(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二軸延伸ブロー成形の際、高圧ブローエアー供給より前に延伸ロッドの先端がプリフォームの底部に接触し、縦延伸を開始する。
特許文献2のプリフォームのように、内面を曲面と球面部で形成してプリフォームの底部中心およびその近傍の肉厚を薄くすると、延伸ロッド当接部分の肉厚が十分確保しにくい。延伸ロッド当接部分の肉厚が十分確保されないと、二軸延伸ブロー成形する合成樹脂製容器の肉厚調整や耐熱性向上のため、プリフォーム加熱時にプリフォーム底部の温度をより高く設定した際、延伸ロッドでプリフォームの延伸時に過延伸が起こりやすくなり、過延伸白化や、極度の薄肉化による容器の耐熱性不良が起こるおそれがある。さらには、延伸ロッドによるプリフォーム底部突き抜け(突き破り)が生じるおそれがある。底部突き抜けは歩留りを低下させる。また、底部中心から胴部にかけての肉厚を好適に増加させにくく、射出成形機によってプリフォームを形成する際、溶融樹脂が成形孔(キャビティ)を通りにくくなり、溶融樹脂が成形孔全体に行き渡らず、ショートショットが生じる。
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プリフォームの底部中心およびその近傍の肉厚を薄くしても、射出成形性、圧縮成形性に優れ、また、延伸ロッドによるプリフォーム底部延伸成形性が良好なプリフォーム及びプリフォームの成形金型、並びに、合成樹脂製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のプリフォームは、開口部を有する口頸部と、該口頸部に連続する筒状の胴部と、該胴部を閉塞する底部とを有するプリフォームにおいて、前記プリフォームの底部肉厚は、胴部側から底部中心部に向かって漸次薄くなるよう形成され、前記底部の内面は、前記プリフォームの中心軸を含む縦断面上で該中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であり、前記底部の外面が、球面部で形成されるか、又は前記底部の外面が、前記プリフォームの中心軸を含む縦断面上で該中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であ
り、前記底部の外面が、球面部で形成され、前記底部の外面が球面部で形成され、底部内面は前記球面部と中心が一致し、前記プリフォームの中心軸上に長軸を備え長球面部で形成され、前記プリフォームの胴部肉厚Tが2.00〜5.00mm、前記底部の外面における、球面部の半径Rが7.50〜17.00mmであって、前記底部の内面における、長球面部の短半径aがR−Tであるときに、前記長球面部の長半径bが、
(R+19a)/20≦b≦(7R+13a)/20の範囲にある。
また、前記目的を達成するために、本発明のプリフォームの成形金型は、雄型と、雌型とを備えたプリフォーム成形金型において、前記雄型と前記雌型の型閉時に、雄型先端部と雌型の底部面との間で形成される隙間が底部中心部に向かって漸次狭くなるよう形成され、前記プリフォームの底部内面を形成する前記雄型先端部が前記雄型中心軸を含む縦断面上で該中心軸上に長軸を備える楕円弧形状であり、前記雌型の底部面は、球面部で形成されるか、又は前記雌型の底部面は、前記雌型の中心軸を含む縦断面上で該中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であ
り、前記雌型の底部面は、球面部で形成され、前記雌型の底部面が球面部で形成され、前記雄型の先端部は前記雄型中心軸上に長軸を備える長球面部で形成され、前記雄型と雌型を型閉時に、前記球面部中心と長球面部の中心は一致し、前記プリフォームの胴部を形成する成形金型の隙間Tが2.00〜5.00mm、前記雌型の底部面における、球面部の半径Rが7.50〜17.00mmであって、前記雄型先端部における、長球面部の短半径aがR−Tであるときに、前記長球面部の長半径bが、
(R+19a)/20≦b≦(7R+13a)/20の範囲にある。
また、前記目的を達成するために、本発明のプリフォームの合成樹脂製容器の製造方法は、
前記プリフォームを延伸ロッドにより二軸延伸ブロー成形する合成樹脂製容器の製造方法において、前記プリフォームは、開口部を有する口頸部と、該口頸部に連続する筒状の胴部と、該胴部を閉塞する底部とを有し、底部肉厚は、胴部側から底部中心部に向かって漸次薄くなるよう形成され、底部の内面は、プリフォームの中心軸を含む縦断面上で中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であり、前記延伸ロッドは、プリフォーム底部中心部より厚肉の底部中心外部に最初に当接してプリフォームを延伸する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプリフォームは、底部の内面がプリフォームの中心軸を含む縦断面上で中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であ
り、前記底部の外面が、球面部で形成されるか、又は前記底部の外面が、前記プリフォームの中心軸を含む縦断面上で該中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であるため、底部の中心寄りの箇所を薄肉にし、底部の胴部寄り箇所に向かって連続的に好適に厚肉化できるため、延伸ロッドによる延伸時に延伸ロッドが当接する底部の胴部寄り箇所は十分な肉厚が確保されるので、延伸ロッドによるプリフォームの延伸成形性を良好にし、かつ、底部が軽量化された合成樹脂製容器をブロー成形可能である。
また、本発明のプリフォームの成形金型は、プリフォームの底部内面を形成する雄型先端部が前記雄型中心軸を含む縦断面上で中心軸上に長軸を備える楕円弧形状であ
り、前記雌型の底部面は、球面部で形成されるか、又は前記雌型の底部面は、前記雌型の中心軸を含む縦断面上で該中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であるため、底部の中心寄りの箇所を薄肉にし、底部の胴部寄り箇所に向かって連続的に好適に厚肉化できる成形金型のため、延伸ロッドによる延伸時に延伸ロッドが当接する底部の胴部寄り箇所は十分な肉厚が確保され、延伸ロッドによるプリフォームの延伸成形性を良好にし、かつ、底部が軽量化された合成樹脂製容器をブロー成形可能なプリフォームを成形できる。
また、本発明の合成樹脂製容器の製造方法は、プリフォーム底部の内面がプリフォームの中心軸を含む縦断面上で中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であるため、底部の中心寄りの箇所を薄肉にし、底部の胴部寄り箇所に向かって連続的に好適に厚肉化でき、そして、延伸ロッドは、プリフォーム底部中心部より厚肉の底部中心外部に最初に当接してプリフォームを延伸するため、延伸ロッドによるプリフォームの延伸成形性を良好にし、かつ、底部が軽量化された合成樹脂製容器をブロー成形により製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態によるプリフォーム及びプリフォームの成形金型、並びに、合成樹脂製容器の製造方法について説明する。なお、プリフォームについては、符号や鎖線の見易さを重視し、断面を示すハッチングを省略している。
[プリフォームの形状]
図1は、本発明に係るプリフォームを示し、プリフォーム1はペットボトルなどの合成樹製容器が二軸延伸ブロー成形される前の形状であり、上部から下部に向かって、口頸部2、胴部3及び底部4を備えている。口頸部2には、容器に成形後、飲料などの充填口、及び、注出口となる開口部6、キャップの雌ネジが螺着される雄ネジ部7、該雄ネジ部7の下部に配置される円環状のネックリング8が形成されている。
【0010】
胴部3は、ネックリング8よりも下部に設けられ、円筒形状である。本実施形態では、胴部3の上端側を除いて胴部3の肉厚をほぼ一定にしている。胴部3と底部4との境界域には、プリフォーム1の縦断面形状が直線から曲線に変化する接続部が設けられ、プリフォーム1の直線状縦断面の胴部3から湾曲状縦断面の底部4に変化する。接続部は、胴部3と底部4の内面側に位置する内接続部10bと外面側に位置する外接続部10aとを有する。
プリフォーム1の底部4の形状は、外面が曲率半径Rの半球面部4aで形成される。内面はプリフォーム1の中心軸L上に長軸を備える楕円の、長軸を回転軸とする回転楕円体である長球(長楕円体,扁長楕円体)の表面(回転楕円面)を、長軸に垂直な面で半裁した半長球面部4b全体、または、その一部で形成される。半長球面部4bは、中心軸Lを含む縦断面上において、
図1Bのように中心軸L上に長軸を有する楕円の一部である楕円弧形状となる。
【0011】
図2のA〜Cは、プリフォーム1の底部4について、それぞれの半径が等しい半球面部4aと、それぞれの長径,短径が等しい半長球面部4b、または、その部分で構成され、半球面部4aの中心C
1と半長球面部4bの中心C
2の位置を変更した3つの実施形態である。
【0012】
ここで、
図2のAを参照して、プリフォーム1の胴部3の肉厚t
1は、胴部3の外面3a上の肉厚測定点からの法線の、外面3aから内面3bまでの長さである。
プリフォーム1の底部4の肉厚t
2は、底部4の外面(半球面部4a)上の肉厚測定点の法線Nの、外面(半球面部4a)から内面(半長球面部4b)までの長さである。
図2のAは、底部内面の半長球面部4bの中心C
2と底部外面の半球面部4aの中心C
1を一致させた第1実施形態であり、この場合、胴部3と底部4との境界域としての外接続部10aと内接続部10bの位置は同一高さ(同一平面)上にある。そして底部4の肉厚t
2は外接続部10a、及び、内接続部10bの高さ位置から中心軸Lが通る底部中心O側に向かって、漸減する。なお、プリフォーム1が後述の射出成形により成形される場合は、溶融樹脂を射出充填した際の跡であるゲート跡が底部中心Oに残っていてもよい。
【0013】
図2のBは、半球面部4aの中心C
1よりも半長球面部4bの中心C
2が上に位置する第2実施形態であり、外接続部10aが内接続部10bよりも低い位置にある。第2実施形態では、外接続部10aの高さ位置から底部中心O側を底部4とする。底部4の内面は、半長球面部4bを、半球面部4aの中心C1を通り中心軸Lに垂直な平面で切断したときの底部中心O側の長球面の部分とする。このとき、底部4の肉厚は漸減するが、
図2のAに示す第1実施形態よりも漸減の変化は小さく、底部4は厚肉傾向になる。
図2のCは、半球面部4aの中心C
1よりも半長球面部4bの中心C
2が下に位置する第3実施形態であり、外接続部10aが内接続部10bよりも高い位置にある。第3実施形態も第2実施形態同様、外接続部10aの高さ位置から底部中心O側を底部4とする。ことのき、底部4の肉厚は漸減するが、
図2のAに示す第1実施形態よりも、漸減の変化は大きくなり、底部4をより薄くできる。
【0014】
このように、外接続部10aと内接続部10bの高さが一致したり、上下にずれて位置したりするが、いずれの場合でも本願発明は実施が可能である。
こうして、本願発明は、内接続部10bから底部中心O側、及び外接続部10aから底部中心O側にわたってなだらかに連続したそれぞれ1つの曲面で結ぶことができる。したがって、異なる曲率半径を有する複数の円弧面同士によって内面または外面を形成した形状よりも曲率変化が滑らかな曲面が得られる。
【0015】
[プリフォームの成形金型]
次に、プリフォーム1を成形するための金型について説明する。
図3はプリフォーム1の射出成形金型を示す。図に示すように、成形金型11は雄型12と、雌型本体18及び割型14からなる雌型13で構成され、通常、プリフォーム1を横に寝かせた形状の成形孔19が形成されている。
【0016】
雄型12は、図示しない型開閉手段によって、左右に移動が可能であり、左部に基部15が設けられ、基部15の右部中央から右方に延びる略円柱形状のコア本体16が設けられている。このコア本体16の外面は、プリフォーム1の口部天面及び内面を形成する。そして、コア本体16がプリフォーム1の口頸部2(
図1A参照)の内面を形成するコア口頸部16aとコア胴部16bの間にはコア傾斜部17が形成され、コア傾斜部17よりも右側は、先端のプリフォーム底部との境界に至るまでのコア胴部16bがほぼ同径に形成されている。コア本体16の先端部16cは、コア本体16の中心軸上に長軸を備える楕円の、長軸を回転軸とする回転楕円体である長球の表面を長軸に垂直な面で半裁した半長球面部全体、またはその部分によって形成されている。このコア本体16の先端部16cは、プリフォーム1の底部内面を形成する部分である。コア本体16の先端部16cは、コアの中心軸を含む縦断面上において、
図3Bのように中心軸上に長軸を有する楕円の一部である楕円弧形状となる。
【0017】
雄型12の基部15の右側には、プリフォーム1の口頸部2と胴部3の外面の一部を形成する割型14が配設されている。割型14は一対の分割金型からなり、各々がコア本体16に対してほぼ対称の半円環であり、左右および上下に移動可能に構成されている(
図3AおよびB参照)。割型14の両者が合わせられ一体となった際、割型14の中央に貫通孔が形成され、雄型12の基部15と割型14を合わせて一体にしたとき、プリフォーム1の口頸部2と胴部3の一部を形成する成形孔19の一部、および、プリフォーム1の胴部内面3bと底部内面4bを形成する。
【0018】
雌型本体18は、左方に開口する凹部21が形成されている。凹部21は底部を除いてほぼ同一径の孔で形成され、プリフォーム1の胴部外面3aの大半の部分を形成する。凹部21の底部面22は半球面が形成され、プリフォーム1の底部外面を形成する。そして、成形金型11は、閉じ状態にて雄型12および雌型本体18、割型14が組み合わせられ、コア本体16が割型14の貫通孔と凹部21に挿入されると、プリフォーム1と同じ形状の成形孔(キャビティ)19(
図3のA)が形成される。
雌型本体18の底部面22の中心部には、合成樹脂を混練・溶融・射出する図示しない射出成形機に連通し、溶融樹脂を成形孔19に供給するための孔径φ1〜φ4mmの射出孔(ゲート)23が形成されている。プリフォーム1(容器)を構成する合成樹脂は、熱可塑性樹脂であれば任意のものを使用することができ、例えばポリエチレンテレフタレートが使用される。
【0019】
このように、本実施形態では、プリフォーム1の底部内面を形成するコア本体16の先端部16cは、長軸がコア本体16の中心軸上にある半長球形状であり、雌型本体18の底部面22は半球面形状を有することによって、底部外面が半球面部4aで底部内面が半長球面部4bのプリフォーム1が、射出成形によって形成される。
射出成形時、溶融樹脂は図示しない射出成形機から射出孔23を介して、雌型本体18の底部から射出される。溶融樹脂は射出孔23からキャビティ底部の曲面に沿って放射方向へ広がり、プリフォーム1の底部4に対応する位置から、先端部側の胴部3、口頸部2にわたって成形孔19の全体に充填される。
このとき、成形孔19の底部では、コア本体16の先端部16cが、長軸をコア本体16の中心軸上に備える長球面形状であるため、溶融樹脂が長球面に接触して通ると、射出孔23から胴部に至るまで隙間が、漸次広くなり、溶融樹脂の抵抗を少なくして底部から前方の胴部側を通り抜けることができる。
【0020】
[ブロー成形]
次に、プリフォーム1の二軸延伸ブロー成形について説明する。
図4のAに示すように、胴部3および底部4の温度が合成樹脂の軟化温度に調整されたプリフォーム1は、ブロー成形金型30の成形孔(キャビティ)32内にセットされ、内部には、外径がφ9〜φ14mmの棒状で昇降可能な延伸ロッド31が挿入される。そして、延伸ロッド31が下降すると、
図5の拡大図に示すように、プリフォーム1の底部内面の半長球面部4bに接触する。その後、
図4のBに示すように、延伸ロッド31をさらに下降させてプリフォーム1のブロー成形部(胴部3、底部4)を延伸させる過程でプリフォーム1内に加圧空気等の流体が導入される。そして、プリフォーム1が延伸ブロー成形され、成形孔32に対応する形状の合成樹脂製容器が形成される。
【0021】
この二軸延伸ブロー成形時において、延伸ロッド31がプリフォーム1の底部内面に接触するときに、内面が球面形状(半球面部4a)の場合と長球形状(長球面部4b)との相違について、以下説明する。
図1のB及び
図5を参照にして、プリフォーム1の底部4は、上述したように、外面側半球面部4aが半径R,内面側半長球面部4bは、回転体の元となる楕円の短軸を楕円中心で分けた短半径がa、長軸を楕円中心で分けた長半径がbとして形成されている。
図5に示す二点鎖線は、内面側半長球面部4bの短径の1/2であるaと同じ長さを半径とする円弧面4cであり、底部先端の肉厚を一致させている。プリフォーム1の内部に記載されているものは、ブロー成形に用いられる延伸ロッド31である。
【0022】
図5に示すように、半球面部4c及び半長球面部4bにおいて、底部先端の肉厚を一致させた場合、二点鎖線で示す半球面部4cよりも実線で示す半長球面部4bで内面を形成した方が、底部中心を除く全ての底部で肉厚が厚い。よって、延伸ロッド31がプリフォーム1の底部4に接触する場合は、延伸ロッド31と半球面部4cとの接触部の肉厚よりも、延伸ロッド31と半長球面部4bとの接触部の肉厚の方が、底部の中心を除いて全ての部分で厚くなる。
【0023】
具体的には、
図5および
図6のグラフを参照して説明する。まず、プリフォームの底部外面を半球面部4a(半径R=10.70mm)とする。そして、底部内面を、中心を外面の半球面部4aの中心と一致させた半長球面部4bの場合と、(短半径a=7.35mm,長半径b=8.15mm)、底部内面を、半径r=7.35mmで、底部中心Oでの肉厚が、内面が半長球面部4bに等しくなるよう配置した半球面部4cの場合、さらに、底部内面を、半径r=7.35mmで、底部中心Oでの肉厚が、内面が半長球面部4bや半球面部4cの場合よりも0.30mm厚肉となるよう中心を上側に配置した半球面部4c’の場合のうち、半長球面部4b、および、半球面部4cを
図5に示す。そして、半長球面部4b、半球面部4c,4c’について、プリフォーム首下距離(ネックリング8の下からの距離)を縦軸にとり、プリフォーム首下から底部4までの肉厚を横軸にとったグラフを
図6Aに示す。
図6Bは胴部3下方(ネックリング下から60mmの位置)から底部4までの肉厚を示す、
図6Aの縦軸について拡大した図である。
【0024】
二点鎖線で示すのは底部内面が半球面部4cの場合の底部中心までの肉厚である。破線で示すものは、首下から胴部3までは半球面部4cの場合とほとんど同じで、底部4について底部内面が半球面部4c’の場合の底部中心までの肉厚である。実線で示すのは半長球面部4bの場合の底部中心までの肉厚である。
図に示すように、プリフォーム1の首下から10mmまで肉厚が徐々に厚くなり、その後一定の肉厚を維持し、首下約70mmから外周面が曲面の底部4で形成され徐々に薄肉になっている。
図6Bに示すように、このプリフォーム1の底部4について、内面が半球面部4cの場合、および、半球面部4c’の場合、底部肉厚は、首下距離にほぼ比例して、漸次減少し薄くなっている。
【0025】
これに対して半長球面部4bでは、底部4の肉厚の減少が最初は少なく、半球面部4c’よりも厚肉である。その後、肉厚はなだらかな曲線を描いて変化し、徐々に底部中心に向かって大きく減少して、最後に底部中心で半球面部4cと同じ肉厚(t=2.55mm)となっている。
すなわち、延伸ロッド31が底部4を延伸する際に、延伸ロッド31が当接する底部中心から離れた底部中心外部の箇所は必要な肉厚を確保しやすく、かつ、底部中心の肉厚は薄くできるのである。
【0026】
[半長球面部形状の範囲]
次に、本実施形態において、底部外面が半径Rの半球面部の場合の好ましい底部内面の半長球面部形状について説明する。
図1のBを参照にして、プリフォーム1の胴部肉厚Tが2.0〜5.0mm、底部外面が、半径Rが7.5〜17.0mmの範囲の球面である場合、底部中心の肉厚t(
図3A,Bにおける射出孔23により形成されるゲート跡の部分を除いた、半径Rの半球面部の外面側と、半長球面部の内面側との間の肉厚)を、t<(13・T/20)にすると、底部が薄過ぎて、射出成形時の樹脂の流動性に支障を来す。また、ブロー成形の際、延伸ロッドが加熱軟化した底部の樹脂を過延伸するおそれがある。したがって、肉厚tは、(13・T/20)≦tの条件を満たす必要がある。また、底部中心の肉厚が、t>(19・T/20)の場合、底部が厚く、底部軽量化の効果が十分に得られない。したがって、肉厚tは、t≦(19・T/20)の条件を満たす必要がある。よって、
(13・T/20)≦t≦(19・T/20)・・・・(式1)
の範囲が、二軸延伸ブロー成形性、および、射出成形性に優れるプリフォーム1の底部中心の肉厚tの好適範囲である。
【0027】
また、
図1のBから、プリフォーム胴部肉厚T、底部中心肉厚tは、外面である半球面部4aの半径R、および、内面である半長球面部4bの短半径a,長半径bから以下のようになる。
T=R−a ・・・・(式2)
t=R−b ・・・・(式3)
式1に式2のT=R−aと式3のt=R−bを代入すると、以下の式4が導かれる。
(R+19・a)/20≦b≦(7・R+13・a)/20・・・・(式4)
このような式4の条件を満たすことによって、プリフォーム1の底部4の肉厚が、底部中心Oに向かって好適に漸次薄く形成できる。
なお、このとき底部中心の肉厚tが1.50〜4.75mmの範囲にあると、より溶融樹脂の流動性が良好になる。
なお、半長球面部4b、またはその部分を形成する長球面部の短半径aと短半径bとの比a/bは0.65〜0.98であると、プリフォーム1の成形性(溶融樹脂の流動性)やブロー成形性(延伸ロッド31による延伸成形性)の点で好ましい。
【0028】
以上述べたように、本実施形態によれば、プリフォーム1や、プリフォーム1を二軸延伸ブロー成形した合成樹脂製容器の底部を好適に薄くすることができる。この結果、樹脂の使用量が減少し、樹脂材料費と、軽量化に伴う輸送費を節約できる。また、底部中心Oを薄くしても、延伸ロッド31がプリフォーム1の底部4に接触する部位が、底部内面及び外面を球面同士で形成する場合よりも厚肉にできるので、延伸時に延伸ロッド31がプリフォーム1の底部4を過延伸しにくくなり、二軸延伸ブロー成形性に優れるプリフォーム1になる。そして、このプリフォーム1で二軸延伸ブロー成形する際、プリフォーム1を加熱時に底部4を高温に設定することで、ブロー成形後の合成樹脂製容器の底部残留ひずみを低減させて耐熱性を向上させることができる。
また、射出成形時において、成形孔19が底部の中央から胴部に向かうにわたって、連続的に徐々に隙間が広くなっているので、樹脂が先端の口頸部まで行き渡る。
さらに、本実施形態は従来の異なる2つの曲率半径を有する円弧の組み合わせによる底部内面よりも、底部内面全体を滑らかな連続した1つの曲面で形成でき、射出成形性、二軸延伸ブロー成形性に優れるプリフォーム1となる。
【0029】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
上記第1実施形態では、プリフォーム1の底部外面を半球面部4aとし底部内面を半長球面部4bとしたが、本実施形態では、
図7に示すように、底部内面は第1実施形態同様、半長球面部4bとするが、底部外面はプリフォーム1の中心軸L上に長軸を備える楕円の、長軸を回転軸とする回楕円転体である長球の表面を、長軸に垂直な面で半裁した半長球面部4dによって形成している。半長球面部4dは、中心軸Lを含む縦断面上において、
図7のように中心軸L上に長軸を有する楕円の一部である楕円弧形状となる。
底部外面の半長球面部4d長軸と短軸の比(a2/b2)よりも底部内面の半長球面部4bの長軸と短軸の比(a1/b1)が小さい方が、二軸延伸ブロー成形の際、ストレッチロッド31が当接する部分のプリフォーム底部肉厚が確保しやすいため好ましい。
【0030】
外面の半長球面部4dと内面の半長球面部4bは、中心C1,C2を一致させてもよいし、底部4の肉厚が底部中心Oに向かって漸次薄くなる形態を保つ範囲で相対的に上下にずらして配置してもよい。
本実施形態のように、プリフォーム1の底部外面が半長球面部4dである場合、底部4の肉厚は、外面半長球面部4dの法線の半長球面部4dから底部内面(半長球面部4b)までの長さである。
【0031】
このプリフォームを形成する成形金型については、
図3において、第1実施形態の雌型本体18の凹部21の底部面22を、半球面部に換えて、凹部21の中心軸上に長軸を備える楕円の、長軸を回転軸とする回転楕円体である長球の表面を長軸に垂直な面で半裁した半長球面部によって形成する。雄型12のコア本体16の先端外面は、第1実施形態同様、半長球面部によって形成する。
【0032】
第4実施形態による効果は、第1〜第3実施形態と同様である。
【0033】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
上述の実施形態では、プリフォームとして胴部が円筒形状、底部が内面に半長球面部、外面が半球面部または半長球面部で形成された形状からなり、水平断面(中心軸に垂直な断面)は内周および外周とも円形で全周均等肉厚の円環(なお、底部中心近傍の水平断面は中実の円)であるが、これに限らない。プリフォームの内面が、プリフォーム中心軸を含む縦断面上で中心軸上に長軸を有する楕円弧形状であれば、水平断面の内周および外周の少なくとも一方が楕円などの扁平形状であってもよい。水平断面の内周および外周の少なくとも一方が楕円などの扁平形状である場合、扁平合成樹脂製容器用のプリフォームとして有用である。
また、実施形態では底部の外面は半球面部または半長球面部であったが、胴部と好適に接続するため、半長球面や半球面より若干小さい長球面部や球面部であってもよい。
また、胴部と底部の間に段部やテーパー部を設けてもよい。また胴部と底部の間に厚肉部を設けてもよい。
また、実施形態では、プリフォーム成形金型として射出成形用の金型について説明したが、圧縮成形用,射出圧縮成形用の金型であってもよい。なお、圧縮成形用金型の場合、射出孔は塞ぎ、底部中心およびその近傍外面は縦断面が円弧または楕円弧の曲面とする。圧縮成形用金型や射出圧縮成形用金型についても、射出成形用金型と同様、プリフォーム底部の溶融樹脂の流動性は良好となる。