒドロキシ安息香酸エステル又はその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
前記成分Cが、(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマ−重合体、並びに芳香族ビニル化合物・共役ジエン化合物系ブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であって、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
銅化合物をさらに含む、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記銅化合物の含有量が、前記ポリアミド樹脂組成物中、0.2〜3重量%である、請求項2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
中空成形体用である請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる層1を有する中空成形体。
【請求項6】
さらに、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる層2を有し、前記層1と前記層2とが接触して積層されている請求項5記載の中空成形体。
【請求項7】
前記層1が、前記中空成形体の最内層である請求項5又は6記載の中空成形体。
【請求項8】
さらに、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる層3及び4を有し、
前記層1、3及び4が接触して積層されており、
前記層1が、前記中空成形体の最外層、最内層のいずれでもない請求項5記載の中空成形体。
【請求項9】
前記層3及び4が、ポリアミド11及び/又はポリアミド12を含む請求項8記載の中空成形体。
【請求項10】
前記層1の厚みが、中空成形体の積層全体の厚みの30%以上である請求項5〜9のいずれか1項記載の中空成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物及びそれを含む中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、ポリアミド樹脂の呼称は、JIS K 6920−1に基づく。
ポリアミド12(PA12)は、成形体にすると、柔軟性、耐破壊圧力性、低温衝撃耐性、環境耐性及び耐薬品性に優れ、成形体を製造する際の成形性・加工性も良好であることから、自動車用チューブ等の中空成形体用途を始めとする産業用ポリアミド樹脂として広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方で、近年、以下の要因から、PA12の需給の逼迫が常態化しつつある。
(1)中国を始めとする新興国のPA12に対する需要が国際的に増大している、
(2)PA12の原料モノマーであるブタジエンが、自動車タイヤ等のゴム製品の原料でもあることから、ブタジエンの需給が逼迫している。
【0004】
本発明は、PA12と少なくとも同等の柔軟性、耐破壊圧力性、低温衝撃耐性、環境耐性及び耐薬品性を有し、成形体を製造する際の成形性・加工性が良好な組成物及びそれを用いた中空成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)PA6/12(成分A)、可塑剤(成分B)及び変性ポリオレフィン(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aが、ε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸から誘導される単位aと、
アミノドデカン酸又はω−ラウロラクタムから誘導される単位bとを含み、
前記成分Aの構成単位中、
前記単位aが、60〜98重量%であり、前記単位bが40〜2重量%であり、
前記ポリアミド樹脂組成物中、
前記成分Aの含有量が50〜98重量%であり、
前記成分Bの含有量が20〜1重量%であり、
前記成分Cの含有量が30〜1重量%であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物、及び
(2)前記(1)に記載のポリアミド樹脂組成物を含む層1を有する中空成形体
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、PA12と少なくとも同等の柔軟性、耐破壊圧力性、低温衝撃耐性、環境耐性及び耐薬品性を有し、成形体を製造する際の成形性・加工性が良好な組成物及びそれを用いた中空成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(用語の説明)
本明細書中において、ポリアミド樹脂の呼称は、JIS K 6920−1に基づく。
ポリアミド12(PA12)は、ω-アミノドデカン酸又はラウロラクタムからのホモポリマーである。
【0008】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、PA6/12(成分A)、可塑剤(成分B)及び変性ポリオレフィン(成分C)を含む。
【0009】
(成分A)
成分Aは、
ε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸とアミノドデカン酸又はω−ラウロラクタムの共重合体であり、
ε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸から誘導される単位aと、
アミノドデカン酸又はω−ラウロラクタムから誘導される単位bとを含む。
柔軟性・耐破壊圧力性・低温衝撃耐性・環境耐性及び耐薬品性の観点から、
成分A中の、単位aの含有量は、60〜98重量%であり、
好ましくは65〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%、更に好ましくは75〜85重量%であり、
成分A中の、単位bの含有量は、40〜2重量%であり、
好ましくは35〜5重量%、より好ましくは30〜10重量%、更に好ましくは25〜15重量%である。
【0010】
単位aは、原料モノマーの入手の容易さの観点から、ε−カプロラクタムから誘導されることが好ましく、
単位bは、成分Aの製造の容易さの観点から、アミノドデカン酸から誘導されることが好ましい。
【0011】
JIS K 6920に準拠して96%の硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した成分Aの相対粘度は、成形体を製造する際の成形性・加工性及び柔軟性・低温衝撃耐性などの実用物性の観点から、
好ましくは2.0〜5.5、より好ましくは2.5〜5.0、更に好ましくは3.0〜4.5である。
【0012】
成分Aの製造には、溶融重合、溶液重合、界面重合、固相重合、およびこれらを組合せた公知の重合方法を用いることができる。
通常、得られる成分Aの融点より高い温度で実施される溶融重合が好ましく用いられる。
また、成分Aは公知の重合装置が使用でき、バッチ式または連続式などにより、必要に応じて常圧、減圧、加圧などの操作を適宜、組合せることにより製造できる。
【0013】
(成分B)
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いる成分Bである可塑剤としては、可塑化効果である中空成形体の柔軟性をより安定に確保する観点から、好ましくは、アリールスルホン酸アミド誘導体及びヒドロキシ安息香酸エステル又はその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0014】
アリールスルホン酸アミド誘導体としては、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、少なくとも一方が炭素数1〜10のアルキル基、残りが水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R
3は炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは0〜5の整数であり、nが2以上の場合、複数のR
3は同一でも異なっていてもよい)で示される化合物を好ましく例示できる。
【0015】
一般式(1)において、可塑化効果の観点から、
R
1が炭素数1〜10のアルキル基、R
2が水素原子、R
3がメチル基、及びnが0又は1であるアリールスルホン酸アミド誘導体が好適である。
かかるアリールスルホン酸アミド誘導体としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類及びトルエンスルホン酸アルキルアミド類等が挙げられる。
ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類としては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド及びベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられ、
トルエンスルホン酸アルキルアミド類としては、o−又はp−トルエンスルホン酸ブチルアミド、o−又はp−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシ安息香酸エステル又はその誘導体としては、下記式一般式(2):
【化2】
(式中、R
4は炭素数1〜4のアルキル基、R
5は炭素数4〜20のアルキル基を示し、エーテル基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基から選ばれる基を1種以上含んでいてもよい)で示される化合物を好ましく例示できる。
【0017】
一般式(2)において、可塑化効果の観点から、好ましくはR
4がメチル基、R
5が炭素数4〜20、より好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を示す。
炭素数4〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
例えば、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、2−エチルデシル基、各種セチル基、各種オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
ヒドロキシ安息香酸エステルとしては、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸2−エチルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−ヘキシルデシル等が挙げられる。
また、R
5である炭素数4〜20のアルキル基は、エーテル基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基から選ばれる基を1種以上含んでいてもよい。例えば、−(OCH
2CH
2)
2−O−(2−エチルヘキシル基)等であってもよい。
【0018】
(成分C)
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いる変性ポリオレフィンである成分Cは、本発明の中空成形体のより安定な低温衝撃性を確保することを目的としたゴム状重合体であり、ASTM D 882に準拠して測定した引張弾性率が、
好ましくは1〜500MPa、より好ましくは1〜300MPaであり、更に好ましくは1〜100MPaである。
【0019】
成分Cとして、好ましくは、
(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、
(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、
アイオノマ−重合体、並びに
芳香族ビニル化合物・共役ジエン化合物系ブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0020】
(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体とは、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
また、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。
【0022】
(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体とは、エチレン及び/又はプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、
α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
アイオノマ−重合体とは、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。
オレフィンとしてはエチレンが好ましく用いられ、α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられるが、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていても構わない。
また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等を挙げることできる。
【0024】
(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、並びに芳香族ビニル化合物・共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体が好ましく使用される。このような成分により変性することにより、ポリアミド樹脂に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
ポリアミド樹脂に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、成分Cとしては、低温衝撃耐性、コスト、入手のしやすさの観点から、マレイン酸変性されたエチレン/プロピレン共重合体及び/又はマレイン酸変性されたエチレン/ブテン共重合体が好ましい。
【0025】
(その他の成分)
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分A及びC以外の樹脂をさらに含むことができるが、例えば、PA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA1212、PA6/66等のポリアミド樹脂を挙げることができ、ポリアミド樹脂以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を含むことができる。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分B以外の添加剤をさらに含むことができ、例えば、顔料、染料、着色剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、帯電防止剤、銅化合物等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、ガラス繊維、潤滑剤、フィラー、補強繊維、補強粒子、発泡剤等を含むことができる。
【0027】
成形安定性の向上、外観が良好な中空成形体が得られる観点から、本発明のポリアミド樹脂組成物は、銅化合物等の安定化剤及び/又は結晶核剤を含むことが好ましい。
銅化合物等の安定化剤としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸第二銅、ピロリン酸第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅、前記無機ハロゲン化銅が挙げられ、ヨウ化第一銅が好ましい。銅化合物等の安定化剤の含有量としては、本発明のポリアミド樹脂組成物中、0.2〜3重量%、好ましくは0.2〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%である。
結晶核剤としては、ジベンジリデンソルビトール系化合物が挙げられる。ジベンジリデンソルビトール系化合物としては、1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ジ(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ジ(ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−(4−メチルベンジリデン)−2,4−ベンジリデンソルビトール、1・3−(ジメチルベンジリデン)−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−(4−クロルベンジリデン)−2・4−(4−メチルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ジ(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3−(ジメチルベンジリデン)−2・4−ベンジリデンソルビトール、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ビス(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン−6−オキシド)水酸化アルミニウムが好ましく、1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ジ(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3−(ジメチルベンジリデン)−2・4−ベンジリデンソルビトールがより好ましい。本発明で使用するジベンジリデンソルビトール系化合物等の結晶核剤の含有量としては、成形安定性の向上とコストの観点から、本発明のポリアミド樹脂組成物中、0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%であり、より好ましくは0.2〜0.5重量%である。
【0028】
(本発明のポリアミド樹脂組成物)
柔軟性、耐破壊圧力性、低温衝撃耐性、環境耐性及び耐薬品性(以下、実用性能ともいう)を両立させ、かつ、成形体を製造する際の成形性及び加工性(以下、まとめて成形性ともいう)をより安定に確保する観点から、本発明のポリアミド樹脂組成物中、
前記成分Aの含有量は50〜98重量%、好ましくは60〜95重量%、より好ましくは70〜92重量%であり、
前記成分Bの含有量は20〜1重量%、好ましくは15〜2重量%、より好ましくは10〜3重量%であり、
前記成分Cの含有量は30〜1重量%、好ましくは25〜3重量%、より好ましくは20〜5重量%である。
本発明の樹脂組成物中、成分A,B及びCの合計量は、
好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、更に好ましくは90〜100重量%である。
【0029】
成分Aは、PA12のポリアミド成分を担う本発明におけるポリアミド樹脂組成物の主剤であり、実用性能と加工性のベースを構成する。
成分Bは、本発明のポリアミド樹脂組成物を中空成形して得られる中空成形体の柔軟性をPA12の場合程度に確保するために使用されるが、耐破壊圧力性、低温衝撃性、成分Bのブリードアウト抑制を考慮すると、上記範囲が好適である。
成分Cは、本発明のポリアミド樹脂組成物を中空成形して得られる中空成形体の低温衝撃性を、PA12の場合程度に確保するために使用されるが、耐破壊圧力性、耐薬品性を考慮すると、上記範囲が好適である。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製法としては、特に制限されず、単軸、二軸又は多軸の押出機によって成分A、B及びCを溶融混練することによって行うことができ、さらに他のニーダー等を使用することもできる。さらに、上記他のポリマー及び添加剤を、成分A、B及びCの溶融混練の際に添加することもできる。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来ポリアミド樹脂組成物の成形物が用いられてきた各種成形品、シート、フィルム、パイプ、チューブ、ホース、モノフィラメント、繊維、容器等として自動車部材、コンピューター及び関連機器、光学機器部材、電気・電子機器、情報・通信機器、精密機器、土木・建築用品、医療用品、家庭用品など広範な用途に使用できる。とりわけ、補強されているので自動車、電気・電子機器などの用途に有用である。
【0032】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出、押出、中空、プレス、ロール、発泡、真空・圧空、延伸などポリアミド樹脂組成物に適用できる公知の成形加工法はすべて可能であり、これらの成形法によってフィルム、シート、成形品、繊維などに加工することができる。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、
好ましくはPA12が使用される技術分野、
より好ましくはPA12が使用される後述する中空成形体の利用分野、
更に好ましくはPA12が使用される後述する自動車用中空成形体の利用分野
において、PA12の代替樹脂として使用できる。
【0034】
(本発明の中空成形体)
本発明の中空成形体は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる層1を有する。
但し、ここで、本発明のポリアミド樹脂組成物を中空成形して層1にする際に、そのポリアミド樹脂組成物に含まれる以外の樹脂および/又は添加剤等を配合した場合、配合後の樹脂組成物が本発明で規定するポリアミド樹脂組成物に該当する場合は、配合後の樹脂組成物をポリアミド樹脂組成物とみなす。
【0035】
本発明の中空成形体は、中空成形によって成形される部品又は製品、例えば、燃料タンク、例えば、ガソリンタンク、オイルタンク、その他のタンク、農薬ボトル、飲料水用ボトル等の各種ボトル、エアーダクト、インテークマニホールド等各種機械及び自動車の吸気、排気系部品、エアスポイラー、フェンダー、バンパー等の自動車外板・外装構造部材等の用途に使用することができる。また、中空成形部品としては、フューエルデリバリーパイプ、スロットルボディ、レゾネーター、エアクリーナボックス、サスペンションブーツ、エアインテークマニホールド、エアクリーナー、レゾネーター、フューエルレール、ホースジョイント、油圧チューブ、空圧チューブ、燃料チューブ、油圧ホース、空圧ホース、燃料ホースを挙げることができる。
【0036】
本発明の中空成形体は、層1だけからなっていても、PA12を使用した単一層の中空成形体と同等の実用性能を有する。
【0037】
本発明の中空成形体は、
成形加工時の安定性及び耐環境性の観点から、さらに、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる層2を有し、層1と前記層2とが接触して積層されていることが好ましく、この場合、
成形加工時の安定性、耐環境性及び外観の観点から、層1が中空成形体の最内層であることがより好ましい。
【0038】
本発明の中空成形体は、一方で、成形加工時の安定性及び耐環境性の観点から、
さらに、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を成形してなる層3及び4を有し、層1、3及び4が接触して積層されており、層1が、前記中空成形体の最外層、最内層のいずれでもないことが好ましい。
層1、3及び4が接触して積層されているとはこれらが全て直接接触していれば、層1、3及び4がどの組合せで接触していてもよい。例えば、層1/層3/層4、層1/層4/層3、又は層3/層1/層4の場合が挙げられる。但し、層1/層3/層4及び層1/層4/層3の場合、層1が、前記中空成形体の最外層、最内層のいずれでもないことが好ましく、層1が内層側であれば、層1が最内層にならないように、層1に接する積層が施されることが好ましい。
さらに、成形加工時の安定性及び低温衝撃性の観点から、前記層3及び4が、ポリアミド11及び/又はポリアミド12を含むことが好ましい。
【0039】
PA12の含有率を低減する観点から、
以上の中空成形体の層1の合計の厚みは、
好ましくは、中空成形体の積層全体の厚みの15〜100%、
より好ましくは、中空成形体の積層全体の厚みの50〜100%、
更に好ましくは、中空成形体の積層全体の厚みの70〜100%である。
但し、各層が、異なる組成である本発明ポリアミド樹脂組成物からなる場合は、これらの各層はいずれも組成の異なる層1であるので、層1の厚みはこれらの各層の厚みの合計となる。
【0040】
本発明の中空成形体は、本発明のポリアミド樹脂組成物を、例えば、押出成形機、ブロー成形機、圧縮成形機、射出成形機等を用いて、フィルム状、シート状、チューブ状、ホース状その他各種形状に成形し、フィルム状、シート状のものは後加工して中空成形物にしてもよい。積層方法は、共押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、異型押出、押出コーティング等)、積層射出成形法はじめとする任意の溶融成形法が採用される。
【0041】
多層チューブや積層ホースを製造する方法としては、例えば、
構成する層の数または材料の数に対応する数の押出機より押出された溶融樹脂を、1つのダイスに導入し、
ダイス内またはダイスを出た直後に各層を接着させ、
その後通常のチューブ成形やホース成形と同様にして製造する方法、また、
一旦単層チューブや単層ホースを成形した後、
そのチューブやホースの外側に他の層をコーティングする方法等を挙げることができる。
チューブやホースの形状は直管であってもいいし、蛇腹状に加工されていても構わない。
直管の多層チューブや積層ホースに対しては、その外側に保護層を設けるようにしてもよく、
その形成材料としては、例えば、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコンゴム等のゴムを挙げることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(原料1)
〔成分A〕 ε−カプロラクタム誘導される単位aと、アミノドデカン酸から誘導される単位bとの重量比(a/b)が、a/b=78:22〜82:18であるPA6/12(7034B、宇部興産(株)製、相対粘度3.87)
〔成分B〕 可塑剤(BBSA(ベンゼンスルホン酸ブチルアミド)、Proviron製)
〔成分C〕 変性ポリオレフィン(タフマーMH7010(マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体)、三井化学製)
【0044】
〔その他のポリアミド樹脂1〕 PA6(1024JI、宇部興産(株)製)
〔その他のポリアミド樹脂2〕 PA12(3030JI9L、宇部興産(株)製)
〔その他のポリアミド樹脂3〕 PA6/66(5033JI2、宇部興産(株)製)
〔接着剤〕 変性ポリプロピレン(アドマーQB520E、三井化学製)
なお、以下、その他のポリアミド樹脂1、2及び3を、それぞれポリアミド樹脂1、2及び3ともいう。
【0045】
(樹脂組成物の製造方法1)
(1)実施例1
成分Aに成分Cをあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、成分Bを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度200〜270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して成分A:85重量%、成分B:5重量%、成分C:10重量%よりなる本発明のポリアミド樹脂組成物であるペレットを得た。
【0046】
(中空成形体の製造条件1)
(2)実施例2
実施例1のポリアミド樹脂組成物を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)単層押出成形機にて、押出温度240℃にて溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって240℃の単層ダイを経て、中空成形体である単層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、
層の厚み1.5mmで、内径9mm、外径12mmの単層チューブを得た。
【0047】
(3)実施例3
実施例1のポリアミド樹脂組成物からなる層1、ポリアミド樹脂1(PA6)からなる層2−1、接着剤からなる層5、ポリアミド樹脂2(PA12)からなる層2-2が、内層から順に、層1/層2−1/層5/層2−2と積層されている本発明の中空成形体である4層チューブを以下の条件で製造した。
実施例1のポリアミド樹脂組成物、ポリアミド樹脂1、接着剤及びポリアミド樹脂2を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層同時押出成形機にて、押出温度を、
層1では240℃、層2−1では250℃、層5では220℃、層2−2では240℃にて別々に溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって260℃の多層ダイ内で合流させ、4層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、層の厚みが、内層から順に
層1/層2−1/層5/層2-2=0.15/0.75/0.15/0.45mm
で、内径9mm、外径12mmの4層チューブを得た。
当該4層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0048】
(4)比較例1
実施例3において、本発明のポリアミド樹脂組成物をポリアミド樹脂3(PA6/66)に置き換えて、他は同じ条件で4層チューブを製造した。
【0049】
(5)比較例2
実施例3において、本発明のポリアミド樹脂組成物を実施例1で使用した成分Aに置き換えて、他は同じ条件で4層チューブを製造した。
【0050】
(6)比較例3
実施例3において、本発明のポリアミド樹脂組成物を実施例1で使用した接着剤(アドマーQB520E)に置き換えて、押出温度を220℃に変更した他は同じ条件で4層チューブを製造した。
【0051】
(7)比較例4
ポリアミド樹脂1(PA6)からなる層2−1、接着剤からなる層5、ポリアミド樹脂2(PA12)からなる層2−2、内層から順に、層2−1/層5/層2−2と積層されている中空成形体である3層チューブを以下の条件で製造した。
ポリアミド樹脂1、接着剤及びポリアミド樹脂2を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)3層同時押出成形機にて、
層2−1では250℃、層5では220℃、層2−2では240℃
にて別々に溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって260℃の多層ダイ内で合流させ、3層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、層の厚みが、内層から順に
層2−1/層5/層2−2=0.90/0.15/0.45mm
で内径9mm、外径12mmの3層チューブを得た。
【0052】
(8)比較例5
ポリアミド樹脂2(PA12)を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)単層押出成形機にて、押出温度240℃にて溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって240℃の単層ダイを経て、中空成形体である単層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、
層の厚み1.5mmで、内径9mm、外径12mmの単層チューブを得た。
【0053】
(物性評価条件1)
【0054】
(1)引張伸度
SAE J−2260 A.4.1に記載の方法で評価した。
【0055】
(2)柔軟性
110℃×24時間の前処理を行わなかった点以外は、SAE J−844 9.8に記載の方法で評価した。
【0056】
(3)破壊圧力
SAE J−2260 7.1に記載の方法で、23℃の条件下と、125℃の条件下とで、評価した。
【0057】
(4)低温耐衝撃性
温度を−60℃に変更した以外は、DIN 73378 6.4.6に記載の方法で評価した。
【0058】
(5)寸法安定性
チューブの外径の計測結果が、12±0.15mmの範囲内に納まった場合は安定と判定した。
一方、12±0.15mmの範囲を逸脱した場合は不安定と判断した。
【0059】
(6)耐塩化亜鉛性
実施例2〜3の中空成形体の層1を形成する樹脂組成物と、比較例1〜5で製造した中空成形体の層1に相当する層を形成する樹脂について、射出成形機によりISO527−1 TypeA型の試験片を作成した。射出条件は、樹脂温度
240℃(実施例2〜3の層1を形成する樹脂組成物)、
240℃(ポリアミド樹脂(PA6/12))、
250℃(ポリアミド樹脂1(PA6))、
240℃(ポリアミド樹脂2(PA12))、
240℃(ポリアミド樹脂3(PA6/66))、
220℃(接着剤(アドマーQB520E))
金型温度80℃の射出成形により成形して試験用プレートを得た。
射出成形条件は、射出圧力:一次圧50MPa、射出時間:20秒、冷却時間:20秒とした。
作成した試験片を90℃の熱水中で2時間処理した後、取り出し、10重量%の塩化亜鉛水溶液を試験片上に滴下する。
次に、試験片を100℃の熱風循環式オーブン中で2時間乾燥処理した後、取り出す。
これを1サイクルとし、下記評価条件で試験片表面を観察し、クラックが発生する迄或いは10サイクルに到達する迄繰り返した。
クラック発生は、1サイクル毎にマイクロスコープを用いて10倍に拡大し、試験片表面を観察し、試験片表面にクラックが発生しているかどうかを確認した。
【0060】
以上の結果を表1にまとめた。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から、本発明のポリアミド樹脂組成物(実施例1)によって成形された成形体である単層(実施例2)及び4層(実施例3)の中空成形体は、PA12の単層の中空成形体とほぼ同等の物性を示しており、本発明が、近年需要が逼迫するPA12の代替樹脂組成物として使用できることがわかる。
【0063】
(原料2)
〔成分A〕 ε−カプロラクタム誘導される単位aと、アミノドデカン酸から誘導される単位bとの重量比(a/b)が、a/b=78:22〜82:18であるPA6/12(7034B、宇部興産(株)製、相対粘度3.87)
〔成分B〕 可塑剤(BBSA(ベンゼンスルホン酸ブチルアミド)、Proviron製)
〔成分C〕 変性ポリオレフィン(タフマーMH5010(マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体)、三井化学製)
〔その他のポリアミド樹脂4〕 PA12/6(7115U、宇部興産(株)製)
なお、以下、その他のポリアミド樹脂4を、ポリアミド樹脂4ともいう。
【0064】
(樹脂組成物の製造方法2)
(1)実施例3
成分Aに成分Cをあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、成分Bを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度200〜270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して成分A:80重量%、成分B:5重量%、成分C:15重量%よりなる本発明のポリアミド樹脂組成物であるペレットを得た。
【0065】
(中空成形体の製造条件2)
(2)実施例4
実施例3のポリアミド樹脂組成物を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)単層押出成形機にて、押出温度240℃にて溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって240℃の単層ダイを経て、中空成形体である単層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、
層の厚み1.5mmで、内径9mm、外径12mmの単層チューブを得た。
【0066】
(3)比較例6
実施例4において、混合比を成分A:85重量%、成分B:0重量%、成分C:15重量%にした以外は同じ条件で単層チューブを製造した。
【0067】
(4)比較例7
実施例4において、混合比を成分A:60重量%、成分B:25重量%、成分C:15重量%にした以外は同じ条件で単層チューブを製造した。
【0068】
(5)比較例8
実施例4において、混合比を成分A:95重量%、成分B:5重量%、成分C:0重量%にした以外は同じ条件で単層チューブを製造した。
【0069】
(6)比較例9
実施例4において、混合比を成分A:60重量%、成分B:5重量%、成分C:35重量%にした以外は同じ条件で単層チューブを製造した。
【0070】
(7)比較例10
実施例4において、成分Aをポリアミド樹脂(PA12/6)に置き換えた以外は同じ条件で単層チューブを製造した。
【0071】
(物性評価条件2)
物性評価条件1と同様に、(1)引張伸度、(2)柔軟性、(3)破壊圧力、(4)低温耐衝撃性、(5)寸法安定性及び(6)耐塩化亜鉛性を評価した。
【0072】
以上の結果を表2にまとめた。
【0073】
【表2】
【0074】
表2より、ポリアミド樹脂組成物中、成分Aの含有量が50〜98重量%であり、成分Bの含有量が20〜1重量%であり、成分Cの含有量が30〜1重量%であることにより、柔軟性、耐破壊圧力性、低温衝撃耐性、環境耐性及び耐薬品性に優れ、成形体を製造する際の成形性・加工性が良好な組成物及びそれを用いた中空成形体を提供できることがわかる。
【0075】
(原料3)
〔成分A〕 ε−カプロラクタム誘導される単位aと、アミノドデカン酸から誘導される単位bとの重量比(a/b)が、a/b=78:22〜82:18であるPA6/12(7034B、宇部興産(株)製、相対粘度3.87)
〔成分B〕 可塑剤(BBSA(ベンゼンスルホン酸ブチルアミド)、Proviron製)
〔成分C〕 変性ポリオレフィン(タフマーMH5010(マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体)、三井化学(株)製)
【0076】
〔結晶核剤〕 ジベンジリデンソルビトール系化合物(ゲルオールD(1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール)、新日本理化株式会社製)
〔安定化剤〕 銅化合物(ヨウ化第一銅(CuI)、伊勢化学工業株式会社製)
〔酸化防止剤1〕 フェノール系酸化防止剤(イルガノックス245、BASFジャパン株式会社製)
〔酸化防止剤2〕 リン酸系酸化防止剤(イルガフォス168、BASFジャパン株式会社製)
〔その他〕 カーボンブラック(VALCAN 9A32、キャボットコーポレーション製)
【0077】
(樹脂組成物の製造方法3)
(1)実施例5
下記表3に記載の成分Aに成分C及びその他任意成分をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、下記表3に記載の成分Bを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度200〜270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、下記表3に記載の成分比よりなる本発明のポリアミド樹脂組成物であるペレットを得た。
なお、下記実施例6〜10の中空成形体の成形に用いるポリアミド樹脂組成物を、各々、実施例5−1〜実施例5−5とする。
【0078】
(中空成形体の製造条件3)
(2)実施例6〜10
実施例5の各ポリアミド樹脂組成物を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)単層押出成形機にて、押出温度240℃にて溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって240℃の単層ダイを経て、中空成形体である単層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、
層の厚み1.00mmで、内径6mm、外径8mmの単層チューブを得た。
【0079】
(3)比較例11
下記表3に記載のPA12(3030B、宇部興産(株)製)に成分C及びその他任意成分をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、下記表3に記載の成分Bを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度200〜270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、下記表3に記載の成分比よりなる本発明のポリアミド樹脂組成物であるペレットを得た。このポリアミド樹脂組成物を用いてPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)単層押出成形機にて、押出温度240℃にて溶融させ、押出された溶融樹脂をアダプターによって240℃の単層ダイを経て、中空成形体である単層チューブを成形した。
引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引取りを行い、
層の厚み1.00mmで、内径6mm、外径8mmの単層チューブを得た。
【0080】
(物性評価条件3)
下記のとおり物性評価を行った。
【0081】
(1)成形安定性
引取りによるチューブの成形安定性について、以下の基準で評価した。
+++:連続成形が可能であり、脈動も生じず安定して成形できる。
++:連続成形が可能であるが、僅かな脈動が生じる。
+:連続成形が不可能であり、脈動も生じる。
【0082】
(2)寸法安定性
チューブの外径の計測結果が、8.0±0.1mmの範囲内に納まった場合は安定と判定した。
一方、8.0±0.1mmの範囲を逸脱した場合は不安定と判断した。
【0083】
(3)外観(平滑性)
成形後のチューブ外表面の平滑性について、円周方向生じた縞模様(ビビリ跡)の有無を目視観察し、以下の基準で評価した。
+++:チューブ外表面に縞模様(ビビリ跡)が肉眼で観察されない。
++:チューブ外表面に微小な縞模様(ビビリ跡)が肉眼で観察される。
+:チューブ外表面に大きな縞模様(ビビリ跡)が肉眼で観察される。
(4)外観(波打ち)
成形後のチューブの外表面について、その長手方向に沿う外観を目視観察し、チューブ表面の波打ち状態(長手方向に沿って凸凹形状となる状態)により以下の基準で評価した。
+++:ほとんど波打ちが認められず良好なものであった。
++:若干の波打ちが認められたが実使用に問題のないものであった。
+:波打ちが大きく実使用に問題のあるものであった。
【0084】
以上の結果を表3にまとめた。
【0085】
【表3】
【0086】
表3から、本発明のポリアミド樹脂組成物(実施例5)によって成形された成形体である単層(実施例6〜11)の中空成形体は、PA12を用いた単層の中空成形体(比較例11)とほぼ同等の物性を示しており、本発明が、近年需要が逼迫するPA12の代替樹脂組成物として使用できることがわかる。