特許第6032235号(P6032235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032235熱電発電設備を備えた連続鋳造設備およびそれを用いた熱電発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032235
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】熱電発電設備を備えた連続鋳造設備およびそれを用いた熱電発電方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/12 20060101AFI20161114BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20161114BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   B22D11/12 E
   B22D11/04 311Z
   H02N11/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-71285(P2014-71285)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193011(P2015-193011A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】壁矢 和久
(72)【発明者】
【氏名】黒木 高志
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−151023(JP,A)
【文献】 特許第5832698(JP,B2)
【文献】 特開昭59−198883(JP,A)
【文献】 特開昭56−154214(JP,A)
【文献】 特許第4751322(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
F27D 17/00
H02N 11/00
H01L 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間スラブを連続鋳造するとともに、熱間スラブの熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電設備を備えた連続鋳造設備であって、
前記熱電発電設備は、熱間スラブの下方に前記熱間スラブに対峙するように設けられた熱電発電装置を有し、前記熱電発電装置は、前記熱間スラブの進行方向に対して、前記熱間スラブ下面と45°以上の角度をなすように配置されていることを特徴とする熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
【請求項2】
前記熱電発電装置は、前記熱間スラブの進行方向に複数配列されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
【請求項3】
前記熱間スラブの進行方向に隣接する熱電発電装置は、谷形または山形をなすように配置され、前記隣接する熱電発電装置が谷形をなす場合に、前記隣接する熱電発電装置の間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
【請求項4】
前記熱電発電設備は、前記熱電発電装置の側方から熱電発電装置の上面に沿ってエアパージを行うエアパージ機構を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の連続鋳造設備の熱電発電設備により、熱間スラブの熱を受熱して熱電発電を行うことを特徴とする熱電発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間スラブを連続鋳造するとともに、熱間スラブに対峙して配置された熱電発電設備を備える連続鋳造設備およびそれを用いた熱電発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種の導体または半導体に温度差を与えると、高温部と低温部との間に起電力が生じることは、ゼーベック効果として古くから知られており、このような性質を利用し、熱電発電素子を用いて熱を直接電力に変換することも知られている。
【0003】
近年、製鉄工場等の製造設備では、例えば、上記のような熱電発電素子を用いた発電により、これまで廃熱として棄ててきたエネルギー、例えば、熱間スラブなどの鋼材の輻射による熱エネルギーを利用する取組みが推進されている。
【0004】
熱エネルギーを利用する方法としては、例えば、特許文献1には、熱電素子を集合して形成される受熱装置(熱電発電装置)を高温物体に対峙して配置し、高温物体の熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、回収する方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、廃熱として処理されている熱エネルギーに、熱電素子モジュールを接触させて電気エネルギーに変換し、回収する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−198883号公報
【特許文献2】特開昭60−34084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、熱電素子を集合して形成される受熱装置を板状のスラブ連続鋳造ラインに適用できる旨の記載があるものの、特許文献1にはスラブの上方に配置する例が記載されているのみであり、より多くの輻射熱を利用して大きな発電出力を得るために有効であるスラブの下方に設置することについては検討されていない。
【0008】
実際には、スラブの下方に熱電発電装置を配置すると以下のような問題が生じる。すなわち、スラブの下方に設置すると、スケールなどの異物が落下して熱電発電装置の性能を劣化させる可能性があったり、スラブ下方には十分な空間がないため、スラブから十分な距離をとって熱電発電装置を配置できず、耐熱温度を超えるおそれがある。
【0009】
一方、特許文献2の技術は、モジュールを、熱源に対して固定する必要があるため、連続鋳造設備のように、移動する熱源に対しては適用することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、熱源が移動(流動)する連続鋳造設備において、熱電発電設備を構成する熱電発電装置を熱間スラブの下方に設けた場合に、熱電発電装置の耐熱性の問題や性能劣化の問題を抑制しつつ、熱間スラブから輻射される熱エネルギーを効率よく熱電発電装置に供給して、より多くの電気エネルギーを回収することができる、熱電発電設備を備えた連続鋳造設備およびそれを用いた熱電発電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく検討を重ねた結果、連続鋳造設備において、熱間スラブの下方に熱電発電装置を設ける場合に、熱電発電装置を熱間スラブと正対せずに角度をつけることとで、通過する熱流束を抑制して熱電発電装置の温度をその耐熱温度を超えないように保つことができるとともに、スケールなどの異物が付きにくくなることを見出した。
【0012】
本発明は、このような知見に基づくものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)熱間スラブを連続鋳造するとともに、熱間スラブの熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電設備を備えた連続鋳造設備であって、
前記熱電発電設備は、熱間スラブの下方に前記熱間スラブに対峙するように設けられた熱電発電装置を有し、前記熱電発電装置は、前記熱間スラブの進行方向に対して、前記熱間スラブ下面と45°以上の角度をなすように配置されていることを特徴とする熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
(2)前記熱電発電装置は、前記熱間スラブの進行方向に複数配列されていることを特徴とする(1)に記載の熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
(3)前記熱間スラブの進行方向に隣接する熱電発電装置は、谷形または山形をなすように配置され、前記隣接する熱電発電装置が谷形をなす場合に、前記隣接する熱電発電装置の間に隙間が設けられていることを特徴とする(2)に記載の熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
(4)前記熱電発電設備は、前記熱電発電装置の側方から熱電発電装置の上面に沿ってエアパージを行うエアパージ機構を有することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の熱電発電設備を備えた連続鋳造設備。
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の連続鋳造設備の熱電発電設備により、熱間スラブの熱を受熱して熱電発電を行うことを特徴とする熱電発電方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱電発電装置を熱間スラブと正対せずに、熱間スラブの進行方向に対して、熱間スラブ下面と45°以上の角度をなすように配置したため、正対した場合に熱電発電装置の温度がその許容温度を超える場合でも、通過する熱流束を抑制して熱電発電装置の温度をその耐熱温度を超えないように保つことができるとともに、スケールなどの異物を角度のついた表面に沿って落下させることができ、熱電発電装置の表面に異物が付きにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る連続鋳造設備を示す模式図である。
図2図1の連続鋳造設備の熱電発電設備の一例を示す図である。
図3図1の連続鋳造設備の熱電発電設備の他の例を示す図である。
図4図3の例において、隣接する熱電発電装置の間に隙間を設けた例を示す図である。
図5図1の連続鋳造設備の熱電発電設備のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造設備の概略構成を示す模式図である。
【0016】
図1に示すように、連続鋳造設備1は、取鍋(図示せず)からの溶鋼Lを一旦貯留する中間容器であるタンディッシュ2と、タンディッシュ2から溶鋼が供給されて溶鋼を凝固させる鋳型(モールド)3と、鋳型3の下方に設けられた複数のセグメント4と、熱間スラブを切断する切断機5と、熱電発電設備6とを有している。
【0017】
鋳型3は水冷構造を有しており、鋳型3内に注入された溶鋼Lは鋳型3の壁部で冷却されて凝固シェル11を形成し、内部が未凝固のスラブ12が得られ、そのスラブ12が下方に引き抜かれる。
【0018】
セグメント4は、スラブ12を支持するように対向して設けられたサポートロール13と冷却水をスプレーするスプレーノズル14からなり、複数のセグメント4の対向するサポートロール13の間に前段の湾曲部と後段の水平部を有する鋳片通路が形成される。サポートロール13のうちいくつかは駆動ロールとなっており、鋳型3で形成された内部が未凝固のスラブ12は、スプレーノズル14から供給された冷却水により冷却されつつ駆動ロールによって連続的に引き抜かれ、その際に内部の未凝固部分が徐々に固化され、位置Aで完全に凝固する。
【0019】
最終のセグメント4から搬出された熱間スラブ15は、搬送用ロール16上を搬送され、切断機5により切断される。切断機5は、例えばトーチカッターからなる。切断機5で切断された熱間スラブ15は圧延工程へ搬送される。また、最終のセグメント4の後段側には、熱間スラブ15の表面温度を測定するための温度計17が設けられている。熱間スラブ15の表面温度は通常800〜1000°程度である。
【0020】
熱電発電設備6は、搬送用ロール16上を搬送されている熱間スラブ15の下方に設けられている。
【0021】
図2に示すように、熱電発電設備6は、熱間スラブ15の下方に、熱間スラブ15に対峙するように設けられた熱電発電装置20を有している。熱電発電装置20は、特に限定されず、従来から用いられているものを用いることができる。熱電発電装置20は、両側に電極を備えたP型およびN型の半導体を接合した半導体である熱電素子を、複数対接合してなる熱電発電モジュールを用い、一または複数の熱電発電モジュールと、それら熱電発電モジュールの熱源側に設けられた受熱板と、受熱板と反対側に設けられた冷却板とで構成してもよいし、このような構成をユニット化した熱電発電ユニットを複数有するものであってもよい。熱電発電装置20は、例えば板状に構成される。
【0022】
熱電発電装置20は、熱間スラブ15の下方に、熱間スラブ15の進行方向に対して、熱間スラブ下面と45°以上の角度θをなすように配置されている。熱電発電装置20は、一枚であっても、熱間スラブ15の幅方向に複数枚配列していてもよい。
【0023】
このように熱電発電装置20を熱間スラブと正対せずに角度をつけることとで、熱電発電装置20を十分な空間が存在しない熱間スラブ15の下方に設ける場合であっても、通過する熱流束を抑制して熱電発電装置の温度をその耐熱温度を超えないように保つことができるとともに、スケールなどの異物を角度のついた表面に沿って落下させることができ、熱電発電装置20の表面に異物が付きにくくなる。角度θを45°にした場合、熱間スラブ15に正対している場合に比べて熱流束を約70%まで低減させることができ、耐熱温度内に保つことができるようになり、熱電発電装置20上に異物が落下しても異物が熱電発電装置20の表面にとどまり難くすることができる。したがって、上記効果を有効に発揮させるために、熱電発電装置20は、熱間スラブ15の進行方向に対して、熱間スラブ下面との角度θが45°以上になるようにする必要がある。
【0024】
図3は、他の実施形態を示す。この例では、熱間スラブの進行方向に対して角度θとした熱電発電装置20を熱間スラブ15の進行方向に複数並べて配置している。図3では熱間スラブ15の進行方向に2つ並べているが3つ以上であってもよい。また、この場合に、隣接する熱電発電装置20は、谷形または山形をなすように配置することが好ましい。隣接する熱電発電装置20が同じ方向を向くと、熱間スラブ15から受ける熱量が少なくなる。なお、図3は、隣接する熱電発電装置20を谷形になるように配置した例を示す。
【0025】
ただし、隣接する熱電発電装置20を谷形になるように配置した場合、谷底に相当する凹部にスケールなどの異物が溜まるおそれがある。それを防止するためには、図4に示すように、隣接する熱電発電装置20の間に隙間21を設けることが好ましい。
【0026】
図5は、さらに他の実施形態を示す。この例では、熱電発電設備6が、熱電発電装置20の側方から熱電発電装置20の上面に沿ってエアパージを行うエアパージ機構22を有する。これにより、たとえスケール等の異物が熱電発電装置20の上に溜まってしまっても、異物を容易に除去することが可能である。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、熱電発電設備の配置位置は、熱間スラブの下方位置であれば特に制限はない。また、熱電発電装置は、熱間スラブの進行方向に対して、熱間スラブ下面と45°以上の角度をなすように配置されてさえいれば、その配置形態は上記実施形態に限るものではない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について説明する。
ここでは、BiTe系熱電素子を用いて構成された熱電発電装置を、図4に示すように熱間スラブの下方に設置した。熱電発電装置として幅2mのものを用い、幅方向中心を熱間スラブ下方1mの距離として、熱間スラブの進行方向に対して、スラブ下面と60°の角度をつけて合計20m設置した。熱間スラブの温度は、900℃であった。その結果、以上のように熱間スラブ下方に配置した熱電発電装置により60kWの発電に成功した。
【符号の説明】
【0029】
1 連続鋳造設備
2 タンディッシュ
3 鋳型(モールド)
4 セグメント
5 切断機
6 熱電発電設備
11 凝固シェル
12 内部が未凝固のスラブ
13 サポートロール
14 スプレーノズル
15 熱間スラブ
20 熱電発電装置
図1
図2
図3
図4
図5