(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るデザインルールチェックシステムの機能的な構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係るデザインルールチェックシステムのハードウェア構成を例示する図である。
【
図3】実施の形態1に係るデザインルールチェックシステムの動作を例示するフローチャートである。
【
図4】デザインルールチェックにおけるエラー箇所を例示する図である。
【
図5】デザインルールチェックにおけるエラー箇所を例示する図である。
【
図6】デザインルールチェックにおけるエラー箇所を例示する図である。
【
図7】デザインルールチェックにおけるエラー箇所を例示する図である。
【
図8】実施の形態1においてデザインルールチェックの対象となる2層構造のプリント基板のレイアウトパターンを例示する図である。
【
図9】実施の形態1において重み付けが必要ない場合のエラー情報表示を例示する図である。
【
図10】
図8の例においてレイアウトパターンからプレーン導体と第1のコネクタの位置とが抽出された電磁界シミュレーションモデルを示す図である。
【
図11】
図8の例においてレイアウトパターンからプレーン導体と第2のコネクタの位置とが抽出された電磁界シミュレーションモデルを示す図である。
【
図12】実施の形態1において電磁界シミュレーションに用いられる電圧原が出力する電圧パルスを例示するグラフである。
【
図13】電磁シミュレーションにより算出された
図8〜
図11に係るプレーン導体のノイズ電流の分布を例示している。
【
図14】実施の形態1において重み付けが必要である場合のエラー情報表示を例示する図である。
【
図15】実施の形態1において各層のプレーン導体と、各プレーン導体を接続するビアを抽出した電磁界シミュレーションモデルを例示する図である。
【
図16】実施の形態1において各層のプレーン導体を接続するビア等を除外し、各層のプレーン導体のみを抽出した電磁界シミュレーションモデルを例示する図である。
【
図17】実施の形態1において各層のプレーン導体を重ね合わせ、1枚のプレーン導体とした電磁界シミュレーションモデルを例示する図である。
【
図18】実施の形態1において各層のプレーン導体の形状によらず、プリント基板の基板外形を1枚のプレーン導体とした電磁界シミュレーションモデルを例示する図である。
【
図19】実施の形態1においてデザインルールチェックの対象となる4層構造のプリント基板のレイアウトパターンを例示する図である。
【
図20】
図19の例においてレイアウトパターンから各層のプレーン導体と第1のコネクタの位置とが抽出された電磁界シミュレーションモデルを示す図である。
【
図21】
図19の例においてレイアウトパターンから各層のプレーン導体と第2のコネクタの位置とが抽出された電磁界シミュレーションモデルを示す図である。
【
図22】
図19の例において第2層のプレーン導体の表面の電流分布及び裏面の電流分布を例示する図である。
【
図23】
図19の例において第3層のプレーン導体の表面の電流分布及び裏面の電流分布を例示する図である。
【
図24】
図19の例において第4層のプレーン導体の表面の電流分布及び裏面の電流分布を例示する図である。
【
図25】
図19〜
図24の例において重み付けが必要である場合のエラー情報表示を例示する図である。
【
図26】本発明の実施の形態2に係るデザインルールチェックシステムの機能的な構成を示す図である。
【
図27】実施の形態2に係るデザインルールチェックシステムのハードウェア構成を例示する図である。
【
図28】実施の形態2に係るデザインルールチェックシステムの動作を例示するフローチャートである。
【
図29】実施の形態2におけるデザインルールチェックの対象となるプリント基板を例示する図である。
【
図30】実施の形態2におけるデザインルールチェックの対象となるプリント基板を例示する図である。
【
図31】実施の形態2における電磁界シミュレーションモデルを示す図である。
【
図32】実施の懈怠2における電磁界シミュレーションモデルを示す図である。
【
図34】実施の形態2において重み付けが必要である場合のエラー情報表示を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るデザインルールチェックシステム1の機能的な構成を示している。デザインルールチェックシステム1は、パターン情報取得部11、デザインルールチェック部12、電流算出部13、重み付与部14、及びエラー情報生成部15を有する。
【0021】
パターン情報取得部11は、デザインルールチェックの対象となるプリント基板のレイアウトパターンを取得する。
【0022】
デザインルールチェック部12は、上記取得されたレイアウトパターンに対してデザインルールチェックを行う。
【0023】
電流算出部13は、上記取得されたレイアウトパターンに基づいて、プリント基板上のノイズ電流値の分布を算出する。すなわち、外部からプリント基板に与えられる電磁ノイズの影響が調べられる。この電磁ノイズの影響(ノイズ電流値の分布)は、レイアウトパターンに依存し、プリント基板上の各箇所において異なるものである。
【0024】
重み付与部14は、電流算出部13により算出され上記デザインルールチェックにおける各エラー箇所に対応するノイズ電流値の大きさに応じて、デザインルールチェックの結果に対して重み付けを行う。
【0025】
エラー情報生成部15は、上記デザインルールチェックの結果を示す情報を生成する。上記重み付けがなされた場合には、重み付けされたデザインルールチェックの結果を示す情報が生成される。重み付けがなされなかった場合には、デザインルールチェック部12により行われた結果をそのまま示す情報が生成される。当該生成されたエラーに関する情報は、デザインルールチェックシステム1のユーザ等に提供される。
【0026】
上記構成により、プリント基板に流れるノイズ電流値に応じて、デザインルールチェックの結果に重み付けがなされる。そして、当該重み付けに応じて各エラーの危険度が想定され、当該危険度を含めたエラー情報が生成される。これにより、ユーザは、エラーの危険度が高い箇所、すなわち優先的に設計変更等すべき箇所を容易に把握することが可能となる。
【0027】
図2は、実施の形態1に係るデザインルールチェックシステム1のハードウェア構成を例示している。本例に係るデザインルールチェックシステム1は、コンピュータを用いて構成され、当該コンピュータは中央処理装置21、記憶装置22、入力装置23、出力装置24、及びバス25を有する。
【0028】
中央処理装置21は、記憶装置22に記憶された制御プログラムに従って上述の
図1に示す各機能を実現するための各種処理を実行する。
【0029】
記憶装置22には、プリント基板の設計情報(CADデータ等)、デザインルール、制御プログラム等が記憶されている。設計情報には、プリント基板の形状、配線の形状、電源・グラウンドの形状・位置、能動素子と受動素子との位置関係等が含まれる。当該設計情報から上記レイアウトパターンが取得される。
【0030】
デザインルールは、プリント基板の配線・電源・グラウンド等の導体パターン、能動素子・受動素子の配置等に関する制約条件を含む。デザインルールの各チェック項目は、プリント基板の電磁特性に関するものである。
【0031】
入力装置23は、キーボード、タッチパネル等であり、ユーザの各種操作を受け付ける。上記記憶装置22に記憶される設計情報、デザインルール等は、入力装置23を介して適宜ユーザが変更等できるようになされていることが好ましい。
【0032】
出力装置24は、ディスプレイ等であり、上記デザインルールチェックの結果を示す情報等をユーザに伝達する役割等を担う。
【0033】
図3は、上記デザインルールチェックシステム1の動作を示している。システムが動作を開始すると、パターン情報取得部11は、プリント基板のCADデータを読み込み、配線・電源・グラウンド・能動素子・受動素子の位置座標、配線層等の情報からなるレイアウトパターンを取得する(S101)。
【0034】
次に、デザインルールチェック部12は、デザインルールを読み込み、上記取得されたレイアウトパターンに対して、各デザインルールチェック項目が定める制約事項を満足するか否かを判定するデザインルールチェックを行う(S102)。
【0035】
次に、デザインルールチェックの結果に対して、外部からの電磁ノイズを考慮した重み付け、換言すれば、エラー箇所のレベル分けが必要であるか否かを判定する(S103)。この判定は、例えばチェック結果のエラー数をユーザに提示した上でユーザが重み付けの要否を入力する構成、エラーが一定数以上であれば自動的に重み付け処理を実行する構成等としてもよい。
【0036】
ステップS103において、重み付けの必要がない場合(NO)には、エラー情報生成部15は、レイアウトパターン上のエラー箇所に印をつけたエラーマーク付レイアウトパターン、配線の識別名・エラー項目等との対応関係を表化したエラーリスト等を含む後述するエラー情報表示を出力装置24に出力させる(S104)。
【0037】
一方、ステップS103において、重み付けが必要である場合(YES)には、電流算出部13は、レイアウトパターンに基づいて基板(プレーン導体)の電磁界モデルを作成し(S105)、当該電磁界モデルに後述する印加モデル、印加点を入力し(S106)、印加点毎に基板の電流分布を算出する(S107)。その後、電流算出部13は、各印加点における各部での電流の最大値を抽出するか、又は各印加点における各部での電流値を足し合わせることにより(S108)、重み付けに必要な基板上の各部でのノイズ電流値を算出する。
【0038】
重み付与部14は、デザインルールチェックによるエラー検出の結果に対して、ステップS108により算出され当該エラー箇所に対応するノイズ電流値の大きさに応じて、重み付けをする(S109)。
【0039】
その後、エラー情報生成部15は、上記重み付けを反映させたエラーマーク付レイアウトパターン、エラーリスト等を含む後述するエラー情報表示を出力装置24に出力させる(S110)。
【0040】
上記電流算出部13は、パターン情報取得部11が取得したレイアウトパターンに基づいて、電源及びグラウンドプレーンを構成するプレーン導体、これらを電気的に接続するビア・キャパシタ、電磁ノイズの侵入口となるコネクタ・スイッチ等(ノイズ印加点)の位置、誘電体基板の形状・材質に関する情報等を抽出する。これら抽出された情報に基づいて、電磁界シミュレーションによりプレーン導体上のノイズ電流値の分布を算出する。
【0041】
電磁界シミュレーションとしては、一般に広く知られているFDTD(Finite Difference Time Domain)法や、モーメント法、有限要素法等の3次元電磁界シミュレーション手法を用いることができる。
【0042】
ここで、外部ノイズとして広帯域な周波数スペクトルを有する、パルス性のノイズによる機器の故障や誤動作を考えると、周波数毎のノイズ電流値よりも、ノイズ電流の時間領域での最大値が重要となる。このため、FDTD法に代表される時間領域の電磁界シミュレーションを使用することが好ましい。一方、単一周波数又は狭い帯域のノイズを考える場合には、モーメント法、有限要素法等の周波数領域の電磁界シミュレーションを使用すると、効率的にノイズ電流を算出できる。
【0043】
電磁界シミュレーションでは、ノイズが侵入する箇所、すなわちシミュレーションにおけるノイズ印加点はコネクタやスイッチとなるが、ユーザが指定した任意の箇所にノイズを印加できる構成としてもよい。
【0044】
シミュレーションに用いるノイズ源とそのノイズ波形に関しては、例えば静電気放電に関する試験規格のIEC61000−4−2に準拠した放電試験器をモデル化する方法、微小な線状アンテナをプレーン導体に接触させてパルス電圧又は単一周波数の正弦波電圧を印加するモデル化が考えられる。
【0045】
電流算出部13は、複数のノイズ源及びノイズ波形のモデルを用意しておき、想定する外部ノイズをユーザが選択可能とするものであってもよい。
【0046】
プリント基板上に複数のコネクタが存在する場合、ユーザが複数のノイズ印加箇所を指定した場合等には、それぞれのノイズ印加点に対してプレーン導体を流れるノイズ電流を算出する。
【0047】
次に、プレーン導体上の各部で印加点毎の電流値を比較し、絶対値が最大となる電流を抽出して1つの電流分布にまとめる。または、プレーン導体上の各部で印加点毎の電流の絶対値を足し合わせることにより、1つの電流分布にまとめてもよい。この場合、複数の印加点に対してノイズ電流の集中しやすい箇所では特に電流値が大きくなる。すなわち、ノイズ印加点によらず危険な箇所を際立たせることができる。
【0048】
次に、重み付与部はデザインルールチェック結果に対して、エラー箇所に対応するプレーン導体上のノイズ電流により重みを付与する(S109)。すなわち、プレーン導体上のノイズ電流値を各エラーデータに付加する。
【0049】
図4〜
図7は、エラー箇所を例示している。
図4に示すエラー箇所31Aは、配線32がプレーン導体30に形成されたスリット33を跨ぐ箇所である。
【0050】
図5に示すエラー箇所32Bは、複数のプレーン導体30を貫通するビア35の位置である。このような場合、例えばビア35に最近接するプレーン導体30のノイズ電流値を採用するか、又はビア35から一定範囲内に存在するプレーン導体30のノイズ電流から最大値を抽出すればよい。
【0051】
図6に示すエラー箇所31Cは、ガードパターン37が途切れる箇所である。エラー箇所の周囲のノイズ電流により生じる電磁界の影響を含めるため、プレーン導体30上の1点だけでなく、一定範囲内のノイズ電流の最大値を抽出してもよい。
【0052】
図7に示すエラー箇所31Dは、エラー箇所が連続してなるものであり、プレーン導体30の端部に沿った配線と同じ長さを有する。この場合、エラーが生じている範囲内でノイズ電流の最大値を抽出すればよい。または、一定の長さを超える範囲を有するエラー箇所を複数に分割し、分割された各箇所についてノイズ電流の最大値を抽出してもよい。
【0053】
以上により重み付けされたエラーのチェック結果は、ノイズ電流の絶対値、ノイズ印加点の電流を基準とした相対値等で分類され、後述するエラーリスト、レイアウトパターン上のエラーマーク等として表示される。後述するが、当該エラーマークは、重みに応じて色、形状、大きさ等を変えることにより、エラーの危険度を判別しやすくすることが好ましい。
【0054】
図8は、実施の形態1におけるデザインルールチェックの対象となる2層構造のプリント基板のレイアウトパターンを例示している。第2層は、プレーン導体30を示し、第1層は、プレーン導体30上に搭載される配線32A〜32D、LSI38、コネクタ39A,39B等の配置を示している。本例に係る第1層は、第1の配線32A、第2の配線32B、第3の配線32C、及び第4の配線32Dを有する。本例に係るプレーン導体30には、スリット33及び孔34が形成されている。上記記憶装置22に記憶される設計情報には、第1層を構成する配線32A〜32Dの形状、LSI38の寸法・形成位置、コネクタ39A,39Bの形成位置、プレーン導体30の寸法、スリット33・孔34の寸法・形成位置等を特定するための情報が含まれている。また、本例においては、デザインルールのチェック項目として、配線32A〜32Dがスリット33又は孔34を跨ぐ場合が含まれる。
【0055】
先ず、パターン情報取得部11がプリント基板の設計情報を読み込み、レイアウトパターンを取得する。次に、デザインルールチェック部12がデザインルールに従い、レイアウトパターン情報に対してデザインルールチェックを行う。次に、デザインルールチェックの結果に対して、外部からの電磁ノイズを考慮した重み付けが必要であるか否かが判定される。重み付けが必要ないと判定されると、デザインルールチェックの結果がそのままエラー情報表示としてディスプレイ等に表示される。
【0056】
図9は、重み付けが必要ない場合のエラー情報表示を例示している。本例に係るエラー情報表示には、エラーマーク付レイアウトパターン40及びエラーリスト41が含まれている。
【0057】
エラーマーク付レイアウトパターン40は、
図8に示す第1層及び第2層を重ね合わせてなるレイアウトパターン上に、エラーマーク(A〜J及び丸印)が付されて構成される。エラーリスト41は、配線32A〜32D(エラー配線番号1〜4)毎のエラー箇所A〜Jを示している。
【0058】
一方、重み付けが必要である場合、電流算出部13によりノイズ電流を算出するための電磁界シミュレーションが開始される。
図10は、レイアウトデータからプレーン導体30と第1のコネクタ39Aの位置とが抽出された状態を示している。
図11は、レイアウトデータからプレーン導体30と第2のコネクタ39Bの位置とが抽出された状態を示している。
【0059】
これらの抽出された情報に基づいて電磁界シミュレーションモデルが構成され、
図10及び
図11の両モデルについてプレーン導体30上のノイズ電流が算出される。尚、ここでは誘電体基板を省略したモデルが使用されている。この例では、抽出されたコネクタ39A,39Bの中心位置をノイズ印加点として、長さ1mmの線状アンテナの一端をプレーン導体30に接続する印加モデルが使用されている。この印加モデルでは、線状アンテナの中心に電圧源が存し、この電圧原から電圧パルスがノイズとして印加される。
図12は、電磁界シミュレーションに用いられる電圧原が出力する電圧パルスを例示している。この例では、時間領域におけるノイズ電流の最大値を算出するため、FDTD法が採用される。
【0060】
図13は、電磁シミュレーションにより算出された
図8〜
図11に係るプレーン導体30のノイズ電流の分布を例示している。同図中、色の濃度は電流値の大きさを示している。色が濃い程電流値が高いことを示している。第1の分布は、上記第1のコネクタ39Aからのノイズ印加による電流分布である。第2の分布は、上記第2のコネクタ39Bからのノイズ印加による電流分布である。電流算出部13は、これら第1及び第2の分布を算出した後、例えばプレーン導体30上の各部で2つの電流値を比較して絶対値の大きい電流を抽出し、第3の分布を算出する。
【0061】
次に、重み付与部14は、配線32A〜32Dがスリット33又は孔34を跨ぐ箇所に対応するノイズ電流値に応じて、デザインルールチェックの結果に重み付けをする。エラー情報生成部15は、当該重み付けをされた結果に基づいて、エラー情報表示を生成し、出力装置24に出力する。
図14は、重み付けが必要である場合のエラー情報表示を例示している。本例に係るエラー情報表示には、エラーマーク付レイアウトパターン45及びエラーリスト46が含まれている。
【0062】
エラーマーク付レイアウトパターン45には、各エラー箇所A〜Jの危険度を視覚的に認識可能にする工夫が施されている。すなわち、各エラー箇所A〜Jに対応する丸印には、色彩(色の濃淡を含む)が施されており、色が濃い程エラーの危険度が高いことを示している。
【0063】
エラーリスト46においては、各エラー箇所A〜Jが危険度に応じて区分けされている。本例においては、エラー箇所C,Dのエラー危険度が「大」であり、エラー箇所G,H,I,Jのエラー危険度が「中」であり、エラー箇所A,B,E,Fのエラー危険度が「小」である。当該危険度は、
図13に示すノイズ電流の分布に依存する。すなわち、各エラー箇所A〜Jに対応する箇所の電流値が高い程、上記危険度が高くなる。
【0064】
このようにノイズ電流値に応じてエラーマークを色分けすることや、危険度を段階的に表示することにより、優先的に設計変更すべき箇所を容易に特定できるようになる。
【0065】
また、デザインルールチェックのチェック項目毎に異なるエラーポイントを付与すること、又はチェック対象であるネットの種類に応じてポイントの倍率を変更することが考えられる。前者では、例えば、
図4のように配線32がスリット33を跨ぐエラーでは2ポイント、
図6のようにガードパターン37が途切れたエラーでは1ポイントとし、エラー内容の危険度に応じた重みを付与することができる。後者では、例えば、リセット配線ではエラーポイントを3倍、クロック配線及び電源配線では2倍、その他の信号配線では1倍とし、保護すべき配線の重要度に応じた倍率を設定することができる。これらの手法により、危険なエラーが生じている重要な配線を特定しやすくなる。また、上述のような危険度のレベル分けに加え、プレーン導体上のノイズ電流の大きさに応じて段階分けされた倍率をエラーポイントに乗じるようにしてもよい。
【0066】
ここで、一般的な多層プリント基板では、複数層にわたりプレーン導体30が形成される。以下に、複数のプレーン導体30を流れるノイズ電流を電磁界シミュレーションで算出する際のモデル化について、補足説明する。
【0067】
図15〜
図18は、複数層のプレーン導体30A〜30Cのノイズ電流を算出するための電磁界シミュレーションモデルを例示している。
図15は、各層のプレーン導体30A〜30Cと、各プレーン導体30A〜30Cを接続するビア48を抽出したモデルである。プレーン導体30A〜30Cがキャパシタ、抵抗、インダクタ等の接続部材により接続される場合にも、同様にプレーン導体30A〜30Cと接続部材とを抽出してモデル化すればよい。プレーン導体30及び接続部材が多い場合には、モデルが複雑になり計算時間が長くなるものの、ノイズ電流を正確にシミュレーションすることができる。
【0068】
図16は、プレーン導体30A〜30Cを接続するビア48、キャパシタ等を除外し、各層のプレーン導体30A〜30Cのみを抽出したモデルである。この場合、ビア48、キャパシタ等をモデルに含めないため、ノイズ電流を正確には計算できない。しかし、構成要素を少なくできることから、モデル化が容易でありシミュレーション時間を短縮することができる。
【0069】
図17は、各層のプレーン導体30A〜30Cを重ね合わせ、1枚のプレーン導体30Eとしたモデルである。このモデルではプレーン導体30A〜30C間のノイズ電流を計算できないため、基板内層で生じたデザインルールチェックのエラーをレベル分けすることはできない。しかし、基板表裏の表面を流れるノイズ電流を計算できるため、基板表面で生じたエラーのレベル分けを可能にする。また、1枚のプレーン導体30Eとするため、モデル化が容易であり、短時間でノイズ電流を算出することができる。
【0070】
図18は、プレーン導体30A〜30Cの形状によらず、プリント基板の基板外形を1枚のプレーン導体30Fとしたモデルである。
図17と同様に、プレーン導体30A〜30C間のノイズ電流を計算できず、又基板表面に関してもプレーン導体30A〜30Cの形状に対応したノイズ電流を計算できない。しかし、多くのプリント基板では、プレーン導体30A〜30Cをなるべく大きくとり、基板上に空き領域を作らないよう設計することから、各層のプレーン導体30A〜30Cを重ね合わせるとプリント基板の外形形状とほぼ一致する。このため、多くの場合には、
図17のモデルは
図18と同様になる。
図18のモデル化においては、
図17と同様の利点及び欠点を有するが、プレーン導体30A〜30Aの数、形状の複雑さ等に関わらず、基板外形のみでモデルを構築できるため、モデル化の時間を短縮することができる。
【0071】
上述のように、ノイズ電流を算出するための電磁界シミュレーションモデルは複数考えられる。このため、複数のモデル化を取り扱えるように電流算出部13を構成し、ノイズ電流の正確さ、計算時間等に応じてユーザがモデルを選択可能にすることにより、デザインルールチェックを効率化することができる。
【0072】
以下に、複数のプレーン導体を有するプリント基板に対するデザインルールチェックについて説明する。
図19は、デザインルールチェックの対象となる4層構造のプリント基板を例示している。デザインルールチェックを行うチェック項目として、配線51A〜51Dがスリット33又は孔34を跨ぐ場合が含まれる。本例では、デザインルールチェックまでの動作説明を省略し、チェック結果に対して重み付けが必要である場合の動作を説明する。
【0073】
重み付けが必要であるため、電流算出部13はノイズ電流を算出するための電磁界シミュレーションを開始する。まず、
図19のレイアウトデータから第2層、第3層、第4層のプレーン導体50A〜50C、及び第1層における第1及び第2のコネクタ39A,39Bの位置が抽出される。
【0074】
図20及び
図21は、
図19の例における電磁界シミュレーションモデルを例示している。本例においては、誘電体基板を省略したモデルが使用され、
図16と同様に、プレーン導体50A〜50Cを接続するビア、キャパシタ等が除外されている。
図19のレイアウトパターンから抽出された2つのコネクタ39A,39Bの中心位置がノイズ印加点として設定されている。
【0075】
上記モデルにおいて、各プレーン導体50A〜50Cについて、両ノイズ印加点毎に算出された電流値を比較し、絶対値の大きな電流が抽出される。
図22は、第2層のプレーン導体50Aの表面(第1層側の面)の電流分布55A及び裏面の電流分布55Bを例示している。
図23は、第3層のプレーン導体50Bの表面の電流分布56A及び裏面の電流分布56Bを例示している。
図24は、第4層のプレーン導体50Cの表面の電流分布57A及び裏面の電流分布57Bを例示している。
【0076】
図25は、
図19〜
図24の例におけるエラー情報表示を例示している。本例に係るエラー情報表示には、エラーマーク付レイアウトパターン58及びエラーリスト59が含まれている。
【0077】
エラーマーク付レイアウトパターン58には、各エラー箇所A〜Lの危険度を視覚的に認識可能にする工夫が施されている。すなわち、各エラー箇所A〜Lに対応する丸印には、色彩(色の濃淡を含む)が施されており、色が濃い程エラーの危険度が高いことを示している。
【0078】
エラーリスト59においては、各エラー箇所A〜Lが危険度に応じて区分けされている。本例においては、エラー箇所C,Dのエラー危険度が「大」であり、エラー箇所E,F,I,J,M,Nのエラー危険度が「中」であり、エラー箇所A,B,G,H,K,Lのエラー危険度が「小」である。当該危険度は、
図22〜24に示すノイズ電流の分布に依存する。すなわち、各エラー箇所A〜Lに対応する箇所の電流値が高い程、上記危険度が高くなる。
【0079】
以上のように、本実施の形態によれば、プリント基板(プレーン導体)に流れるノイズ電流値に応じて、デザインルールチェックによるエラー検出の結果に重み付けがなされ、当該重み付けに応じて各エラーの危険度が想定され、当該危険度を含めたエラー情報がユーザに提供される。これにより、ユーザは、エラーの危険度が高い箇所、すなわち優先的に設計変更等すべき箇所を容易に把握することが可能となる。
【0080】
実施の形態2
図26は、本発明の実施の形態2に係るデザインルールチェックシステム61の機能的な構成を示している。当該デザインルールチェックシステム61と上記実施の形態1に係るデザインルールチェックシステム1との相違点は、主に電流算出部63の動作にある。
【0081】
本実施の形態に係る電流算出部63は、上記ノイズ電流を算出するために、電磁ノイズが侵入する経路となるアンテナ、ケーブル、筐体、プリント基板に接続されるバッテリー、LSIをシールドする金属ケース等の周辺構造体を考慮する。すなわち、電流算出部63は、上記ノイズ電流を算出するために、上記レイアウトパターン(
図2に示す記憶装置22に記憶される設計情報)だけでなく、上記周辺構造体に関する周辺構造情報も参照する。
【0082】
図27は、実施の形態2に係るデザインルールチェックシステム61のハードウェア構成を例示している。本例に係るハードウェア構成は、上記実施の形態1に係る
図2に示すハードウェア構成と基本的に同様であるが、本例に係る記憶装置22には、上記周辺構造情報が記憶されている点で上記実施の形態1と相違している。当該周辺構造情報は、たとえば、ユーザが入力装置23を用いて上記周辺構造体に関する情報(例えば、上記周辺構造体の材質、寸法、形状、位置、接続関係等)を入力することにより取得することができる。本実施の形態に係る電流算出部63は、
図26に示すように、レイアウトパターン情報だけでなく、当該周辺構造情報にも基づいて、ノイズ電流値を算出する。
【0083】
図28は、実施の形態2に係るデザインルールチェックシステム61の動作を示している。
図28のフローチャートと上記実施の形態1に係る
図3のフローチャートとの相違点は、ステップS105とS106との間に、上記周辺構造情報の入力に関するステップS201が挿入されている点にある。以下に、
図28のフローチャートについて説明する。
【0084】
システムが動作を開始すると、パターン情報取得部11は、プリント基板のCADデータを読み込み、配線・電源・グラウンド・能動素子・受動素子の位置座標、配線層等の情報からなるレイアウトパターンを取得する(S101)。
【0085】
次に、デザインルールチェック部12は、デザインルールを読み込み、上記取得されたレイアウトパターンに対して、各デザインルールチェック項目が定める制約事項を満足するか否かを判定するデザインルールチェックを行う(S102)。
【0086】
次に、デザインルールチェックの結果に対して、外部からの電磁ノイズを考慮した重み付け、換言すれば、エラー箇所のレベル分けが必要であるか否かを判定する(S103)。この判定は、例えばチェック結果のエラー数をユーザに提示した上でユーザが重み付けの要否を入力する構成、エラーが一定数以上であれば自動的に重み付け処理を実行する構成等としてもよい。
【0087】
ステップS103において、重み付けの必要がない場合(NO)には、エラー情報生成部15は、レイアウトパターン上のエラー箇所に印をつけたエラーマーク付レイアウトパターン、配線の識別名・エラー項目等との対応関係を表化したエラーリスト等を含むエラー情報表示を出力装置24に出力させる(S104)。
【0088】
一方、ステップS103において、重み付けが必要である場合(YES)には、電流算出部63は、レイアウトパターンに基づいて基板(プレーン導体)の電磁界モデルを作成し(S105)、上記周辺構造体情報を取得し(S201)、当該電磁界モデルに下記する印加モデル、印加点を入力し(S106)、印加点毎に基板の電流分布を算出する(S107)。その後、電流算出部63は、各印加点の各部での電流の最大値を抽出するか、又は各印加点の各部での電流値を足し合わせることにより(S108)、重み付けに必要な基板上の各部でのノイズ電流値を算出する。
【0089】
重み付与部14は、デザインルールチェックによるエラー検出の結果に対して、ステップS108により算出され当該エラー箇所に対応するノイズ電流値の大きさに応じて、重み付けをする(S109)。
【0090】
その後、エラー情報生成部15は、上記重み付けを反映させたエラーマーク付レイアウトパターン、エラーリスト等を含むエラー情報表示を出力装置24に出力させる(S110)。
【0091】
上記電流算出部63は、電磁界シミュレーションモデルを作成する際に、パターン情報取得部11から取得したレイアウトパターン情報に加え、上記周辺構造体情報も考慮する。例えば、アンテナ、ケーブル、コネクタ、スイッチ等、電磁ノイズが侵入する箇所にノイズ印加点が配置され、ノイズ電流を算出してもよい。ノイズ印加点は、上記アンテナ等の他にも、筐体、バッテリー等の電子機器の構成に応じてユーザが任意に指定した箇所としてもよい。
【0092】
図29及び
図30は、実施の形態2に係るデザインルールチェックシステム61によるデザインルールチェックの対象となるプリント基板65を例示している。プリント基板65は、筐体66及びバッテリー67が接続された2層構造を有する。
【0093】
本例に係るプリント基板65は、筐体66と接続する3箇所の導電性の筐体接続部68及びバッテリー67と接続するバッテリー接続部69を有する。各筐体接続部68により、上記実施の形態1と同様の形状を有するプレーン導体30と筐体66とが接続している。バッテリー接続部68により、プレーン導体30とバッテリー67のグラウンド端子とが接続している。
【0094】
上記
図27に示す記憶装置22に記憶される周辺構造情報には、上記筐体66、バッテリー、筐体接続部67、及びバッテリー接続部68の材質、形状、寸法、位置等に関する設計上の情報が含まれている。また、当該記憶装置22に記憶される設計情報には、当該周辺構造情報以外のプリント基板に関する設計上の情報が含まれている。また、デザインルールチェックには、配線32A〜32Dがプレーン導体30のスリット33及び孔34を跨ぐ箇所を検出するチェック項目が含まれる。ここでは、デザインルールチェックまでの動作説明を省略し、チェック結果に対して重み付けが必要である場合の動作を説明する。
【0095】
重み付けが必要であるため、電流算出部63はノイズ電流を算出するための電磁界シミュレーションを開始する。
図31及び
図32は、実施の形態2における電磁界シミュレーションモデルを示している。初めに、
図29のレイアウトデータから、第2層のプレーン導体30及び第1層のコネクタ39A,39Bが抽出され、プレーン導体30のみのモデルが構成される。尚、ここでは誘電体基板を省略したモデルが使用されている。
【0096】
次に、ユーザにより筐体66、バッテリー67、筐体接続部68、及びバッテリー接続部69の材質等に関する周辺構造情報が入力される。これらの周辺構造情報は、上記電流算出部68により作成されたモデルに追加される。
【0097】
次に、抽出されたコネクタ39A,39Bの中心位置がノイズ印加点としてモデル上に配置される。電流算出部63は、プレーン導体30の各部で両ノイズ印加点毎に算出された電流値を比較し、各部での絶対値の大きい電流を抽出するか、又は各部での電流値を足し合わせる。
図33は、このようにして算出された実施の形態2におけるプレーン導体30上のノイズ電流の分布を示している。
【0098】
次に、重み付与部14は、配線32A〜32Dがスリット33又は孔34を跨ぐエラー箇所において、当該箇所に対応するプレーン導体30の位置のノイズ電流値に応じて、デザインルールチェックの結果に重み付けをする。
【0099】
エラー情報生成部15は、重み付けをされた結果に基づいて、エラー情報表示を生成し、出力装置24に出力する。
図34は、実施の形態2に係るエラー情報表示を例示している。本例に係るエラー情報表示には、エラーマーク付レイアウトパターン71及びエラーリスト72が含まれている。エラーマーク付レイアウトパターン71の各エラー箇所A〜Jに対応する丸印には、色彩(色の濃淡を含む)が施されており、色が濃い程エラーの危険度が高いことを示している。また、エラーリスト72において、各エラー箇所A〜Jが危険度に応じて区分けされている。各エラー箇所A〜Jに対応するノイズ電流値が高い程、当該危険度が高くなっている。
【0100】
上記実施の形態2のように、周辺構造情報も考慮に入れることにより、ノイズ電流の分布を上記実施の形態1より正確に算出することが可能となり、より正確に各エラー箇所の危険度を判定することが可能となる。
【0101】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【0102】
例えば、上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。 また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0103】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0104】
この出願は、2012年3月23日に出願された日本出願特願2012−67381を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。