【文献】
加藤友章, 佐藤峰斗, 佐藤健二, 山瀬知行, 野口栄実,CMOSロジックIC直接駆動対応線形加速器型縦列電極構造InP MZ変調器,電子情報通信学会技術研究報告書,2011年 6月23日,Vol.111, No.111(OPE2011 15-27),pp.59-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路は、前記駆動回路から出力される複数の前記駆動信号のうち、前記入力デジタル信号が表す変調階調数の中央に近い階調での変調を行う位相変調領域に出力されるものほど、階調数が多くなるように前記駆動回路を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の光送信器。
前記制御回路は、前記駆動回路から出力される複数の前記駆動信号のうち、前記入力デジタル信号が表す変調階調数の中で出現確率が大きい階調での変調を行う位相変調領域に出力されるものほど、階調数が多くなるように前記駆動回路を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の光送信器。
前記制御回路は、前記駆動回路から出力される複数の前記駆動信号のうち、前記入力デジタル信号が表す変調階調数の中央に近い階調での変調を行う位相変調領域に出力されるものほど、階調数が多くなるように前記駆動回路を制御することを特徴とする、
請求項7に記載の光送受信システム。
前記制御回路は、前記駆動回路から出力される複数の前記駆動信号のうち、前記入力デジタル信号が表す変調階調数の中で出現確率が大きい階調での変調を行う位相変調領域に出力されるものほど、階調数が多くなるように前記駆動回路を制御することを特徴とする、
請求項7に記載の光送受信システム。
入力デジタル信号のデコード値に応じた信号に基づき、光変調器に設けられた光導波路に形成された複数の位相変調領域のそれぞれに、階調数が異なるものを含む3階調以上の駆動信号を出力する、外部の制御回路によって前記デコード値に対する動作範囲が指定可能な複数のDACを備える、
駆動回路。
前記複数のDACのうち、前記入力デジタル信号が表す変調階調数の中央に近い階調での変調を行う位相変調領域に駆動信号を出力するものほど、階調数が多くなることを特徴とする、
請求項13に記載の駆動回路。
前記複数のDACのうち、前記入力デジタル信号が表す変調階調数の中で出現確率が大きい階調での変調を行う位相変調領域に駆動信号を出力するものほど、階調数が多くなることを特徴とする、
請求項13に記載の駆動回路。
外部の記憶装置に記憶された前記複数のDACの前記デコード値に対する指定情報に基づいて、前記複数のDACのそれぞれの前記デコード値に対する動作範囲が指定されることを特徴とする、
請求項13乃至15のいずれか一項に記載の駆動回路。
光モニタ回路が検出した前記光変調器からの出力光の光強度と前記入力デジタル信号から得られる光強度の期待値との差分に基づいて演算装置から出力された調整指示信号に基づいて、前記複数のDACのそれぞれの前記デコード値に対する動作範囲が指定されることを特徴とする、
請求項13乃至15のいずれか一項に記載の駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0018】
以下の実施の形態にかかる光送信器の構成及び動作を理解するための前提として、一般的な分割電極構造の多値の光送信器500について説明する。光送信器500は、多値変調光送信器であるが、ここでは説明の簡略化のため、光送信器500を4ビットの光送信器として説明する。
図1は、一般的な分割電極構造の多値の光送信器500の構成を模式的に示すブロック図である。光送信器500は、光変調器51、デコーダ52及び駆動回路53を有する。
【0019】
光変調器51は、入力光INを変調した出力光OUTを出力する。光変調器51は、光導波路511及び512、光合分波器513及び514、位相変調領域PM51_1〜PM51_4、PM52_1〜PM52_4を有する。光導波路511及び512は並列に配置される。
【0020】
光導波路511及び512の光信号入力(入力光IN)側には、光合分波器513が挿入される。光合分波器513の入力側では、入力ポートP1に入力光INが入力され、入力ポートP2は無入力とする。光合分波器513の出力側では、光導波路511は出力ポートP3と接続され、光導波路512は出力ポートP4と接続される。
【0021】
図2Aは、光合分波器513の構成を模式的に示す図である。光合分波器513では、入力ポートP1に入射した光は、出力ポートP3及びP4に伝搬する。ただし、入力ポートP1から出力ポートP4に伝搬する光は、入力ポートP1から出力ポートP3に伝搬する光に比べて、位相が90°遅延する。また、入力ポートP2に入射した光は、出力ポートP3及びP4に伝搬する。ただし、入力ポートP2から出力ポートP3に伝搬する光は、入力ポートP2から出力ポートP4に伝搬する光に比べて、位相が90°遅延する。
【0022】
光導波路511及び512の光信号出力(出力光OUT)側には、光合分波器514が挿入される。光合分波器514の入力側では、光導波路511は入力ポートP5と接続され、光導波路512は入力ポートP6と接続される。光合分波器514の出力側では、出力ポートP7から出力光OUTが出力される。
【0023】
図2Bは、光合分波器514の構成を模式的に示す図である。光合分波器514は、光合分波器513と同様の構成を有する。入力ポートP5及びP6は、それぞれ光合分波器513の入力ポートP1及びP2に対応する。出力ポートP7及びP8は、それぞれ光合分波器513の出力ポートP3及びP4に対応する。入力ポートP5に入射した光は、出力ポートP7及びP8に伝搬する。ただし、入力ポートP5から出力ポートP8に伝搬する光は、入力ポートP5から出力ポートP7に伝搬する光に比べて、位相が90°遅延する。また、入力ポートP6に入射した光は、出力ポートP7及びP8に伝搬する。ただし、入力ポートP6から出力ポートP7に伝搬する光は、入力ポートP6から出力ポートP8に伝搬する光に比べて、位相が90°遅延する。
【0024】
光合分波器513と光合分波器514との間の光導波路511には、位相変調領域PM51_1〜PM51_4が配置される。光合分波器513と光合分波器514との間の光導波路512には、位相変調領域PM52_1〜PM52_4が配置される。
【0025】
ここで、位相変調領域とは、光導波路上に形成された電極を有する領域である。そして、電極に電気信号、例えば電圧信号が印加されることにより、電極の下の光導波路の実効屈折率が変化する。その結果、位相変調領域の光導波路の実質的な光路長を変化させることができる。これにより、位相変調領域は、光導波路を伝搬する光信号の位相を変化させることができる。そして、2本の光導波路511及び512の間を伝搬する光信号間に位相差を与えることで、光信号を変調することができる。すなわち、光変調器51は、2本のアームと電極分割構造を有する、多値のマッハツェンダ光変調器を構成する。
【0026】
デコーダ52は、4ビットの入力デジタル信号D[3:0]をデコードし、例えば多ビットの信号D1〜D4を駆動回路53に出力する。
【0027】
駆動回路53は、5値のD/AコンバータDAC51〜DAC54を有する。D/AコンバータDAC51〜DAC54のそれぞれには、信号D1〜D4が供給される。D/AコンバータDAC51〜DAC54は、信号D1〜D4に応じて一対の差動出力信号を出力する。このとき、D/AコンバータDAC51〜DAC54から出力される差動出力信号の正相出力信号のそれぞれは、位相変調領域PM51_1〜51_4に出力される。D/AコンバータDAC51〜DAC54から出力される差動出力信号の逆相出力信号のそれぞれは、位相変調領域PM52_1〜52_4に出力される。
【0028】
ここで、D/AコンバータDAC51〜DAC54が出力する差動出力信号について説明する。D/AコンバータDAC51は、上述のように、5値出力(0、1、2、3、4)のD/Aコンバータである。つまり、DAC51は、信号D1の値の増大に応じて、正相出力信号の値を「0」→「1」→「2」→「3」→「4」の順に増加させる。
【0029】
一方、DAC51は、正相出力信号を反転させた信号を、逆相出力信号として出力する。つまり、DAC51は、信号D1の値の増大に応じて、逆相出力信号の値を「4」→「3」→「2」→「1」→「0」の順に増加させる。なお、正相出力信号及び逆相出力信号の値の和が、5値出力の最大値「4」と等しくなるように、逆相出力信号の値が決定されると理解することも可能である。
【0030】
図3は、光送信器500の動作を示す動作表である。D/AコンバータDAC51は、入力デジタル信号D[3:0]が「0000」→「0001」→「0010」→「0011」→「0100」と増加するに従って、正相出力信号の値を「0」→「1」→「2」→「3」→「4」の順で増加させ、逆相出力信号の値を「4」→「3」→「2」→「1」→「0」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「0101」以上の場合には、D/AコンバータDAC51の正相出力信号の値は「4」、逆相出力信号の値は「0」となる。
【0031】
D/AコンバータDAC52は、入力デジタル信号D[3:0]が「0100」→「0101」→「0110」→「0111」→「1000」と増加するに従って、正相出力信号の値を「0」→「1」→「2」→「3」→「4」の順で増加させ、逆相出力信号の値を「4」→「3」→「2」→「1」→「0」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「0011」以下の場合には、D/AコンバータDAC52の正相出力信号の値は「0」、逆相出力信号の値は「4」となる。また、入力デジタル信号D[3:0]が「1001」以上の場合には、D/AコンバータDAC52の正相出力信号の値は「4」、逆相出力信号の値は「0」となる。
【0032】
D/AコンバータDAC53は、入力デジタル信号D[3:0]が「1000」→「1001」→「1010」→「1011」→「1100」と増加するに従って、正相出力信号の値を「0」→「1」→「2」→「3」→「4」の順で増加させ、逆相出力信号の値を「4」→「3」→「2」→「1」→「0」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「0111」以下の場合には、D/AコンバータDAC53の正相出力信号の値は「0」、逆相出力信号の値は「4」となる。また、入力デジタル信号D[3:0]が「1101」以上の場合には、D/AコンバータDAC53の正相出力信号の値は「4」、逆相出力信号の値は「0」となる。
【0033】
D/AコンバータDAC54は、入力デジタル信号D[3:0]が「1100」→「1101」→「1110」→「1111」と増加するに従って、正相出力信号の値を「0」→「1」→「2」→「3」の順で増加させ、逆相出力信号の値を「4」→「3」→「2」→「1」→の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「1011」以下の場合には、D/AコンバータDAC51の正相出力信号の値は「0」、逆相出力信号の値は「4」となる。
【0034】
ここで、光送信器500の位相変調動作について説明する。
図4は、光送信器500での光の伝搬態様を模式的に示す図である。この例では、
図1に示すように、光合分波器513の入力ポートP1に入力光INが入力する。そのため、出力ポートP3から出力される光に比べて、出力ポートP4から出力される光は、位相が90°遅れる。その後、出力ポートP3から出力された光は、位相変調領域PM51_1〜51_4を通過し、光合分波器514の入力ポートP5に到達する。入力ポートP5に到達した光は、そのまま出力ポートP7に到達する。一方、出力ポートP4から出力された光は、位相変調領域PM52_1〜52_4を通過し、光合分波器514の入力ポートP6に到達する。入力ポートP6に到達した光は、さらに位相が90°遅延して、出力ポートP7に到達する。
【0035】
つまり、位相変調領域PM51_1〜51_4及び位相変調領域PM52_1〜52_4により位相変調を受けなかった場合でも、入力ポートP6から出力ポートP7に到達する光L2は、入力ポートP5から出力ポートP7に到達する光L1に比べて、位相が180°遅延することとなる。
【0036】
図5Aは、位相変調領域PM51_1〜51_4及び位相変調領域PM52_1〜52_4により位相変調を受けなかった場合の光L1及びL2を示すコンスタレーション図である。上述したように、入力ポートP6から出力ポートP7に到達する光L2は、入力ポートP5から出力ポートP7に到達する光L1に比べて、位相が180°遅延する。
【0037】
これに対し、光送信器500では、位相変調領域PM51_1〜51_4には正相出力信号が入力し、位相変調領域PM52_1〜52_4には逆相出力信号が入力する。これにより、入力ポートP6から出力ポートP7に到達する光L2の位相遅れを補償する。
図5Bは、光送信器500において入力デジタル信号D[3:0]の2進コードが「0000」である場合の光L1及びL2を示すコンスタレーション図である。例えば、入力デジタル信号D[3:0]の2進コードが「0000」であれば、位相変調領域PM51_1〜51_4には正相出力信号である「0」が入力される。一方、位相変調領域PM52_1〜52_4には逆相出力信号である「4」が入力される。これにより、位相変調領域PM52_1〜52_4を通過する光は、更に位相が180°遅れる。
【0038】
すなわち、入力ポートP6から出力ポートP7に到達する光L2には、元々の180°位相遅れに加えて、位相変調領域PM52_1〜52_4による位相遅れである180°が加算される。これにより、入力ポートP6から出力ポートP7に到達する光L2には、360°の位相遅れが生じるため、入力ポートP5から出力ポートP7に到達する光L1に対する位相遅れが実質的に解消される。また、入力デジタル信号D[3:0]の2進コードが増加して、DAC51〜54から出力される正相出力信号が増加するごとに、逆相出力信号が減少する。
【0039】
図5Cは、光送信器500における光L1及びL2を示すコンスタレーション図である。
図5Cに示すように、差動出力信号を用いることで、入力デジタル信号D[3:0]の変化に応じて、入力ポートP1から出力ポートP4及び入力ポートP6から出力ポートP7に到達する光L2の位相遅れを補償しつつ、L1/L2の各々がRe軸に対して対照的に光の位相が変化することとなり、光送信器における光D/A変換が可能となる。これにより、
図3の動作表に示すように、入力デジタル信号D[3:0]の値に応じて、光L1の位相変調量を0〜15Δθ、光L2の位相変調量を0〜−15Δθの16段階に変化させることができる。
【0040】
なお、
図5B及び
図5Cでは、入力デジタル信号D[3:0]の2進コードが「0000」又は「1111」のときに、光L1及びL2の位置が一致していないが、これは、図面を見やするために過ぎない。つまり、入力デジタル信号D[3:0]の2進コードが「0000」又は「1111」のときに、光L1及びL2の位置が一致していてもよい。また、ここでは、位相変調領域で変調される位相変化量は、入力デジタル信号に応じて0〜180度変化する場合について説明したが、これに限ったことではない。
【0041】
光送信器500は、以上の構成により、4ビットの光送信器として機能する。ところが、駆動回路53によって位相変調されたL1およびL2の位相の階調が等間隔である場合には、以下の問題が生じる。
図5Dは、光送信器500において光L1及びL2が合波されることによる出力光OUTの光強度を示すコンスタレーション図である。
図5Dに示すように、光信号の位相を等間隔にずらしてゆくと、出力光の光強度の階調間隔は不均一になってしまい、入力デジタル信号に対する出力光の信号強度の線形性が確保できない。
【0042】
実施の形態1
次に、本発明の実施の形態1にかかる光送信器100について説明する。光送信器100は、上記の光送信器500におけるような問題を解決するため、出力光の線形性の調整機能を有する光送信器として構成される。また、光送信器100は多値変調光送信器であるが、ここでは説明の簡略化のため、光送信器100を4ビットの光送信器として説明する。
図6は、実施の形態1にかかる光送信器100の構成を模式的に示すブロック図である。光送信器100は、光変調器11、デコーダ12、駆動回路13及び制御回路14を有する。
【0043】
光変調器11は、入力光INを変調した出力光OUTを出力する。光変調器11は、光導波路111及び112、光合分波器113及び114、位相変調領域PM11_1〜PM11_4、PM12_1〜12_4を有する。光導波路111及び112は並列に配置される。
【0044】
光導波路111及び112の光信号入力(入力光IN)側には、光合分波器113が挿入される。光合分波器113は、上述の光合分波器513と同様の構成を有する。光合分波器113の入力側では、入力ポートP1に入力光INが入力され、入力ポートP2は無入力とする。光合分波器113の出力側では、光導波路111は出力ポートP3と接続され、光導波路112は出力ポートP4と接続される。
【0045】
光導波路111及び112の光信号出力(出力光OUT)側には、光合分波器114が挿入される。光合分波器114は、上述の光合分波器514と同様の構成を有する。光合分波器114の入力側では、光導波路111は入力ポートP5と接続され、光導波路112は入力ポートP6と接続される。光合分波器114の出力側では、出力ポートP7から出力光OUTが出力される。
【0046】
光合分波器113と光合分波器114との間の光導波路111には、位相変調領域PM11_1〜PM11_4が配置される。光合分波器113と光合分波器114との間の光導波路112には、位相変調領域PM12_1〜PM12_4が配置される。
【0047】
ここで、位相変調領域は、光送信器500と同様に、光導波路上に形成された電極を有する。そして、電極に電気信号、例えば電圧信号が印加されることにより、電極の下の光導波路の実効屈折率が変化する。その結果、位相変調領域の光導波路の実質的な光路長を変化させることができる。これにより、位相変調領域は、光導波路を伝搬する光信号の位相を変化させることができる。そして、2本の光導波路111及び112の間を伝搬する光信号間に位相差を与えることで、光信号を変調することができる。すなわち、光変調器11は、2本のアームと電極分割構造を有する、多値のマッハツェンダ光変調器を構成する。
【0048】
駆動回路13は、D/AコンバータDAC1〜DAC4を有する。D/AコンバータDAC1〜DAC4は、同じフルスケール振幅FSAを有する。ただし、D/AコンバータDAC1〜DAC4は、階調数が異なる。この例ではD/AコンバータDAC1及びDAC4の階調数は、D/AコンバータDAC2及びDAC3の階調数よりも少ないものとする。
図7は、D/AコンバータDAC1〜DAC4の階調数を模式的に示す図である。ここでは、D/AコンバータDAC1及びDAC4の階調数を3とし、D/AコンバータDAC2及びDAC3の階調数を5する。
【0049】
D/AコンバータDAC1〜DAC4は、信号D1〜D4に応じて一対の差動出力信号を出力する。このとき、D/AコンバータDAC1〜DAC4から出力される差動出力信号の正相出力信号のそれぞれは、位相変調領域PM11_1〜11_4に出力される。D/AコンバータDAC1〜DAC4から出力される差動出力信号の逆相出力信号のそれぞれは、位相変調領域PM12_1〜12_4に出力される。
【0050】
ここで、D/AコンバータDAC1〜DAC4が出力する差動出力信号について説明する。D/AコンバータDAC1及びDAC4は、上述のように、4値(3階調)出力のD/Aコンバータである。このとき、D/AコンバータDAC1及びDAC4の正相出力信号は「0(0×FSA/3)」→「1×FSA/3」→「2×FSA/3」→「3×FSA/3」の順で増加し、逆相出力信号は「3×FSA/3」→「2×FSA/3」→「1×FSA/3」→「0(0×FSA/3)」の順で減少する。D/AコンバータDAC2及びDAC3は、上述のように、6値(5階調)出力のD/Aコンバータである。このとき、D/AコンバータDAC2及びDAC3の正相出力信号は「0(0×FSA/5)」→「1×FSA/5」→「2×FSA/5」→「3×FSA/5」→「4×FSA/5」→「5×FSA/5」の順で増加し、逆相出力信号は「5×FSA/5」→「4×FSA/5」→「3×FSA/3」→「2×FSA/3」→「1×FSA/3」→「0(0×FSA/3)」の順で減少する。なお、正相出力信号及び逆相出力信号の値の和が、DAC1〜DAC4の出力の最大値と等しくなるように、逆相出力信号の値が決定されると理解することも可能である。
【0051】
デコーダ12は、4ビットの入力デジタル信号D[3:0]をデコードし、信号D1〜D4を、駆動回路13に出力する。
【0052】
制御回路14は、デコーダ12に対して、信号D1〜D4をD/AコンバータDAC1〜DAC4のいずれに出力させるかを制御する。この例では、制御回路14による制御を受けて、デコード12は、信号D1〜D4を、それぞれD/AコンバータDAC1〜DAC4に出力する。つまり、制御回路14は、信号D1〜D4とD/AコンバータDAC1〜DAC4との対応関係を指定する。また、換言すれば、制御回路14は、デコード値にとD/AコンバータDAC1〜DAC4との対応関係、すなわち、デコード値に対するDAC1〜DAC4の動作範囲を指定する。
【0053】
図8は、実施の形態1にかかる光送信器100の動作を示す動作表である。D/AコンバータDAC1は、入力デジタル信号D[3:0]が「0000」→「0001」→「0010」→「0011」と増加するに従って、正相出力信号を「0(0×FSA/3)」→「1×FSA/3」→「2×FSA/3」→「3×FSA/3」の順で増加させる。一方、D/AコンバータDAC1は、逆相出力信号を「3×FSA/3」→「2×FSA/3」→「1×FSA/3」→「0(0×FSA/3)」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「0100」以上の場合には、D/AコンバータDAC1の正相出力信号は「3×FSA/3」となり、逆相出力信号は「0(0×FSA/3)」となる。
【0054】
D/AコンバータDAC2は、入力デジタル信号D[3:0]が「0011」→「0100」→「0101」→「0110」→「0111」→「1000」と増加するに従って、正相出力信号を「0(0×FSA/5)」→「1×FSA/5」→「2×FSA/5」→「3×FSA/5」→「4×FSA/5」→「5×FSA/5」の順で増加させる。一方、D/AコンバータDAC2は、逆相出力信号を「5×FSA/5」→「4×FSA/5」→「3×FSA/5」→「2×FSA/5」→「1×FSA/5」→「0(0×FSA/5)」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「0010」以下の場合には、D/AコンバータDAC2の正相出力信号は「0(0×FSA/5)」となり、逆相出力信号は「5×FSA/5」となる。入力デジタル信号D[3:0]が「1001」以上の場合には、D/AコンバータDAC2の正相出力信号は「5×FSA/5」となり、逆相出力信号は「0(0×FSA/5)」となる。
【0055】
D/AコンバータDAC3は、入力デジタル信号D[3:0]が「1000」→「1001」→「1010」→「1011」→「1100」→「1101」と増加するに従って、正相出力信号を「0(0×FSA/5)」→「1×FSA/5」→「2×FSA/5」→「3×FSA/5」→「4×FSA/5」→「5×FSA/5」の順で増加させる。一方、D/AコンバータDAC3は、逆相出力信号を「5×FSA/5」→「4×FSA/5」→「3×FSA/5」→「2×FSA/5」→「1×FSA/5」→「0(0×FSA/5)」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「0111」以下の場合には、D/AコンバータDAC3の正相出力信号は「0(0×FSA/5)」となり、逆相出力信号は「5×FSA/5」となる。入力デジタル信号D[3:0]が「1110」以上の場合には、D/AコンバータDAC3の正相出力信号は「5×FSA/5」となり、逆相出力信号は「0(0×FSA/5)」となる。
【0056】
D/AコンバータDAC4は、入力デジタル信号D[3:0]が「1101」→「1110」→「1111」と増加するに従って、正相出力信号を「0(0×FSA/3)」→「1×FSA/3」→「2×FSA/3」の順で増加させる。一方、D/AコンバータDAC4は、逆相出力信号を「3×FSA/3」→「2×FSA/3」→「1×FSA/3」の順で減少させる。ただし、入力デジタル信号D[3:0]が「1100」以下の場合には、D/AコンバータDAC4の正相出力信号は「0(0×FSA/3)」となり、逆相出力信号は「3×FSA/3」となる。
【0057】
図9A及びBは、光送信器100の変調動作を示すコンスタレーション図である。
図9Aに示すように、D/AコンバータDAC1及びDAC4は、光L1の位相変調量をFSA/3×Δθずつ、光L2の位相変調量を−FSA/3×Δθずつ変化させることができる。D/AコンバータDAC2及びDAC3は、光L1の位相変調量をFSA/5×Δθずつ、光L2の位相変調量を−FSA/5×Δθずつ変化させることができる。
【0058】
この例では、D/AコンバータDAC1及びDAC4は、D/AコンバータDAC2及びDAC3よりも、階調数が少ない。よってD/AコンバータDAC1及びDAC4は、D/AコンバータDAC2及びDAC3よりも、階調間隔が広くなる。その結果、D/AコンバータDAC1及びDAC4による光信号の位相変化は、D/AコンバータDAC2及びDAC3による光信号の位相変化よりも、大きくなる。
【0059】
つまり、出力光の中心階調に近い階調を受け持つD/Aコンバータに階調数の多いD/Aコンバータを割り当て、出力光の中心階調から離れた階調を受け持つD/Aコンバータに階調数の少ないD/Aコンバータを割り当てることにより、
図9Bに示すように、出力光の信号強度の階調間隔を均一化することができる。
【0060】
その結果、光送信器500のように等間隔で位相を変化させる場合と比べて、光送信器100は、出力光の階調間隔を均一化することが可能となる。以上より、本構成によれば、出力光の信号強度の線形性を調整することができる光送信器を提供することができる。
【0061】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる光送信器200について説明する。光送信器200は、実施の形態1にかかる光送信器100の変形例である。
図10は、実施の形態2にかかる光送信器200の構成を模式的に示すブロック図である。光送信器200は、実施の形態1にかかる光送信器100に記憶装置15を追加した構成を有する。
【0062】
記憶装置15は、DAC選択テーブル16を有する。制御回路14は、記憶装置15に格納されたDAC選択テーブル16を読み込み、DAC選択テーブル16のDAC選択情報に基づき、信号D1〜D4のそれぞれ、D/AコンバータDAC1〜DAC4のいずれかに出力する。
【0063】
なお、DAC選択テーブル16は、記憶装置15に予め格納された固定値としてもよい。また、DAC選択テーブル16は、光送信器200を光送受信システムに組み込む際の初期設定情報として、外部から記憶装置15に入力されてもよい。さらに、光送信器200が光信号を送出している間に、外部から記憶装置15のDAC選択テーブル16を更新することも可能である。
【0064】
本構成によれば、制御回路14がDAC選択テーブル16を参照して、異なる階調数を有するD/AコンバータDAC1〜DAC4のそれぞれの動作範囲を、それぞれ好適なデコード値に割り当てることが可能となる。
【0065】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3にかかる光送信器300について説明する。光送信器300は、実施の形態1にかかる光送信器100の変形例である。
図11は、実施の形態3にかかる光送信器300の構成を模式的に示すブロック図である。光送信器300は、実施の形態1にかかる光送信器100に、光モニタ回路17及び演算装置18を追加した構成を有する。
【0066】
光モニタ回路17は、光変調器11の出力光OUTをモニタし、出力光OUTの光強度を検出する。そして、光モニタ回路17は、検出した光強度に対応する検出信号S
dを、演算装置18に出力する。
【0067】
演算装置18は、検出信号Sdから得られる出力光OUTの光強度と、入力デジタル信号D[3:0]の値に対応する光強度の期待値との差分を算出する。そして、算出した差分に応じた調整指示信号Soを、制御回路14に出力する。調整指示信号Soは、DAC選択情報を含む。
【0068】
制御回路14は、調整指示信号Soで指定されたDACに対して、信号D1〜D4をそれぞれ出力する。
【0069】
本構成によれば、実際の出力光OUTの光強度をモニタしながら、D/AコンバータDAC1〜DAC4を適切にかつ自動的に選択することが可能である。したがって、より出力光OUTの信号強度に対する線形性を精密に調整することができる光送信器を提供することができる。
【0070】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4にかかる光送受信システム400について説明する。光送受信システム400は、上述の光送信器100、200及び300のいずれかを用いた光送受信システムである。ここでは、光送受信システム400が光送信器100を有する例について説明する。
図12は、実施の形態4にかかる光送受信システム400の構成を模式的に示すブロック図である。
【0071】
光送受信システム400は、光送信器100、光受信器401、伝送路402、光増幅器403を有する。
【0072】
光送信器100は、光信号として、例えば四位相偏移変調(Quadrature Phase Shift Keying:以下、QPSKと表記する)された、QPSK光信号を出力する。
【0073】
光送信器100と光受信器401との間は、光伝送路402により光学的に接続され、QPSK光信号が伝搬する。伝送路402には、光増幅器403が挿入され、伝送路403を伝搬するQPSK光信号を増幅する。光受信器401は、QPSK光信号を電気信号に復調する。
【0074】
光送受信システム400は、以上の構成により、光送信器100を用いた光信号の伝送が可能である。なお、光送信器100を、適宜、光送信器100又は200に置換できることは勿論である。
【0075】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について説明する。上述の実施の形態1〜3では、出力光の線形性を向上させる例について説明したが、出力光の線形性の調整方法はこれに限られるものではない。本実施の形態では、実施の形態1〜3にかかる光送信器100、200及び300を用いた、他の出力光の線形性の調整方法について説明する。
【0076】
例えば、光送受信システムなどでは、長距離伝送を行うに際し、光送信器から送出される光信号に対して予等化処理を行う場合がある。この場合、予等化処理をされた光信号は、中程度の振幅を有する成分が出現する確率が大きい。このような場合、出現確率が大きい成分については高精度に、出現確率が小さい成分については低精度に処理することで、少ないビット数で信号処理が可能となる。
【0077】
図13は、予等化された光信号の波形と出現確率を示す図である。
図13に示すような予等化信号を、例えば4ビットの階調で光信号処理した場合には、信号の中心付近、すなわち「1000」付近の出現確率が大きくなる。一方、信号の両端、すなわち「0000」及び「1111」付近の出現確率が小さくなる。
【0078】
図14Aは、一般的な線形特性を有する4ビットの出力光の階調変化を示すグラフである。
図14Bは、「1000」付近の階調幅が狭くなる非線形特性を有する4ビットの出力光の階調変化を示すグラフである。
図14Bに示すように、出力光の階調変化を、
図14Aで示した線形状態特性を有する量子化ではなく、
図12Bで示した「1000」付近の階調幅が狭くなるような非線形特性を有する量子化を行うことで、「1000」付近の処理を高精度に行うことが可能となる。その結果、
図13に示すような信号を扱う場合、同じ4ビット階調でも、
図14Bに示すような非線形特性を持たせることで、高精度な信号処理を行うことが可能となる。
【0079】
このように、敢えて信号に非線形性を持たせる用途に対しても、本発明の調整手法を用いることで、出力光の信号強度に対する線形性を調整することが可能となる。よって、実施の形態1〜3にかかる光送信器100、200及び300により、出力光OUTに対して、
図13に示すような非線形性を持たせることにより、通信方式によっては、処理ビットの削減や高精度処理を実現することができる。
【0080】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、光の位相変化は、変化の順序に関係なく加算することができるので、D/Aコンバータの選択パターンは、上述の例には限られない。換言すれば、D/AコンバータDAC1〜DAC4の順序を任意に入れ換えることが可能である。
【0081】
上述の実施の形態では、光送信器100、200及び300を4ビットの光送信器として説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、位相変調領域(分割電極)、D/Aコンバータの個数及び階調数を増加させることにより、さらに高次の多値変調が可能な光送信器を構成できることは、言うまでもない。
【0082】
実施の形態3では、出力光の光強度をモニタしてD/Aコンバータに与える信号を選択する例について説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、出力光の光強度のモニタを光受信器にて行い、光受信器から光送信器へ光強度情報をフィードバックする構成としてもよい。また、演算装置18を、光送信器に組み込んでもよい。
【0083】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0084】
この出願は、2012年3月22日に出願された日本出願特願2012−064769を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。