特許第6032257号(P6032257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032257電動パワーステアリング装置の制御方法、電動パワーステアリング装置及びそれを搭載した車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032257
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置の制御方法、電動パワーステアリング装置及びそれを搭載した車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20161114BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161114BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20161114BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D113:00
   B62D119:00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-208351(P2014-208351)
(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公開番号】特開2016-78483(P2016-78483A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】大島 淳
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−067429(JP,A)
【文献】 特開平06−199244(JP,A)
【文献】 特開2013−091443(JP,A)
【文献】 特開2007−008242(JP,A)
【文献】 特開2010−173375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−6/10
113/00、119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パワーステアリング装置の制御方法であり、
トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置のコラム軸のハンドル側に設けた角度センサ1により前記トーションバー上側角度を検出すると共に、前記トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置の前記コラム軸の操向車輪側に設けた角度センサ2により前記トーションバー下側角度検出し、前記上側角度又は前記下側角度の一方を用いて他方の角度目標値を設定し、前記他方の実角度を検出し、前記角度目標値と前記実角度の偏差に基づいて角度追従フィードバック制御を実施し、
前記角度目標値を設定する角度及び検出実角度が、前記トーションバー下側角度であり、
前記トーションバー上側角度、モータ電流及び車両情報に基づいて路面反力及び路面情報を算出し、前記路面反力及び前記路面情報に基づいて前記角度目標値を算出するようになっている電動パワーステアリング装置の制御方法。
【請求項2】
電流指令値に基づいてモータを駆動することにより、操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置において、
トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置のコラム軸のハンドル側に設けたトーションバー上側角度を検出する角度センサ1と、
前記トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置の前記コラム軸の操向車輪側に設けたトーションバー下側角度を検出する角度センサ2と、
前記トーションバー上側角度又は前記トーションバー下側角度の一方、モータ電流及び車両情報を用いて角度目標値を設定する目標角度演算部と、
前記角度目標値と実角度の偏差に基づいて角度追従制御を実施する角度追従制御部と、
を具備し、前記目標角度演算部及び前記角度追従制御部により前記電流指令値を演算し
前記目標角度演算部が、
路面反力及び路面情報を算出する路面反力/路面情報算出部と、前記路面反力及び前記路面情報に基づいて前記角度目標値を算出する角度目標値算出部とで構成されている電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記路面反力/路面情報算出部が、
前記角度センサ1の上側角度及び車速に基づいて基準モデルの路面反力を算出する基準モデルと、前記基準モデルの路面反力及び前記モータ電流に基づいて前記路面反力及び前記路面情報を算出する反力修正路面情報算出部とで構成されている請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記角度目標値算出部が、
前記路面反力及び前記路面情報に基づいて理想操舵トルクを算出する理想操舵力算出部と、前記角度センサ1の上側角度及び前記理想操舵トルクに基づいて前記角度目標値を算出する角度目標値とで構成されている請求項又はに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記角度センサ1及び2の分解能が0.02°以下である請求項乃至のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
電流指令値に基づいてモータを駆動し、ウォーム及びウォームホイールの噛み合いにより操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置において、
トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置のコラム軸のハンドル側に設けたトーションバー上側角度を検出する角度センサ1と、
前記トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置の前記コラム軸の操向車輪側に設けたトーションバー下側角度を検出する角度センサ2と、
前記トーションバー上側角度又は前記トーションバー下側角度の一方、モータ電流及び車両情報を用いて角度目標値を設定する目標角度演算部と、
前記角度目標値と実角度の偏差に基づいて角度追従制御を実施する角度追従制御部と、
を具備し、
前記目標角度演算部及び前記角度追従制御部により前記電流指令値を演算し、
前記トーションバー上側角度、モータ電流及び車両情報に基づいて路面反力及び路面情報を算出し、前記路面反力及び前記路面情報に基づいて前記角度目標値を算出するようにし、
前記ウォーム及び前記ウォームホイールの噛み合い隙間がゼロ乃至負になっている電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ウォームの回転軸の回転方向以外はリジッドに固定されている請求項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記ウォームの支持軸受が深溝玉軸受及び4点接触玉軸受である請求項又はに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記ウォームの支持軸受が深溝玉軸受2個で支持されており、組み立て時に剛体でアキシアル方向に予圧をかけ軸受隙間をゼロ乃至負にしている請求項又はに記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
請求項乃至に記載の電動パワーステアリング装置を搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシスト制御を目標角度演算部と角度追従制御部に分け、フィーリングに関する項目は目標角度演算部で実施し、角度追従制御部で応答性、安定性、外乱抑制を実施する電動パワーステアリング装置の制御方法、電動パワーステアリング装置及びそれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを制御するモータ制御装置を搭載した装置として電動パワーステアリング装置(EPS)があり、電動パワーステアリング装置は、車両のステアリング機構にモータの回転力でアシスト力(操舵補助力)を付与するものであり、インバータから供給される電力で制御されるモータの駆動力を、減速機構を含む伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸にアシスト力を付与する。
【0003】
かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシスト力を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っており、モータとしては保守性に優れたブラシレスモータが一般的に使用されている。
【0004】
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構(ウォームとウォームホイールの噛み合い機構)3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、トーションバーを有するコラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10及び操舵角θを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速機構3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTsと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって、EPS用モータ20に供給する電流を制御する。
【0005】
なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、また、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転位置センサから操舵角を取得することも可能である。
【0006】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能であり、コントロールユニット30は電子部品等を装着された制御基板を有している。
【0007】
コントロールユニット30は主としてCPU(MCU、MPU等も含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
【0008】
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTs及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN50からの)車速Vsは、電流指令値Iref1を演算する電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTs及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。電流指令値Iref1は加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差I(Irefm−Im)が演算され、その偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。
【0009】
加算部32Aには補償信号生成部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部34は、セルフアライニングトルク(SAT)34−3と慣性34−2を加算部34−4で加算し、その加算結果に更に収れん性34−1を加算部34−5で加算し、加算部34−5の加算結果を補償信号CMとしている。収れん性34−1、慣性34−2、セルフアライニングトルク(SAT)34−3は、いずれもモータ角速度を算出要因の1つとしている。
【0010】
このように従来の電動パワーステアリング装置では、トルクアシスト制御は、トルクセンサにて検出したトルクに基づいてアシストトルクを設定し、加えてモータの角速度により摩擦補償や慣性補償を行い、更に各機能を満たすための種々の補償器や上位(車)要求の制御機能を有しており、その各補償器等が影響しあった結果がトーションバーの捩れトルクとして運転者に返ってくるようになっている。そのため、機能が増えれば増えるほど制御設計が複雑になり、更にフィーリングをチューニングするには高度な技術が必要である。また、機械部の摩擦の経年変化や、個々のバラツキによってもフィーリングが変化し易い制御構造となっている。
【0011】
かかる問題を解決することを目途とした電動パワーステアリング装置として、例えば特開2002−160653号公報(特許文献1)では、車両反力と路面情報(摩擦係数)を算出して目標値(トーションバートルク)を設定し、実トルクとの偏差に基づいて制御を行っている。また、特開2004−203089号公報(特許文献2)では、目標値(トーションバートルク)を設定し、実トルクとの偏差に基づいて制御を行っている。更に特開2009−57017号公報(特許文献3)では、トーションバーの上側と下側の角度情報を用いて操舵用モータを制御している。
【0012】
また、従来の減速機構を構成するウォームとウォームホイールの噛み合いでは、隙間(バックラッシュ)があると歯打ち音が発生する。また、隙間を詰め過ぎると摩擦トルクが大きくなり、ハンドル中立付近でのフィーリングが悪化する。そのため、バックラッシュ管理は部品を精度良く管理し、また、組み付けも精度良く管理する必要がある。この問題を解決するために、バネやゴムなどを用いて予圧をかけてバックラッシュを抑えつつ、摩擦を増やさない機構が提案されている(特許第4196831号公報(特許文献4))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−160653号公報
【特許文献2】特開2004−203089号公報
【特許文献3】特開2009−57017号公報
【特許文献4】特許第4196831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、摩擦補償などの個別の補償部が必要なく、機械部の経年変化等にも角度追従制御のフィードバック制御により補償でき、目標角度演算部で設計したフィーリングを常に実現することができ、特にオンセンターフィーリングの向上が容易に実現でき、機能追加等による他の機能や安定性への影響が明確になる電動パワーステアリング装置の制御方法、電動パワーステアリング装置及び車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では角度目標値(トーションバー上側又は下側)を設定し、実角度との偏差から角度制御を実施している。
【0016】
本発明は、電動パワーステアリング装置の制御方法であり、トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置のコラム軸のハンドル側に設けた角度センサ1により前記トーションバー上側角度を検出すると共に、前記トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置の前記コラム軸の操向車輪側に設けた角度センサ2により前記トーションバー下側角度検出し、前記上側角度又は前記下側角度の一方を用いて他方の角度目標値を設定し、前記他方の実角度を検出し、前記角度目標値と前記実角度の偏差に基づいて角度追従フィードバック制御を実施し、前記角度目標値を設定する角度及び検出実角度が、前記トーションバー下側角度であり、前記トーションバー上側角度、モータ電流及び車両情報に基づいて路面反力及び路面情報を算出し、前記路面反力及び前記路面情報に基づいて前記角度目標値を算出するようになっていることにより達成される。
【0017】
また、本発明は、電流指令値に基づいてモータを駆動することにより、操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置のコラム軸のハンドル側に設けたトーションバー上側角度を検出する角度センサ1と、前記トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置の前記コラム軸の操向車輪側に設けたトーションバー下側角度を検出する角度センサ2と、前記トーションバー上側角度又は前記トーションバー下側角度の一方、モータ電流及び車両情報を用いて角度目標値を設定する目標角度演算部と、前記角度目標値と実角度の偏差に基づいて角度追従制御を実施する角度追従制御部と、を具備し、前記目標角度演算部及び前記角度追従制御部により前記電流指令値を演算し、前記目標角度演算部が、路面反力及び路面情報を算出する路面反力/路面情報算出部と、前記路面反力及び前記路面情報に基づいて前記角度目標値を算出する角度目標値算出部とで構成されていることにより達成される
【0018】
更に、本発明は、電流指令値に基づいてモータを駆動し、ウォーム及びウォームホイールの噛み合いにより操舵系をアシスト制御する電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置のコラム軸のハンドル側に設けたトーションバー上側角度を検出する角度センサ1と、前記トーションバーを挟んで前記電動パワーステアリング装置の前記コラム軸の操向車輪側に設けたトーションバー下側角度を検出する角度センサ2と、前記トーションバー上側角度又は前記トーションバー下側角度の一方、モータ電流及び車両情報を用いて角度目標値を設定する目標角度演算部と、前記角度目標値と実角度の偏差に基づいて角度追従制御を実施する角度追従制御部とを具備し、前記目標角度演算部及び前記角度追従制御部により前記電流指令値を演算し、前記トーションバー上側角度、モータ電流及び車両情報に基づいて路面反力及び路面情報を算出し、前記路面反力及び前記路面情報に基づいて前記角度目標値を算出するようにし、
前記ウォーム及び前記ウォームホイールの噛み合い隙間がゼロ乃至負になっていることにより達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電動パワーステアリング装置のアシスト制御を、フィーリングに関する項目を実施する目標角度演算部と、応答性、安定性、外乱抑制を実施する角度追従制御部とに分けているため、摩擦補償などの個別の補償部が必要なく、また、機械部の経年変化等にも角度追従制御のフィードバック制御により補償でき、目標角度演算部で演算した目標角度のフィーリングを常に維持することができる。その結果、特にオンセンターフィーリングの向上が容易に実現でき、更に目標角度演算部と角度追従制御部とが分離されているので、機能追加等による他の機能や安定性への影響が明確になるという利点がある。
【0020】
また、本発明によれば角度追従制御部を有しているので、今後の技術として注目されている自動運転等においても、上位(車)からの位置指令に対して、位置制御部を新たに設けることなく、そのまま位置制御を実施することができる。
【0021】
更に、従来のEPS制御における減速機構のハードウェア構成では、ウォームとウォームホイールとの間の摩擦が大きくなり、また、モータの慣性が運転者に伝わり易い構造となってしまうため、バネなどによる予圧機構やゴムダンパなどで対応している。しかしながら、本発明では、摩擦や慣性の補償はバラツキ等によらず角度追従制御で補償できるため、運転者に違和感を感じさせることがない。
本発明の制御構成と減速機構のハード構成を組み合わせることにより、目標のフィーリングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
図2】電動パワーステアリング装置のコントロールユニット(ECU)内の制御構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態の一例を示すブロック図である。
図4】本発明のEPS操舵系と各種センサの設置例を示す構造図である。
図5】路面反力/路面情報算出部の構成例を示すブロック図である。
図6】角度目標値算出部の構成例を示すブロック図である。
図7】減速機構の軸受構造例を示す断面図である。
図8】減速機構の軸受構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、電動パワーステアリング装置のアシスト制御を、フィーリングに影響する目標角度演算部と、応答性、安定性、外乱抑制に影響する角度追従制御部とに分け、フィーリングに関する項目は目標角度演算部で実施し、角度追従制御部で応答性,安定性,外乱抑制を実施するようにしている。そのため、摩擦補償、慣性補償などの個別の補償部を設ける必要がなく、機械部の経年変化等に対しても角度追従制御のフィードバック制御で補償でき、目標角度演算部で演算したフィーリングを常に実現することができる。また、オンセンターフィーリングの向上が容易に実現可能であり、機能追加等による他の機能や安定性への影響が明確になる。
【0024】
更に、本発明では、減速機構のハードウェア構成として、ウォームとウォームホイールの噛み合わせの隙間(バックラッシュ)をゼロ乃至負とすると共に、ウォームをリジッドに固定し、回転方向以外の自由度は殆どないようにしている。そのため、歯打ち音が発生することもなく、モータ出力角度からトーションバー下側角度までの剛性を上げることができ、制御し易いハードウェア機構となっている。それにより、角度追従制御の性能向上へ貢献できると共に、フィーリングの向上が望める。
【0025】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図3は本発明の実施形態の一例を示しており、アシスト制御を行う制御部を目標角度演算部110と角度追従制御部120とに分け、フィーリングに関する項目は目標角度演算部110で実施し、応答性、安定性、外乱抑制の制御を角度追従制御部120で実施する。目標角度演算部110は、路面反力/路面情報算出部111及び角度目標値算出部112で構成されている。路面反力/路面情報算出部111は、上側角度センサで検出されたハンドル角度θ、電流検出器で検出されたモータ電流Im、車両情報としての車速Vsに基づいて路面反力Fr及び路面情報(摩擦係数)μを算出し、角度目標値算出部112は路面反力Fr及び路面情報(摩擦係数)μに基づいて角度目標値θ2refを算出する。手に感じるトルク(トーションバートルク)を設定する場合は、ハンドル角度θ,トーションバーのバネ定数Ktを用いて
角度目標値θ2refを算出する。角度追従制御部120は、減算部101で求められる角度目標値θ2refと、EPS操舵系/車両系100で検出された実角度θとの偏差に基づき、制御する実角度フィードバック制御となっており、角度追従制御部120で求められたモータ電流指令値Irefは加算部102に入力される。加算部102には外乱103が入力され、その加算結果がEPS操舵系/車両系100に入力されて電動パワーステアリング装置がアシスト制御する。
【0027】
図4は、本発明におけるEPS操舵系と各種センサの設置例を示す構造図であり、操向車輪8L,8Rには路面反力Fr及び路面情報μが作用し、トーションバー2Aを挟んでコラム軸2のハンドル側には上側角度センサ(角度θ)が設けられ、トーションバー2Aを挟んでコラム軸2の操向車輪側には下側角度センサ(角度θ)が設けられている。上側角度センサ及び下側角度センサの分解能は、いずれも0.02°以下である。また、モータ20のモータ電流Imは電流検出器で検出される。
【0028】
図5は路面反力/路面情報算出部111の構成例を示すブロック図であり、トーションバー2Aの上側角度センサの角度θ(≒ハンドル角度)と車速Vsにより、基準モデル(標準路面)111−1の路面反力Fraを算出する。その際の基準モータ電流も算出し、実際のモータ電流Imとの比較により、反力修正路面情報算出部111−2は路面反力Fraを修正すると共に、路面情報(摩擦係数)μを算出する。このように少ない情報で路面反力Fr及び路面情報(摩擦係数)μを算出することができる。
【0029】
また、車両情報としてヨーレートVや横加速度情報G、横すべり角などを反力修正路面情報算出部111−2に入力し、より精度の高い路面反力Frを算出しても良い。更には、タイヤセンサやラック軸力測定センサを用いて路面反力Frを直接測定しても良い。精度良く路面反力を計算することにより、路面情報を的確に伝達することができる。
【0030】
また、図6は角度目標値算出部112の構成例を示すブロック図であり、理想操舵力算出部112−1及び角度目標値算出部112−2で構成されている。理想操舵力算出部112−1は路面反力Fr及び路面情報μに基づき、運転者の手に伝えるべき理想操舵トルクTrefを算出する。理想操舵トルクTrefは角度目標値算出部112−2に入力され、角度目標値算出部112−2で上側角度センサの角度θの情報に基づいて角度目標値θ2refが算出される。
【0031】
このように、本発明では、従来のトルク制御に対して、フィーリングに影響する項目を実施する目標角度演算部110と応答性や安定性等に影響する項目を実施する角度追従制御部120とが分離されており、角度追従制御部120の帯域を必要値に設定(応答性,外乱抑制等)することにより、従来個別に設定していた摩擦補償や慣性補償などが必要なくなる。また、機械部の経年変化等も角度追従制御のフィードバック制御により補償できるため、目標角度演算部110で演算(設計)したフィーリングを常に実現することができる。
【0032】
その結果、特に今まで課題とされており、チューニングが難しかったオンセンターフィーリングの向上が容易に実現できる。目標角度演算部110と角度追従制御部120とが分かれていることにより、機能追加等による他の機能や安定性への影響が明確になる。
【0033】
更に、従来のトルクセンサによる検出トルクからアシスト力を決定するのではなく、路面情報を基本としてアシストトルクを算出しているので、路面反力Fr及び路面情報μを運転者は的確に感じることができる。
【0034】
特許文献1に開示されているようなトルク目標値制御では、ハンドル角度センサとトルクセンサを用いてトルク目標値を設定しているが、ハンドル角度センサの分解能は通常0.1°程度であるため、目標値を生成するには粗い。ハンドル角0.1°以内はフィーリングが変わらないので、違和感を感じ易い。これに対して、本発明はトーションバー2Aを挟んで設けられる2つの角度センサの分解能を0.02°以下としているため、より精度良く目標値を設定でき、違和感のない制御を実現することができる。また、トルク目標値ではなく、角度目標値制御になっているため、今後の技術として注目されている自動運転等においても、上位(車)からの位置指令に対して、位置制御部を新たに設けることなく、そのまま位置制御を実施することができる。更に、目標値がトーションバー下側の角度センサであるため、車のタイヤの切れ角に近い値(トーションバーの捩れの影響を排除した状態で)で制御することができる。
【0035】
本実施形態ではコラムEPSを例に挙げて説明したが、ピニオンEPS、デユアルピニオンEPS、ボールネジ式ラックピニオンEPSへも適用可能である。
【0036】
一方、従来の減速機構を構成するウォームとウォームホイールの噛み合いでは、隙間(バックラッシュ)があると歯打ち音が発生し、隙間を詰め過ぎると摩擦トルクが大きくなり、ハンドル中立付近でのフィーリングが悪化する問題があった。そのため、バックラッシュ管理は部品を精度良く管理し、また、組み付けも精度良く管理する必要がある。
【0037】
かかる問題に対して、本発明では、減速機構のハードウェア構成として、ウォームとウォームホイールの噛み合わせの隙間(バックラッシュ)をゼロ乃至負とし、また、ウォームを軸受にリジッドに固定し、回転方向以外の自由度は殆どないようにしている。つまり、ウォーム支持軸受のガタを極力なくし、ウォームの自由度を回転方向以外について極力ゼロとしている。
【0038】
この構造により、モータ出力角度からトーションバー下側の角度センサθまでの剛性を上げることができ、制御し易いハードウェアとなっている。このため、角度追従制御の性能向上に貢献できると共に、フィーリングの向上が望める。また、ウォームとウォームホイールの噛み合わせの隙間をゼロ乃至負としているので、歯打ち音が発生することもない。歯打ち音の心配はないが摩擦が大きくなり、フィーリングの悪化が懸念されるが、上記分離制御の構成になっているため、摩擦は角度追従制御により補償され、フィーリングの向上を実現することができる。
【0039】
図7及び図8はそれぞれ減速機構の軸受構造の例を示しており、図7は「深溝玉軸受+4点接触玉軸受」を、図8は「深溝玉軸受+深溝玉軸受+軸方向予圧」を示している。図7の軸受構造では、軸方向荷重は4点接触玉軸受303で支持され、アキシアル隙間は殆どない。また、図8の軸受構造では、アキシアル方向の荷重を2つの軸受304及び305で分担し、アキシアル隙間がなくなるように軸方向に予圧がかかるような寸法で取り付ける。予圧は、止め輪やナット等の剛体で行う。
【0040】
いずれの例も、モータ20の主力軸20Aにはウォーム301がリジッドに固定されており、軸方向にゴムダンパはなく、軸方向には動かず、自由度は回転方向のみである。そのため、軸方向及び半径方向の剛性は高い。また、ウォーム301にはウォームホイール302が噛み合わされており、噛み合いの隙間はゼロ乃至負となっている。
【0041】
このようにウォーム301がリジッドに固定され(自由度は回転方向のみ)、ウォーム301とウォームホイール302の噛み合い隙間(バックラッシュ)もないため、モータ20の出力軸20Aからトーションバーの下側角度センサまでの機械的剛性が高くなる。このため、角度追従制御の性能(応答性,安定性等)が向上し、フィーリングを向上させることができる。軸方向や半径方向にゴムダンパやバネ予圧があると、モータ出力からの剛性がゴムにより低下し、応答性が悪化してしまい、その機械的剛性に制限された制御設計しかできない。また、本構成により摩擦の増加や慣性感の増加によるフィーリングの悪化が懸念されることに関しては、角度追従制御の応答性の向上により制御部全体で補償されるため、より良いフィーリングを実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
3 減速機構
10 トルクセンサ
12 車速センサ
14 舵角センサ
20 モータ
30 コントロールユニット(ECU)
100 EPS操舵系/車両系
110 目標角度演算部
111 路面反力/路面情報算出部
111−1 基準モデル(標準路面)
111−2 反力修正路面情報算出部
112 角度目標値算出部
112−1 理想操舵力算出部
112−2 角度目標値算出部
120 角度追従制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8