(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明に基づく積層電子部品に含まれる積層コンデンサ素子の一例として、積層セラミックコンデンサ素子について説明する。
【0015】
本発明に基づく積層電子部品に含まれる積層コンデンサ素子としては、誘電体セラミックスを使用した積層セラミックコンデンサ素子の他に、誘電体樹脂フィルムを使用した積層型金属化フィルムコンデンサ素子などが採用可能である。
【0016】
以下、積層セラミックコンデンサ素子を例にとって説明する。
積層セラミックコンデンサ素子の一例を
図1に示す。積層セラミックコンデンサ素子の積層体の積層方向を厚み方向と定義し、厚み方向をHで示している。
図1では、積層セラミックコンデンサ素子20を厚み方向から平面的に見たときの長辺の方向をL、短辺の方向をWで示している。
【0017】
図1に示す積層セラミックコンデンサ素子20は、直方体状の積層体21と、積層体21の長手方向の一方の端部に設けられた外部電極24と、積層体21の長手方向の他方の端部に設けられた外部電極25とを含む。
図1に示した例では、外部電極24と外部電極25とは互いに対称な形状である。積層体21は、平板状の内部電極22と、誘電体層23とが交互に積層されたものである。内部電極22としては、外部電極24に電気的に接続され、かつ、外部電極25に電気的に接続されていないものと、外部電極25に電気的に接続され、かつ、外部電極24に電気的に接続されていないものとの2通りがある。両者は厚み方向Hに沿って交互に配置されている。厚み方向Hに沿って互いに隣接する内部電極22同士は、誘電体層23によって互いに電気的に隔てられている。
【0018】
誘電体層23は、たとえばチタン酸バリウムすなわちBaTiO
3を主材料とするセラミックスシートで構成されたものである。ただし、誘電体層23は、BaTiO
3を主材料とするものに限られず、誘電率の高いセラミックスであればよい。主材料は、BaTiO
3に代えてCaTiO
3,CaTiO
3,SrTiO
3,CaZrO
3などであってもよい。また、誘電体層23となるセラミックスシートには、セラミック粉末の副成分として、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類化合物などが添加されていてもよい。
【0019】
内部電極22は、誘電体層23を構成するセラミックスシートの表面にNiを含むペーストが印刷されることにより金属膜として形成されたものである。ただし、内部電極22の主材料はNiに限られず、たとえばNi、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどであってもよい。
【0020】
積層体21の稜線部および角部は丸められている。
外部電極24,25は、NiおよびSnなどの数種類の金属膜が順に積層された積層構造を有している。外部電極24,25の各々は、焼結金属層とめっき層との組合せからなるものであってもよい。焼結金属層は、積層体21にCu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどのペーストを焼き付けることで形成される。外部電極24,25の各々を焼結金属層とめっき層との組合せで形成することとした場合、たとえば焼結金属層上に1以上のめっき層が形成されたものであってよい。すなわち、焼結金属層上に形成される「1以上のめっき層」は、単層のめっき層であってもよく、めっき層群であってもよい。たとえば焼結金属層上のめっき層群は、Niめっき層およびこれを覆うように形成されたSnめっき層の組合せであってもよい。めっき層群は、Cuめっき層やAuめっき層を含んでいてもよい。なお、外部電極24,25は、焼結金属層を含まず、めっき層またはめっき層群のみで構成されていてもよい。
【0021】
積層セラミックコンデンサ素子20に、交流電圧が印加されるか、または交流電圧が重畳された直流電圧が印加されると、誘電体層23がもたらす圧電効果により積層セラミックコンデンサ素子20に機械的な歪みが発生する。この歪みが回路基板に伝わって回路基板を変形させることが鳴きの原因となっている。
【0022】
発明者らは、鳴きが生じる際に積層セラミックコンデンサ素子20がどのように変形しているのかを検討した。積層セラミックコンデンサ素子20の変形の例について、
図2〜
図5を参照して説明する。
図2〜
図5はいずれも積層セラミックコンデンサ素子20を回路基板側から見たところであり、
図3および
図5では、積層セラミックコンデンサ素子20の外形の変形ぶりが誇張して表示されている。
【0023】
内部電極22と回路基板の主表面とが平行である場合の変形前の積層セラミックコンデンサ素子20を回路基板側から見たところを
図2に示す。この積層セラミックコンデンサ素子20に変形が生じた状態を
図3に示す。この例では、交流電圧が印加されることにより、積層セラミックコンデンサ素子20は、
図2の状態と
図3の状態との間で交互に変化する。あるいは、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧が積層セラミックコンデンサ素子20に印加される場合には、
図3の変形度合いが弱い状態と強い状態との間で交互に変化する。
【0024】
一方、内部電極22と回路基板の主表面とが垂直である場合の変形前の積層セラミックコンデンサ素子20を回路基板側から見たところを
図4に示す。この積層セラミックコンデンサ素子20に変形が生じた状態を
図5に示す。この例では、交流電圧が印加されることにより、積層セラミックコンデンサ素子20は、
図4の状態と
図5の状態との間で交互に変化する。あるいは、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧が積層セラミックコンデンサ素子20に印加される場合には、
図5の変形度合いが弱い状態と強い状態との間で交互に変化する。
【0025】
積層セラミックコンデンサ素子20の歪みは誘電体層23の圧電効果に起因するものであるので、歪みの主な発生箇所は、内部電極22同士が誘電体層23を挟んで対向している領域、すなわち、
図2、
図4に示されるいわゆる有効領域10である。したがって、
図3、
図5のいずれの場合においても、回路基板側から見た積層セラミックコンデンサ素子20の各辺の中央付近では変位量が大きくなっているのに対して、積層セラミックコンデンサ素子20の四隅の角部15では変位量が小さくなっていることを発明者らは見出した。
【0026】
発明者らは、これらの知見に基づき、以下のように積層セラミックコンデンサ素子に所定の弾性構造体を組み合わせることによって、鳴きを低減できることを見出した。
【0027】
(実施の形態1)
(構成)
図6〜
図7を参照して、本発明に基づく実施の形態1における積層電子部品について説明する。本実施の形態における積層電子部品101の側面図を
図6に示す。積層電子部品101は、内部電極22と誘電体層23とが交互に積層され、第1主面21rを有する直方体状の積層体21と、積層体21の長手方向の少なくとも一方の端面21tおよび一方の端面21tに隣接する第1主面21rの一部を連続して覆うように設けられた外部電極24と、前記外部電極24が前記第1主面21rを覆う部分のうち少なくとも第1主面21rの角部15において外部電極24に接続された導電性の弾性構造体31とを備える。弾性構造体31は、第1主面21rに沿うように外部電極24に接続された基礎部32と、他の電極に対して接続するために基礎部32から分岐して第1主面21rから離隔した位置に延在し、弾性を有する枝部33とを含む。
【0028】
積層電子部品101の外部電極24の近傍の分解図を
図7に示す。弾性構造体31は、積層セラミックコンデンサ素子20の外部電極24に対してこのように取り付けられる。弾性構造体31の外部電極24に対する接合の方法は、導電性接着剤による接着であってもよく、はんだ付けであってもよく、溶接であってもよい。
【0029】
弾性構造体31は、たとえばNi、Fe,Cu、Ag、Crまたはこれらの金属を主成分として含む合金によって形成することができる。弾性構造体31を板材によって形成する場合、元となる板材の厚みはたとえば0.05mm〜0.5mm程度であってよい。弾性構造体31の枝部33の先端は、後述するランドとの接続時にハンダを抱えるように積層体21側に湾曲していてもよい。
図7に示した例では好ましいことに、枝部33の先端が積層体21側に湾曲している。
【0030】
(作用・効果)
本実施の形態における積層電子部品101は、弾性構造体31を備えているので、実施の形態2で後述するように弾性構造体31を介して回路基板に実装することが可能である。弾性構造体31は少なくとも角部15において外部電極24に接続されており、角部15は上述のように変位が少ない部位であるので、圧電効果による積層体21の振動は弾性構造体31に伝わりにくい。さらに、弾性構造体31に振動が伝わったとしても弾性構造体31は弾性を有する枝部33を含んでいるので、振動を減衰する役割を果たす。したがって、振動が回路基板に伝わる度合いを低減することができる。このように積層電子部品101を実装する場合には、回路基板の裏面に同等仕様の他の積層電子部品を実装する必要もなく、積層電子部品101は単独で所望の箇所に自由に実装することができる。
【0031】
したがって、本実施の形態における積層電子部品は、回路基板の設計の自由度を保ちつつ、鳴きを低減することができる積層電子部品とすることができる。
【0032】
なお、弾性構造体31において、基礎部32と枝部33とは、一体的な板材によって形成されており、枝部33は前記板材の一部を曲げて塑性変形させたことによって形成されていることが好ましい。この構成を採用することにより、部品点数の増加を抑えつつ、適切な弾性構造体を容易に実現することができる。
【0033】
ここでは外部電極24に接続された弾性構造体31に注目して説明したが、外部電極25においても別の弾性構造体が同様に接続していてよい。外部電極24と外部電極25とで、弾性構造体は対称となっていることが好ましい。
【0034】
本実施の形態では、側方から見たときに湾曲した形状の弾性構造体を備える積層電子部品101を例として挙げたが、本発明に基づく積層電子部品としては、このような形状の弾性構造体を備えるものに限らない。たとえば、
図8に示す積層電子部品102のようなものであってもよい。積層電子部品102は、弾性構造体31hを備えている。弾性構造体31hは、基礎部32から分岐して基礎部32と平行に延在する枝部33を備えている。本発明に基づく積層電子部品が備える弾性構造体としては、この他にもさまざまな形状のものが考えられる。
【0035】
(実施の形態2)
(実装構造体)
図9〜
図11を参照して、本発明に基づく実施の形態2における積層電子部品の実装構造体について説明する。本実施の形態における積層電子部品の実装構造体の側面図を
図9に示す。
【0036】
積層電子部品の実装構造体201は、基材1と、基材1に配置されたランド2と、実施の形態1で説明した積層電子部品101とを備え、積層電子部品101の枝部33はランド2に対して当接した状態でハンダ3によって接合されており、ハンダ3は基礎部32および積層体21には接していない。
【0037】
基材1は、たとえば回路基板であってよい。ランド2は、回路基板の表面に印刷などで形成された何らかの金属膜であってよい。
【0038】
基材1側から見た積層電子部品101の様子を
図10に示す。弾性構造体31は少なくとも角部15において積層セラミックコンデンサ素子20に接続している。弾性構造体31のランド2に対する接続は領域16においてなされている。
【0039】
平面的に見たときの弾性構造体31内における基礎部32は
図11においてハッチングを付した部分であるといえる。ただし、これはあくまで一例であって、これに限らない。弾性構造体31内には基礎部32にも枝部33にも属さない部分があってもよい。
【0040】
(作用・効果)
本実施の形態における積層電子部品の実装構造体201では、基材1に設けられたランド2に対する積層電子部品101の実装が、積層電子部品101の一部である弾性構造体31の枝部33をランドに当接させる形でハンダ付けによって行なわれており、このハンダ付けのハンダ3は、基礎部32および積層体21に接していないので、積層体21で生じる振動が直接ハンダ3に伝わることを防止することができる。弾性構造体31は少なくとも角部15において外部電極に接続されているので、積層体21に生じる振動は弾性構造体31には伝わりにくい。また、振動が積層体21から弾性構造体31に伝わったとしても、伝わるのは弾性構造体31の基礎部32である。弾性構造体31の中では、基礎部32から枝部33へと振動が伝播するが、枝部33は弾性を有しているので、振動は枝部33内を伝播する間に減衰する。その結果、ハンダ3およびランド2には大きな振動が伝わることは回避される。本実施の形態における積層電子部品の実装構造体201では、このようにして、回路基板の設計の自由度を保ちつつ、鳴きを低減することができる。
【0041】
本実施の形態では、積層電子部品101を例として、これを備えるものとして積層電子部品の実装構造体201について説明したが、積層電子部品の実装構造体としては、積層電子部品101に代えて積層電子部品102を備えるものであってもよい。さらに他の積層電子部品を備えるものであってもよい。
【0042】
(実装の方法)
積層電子部品101を基材1としての回路基板に実装するための方法について説明する。回路基板の実装面には、ランドが一定間隔で設けられているものとする。ランドには予めスクリーン印刷などで導電性接着剤またはハンダペーストを塗布しておく。
【0043】
ハンダペーストが用いられている場合、ハンダペーストが塗布されたランド上に積層電子部品101を載せる。この状態でこれらの構造体をリフロー炉に通すことで、ハンダからフィレットが形成され、積層電子部品101は基材1としての回路基板に固着される。
【0044】
導電性接着剤が用いられている場合、導電性接着剤が塗布されたランド上に積層電子部品101を載せ、接着を行なう。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態2では、ハンダ3によって実装する例を主に説明したが、ハンダ付けの代わりに溶接によって実装してもよい。本発明に基づく実施の形態3として、
図12を参照し、積層電子部品を基材に対して溶接により実装した例について説明する。
図12に示すように、積層電子部品の実装構造体202は、基材1と、基材1に配置されたランド2と、実施の形態1で説明した積層電子部品101とを備え、積層電子部品101の枝部33はランド2に対して溶接されている。
【0046】
本実施の形態においても、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
(弾性構造体のバリエーション)
なお、上記各実施の形態では、弾性構造体31として、平面的に見て櫛形状のものを例示して説明した。しかし、弾性構造体としてはこのような形状のものに限らず、さまざまな形状のものが考えられる。枝部33は
図11に示したように2本に分かれているとは限らない。
図13に示す弾性構造体31iのように、枝部33が1本にまとまった形状であってもよい。1つの外部電極に対応する弾性構造体は、
図14に示すように2つ以上の部分に分かれていてもよい。
図14に示した例では、弾性構造体31jは部分31aと部分31bとに分かれている。基材1側から平面的に見たときに枝部33は積層セラミックコンデンサ素子20の端の方を向いて延在しているものとは限らない。たとえば
図15に示す弾性構造体31kのように、枝部33が積層セラミックコンデンサ素子20の端とは反対側を向いて延在しているものであってもよい。弾性構造体はそもそも櫛形状とは限らず、たとえば
図16に示すように複雑な形状であってもよい。弾性構造体は、積層セラミックコンデンサ素子20の少なくとも角部15において外部電極に接続されていればよい。接続する外部電極は外部電極24,25のいずれであってもよいが、外部電極24,25の両方に対称な向きでそれぞれ接続されていることが好ましい。
【0047】
(積層セラミックコンデンサ素子の製造方法)
積層セラミックコンデンサ素子は、以下のようにして製造することができる。
【0048】
セラミック誘電体シートを準備し、セラミック誘電体シート上に内部電極を形成する。内部電極の形成方法としては、スクリーン印刷などの方法が採用可能である。次に、内部電極が形成されたセラミック誘電体シートを複数積層して、マザーブロックを形成する。マザーブロックをセラミック素体となるようチップ状に分割する。この分割のための方法としては、押切りやダイシングなどの方法が採用可能である。
【0049】
チップ状になったセラミック素体は、バレルと呼ばれる小箱内にセラミックより硬度の高いメディアボールとともに封入され、バレルを回転させることで、セラミック素体の稜線部や角部に曲面状の丸みを持たせる。
【0050】
その後、焼成し、セラミック素体を焼結させる。
次にセラミック素体の一方の端面を粘着シートに固着させることによって、粘着シート上にセラミック素体を保持し、他方の端面を導電性ペーストに浸漬する。こうしてセラミック素体に付着した導電性ペーストを乾燥させることで金属層を形成する。他方の端面についても同様に金属層を形成する。金属層を焼き付けることで焼結金属層を形成する。
【0051】
次に焼結金属層上にNiめっき、Snめっきを順に施すことで外部電極が仕上げられる。こうして、積層セラミックコンデンサ素子が完成する。
【0052】
なお、外部電極は導電性樹脂ペーストからなる外部電極であってもよい。導電性樹脂ペーストによって外部電極を形成した場合、樹脂が振動を減衰させるので、効果的に鳴きを抑制することができる。
【0053】
積層セラミックコンデンサ素子に弾性構造体を接続することによって、本発明に基づく積層電子部品が得られる。この場合の積層電子部品は、積層セラミックコンデンサである。
【0054】
(鳴きの音圧レベルの測定方法)
参考のため、鳴きの音圧レベルの測定方法について、
図17を参照して説明する。音圧レベルは、たとえば以下のようにして測定することができる。
【0055】
積層セラミックコンデンサである積層電子部品101を、厚みが1.6mmで40mm×40mmの正方形の回路基板50に実装する。このように積層電子部品101を実装した回路基板50を無響箱73内に設置する。この状態で、積層電子部品101に3kHzの周波数および1Vppの電圧を有する交流電圧を印加する。集音マイク74を回路基板50に対向するように配置して集音し、集音計76およびFFTアナライザ78で集音された音圧レベルを測定した。
【0056】
なお、上記各実施の形態において、積層電子部品の第1主面21rと積層体21内部での積層方向との関係は1通り限られない。たとえば、内部電極22の面は、第1主面21rに対して垂直であってもよい。交流電圧の周波数などの条件によっては、このように両者を垂直とした方が好ましい場合がある。あるいは、内部電極22の面は、
図6に示したように第1主面21rに対して平行であってもよい。交流電圧の周波数などの条件によっては、このように両者を平行とした方が好ましい場合がある。
【0057】
(比較実験)
(1.サンプルの用意)
発明者らは、本発明の効果の程度を確認するために比較実験を行なった。比較実験に当たっては、実験例1,2および比較例の3通りのサンプルを用意した。
【0058】
「実験例1」としては、
図18に示すような構造の積層電子部品103を用意した。積層電子部品103は、
図11に示した弾性構造体31を備える。
【0059】
「実験例2」としては、
図19に示すような構造の積層電子部品104を用意した。積層電子部品104は、
図15に示した弾性構造体31kを備える。
【0060】
「比較例」としては、弾性構造体を備えない積層電子部品を用意した。
なお、実験例1,2および比較例にそれぞれ含まれる積層セラミックコンデンサ素子20は同一仕様のものである。
【0061】
(2.音圧レベルの測定)
サンプルがハンダで接合されることにより実装された回路基板を無響箱内に設置した状態で、1kHz〜4kHzの周波数および1Vppの電圧を有する交流電圧をサンプルに印加し、集音マイクで集音し、集音計およびFFTアナライザで集音された音圧レベルを測定した。測定された音圧レベルに含まれる1kHz〜4kHzの周波数のうち最も高い値をそのサンプルの音圧レベルと定義した。このように3通りのサンプルでそれぞれ音圧レベルを測定して比較した。
【0062】
詳しい条件および測定結果を表1に示す。
【0064】
表1から明らかなように、音圧レベルの大きさは、比較例1>実験例1>実験例2となった。このことから、実験例1,2では比較例に比べて音圧レベルすなわち鳴きを小さく抑えることができていることがわかった。特に、実験例2が最も音圧レベルすなわち鳴きを小さく抑えることができていることがわかった。
【0065】
(3.考えられるメカニズム)
実験例1および実験例2が比較例に比べて鳴きが小さくなった理由は、実施の形態1の作用・効果として説明したとおり、すなわち、以下のとおりと考えられる。
【0066】
実験例1,2のいずれにおいても、弾性構造体は少なくとも角部15において外部電極24に接続されており、角部15は上述のように変位が少ない部位であるので、圧電効果による積層体21の振動は弾性構造体に伝わりにくい。さらに、弾性構造体に振動が伝わったとしても弾性構造体は弾性を有する枝部33を含んでいるので、振動を減衰する役割を果たす。したがって、振動が回路基板に伝わる度合いを低減することができていると思われる。
【0067】
さらに、実験例2が実験例1に比べて鳴きが小さくなったのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、実験例1では弾性構造体の支点が中央寄りにあるのに対して、実験例2では支点が外側寄りに存在する。そもそも
図3および
図5に示したように、積層セラミックコンデンサ素子20の変形量は積層体21の中央部に近づくほど大きくなるが、実験例1のように弾性構造体の支点が中央寄りにあると、積層セラミックコンデンサ素子20の変形によって弾性構造体の支点が大きく押されてしまうので、弾性構造体の振動吸収効果が小さくなる。一方、実験例2のように弾性構造体の支点が外側寄りにあると、たとえ
図3および
図5に示したように積層セラミックコンデンサ素子20が変形したとしても、この変形によって押される箇所は、弾性構造体の支点から離れた箇所となるので、弾性構造体の振動吸収効果が高まると考えられる。
【0068】
この実験の結果から、本発明を適用するに当たって、鳴き低減効果を大きくするには、実験例2のような構成であることが好ましいといえる。すなわち、積層電子部品が備える弾性構造体の枝部33は、積層体21の中心から遠い側から積層体21の中心に近い側に向かって、基礎部32から分岐していることが好ましいといえる。
【0069】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。