特許第6032344号(P6032344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032344
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】空調機の室外ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/46 20110101AFI20161114BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20161114BHJP
   F24F 6/06 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   F24F1/46
   F24F3/14
   F24F6/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-236323(P2015-236323)
(22)【出願日】2015年12月3日
(62)【分割の表示】特願2014-256693(P2014-256693)の分割
【原出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-118378(P2016-118378A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平木 雅人
(72)【発明者】
【氏名】駒井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】赤井 竜彦
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−251691(JP,A)
【文献】 特開2002−089902(JP,A)
【文献】 特開2008−190828(JP,A)
【文献】 特開2008−249211(JP,A)
【文献】 特開2009−156538(JP,A)
【文献】 特開平10−267331(JP,A)
【文献】 特開平08−128681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/46
F24F 3/14
F24F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の水分を吸着した後に加熱されることによって前記水分を放出する板状の吸着部材(63)をその表面が鉛直面に沿うように配置した、空調機の室外ユニットであって、
外郭を形成する本体ケーシング(40)と、
前記本体ケーシング(40)に収納される室外熱交換器(33)と、
前記本体ケーシング(40)に収納され、前記室外熱交換器(33)を通過する空気流を生成する室外ファン(39)と、
前記室外ファン(39)からの空気を前記ケーシング(40)に設けられた吹出口(46a)へ案内するベルマウス(52)と、
を備え、
前記本体ケーシング(40)は、
前記吹出口(46a)とは異なる位置に設けられ、前記室外熱交換器(33)を通過しない空気を導入する吸込開口(46b)、
を有し、
前記本体ケーシング(40)内には、前記室外ファン(39)が前記空気流を生成する際に生じる負圧によって、前記吸込開口(46b)から導入された空気を前記吸着部材(63)へ流して前記吸着部材(63)内を通過させる空気流路(AF2)が形成され、
前記空気流路(AF2)の下流側端部は、前記室外熱交換器(33)を通過した空気が通る空間に面して形成されており、
前記ベルマウス(52)における空気流れ方向の上流側端部と、前記空気流路における空気流れ方向の下流側端部とが隣接している、
空調機の室外ユニット。
【請求項2】
前記吸着部材(63)では、前記空気流路を流れる空気中の水分を吸着する吸着側と、吸着した前記水分を放出する放出側とが並存し、前記吸着側が前記ベルマウス(52)寄りに配置されている、
請求項に記載の空調機の室外ユニット。
【請求項3】
前記吸着部材(63)は、前記本体ケーシング(40)の前面部と平行に配置されている、
請求項1又は請求項に記載の空調機の室外ユニット。
【請求項4】
前記吸込開口(46b)及び前記ベルマウス(52)の開口が、前記本体ケーシング(40)の前面部に設けられている、
請求項から請求項のいずれか1項に記載の空調機の室外ユニット。
【請求項5】
前記吸着部材(63)は、前記吸込開口(46b)と対向するように配置されている、
請求項に記載の空調機の室外ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の室外ユニットに関し、特に加湿機能を有する空調機の室外ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2008−190828号公報)に開示されている加湿機能付き室外ユニットでは、その前面と平行に配置された板状の吸着部材に室外熱交換器を通過した空気が流れるという構成である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記構成では室外熱交換器の通風抵抗が大きく、吸着部材を透過させる風量を増加させることは困難であり、さらに室外熱交換器への着霜が始まるとさらに通風抵抗が増加して吸着部材への風量が減少するので、加湿性能向上の枷となっている。
【0004】
本発明の課題は、吸着部材を透過させる風量を、室外熱交換器を通過する風量に依存せずに確保することができる、空調機の室外ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調機の室外ユニットは、空気中の水分を吸着した後に加熱されることによって水分を放出する板状の吸着部材をその表面が鉛直面に沿うように配置した、空調機の室外ユニットであって、外郭を形成する本体ケーシングと、本体ケーシングに収納される室外熱交換器と、室外ファンと、ベルマウスとを備えている。室外ファンは、本体ケーシングに収納され、室外熱交換器を通過する空気流を生成する。ベルマウスは、室外ファンからの空気をケーシングに設けられた吹出口へ案内する。本体ケーシングは、吸込開口を有している。吸込開口は、吹出口とは異なる位置に設けられ、室外熱交換器を通過しない空気を導入する。本体ケーシング内には、室外ファンが空気流を生成する際に生じる負圧によって、吸込開口から導入された空気を吸着部材へ流して吸着部材内を通過させる空気流路が形成されている。空気流路の下流側端部は、室外熱交換器を通過した空気が通る空間に面して形成されている。ベルマウスにおける空気流れ方向の上流側端部と、空気流路における空気流れ方向の下流側端部とが隣接している。
【0006】
この空調機の室外ユニットでは、室外ファンの稼動により室外ファンの吸込側、つまりベルマウスの上流側端部が負圧になることによって吸込開口から外気が導入される。それゆえ、室外熱交換器への着霜が発生した際には室外熱交換器の通風抵抗増加で減少した風量に相当する量の空気が当該吸込開口から導入されることになり、[着霜時に吸着風量が低下していた従来]とは逆に吸着風量が増加する。
【0007】
また、ベルマウスの上流側端部と空気流路の下流側端部とが隣接することによってベルマウスの上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口からより多くの外気を流入させることができる。
【0008】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットは、第1観点に係る空調機の室外ユニットであって、吸着部材では、空気流路を流れる空気中の水分を吸着する吸着側と、吸着した水分を放出する放出側とが並存し、吸着側がベルマウス寄りに配置されている。
【0009】
この空調機の室外ユニットでは、室外ファンの稼動により室外ファンの吸込側、つまりベルマウスの上流側端部が負圧になることによって吸込開口から外気が導入される。吸込開口から導入された空気は吸着部材の吸着側に導かれるのが合理的であるから、吸着側がベルマウス寄りに配置されることによってベルマウスの上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口からより多くの外気を流入させることができる。
【0010】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットは、第1観点又は観点のいずれか1つに係る空調機の室外ユニットであって、吸着部材が、本体ケーシングの前面部と平行に配置されている。
【0011】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットは、第観点から第観点のいずれか1つに係る空調機の室外ユニットであって、吸込開口及びベルマウスの開口が、本体ケーシングの前面部に設けられている。
【0012】
この空調機の室外ユニットでは、室外ファンの稼動により室外ファンの吸込側、つまりベルマウスの上流側端部が負圧になることによって、室外熱交換器を通過しない外気が吸込開口から導入される。
【0013】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットは、第観点に係る空調機の室外ユニットであって、吸着部材が、吸込開口と対向するように配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1観点に係る空調機の室外ユニットでは、室外ファンの稼動により室外ファンの吸込側、つまりベルマウスの上流側端部が負圧になることによって吸込開口から外気が導入される。それゆえ室外熱交換器への着霜が発生した際には室外熱交換器の通風抵抗増加で減少した風量に相当する量の空気が当該吸込開口から導入されることになり、[着霜時に吸着風量が低下していた従来]とは逆に吸着風量が増加する。
【0015】
また、ベルマウスの上流側端部と空気流路の下流側端部とが隣接することによってベルマウスの上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口からより多くの外気を流入させることができる。
【0016】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットでは、室外ファンの稼動により室外ファンの吸込側、つまりベルマウスの上流側端部が負圧になることによって吸込開口から外気が導入される。吸込開口から導入された空気は吸着部材の吸着側に導かれるのが合理的であるから、吸着側がベルマウス寄りに配置されることによってベルマウスの上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口からより多くの外気を流入させることができる。
【0017】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットでは、第1観点又は観点に係る空調機の室外ユニットと同等の効果を奏する。
【0018】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットでは、室外ファンの稼動により室外ファンの吸込側、つまりベルマウスの上流側端部が負圧になることによって、室外熱交換器を通過しない外気が吸込開口から導入される。
【0019】
本発明の第観点に係る空調機の室外ユニットでは、第5観点に係る空調機の室外ユニットと同等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る室外ユニットを備えた冷凍装置の構成図。
図2】天板が取り外された状態の室外ユニットの平面図。
図3】前板から防護用グリルが取り外された状態の室外ユニットの正面図。
図4】加湿ロータ及び加湿ロータを通過する空気の流れを示す斜視図。
図5】ヒータを取り外した状態の加湿ユニットの斜視図。
図6】前板が取り外された状態の変形例に係る室外ユニットの正面図。
図7図6におけるベルマウスと加湿ユニットとの位置関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調機10の構成の概要
図1は、本発明の一実施形態に係る室外ユニット30を備えた冷凍装置の構成図である。図1において、冷凍装置は、室内ユニット20と、室外ユニット30と、それらを接続する冷媒連絡配管14,16を備えた空調機10である。空調機10は、冷房運転、暖房運転、除湿運転、加湿運転、及び給気運転などの複数の運転モードを持っており、これらの運転モードを適宜組み合わせることもできる。
【0023】
室内ユニット20には室内熱交換器21が設けられ、室外ユニット30には圧縮機31、四路切換弁32、室外熱交換器33、電動膨張弁34、アキュムレータ36、液側閉鎖弁37及びガス側閉鎖弁38が設けられている。
【0024】
また、加湿運転、及び給気運転では、室内に外気を供給するため、給気ホース18を通して室内ユニット20と室外ユニット30との間で空気の移動がある。特に、加湿運転では、水分を多く含んだ湿度の高い空気を室外ユニット30から室内ユニット20に供給するため室外ユニット30において外気から水分を取り込む。
【0025】
本実施形態では、加湿ユニット60が室外ユニット30内に設けられており、加湿ユニット60が外気から水分を取り込む機能を有している。
【0026】
(2)室内ユニット20の構成
室内ユニット20には、図1に示すようにモータで駆動される室内ファン22が室内熱交換器21の下流側に設けられている。室内ファン22は、クロスフローファンである。室内ファン22が駆動されると、室内ユニット20上部の吸込口23から吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器21を通過して室内ユニット20下部の吹出口24から吹き出される。
【0027】
また、室内ユニット20には、給気ホース18の給気口25が、室内熱交換器21の上流側空間に設けられている。給気ホース18は加湿ユニット60に接続されており、加湿ユニット60から送られてくる湿度の高い空気が給気口25から室内熱交換器21の上流側空間に供給される。このような湿度の高い空気が給気口25から供給されている状態で室内ファン22を駆動することにより、室内ユニット20の吹出口24から吹き出される調和空気の湿度を高くすることができる。
【0028】
(3)室外ユニット30の構成
(3−1)全体構成
図2は、天板48が取り外された状態の室外ユニット30の平面図である。また、図3は、図2の室外ユニット30から防護用グリル56が取り外された状態の当該室外ユニット30の正面図である。
【0029】
図1図3において、室外ユニット30は、ケーシング40、室外熱交換器33、室外ファン39、加湿ユニット60を備えている。室外ファン39が駆動されると、外気が室外熱交換器33の後面側から吸い込まれ、室外熱交換器33を通過し、吹出口46a(図3参照)から吹き出される。通常、吹出口46aの前面は防護用グリル56(図2参照)で覆われており、外部からプロペラ39bに触れられないようになっている。
【0030】
加湿ユニット60の少なくとも一部は室外ユニット30の送風機室41に配置され、他は機械室42に配置される。
【0031】
(3−2)詳細構成
(3−2−1)ケーシング40
ケーシング40は、左側板45、前板46、右側板47、天板48(図3参照)、底板49(図3参照)、及び背面部44からなる筐体であり、内部を仕切部材43によって送風機室41と機械室42とに分けられている。送風機室41には、室外熱交換器33及び室外ファン39が配置されている。機械室42には、圧縮機31及び加湿ユニット60の一部が配置されている。
【0032】
仕切部材43は、天板48側から底板49側に向って右側板47と略並行に延びている。また、仕切部材43は、前板46内面側から室外熱交換器33の右端向かって円弧状に延びている。その結果、仕切部材43は送風機室41から機械室42に風が回り込まないように遮蔽する機能を有している。
【0033】
また、図3に示すように、前板46には、円形の吹出口46aが形成されている。吹出口46aには、その周縁に沿うようにリング状のベルマウス52が取り付けられている。
【0034】
(3−2−2)圧縮機31
図1に示すように、圧縮機31は、機械室42側に位置しており、底板49に固定されている。運転時、圧縮機31は高温になるので、機械室42は送風機室41に比較して温度が高くなっている。
【0035】
(3−2−3)電装品ユニット50
図3に示すように、電装品ユニット50は送風機室41に位置しており、圧縮機31および室外ファン39などを駆動するための電子部品を集約した制御基板を搭載している。
【0036】
(3−2−4)室外熱交換器33
図2に示すように、室外熱交換器33は、ケーシング40の背面部44と左側板45とに対峙できるように、L字状に成形されている。また、室外熱交換器33の高さは、天板48と底板49との距離にほぼ等しい寸法を有している。
【0037】
(3−2−5)室外ファン39
室外ファン39は、ファンモータ39aによって駆動されるプロペラ39bを有しており、室外熱交換器33の下流側に設けられている。プロペラ39bの一部は、このベルマウス52で囲まれた空間内に入るように配置されている。
【0038】
(3−2−6)防護用グリル56
図2に示すように、防護用グリル56は、ケーシング40の前板46に取り付けられ、吹出口46aを覆っている。防護用グリル56には、外気を吹き出すため、複数の開口部が形成されている。
【0039】
(3−2−7)仕切部材43
仕切部材43は、ケーシング40内を送風機室41と機械室42とを仕切る。本実施形態では、加湿ユニット60が機械室42の上部に配置されるので、加湿ユニット60が仕切部材43上部の一部分を兼ねている。
【0040】
(3−2−8)加湿ユニット60
図2に示しように、加湿ユニット60は、前板46と背面部44との間で、送風機室41と機械室42とに跨るように配置されている。加湿ユニット60は、加湿ロータ63、吸着用ダクト68、ヒータ71、加湿用ダクト73、ファン75(図1参照)、及び加湿用第2ダクト180を有している。
【0041】
(4)加湿ユニット60の詳細構成
(4−1)加湿ロータ63
図3に示すように、加湿ロータ63は、円板状で、前板46の吸込開口46bと対向するように配置されており、モータ駆動によって回転することができる。吸込開口46bは中心角が約240°の扇形を成しており、扇の中心軸と加湿ロータ63の回転中心軸は同軸上に位置している。加湿ロータ63の全周囲は、壁によって包囲されている。
【0042】
加湿ロータ63は吸込開口46bと対向する中心角240°分の扇形領域で水分を吸着するので、この領域を水分吸着領域63aという。また、加湿ロータ63は、水分吸着領域63aに隣接し吸込開口46bと対向しない中心角120°分の扇形領域で水分を放出するので、この領域を水分放出領域63bという。つまり、加湿ロータ63は、回転角度によって水分吸着領域63aであった部分が水分放出領域63bとなり、水分放出領域63bであった部分が水分吸着領域63aとなる。
【0043】
図4は、加湿ロータ及び加湿ロータを通過する空気の流れを示す斜視図である。図4において、加湿ロータ63は、周囲にギア63tが設けられている。また、図3に示すように、ギア63tはピニオンギア64aと噛み合っており、ピニオンギア64aがロータ駆動用モータ64の動力によって回転することによって、ギア64tと共に加湿ロータ63全体が回転する。
【0044】
また、水分吸着領域63a及び水分放出領域63bは、ゼオライト等の焼成によって形成されたハニカム構造である。ゼオライト等の吸着剤は、常温で空気から水分を吸着し、ヒータなどで加熱された空気に曝されて温度上昇したときに水分を放出する。
【0045】
したがって、加湿ユニット60では、加湿ロータ63の水分放出領域63bと前板46との間に、水分放出領域63bと対向するようにヒータ71が配置されている。
【0046】
(4−2)吸着用ダクト68
図5は、ヒータ71を取り外した状態の加湿ユニット60の斜視図である。図5において、加湿ユニット60は、水分吸着領域63aに外気を導くための吸着用ダクト68が設けられている。吸着用ダクト68は、前板46の吸込開口64bに向かって開口する空気流入口681を形成している。空気流入口681の形状は、吸込開口46bと同じく中心角が約240°の扇形を成している。
【0047】
水分を含む空気は、空気流入口681から吸い込まれた後、吸着用ダクト68内を流れて加湿ロータ63の水分吸着領域63aに到達し、そこを透過する際に水分が吸着され、空気流出口683(図3参照)から排出される。空気流出口683は、室外ファン39が回転するときに負圧になる空間(つまり、ベルマウス52の上流側端部)に隣接しており、空気流出口683側の気圧が空気流入口681側より低くなる作用によって、空気が空気流入口681から吸い込まれる。なお、水分吸着領域63aが水分放出領域63bよりもベルマウス52側に配置されている。
【0048】
図3に示すように、吸込開口46bは、前板46の吹出口46aの右斜め上側に設けられており、吹出口46aと同様に前板46の前方に向かって開口している。室外ファン39によって前方へ押し出された空気は、ベルマウス52に沿って進み、吹出口46aから勢いよく吹き出されるので、吹出口46aから吹き出された空気が吸込開口46bから吸い込まれることはない。
【0049】
上記のような構成を採る目的は、より水分を含んだ空気を取り込むためである。通常、加湿運転は、暖房運転時に行われるので、室外熱交換器33を通過した空気は低温低湿になっている。このため、低温空気が吸い込まれた場合、加湿ロータ63が吸着することができる水分量が低下する。しかしながら、吸込開口64b及び空気流入口681が室外熱交換器33を通過した空気を吸い込まない構成にしておけば、より水分を含んだ外気を取り込むことができるので、加湿ロータ63が吸着する水分量が低下することを防止することができる。
【0050】
(4−3)ヒータ71
ヒータ71は、加湿ロータ63の水分放出領域63bから水分を放出させるために、水分放出領域63bに送られる空気を加熱する。加熱された空気は、水分放出領域63bを透過するときに加湿ロータ63から水分を放出させて、高湿の空気となって加湿用ダクト73に入る。
【0051】
(4−4)加湿用ダクト73
図1及び図5に示すように、加湿用ダクト73は、空気をヒータ71経由で水分放出領域63bまで導き、さらに加湿ロータ63を透過した空気をファン75まで導く。加湿用ダクト73に導かれる空気の流れは、ファン75によって発生する。
【0052】
加湿用ダクト73に導かれる空気は、ヒータ71に加熱されて高温空気になり、さらに、加湿ロータ63を透過する際に水分放出領域63bから水分を放出させ高温高湿空気となってファン75に向う。
【0053】
(4−5)ファン75
ファン75は、図1に示すように、加湿空気を所定の方向へ送り出す羽根車75aと、その羽根車75aを駆動するファンモータ75bとを有している。ファン75は、羽根車75aの回転軸が水平方向となる姿勢で配置され、羽根車75aの回転軸にファンモータ75bの回転軸が直結されている。また、ファン75は機械室42に配置されている。
【0054】
また、羽根車75aはファンケーシング81に囲まれており、このファンケーシング81と加湿用第2ダクト180の入口とが繋がっている。ファンモータ75bは、外側をモータカバー82で覆われている。
【0055】
(4−6)加湿用第2ダクト180
加湿用第2ダクト180は、ファン75から押し出される高温高湿空気を給気ホース18(図1参照)の接続口まで導くダクトである。加湿用第2ダクト180のほぼ全体が機械室42に位置しているが、給気ホース18との接続口を含む所定部分だけは、右側板47を挟んで機械室42の反対側に位置する(図2参照)。
【0056】
図5に示すように、加湿用第2ダクト180は、水平ダクト部181と鉛直ダクト部182とを有している。水平ダクト部181は高温高湿空気を水平に導くダクトであり、鉛直ダクト部182は水平ダクト部181に流入した高温高湿空気を下方に導くダクトである。水平ダクト部181は、機械室42から右側板47の後方端に向って延びている。
【0057】
なお、鉛直ダクト部182は、水平ダクト部181との接続口から鉛直下方に延び、終端が、給気ホース18と接続される。
【0058】
(5)空調機10の動作
(5−1)冷房運転
冷房運転時、四路切換弁32は、圧縮機31の吐出側と室外熱交換器33のガス側とを接続し、且つ圧縮機31の吸入側と室内熱交換器21のガス側とを接続する(図1の実線で示される状態)。
【0059】
また、液側閉鎖弁37及びガス側閉鎖弁38は開状態である。電動膨張弁34の開度は、室内熱交換器21の冷媒出口における冷媒の過熱度SHが過熱度目標値で一定になるように調節される。
【0060】
この冷媒回路の状態で、圧縮機31、室外ファン39および室内ファン22を運転すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機31に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。その後、高圧のガス冷媒は、四路切換弁32を経由して室外熱交換器33に送られて、室外ファン39によって供給される室外空気と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となる。そして、この高圧の液冷媒は、電動膨張弁34で減圧された後、液側閉鎖弁37および液冷媒連絡配管14を経由して、室内ユニット20に送られる。
【0061】
この室内ユニット20に送られた低圧の冷媒は、気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器15に入り、室内熱交換器15において室内空気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となる。
【0062】
この低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡配管16を経由して室外ユニット30に送られ、ガス側閉鎖弁38及び四路切換弁32を経由して、アキュムレータ36に流入する。そして、アキュムレータ36に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機31に吸入される。
【0063】
このように、空調機10では、室外熱交換器33を冷媒の凝縮器として、かつ、室内熱交換器21を冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転を行うことができる。
【0064】
(5−2)暖房運転
暖房運転時、四路切換弁32は、圧縮機31の吐出側と室内熱交換器21のガス側とを接続し、且つ圧縮機31の吸入側と室外熱交換器33のガス側とを接続する(図1の破線で示される状態)。
【0065】
また、電動膨張弁34の開度は、室外熱交換器33に流入する冷媒を室外熱交換器33において蒸発させることが可能な圧力まで減圧するように調節される。液側閉鎖弁37及びガス側閉鎖弁38は開状態である。
【0066】
この冷媒回路の状態で、圧縮機31、室外ファン39および室内ファン22を運転すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機31に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となり、四路切換弁32、ガス側閉鎖弁38およびガス冷媒連絡配管16を経由して、室内ユニット20に送られる。
【0067】
室内ユニット20に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器21において、室内空気と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となり、液冷媒連絡配管14を経由して室外ユニット30に送られる。
【0068】
液冷媒は、液側閉鎖弁37を通過して、電動膨張弁34に入る。液冷媒は、電動膨張弁34で減圧された後に、室外熱交換器33に流入する。室外熱交換器33に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン39によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となり、四路切換弁32を経由してアキュムレータ36に流入する。アキュムレータ36に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機31に吸入される。
【0069】
(5−3)加湿運転
空調機10では、加湿運転は暖房運転と組み合わせて行われる。図2図3及び図5に示すように、吸着用ダクト68の空気流入口681(図5参照)は前板46の吸込開口64b(図3参照)に向かって開口し、空気流出口683(図2参照)は室外ファン39が回転するときに負圧となるベルマウス52の上流側端部に隣接している。室外ファン39が稼動すると、空気流出口683側の気圧が空気流入口681側より低くなり、その作用によって「室外熱交換器33を通っていない、水分を含んだ外気」が空気流入口681から吸い込まれる。
【0070】
加湿ロータ63は、空気流入口681と空気流出口683との間で且つ空気流出口683近傍に位置し、加湿運転時にはロータ駆動用モータ64の動力によって所定の回転速度で回転している。加湿ロータ63の回転によって、水分吸着領域63aで加湿ロータ63に吸着された水分は加湿ロータ63の回転に伴って水分放出領域63bに運ばれ、ヒータ71に対向する位置に来る。
【0071】
また、ファン75も駆動しているので、外気がヒータ71周囲に回り込み、加熱される。加熱された空気は、加湿ロータ63の水分放出領域63bを通るので、その加熱された空気に曝された部分から水分が放出される。そして、水分を含んだ空気(以下、加湿空気という。)はファン75に吸い込まれ、加湿用第2ダクト180を介して給気ホース18へと吹き出される。加湿された空気は、給気ホース18を経て室内ユニット20へと導かれる。
【0072】
(6)特徴
(6−1)
室外ユニット30では、室外熱交換器33を通過しない空気が吸込開口46bから流入する。その結果、室外熱交換器33への着霜が発生した際には室外熱交換器33の通風抵抗増加で減少した風量に相当する量の空気が吸込開口46bから導入されることになり、[着霜時に吸着風量が低下していた従来]とは逆に吸着風量が増加する。
【0073】
(6−2)
室外ユニット30では、室外ファン39の稼動により室外ファン39の吸込側、つまりベルマウス52の上流側端部が負圧になり、その作用によって吸込開口46bから外気が導入される。特に、ベルマウス52の上流側端部と、空気流路AF2の下流側端部である吸着用ダクト68の空気流出口683とが隣接するので、ベルマウス52の上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口46bからより多くの外気を流入させることができる。
【0074】
(6−3)
吸込開口46bから導入された空気は加湿ロータ63の水分吸着領域63aに導かれるのが合理的であるから、水分吸着領域63a側がベルマウス52寄りに配置されることによってベルマウス52の上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口46bからより多くの外気を流入させることができる。
【0075】
(7)変形例
図6は、前板が取り外された状態の変形例に係る室外ユニット30の正面図である。また図7は、図6におけるベルマウス52と加湿ユニット60との位置関係を示す斜視図である。
【0076】
図6及び図7において、室外ユニット30では、デッドスペースの最小化を考慮すると前板46における吹出口46a及び吸込開口46bが吹出口46aの縦軸上又は横軸上に並べて配置されること不合理であり、吸込開口46bは吹出口46aと前板46の右上コーナーとの間に配置される。
【0077】
吹出口46aと吸込開口46bとの中心間距離は、ベルマウス52と吸着用ダクト68との中心間距離であり、上記実施形態では両者の外周同士が干渉しない最短距離に設定されている。
【0078】
負圧を利用して吸込開口46bから外気を取り込むため、空気流出口683に負圧が作用するように、ベルマウス52の上流側端部の周縁と吸着用ダクト68の空気流出口683の周縁を近接させている。なお、ここまでの記載事項については、上記実施形態にも適用されている。
【0079】
ここで、ベルマウス52の上流側端部の負圧が空気流出口683に効果的に作用する理想的な構成は、ベルマウス52の中心軸と吸着用ダクト68の中心軸とが一点で交差することである。
【0080】
しかし、加湿ロータ63の水分吸着領域63aを除く加湿ユニット60を機械室42に収納させるという構造的制約上、ベルマウス52の中心軸と吸着用ダクト68の中心軸とが一点で交差する構成は採用できない。
【0081】
そこで、本変形例では、ベルマウス52の上流側端部の負圧が吸着用ダクト68の空気流出口683に効果的に作用するように、加湿ロータ63を傾斜させている。図7に示すように、加湿ロータ63の板面が、ベルマウス52の開口面に対して所定角度θだけ傾斜しており、その所定角度θは5°〜45°の範囲内であり、推奨値は30°である。
【0082】
加湿ロータ63の板面がベルマウス52の開口面に対して所定角度θだけ傾斜することによって、ベルマウス52の上流側端部と、空気流出口683がより接近するので、空気流出口683はベルマウス52の上流側端部の負圧の効果をより多く受けることができる。その結果、吸込開口46bからより多くの外気を流入させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本願発明によれば、加湿ユニットを備えた空調機の室外ユニットに限らず、仕切部材によって空間を2分割されたケーシング内にそれら2つの空間を跨ぐように他のユニットが配置される機器にも有用である。
【符号の説明】
【0084】
10 空調機
30 室外ユニット
33 室外熱交換器
39 室外ファン
40 本体ケーシング
46a 吹出口
46b 吸込開口
52 ベルマウス
63 加湿ロータ(吸着部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2008−190828号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7