特許第6032261号(P6032261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032261
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】マイクロチップの試料処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20161114BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   G01N35/10 A
   G01N37/00 101
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-222203(P2014-222203)
(22)【出願日】2014年10月31日
(62)【分割の表示】特願2009-532229(P2009-532229)の分割
【原出願日】2008年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-25818(P2015-25818A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2007-233574(P2007-233574)
(32)【優先日】2007年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】麻生川 稔
(72)【発明者】
【氏名】萩原 久
(72)【発明者】
【氏名】平松 徹
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−101428(JP,A)
【文献】 特開2001−004628(JP,A)
【文献】 特開2007−093266(JP,A)
【文献】 特開2007−108075(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099736(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/046433(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/132324(WO,A1)
【文献】 特開2005−027559(JP,A)
【文献】 特開2006−149215(JP,A)
【文献】 特開2006−132965(JP,A)
【文献】 特開2005−176836(JP,A)
【文献】 特開2006−262788(JP,A)
【文献】 特開2006−170654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を充填する試料容器と、
前記試料に含まれる微細な成分を吸着する吸着部材を備える反応容器と、
前記試料容器の下部と前記反応容器の下部とを連接する流路を備え、
前記反応容器から前記流路への前記試料の移送方向に対して垂直方向における前記反応容器の断面積は、前記反応容器から前記流路への前記試料の移送方向に対して垂直方向における前記流路の断面積よりも大きく構成されたマイクロチップの試料処理装置であって、
前記試料容器から前記反応容器に移送された前記試料は、試料移送前から前記反応容器内にある前記吸着部材と前記反応容器で混ざり、
圧力媒体の作用により、前記試料が少なくとも前記流路を介して、前記試料容器と前記反応容器との間を繰り返し移送されることにより、試料を攪拌して吸着部材と混合させることを特徴とするマイクロチップの試料処理装置。
【請求項2】
前記反応容器内の前記試料に圧力を与えることにより、前記試料に含まれる微細な成分を吸着した前記吸着部材を前記反応容器に残しながら前記試料を廃棄することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップの試料処理装置。
【請求項3】
抽出容器と、
前記反応容器と前記抽出容器を連接する第2の流路と、をさらに備え、
第2の試料を前記反応容器に移送することにより、吸着部材に吸着した微細な成分を第2の試料内に溶解させ、
前記反応容器から前記第2の流路への前記試料の移送方向に対して垂直方向における前記反応容器の断面積は、前記反応容器から前記第2の流路への前記試料の移送方向に対して垂直方向における第2の流路の断面積よりも大きく、
圧力媒体の作用により、前記第2の試料が少なくとも前記第2の流路と前記反応容器との間を繰り返し移送されることにより、微細な成分を第2の試料内に溶解させることを特徴とする請求項2に記載のマイクロチップの試料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な成分、例えば遺伝子の抽出・分析等に用いられる複数の反応容器及び試薬容器を有し、さらに反応容器及び試薬容器の間を微細な流路で連接したマイクロチップの試料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特開2003−248008号公報(特許文献1)や特開2006−55025号公報(特許文献2)に記載されているように、遺伝子や核酸の抽出・分析において、微量容器内に充填された試料や反応液を攪拌する機構が開発されている。
【0003】
また、マイクロチップと称される極微量である数μLの試料を反応させ分析する技術が、Branejerg et al., "Fast Mixing by Lamination", Proc. IEEE Micro Electro Mech. Syst. Conf. (MEMS '96), pp. 441-446, (1996).(非特許文献1)、 Mengeaud et al., "Mixing Processes in a Zigzag Microchannel: Finite Element Simulations and Optical Study", Analytical Chemistry, vol. 74, no. 16, pp. 4279-4286, (2002).(非特許文献2)、Jia-Kun et al., "Electroosmotic flow mixing in zigzag microchannels", Electrophoresis, vol. 28. no. 6. pp. 975-983, (2007).(非特許文献3)に記載されている。
【0004】
具体的には、上記特許文献1は、「反応溶液中に含まれる磁気ビーズに反応容器の外部から磁場の変動を与えることで反応液を攪拌する」として反応容器上に複数の電磁石を周回させ、順次励磁させ磁力により反応容器内の磁気ビーズを巡回・移動し、その結果反応容器内の反応液を攪拌、混合せしめる機構となっている。さらに、特許文献1には、実施例として「反応容器は約20mm×60mm、その厚みは約0.2mmであり、容量は約250μLである」と記載されている。
【0005】
また、上記特許文献2には、「微小反応容器中に設けられた微小ヒータを連続的にパルス加熱し、発生したバブルの膨張、凝縮により反応液を攪拌」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−248008号公報
【特許文献2】特開2006−55025号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Branejerg et al., "Fast Mixing by Lamination", Proc. IEEE Micro Electro Mech. Syst. Conf. (MEMS '96), pp. 441-446, (1996).
【非特許文献2】Mengeaud et al., "Mixing Processes in a Zigzag Microchannel: Finite Element Simulations and Optical Study", Analytical Chemistry, vol. 74, no. 16, pp. 4279-4286, (2002).
【非特許文献3】Jia-Kun et al., "Electroosmotic flow mixing in zigzag microchannels", Electrophoresis, vol. 28. no. 6. pp. 975-983, (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示される従来技術は、複数の電磁石を反応容器上に設置しなければならず、反応容器が数μLという極微量な反応容器には設置不可能である。さらに、特許文献1に示された従来技術は、複数の電磁石を順次励磁させる複雑な制御機構を必要とし、マイクロチップ内の反応容器を攪拌する手段としては大型化されると共に、消費電力も多くなるという問題点がある。
【0009】
また、上記特許文献2に示される従来技術は、反応容器内に設けたヒータにより反応液内にバブルを発生せしめ、バブルの膨張・凝縮によって生じる力の作用により反応液を攪拌せしめるものである。しかるに、バブルとして発生する空気や、ヒータによる温度上により試料や反応液の機能が低下したり、バブルの発生量をコントロールするという難しい制御が必要であるなどの問題があった。さらに、数μLという極微量な反応容器内に収納するヒータや、適正な温度制御を行う制御機構を必要とし、装置が複雑で、大型化されるという問題点がある。
【0010】
また、非特許文献1に示される従来技術では、2種類の溶液が流れる2本の流路を立体的に交差配置し、溶液の混合と分離を繰り返すことにより、溶液を攪拌している。しかるに、立体的に2本の流路を立体的に精度高く配置することは、容易では無い。また、充分に攪拌するためには、立体的に交差配置の部分を数多く設置する必要があり、空間的に大きくなってしまう。加えて、交差配置された流路を流れ終わった後に、攪拌物が生成されるので、流す試料が有る程度以上必要となってしまう。
【0011】
また、非特許文献2に示される従来技術では、2種類の溶液が流れる2本の流路を1本にまとめ、その後にジグザグ形状の流路を通すことにより、溶液を攪拌している。しかるに、充分に攪拌するためには、ジグザグ形状流路の部分を長距離通過する必要があり、空間的に大きくなってしまう。また、ジグザグ形状流路を流れ終わった後に、攪拌物が生成されるので、流す試料が有る程度以上必要となってしまう。加えて、溶液の粘性やジグザグの形状にしたがって、流路を流す速度を調整しないと、望んだ攪拌が得ることが出来ないので、流速の高精度な制御が必要となる。
【0012】
また、非特許文献3に示される従来技術では、非特許文献2に示される従来技術と同様のものであるが、攪拌の効率を向上させ、ジグザグ形状流路の部分が有る程度短くするために、ジグザグ形状流路の途中を、200μmから25μmの流路と絞り込んでいる。しかるに、25μmの流路を精度高く配置することは容易ではない。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、構造が簡単でしかもコンパクトで、かつ極めて小型・安価で信頼性の高いマイクロチップの試料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のマイクロチップの試料処理装置は、
試料を充填するための試料容器と、
試料容器と流路を介して連接されかつ試料を順次移送充填して混合せしめる反応容器とを有し、
試料容器と反応容器との間で流路を介して試料の移送を繰り返し行うことにより、試料を攪拌し混合させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マイクロチップの試料処理装置の機構が簡易化、小型化される。さらに、微量な試料においても高効率で微細な成分の抽出が可能となり、高価な試料の消費が減少でき分析コストの低減となる。さらに、移送(送液)および抽出時間の短縮が可能となり、作業の大幅な効率向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のマイクロチップの試料処理装置の構成を示す斜視図および論理回路図である。
図2】本発明におけるマイクロチップの機構構成を示す斜視図である。
図3】本発明における初期状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図4】本発明における第1段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図5】本発明における第2段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図6】本発明における第4段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図7】本発明における第5段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図8】本発明における第6段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図9】本発明における第7段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図10】本発明における第8段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図11】本発明における第9段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図12】本発明における第10段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図13】本発明における第12段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面斜視図である。
図14】本発明における第12段階の動作状態を示すマイクロチップの一部の断面図である。
図15】本発明の動作を示すフローチャートである。
図16】本発明における他のマイクロチップの機構構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のマイクロチップの試料処理装置の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明におけるマイクロチップを使用し、マイクロチップを用いた解析装置で試料を反応・抽出させる機構の構成を示す斜視図である。また、空気圧回路部はJIS論理記号で示してある。
【0019】
機枠1にはテーブル3が支柱2を介し設けられ、さらにテーブル3には、Oリング6に周囲をシールされた廃棄穴5が設けられている。また,廃棄穴5は、廃棄電磁弁7、チューブ7aを介し機枠1上に設けられた廃棄槽8に接続されている。また、テーブル3の上面にはマイクロチップ50に設けられたピン穴55a、55bと合致し所定の位置に案内するためのピン10a、10bが凸状に設置されている。さらに、テーブル3にはヒンジ9を介し、締結ネジ25と、周囲をOリング26でシールされ貫通した加圧穴22a、22b、22c、22d、22eおよび周囲をOリング27でシールされたシャッタ加圧穴23a、23b、23c、23d、23e、23fおよび同様にOリング27でシールされた空気供給穴24を有するカバー20が、A及びB方向に回動可能に設けられている。さらに、テーブル3上の一端には締結ネジ25と一致する位置にネジ穴4が設けられている。
【0020】
さらに、カバー20を貫通する状態で設けられた加圧穴22a、22b、22c、22d、22eは、それぞれチューブ17a、17b、17c,17d、17eにより加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16eの二次側に導接されている。さらに、シャッタ加圧穴23a、23b、23c、23d、23e、23fは、それぞれチューブ19a、19b、19c、19d、19e、19fによりシャッタ電磁弁18a、18b、18c、18d、18e、18fの二次側に、また空気供給穴24はチューブ29により空気供給電磁弁28の二次側に接続されている。加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16eおよびシャッタ電磁弁18a、18b、18c、18d、18e、18fおよび空気供給電磁弁28の一次側は蓄圧器11に接続され、蓄圧器11にはモータ13により駆動されるポンプ12と内部圧力を検出する圧力センサ14が接続されている。また、テーブル3にはマイクロチップ50の所定部を下面から所定の温度に制御する温度調整ユニット30が設けられている。
【0021】
一方、あらかじめ設定されたプログラムを実行するコントローラ15には加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16eおよび廃棄電磁弁7、シャッタ電磁弁18a、18b、18c、18d、18e、18fおよび空気供給電磁弁28が動作制御可能に接続されている、さらに、コントローラ15には蓄圧器11内の圧力を所定圧に制御可能なようにポンプ12を駆動するモータ13および蓄圧器11内の圧力を検出しフィードバックを行う圧力センサ14が接続されている。以上の構成によりコントローラ15からの指令により蓄圧器11内の圧力は常に所定の圧力に保たれている。また、温度調整ユニット30も同様にコントローラ15に接続され、あらかじめプログラムされた温度制御を行う構成となっている。
【0022】
ここでは、圧力を介する媒体として、空気を一例として説明しているが、圧力を媒介できる物質(例えば気体、液体、ゲル)であれば、同様な効果を得ることが可能であり本発明は圧縮空気に限定されるものではない。
【0023】
図2はマイクロチップ50の詳細を示す斜視図である。
【0024】
マイクロチップ50は多層構造を成し、それぞれ伸縮性樹脂からなるメインプレート51a、第2プレート51b、第3プレート51c、第4プレート51dを貼り合わせた構成となっている。
【0025】
マイクロチップ50上には、メインプレート51a、第2プレート51bを貫通し凹状を成し、予め試料を充填する試料槽52a、52b、52cおよび空気供給口54が設けられ、さらにメインプレート51aを貫通し凹状をなす反応槽52d、抽出槽52e、PCR増幅槽58a、58b、58cが設けられている。また、マイクロチップ50上には、メインプレート51a、第2プレート51b、第3プレート51cを貫通し凹状を成すシャッタ口53a、53b、53c、53d、53e、53fが設けられている。さらに、チップ廃棄穴56は第2プレート51b、第3プレート51c、第4プレート51dを下方向に貫通するように設けられている。
【0026】
また、図1で示すテーブル3上にマイクロチップ50を搭載し、カバー20をB方向へ回動し締結ネジ25とネジ穴4によりマイクロチップ50をテーブル3とカバー20で挟持した際には、試料槽52a、52b、52cは加圧穴22a、22b、22cと、反応槽52dは加圧穴22dと、抽出槽52eは加圧穴22eと、シャッタ口53a、53b、53c、53d、53e、53fはシャッタ加圧穴23a、23b、23c、23d、23e、23fと合致した位置で搭載される構成となっている。
【0027】
さらに、試料槽52a、52b、53c、反応槽52d、抽出槽52e、PCR増幅槽58a、58b、58c、空気供給口54は、メインプレート51aと第2プレート51bの間で構成される流路61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61iで連接されている。また、シャッタ口53a、53b、53c、53d、53e、53fは、第2プレート51bと第3プレート52cの間で構成されるシャッタ流路62a、62b、62c、62d、62e、62fと連接されると共に、その先端は該流路61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61iと第3プレート51cを仲介し交差するように設けられている。
【0028】
また、流路61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61iは、第2プレート51bと第3プレート51cを接着する際に、流路となるべき部分を接着せず剥離可能な状態で構成されている。同様にシャッタ流路62a、62b、62c、62d、62e、62fは、第3プレート51cと第4プレート51dを接着する際に、流路となるべき部分を接着せず剥離可能な状態で構成されている。
【0029】
また、反応槽52d及び抽出槽52eの凹状容器内部の第2プレート51bと第3プレート51c間も同様に接着はされておらず、流路61a、61b、61c、61d、61e、61f、61g、61h、61iと連接される構成となっている。また、反応槽52dの内部の第2プレート51bと第3プレート51cとの間で構成される非接着部には、所望する微細な成分を抽出するための吸着部材60が固相されている。
【0030】
次に、動作の説明を図3から図13および図15のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
図3は動作の初期状態(図15、ステップ160)を示す斜視図であり、マイクロチップ50がテーブル3上に搭載され、図1で示すカバー20をB方向に回動させ挟持された状態を示す。
【0032】
図3は動作の説明をするために、図1で示すカバー20、Oリング26、27は省略していると共に一部断面を表示している。初期状態では加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16eおよびシャッタ電磁弁18a、18b、18c、18d、18e、18f、供給電磁28、廃棄電磁弁7はOFFの状態である。すなわち、チューブ17a、17b、17c、17d、17e、チューブ29、チューブ19a、19b、19c、19d、19e、19fには加圧空気が供給されない。その結果、試料槽52a、52b、52cおよび反応槽52d、抽出槽52eは上部から加圧されていない状態にあり、さらに、シャッタ口53a、53b、53c、53d、53e、53fおよびシャッタ流路62a、62b、62c、62d、62e、62fも同様に加圧空気が供給されていない。また、空気供給口54も同様に上部から加圧されていない状態にある。一方、廃棄穴5からチューブ7aを介し廃棄槽8へ接続している回路も、廃棄電磁弁7により遮断されている。
【0033】
さらに、試料槽52a、52b、52cには試料57a、57b、57cが充填されている。さらに、反応槽52d内には伸縮性を有する第2プレート51bと第3プレート51c間の非接着部である反応室70が形成されており、反応室70内には吸着部材60が固相されている。反応室70の大きさはほぼ反応槽52dの径と一致している。
【0034】
次に、第1段階の工程(図15、ステップ161)を図4を参照して説明する。
【0035】
第1段階は試料槽52aに充填された試料57aを反応槽52dに移送(送液)することを目的とする。初期状態から加圧電磁弁16aをONにすると、圧縮空気はチューブ17aを介して試料槽52aの上部に導かれる。その結果、試料57aは流路61aを押し広げC方向へ押出される。さらに、試料57aは連接された流路61c、61b、61d、61e、61fにも流入する。また、シャッタ電磁弁18b、18cがONされると圧縮空気がチューブ19b、19c、シャッタ口53b、53cを介し流路62bおよび62cに導かれる。流路62b、62cは流路61d、61eの下部に導かれE、F部で交差している。
【0036】
よって、流路62b、62cに導かれた圧縮空気は交差部E,Fで流路61d、61eを閉鎖せしめ、流路61cに流入した試料57aは試料槽52b、52cへ流入することはない。また、流路61fへ流入した試料57aは、空気供給電磁弁28がOFFされ、チューブ29、空気供給口54に蓄積された空気の逃げ場がないために閉鎖されている。さらに、流路61aに流入した試料57aは反応槽52dの二次側流路61g、61hへも流入する。しかし、シャッタ電磁弁18d、18eがONされ、チューブ19d、19e、シャッタ口53d、53eを介してシャッタ流路62d、62eに圧縮空気が導入されるため、流路61g、61hとの交差部H、Jにおいて流路61g、61hを閉鎖せしめる。
【0037】
その結果、試料槽52aから押出された試料57aは、反応槽52d内の反応室70に蓄積される。すなわち、反応室70の上部は伸縮性材料からなる第2プレート51bで構成されるため、風船状に膨れ試料57aが蓄積される。
【0038】
反応槽52d内の反応室70にはあらかじめ吸着部材60が固相されており、試料57aに含まれる所望する微細な成分を吸着する。しかし、一般的に反応室70の内部では、強制的な攪拌動作が行われないため吸着効率は低い状態である。
【0039】
次に、第2段階の工程(図15、ステップ162)を図5を参照して説明する。
【0040】
第2段階は、第1段階で反応槽52d内の反応室70へ移送・充填された試料57aを、元の試料槽52aへ戻すことを目的とする。第1段階終了後、加圧電磁弁16aをOFFにするとチューブ17aを介し、試料槽52aは大気に開放される。さらに、加圧電磁弁16dをONとするとチューブ17dを介して、反応槽52dが加圧される。その結果、反応室70内の試料57aは、流路61b、61a、61c、61d、61e、61g、61hへ押出される。しかし第1段階の動作で説明したように、流路61d、61c、61e、61g、61hは交差部E、F、H、J部にて閉鎖され、さらに空気供給電磁弁28がOFFされチューブ29内の空気が閉ざされているため、押出された試料57aは唯一大気に開放されている流路61aをK方向に導かれ試料槽52aへ戻る。
【0041】
次に、第3段階の工程(図15、ステップ163)について説明する。
【0042】
第3段階は試料57aを試料槽52aと反応槽52d内の反応室70の間で往復させることを目的とする。第1段階と第2段階の繰り返し数は図1で示すコントローラ15と、図15で示すフローチャートに示すようにあらかじめプログラムされている。第3段階は、図4で説明した第1段階と図5で説明した第2段階を繰り返す。その結果、所望する微細成分を含む試料57aが往復する度に、反応室70に固相されている吸着部材60と試料57aと何度も攪拌され、吸着部材60には効率よく所望する微細な成分が付着する。第3段階で所定の繰り返しを終了した状態は図4で示した状態に戻る。
【0043】
次に、第4段階(図15、ステップ164)の工程を図6を参照して説明する。
【0044】
第4段階は図4で示される第3段階が終了した状態から反応室70内の試料57aを排出することを目的とする。第3段階の工程を終了した後の動作を図6で示す。
【0045】
シャッタ電磁弁18aおよび加圧電磁弁16d、廃棄電磁弁7をONする。その結果、圧縮空気はチューブ17dを介し反応槽52dへ導かれ、反応室70の上部を加圧し充填されていた試料57aを、K及びG方向へ押出す。押出された試料57aの一方は流路61b、61cへ流入するが、シャッタ電磁弁18aがONされ、チューブ19a、シャッタ口53aを介しシャッタ流路62aに圧縮空気が導かれていると共に、すでにシャッタ電磁弁18b、18cがONされているため、チューブ19b、19c、シャッタ口53b、53cを介しシャッタ流路62b、62cは圧縮空気が供給されている。さらに、流路61a、61d、61eとシャッタ流路62a、62b、62cとの交差部L、E、Fで流路61cへ流入した試料57aは遮断される。 また、空気供給電磁弁28がOFFされているため、チューブ29、空気供給口54は閉鎖された回路となっている。その結果、流路61cをD方向に導かれた試料57aは閉鎖された状態にある。一方、流路61gのG方向へ導かれた試料57aは、すでにシャッタ電磁弁18eがONされており、チューブ19e、シャッタ口53eを介しシャッタ流路62eに圧縮空気が導入されているため、流路61gはシャッタ流路62eとの交差部Jで遮断されている。また、流路61gと分岐している流路61hのI方向に導かれた試料57aは、シャッタ電磁弁18dがOFFされ、チューブ19d、シャッタ口53d、シャッタ流路62dが大気に開放されるため、流路61hとシャッタ流路62dの交差部Hは流路61hを開放している。さらに、廃棄電磁弁7がONされるため、流路61hはテーブル3を貫通した廃棄穴5、チューブ7aを介し廃棄槽8に開放される。
【0046】
以上の構成により、反応槽52d内の反応室70から押出された試料57aは、流路61g、61h、廃棄穴5、廃棄電磁弁7、チューブ7aを経由してM方向へ導かれ廃棄槽8へ廃棄される。その結果、反応室70内には、試薬57aに含まれた所望する微細成分を吸着した吸着部材60と、不純物を含んだ試料57aの一部が残留する。
【0047】
次に、第5段階の工程(図15、ステップ165)を図7を参照して説明する。
【0048】
第5段階は、図2で示す一般的に有機溶剤が用いられる試料57bを反応室70内へ送液し、試料57aの中に含まれる不純物(特に所望する以外の成分)を、次の第6段階の工程と共に、外部へ排出することを目的とする。
【0049】
第4段階終了後、加圧電磁弁16b、シャッタ電磁弁18dをONすると共に、シャッタ電磁弁18b、廃棄電磁弁7をOFFにする。その結果、シャッタ流路62bは大気に開放され流路61dとシャッタ流路62bの交差するE部が開放された状態となる。また、加圧電磁弁16bがONされ、圧縮空気はチューブ17bを介し試料槽52bへ導かれ、充填されていた試料57bを流路61dのP方向へ押出す。流路61dへ押出された試料57bは連接する流路61cをD及びN方向へ流入せしめる。しかし、D方向はシャッタ電磁弁18cがONされチューブ19c、シャッタ口53cを介しシャッタ流路62cに圧縮空気が導かれ流路61eとの交差部Fを閉鎖すると共に、流路61cと連接する流路61fは空気供給電磁弁28がOFFされチューブ29、空気供給口54内の空気が密閉されるため、試料57bはD方向へは流入しない。
【0050】
また、N方向へ押出された試料57bは、連接した流路61aおよび61bへ押出されるが、流路61aはシャッタ電磁弁18aがONされ、シャッタ口53a、シャッタ流路62aに圧縮空気が導かれ、流路61aとの交差部Lで閉鎖されている。よって、流路61cに導かれた試料57bは唯一開放されている流路61bをC方向へ導かれ、反応槽52d内の反応室70へ流入する。一方、試料57bは反応室70に連接されている流路61g、61hへもG及びI方向へ導かれるが、流路61gと連接されている流路61hはシャッタ電磁弁18d、チューブ19d、シャッタ口53d、シャッタ流路62dにより交差部Hで閉鎖されると共に、シャッタ電磁弁18eがONされチューブ19e、シャッタ口53eを介しシャッタ流路62eへ圧縮空気が導かれ流路61gとの交差部Jを閉鎖しているため流入はしない。
【0051】
その結果、第1段階と同様に、試料槽52bから押出された試料57bは、反応槽52d内の反応室70の膨張により蓄積される。
【0052】
次に、第6段階の工程(図15、ステップ166)を図8を参照して説明する。
【0053】
第6段階は第5段階で反応室70に蓄積された試料57bを廃棄することを目的とする。第5段階終了後、加圧電磁弁16d、廃棄電磁弁7をONし、加圧電磁弁16b、シャッタ電磁弁18dをOFFにする。その結果、加圧電磁弁16d、チューブ17dに圧縮空気が導かれ、試料57bが充填されていた反応槽52d内の反応室70を圧縮し押出す。また、すでに流路61a、61d、61e、61gとシャッタ流路62a、62b、62c、62eとの交差部L、E、F、J部が閉ざされていると共に、空気供給電磁弁28がOFFされ空気供給口54、流路61fの空気の逃げ場が閉ざされている。また、流路61hは、シャッタ電磁弁18dがOFFされチューブ19d、シャッタ口53d内の空気が大気に開放されている。その結果、反応室70に充填されていた試料57bは、唯一シャッタ流路62dの交差部Hが開放された流路61hをI方向に導かれる。さらに、廃棄電磁弁7がONされているために試料57bは流路61h、廃棄穴5、廃棄電磁弁7、チューブ7aを介しM方向へ、すなわち廃棄槽8へ廃棄される。
【0054】
以上の結果、一般的に有機溶剤が用いられる試薬57bにより流路61b、61c、61h及び反応室70に残留していた不純物(例えば、所望以外の微細成分)を洗い流す。また、反応室70内の吸着部材60に付着した所望の微細成分は残される。
【0055】
次に、第7段階の工程(図15、ステップ167)を図9を参照して説明する。
【0056】
一般的に、第6段階で廃棄された試料57bは有機溶剤が用いられ、次工程での吸着部材60に付着した所望の遺伝子(DNA)を溶解抽出する際に不具合を引き起こすことが知られている。第7段階の工程は、試料57bが付着した流路61b、61c、61f、61g、61hを揮発・乾燥させることを目的とする。
【0057】
第7段階の動作を図9で説明する。
【0058】
第6段階終了後、加圧電磁弁16b、16dをOFFし、空気供給電磁弁28をONすると、圧縮空気は空気供給電磁弁28、チューブ29、空気供給口54を介し流路61fをQ方向へ導かれる。また、流路61a、61d、61eとシャッタ流路62a、62b、62cとの交差部L、E、Fおよび流路61gとシャッタ流路62eの交差部Jは閉鎖され、流路61hとシャッタ流路62dの交差部Hは前述した第6段階の工程で開放されている。そのため、流路61fをQ方向に導かれた圧縮空気は唯一開放されている回路すなわち流路61f、61c、61b、反応室70、流路61g、61hをそれぞれQ、N、G、I方向へと導かれ、さらにM方向すなわち廃棄穴5およびすでにONとなっている廃棄電磁弁7、チューブ7aを介し、廃棄槽8へ導かれる。
【0059】
以上の動作により、第6段階において流路61c、61b、反応室70、流路61g、61hに付着していた試料57bは揮発・乾燥される。
【0060】
次に、第8段階の工程(図15、ステップ168)を図10を参照して説明する。
【0061】
第8段階は図1で示す試料槽52cに充填された試料57cを反応室70へ移送し吸着部材60に付着した所望の微細な成分を溶解・抽出することを目的とする。第7段階の工程を終了した後、シャッタ電磁弁18c、空気供給電磁弁28、廃棄電磁弁7をOFFし、加圧電磁弁16c、シャッタ電磁弁18dをONする。加圧電磁弁16cがONされるとチューブ17cを介し圧縮空気が試料槽52cへ導かれ流路61eへ試料57cをR方向に押出し、さらに連接された流路61c、61fへ導く。一方、流路61fは空気供給電磁弁28がOFFされ、チューブ29、空気供給口54内の空気は密閉されているので流路61fには流入しない。また、流路62a、62dはシャッタ電磁弁18a、18bがONされ、チューブ19a、19b、シャッタ口53a、53b、シャッタ流路62a、62bへ圧縮空気が供給されているため、流路61a、61dとの交差部L、Eが閉鎖されているため流路61cに導かれた試料57cは唯一開放されている流路61bをC方向へ流入する。
【0062】
一方、流路61g及び流路61hはシャッタ電磁弁18d、18eがONされており、チューブ19d、19e、シャッタ口53d、53e、シャッタ流路62d、62eに圧縮空気が供給されているため、流路61g及び流路61hとの交差部H、J部で閉鎖されている。さらに、加圧電磁弁16dがOFFされ反応室70の上が大気開放されているため、流路61b導かれた試料57cは反応室70を膨張させ流入する。流入した試料57cは反応室70内で吸着部材60に吸着された所望する微細な成分を溶解する。
【0063】
次に、第9段階の工程(図15、ステップ169)を図11を参照して説明する。
【0064】
第9段階は第8段階において反応室70に充填された試料57cを、抽出槽52eへ送液する工程である。第8段階の終了後、加圧電磁弁16d、シャッタ電磁弁18c、18fをON、シャッタ電磁弁18eをOFFする。加圧電磁弁16dがONされると、チューブ17dを介し反応槽52d内の反応室70上部に圧縮空気が供給される。その結果、反応室70内の試料57cは押出されるが、すでに第8段階において流路61a、61d、61eとシャッタ流路62a、62b、62cとの交差部L、E、Fが閉鎖されており、流路61fの空気が密閉されていると共に、流路61hとシャッタ流路62dとの交差部Hも閉鎖されている。また、シャッタ電磁弁18eがOFFされ、チューブ19e、シャッタ口53eを介し、シャッタ流路62eが大気開放され、流路61gとシャッタ流路62eの交差部Jが開放される。さらに、シャッタ電磁弁18fがONされると、チューブ19f、シャッタ口53f、シャッタ流路62fに圧縮空気が導かれ、流路61iとシャッタ流路62fの交差部Uが閉鎖される。
【0065】
その結果、試料57cは唯一開放されている流路61gをG方向へ導かれる。さらに、反応室70と同構成を持つ抽出槽52eの上部は、加圧電磁弁16eがOFFされ、チューブ17eを介し大気開放されている。その結果、反応室70内で所望の微細な成分を溶解した試料57cは抽出槽52eを風船状に膨張させ内部に流入・充填される。
【0066】
次に、第10段階の工程(図15、ステップ170)を図12を参照して説明する。
【0067】
前述した第9段階で抽出槽52eに得られた所望する微細な成分が溶解した試料57cを、図2で示す次工程のためのPCR増幅槽58a、58b、58cへ移送することも可能である。しかし、一般的に第8段階で示した吸着部材60と試料57cを接触させたのみでは、吸着部材60に吸着させた所望の微細成分を効率良く溶解できない。そのため、第10段階は、第2段階と同じように抽出槽52eに充填された試料57cを再度反応室70へ戻し、試料57cと吸着部材60の接触機会を増加して、所望の微細成分の溶出(溶解)効率を高めることを目的とする。
【0068】
第9段階が終了した後、加圧電磁弁16dをOFFし、16eをONにすると、圧縮空気はチューブ17eを介して抽出槽52eを加圧すると共に、反応槽52d上部がチューブ17dを介し大気開放され、抽出槽52e内部の試料57cを流路61gのS方向へ押出す。また、第9段階ですでにシャッタ流路62eと流路61gの交差部Jは開放され、シャッタ流路62fと流路61iの交差部Uは閉鎖されている。その結果、試料57cは第9段階と同様に反応室70を風船状に膨らませ戻る。以上の結果により、流路61gをS方向、すなわち反応室70に戻った試料57cは、再度吸着部材60と接触し、再度所望の成分を溶出(溶解)する。
【0069】
以上のように、第9段階の動作と第10段階の動作を繰り返すことにより、吸着部材60に吸着された所望の微細成分を効率よく試料57c内に溶解させることが可能となる。
【0070】
次に、第11段階の工程(図15、ステップ171)を説明する。
【0071】
第11段階の工程は、図11で示される第9段階の動作と、図12で示される第10段階の動作を繰り返し行うことにより、吸着部材60に吸着された所望する微細成分を効率よく溶解することを目的とする。繰り返し試料57cを反応室70内の吸着部材60と攪拌しながら往復するため、より効率的なDNAの溶出(溶解)が可能となる。また第11段階は図11で示される状態で終了する。
【0072】
次に、第12段階の工程(図15、ステップ172)を図13を参照して説明する。
【0073】
第12段階の工程は、第11段階が終了した状態すなわち図11で示す抽出槽52e内に充填された所望の成分を溶出した試料57cを、図2で示す次工程を行うPCR増幅槽58a、58b、58cへ送液することを目的とする。
【0074】
第12段階の動作を図13で説明する。
【0075】
図11で示される第11段階の終了状態から、加圧電磁弁16e、シャッタ電磁弁18eをONし、さらにシャッタ電磁弁18fをOFFする。その結果、加圧電磁弁16eはチューブ17eを介し、抽出槽52eの上部に圧縮空気を供給し、抽出槽52e内に充填された試料57cを流路61g、61iへ押出す。一方、シャッタ電磁弁18eがONされチューブ19e、シャッタ口53eを介して、シャッタ流路62eへ圧縮空気が供給されるため、流路61gとシャッタ流路62eの交差部Jは遮断されていると共に、シャッタ電磁弁18fがOFFされチューブ19f、シャッタ口53fを介し、シャッタ流路62fが大気開放され、流路61iの交差部Uが開放される。
【0076】
その結果、抽出槽52e内の試料57cは唯一開放されている流路61iをT方向へ押出される。すなわち、流路61iへ導かれた試料57cは、図2で示す次工程を行うPCR増幅槽58a、58b、58cへ移送される。
【0077】
さらに、第12段階の工程(図15、ステップ172)の詳細を図14を参照して説明する。
【0078】
図14は説明の便宜上断面図で表示し、さらにマイクロチップ50の同一平面上に設けられているPCR増幅槽58a、58b、58cの断面図は上方に併記して示す。また、流路61g、61i、シャッタ流路62e、62fは構成上第2プレート51b、第3プレート51c、第4プレート51dの接着面の一部を非接着構造で構成しているが、説明の便宜上、溝状の巾を持たせた図で表示している。前述したように第12工程では抽出槽52eの上部からV1方向に圧縮空気が供給される。その結果、内部の所望の微細成分が溶出した試料57cは押出される。また、流出する一端の流路61gはシャッタ流路62eに圧縮空気が供給されているため、シャッタ流路62eを構成する伸縮性を有する第3プレート51cを凸状に持ち上げ交差部Jで閉鎖している。また、流出する他端の流路61iはシャッタ流路62fが大気に開放されている。その結果、抽出槽52e内の試薬57cは唯一開放されている流路61iをT方向に押出される。さらに、流路61iと連接している抽出槽52eと同構成を持つPCR増幅槽58a、58b、58cへと導かれる。また、抽出槽52e内の試料57cを押出す力V1は、上方から供給された圧縮空気の圧力V1と抽出槽52eが構成する伸縮性を有する第2プレート51bの収縮力W1との和(V1+W1)となる。
【0079】
また、流路61iを経由し試料57cがPCR増幅槽58a、58b、58cを膨らませ流入しようとする力V2は、PCR増幅槽58a、58b、58cを構成する第伸縮性を有する第2プレート51bの径ΦXが膨らむ反力W2に依存する。ここで、(V1+W1)>W2であるならば、論理的に試薬57cはPCR増幅槽58a、58b、58cにV2の力で風船状に膨らませながら流入する。さらに、PCR増幅槽58a、58b、58cを成す径ΦXが等しければ、各々に流入する力が等しく、同じ膨らみ量となる。すなわち、PCR増幅槽58a、58b、58cへ流入する量は均一となる。一般的に、PCR増幅において2〜数μLで増幅される。その結果、試料57cは微小量が均等にPCR増幅槽58a、58b、58cへ分注される。
【0080】
このようにして、すべての工程が終了する(図15、ステップ173)。
【0081】
次に、他のマイクロチップの構成を図16で説明する。
【0082】
図16で示すマイクロチップ150は、前記で説明した廃液をマイクロチップ150自体の内部に蓄積する構成を示したものである。
【0083】
U方向に向かって廃棄される廃液は、流路161hを経由して廃棄口156へ導かれる。さらに、前述した廃棄工程と同様にM方向へ廃棄電磁弁7、チューブ7aを介し廃棄槽8へ吸引される。マイクロチップ150の流路161hは、流路方向に吸引部材151の面に開放されているため、流路161hを流れる廃液は、U方向に向きが変化するため吸着部材151に当接し吸引される。その結果、廃棄電磁弁7、チューブ7aを介し気体のみが廃棄槽8へ吸引される。マイクロチップ150内に蓄積された廃液はマイクロチップ150が廃棄処理されると同時に廃棄されるため、廃棄工程が簡略化される。
【0084】
以上説明したように、本発明の実施例では、連続した第1段階工程から第12段階工程を動作させること、すなわち試料の攪拌動作を伴う吸着部材への吸着動作、不純物の除去動作、および微細な成分抽出に障害を及ぼす試料の圧縮空気供給による乾燥動作、さらに繰り返し行う攪拌動作を伴う微細な成分の溶出動作により、所望する微細な成分が高い効率で抽出できる。
【0085】
さらに、本発明の本発明の実施例では、機構が簡易化・小型化される。
【0086】
さらに、本発明の実施例では、微量な試料においても高効率で微細な成分の抽出が可能となり、高価な試料の消費が減少でき分析コストの低減となる。
【0087】
さらに、本発明の実施例では、微量な試料においても高効率な微細な成分の抽出が可能となり、送液および抽出時間の短縮が可能となり、作業の大幅な効率向上をもたらす。
【0088】
さらに、本発明の実施例では、目的以外の微細な成分の混入が少なく、次工程すなわち微細な成分の増幅工程や分析工程の信頼性を向上することが出来る。
【0089】
さらに、本発明の実施例では、簡単な機構で、単一の容器から複数の微小な容器へ均一量の分注が可能で、装置の小型化・制御の簡略化を図ることができる。
【0090】
上述のように、本発明のマイクロチップの試料処理装置は、
試料を充填するための試料容器と、
試料容器と流路を介して連接されかつ試料を順次移送充填して混合せしめる反応容器とを有し、
試料容器と反応容器との間で流路を介して試料の移送を繰り返し行うことにより、試料を攪拌し混合させることを特徴とする。
【0091】
好ましくは、前記試料の移送は、前記試料中に含まれる微細な成分を抽出するために繰り返し行われる。
【0092】
好ましくは、前記反応容器には、前記微細な成分を抽出するための吸着部材が設けられており、前記試料容器と前記反応容器との間で前記試料の移送を繰り返し行う間に、前記試料は前記吸着部材で繰り返し攪拌されて前記吸着部材に前記微細な成分が吸着する。
【0093】
好ましくは、前記反応容器または前記流路内に媒体を供給することにより、前記反応容器または前記流路内の前記試料を廃棄する。
【0094】
前記反応容器内には、例えば、不純物を含んだ前記試料の一部が残留する。
【0095】
好ましくは、前記試料処理装置は、第2の試料を充填するための第2の試料容器をさらに有し、前記第2の試料を前記第2の流路を介して前記反応容器に移送することにより、前記不純物を外部に排出すると共に、前記反応容器内に蓄積された前記第2の試料を廃棄する。
【0096】
好ましくは、少なくとも前記第2の流路及び前記反応容器に付着した前記第2の試料を揮発・乾燥させる。
【0097】
例えば、前記第2の試料は有機溶剤であり、前記第2の試料の揮発・乾燥は圧縮空気を用いて行われる。
【0098】
好ましくは、前記試料処理装置は、第3の試料を充填するための第3の試料容器をさらに有し、前記第3の試料を第3の流路を介して前記反応容器に移送することにより、前記吸着部材に吸着した微細な成分を前記第3の試料内に溶解させる。
【0099】
好ましくは、前記試料処理装置は、抽出容器をさらに有し、前記第3の試料内に溶解した微細な成分は、前記抽出容器に移送される。
【0100】
好ましくは、前記抽出容器に移送された前記第3の試料を前記反応容器に戻して、前記吸着部材と再度接触させることにより、前記微細な成分を前記第3の試料内に再度溶解させる。
【0101】
好ましくは、前記微細な成分の前記抽出容器への移送動作と前記抽出容器に移送された前記第3の試料の前記反応容器への戻し動作を繰り返し行う。
【0102】
好ましくは、前記試料処理装置は、所望の処理を行う増幅容器をさらに有し、前記抽出容器に移送された微細な成分は、前記増幅容器にさらに移送される。
【0103】
好ましくは、前記増幅容器は複数個設けられかつ前記抽出容器から分岐した流路で連接され、外部より媒体を供給することにより、前記微細な成分は前記複数の増幅容器に分割して移送される。
【0104】
好ましくは、前記試料処理装置は廃棄容器をさらに有し、前記廃棄された試料は前記廃棄容器に収容される。あるいは、前記廃棄された試料は前記マイクロチップ内に収容される。
【0105】
例えば、前記反応容器、前記抽出容器及び前記増幅容器は、伸縮自在な風船状形態を成す。また、前記微細な成分は、例えば、遺伝子である。
【0106】
以上、本発明の実施例に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は上述の実施例に制限されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができ、これらの変更例も本願に含まれることはいうまでもない。
【0107】
上記本発明の実施例では、説明の便宜上、試料槽、反応槽、抽出槽等、その有する機能上の名称を用いて説明したが、これらの名称に限定されるものではない。例えば、連接された流路上に設けられた凹状および風船状の試料充填槽を用いても同様の結果が得られる。この風船状の試料充填槽は、例えば、米国特許04065263号公報に示されているようなものである。
【0108】
また、本発明の実施例では、圧縮空気を用いて説明したが、圧力を媒介できる物質(例えば、気体、液体、ゲル)であれば、同様な効果を得ることが可能であり、本発明は圧縮空気に限定されるものではない。また、加圧媒体を加温すれば、より高い効率で対象を乾燥させることが可能である。
【0109】
本願は、2007年9月10日出願の日本国特許出願2007−233574を基礎とするものであり、同特許出願の開示内容は全て本願に組み込まれる。
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