【文献】
M. Okuno, et al.,"Birefringence control of silica waveguides on Si and its application to a polarization-beam splitte,Journal of Lightwave Technology,1994年 4月,Vol.12, No.4,p.625-633
【文献】
Y. Hashizume, et al.,"Integrated polarization beam splitter using waveguide birefringence dependence on waveguide core wi,Electronics Letters,2001年12月 6日,Vol.37, No.25,p.1517-1518
【文献】
D. Dai, et al.,"Compact polarization beam splitter using an asymmetrical Mach-Zehnder interferometer based on silic,IEEE Photonics Technology Letters,2012年 4月15日,Vol.24, No.8,p.673-675
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0013】
図1は、デジタルコヒーレント通信に用いられるコヒーレントミキサー素子1の概略図である。コヒーレントミキサー素子1は、例えば、平面光波回路(PLC)であり、偏波分離器PBS、及び90°光ハイブリッド90°OHを有している。偏波分離器PBSは偏波分離機能を有する回路である。偏波分離器PBSは、例えば、アーム導波路の複屈折率を利用したマッハツェンダ型干渉計である。90°光ハイブリッド90°OHは位相情報を取り出す機能を有する回路(コヒーレントミキサー回路)である。
【0014】
コヒーレントミキサー素子1は、例えば、偏波直交多重多値デジタル信号変調方式における受信器に設けられる。具体的には、コヒーレントミキサー素子1は、受信器に設けられた光受信FE(フロントエンド)となる。コヒーレントミキサー素子1は、偏波分離機能と位相情報を取り出す機能とを1パッケージに収容した一体集積型の光デバイスである。
【0015】
偏波分離器PBSの入力側には入力ポート31が設けられている。入力ポート31には、信号光Signal、及び局所発振光Localが入力される。偏波分離器PBSは、信号光Signal、及び局所発振光Localを直交する偏波成分(X/Y成分)を分波して、90°光ハイブリッド90°OHに出力する。
【0016】
90°光ハイブリッド90°OHは、入力光の直交する偏波成分(X/Y成分)、及び直交する位相成分(I/Qチャネル)を分離する。例えば、90°光ハイブリッド90°OHは、8つの出力ポート33を有している。8つの出力ポート33はそれぞれ、XIp、XIn、XQp、XQn、YIp、YIn、YQp、YQnに対応している。そして、90°光ハイブリッド90°OHは、それぞれの信号を図示しないOE(Optical/Electrical)変換部などに出力する。
【0017】
ここで、シリコン導波路が、コヒーレントミキサー素子1を構成している。シリコン導波路では、コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることができる。このため、石英導波路に比べて、最小曲げ半径を小さくすることができる。シリコン導波路はリブ型構造とチャネル型構造の2つを有している。
図2、
図3に、一般的なリブ型構造のシリコン導波路断面と、チャネル型構造のシリコン導波路断面を示す。
【0018】
チャネル型導波路51、及びリブ型導波路50は、基板21、下層クラッド層22、コア層23、及び上層クラッド層24を備えている。シリコン基板である基板21の上に下層クラッド層22が設けられる。ここでは、下層クラッド層22はSiO
2膜であり、例えば、埋め込み酸化膜(BOX)によって形成される。下層クラッド層22の上には、コア層23が設けられる。コア層23は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などのSi膜である。コア層23の上には、上層クラッド層24が設けられる。上層クラッド層24は、例えば、SiO
2膜である。コア層23は、下層クラッド層22、上層クラッド層24と異なる屈折率の物質で設けられている。
【0019】
リブ型構造の断面では、コア層23は、上側に突起したリブ23aを有している。そして、リブ23aの両側が上層クラッド層24に挟まれている。リブ型構造では、厚さは1〜3μm程度で様々である。曲げ半径は200μm程度とチャネル型ほど小さくならないが、伝搬損失は0.5〜1.0dB/cmとチャネル型より小さい。導波路作製はステッパ露光で十分特性が得られるため、EB露光により形成する場合と比較して生産性が高い。
【0020】
チャネル型構造では、導波路となるコア層23の断面がほぼ矩形状となっている。そして、上層クラッド層24がコア層23を覆っている。下層クラッド層22及び上層クラッド層24がコア層23の全体を覆っている。本実施の形態にかかる偏波分離器PBSは、チャネル型構造とリブ型構造の両方を有している。
【0021】
図4に偏波分離器PBSの概略図を示す。偏波分離器PBSは、コヒーレントミキサー素子1の内部にモノリシックに集積されたマッハツェンダ型の偏光ビームスプリッタである。偏波分離器PBSは、分波器11、合波器14、アーム部15、入力導波路16、及び出力導波路17を有している。アーム部15は、第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13を有している。アーム部15は、分波器11と合波器14との間に配置されている。アーム部15は、マッハツェンダ干渉計を構成する。分波器11、及び合波器14は、例えばMMI(Multi-Mode Interference)カプラであり、ここでは、2入力2出力のカプラとなっている。あるいは、分波器11、及び合波器14として、方向性結合器やY分岐器等を用いることも可能である。
【0022】
分波器11は、2つの入力導波路16に結合されており、入力光を第1の入力光と第2の入力光に分波する。例えば、分波器11は、信号光を50:50に分岐して、第1の入力光と第2の入力光とを生成する。分波器11は、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13とに結合している。分波器11で分波された第1の入力光は、第1のアーム導波路12を伝搬する。分波器11で分波された第2の入力光は、第2のアーム導波路13を伝搬する。第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13は、合波器14に結合している。
【0023】
合波器14は、第1のアーム導波路12を伝搬してきた第1の入力光と、第2のアーム導波路13を伝搬してきた第2の入力光を合波する。合波器14は、2つの出力導波路17に結合されている。合波器14は、一方の出力導波路17からTE(Transverse Electric)偏光を出力し、他方の出力導波路17からTM(Transverse Magnetic)偏光を出力する。これにより、偏波分離器PBSが入力光を偏波分離する。
【0024】
分波器11、及び合波器14はリブ型のシリコン導波路で構成されている。アーム部15の少なくとも一部は、チャネル型のシリコン導波路で構成されている。すなわち、リブ型導波路の間に、チャネル型導波路が配置された構造となる。チャネル型の場合、そもそも構造的にリブ高さなる変動要因を考慮する必要がない。また、計算の結果コアSi層の厚についても感度が小さい。これにより、両アーム導波路にリブ型を採用するよりも、生産性の高い偏波分離器PBSを実現できる。
【0025】
偏波分離器PBSは、チャネル型導波路とリブ型導波路を有している。以下、チャネル型導波路とリブ型導波路とが設けられている領域について詳細に説明する。
図4に示すように、偏波分離器PBSは、リブ型領域41とチャネル型領域42と遷移領域43とを備えている。リブ型領域41では、
図2に示したように、リブ型導波路50が設けられている。チャネル型領域42では、
図3に示したように、チャネル型導波路51が設けられている。遷移領域43は、リブ型導波路50とチャネル型導波路51との間の領域である。
【0026】
リブ領域41に、分波器11、及び合波器14が設けられている。アーム部15の途中までが、リブ型領域41となっている。例えば、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の間隔が徐々に広くなるファンアウト45、及び、徐々に狭くなるファンイン46は、リブ型領域41となっている。チャネル型領域42にアーム部15の一部が設けられている。チャネル型領域42とリブ型領域41との間のアーム部15は、遷移領域43となる。
【0027】
このように、第1のアーム導波路12の少なくとも一部は、チャネル型導波路51で形成されている。第1のアーム導波路12は、第1の入力光を合波器14に導く。さらに、第2のアーム導波路13の少なくとも一部がチャネル型導波路51で形成されている。第2のアーム導波路13は、第1のアーム導波路12を伝搬する第1の入力光に対して位相差を生じさせて、第2の入力光を合波器14に導く。
【0028】
図5を用いて、遷移領域43の導波路形状について説明する。
図5は、遷移領域43の周辺の導波路形状を示す斜視図である。リブ型領域41には、リブ23aを有するコア層23が設けられている。リブ23aは、コア層23の上に突出している。チャネル型領域42のコア層23は、リブ型領域41のリブ23aと同じ高さとなっている。すなわち、リブ型領域41におけるリブ23aを含めたコア層23の厚さと、チャネル型領域42におけるコア層23の厚さがほぼ一致している。そして、チャネル型領域42のコア層23の幅は、リブ型領域41のリブ23aの幅とほぼ一致している。
【0029】
遷移領域43には、導波路幅が徐々に変化するテーパ部23bが設けられている。テーパ部23bは、リブ型領域41からチャネル型領域42に向かうにつれて、導波路幅が徐々に狭くなっている。テーパ部23bはチャネル型領域42におけるコア層23の両側面に設けられている。コアとクラッド層との境界面がテーパ状になっている。テーパ部23bの高さは、リブ型領域41におけるリブ23aを含まないコア層23の高さとほぼ等しくなっている。すなわち、遷移領域43のテーパ部23bの厚さは、リブ型領域41におけるリブ23aを含まないコア層23の厚さとほぼ一致している。換言すると、テーパ部23bの高さは、チャネル型領域42におけるコア層23よりも低くなっている。テーパ部23bリブ型導波路50とチャネル型導波路51では光の閉じ込めが異なるために、滑らかにつながないと損失が生じてしまう。そのため、遷移領域43は、スラブ領域を出来るだけ緩やかに狭くしていき、チャネル型にしていくような構造となっている。
【0030】
チャネル型領域42におけるコア層23の幅、及び高さは、例えば、1〜3μmとなっている。具体的な一例として、コア層23の幅を1.35μm、高さを1.5μmとしている。
【0031】
次に、製造誤差に起因する損失について説明する。
図6は導波路幅の変動に対する損失の変化を示す。
図6は、導波路幅を変動させたときのTE偏光の損失を示すグラフである。導波路幅は両アーム共に同じ変動が発生すると仮定している。
図7はリブ高さの変動に対する損失の変化を示す。
図7は、リブ高さを変動させたときのTE偏光の損失を示すグラフである。
図6、及び
図7では、第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13の両方をリブ型構造とした場合を、1の曲線で示している。第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13の両方をチャネル型構造とした場合を、3の曲線で示している。第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13の一方をリブ型構造とし、他方をチャネル型構造とした場合を、2の曲線で示している。
【0032】
図7に示すように、第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13がチャネル型構造の場合、リブ高さは変動要因でない。第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13をチャネル型構造とすることで、リブ高さの変動に起因する損失を低減することができる。また、第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13をリブ型構造とする場合、
図6に示すように、チャネル型構造とする場合よりも、導波路幅の変動に対する損失が大きくなる。よって、本実施の形態では、第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13がチャネル型導波路51で形成されている。これにより、導波路幅の変動に起因する損失を低減することができる。
【0033】
マッハツェンダ型の偏光ビームスプリッタの原理を説明する。マッハツェンダ干渉計では第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13とで設けた位相差に応じて、合波器14のカプラ出力のバランスが変化する。偏光分離の場合、例えばTE偏光については位相差がゼロになり、TM偏光に対しては位相差がπとなるように、アーム部15を設計する。これにより、合波器14は、一方の出力導波路17からTE偏光を出力し、他方の出力導波路17からTM偏光を出力する。
【0034】
図4に示すように、第1のアーム導波路12の幅をw
1とし、長さをL
1とする。同様に、第2のアーム導波路13の幅をw
2とし、長さをL
2とする。式(1)と式(2)を同時に満たすように、各アーム導波路の幅w
1、w
2と、長さL
1、L
2を設定する。
n
TE(w
1)・L
1−n
TE(w
2)・L
2=0 ・・・(1)
n
TM(w
1)・L
1−n
TM(w
2)・L
2=λ/2 ・・・(2)
【0035】
なお、n
TEは、TE偏光に対する等価屈折率であり、n
TMは、TM偏光に対する等価屈折率である。λは入力光の波長である。例えば、
図8は導波路幅wに対する等価屈折率nの変化を示す。導波路幅wが大きくなると、等価屈折率nが大きくなる。ここで両アームの幅としてw
1とw
2を選択した場合、光路長n×Lは
図9のようになり、式(1)、及び式(2)を満たす導波路長L
1および導波路長L
2が決定される。TE偏光については同位相、TM偏光については逆位相となる位相条件で、導波路幅w
1、w
2及び導波路長L
1、L
2が決まる。
【0036】
このように、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の導波路幅、及び導波路長を決定している。これにより、チャネル型領域42では、第1の入力光及び第2の入力光に対して、位相条件を満たすように複屈折制御を行うことができる。すなわち、第1のアーム導波路12を伝搬するTE偏光と第2のアーム導波路13を伝搬するTE偏光とで、位相差が0となり、かつ第1のアーム導波路12を伝搬するTM偏光と第2のアーム導波路13を伝搬するTM偏光とで、位相差がπとなる位相条件を満足させる。一方の出力導波路17からはTE偏光が出力され、他方の出力導波路17からはTM偏光が出力される。
【0037】
このように、アーム部15をチャネル型導波路51で形成することで、製造誤差等に対するトレランスを大きくすることができる。このため、歩留まりを改善することができ、生産性を向上することができる。さらに、導波路幅の変動によって生じる位相誤差による損失を低減することができる。また、一般にリブ型導波路で光回路を構成すると、チャネル型導波路のみで構成する場合に比べて過剰損失が低い。従って、リブ型導波路とチャネル型導波路を組み合わせた偏波分離器PBSは、全てをチャネル型導波路で構成するのに比べて低い過剰損失が期待できる。さらに所望の導波路長、及び導波路幅を簡便に得ることができる。よって、製造後に、位相差の調整を行うための構成が不要となり、生産性を向上することができる。
【0038】
リブ型導波路50、及びチャネル型導波路51は、ステッパ露光によって形成することができる。すなわち、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離等の工程を経て、リブ23aを含むコア層23が形成される。これにより、露光時間の長いEB露光が不要となるため、生産性を向上することができる。さらに、ステッパ露光によって、一つの基板上にリブ型導波路50とチャネル型導波路51とを一括形成することができる。このため、リブ型導波路50とチャネル型導波路51とを異なる基板上に別々に形成して、接着剤などによって基板を接着する必要がない。これにより、生産性を高くすることができる。
【0039】
なお、位相条件を満たすため、第1のアーム導波路12と第2のアーム導波路13の導波路幅が異なっている。例えば、第2のアーム導波路13の導波路幅w
2が第1のアーム導波路12の導波路幅w
1よりも広くなっている。第2のアーム導波路13の途中で導波路幅を広くするために、第2のアーム導波路13は、一部の導波路がテーパ状になっている。すなわち、第2のアーム導波路13は、分波器11から合波器14に向かうにつれて、導波路幅が徐々に広がるテーパアーム導波路18と、導波路幅が徐々に狭くなるテーパアーム導波路19とを備えている。同様に、第1のアーム導波路12は、分波器11から合波器14に向かうにつれて、導波路幅が徐々に広くなるテーパアーム導波路18と、導波路幅が徐々に狭くなるテーパアーム導波路19を備えている。
【0040】
このように、第1のアーム導波路12、第2のアーム導波路13にテーパアーム導波路18、19を設けることで、位相条件を満たす導波路幅を容易に得ることができる。さらに、導波路をテーパ状にしているため、損失を低減することができ、さらに多モード導波路であるアーム導波路12、13に対して、不要なモードを立てず基本モードを入力することが出来るため,安定した偏波分離機能が期待できる。また、第1のアーム導波路12に設けられたテーパアーム導波路18、19と、同様のテーパアーム導波路18、19を第2のアーム導波路13に設けている。導波路幅を変化させることによる位相のずれを補償することができる。これにより、位相条件を満たす第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13を容易に得ることができる。
【0041】
さらに、チャネル型領域42では、導波路が直線状になっている。第1のアーム導波路12、及び第2のアーム導波路13のチャネル型導波路51で形成された部分が直線状になっている。このため、チャネル型領域42は、導波路に曲げ部分を有していない。こうすることで、曲げ部分での損失を抑制することができる。
【0042】
なお、上記の説明では、導波路がシリコン導波路として説明したが、導波路はシリコン導波路に限られるものではない。例えば、導波路として、InP等の半導体導波路を用いることも可能である。種々の材料を含む化合物半導体材料を導波路として用いることができる。
【0043】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0044】
この出願は、2013年2月18日に出願された日本出願特願2013−028866を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。